(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058186
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】凍結耐性付与剤、それを含む冷凍物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20240418BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240418BHJP
A23L 3/37 20060101ALI20240418BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20240418BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240418BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20240418BHJP
A23L 11/50 20210101ALN20240418BHJP
【FI】
C12N1/00 F
A23L29/00
A23L3/37 A
C12N1/14 C
C12N1/14 H
C12N1/20 A
A23L7/109 C
A23L11/50 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165394
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 秀久
【テーマコード(参考)】
4B022
4B035
4B046
4B065
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB02
4B022LJ04
4B022LQ10
4B035LC03
4B035LC05
4B035LC11
4B035LE11
4B035LE16
4B035LE20
4B035LG14
4B035LG15
4B035LG17
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4B035LG33
4B035LG35
4B035LG48
4B035LK01
4B035LK02
4B035LK19
4B035LP06
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4B035LT11
4B035LT20
4B046LA02
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4B046LC01
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4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065BD09
4B065BD32
4B065BD38
4B065CA41
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】新規な凍結耐性付与剤を提供することを課題とする。
【解決手段】メラノイジン及び澱粉を含む、凍結耐性付与剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラノイジン及び澱粉を含む、凍結耐性付与剤。
【請求項2】
メラノイジン及び澱粉を含む、培養培地。
【請求項3】
食材と添加剤とを含み、前記添加剤がメラノイジン及び澱粉を含む、冷凍食品。
【請求項4】
前記澱粉が、バレイショ由来澱粉及びキャッサバ芋由来澱粉からなる群より選択される少なくとも一種の澱粉である、請求項1に記載の凍結耐性付与剤、請求項2に記載の培養培地、又は請求項3に記載の冷凍食品。
【請求項5】
i)メラノイジン及び澱粉を混合する工程と、
ii)前記工程i)により得られた混合物を加熱する工程と
を含む、メラノイジン及び澱粉を含む培養培地の製造方法。
【請求項6】
前記工程ii)の加熱温度が70℃~120℃である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
1A)メラノイジン及び澱粉を食品に添加する工程;又は
1B)メラノイジン及び澱粉を食材に添加し、食品を得る工程と、
2)前記食品を冷凍する工程と
を含む、冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結耐性付与剤、それを含む冷凍物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍物を解凍すると品質が低下する場合があることが知られており、こうした現象は冷凍物中に含まれる水の凍結に起因すると考えられている。例えば、微生物検査用に販売されている培養培地は、一度冷凍すると解凍後に培養培地表面の滑らかさが失われたり、ドリップが発生したりするなど、培養培地としての品質が著しく低下するため、冷凍保存が不可能であった。このため、市販の培養培地は冷蔵保存される。しかしながら、冷蔵保存は長期保存に適さず、寒冷地でのサプライチェーンにおいては凍結した培養培地を廃棄することも度々あった。また、冷凍食品においても同様の現象が生じることが知られている。
【0003】
水の凍結は、水の中に存在する異物が核となり氷核が形成され、この氷核を中心に氷結晶が発生し、氷結晶が成長することにより引き起こされる。氷結晶の成長は、周囲の構造の破壊やタンパク質の変性等を生じさせ、冷凍物の解凍時の品質低下につながる。そのため、このような問題を回避するためには、水の凍結を制御することが重要である。
【0004】
水の凍結の制御において、氷核の形成を阻害する過冷却促進物質、氷核形成から氷結晶の成長を阻害する不凍タンパク質や不凍多糖が重要な役割を果たす。これまでに、カイワレ大根由来の不凍タンパク質等を含む氷結晶化阻害剤(特許文献1)や、還元糖とアミノ酸の反応(メイラード反応)により得られる化合物であるメラノイジンを含有する過冷却促進剤(特許文献2)、味噌や醤油等の大豆発酵物の抽出物を含む氷再結晶化抑制剤(特許文献3)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-069603号公報
【特許文献2】特開2019-006883号公報
【特許文献3】特開2022-083887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討により、従来提案されている氷再結晶化抑制剤では解凍時の品質低下の問題が十分には解消されない場合があることが判明した。よって、本発明は、新規な凍結耐性付与剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、メラノイジン及び澱粉を含む培養培地及び食品では、冷凍後解凍しても培養培地及び食品の品質が保たれ、ドリップの発生を軽減できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてさらに鋭意検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を包含する。
項1.
メラノイジン及び澱粉を含む、凍結耐性付与剤。
項2.
メラノイジン及び澱粉を含む、培養培地。
項3.
食材と添加剤とを含み、前記添加剤がメラノイジン及び澱粉を含む、冷凍食品。
項4.
前記澱粉が、バレイショ由来澱粉及びキャッサバ芋由来澱粉からなる群より選択される少なくとも一種の澱粉である、項1に記載の凍結耐性付与剤、項2に記載の培養培地、又は項3に記載の冷凍食品。
項5.
i)メラノイジン及び澱粉を混合する工程と、
ii)前記工程i)により得られた混合物を加熱する工程と
を含む、メラノイジン及び澱粉を含む培養培地の製造方法。
項6.
前記工程ii)の加熱温度が70℃~120℃である、項5に記載の製造方法。
項7.
1A)メラノイジン及び澱粉を食品に添加する工程;又は
1B)メラノイジン及び澱粉を食材に添加し、食品を得る工程と、
2)前記食品を冷凍する工程と
を含む、冷凍食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な凍結耐性付与剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】冷凍後解凍した培養培地の写真を示す図である。
【
図2】澱粉の添加量が冷凍前及び解凍後の培養培地の重量変化、並びに、解凍時に発生するドリップ量に与える影響を調べた結果を示す図である。
【
図3】培養培地の種類が解凍時に発生するドリップ量に与える影響を調べた結果を示す図である。
【
図4】冷凍前及び解凍後のうどんの破断荷重を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1. 本発明の凍結耐性付与剤
本発明の凍結耐性付与剤は、メラノイジン及び澱粉を含む。
【0011】
本発明において、「凍結耐性付与」とは、凍結に対して対抗し得る性質を付与することを意味し、より具体的には凍結に対して凍結前の状態に近い状態に維持することを意味する。凍結耐性付与剤は凍結時に水の凍結を制御する作用を有する。
【0012】
メラノイジンは、還元糖とアミノ酸が反応して得られるメイラード反応物等が挙げられ、これらは本発明に好適に用いられることができる。
【0013】
還元糖としては、還元性を有するアルドース及びケトースが挙げられる。例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、リキソース、アロース等のアルドース、及びエリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース等のケトースが挙げられる。好ましくは、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース等が挙げられ、より好ましくはグルコースが挙げられる。
【0014】
アミノ酸としては、天然アミノ酸等が挙げられ、例えばグリシン、セリン、スレオニン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、バリンが挙げられる。好ましくは、グリシン、セリン、スレオニン等が挙げられる。中でもグリシンは糖と反応しやすいため、好ましい。
【0015】
還元糖とアミノ酸を混合し、加熱することで、メラノイジンを調製することができる。具体的には、例えば、還元糖とアミノ酸を溶媒に溶解又は懸濁させて加熱することができる。還元糖とアミノ酸の混合モル比としては、例えば1:2~2:1が挙げられ、好ましくは1:1.5~1.5:1が挙げられ、より好ましくは1:1.1~1.1:1 が挙げられ、特に好ましくは1:1が挙げられる。
【0016】
溶媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン等)、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン等が挙げられるが、好ましくは水、アルコール等が挙げられ、より好ましくは水が挙げられる。溶媒の使用量としては、例えば還元糖とアミノ酸の混合物の質量に対して1~20質量倍が挙げられ、好ましくは2~10質量倍が挙げられ、より好ましくは3~6質量倍が挙げられる。例えば、還元糖を0.5~1.5M濃度で、好ましくは0.8~1.2M濃度で、アミノ酸を0.5~1.5M濃度で、好ましくは0.8~1.2M濃度で、溶媒に添加して加熱することができる。
【0017】
反応時のpHとしては、例えばpH3~9が挙げられ、好ましくはpH4~7.5が挙げられる。反応の進行と共に反応系のpHは低下する。pHによって、生成されるメラノイジンの分子量が異なり、pHが低いほど高分子のメラノイジンが生成される。反応時のpHを適切な範囲に調整するために、塩基を添加することもできる。添加する塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸(水素)アルカリ等が挙げられ、好ましくは炭酸(水素)アルカリが挙げられる。塩基の添加量としては、アミノ酸の1モルに対して、例えば0.05~1モルが挙げられ、好ましくは0.07~0.3モルが挙げられ、より好ましくは0.9~0.15モルが挙げられる。また、逆にpHを下げるために、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸等の酸を加えることもできる。
【0018】
加熱温度としては、例えば70~200℃が挙げられ、好ましくは90~160℃が挙げられ、より好ましくは100~130℃が挙げられる。加熱温度が溶媒の沸点よりも高い場合、例えばオートクレーブ等を用いてもよい。加熱時間は、加熱温度に応じて適宜変更することが好ましいが、例えば1~10時間が挙げられ、好ましくは2~5時間が挙げられる。加熱の終了後、常法に従って、抽出、固化、ろ過、乾燥、精製等を行うことで、比較的低い分子量のメラノイジンを単離することができる。
【0019】
高分子量のメラノイジンは、上記の加熱後の混合物をさらに酸性条件下で高分子化させることで得ることができる。酸性条件としては、例えばpH1~4が挙げられ、好ましくはpH2~3が挙げられる。酸性にするために、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸等の酸を加えることができる。高分子化するために、上記混合物を酸性条件下、例えば15~100℃、好ましくは20~60℃、より好ましくは30~50℃で攪拌又は放置することができる。高分子化の時間としては、保温温度に応じて適宜変更することが好ましいが、例えば1時間~1ヶ月が挙げられ、好ましくは1~7 日間が挙げられ、より好ましくは2~4日間が挙げられる。
【0020】
高分子化の後、常法に従って、抽出、固化、ゲルろ過、ろ過、乾燥、精製等を行うことで、高分子量のメラノイジンを単離することができる。必要に応じて、限外ろ過によって一定分子量以上のもの、例えば分子量1万以上のもの、分子量2万以上のもの等を分取することもできる。用途に応じて、所望の分子量のメラノイジンを調製することが好ましい。
【0021】
メラノイジンには水溶性のものと疎水性のものがあるため、用途に応じて、水溶性又は疎水性のものを、適宜、選択することができる。
【0022】
本発明の凍結耐性付与剤において、メラノイジンに代えて、大豆発酵物及び/又はその抽出物を用いることができる。すなわち、本発明の凍結耐性付与剤は、大豆発酵物及びその抽出物からなる群から選択される少なくとも一種及び澱粉を含むものということができる。
【0023】
大豆発酵物の種類は特に制限されず、味噌、醤油、納豆等の大豆を原料として用いる発酵食品から選択してもよく、食用を目的とせずに大豆を発酵させたものであってもよい。食品廃棄物の有効利用の観点からは、大豆発酵物は、発酵食品を製造する際に発生する残渣、副産物、不要になった在庫品等であってもよい。
【0024】
本発明の一態様において、大豆発酵物は味噌であってもよい。味噌としては米味噌(米麹を用いて製造する味噌)、麦味噌(麦麹を用いて製造する味噌)、豆味噌(豆麹を用いて製造する味噌)などが挙げられ、特に制限なく使用できる。大豆発酵物は、一種のみを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
大豆発酵物の抽出物を得る方法は、特に制限されず、例えば、大豆発酵物を溶媒と混合して溶解させた後、遠心分離、ろ過等により残渣を分離することで、抽出物を溶液(抽出液)として得てもよい。溶媒の種類は特に制限されず、水又はアルコール等の水溶性溶媒であってもよく、水であることが好ましい。大豆発酵物が塩分を含む場合、必要に応じて塩分を除去する処理(脱塩)を実施してもよい。
【0026】
本発明の凍結耐性付与剤における大豆発酵物及び/又はその抽出物の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、後述する本発明の凍結耐性付与剤におけるメラノイジンの含有量と同様であることが好ましい。
【0027】
本発明の凍結耐性付与剤において、メラノイジンに代えて、大豆発酵物及び/又はその抽出物を用いる場合、コラーゲンペプチドを併用することができる。コラーゲンペプチドは氷再結晶化抑制作用を有することが知られていることから、コラーゲンペプチドを併用することで、本発明の凍結耐性付与効果が相乗的に増大することが期待できる。
【0028】
大豆発酵物及び/又はその抽出物とコラーゲンペプチドとの質量比(大豆発酵物又はその抽出物:コラーゲンペプチド)は、1:1~1:100であることが好ましく、1:2~1:50であることがより好ましく、1:5~1:20であることがさらに好ましい。
【0029】
コラーゲンペプチドとしては、特に制限されず、例えば、牛、豚、魚等に由来するコラーゲンペプチドが挙げられる。
【0030】
澱粉は、本発明の凍結防止効果を発揮する限り、特に制限されないが、例えば、植物由来の澱粉が好ましい。植物由来の澱粉としては、例えばバレイショ、トウモロコシ、米、小麦、キャッサバ芋、カンショ等を由来とする澱粉が挙げられる。中でもバレイショ及びキャッサバ芋を由来とする澱粉が好ましい。
【0031】
本発明の凍結耐性付与剤は、メラノイジン及び澱粉からなるものであってもよいし、本発明の効果を損なわない限りメラノイジン及び澱粉以外の成分を含有してもよい。つまり、本発明の凍結耐性付与剤は、メラノイジン及び澱粉が100重量%からなるものであってもよいし、また本発明の効果を損なわない限り他の成分を含有するものであってもよい。
【0032】
本発明の凍結耐性付与剤のメラノイジン及び澱粉の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば0.01~99.99重量%、好ましくは0.1~99.9重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の凍結耐性付与剤のメラノイジン及び澱粉の含有量の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、40重量%、60重量%、又は80重量%である。本発明の凍結耐性付与剤における凍結耐性付与の有効成分100重量%に対する、メラノイジン及び澱粉の含有量の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、又は99重量%以上である。
【0033】
本発明の凍結耐性付与剤における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率は、特に制限されないが、例えば0.01~100重量%、0.1~99.9重量%、1~90重量%、3~85重量%、5~80重量%、7~75重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の凍結耐性付与剤における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、40重量%、60重量%、又は80重量%である。中でも本発明の凍結耐性付与剤における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率の下限は、少なくとも1重量%以上であることが好ましく、少なくとも5重量%以上であることがより好ましく、少なくとも10重量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば0.01~99.99重量%、好ましくは0.1~99.9重量%が例示できる。他の成分としては、食品衛生学的に許容される基剤、担体、添加剤等が例示できる。
【0035】
2. 本発明の培養培地
本発明の培養培地は、メラノイジン及び澱粉を含む。
【0036】
本発明の培養培地としては、特に制限されず、液体培地であってもよく、固体培地であってもよい。中でも固体培地が好ましい。
【0037】
本発明の培養培地としては、例えば、LB培地、TSB培地、BL培地、BCP培地、PDA培地、VRB培地等が挙げられる。本発明の培養培地には、目的の培養培地に合わせて必要な各種成分を適宜添加することができる。
【0038】
本発明の培養培地におけるメラノイジンの含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、培養培地の種類や用途に合わせて適宜決定することができ、例えば0.001~99.99重量%、好ましくは0.01~90重量%、より好ましくは0.05~70重量%、さらに好ましくは0.07~50重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の培養培地におけるメラノイジンの含有量の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.001重量%、0.005重量%、0.01重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、又は0.1重量%である。中でも本発明の培養培地におけるメラノイジンの含有量の下限は、少なくとも0.01重量%以上であることが好ましく、少なくとも0.05重量%以上であることがより好ましく、少なくとも0.1重量%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の培養培地における澱粉の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、培養培地の種類や用途に合わせて適宜決定することができ、例えば0.01~99.99重量%、好ましくは、0.1~90重量%、より好ましくは0.5~70重量%、さらに好ましくは0.7~50重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の培養培地における澱粉の含有量の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、又は1重量%である。中でも本発明の培養培地における澱粉の含有量の下限は、少なくとも0.01重量%以上であることが好ましく、少なくとも0.5重量%以上であることがより好ましく、少なくとも1重量%以上であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の培養培地における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率は、特に制限されないが、例えば0.01~100重量%、0.1~99.9重量%、1~90重量%、3~85重量%、5~80重量%、7~75重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の培養培地における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、40重量%、60重量%、又は80重量%である。中でも本発明の凍結耐性付与剤における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率の下限は、少なくとも1重量%以上であることが好ましく、少なくとも5重量%以上であることがより好ましく、少なくとも10重量%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明の培養培地において、メラノイジンに代えて、大豆発酵物及び/又はその抽出物を用いることができる。すなわち、本発明の培養培地は、大豆発酵物及びその抽出物からなる群から選択される少なくとも一種及び澱粉を含むものということができる。大豆発酵物及びその抽出物としては、例えば上述のものと同様であることが好ましい。
【0042】
本発明の培養培地において、メラノイジンに代えて、大豆発酵物及び/又はその抽出物を用いる場合、上述の効果を期待して、コラーゲンペプチドを併用することができる。コラーゲンペプチドとしては、例えば上述のものと同様であることが好ましい。
【0043】
本発明の培養培地における大豆発酵物及び/又はその抽出物の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、上述の本発明の培養培地におけるメラノイジンの含有量と同様であることが好ましい。
【0044】
本発明の培養培地における澱粉としては、特に制限されず、例えば上述の澱粉が挙げられる。中でも中でもバレイショ及びキャッサバ芋を由来とする澱粉が好ましい。
【0045】
本発明の培養培地は、培養器材に入った培養培地を含む。培養器材としては、特に制限されず、シャーレ、フラスコ、チューブ、ディッシュ、ペトリディッシュ、細胞培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、バッグ、チャンバースライド等が挙げられる。これら培養器材の材質は特に制限されず、アルミ、プラスチック、ガラス等が挙げられる。
【0046】
3. 本発明の冷凍食品
本発明の冷凍食品は、食材と添加剤とを含み、メラノイジン及び澱粉を添加剤として含む。
【0047】
本発明において、「冷凍食品」とは、冷凍された人又は動物の食用又は飲用に供されるあらゆるものが含まれ、固体であっても液体であってもよい。
【0048】
本発明の冷凍食品におけるメラノイジン及び澱粉の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば0.01~99.99重量%、好ましくは0.1~99.9重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の冷凍食品におけるメラノイジン及び澱粉の含有量の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、40重量%、60重量%、又は80重量%である。
【0049】
本発明の冷凍食品における澱粉の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば0.01~99.99重量%、好ましくは0.1~99.9重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の冷凍食品における澱粉の含有量の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、40重量%、60重量%、又は80重量%である。
【0050】
本発明の冷凍食品における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率は、特に制限されないが、例えば0.01~100重量%、0.1~99.9重量%、1~90重量%、3~85重量%、5~80重量%、7~75重量%が例示できる。また、本発明の一態様において、本発明の冷凍食品における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率の上限は例えば100重量%であり、その下限は例えば0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、40重量%、60重量%、又は80重量%である。中でも本発明の凍結耐性付与剤における澱粉100重量%に対するメラノイジンの重量比率の下限は、少なくとも1重量%以上であることが好ましく、少なくとも5重量%以上であることがより好ましく、少なくとも10重量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の冷凍食品において、メラノイジンに代えて、大豆発酵物及び/又はその抽出物を用いることができる。すなわち、本発明の冷凍食品は、食材と添加剤とを含み、大豆発酵物及びその抽出物からなる群から選択される少なくとも一種及び澱粉を添加剤として含むものということができる。大豆発酵物及びその抽出物としては、例えば上述のものと同様であることが好ましい。
【0052】
本発明の冷凍食品において、メラノイジンに代えて、大豆発酵物及び/又はその抽出物を用いる場合、上述の効果を期待して、コラーゲンペプチドを併用することができる。コラーゲンペプチドとしては、例えば上述のものと同様であることが好ましい。
【0053】
本発明の冷凍食品における大豆発酵物及び/又はその抽出物の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、上述の本発明の冷凍食品におけるメラノイジンの含有量と同様であることが好ましい。
【0054】
本発明の冷凍食品における澱粉としては、特に制限されず、例えば上述の澱粉が挙げられる。中でも中でもバレイショ及びキャッサバ芋を由来とする澱粉が好ましい。
【0055】
本発明の冷凍食品は、食材及び添加剤からなるものであってもよいし、本発明の効果を損なわない限り、食材への風味付け、保存性向上等の目的のため、食材及び添加剤以外の成分を含有してもよい。つまり、本発明の冷凍食品は、食材及び添加剤が100重量%からなるものであってもよいし、また本発明の効果を損なわない限り後述する他の成分を含有するものであってもよい。
【0056】
他の成分としては、特に制限されず、食品衛生学的に許容される基剤、担体、添加剤等が例示でき、さらに詳細には、例えば、穀物、野菜、果実、果汁、動物性又は植物性タンパク質(肉、魚、豆、及びこれらの加工品を含む)、卵、動物性又は植物性クリーム、スキムミルク、動物性又は植物性澱粉、油脂、塩、酒、香料、香辛料、甘味料、酸味料、着色料、保存料、膨化剤(発泡剤)等が挙げられる。
【0057】
本発明の冷凍食品としては、特に制限されないが、例えば、冷凍うどんや冷凍パスタ等の冷凍麺、冷凍パン、冷凍餅、冷凍お好み焼き、冷凍ゼリーや冷凍ケーキ等の冷凍菓子等が挙げられる。
【0058】
4. 本発明の培養培地製造方法
本発明の培養培地製造方法は、メラノイジン及び澱粉を含む培養培地の製造方法であって、以下の工程i)及びii)を含む。
i)メラノイジン及び澱粉を混合する工程
ii)前記工程i)により得られた混合物を加熱する工程
【0059】
工程i)は、好ましくは、メラノイジン及び澱粉をさらに培養培地原料と混合する工程である。工程i)において、メラノイジン及び澱粉の混合方法としては、特に制限されず、メラノイジン及び澱粉を同時に培養培地原料に添加してもよく、メラノイジン及び澱粉をそれぞれ別々に培養培地原料に添加してもよい。
【0060】
工程ii)の加熱工程は、本発明の培養培地製造方法により得られる培養培地への凍結耐性を付与する場合がある。
【0061】
工程ii)における加熱温度は、70~120℃であることが好ましく、80~115℃であることがより好ましく、90~110℃であることがさらに好ましい。
【0062】
工程ii)における加熱は、上記の範囲内の温度であれば、特に制限されないが、例えば湯煎、電子レンジ等により行うことができる。
【0063】
5. 本発明の冷凍食品製造方法
本発明の冷凍食品製造方法は、以下の工程1A)又は1B)、及び工程2)を含む。
1A)メラノイジン及び澱粉を食品に添加する工程;又は
1B)メラノイジン及び澱粉を食材に添加し、食品を得る工程
2)前記食品を冷凍する工程
【0064】
本発明の製造方法において、工程1A)及び/又は1B)をまとめて「工程1)」ということがある。
【0065】
本発明の製造方法により得られる冷凍食品としては、特に制限されないが、例えば、上述の冷凍食品が挙げられる。
【0066】
本発明の製造方法におけるメラノイジン及び澱粉の添加方法としては、特に制限されず、メラノイジン及び澱粉を同時に食品に添加してもよく、メラノイジン及び澱粉をそれぞれ別々に食品に添加してもよい。また、メラノイジン及び澱粉を食材に添加して食品を得てもよく、澱粉を混合した食材はメラノイジンを含む溶液に浸漬し食品を得てもよい。
【0067】
工程2)における冷凍方法は、特に制限されないが、-30℃以下で急速凍結することが好ましい。
【0068】
本発明の製造方法により得られる冷凍食品は、食材への風味付け、保存性向上等の目的のため、食材、メラノイジン及び澱粉以外の他の成分を含んでいてもよく、他の成分としては例えば上述する他の成分が挙げられる。
【0069】
他の成分は、工程1)及び/又は工程2)のいずれの工程で食品又は食材に添加してもよく、工程1)又は工程2)の前後に他の成分を食品又は食材に添加する工程を設けてもよい。
【0070】
本発明の冷凍食品製造方法は、凍結耐性を付与する観点から、工程1)及び工程2)の間に食品を加熱する工程を含んでいてもよい。当該工程を含む場合、当該加熱温度は、70~120℃であることが好ましく、80~115℃であることがより好ましく、90~110℃であることがさらに好ましい。
【実施例0071】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
実施例1:味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響の検証
味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響を調べるため、味噌抽出物及び澱粉を含む培地を調整し、冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量を測定した。また、冷凍した培地を解凍した後の培地の表面を観察した。
【0073】
<味噌抽出物(ME)の調製>
50mlのコニカルチューブに10gの味噌(米味噌)と40mlの蒸留水を加え、100℃で30分加熱した。加熱後の溶液に対して12,000rpmで15分の遠心分離処理を3回及びろ過(No.5のろ紙を使用)を実施して、最終的に固形分の濃度が1mg/mlの味噌抽出物となるように調製した。
【0074】
<培地の調製(電子レンジ処理)>
・ブイヨン培地 3.0g
・寒天 1.5g
・澱粉 1.0g
・味噌抽出物(ME)、又は味噌抽出物(0.1mg/ml)とウシコラーゲンペプチド(1.0mg/ml)となるように調製した混合物(PM)100μl(最終濃度0.1%(v/v))又は10μl(最終濃度0.01%(v/v))
上記の成分を脱イオン水 100mlに添加し、攪拌した。その後、電子レンジ600Wで1分間加熱後に、ガラス棒で攪拌後、再度600Wで30秒間加熱し、攪拌した。アルミシャーレ(5cm直径)6枚に分注し、粗熱を取り、固化するまで室温で静置した。固化後に各アルミシャーレの重量を測定した。
【0075】
<培地の冷凍及び解凍>
上記の方法で調整した培地を、蓋をせずにフリーザーバッグ(Ziploc(登録商標))に入れて冷凍庫-20℃に保管した。1週間冷凍保存後に、フリーザーバッグから出して蓋をし、蓋が下になるように室温で静置した。解凍後、蓋の内側に付着したドリップをピペットで吸い取り、秤量した。その後、培地の重量を測定し、凍結融解前後の重量変化を算出した。
【0076】
冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量を測定した結果を表1に示す。
【表1】
【0077】
0.1%の味噌抽出物又は味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物、及び澱粉を含む培地(ME 0.1%及びPM 0.1%)では、これらを添加していない培地に比べて重量変化が小さく、ドリップが発生しなかった。
【0078】
解凍後の培地の表面の様子を
図1に示す。0.1%の味噌抽出物又は味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物、及び澱粉を含む培地(ME 0.1%及びPM 0.1%)では、これらを添加していない培地に比べて表面が滑らかであった。
【0079】
これらの結果から、味噌抽出物及び澱粉が、冷凍した培地の品質維持に有効であることが分かった。
【0080】
実施例2:澱粉の種類が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響の検証
澱粉の種類が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響を調べるため、澱粉の種類を変えて実施例1と同様の方法で培地を調整し、冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量を測定した。培地の調製には、バレイショ、トウモロコシ、米、小麦、又はキャッサバ芋を原料とする澱粉、及び味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物(最終濃度0.1%(v/v))を用いた。
【0081】
【0082】
バレイショ、トウモロコシ、又はキャッサバ芋を原料とする澱粉を含む培地では、これらを添加していない培地に比べて重量変化が小さく、ドリップ量が減少した。特に、バレイショ、又はキャッサバ芋を原料とする澱粉を含む培地で上記の傾向が強かった。
【0083】
実施例3:培地の調製方法が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響の検証
培地の調製方法が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響を調べるため、電子レンジ及び/又はオートクレーブで処理した培地を調整し、冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量を測定した。電子レンジで処理した培地の調製は、実施例1と同様の方法で行った。また、いずれの処理においても、バレイショを原料とする澱粉、及び味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物(最終濃度0.1%(v/v))を用いた。
【0084】
<培地の調製(オートクレーブ処理)>
・ブイヨン培地 3.0g
・寒天 1.5g
・澱粉 1.0g
・味噌抽出物(0.1mg/ml)とウシコラーゲンペプチド(1.0mg/ml)との体積比1:1の混合物 100μl(最終濃度0.1%(v/v))
上記の成分を脱イオン水 100mlに添加し、攪拌した。その後、オートクレーブ処理し(121℃、15分間)、アルミシャーレ(5cm直径)6枚に分注し、粗熱を取り、固化するまで室温で静置した。固化後に、各アルミシャーレの重量を測定した。
【0085】
<ブイヨン培地(pH7.0)の組成>
・肉エキス 5.0g
・ペプトン 15.0g
・塩化ナトリウム 5.0g
・リン酸一水素カリウム 5.0g
・脱イオン水 1L
【0086】
<培地の調製(電子レンジ及びオートクレーブ処理)>
脱イオン水100mlに澱粉1gと味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物100μl(最終濃度0.1%(v/v))を添加し、電子レンジ600Wで1分間加熱処理した。ブイヨン3.0g、寒天1.5gを添加し、オートクレーブ処理(121℃、15分間)した。アルミシャーレ(5cm直径)6枚に分注し、粗熱を取り、固化するまで室温で静置した。固化後に、各アルミシャーレの重量を測定した。
【0087】
【0088】
電子レンジ処理した培地では、オートクレーブ処理、又は電子レンジ及びオートクレーブ処理した培地に比べて重量変化が小さく、ドリップが発生しなかった。
【0089】
実施例4:澱粉の添加量が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響の検証
澱粉の添加量が冷凍及び解凍後の培地の品質に与える影響を調べるため、澱粉の添加量を変えて実施例1と同様の方法で培地を調整し、冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量を測定した。実験には、バレイショを原料とする澱粉、及び最終濃度0.1%の味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物を用いた。
【0090】
結果を
図2に示す。澱粉量が0.5g/100mlの場合に最も重量変化が小さく、ドリップ量が少なかった。
【0091】
実施例5:味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後の各種培地の品質に与える影響の検証
味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後の各種培地の品質に与える影響を調べるため、培地の種類を変えて実施例1と同様の方法で培地を調整、冷凍し、解凍時に発生したドリップ量を測定した。実験には、以下に組成を示すLB培地、TSB培地、BL培地、BCP培地、PDA培地、及びVRB培地を用いた。また、バレイショを原料とする澱粉、及び最終濃度0.1%の味噌抽出物とウシコラーゲンペプチドとの混合物を用いた。
【0092】
<LB培地(pH7.0)の組成>
・バクトトリプトン 2.0g
・酵母エキス 1.0g
・塩化ナトリウム 2.0g
・脱イオン水 1L
【0093】
<TSB培地(pH7.0)の組成>
・トリプトン 15.0g
・大豆ペプトン 5.0g
・塩化ナトリウム 5.0g
・脱イオン水 1L
【0094】
<BL培地(pH7.2)の組成>
・肉エキス 2.4g
・プロテオーゼペプトン 10.0g
・ペプトン 5.0g
・大豆ペプトン 3.0g
・酵母エキス 5.0g
・肝臓エキス 3.2g
・ブドウ糖 10.0g
・溶性澱粉 0.5g
・リン酸二水素カリウム 1.0g
・リン酸一水素カリウム 1.0g
・硫酸マグネシウム(7水和物) 0.2g
・硫酸第一鉄(7水和物) 0.01g
・塩化ナトリウム 0.01g
・硫酸マンガン 0.007g
・消泡剤(シリコン) 0.2g
・ポリソルベート80 1.0g
・L-システイン塩酸塩 0.5g
・寒天 15.0g
・脱イオン水 1L
【0095】
<BCP培地(pH7.0)の組成>
・酵母エキス 2.5g
・ぺプトン 5.0g
・ブドウ糖 1.0g
・ポリソルベート80 1.0g
・L-システイン 0.1g
・プロムクレゾールパープル 0.06g
・寒天 15.0g
・脱イオン水 1L
【0096】
<PDA培地(pH5.6)の組成>
・ポテト滲出液末 200.0g
・ブドウ糖 20.0g
・寒天 15.0g
・脱イオン水 1L
【0097】
<VRB培地(pH7.0)の組成>
・酵母エキス 3.0g
・ペプトン 7.0g
・乳糖 10.0g
・塩化ナトリウム 5.0g
・胆汁酸塩 1.5g
・ニュートラルレッド 0.03g
・寒天 15.0g
・脱イオン水 1L
【0098】
結果を
図3に示す。いずれの培地においても、味噌抽出物及び澱粉を添加した場合、これらを添加しない場合に比べて解凍時に生じるドリップ量が少なかった。
【0099】
実施例6:メラノイジン及び澱粉が冷凍及び解凍後の各種培地の品質に与える影響の検証
メラノイジンは、過冷却促進作用を有し、味噌の加工や貯蔵の際に生成されることが知られている。そこで、味噌抽出物及び澱粉による冷凍及び解凍後の培地の品質保持にメラノイジンが関与する可能性を検証するため、味噌抽出物をメラノイジンに変えて実施例1と同様の方法で培地を調整し、冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量を測定した。実験には、バレイショを原料とする澱粉を用いた。
【0100】
【0101】
メラノイジンのみを添加した培地の冷凍前及び解凍後の培地の重量変化、並びに、解凍時に発生したドリップ量は、ブランクの培地のそれらと同程度であった。一方で、メラノイジン及びバレイショ澱粉を含む培地では、ブランクの培地に比べて冷凍前及び解凍後の培地の重量変化が小さく、解凍時に発生したドリップ量も少なかった。
【0102】
この結果から、メラノイジン及び澱粉が、冷凍した培地の品質維持に有効であることが分かった。
【0103】
実施例7:味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後のうどんの品質に与える影響の検証
味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後のうどんの品質に与える影響を調べるため、小麦粉100%のうどん、及び、小麦粉の一部をバレイショ澱粉に置き換え、味噌抽出物を添加して作製したうどんをそれぞれ作製し、冷凍前及び解凍後の水分含量、白色度、並びに破断荷重を測定した。
【0104】
<冷凍うどんの作製>
小麦粉400g、又は小麦粉360g、バレイショ澱粉40g、及び味噌抽出物4mlに水144mlを加え、ヌードルメーカー(HR2365/01、フィリップス社製)を用いてうどんを作製した。作製したうどんをフリーザーバッグに入れて、-30℃で急速冷凍した。その後、-20℃で1週間冷凍保存した。冷凍したうどんを室温で自然解凍し、冷凍前及び解凍後の水分含量、白色度、及び破断荷重を測定した。
【0105】
<水分含量の測定>
水分含量は加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて測定した。
【0106】
<白色度の測定>
白色度は、分光測式計(コニカミノルタ製)を用いて色彩色差を測定し、算出した。
【0107】
<破断荷重の測定>
破断荷重は、テクスチャー試験機(日本計測システム株式会社製)を用いて測定した。
【0108】
冷凍前及び解凍後のうどんの水分含量及び白色度を測定した結果を表5に示す。
【表5】
【0109】
冷凍前及び解凍後のうどんの破断荷重を測定した結果を
図4に示す。味噌抽出物及び澱粉を含む冷凍うどんは、これらを含まない冷凍うどんに比べて冷凍前及び解凍後のいずれにおいても破断荷重の低下が抑制された。
【0110】
これらの結果から、味噌抽出物及び澱粉を含む冷凍うどんは、これらを含まない冷凍うどんに比べて冷凍前の品質により近い品質を維持できることが分かった。
【0111】
実施例8:味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後の米麺の品質に与える影響の検証
味噌抽出物及び澱粉が冷凍及び解凍後の米麺の品質に与える影響を調べるため、米粉及びバレイショ澱粉から作製したうどん、並びに、米粉、バレイショ澱粉、及び味噌抽出物から作製したうどんを用意し、冷凍前及び解凍後の水分含量、白色度、解凍時間を測定し、食感を調べた。
【0112】
<冷凍米麺の作製>
米粉200g及びバレイショ澱粉50gにお湯150mlを混合して、ヌードルメーカー(HR2365/01、フィリップス社製)を用いて麺を作製した。味噌抽出物を加える場合は、味噌抽出物2.5mlをお湯の中に加えて、上記と同様に麺を作製した。お湯で1分間茹でた後に、袋に入れ、-30℃まで急速冷凍した。その後、-20℃で1週間冷凍保存した。冷凍米麺を冷凍庫から取り出し、湯煎で解凍した。このとき麺がほぐれるまでに要した時間を解凍時間として測定した。水分含量及び白色度は実施例6と同様の方法で測定した。
【0113】
冷凍前及び解凍後のうどんの水分含量及び白色度を測定した結果を表6に示す。
【表6】
【0114】
味噌抽出物を加えた冷凍米麺は解凍時間が5分であったのに対して、味噌抽出物を加えなかった冷凍米麺は解凍時間が8分であった。また、味噌抽出物を加えた冷凍米麺はぷりぷりとしたコシのある食感であったのに対して、味噌抽出物を加えなかった冷凍米麺はふやけた米のようなコシのない食感であった。