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特開2024-58178除菌装置及びそれを備える除菌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058178
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】除菌装置及びそれを備える除菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20240418BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240418BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20240418BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20240418BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20240418BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A61L9/20
G01N21/64 Z
A61L2/10
A61L2/24
C12M1/12
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165375
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】514307497
【氏名又は名称】株式会社カレントダイナミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】森 和彦
【テーマコード(参考)】
2G043
4B029
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA17
2G043CA01
2G043DA05
2G043DA08
2G043EA01
2G043FA03
2G043GA06
2G043GA07
2G043GA08
2G043GB21
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA08
2G043LA01
2G043MA01
2G043MA04
2G043NA01
2G043NA04
2G043NA14
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC01
4B029DG04
4B029DG08
4B029FA11
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC02
4C058DD01
4C058DD14
4C058KK02
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH11
4C180HH14
4C180HH17
4C180HH19
4C180KK01
(57)【要約】
【課題】除菌量を容易に算出可能な除菌装置及びそれを備える除菌システムを提供すること。
【解決手段】
除菌装置は、空気中の微生物を除菌する除菌部と、除菌部よりも上流に位置し、空気を除菌部に流入させるための空気流入部と、除菌部よりも下流に位置し、除菌部を通過した空気を排出する排出部と、を備え、除菌部は、空気流入部から流入される空気に紫外線を照射する紫外線光源を有し、空気流入部と排出部とのそれぞれは、紫外線とは異なる励起光を照射する励起光源と、励起光の照射に基づいて発生する蛍光を検出する蛍光検出部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の微生物を除菌する除菌部と、
前記除菌部よりも上流に位置し、前記空気を前記除菌部に流入させるための空気流入部と、
前記除菌部よりも下流に位置し、前記除菌部を通過した前記空気を排出する排出部と、
を備え、
前記除菌部は、前記空気流入部から流入される前記空気に紫外線を照射する紫外線光源を有し、
前記空気流入部と前記排出部とのそれぞれは、前記紫外線とは異なる励起光を照射する励起光源と、前記励起光の照射に基づいて発生する蛍光を検出する蛍光検出部とを有する、
除菌装置。
【請求項2】
前記除菌部、前記空気流入部、及び前記排出部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記空気流入部から出力される第1蛍光データと、前記排出部から出力される第2蛍光データとを取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとに基づいて、前記除菌部で除菌される除菌量を算出する、請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記空気流入部と前記排出部とのそれぞれは、前記空気に前記励起光が照射されることによって発生する散乱光を検出する散乱光検出部をさらに有する、請求項2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記空気流入部から出力される第1散乱光データと、前記排出部から出力される第2散乱光データとを取得し、
前記第1散乱光データと前記第2散乱光データとに基づいて、前記空気流入部の前記励起光源から照射される前記励起光の光強度と、前記排出部の前記励起光源から照射される前記励起光の光強度と、前記空気流入部の前記蛍光検出部の検出感度と、前記排出部の前記蛍光検出部の検出感度との少なくとも一つを調整する、請求項3に記載の除菌装置。
【請求項5】
前記除菌部は、前記紫外線光源よりも上流に位置する第1紫外線遮光部、及び、前記紫外線光源よりも下流に位置する第2紫外線遮光部の少なくとも一方を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項6】
前記空気流入部及び前記排出部の少なくとも一方は、外光を遮光する外光遮光部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項7】
前記除菌部は、前記紫外線光源を収容する筐体と、前記筐体の内部に設けられる紫外線反射板とを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項8】
前記除菌部、前記空気流入部、及び前記排出部とを収容する筐体をさらに備え、
前記筐体は、前記空気流入部と前記除菌部とを仕切る第1仕切り板、及び、前記除菌部と前記排出部とを仕切る第2仕切り板を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項9】
前記空気流入部と前記除菌部との第1連通口には、前記紫外線を遮光する第1紫外線遮光部が設けられ、
前記除菌部と前記排出部との第2連通口には、前記紫外線を遮光する第2紫外線遮光部が設けられる、請求項8に記載の除菌装置。
【請求項10】
前記励起光は、反復するパルス光もしくは正弦波的に強度変調された光であり、
前記蛍光検出部は、前記励起光の周波数を増幅して前記蛍光を検出する、もしくは、前記励起光との同期検波によって前記蛍光を検出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項11】
請求項1に記載の除菌装置と、
前記除菌装置から出力されるデータを処理する処理装置と、
前記処理装置によって算出される除菌量を表示する表示装置と、
を備える除菌システムであって、
前記処理装置は、
前記空気流入部から出力される第1蛍光データと、前記排出部から出力される第2蛍光データとを取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとに基づいて、前記除菌部で除菌される除菌量を算出し、
前記除菌量を示す表示データを前記表示装置に表示させる、
除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌装置及びそれを備える除菌システムに関し、特に空気中に存在する微生物等を除菌するための除菌装置及びそれを備える除菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不特定の人数が利用する室内等を除菌する必要性が増している。例えば下記特許文献1には、車室の内部へ光を照射する車両用室内灯が開示される。この車両用室内灯には紫外線を発光する紫外光源が備えられている。これにより、車室内において紫外線が照射される部位を除菌できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-254673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のユーザが上記特許文献1に係る車両用室内灯を採用した場合、当該車両用室内灯にて実際にどの程度除菌されているか判断することは、困難である。
【0005】
本発明の目的は、除菌量を容易に算出可能な除菌装置及びそれを備える除菌システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る除菌装置は、空気中の微生物を除菌する除菌部と、除菌部よりも上流に位置し、空気を除菌部に流入させるための空気流入部と、除菌部よりも下流に位置し、除菌部を通過した空気を排出する排出部と、を備え、除菌部は、空気流入部から流入される空気に紫外線を照射する紫外線光源を有し、空気流入部と排出部とのそれぞれは、紫外線とは異なる励起光を照射する励起光源と、励起光の照射に基づいて発生する蛍光を検出する蛍光検出部とを有する。
【0007】
この除菌装置では、空気流入部と排出部とのそれぞれは、紫外線とは異なる励起光を照射する励起光源と、当該励起光の照射に基づいて発生する蛍光を検出する蛍光検出部とを有する。これにより、空気流入部の蛍光検出部にて得られる蛍光の検出結果から除菌部に流入する空気の蛍光データ(すなわち、除菌前の空気の蛍光データ)が得られると共に、排出部の蛍光検出部にて得られる蛍光の検出結果から除菌部から排出される空気の蛍光データ(すなわち、除菌後の空気の蛍光データ)が得られる。これらの蛍光データを利用することによって、除菌部の内部に流入する空気の除菌量を容易に算出できる。
【0008】
上記除菌装置は、除菌部、空気流入部、及び排出部の動作を制御する制御部をさらに備え、制御部は、空気流入部から出力される第1蛍光データと、排出部から出力される第2蛍光データとを取得し、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、除菌部で除菌される除菌量を算出してもよい。
【0009】
空気流入部と排出部とのそれぞれは、空気に励起光が照射されることによって発生する散乱光を検出する散乱光検出部をさらに有してもよい。また、制御部は、空気流入部から出力される第1散乱光データと、排出部から出力される第2散乱光データとを取得し、第1散乱光データと第2散乱光データとに基づいて、空気流入部の励起光源から照射される励起光の光強度と、排出部の励起光源から照射される励起光の光強度と、空気流入部の蛍光検出部の検出感度と、排出部の前記蛍光検出部の検出感度との少なくとも一つを調整してもよい。この場合、第1散乱光データ及び第2散乱光データを利用して、除菌装置に流入する空気中の埃などの微粒子の量を数値化できる。また、第1散乱光データに対する第2散乱光データとの相対値を取得することによって、除菌装置内を流れる空気の速度の違い、各蛍光検出部の感度の差などの情報を取得できる。これにより、各蛍光検出装置の感度の校正なども実施できる。
【0010】
除菌部は、紫外線光源よりも上流に位置する第1紫外線遮光部、及び、紫外線光源よりも下流に位置する第2紫外線遮光部の少なくとも一方を有してもよい。この場合、空気流入部及び排出部の少なくとも一方に、除菌部にて発生する紫外線が侵入しにくくなる。これにより、空気流入部の蛍光検出部にて得られる検出結果と、排出部の蛍光検出部にて得られる検出結果との少なくとも一方は、紫外線の影響を受けにくくなる。
【0011】
空気流入部及び排出部の少なくとも一方は、外光を遮光する外光遮光部を有してもよい。この場合、空気流入部の蛍光検出部にて得られる検出結果と、排出部の蛍光検出部にて得られる検出結果とのそれぞれは、外光の影響を受けにくくなる。
【0012】
除菌部は、紫外線光源を収容する筐体と、筐体の内部に設けられる紫外線反射板とを有してもよい。この場合、除菌部における除菌性能を向上できる。
【0013】
上記除菌装置は、除菌部、空気流入部、及び排出部とを収容する筐体をさらに備え、筐体は、空気流入部と除菌部とを仕切る第1仕切り板、及び、除菌部と排出部とを仕切る第2仕切り板とを有してもよい。この場合、除菌装置の小型化を実現できる。
【0014】
空気流入部と除菌部との第1連通口には、紫外線を遮光する第1紫外線遮光部が設けられ、除菌部と排出部との第2連通口には、紫外線を遮光する第2紫外線遮光部が設けられてもよい。この場合、空気流入部と排出部とのそれぞれに、除菌部にて発生する紫外線がさらに侵入しにくくなる。
【0015】
励起光は、反復するパルス光もしくは正弦波的に強度変調された光であり、蛍光検出部は、励起光の周波数を増幅して蛍光を検出してもよい、もしくは、励起光との同期検波によって蛍光を検出してもよい。この場合、除菌装置内に入り込む迷光などによる散乱光の影響を低減できる。
【0016】
本発明の別の一側面に係る除菌システムは、上記除菌装置と、除菌装置から出力されるデータを処理する処理装置と、処理装置によって算出される除菌量を表示する表示装置と、を備える除菌システムであって、処理装置は、空気流入部から出力される第1蛍光データと、排出部から出力される第2蛍光データとを取得し、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、除菌部で除菌される除菌量を算出し、除菌量を示す表示データを表示装置に表示させる。
【0017】
この除菌システムによれば、表示装置は、処理装置によって算出された除菌量を示す表示データを表示する。これにより、除菌システムのユーザは、除菌装置の除菌効果を、表示装置を介して容易に確認できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、除菌量を容易に算出可能な除菌装置及びそれを備える除菌システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係る除菌システムの概要構成を示す模式図である。
図2図2は、蛍光検出装置の主要構成及び制御部を示す模式図である。
図3図3は、空気流入部及び排出部のそれぞれにて検出される蛍光強度の時間変化を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の変形例に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。
図5図5は、第2実施形態に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。
図6図6は、第3実施形態に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。
図7図7(a),(b)は、第4実施形態に係る空気流入部の蛍光検出装置の配置を示す模式図である。
図8図8(a),(b)は、第4実施形態の変形例に係る空気流入部の蛍光検出装置の配置を示す模式図である。
図9図9(a)は空気流入部及び排出部のそれぞれにて検出される蛍光強度の時間変化の別例を示す図であり、図9(b)は、第1散乱光データの時間変化と、第2散乱光データの時間変化とを示すグラフである。
図10図10は、除菌システムの概要構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書では、ウイルスは微生物に含まれるものとする。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。図1に示される除菌装置1は、例えば、空気中に浮遊する細菌、真菌、ウイルスなどの微生物を除菌もしくは殺菌する装置である。微生物は、微生物単体にて空気中に浮遊してもよいし、空気中に浮遊する微粒子等に付着してもよい。微粒子は、空気中に浮遊可能な物質であり、例えば、埃、大気エアロゾル粒子、浮遊粒子状物質等である。
【0022】
図1に示されるように、除菌装置1は、主な構成として、除菌部2と、空気流入部3と、排出部4とを備える据置型装置もしくは携帯型装置である。第1実施形態では、空気流入部3と、除菌部2と、排出部4とは、所定方向に沿って順に並んで配置される。第1実施形態では、当該所定方向は、除菌装置1内を流れる空気の方向(以下、流れ方向WDとする)に相当する。このため、空気流入部3は除菌部2よりも上流に位置し、排出部4は除菌部2よりも下流に位置する。なお、除菌装置1は、例えば音を生成可能な報知器などを備えてもよい。また、除菌部2と、空気流入部3と、排出部4とは、互いに分離可能でもよい。これにより、除菌装置1の各構成要素を容易にメンテナンスできる。
【0023】
除菌部2は、空気中の微生物を除菌する部材である。第1実施形態では、除菌部2内に存在する微生物等を除菌する。本明細書では、「微生物等」は、少なくとも微生物を含む概念である。第1実施形態では、微生物等は、微生物に加えて微粒子を含む概念である。第1実施形態では、除菌部2は、筐体11と、紫外線光源12と、紫外線反射板13と、第1紫外線遮光部14と、第2紫外線遮光部15とを有する。
【0024】
筐体11は、紫外線光源12と、紫外線反射板13と、第1紫外線遮光部14と、第2紫外線遮光部15とを収容する中空部材である。筐体11は、例えば直方体形状などの角柱形状を有する。筐体11は、開口部11a,11bを有する。開口部11aは、空気流入部3に連結する連通口であり、流れ方向WDにおける筐体11の一端面に設けられる。これにより、空気流入部3から筐体11内部へ空気が流入可能である。開口部11bは、排出部4に連結する連通口であり、流れ方向WDにおける筐体11の他端面に設けられる。これにより、筐体11内部から排出部4へ空気が排出可能である。
【0025】
紫外線光源12は、空気流入部3から流入される空気に紫外線UVを照射する部材であり、例えば放電管、発光ダイオード(LED)等を有する。紫外線光源12は、流れ方向WDにおける筐体11の上記一端面及び上記他端面に対して交差する面上に載置される。紫外線光源12は、流れ方向WDに交差する方向に紫外線UVを照射する位置に配置されるが、これに限られない。紫外線光源12は、例えば、180nm以上400nm以下の波長を有し、10mW/cm程度の強度を有する紫外線UVを照射する。これにより、筐体11内に存在する微生物を良好に除菌できる。紫外線UVには、互いに異なる波長を有する複数の紫外線が含まれてもよい。
【0026】
紫外線反射板13は、紫外線UVを反射する部材であり、筐体11の内部に設けられる。紫外線反射板13は、例えば筐体11の内壁上に配置される反射板である。紫外線反射板13が設けられることによって、筐体11の内部にて紫外線UVが多重反射し得る。紫外線反射板13は、開口部11aに重なる開口部13aと、開口部11bに重なる開口部13bとを有する。これにより、紫外線反射板13による空気の流れが阻害されにくくなる。
【0027】
第1紫外線遮光部14は、開口部11aを介する筐体11外への紫外線UVの漏れを防止するための部材であり、流れ方向WDにおいて紫外線光源12よりも上流であって、開口部11a,13aの間に位置する。第2紫外線遮光部15は、開口部11bを介する筐体11外への紫外線UVの漏れを防止するための部材であり、流れ方向WDにおいて紫外線光源12よりも上流であって、開口部11b,13bの間に位置する。第1紫外線遮光部14及び第2紫外線遮光部15のそれぞれは、例えば、微生物等及び空気が通過可能な紫外線遮光シートである。第1紫外線遮光部14及び第2紫外線遮光部15は、少なくとも開口部13a,13bをそれぞれ覆えばよい。
【0028】
空気流入部3は、除菌装置1の外部から空気を除菌部2に流入させるための部分である。空気流入部3は、筐体21と、蛍光検出装置22と、送風機23と、外光遮光部24とを有する。
【0029】
筐体21は、蛍光検出装置22を収容する中空部材であり、開口21a,21bを有する。開口21aは、除菌装置1における空気の入口に相当する部分である。開口21bは、除菌部2に連結する部分である。
【0030】
図2は、蛍光検出装置の主要構成及び制御部を示す模式図である。図2に示されるように、蛍光検出装置22は、励起光源22aと、蛍光検出部22bとを有する。励起光源22aは、空気中の微生物等に蛍光FL1を発生させるための励起光L1を照射する部材であり、例えばLED(発光ダイオード)などである。励起光源22aは、流れ方向WDに交差する方向に励起光L1を照射する位置に配置されるが、これに限られない。励起光源22aは、例えば制御部5によって制御される。励起光源22aは、連続的に励起光L1を照射してもよいし、間欠的に励起光L1を照射してもよい。なお、制御部5の詳細は後述する。
【0031】
励起光L1の波長は、紫外線UVの波長とは異なり、かつ、蛍光FL1の波長よりも低波長であればよい。このため、励起光L1は、紫外光でもよいし、可視光でもよい。励起光L1の波長は、例えば、300nm以上450nm以下である。第1実施形態では、励起光L1の波長は375nm程度~405nm程度である。
【0032】
蛍光検出部22bは、励起光L1の照射に伴って発生する蛍光FL1を検出する部材であり、例えば可視光センサである。蛍光検出部22bは、例えば、空気中の微生物等から発生する蛍光FL1(例えば、500nm程度の波長の光)を検出する。蛍光検出部22bによる蛍光FL1の検出結果を示す検出情報(第1蛍光データ)は、制御部5に出力される。第1蛍光データは、除菌部2に流入する前の空気(すなわち、除菌前の空気)に励起光L1を照射して得られる蛍光の検出結果である。蛍光検出部22bは、蛍光FL1の波長及びその近傍のみを透過する光学フィルタを有する。このため、蛍光検出部22bによって取得される光の強度は、励起光L1の強度を完全もしくは実質的に含まない。よって、蛍光検出部22bから出力されるノイズを低減できる。
【0033】
筐体21内の迷光、蛍光検出部22bの温度ドリフトなどの影響を低減する観点から、励起光源22aが励起光L1として反復するパルス光あるいは正弦波的に強度変化させた光を照射する場合、蛍光検出部22bは、励起光L1の波形と同期検波することによって蛍光FL1を検出してもよい。具体的には、蛍光検出部22bは、上記反復するパルス光の周波数と同じ周期にて蛍光を検出する。
【0034】
送風機23は、除菌装置1内へ空気を流入させるための部材であり、筐体21よりも下流に位置する。送風機23の動作によって、除菌装置1外の空気が空気流入部3及び除菌部2に流入される。
【0035】
外光遮光部24は、空気流入部3への外光の侵入を防止するための部材であり、少なくとも筐体21の開口21aを覆う。第1実施形態では、外光遮光部24は、筐体21及び送風機23を覆うが、これに限られない。外光遮光部24は、例えば、微生物等及び空気が通過可能な遮光シートである。
【0036】
排出部4は、除菌部2を通過した空気を除菌装置1の外部に排出する部分である。排出部4は、筐体31と、蛍光検出装置32と、送風機33とを有する。
【0037】
筐体31は、蛍光検出装置32を収容する中空部材であり、開口31a,31bを有する。開口31aは、除菌部2に連結する部分である。開口31bは、除菌装置1の出口に相当する部分である。蛍光検出装置32は、蛍光検出装置22と同様に、筐体31内の微生物等に蛍光を発生させるための励起光L2を照射する励起光源(不図示)と、当該蛍光を検出する蛍光検出部(不図示)を有する。蛍光検出部による蛍光の検出結果を示す検出情報(第2蛍光データ)は、制御部5に出力される。第2蛍光データは、除菌部2から排出される空気(すなわち、除菌後の空気)に励起光L2を照射して得られる蛍光の検出結果である。第1実施形態では、蛍光検出装置22,32は、互いに同一構成及び同一性能を有する。よって、励起光L1,L2の波長及び強度は、同一もしくは実質的に同一である。蛍光検出装置32が励起光として反復するパルス光あるいは正弦波的な強度変化をする光を照射する場合、蛍光検出装置32の蛍光検出部は、当該励起光の波形と同期検波することによって、蛍光を検出してもよい。
【0038】
送風機33は、除菌部2から排出部4へ空気を排出するための部材であり、筐体31よりも上流に位置する。送風機33の動作によって、除菌部2内の空気が排出部4へ排出される。
【0039】
制御部5は、除菌装置1に含まれる除菌部2、空気流入部3及び排出部4の動作を制御するコントローラである。図示しないが、制御部5は、例えば筐体11内に設けられる。制御部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部5は、例えば、図示しない操作部を介して指定された動作信号を、紫外線光源12、蛍光検出装置22,32、送風機23,33などへ出力する。
【0040】
制御部5は、除菌装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する処理部である。制御部5による各種信号の演算の例として、空気流入部3の蛍光検出装置22から出力される蛍光FL1の検出情報(第1蛍光データ)と、排出部4の蛍光検出装置32から出力される蛍光の検出情報(第2蛍光データ)との取得、これらの検出情報に基づく除菌部2で除菌される除菌量の算出などが挙げられる。このため、制御部5は、例えば、紫外線光源12の制御信号を出力するための部分、蛍光検出装置22,32の制御信号を出力するための部分、送風機23,33の制御信号を出力するための部分、蛍光検出装置22,32の検出情報(第1蛍光データ及び第2蛍光データ)を取得するための部分、当該検出情報に基づいて除菌部2で除菌される除菌量を算出するための部分、各信号及び各情報を記憶する部分(記憶部)等を有する。
【0041】
図3は、空気流入部及び排出部のそれぞれにて検出される蛍光強度の時間変化を示す図である。図3において、縦軸は蛍光強度を示し、横軸は時間を示す。プロットP1は、空気流入部3にて検出される蛍光強度の時間変化を示すデータであり、蛍光検出装置22から出力される第1蛍光データに基づいて得られる。このため、プロットP1は、空気流入部3内の空気に含まれる微生物等から発生する蛍光の強度の時間変化を示す。プロットP2は、排出部4にて検出される蛍光強度の時間変化を示すデータであり、蛍光検出装置32から出力される第2蛍光データに基づいて得られる。このため、プロットP2は、排出部4内の空気に含まれる微生物等から発生する蛍光の強度の時間変化を示す。なお、図3において、制御部5によって、プロットP1,P2には予め時間のずれ補正が実施されることがある。これにより、所定のタイミングにおいて空気流入部3に存在する空気に励起光L1を照射して得られる蛍光強度と、当該空気が排出部4に存在するときに励起光L2の照射によって得られる蛍光強度とを容易に比較できる。上記補正は、除菌装置1内の空気の流れ(風速)に基づいて設定される。風速が遅いほど、上記補正が強くなる。当該風速は、送風機23,33の動作に基づいて設定される。
【0042】
プロットP1にて示される蛍光強度の時間変化と、プロットP2にて示される蛍光強度の時間変化とは、互いに似た傾向を示す。具体的には、所定時間における蛍光強度の増減幅は、プロットP1,P2共にほぼ同一である。一方、プロットP1の蛍光強度は、プロットP2の蛍光強度よりも高い。これらの蛍光強度の差は、除菌部2による微生物の除菌の有無によって生じる。このため、当該差は、除菌部2で除菌される除菌量に相当すると言える。なお、除菌部2にて空気中の微生物等が完全に除菌されると仮定する場合、プロットP2は、空気中の微粒子によって発生される蛍光強度の時間変化に相当する。
【0043】
以下では、第1実施形態に係る除菌装置1によって奏される作用効果について説明する。
【0044】
本発明者らは、所定量の微粒子上に微生物が付着される試料を紫外光によって除菌もしくは殺菌を実施する場合において、微粒子量が変化しないのにかかわらず上記試料から発生する蛍光の強度が時間変化することに着目し、鋭意検討を実施した。その結果、紫外線照射前後において、微生物量の変化に応じて試料から発生する蛍光の強度は変化する一方で、微粒子自体から発生する蛍光の強度は実質的に変化しないことが見出された。
【0045】
以上の知見に基づいた第1実施形態に係る除菌装置1によれば、空気流入部3は、紫外線UVとは異なる励起光L1を照射する励起光源22aと、励起光L1の照射に基づいて発生する蛍光FL1を検出する蛍光検出部22bとを有する。同様に、排出部4は、紫外線UVとは異なる励起光L2を照射する励起光源と、励起光L2の照射に基づいて発生する蛍光を検出する蛍光検出部とを有する。これにより、空気流入部3の蛍光検出装置22にて得られる蛍光FL1の検出結果から除菌部2に流入する空気の第1蛍光データが得られると共に、排出部4の蛍光検出装置32にて得られる蛍光の検出結果から除菌部2から排出される空気の第2蛍光データが得られる。
【0046】
ここで、除菌装置1は、除菌部2、空気流入部3、及び排出部4の動作を制御する制御部5を備え、制御部5は、空気流入部3から出力される第1蛍光データと、排出部4から出力される第2蛍光データとを取得し、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、除菌部2で除菌される除菌量を算出する。このように第1蛍光データ及び第2蛍光データを比較することによって、除菌部2の内部に流入する空気の除菌量を容易に算出できるので、流入する空気中の微生物の量を数値化できる。
【0047】
第1実施形態では、除菌部2は、紫外線光源12よりも上流に位置する第1紫外線遮光部14、及び、紫外線光源12よりも下流に位置する第2紫外線遮光部15を有する。このため、空気流入部3及び排出部4に、除菌部2にて発生する紫外線UVが侵入しにくくなる。これにより、空気流入部3の蛍光検出装置22にて得られる検出結果と、排出部4の蛍光検出装置32にて得られる検出結果とは、紫外線UVの影響を受けにくくなる。
【0048】
第1実施形態では、空気流入部3は、外光を遮光する外光遮光部24を有する。このため、空気流入部3の蛍光検出装置22にて得られる検出結果は、外光の影響を受けにくくなる。
【0049】
第1実施形態では、除菌部2は、紫外線光源12を収容する筐体11と、筐体11の内部に設けられる紫外線反射板13とを有する。この場合、筐体11内における所定の領域には紫外線UVが何度も照射され得るので、除菌部2における除菌性能を向上できる。
【0050】
第1実施形態では、蛍光検出装置32が反復するパルス光を照射する場合、蛍光検出装置32の蛍光検出部は、当該反復するパルス光の波形と同期検波することによって検出してもよい。この場合、除菌装置1内に入り込む迷光などによって発生する蛍光の影響を低減できる。よって、除菌装置1内における外光遮光部24等の数など、外光(迷光)への構造的な対策を低減できる。したがって、除菌装置1内の空気が流れやすくなる。
【0051】
図4は、第1実施形態の変形例に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。図4においては、紫外線反射板、第1紫外線遮光部、及び第2紫外線遮光部は省略されている。図4に示されるように、除菌装置1Aの除菌部2Aにおいては、紫外線光源12は、流れ方向WDにおける筐体11の一端面上に配置される。このため、紫外線UVは、流れ方向WDに照射される。紫外線光源12は、筐体11の開口部11aに重なるように配置されてもよい。また、除菌装置1Aの排出部4Aは、排出部4への外光の侵入を防止するための外光遮光部34をさらに備える。外光遮光部34は、少なくとも筐体21の開口21aを覆う。本変形例では、外光遮光部34は、筐体31及び送風機33を覆うが、これに限られない。外光遮光部34は、例えば、微生物等及び空気が通過可能な遮光シートである。
【0052】
以上に説明した変形例においても、上記第1実施形態と同様の作用効果が発揮される。
【0053】
(第2実施形態)
以下では、第2実施形態に係る除菌装置について説明する。第2実施形態の説明において第1実施形態と重複する記載は省略し、第1実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第2実施形態に第1実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0054】
図5は、第2実施形態に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。図5に示されるように、除菌装置1Bにおいて、除菌部2Bと、空気流入部3Aと、排出部4Bとは、所定方向に沿って互いに並んで配置されていない点で、上記第1実施形態とは異なる。このため、除菌装置1B内を流れる空気の流れ方向WD1は、上記第1実施形態の流れ方向WDと異なる。
【0055】
除菌部2Bにおいて、筐体11Aの開口部11a,11bのそれぞれは、筐体11Aにおいて紫外線光源12が載置される載置面に設けられる。例えば、開口部11aは所定方向に沿った当該載置面の一端もしくはその近傍に設けられ、開口部11bは、所定方向に沿った当該載置面の他端もしくはその近傍に設けられる。紫外線反射板13Aの開口部13aは開口部11aに重なり、紫外線反射板13Aの開口部13bは開口部11bに重なる。
【0056】
空気流入部3Aは、筐体21A、蛍光検出装置22、及び送風機23に加えて、筐体21Aの内部に設けられる第1紫外線遮光部14A及び外光遮光部24Aを有する。空気流入部3A内を流れる空気の流れと、除菌部2B内を流れる空気の流れとが互いに異なるように、空気流入部3Aは、除菌部2Bに連結される。第1紫外線遮光部14Aは、例えば板状のUV遮光部材であり、流れ方向WD1において蛍光検出装置22と送風機23との間に位置する。外光遮光部24Aは、例えば遮光性を示す複数の板状部材を有し、流れ方向WD1において筐体21Aの開口21aと蛍光検出装置22との間に位置する。
【0057】
排出部4Bは、筐体31B、蛍光検出装置32、及び送風機33に加えて、筐体31Aの内部に設けられる第2紫外線遮光部15A及び外光遮光部34Aを有する。排出部4Bを流れる空気の流れと、除菌部2B内を流れる空気の流れとが互いに異なるように、排出部4Bは、除菌部2Bに連結される。排出部4Bを流れる空気の流れと、空気流入部3A内を流れる空気の流れとは、互いに異なる。第2紫外線遮光部15Aは、例えば板状のUV遮光部材であり、流れ方向WD1において蛍光検出装置32と送風機33との間に位置する。外光遮光部34Aは、例えば複数の板状部材を有し、流れ方向WD1において筐体31Aの開口31aと蛍光検出装置32との間に位置する。
【0058】
以上に説明した第2実施形態に係る除菌装置1Bにおいても、上記第1実施形態と同様の作用効果が発揮される。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態の変形例と同様に、紫外線光源12の位置が変更されてもよい。
【0059】
(第3実施形態)
以下では、第3実施形態に係る除菌装置について説明する。第3実施形態の説明において第1及び第2実施形態と重複する記載は省略し、第1及び第2実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第3実施形態に第1及び第2実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0060】
図6は、第3実施形態に係る除菌装置の概要構成を示す模式図である。図6に示されるように、除菌装置1Cは、除菌部2C、空気流入部3B、及び排出部4Cとを収容する筐体50を備える。すなわち、除菌装置1Cにおいては、除菌部2C、空気流入部3B、及び排出部4Cとが、1つの筐体50内に設けられる。筐体50内には、第1紫外線遮光部14Bと、第2紫外線遮光部15Bと、外光遮光部24B,34Bと、送風機33Aとが設けられる。
【0061】
筐体50は、入口51、出口52、流路壁53,54、及び仕切り板55,56を有する。入口51は、除菌装置1C内に空気が流入する部分であり、外光遮光部24Bを介して空気流入部3Bに連通する。出口52は、除菌装置1Cから空気を排出する部分であり、外光遮光部34Bを介して排出部4Cに連通する。流路壁53,54のそれぞれは、筐体50内の空気の流れ方向WD2を画定するための壁の一部である。流路壁53は、空気流入部3Bを画定するための壁の一部でもある。流路壁54は、排出部4Cを画定するための壁の一部でもある。
【0062】
仕切り板55(第1仕切り板)は、空気流入部3Bと除菌部2Cとを仕切る部材である。仕切り板55は、空気流入部3Bを画定するための壁の別の一部でもある。加えて、仕切り板55の主面55aは、除菌部2Cを画定する部分の一部でもある。主面55a上には、紫外線反射板13Bの一部が設けられる。第3実施形態では、空気流入部3Bに含まれる蛍光検出装置22は、仕切り板55の長軸方向に沿って励起光L1を照射するが、これに限られない。
【0063】
仕切り板56(第2仕切り板)は、除菌部2Cと排出部4Cとを仕切る部材である。仕切り板56は、排出部4Cを画定するための壁の別の一部でもある。加えて、仕切り板56の主面56aは、除菌部2Cを画定する部分の別の一部でもある。主面56a上には、紫外線反射板13Bの別の一部が設けられる。第3実施形態では、排出部4Cに含まれる蛍光検出装置32は、仕切り板56の長軸方向に沿って励起光L2を照射するが、これに限られない。
【0064】
筐体50内において、第1紫外線遮光部14Bは、空気流入部3Bと除菌部2Cとの第1連通口O1に設けられる。第1連通口O1は、筐体50の一部と、仕切り板55の先端55bとによって画成される。また、第2紫外線遮光部15Bは、除菌部2Cと排出部4Cとの第2連通口O2に設けられる。第2連通口O2は、筐体50の別の一部と、仕切り板56の先端56bとによって画成される。
【0065】
以上に説明した第3実施形態に係る除菌装置1Cにおいても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、除菌装置1Cの小型化を実現できる。
【0066】
(第4実施形態)
以下では、第4実施形態に係る除菌装置について説明する。第4実施形態の説明において第1~第3実施形態と重複する記載は省略し、第1~第3実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第4実施形態に第1~第3実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0067】
図7(a),(b)は、第4実施形態に係る空気流入部の蛍光検出装置の配置を示す模式図である。図7(a),(b)に示されるように、空気流入部3Cの筐体21B内には、蛍光検出装置22Aの励起光源22Aa及び蛍光検出部22Abが配置される。加えて、図7(a),(b)には、励起光源22Aaから照射される励起光L1Aの照射範囲R1と、蛍光検出部22Abの蛍光検出範囲R2とが示される。第4実施形態では、照射範囲R1と蛍光検出範囲R2とが互いに直交するように、励起光源22Aaと蛍光検出部22Abとが、筐体21B内に配置される。加えて、照射範囲R1と蛍光検出範囲R2とは、流れ方向WDに対しても直交するが、これに限られない。図示しないが、排出部に含まれる蛍光検出装置の励起光源及び蛍光検出部も、同様に配置される。なお、第4実施形態では、筐体21Bは円筒形状を有するが、これに限られない。
【0068】
以上に説明した第4実施形態に係る空気流入部3Cを備える除菌装置においても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、空気流入部3Cの筐体21Bの壁面にて反射する励起光L1Aが、蛍光検出部22Abに入射しにくくなる。これにより、蛍光検出部22Abの蛍光検出精度を向上できる。
【0069】
図8(a),(b)は、第4実施形態の変形例に係る空気流入部の蛍光検出装置の配置を示す模式図である。図8(a),(b)に示されるように、筐体21B内には、励起光源22Aa及び蛍光検出部22Abに加えて、散乱光検出部61が配置される。図8(a),(b)には、照射範囲R1及び蛍光検出範囲R2に加えて、散乱光検出部61の散乱光検出範囲R3が示される。本変形例では、励起光L1Aの散乱光検出部61への入射を抑制するため、照射範囲R1と散乱光検出範囲R3とが互いに直交するように、励起光源22Aaと散乱光検出部61とが、空気流入部3C内に配置される。加えて、照射範囲R1と散乱光検出範囲R3とは、流れ方向WDに対しても直交するが、これに限られない。
【0070】
散乱光検出部61は、励起光L1Aが空気(より具体的には、空気中の微粒子等)に照射されることによって発生する散乱光(不図示)を検出する部材であり、例えば可視光センサもしくは紫外線センサである。散乱光の波長は、励起光L1Aの波長と同一である。よって、散乱光検出部61は、散乱光の波長及びその近傍のみを投下する光学フィルタを有してもよい。この場合、散乱光検出部61から出力されるノイズを低減できる。散乱光検出部61による散乱光の検出結果を示す検出情報(第1散乱光データ)は、制御部5(図2を参照)に出力される。第1散乱光データは、除菌部2に流入する前の空気(すなわち、除菌前の空気)に励起光L1Aを照射して得られる散乱光の検出結果である。励起光L1Aとして反復するパルス光あるいは正弦波的に強度変化させた光を照射する場合、散乱光検出部61は、励起光L1Aと同じ周波数成分をもつ散乱光を増幅検出してもよいし、当該散乱光の信号を励起光の周波数と同期検波することによって検出してもよい。
【0071】
図示しないが、排出部は、空気流入部3Cと同様に散乱光検出部(不図示)を有する。この散乱光検出部による散乱光の検出結果を示す検出情報(第2散乱光データ)は、制御部5(図2を参照)に出力される。第2散乱光データは、除菌部2から排出される空気(すなわち、除菌後の空気)に励起光を照射して得られる散乱光の検出結果である。また、排出部に含まれる励起光源及び散乱光検出部は、例えば、空気流入部3Cと同様の位置に配置される。
【0072】
本変形例では、制御部5は、空気流入部3Cから出力される第1散乱光データと、排出部から出力される第2散乱光データとを取得する。そして、制御部5は、第1散乱光データと第2散乱光データとに基づいて、励起光源22Aaから照射される励起光L1Aの光強度と、排出部の励起光源から照射される励起光の光強度と、蛍光検出部22Abの検出感度と、排出部の蛍光検出部の検出感度との少なくとも一つを調整する。
【0073】
以上に説明した第4実施形態の変形例においても、上記第4実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、第1散乱光データ及び第2散乱光データを利用することによって、以下に説明するように、除菌中に各蛍光検出部の校正などを実施できる。
【0074】
除菌装置における空気流入部と空気排出部の蛍光強度の差は、生菌の除菌量に比例する。一方、生菌とは異なる埃などの微粒子に起因した蛍光の強度は、空気流入部と排出部で変化しない。このため、空気流入部の散乱光強度と、空気排出部の散乱光強度とを得ることで、除菌装置に流入する空気中の微粒子量を数値化できる。そして、数値化した微粒子量のデータから、除菌装置内を流れる空気の速度、乱流層の程度、各検出部の感度の差に関する情報を取得できる。これにより、各蛍光検出装置の感度の校正なども実施できる。
【0075】
図9(a)は、空気流入部及び排出部のそれぞれにて検出される蛍光強度の時間変化の別例を示す図であり、図9(b)は、第1散乱光データの時間変化と、第2散乱光データの時間変化とを示すグラフである。図9(a)において、プロットP11,P12は、人工的に生菌を含む微粒子を除菌部入口から投入した場合の第1蛍光データ及び第2蛍光データをそれぞれ示す。図9(b)において、プロットP13,P14は、人工的に生菌を含む微粒子を除菌部入口から投入した場合の第1散乱光データ及び第2散乱光データをそれぞれ示す。なお、プロットP11,P12の間と、プロットP13,P14の間とのそれぞれには、気流の通過時間差を考慮し、予め時間のずれ補正が実施されている。
【0076】
図9(a)に示されるように、プロットP11,P12を比較すると、プロットP12の強度は、プロットP11の強度よりも約30%小さくなっている。一方、プロットP13,P14を比較すると、これらの強度には、実質的に差がないと言える。すなわち、第1散乱光データと第2散乱光データとの間には、実質的に差がないと言える。これは、除菌装置における各励起光、各検出部に総合的な感度差がないことを意味する。一方、第1散乱光データと第2散乱光データとの間に差があれば、それぞれの値を用いて各蛍光検出部の感度校正を実施できることを意味する。空気流入部3Cと排出部のそれぞれの蛍光強度の差は、除菌部で生菌が減じた分に相当するからである。仮に、生菌が存在しない微粒子の蛍光強度の検出結果は、空気流入部3Cと排出部とでそれぞれ等しくなるはずだからでもある。よって、所定のタイミングにおける第1散乱光データの値SC1と第2散乱光データの値SC2の比率(SC2/SC1)を得ることで、各蛍光検出部の個体差を校正できる。なお、生菌を含む微粒子の総数は、除菌部を通過することによって実質的に変化しない。よって、空気流入部3Cにおける励起光の強度及び散乱光検出部61の感度と、排出部における励起光の強度及び散乱光検出部の感度とが、互いに等しい場合、値SC1と値SC2との比率は、1になる。このため、値SC1,SC2の比率を利用して、励起光源22Aaから照射される励起光L1Aの光強度と、排出部の励起光源から照射される励起光の光強度と、蛍光検出部22Abの検出感度と、排出部の蛍光検出部の検出感度との少なくとも一つを調整(校正)できる。
【0077】
次に、図10を参照しながら、上記実施形態に係る除菌装置を備える除菌システムについて説明する。図10は、除菌システムの概要構成を示すブロック図である。図10に示される除菌システム100は、除菌装置200と、除菌装置200から出力されるデータを処理する処理装置300と、処理装置300によって算出される除菌量を表示する表示装置400とを備える。除菌装置200は、上記実施形態に係る除菌装置1~1Cと同様の装置である。ただ、除菌装置200の制御部(不図示)は、除菌量を算出しない。加えて、除菌装置200は、処理装置300等と各種データを通信可能な通信部(不図示)を有する。
【0078】
処理装置300は、除菌装置200から出力される各蛍光データに基づいて、除菌装置200による除菌量を算出する装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。処理装置300は、例えば、除菌装置200の空気流入部(不図示)から出力される第1蛍光データと、排出部(不図示)から出力される第2蛍光データとを取得し、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、除菌部で除菌される除菌量を算出し、除菌量を示す表示データを表示装置400に表示させる。処理装置300は、例えば、LAN(ローカルエリアネットワーク)、インターネットなどを介して、算出した除菌量を示す表示データ(画像信号)を表示装置400に出力する。このため、処理装置300は、各種データを通信可能な通信部(不図示)を有する。上記表示データは、例えば、除菌装置200による除菌量計測結果を示すデータだけでなく、当該除菌量計測結果の更新までの時間を示すデータ、呼気した空気の温度、湿度等を示すデータなどを含み得る。除菌量計測結果を示すデータは、例えば、数字データ、時間変化に対する除菌量を示すグラフデータ等である。
【0079】
表示装置400に表示される値が大きいほど、除菌量が大きいことを示す。このため、当該値が大きいほど、除菌装置200の近傍における微生物等の量が多いことを示し得る。よって、表示装置400に表示される値が所定の閾値を超える場合、処理装置300は、報知処理(例えば、図示しないスピーカーによる警報報知処理、図示しないランプなどの光報知処理など)を実施してもよい。
【0080】
処理装置300は、除菌装置200に含まれる各部材を制御するコントローラとしても機能する。処理装置300は、除菌装置200に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する処理部でもよい。処理装置300は、各信号及び各情報を記憶する部分(記憶部)等を有してもよい。
【0081】
表示装置400は、処理装置300から出力される表示データに基づく画像を表示する部材である。表示装置400には、1つの表示データに相当する画像が表示されてもよいし、複数の表示データに相当する画像が表示されてもよい。上述したように、表示装置400は、処理装置300と無線通信可能である。このため、表示装置400のユーザは、遠隔地からでも除菌量を示す画像を容易に確認できる。表示装置400は、除菌システム100専用の装置でもよいし、除菌システム100専用の装置でなくてもよい。前者の場合、表示装置400は、例えば1または複数の液晶ディスプレイなどと、タッチパネルなどのユーザインターフェースとを含む。後者の場合、表示装置400は、例えば、除菌システム100を操作するためのアプリケーションを動作可能なスマートフォン、タブレットなどである。例えば、表示装置400が作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、処理装置300に出力されてもよい。この場合、表示装置400のユーザは、遠隔地からでも除菌装置200及び/または処理装置300の動作を容易に制御できる。入力情報は、例えば、除菌装置200の起動指示、停止指示、動作変更指示等に関するデータである。
【0082】
以上に説明した除菌システム100においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、除菌システム100によれば、表示装置400は、処理装置300によって算出された除菌量を示す表示データを表示する。これにより、除菌システム100のユーザは、除菌装置200の除菌効果を、表示装置400を介して容易に確認できる。
【0083】
上記除菌システム100は、除菌装置200と処理装置300と表示装置400とは、互いに別装置であるが、これに限られない。例えば、表示装置に処理装置が設けられてもよいし、除菌装置に表示装置が設けられてもよい。
【0084】
本発明の一側面に係る除菌装置及びそれを備える除菌システムは、以下の[1]~[8]に記載する通りであり、上記実施形態及び上記変形例に基づいてこれらを詳細に説明した。
[1]
空気中の微生物を除菌する除菌部と、
前記除菌部よりも上流に位置し、前記空気を前記除菌部に流入させるための空気流入部と、
前記除菌部よりも下流に位置し、前記除菌部を通過した前記空気を排出する排出部と、
を備え、
前記除菌部は、前記空気流入部から流入される前記空気に紫外線を照射する紫外線光源を有し、
前記空気流入部と前記排出部とのそれぞれは、前記紫外線とは異なる励起光を照射する励起光源と、前記励起光の照射に基づいて発生する蛍光を検出する蛍光検出部とを有する、
除菌装置。
[2]
前記除菌部、前記空気流入部、及び前記排出部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記空気流入部から出力される第1蛍光データと、前記排出部から出力される第2蛍光データとを取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとに基づいて、前記除菌部で除菌される除菌量を算出する、[1]に記載の除菌装置。
[3]
前記空気流入部と前記排出部とのそれぞれは、前記空気に前記励起光が照射されることによって発生する散乱光を検出する散乱光検出部をさらに有する、[2]に記載の除菌装置。
[4]
前記制御部は、
前記空気流入部から出力される第1散乱光データと、前記排出部から出力される第2散乱光データとを取得し、
前記第1散乱光データと前記第2散乱光データとに基づいて、前記空気流入部の前記励起光源から照射される前記励起光の光強度と、前記排出部の前記励起光源から照射される前記励起光の光強度と、前記空気流入部の前記蛍光検出部の検出感度と、前記排出部の前記蛍光検出部の検出感度との少なくとも一つを調整する、[3]に記載の除菌装置。
[5]
前記除菌部は、前記紫外線光源よりも上流に位置する第1紫外線遮光部、及び、前記紫外線光源よりも下流に位置する第2紫外線遮光部の少なくとも一方を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の除菌装置。
[6]
前記空気流入部及び前記排出部の少なくとも一方は、外光を遮光する外光遮光部を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の除菌装置。
[7]
前記除菌部は、前記紫外線光源を収容する筐体と、前記筐体の内部に設けられる紫外線反射板とを有する、[1]~[6]のいずれかに記載の除菌装置。
[8]
除菌部、空気流入部、及び排出部とを収容する筐体をさらに備え、
筐体は、空気流入部と除菌部とを仕切る第1仕切り板、及び、除菌部と排出部とを仕切る第2仕切り板を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の除菌装置。
[9]
前記空気流入部と前記除菌部との第1連通口には、前記紫外線を遮光する第1紫外線遮光部が設けられ、
前記除菌部と前記排出部との第2連通口には、前記紫外線を遮光する第2紫外線遮光部が設けられる、[7]に記載の除菌装置。
[10]
前記励起光は、反復するパルス光もしくは正弦波的に強度変調された光であり、
前記蛍光検出部は、前記励起光の周波数を増幅して前記蛍光を検出する、もしくは、前記励起光との同期検波によって前記蛍光を検出する、[1]~[9]のいずれかに記載の除菌装置。
[11]
[1]に記載の除菌装置と、
前記除菌装置から出力されるデータを処理する処理装置と、
前記処理装置によって算出される除菌量を表示する表示装置と、
を備える除菌システムであって、
前記処理装置は、
前記空気流入部から出力される第1蛍光データと、前記排出部から出力される第2蛍光データとを取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとに基づいて、前記除菌部で除菌される除菌量を算出し、
前記除菌量を示す表示データを前記表示装置に表示させる、
除菌システム。
【0085】
しかし、本発明の一側面は、上記実施形態、上記変形例及び上記[1]~[11]に限定されない。本発明の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。上記実施形態と上記変形例とは、適宜組み合わされてもよい。例えば、第1実施形態において、排出部も外光遮光部を有してもよい。
【0086】
上記実施形態及び上記変形例において、除菌装置は、紫外線遮光部を備えなくてもよいし、外光遮光部を備えなくてもよい。また、例えば、空気流入部及び排出部の一方が送風機を有すればよい。
【符号の説明】
【0087】
1,1~1C…除菌装置、2,2A~2C…除菌部、3,3A~3C…空気流入部、4,4A~4C…排出部、5…制御部、11,11A…筐体、11a,11b…開口部、12…紫外線光源、13,13A,13B…紫外線反射板、13a,13b…開口部、13A…紫外線反射板、14,14A,14B…第1紫外線遮光部、15,15A,15B…第2紫外線遮光部、21,21A,21B,31,31A…筐体、21a,21b,31a,31b…開口、22,32…蛍光検出装置、22a,22Aa…励起光源、22b,22Ab…蛍光検出部、23,33,33A…送風機、24,24A,24B,34,34A,34B…外光遮光部、50…筐体、51…入口、52…出口、53,54…流路壁、55…仕切り板(第1仕切り板)、55a…主面、55b…先端、56…仕切り板(第2仕切り板)、56a…主面、56b…先端、61…散乱光検出部、100…除菌システム、200…除菌装置、300…処理装置、400…表示装置、FL1…蛍光、L1,L2…励起光、O1…第1連通口、O2…第2連通口、UV…紫外線。
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10