(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000582
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】情報処理システム、特定システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16B 40/00 20190101AFI20231226BHJP
【FI】
G16B40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099319
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】518282440
【氏名又は名称】aiwell株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206405
【弁理士】
【氏名又は名称】岸 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宣宏
(72)【発明者】
【氏名】ウォン シン ギン
(57)【要約】
【課題】複数の生体分子を用いて生体の状態を特定する。
【解決手段】情報処理システムは、一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する取得手段と、複数の生体分子のうちの、分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じて、一の生体の状態を特定する特定手段と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する取得手段と、
前記複数の生体分子のうちの、前記分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じて、前記一の生体の状態を特定する特定手段と、
を備える、情報処理システム。
【請求項2】
前記対象は、生体分子のうちの前記条件を満たす部分である請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記分子情報には、生体分子の物理量に応じて分けられた複数の区分の各々における生体分子に関する情報が含まれ、
前記条件は、前記複数の区分の各々について定められている請求項1記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記分子情報には、前記複数の区分の各々における複数の時点での生体分子の存在に関する情報が含まれ、
前記複数の区分には、前記複数の時点のうちの少なくとも一の時点において前記一の生体の生体分子が存在していない区分が含まれる請求項3記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記複数の生体分子には、第1生体分子と、当該第1生体分子とは異なる第2生体分子とが含まれ、
前記特定手段は、前記一の生体における前記第1生体分子の特定の対象と前記第2生体分子の特定の対象とが何れも前記条件を満たすことに応じて、前記状態を特定することを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記第1生体分子の前記対象における特定の物理量の増加が前記条件を満たし、
前記第2生体分子の前記対象における前記物理量の減少が前記条件を満たす請求項5記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記複数の生体分子には、前記第1生体分子および前記第2生体分子の何れとも異なる第3生体分子がさらに含まれ、
前記特定手段は、
前記一の生体の前記第1生体分子の前記対象および前記第2生体分子の前記対象が前記条件を満たし且つ前記第3生体分子の特定の対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を第1状態に特定し、
前記一の生体の前記第1生体分子の前記対象および前記第3生体分子の前記対象が前記条件を満たし且つ前記第2生体分子の前記対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を第2状態に特定する請求項5記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記特定手段は、前記一の生体における前記複数の生体分子のうちの特定の生体分子の第1部分と第2部分とが何れも前記条件を満たすことに応じて、前記状態を特定することを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記第1部分の特定の物理量の増加が前記条件を満たし、
前記第2部分の前記物理量の減少が前記条件を満たす請求項8記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記分子情報には、前記一の生体に特定の作用が働く前から当該作用が働いた以降への時間の経過に伴う生体分子の状態の特定が可能である情報が含まれ、
前記特定手段は、
前記複数の生体分子のうちの特定の生体分子における特定の対象が前記条件を満たす場合に、前記状態を前記作用に係る第1状態に特定し、
前記特定の生体分子における前記対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を前記作用に係る第2状態に特定する請求項1記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記複数の生体分子には、第1生体分子と、当該第1生体分子とは異なる第2生体分子とが含まれ、
前記特定の生体分子は、第1生体分子であり、
前記特定手段は、
前記第1生体分子における前記対象が前記条件を満たし、且つ、前記第2生体分子における特定の対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を前記第1状態に特定し、
前記第1生体分子における前記対象が前記条件を満たさずに前記第2生体分子における前記対象が前記条件を満たす場合に、前記状態を前記第2状態に特定する請求項10記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記複数の生体分子には、第1生体分子と、当該第1生体分子とは異なる第2生体分子とが含まれ、
前記特定の生体分子は、前記第1生体分子であり、
前記特定手段は、
前記第1の生体分子における前記対象および前記第2生体分子における特定の対象が何れも前記条件を満たす場合に、前記状態を前記第1状態に特定し、
前記第1の生体分子における前記対象が前記条件を満たさずに前記第2生体分子における前記対象が前記条件を満たす場合に、前記状態を前記第1状態に特定する請求項10記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記分子情報には、第1期間における生体分子の変化の特定が可能な情報と、前記第1期間よりも後の第2期間における生体分子の変化の特定が可能な情報とが含まれ、
前記特定手段は、前記第1期間における前記変化について前記条件を満たす生体分子の対象と、前記第2期間における前記変化について前記条件を満たす生体分子の対象とに応じて、前記状態を特定する請求項1記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記第1期間における前記変化について前記条件を満たす前記対象は、前記第2期間における前記変化について前記条件を満たす前記対象と同じである請求項13記載の情報処理システム。
【請求項15】
一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する取得手段と、
前記一の生体の状態に関して、前記分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じた情報を出力する出力手段と、
を備える、情報処理システム。
【請求項16】
生体の状態を特定する特定システムであって、
前記生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する分子情報取得手段と、
生体の状態について区分けされた複数の項目のうちの、前記特定システムに特定される対象の項目に関する項目情報を取得する項目情報取得手段と、
前記項目情報から特定される項目に応じて定められる生体分子の対象について前記分子情報から特定される変化に応じて、前記状態を特定する特定手段と、
を備える、特定システム。
【請求項17】
コンピュータに、
一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する機能と、
前記複数の生体分子のうちの、前記分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じて、前記一の生体の状態を特定する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、特定システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)をAIV抗体検出抗原として用いるインフルエンザ感染検査薬および検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予め定められた一の生体分子が生体から検出された場合に、この生体が特定の状態であると診断する技術が存在する。しかしながら、この場合、予め定められた一の生体分子とは異なる生体分子に基づいて生体の状態を特定することができず、複数の生体分子を用いて生体の状態を特定することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、複数の生体分子を用いて生体の状態を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する取得手段と、前記複数の生体分子のうちの、前記分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じて、前記一の生体の状態を特定する特定手段と、を備える、情報処理システムである。
請求項2に記載の発明は、前記対象は、生体分子のうちの前記条件を満たす部分である請求項1記載の情報処理システムである。
請求項3に記載の発明は、前記分子情報には、生体分子の物理量に応じて分けられた複数の区分の各々における生体分子に関する情報が含まれ、前記条件は、前記複数の区分の各々について定められている請求項1記載の情報処理システムである。
請求項4に記載の発明は、前記分子情報には、前記複数の区分の各々における複数の時点での生体分子の存在に関する情報が含まれ、前記複数の区分には、前記複数の時点のうちの少なくとも一の時点において前記一の生体の生体分子が存在していない区分が含まれる請求項3記載の情報処理システムである。
請求項5に記載の発明は、前記複数の生体分子には、第1生体分子と、当該第1生体分子とは異なる第2生体分子とが含まれ、前記特定手段は、前記一の生体における前記第1生体分子の特定の対象と前記第2生体分子の特定の対象とが何れも前記条件を満たすことに応じて、前記状態を特定することを特徴とする請求項1記載の情報処理システムである。
請求項6に記載の発明は、前記第1生体分子の前記対象における特定の物理量の増加が前記条件を満たし、前記第2生体分子の前記対象における前記物理量の減少が前記条件を満たす請求項5記載の情報処理システムである。
請求項7に記載の発明は、前記複数の生体分子には、前記第1生体分子および前記第2生体分子の何れとも異なる第3生体分子がさらに含まれ、前記特定手段は、前記一の生体の前記第1生体分子の前記対象および前記第2生体分子の前記対象が前記条件を満たし且つ前記第3生体分子の特定の対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を第1状態に特定し、前記一の生体の前記第1生体分子の前記対象および前記第3生体分子の前記対象が前記条件を満たし且つ前記第2生体分子の前記対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を第2状態に特定する請求項5記載の情報処理システムである。
請求項8に記載の発明は、前記特定手段は、前記一の生体における前記複数の生体分子のうちの特定の生体分子の第1部分と第2部分とが何れも前記条件を満たすことに応じて、前記状態を特定することを特徴とする請求項1記載の情報処理システムである。
請求項9に記載の発明は、前記第1部分の特定の物理量の増加が前記条件を満たし、前記第2部分の前記物理量の減少が前記条件を満たす請求項8記載の情報処理システムである。
請求項10に記載の発明は、前記分子情報には、前記一の生体に特定の作用が働く前から当該作用が働いた以降への時間の経過に伴う生体分子の状態の特定が可能である情報が含まれ、前記特定手段は、前記複数の生体分子のうちの特定の生体分子における特定の対象が前記条件を満たす場合に、前記状態を前記作用に係る第1状態に特定し、前記特定の生体分子における前記対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を前記作用に係る第2状態に特定する請求項1記載の情報処理システムである。
請求項11に記載の発明は、前記複数の生体分子には、第1生体分子と、当該第1生体分子とは異なる第2生体分子とが含まれ、前記特定の生体分子は、第1生体分子であり、前記特定手段は、前記第1生体分子における前記対象が前記条件を満たし、且つ、前記第2生体分子における特定の対象が前記条件を満たさない場合に、前記状態を前記第1状態に特定し、前記第1生体分子における前記対象が前記条件を満たさずに前記第2生体分子における前記対象が前記条件を満たす場合に、前記状態を前記第2状態に特定する請求項10記載の情報処理システムである。
請求項12に記載の発明は、前記複数の生体分子には、第1生体分子と、当該第1生体分子とは異なる第2生体分子とが含まれ、前記特定の生体分子は、前記第1生体分子であり、前記特定手段は、前記第1の生体分子における前記対象および前記第2生体分子における特定の対象が何れも前記条件を満たす場合に、前記状態を前記第1状態に特定し、前記第1の生体分子における前記対象が前記条件を満たさずに前記第2生体分子における前記対象が前記条件を満たす場合に、前記状態を前記第1状態に特定する請求項10記載の情報処理システムである。
請求項13に記載の発明は、前記分子情報には、第1期間における生体分子の変化の特定が可能な情報と、前記第1期間よりも後の第2期間における生体分子の変化の特定が可能な情報とが含まれ、前記特定手段は、前記第1期間における前記変化について前記条件を満たす生体分子の対象と、前記第2期間における前記変化について前記条件を満たす生体分子の対象とに応じて、前記状態を特定する請求項1記載の情報処理システムである。
請求項14に記載の発明は、前記第1期間における前記変化について前記条件を満たす前記対象は、前記第2期間における前記変化について前記条件を満たす前記対象と同じである請求項13記載の情報処理システムである。
請求項15に記載の発明は、一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する取得手段と、前記一の生体の状態に関して、前記分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じた情報を出力する出力手段と、を備える、情報処理システムである。
請求項16に記載の発明は、生体の状態を特定する特定システムであって、前記生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する分子情報取得手段と、生体の状態について区分けされた複数の項目のうちの、前記特定システムに特定される対象の項目に関する項目情報を取得する項目情報取得手段と、前記項目情報から特定される項目に応じて定められる生体分子の対象について前記分子情報から特定される変化に応じて、前記状態を特定する特定手段と、を備える、特定システムである。
請求項17に記載の発明は、コンピュータに、一の生体の生体分子に関する分子情報を、複数の生体分子について取得する機能と、前記複数の生体分子のうちの、前記分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じて、前記一の生体の状態を特定する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の生体分子を用いて生体の状態を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】状態特定システムの全体構成例を示した図である。
【
図2】サーバ装置および端末のハードウェア構成例を示した図である。
【
図4】生体情報管理テーブルの一例を示した図である。
【
図5】統計作成処理の流れを示したフローチャートである。
【
図6】統計情報が作成されるまでの一例を示した図である。
【
図7】統計情報が作成されるまでの一例を示した図である。
【
図8】状態特定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図9】状態特定処理において特定された状態に関する情報が端末に出力されるまでの一例を示した図である。
【
図10】状態特定処理において特定された状態に関する情報が端末に出力されるまでの一例を示した図である。
【
図11】状態特定処理において特定された状態に関する情報が端末に出力されるまでの一例を示した図である。
【
図13】状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【
図14】状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【
図15】状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【
図16】状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【
図17】第2の実施形態の状態特定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図18】第2の実施形態の状態特定処理が行われる場合に端末の表示部に表示される画像を示した図である。
【
図19】第2の実施形態の状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【
図20】(A)は、馬から一の時点で得られた血清に含まれる各タンパク質が示された2次元電気泳動像を示した図であり、(B)は、
図20(A)の2次元電気泳動像が複数の領域に区画された状態を示す図である。
【
図21】(A)は、対象馬の体温を示した図であり、(B)は、対象馬から得られたアミロイドAの物質量を示した図である。
【
図22】各対象馬の血清に含まれる各タンパク質の物質量について算出された統計を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、状態特定システム1の全体構成例を示した図である。
情報処理システムの一例としての状態特定システム1は、生体の状態を特定するシステムである。生体としては、例えば、動物、植物、および微生物などが挙げられる。動物としては、例えば、陸生動物や水生動物などが挙げられる。また、動物には、人間も含まれる。また、植物には、農作物も含まれる。
【0010】
生体の状態としては、例えば、生体の健康の状態、生体の美容に関する状態、生体が動物である場合における生体の肉体の状態、生体が動物である場合における生体の脳の状態、生体が食物である場合における生体の品質の状態、生体が植物や微生物である場合における生体の生育の状態などが挙げられる。食物である生体としては、例えば、農作物や動物などが挙げられる。生体の健康の状態としては、例えば、生体における怪我や病気に関する状態、生体における疲労に関する状態などが挙げられる。また、生体の肉体の状態としては、例えば、生体の身長に関する状態、生体の体重に関する状態、生体の体脂肪率に関する状態、生体の筋肉量に関する状態、生体の身体に関する状態等が挙げられる。また、生体における疲労に関する状態は、生体の肉体の状態として捉えてもよい。また、生体の脳の状態としては、例えば、生体の記憶力に関する状態、生体の思考力に関する状態などが挙げられる。また、生体の品質の状態としては、例えば、生体の味に関する状態などが挙げられる。また、生体の生育の状態としては、例えば、生体における各部分または全体の大きさに関する状態、生体の色に関する状態、生体の臭いに関する状態、生体の枯れに関する状態、生体が有する細菌やウィルスに関する状態などが挙げられる。
【0011】
状態特定システム1は、サーバ装置10と、生体分子解析装置20と、端末30とを備える。サーバ装置10と、生体分子解析装置20および端末30とは、ネットワークを介して接続されている。
【0012】
サーバ装置10は、一の生体の生体分子と、この生体分子とは異なる他の生体分子とを比較し、比較の結果に基づいて、一の生体の状態を特定する。サーバ装置10が状態を特定する対象の生体を、以下では、対象生体と称することがある。また、サーバ装置10が対象生体と比較する対象の生体を、以下では、比較生体と称することがある。
サーバ装置10は、生体分子の物理量が示された情報を取得する。生体分子としては、例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチドなどが挙げられる。また、生体分子の物理量としては、生体分子の物質量、生体分子の分子量、生体分子の等電点、生体分子の電荷量などが挙げられる。等電点とは、電離後の生体分子の電荷の平均が0になるpHである。また、生体分子の物理量が示された情報には、例えば、生体分子の物理量の分布が示された情報も含まれる。なお、生体分子の物理量が示された情報を、以下では、分子情報と称することがある。また、対象生体の生体分子の物理量が示された情報を、以下では、対象分子情報と称することがある。また、比較生体の生体分子の物理量が示された情報を、以下では、比較分子情報と称することがある。
【0013】
タンパク質としては、例えば、ヘモグロビン、アルブミン、トランスフェリン、ハプトグロビン、グロブリン、リポタンパク質、ペプチドホルモン、サイトカイン、プレアルブミン、ユビキチン、ラクトアルブミン、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、トロンビン、プロトロンビン、アクチン、アシルホスファターゼ、アドレノドキシン、アビジン、アルドラーゼ、ウテログロビン、エラスターゼ、オブアルブミン、パルプアルブミン、プラストシアニン、レラクシン、ミオグロビン、レグヘモグロビン等が挙げられる。タンパク質は、血液や唾液などの体液に含まれるタンパク質であってもよい。また、タンパク質は、血清に含まれるタンパク質であってもよい。また、タンパク質は、生体の一部に含まれるタンパク質であってもよい。すなわち、タンパク質は、生体の成分に含まれるものであればよい。また、タンパク質は、上述した何れの例とも異なるタンパク質であってもよい。
アミノ酸としては、例えば、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジン等が挙げられる。アミノ酸は、血液や唾液などの体液に含まれるアミノ酸であってもよい。また、アミノ酸は、血清に含まれるアミノ酸であってもよい。また、アミノ酸は、生体の一部に含まれるアミノ酸であってもよい。すなわち、アミノ酸は、生体の成分に含まれるものであればよい。また、アミノ酸は、上述した何れの例とも異なるアミノ酸であってもよい。
【0014】
サーバ装置10は、複数の比較分子情報を取得する。この複数の比較分子情報は、一の比較生体についてそれぞれ異なる時点の生体分子が示された分子情報である。また、サーバ装置10は、この複数の時点を含む期間における比較生体の状態を、取得した複数の比較分子情報に関連付ける。サーバ装置10は、上述した、複数の比較分子情報の取得、および比較生体の状態の複数の比較分子情報への関連付けを、比較生体ごとに行う。これにより、サーバ装置10には、生体の状態が関連付けられた複数の比較分子情報が、比較生体ごとに記憶される。
また、サーバ装置10は、複数の対象分子情報を取得する。この複数の対象分子情報は、一の対象生体についてそれぞれ異なる時点の生体分子が示された分子情報である。
【0015】
サーバ装置10は、複数の対象分子情報から、時間の経過に伴う生体分子の変化を検出する。また、サーバ装置10は、検出した生体分子と、比較分子情報に示された生体分子とを比較することで、サーバ装置10に記憶されている比較分子情報のうちの、対象生体について検出した生体分子の変化に対応する生体分子の変化が示された比較分子情報を抽出する。そして、抽出した比較分子情報に関連付けられている比較生体の状態を、対象生体の状態として特定する。さらに、サーバ装置10は、特定した状態に関する情報を、端末30に出力する。
【0016】
サーバ装置10は、例えば、コンピュータにより実現される。サーバ装置10は、単一のコンピュータにより構成しても良いし、複数のコンピュータによる分散処理により実現しても良い。また、サーバ装置10は、クラウドコンピューティングにより提供される仮想的なハードウェア上にて実現してもよい。
【0017】
生体分子解析装置20は、生体から採取された成分に含まれる生体分子を解析する。より具体的には、生体分子解析装置20は、生体から採取された成分に含まれる生体分子を解析することで、生体分子の分布を検出する。生体分子解析装置20としては、例えば、2次元電気泳動装置が用いられる。この2次元電気泳動装置は、生体から採取された成分に含まれる生体分子の各々を分子量ごとに分離するとともに等電点ごとに分離することで、生体分子の各々の分子量の分布と等電点の分布とが示された2次元電気泳動像を作成する。2次元電気泳動像においては、例えば、x軸に生体分子の等電点の分布が示され、y軸に生体分子の分子量の分布が示された2次元直交座標系で、生体分子を示す画像を構成する画素が配置された位置が定義されている。すなわち、2次元電気泳動像においては、生体分子が存在するか否かを示す情報が画素の座標ごとに書き込まれている。この2次元電気泳動像は、分子情報の一例として捉えられる。また、2次元電気泳動像のように、生体分子の分布が示された情報を、以下では、分布情報と称することがある。また、対象生体の生体分子の分布が示された情報を、以下では、対象分布情報と称することがある。また、比較生体の生体分子の分布が示された情報を、以下では、比較分布情報と称することがある。
また、2次元電気泳動像には、生体分子の物質量の分布を示す情報が含まれる。すなわち、生体分子の分布には、生体分子の分子量の分布、生体分子の等電点の分布、生体分子の存在の分布、生体分子の物質量の分布が含まれる。2次元電気泳動像において生体分子の物質量を示す情報は、例えば、生体分子を示す画像の濃淡によって表示されてもよい。一例を挙げると、2次元電気泳動像において生体分子を示す画像の濃度が高いほど、生体分子の物質量が多いことを示してもよい。
【0018】
また、生体分子解析装置20として、例えば、バイオセンサが用いられてもよい。このバイオセンサは、生体における生体分子を識別する。また、バイオセンサは、識別した生体分子を分子量ごとに分離するとともに等電点ごとに分離し、生体分子の分子量の分布および等電点の分布が示された画像を作成する。そのため、バイオセンサを用いて作成される画像も、分布情報として捉えられる。さらに、バイオセンサに作成される画像に、生体分子の物質量の分布を示す情報が含まれてもよい。
【0019】
本実施形態では、状態特定システム1のユーザが、生体分子解析装置20を用いて、一の期間における複数の時点で得られた比較生体の成分を解析して、この成分に含まれる各生体分子の分布が示された複数の時点ごとの比較分布情報をそれぞれ作成する。この複数の時点は、それぞれ、比較生体が何れの状態であったかが特定されている時点である。また、一の期間とは、複数の時点での比較生体の状態を包括する状態が特定されている期間である。比較生体についての複数の時点での個々の状態を、以下では、個々状態と称することがある。また、複数の時点での個々状態を包括する比較生体の状態を、以下では、包括状態と称することがある。包括状態としては、例えば、比較生体がインフルエンザである状態が挙げられる。また、個々状態としては、例えば、インフルエンザである比較生体において、インフルエンザウイルスに感染した状態や、発熱した状態等が挙げられる。
また、ユーザは、生体分子解析装置20を用いて、比較生体ごとに、生体分子を含む比較生体の成分が得られた時点がそれぞれ異なる複数の比較分布情報を作成する。これにより、個々状態であった複数の時点での生体分子がそれぞれ示された複数の比較分布情報が、比較生体ごとに作成される。
【0020】
特に、本実施形態では、ユーザは、生体分子解析装置20を用いて、包括状態および個々状態が互いに同じである複数の比較生体について、個々状態であった時点ごとに得られた生体分子を解析して、比較分子情報を作成する。
また、ユーザは、生体分子解析装置20を用いて、複数の時点で得られた対象生体の成分を解析して、この成分に含まれる各生体分子の分布が示された複数の時点ごとの対象分布情報をそれぞれ作成する。この複数の時点は、状態特定システム1が対象生体の状態を特定する対象の時点である。
【0021】
生体分子解析装置20は、分布情報を作成すると、作成した分布情報を、分布情報から特定される生体分子が得られた日時を示す日時情報、および、分布情報が示す生体分子を有した生体を示す生体情報とともに、サーバ装置10へ送信する。なお、生体分子を「有した」生体には、対象の生体分子を有している生体のみならず、生体から対象の生体分子が採取されたことにより生体がこの対象の生体分子を有しなくなったものの採取されるまでこの対象の生体分子を有していた生体も含まれる。
【0022】
なお、生体分子解析装置20は、生体から採取された成分に含まれる各生体分子を解析するものに限定されない。例えば、生体から生体分子を含む成分を採取することなく、生体分子解析装置20が生体における各生体分子を解析して分布情報を作成可能である場合には、このような生体分子解析装置20を用いてもよい。
【0023】
端末30は、情報を表示する表示部31を有する。端末30は、サーバ装置10から情報を取得すると、取得したこの情報を表示部31に表示する。
端末30は、例えば、コンピュータ、タブレット型情報端末、その他の情報処理装置により実現される。端末30は、例えば、スマートフォンであってもよい。すなわち、端末30は、何れの種類の端末であってもよい。
【0024】
サーバ装置10と生体分子解析装置20および端末30との接続に用いられるネットワークは、データの送受信が可能であれば、その種類は特に限定されず、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等として良い。データの送受信に用いられる通信回線は、有線であっても無線であっても良い。また、複数のネットワークや通信回線を介して各装置を接続する構成としても良い。
【0025】
<ハードウェア構成例>
図2は、サーバ装置10および端末30のハードウェア構成例を示した図である。
図2に示すように、サーバ装置10および端末30は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)10aと、主記憶手段であるメモリ10cとを備える。また、各装置は、外部デバイスとして、不揮発性記録デバイス10g、ネットワークインターフェイス10f、表示機構10d、音声機構10h、キーボードやマウス等の入力デバイス10i等を備える。
【0026】
メモリ10cおよび表示機構10dは、システムコントローラ10bを介してCPU10aに接続されている。また、ネットワークインターフェイス10f、不揮発性記録デバイス10g、音声機構10hおよび入力デバイス10iは、ブリッジコントローラ10eを介してシステムコントローラ10bと接続されている。各構成要素は、システムバスや入出力バスなどの各種のバスによって接続される。
【0027】
不揮発性記録デバイス10gには、各機能を実現するためのプログラムが格納されている。そして、このプログラムがメモリ10cにロードされ、このプログラムに基づく処理がCPU10aにより実行されることで、各種の機能が実現される。不揮発性記録デバイス10gとしては、例えば、SSD(Solid State Drive)等の半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク装置などが挙げられる。
【0028】
<サーバ装置の機能構成>
次に、サーバ装置10の機能構成について説明する。
図3は、サーバ装置10の機能構成例を示した図である。
サーバ装置10は、情報取得部101と、記憶部102と、領域識別部103と、区画部104と、物質量特定部105と、統計部106と、検出部107と、対象決定部108と、状態特定部109と、出力部110とを備える。
【0029】
取得手段の一例としての情報取得部101は、生体分子解析装置20から分布情報を取得する。より具体的には、情報取得部101は、対象分布情報または比較分布情報からなる分布情報を、日時情報および生体情報とともに取得する。また、情報取得部101は、比較生体の状態を示す情報を取得する。比較生体の状態を示す情報を、以下では、状態情報と称することがある。また、比較生体の個々状態を示す情報を、以下では、個々状態情報と称することがある。また、比較生体の包括状態を示す情報を、以下では、包括状態情報と称することがある。
状態特定システム1のユーザは、比較分布情報に対応する個々状態情報を、比較分布情報ごとに端末30に入力する。比較分布情報に対応する個々状態情報とは、個々状態のうちの、比較分布情報に示された生体分子が得られた時点における状態を示す情報である。また、ユーザは、複数の比較分布情報に対応する包括状態情報を端末30に入力する。複数の比較分布情報に対応する包括状態情報とは、複数の比較分布情報に示された生体分子が得られた複数の時点を含む期間における包括状態を示す情報である。
【0030】
情報取得部101は、比較分布情報および状態情報を取得すると、取得した状態情報を、この状態情報に対応する比較分布情報に関連付けて記憶部102に記憶させる。
本実施形態では、上述の通り、包括状態および個々状態が互いに同じである複数の比較生体について、個々状態であった時点ごとの比較分子情報が作成される。そのため、それぞれ異なる比較生体に係る比較分布情報であっても、これらの比較分子情報には、同一の内容の個々状態を示す個々状態情報や、同一の内容の包括状態を示す包括状態情報が関連付けられる。なお、情報取得部101は、分子情報を取得する分子情報取得手段としても捉えられる。
【0031】
記憶部102は、情報取得部101に取得された分布情報、日時情報、生体情報、状態情報等を記憶する。なお、記憶部102の記憶内容については、後に詳述する。
【0032】
領域識別部103は、分布情報において生体分子が存在する領域を識別する。領域識別部103は、対象分布情報および比較分子情報の何れも、領域を識別する対象にする。
分布情報において生体分子が存在する領域の領域識別部103による識別の手法の一例を説明する。領域識別部103は、分布情報において生体分子が示された画像を検出するとともに、検出した画像が示された座標を特定することにより、生体分子が存在する領域を識別する。
分布情報において複数の生体分子が存在する場合、領域識別部103は、存在する生体分子ごとに、生体分子が存在する領域を識別する。また、領域識別部103は、分布情報ごとに、生体分子が存在する領域を識別する。領域識別部103は、対象の分布情報において生体分子が存在する領域を識別すると、識別した領域を示す領域情報を、対象の分布情報に関連付ける。
【0033】
区画部104は、分布情報において生体分子が存在する領域を区画する。より具体的には、区画部104は、領域識別部103に作成された領域情報に基づいて、分子情報において生体分子が存在する領域を区画する。また、区画部104は、分布情報ごとに、生体分子が存在する領域を区画する。なお、区画部104は、分子情報において一の生体分子が存在する領域を、一の領域に区画してもよいし、複数の領域に分割して区画してもよい。また、区画部104は、分布情報において生体分子が存在しない領域を区画してもよい。なお、区画部104に区画された領域を、以下では、区画領域と称することがある。
区画部104は、対象分布情報および比較分子情報の何れも、領域を区画する対象にする。
【0034】
物質量特定部105は、分布情報に示された生体分子の物質量を特定する。より具体的には、物質量特定部105は、分布情報における区画領域に含まれる生体分子の物質量を、区画領域ごとに特定する。物質量特定部105は、分布情報における対象の区画領域に含まれる生体分子の物質量を特定すると、特定した物質量を示す物質量情報を、対象の区画領域に関連付ける。
物質量特定部105は、対象分布情報および比較分子情報の何れも、生体分子の物質量を特定する対象にする。
【0035】
統計部106は、同一の個々状態情報が関連付けられた比較分布情報の各々に示された生体分子の物質量の統計を算出する。
統計部106は、記憶部102に記憶されている比較分布情報のうちの、同一の個々状態情報が関連付けられた比較分布情報を抽出する。そして、統計部106は、抽出した比較分布情報の各々において区画領域に含まれる生体分子の物質量の統計を、区画領域ごとに算出する。より具体的には、統計部106は、抽出した比較分布情報の各々において座標が同一である区画領域に含まれる生体分子の物質量の統計を、この区画領域に関連付けられた物質量情報に基づいて算出する。また、統計部106は、同一の個々状態情報が関連付けられた比較分布情報ごとに、生体分子の物質量の統計を算出する。これにより、個々状態ごとに、生体分子の物質量の統計が算出される。
【0036】
統計部106は、統計の対象である生体分子の物質量の平均値を算出することで、生体分子の物質量の統計を算出してもよい。また、統計部106は、統計の対象である生体分子の物質量の中央値を算出することで、生体分子の物質量の統計を算出してもよい。このように、統計部106による統計の手法としては、何れの手法が用いられてもよい。
また、統計部106は、一の包括状態に包括された個々状態ごとに生体分子の物質量の統計を算出すると、算出した各統計を、それぞれ対応する個々状態情報に関連付ける。これにより、統計部106に算出された統計を示す情報が個々状態ごとに作成される。個々状態ごとの統計部106に算出された統計を示す情報を、以下では、統計情報と称することがある。統計部106は、作成した統計情報を、この統計情報の対象である区画領域を識別する区画領域情報に関連付けて、記憶部102に記憶させる。
なお、統計情報は、統計された生体分子の物質量が示された情報である。そのため、統計情報も、広義には、分子情報として捉えられる。
【0037】
検出部107は、対象生体の生体分子の変化を検出する。
検出部107は、二つの対象分布情報に係る物質量情報に基づいて、この二つの対象分布情報に示された生体分子の物質量を比較する。この二つの対象分布情報は、対象生体から異なる時点に得られた生体分子がそれぞれ示された分布情報である。なお、比較の対象である二つの対象分布情報のうちの、得られた時点が早い生体分子が示された対象分布情報を、以下では、前期分布情報と称することがある。また、比較の対象である二つの対象分布情報のうちの、得られた時点が遅い生体分子が示された対象分布情報を、以下では、後期分布情報と称することがある。また、比較の対象になる対象生体分子は、二つの対象分布情報において座標が同一である区画領域に含まれる生体分子である。
【0038】
検出部107は、比較の対象である生体分子が変化条件を満たすか否かを判定する。変化条件は、対象生体の状態の変化に伴う生体分子の変化を検出するために定められた条件である。本実施形態では、比較の対象である二つの生体分子の物質量の差が予め定められた値以上であることが、変化条件として定められている。検出部107は、変化条件を満たす二つの生体分子を、物質量が変化した生体分子として検出する。なお、変化条件を満たすものとして検出部107に検出された二つの生体分子を、以下では、検出分子と称することがある。また、検出部107に検出された二つの生体分子の物質量の差を、以下では、検出値と称することがある。
なお、複数の区画領域において生体分子が変化条件を満たす場合、検出部107は、この複数の区画領域における生体分子を何れも検出する。
【0039】
対象決定部108は、記憶部102に記憶されている統計情報のうちの、検出分子と比較する対象の統計情報を決定する。
対象決定部108は、検出分子が示された区画領域と座標が同一である区画領域を対象とする統計情報を、検出分子と比較する対象の統計情報に決定する。対象決定部108は、統計情報に関連付けられた区画領域情報を参照し、検出分子が示された区画領域と座標が同一である区画領域を対象とする統計情報を抽出する。また、複数の区画領域において検出分子が検出されている場合、対象決定部108は、検出分子ごとに、比較の対象にする統計情報を決定する。なお、検出分子との比較の対象として対象決定部108に決定された統計情報を、以下では、比較統計情報と称することがある。
【0040】
特定手段の一例としての状態特定部109は、対象生体の状態を特定する。
状態特定部109は、比較統計情報に示された生体分子のうちの、同一類似条件を満たす生体分子を抽出する。同一類似条件は、検出分子についての検出値が示す生体分子の物質量の変化と同一または類似する生体分子の変化を特定するために定められた条件である。本実施形態では、比較統計情報に示された生体分子の物質量の変化と、検出値が示す生体分子の物質量の変化と、が同一または類似であることが、同一類似条件として定められている。また、同一類似条件の一例としては、比較統計情報に示された生体分子の物質量の変化と検出値との差が予め定められた値以下であることが挙げられる。状態特定部109は、同一類似条件を満たす比較統計情報に関連付けられた包括状態を、対象生体の状態として特定する。同一類似条件を満たす比較統計情報とは、同一類似条件を満たす生体分子が示された比較統計情報である。
【0041】
出力手段の一例としての出力部110は、状態特定部109に特定された状態に関する情報を、端末30に出力する。
【0042】
<記憶部の記憶内容>
次に、記憶部102に記憶されている情報の内容について説明する。
図4(A)および
図4(B)は、生体情報管理テーブルの一例を示した図である。生体情報管理テーブルは、比較生体に関する情報を管理するためのテーブルである。この生体情報管理テーブルは、生体の種類ごとに設けられている。
図4(A)には、動物の一種である「人間」の生体情報管理テーブルが示されており、
図4(B)には、農作物の一種である「バナナ」の生体情報管理テーブルが示されている。
【0043】
図4(A)に示す生体情報管理テーブルでは、「名前」に、比較生体の名前が示されている。
また、「日時」には、日時情報が示されている。
また、「分布」には、比較分布情報が示されている。より具体的には、「分布」には、分布情報から特定される生体分子の物理量の分布が、生体分子ごとに示されている。
【0044】
また、「個々状態」には、個々状態情報が示されている。本実施形態では、「個々状態」が、「健康状態」、「肉体状態」、「脳状態」および「美容状態」からなる四つの項目に区分けされている。
「健康状態」には、比較生体の健康の状態が示されている。また、「肉体状態」には、比較生体の肉体の状態が示されている。また、「脳状態」には、比較生体の脳の状態が示されている。また、「美容状態」には、比較生体の美容の状態が示されている。「個々状態」には、比較生体の生育の状態が示されてもよい。
また、「包括状態」には、包括状態情報が示されている。
【0045】
図4(A)に示す生体情報管理テーブルの「個々状態」および「包括状態」について、具体的に説明する。
例えば、生体「A」の比較分布情報には、「包括状態」である「インフルエンザ」が関連付けられるとともに、「感染」や「発熱」等の「健康状態」が関連付けられている。「インフルエンザ」は、比較生体がインフルエンザである状態である。また、「感染」は、比較生体がインフルエンザウイルスに感染した状態である。また、「発熱」は、比較生体が発熱した状態である。
また、例えば、生体「H」の比較分布情報には、「包括状態」である「抗がん剤効果あり」が関連付けられるとともに、「抗がん剤摂取」や「倦怠感」等の「健康状態」が関連付けられている。「抗がん剤効果あり」は、比較生体が抗がん剤を摂取したことによる効果がある状態である。また、「抗がん剤摂取」は、比較生体が抗がん剤を摂取した状態である。また、「倦怠感」は、比較生体が倦怠感を有した状態である。
また、例えば、生体「I」の比較分布情報には、「包括状態」である「抗がん剤効果なし」が関連付けられるとともに、「抗がん剤摂取」や「頭痛」等の「健康状態」が関連付けられている。「抗がん剤効果なし」は、比較生体が抗がん剤を摂取したことによる効果がない状態である。また、「頭痛」は、比較生体が頭痛を有した状態である。
【0046】
また、例えば、生体「J」の比較分布情報には、「包括状態」である「トレーニング効果あり」が関連付けられるとともに、「トレーニング実施」や「筋肉痛」等の「肉体状態」が関連付けられている。「トレーニング効果あり」は、比較生体がトレーニングを実施したことによる効果がある状態である。また、「トレーニング実施」は、比較生体がトレーニングを実施した状態である。また、「筋肉痛」は、比較生体に筋肉痛が生じた状態である。
また、例えば、生体「J」の比較分布情報には、「包括状態」である「トレーニング効果なし」が関連付けられるとともに、「トレーニング実施」や「疲労感」等の「肉体状態」が関連付けられている。「トレーニング効果なし」は、比較生体がトレーニングを実施したことによる効果がない状態である。また、「疲労感」は、比較生体が疲労感を有する状態である。
また、例えば、生体「K」の比較分布情報には、「包括状態」である「記憶力向上」が関連付けられるとともに、「8時間睡眠」等の「肉体状態」や「3時間学習」等の「脳状態」が関連付けられている。「記憶力向上」は、比較生体の記憶力が向上した状態である。また、「8時間睡眠」は、比較生体が8時間睡眠した状態である。また、「3時間学習」は、比較生体が3時間学習した状態である。
また、例えば、生体「L」の比較分布情報には、「包括状態」である「記憶力低下」が関連付けられるとともに、「4時間睡眠」等の「肉体状態」や「3時間学習」等の「脳状態」が関連付けられている。「記憶力低下」は、比較生体の記憶力が低下した状態である。また、「4時間睡眠」は、比較生体が4時間睡眠した状態である。
【0047】
また、例えば、生体「M」の比較分布情報には、「包括状態」である「肌年齢40歳」が関連付けられるとともに、「スキンクリームA使用」等の「美容状態」が関連付けられている。「肌年齢40歳」は、比較生体の肌年齢が40歳であると特定された状態である。また、「スキンクリームA使用」は、比較生体が「スキンクリームA」を使用した状態である。
また、例えば、生体「M」の比較分布情報には、「包括状態」である「肌年齢25歳」が関連付けられるとともに、「スキンクリームB使用」等の「美容状態」が関連付けられている。「肌年齢25歳」は、比較生体の肌年齢が25歳であると特定された状態である。また、「スキンクリームB使用」は、比較生体が「スキンクリームB」を使用した状態である。
【0048】
図4(B)に示す生体情報管理テーブルでは、「識別名」に、比較生体を識別する名称が示されている。図示の例では、「識別名」に、「バナナ」の各々を識別する名称が示されている。
また、「日時」には、日時情報が示されている。
また「分布」には、
図4(A)の例と同じように、比較分布情報が示されている。
また、「個々状態」には、個々状態情報が示されている。本実施形態では、「個々状態」として、「品質状態」が示されている。「品質状態」は、比較生体の品質の状態である。
また、「包括状態」には、包括状態情報が示されている。
【0049】
図4(B)に示す生体情報管理テーブルの「個々状態」および「包括状態」について、具体的に説明する。
生体「X」の比較分布情報には、「包括状態」である「品質良」が関連付けられるとともに、「糖度20度」等の「品質状態」が関連付けられている。「品質良」は、比較生体の品質が良いと特定された状態である。また、「糖度20度」は、比較生体の糖度が20度として特定された状態である。
また、生体「Y」の比較分布情報には、「包括状態」である「品質悪」が関連付けられるとともに、「糖度10度」等の「品質状態」が関連付けられている。「品質悪」は、比較生体の品質が悪いと特定された状態である。また、「糖度10度」は、比較生体の糖度が10度として特定された状態である。
なお、
図4(A)、(B)では記載が省略されているが、記憶部102には、比較生体の種類ごとに、生体情報管理テーブルが設けられている。
【0050】
<統計作成処理>
次に、統計作成処理の流れについて、統計情報が作成されるまでの一例を参照しながら説明する。統計作成処理は、サーバ装置10が統計情報を作成する処理である。本実施形態では、状態特定システム1のユーザが、一の包括状態を指定して統計作成処理の実行をサーバ装置10に指示すると、統計作成処理が開始される。なお、ユーザに指定された一の包括状態を、以下では、指定状態と称することがある。また、以下では、指定状態が「インフルエンザ」である場合について説明する。
図5は、統計作成処理の流れを示したフローチャートである。また、
図6および
図7は、統計情報が作成されるまでの一例を示した図である。
【0051】
まず、サーバ装置10は、指定状態であった比較生体のうちの、一の比較生体を指定する(ステップ(以下、「S」と称する)101)。サーバ装置10は、指定状態を示す包括状態情報が関連付けられた生体情報から、指定状態であった比較生体を特定する。なお、ステップ101においてサーバ装置10に指定された一の比較生体を、以下では、指定生体と称することがある。
次に、サーバ装置10は、指定状態を示す包括状態情報が関連付けられた比較分布情報のうちの一つを指定する(S102)。ステップ102においてサーバ装置10に指定される比較分布情報は、指定生体の生体分子が示された比較分布情報である。また、ステップ102においてサーバ装置10に指定された比較分布情報を、以下では、指定分布情報と称することがある。
【0052】
本例では、上述の通り、指定状態が「インフルエンザ」である。この場合において、指定生体が生体「A」になると、ステップ102において、
図6(A)に示すように、生体「A」についての比較分布情報であって「インフルエンザ」が関連付けられた比較分布情報が指定される。
図6(A)に示す指定分布情報は、「人間」を対象とする生体情報管理テーブル(
図4(A)参照)において、生体「A」および「インフルエンザ」が関連付けられた比較分布情報のうちの一つである。この指定分布情報は、生体分子の等電点を図中横軸とし、生体分子の分子量を図中縦軸とした場合における生体分子の物質量の分布を示す情報である。また、
図6(A)に示す指定分布情報において、斜線およびこの斜線を囲む線により示された画像は、生体分子を意味する。
図6(A)に示す分布情報には、互いに異なる七つの生体分子が示されている。
なお、図示の例では、分布情報において各生体分子が離間しているが、分布情報においては、複数の生体分子が隣接していてもよい。
【0053】
次に、領域識別部103は、指定分布情報において生体分子が存在する領域を識別する(S103)。
区画部104は、指定分布情報において領域識別部103に識別された領域を区画する(S104)。
本例では、ステップ104において、区画部104は、指定分布情報において生体分子が示された領域を、
図6(B)に示すように、領域1乃至領域20からなる二十の領域に区画する。
図6(B)に示す例では、一の生体分子が、領域1乃至領域5からなる五つの領域に区画されている。また、一の生体分子が、領域6からなる一つの領域に区画されている。また、一の生体分子が、領域7からなる一つの領域に区画されている。また、一の生体分子が、領域8乃至領域13からなる六つの領域に区画されている。また、一の生体分子が、領域14および領域15からなる二つの領域に区画されている。また、一の生体分子が、領域16乃至領域19からなる四つの領域に区画されている。また、一の生体分子が、領域20からなる一つの領域に区画されている。
【0054】
次に、物質量特定部105は、区画領域ごとに、区画領域に含まれる生体分子の物質量を特定する(S105)。
本例では、ステップ105において、物質量特定部105は、
図6(C)に示すように、区画領域に含まれる生体分子の物質量を特定する。
図6(C)は、生体分子が得られた時点を図中横軸とし、生体分子の物質量を図中縦軸とした場合において、区画領域である領域20に存在する生体分子を示した図である。
図6(C)において、「●」の記号は、生体「A」の生体分子を意味する。また、
図6(C)に示された生体分子には、個々状態の一つである「感染」が関連付けられている。この「感染」は、
図6(C)にて特定された生体「A」の生体分子が示された比較分布情報に関連付けられた個々状態(
図4(A)参照)の一つである。なお、
図6(C)の例では、領域20における生体分子のみが示されているが、ステップ105においては、領域1乃至領域20の各々の領域、すなわち指定分布情報における全ての区画領域について、生体分子の物質量が特定される。
【0055】
次に、サーバ装置10は、指定生体に係る比較分布情報のうちの、指定状態を示す包括状態情報が関連付けられた全ての比較分布情報について、生体分子の物質量が特定されたか否かを判定する(S106)。
指定状態を示す包括状態情報が関連付けられた比較分布情報の何れかについて生体分子の物質量が特定されていない場合(S106にてNO)、サーバ装置10は、物質量が特定されていない比較分布情報の一つを、新たに指定する(S102)。この後、ステップ103以降の処理が行われる。
【0056】
このように、指定生体に係る比較分布情報のうちの、指定状態を示す包括状態情報が関連付けられた全ての比較分布情報について生体分子の物質量が特定されるまで、ステップ102以降の処理が繰り返される。これにより、本例では、
図6(D)に示すように、生体「A」について特定された「インフルエンザ」が関連付けられた全ての比較分布情報について、区画領域に存在する生体分子の物質量が特定される。
図6(D)は、生体分子が得られた時点を図中横軸とし、生体分子の物質量を縦軸とした場合において、「インフルエンザ」と特定された期間に生体分子が得られた時点ごとの領域20に存在する生体分子を示した図である。
図6(D)に示された生体分子には、それぞれ、個々状態が関連付けられている。この個々状態は、
図6(D)にて特定された生体「A」の生体分子が示された比較分布情報に関連付けられた個々状態(
図4(A)参照)である。また、この個々状態には、「1日」乃至「14日」の日数が示されている。この日数は、生体「A」がインフルエンザウイルスに感染してから経過した日数を意味する。
なお、
図6(D)の例では、領域20における生体分子のみが示されているが、ステップ102乃至ステップ106が繰り返されることにより、全ての区画領域における生体分子の物質量が特定される。
【0057】
指定生体に係る比較分布情報のうちの、指定状態を示す包括状態情報が関連付けられた比較分布情報の全てについて生体分子の物質量が特定されると(S106にてYES)、次のステップに進む。サーバ装置10は、指定状態であった全ての比較生体について、比較分布情報における生体分子の物質量が特定されたか否かを判定する(S107)。
指定状態であった比較生体の何れかについては比較分布情報における生体分子の物質量が特定されていない場合(S107にてNO)、サーバ装置10は、比較分布情報における生体分子の物質量が特定されていない一の比較生体を新たに指定する(S101)。この後、ステップ102以降の処理が行われる。
【0058】
このように、指定状態であった全ての比較生体について、比較分布情報における生体分子の物質量が特定されるまで、ステップ101以降の処理が繰り返される。これにより、本例では、
図7(E)に示すように、指定状態であった全ての比較生体である生体「A」、生体「B」、生体「C」の、「インフルエンザ」が関連付けられた全ての比較分布情報について、区画領域に存在する生体分子の物質量が特定される。
図7(E)は、生体「A」、生体「B」、生体「C」について、「インフルエンザ」と特定された期間に生体分子が得られた時点ごとの領域20に存在する生体分子を示した図である。
図7(E)において、横軸は生体分子が得られた時点であり、縦軸は生体分子の物質量である。また、
図7(E)において、「●」の記号は、生体「A」の生体分子を意味し、「▲」の記号は、生体「B」の生体分子を意味し、「■」の記号は、生体「C」の生体分子を意味する。また、生体「A」の生体分子の物質量、生体「B」の生体分子の物質量、および生体「C」の生体分子の物質量には、それぞれ、同一の個々状態情報が関連付けられている。この個々状態は、
図7(E)にて特定された生体「A」、生体「B」、生体「C」の生体分子がそれぞれ示された比較分布情報に関連付けられた個々状態(
図4(A)参照)である。また、
図7(E)の例では、領域20における生体分子のみが示されているが、ステップ101乃至ステップ107が繰り返されることにより、全ての区画領域における生体分子の物質量が特定される。
【0059】
指定状態であった全ての比較生体について、比較分布情報における生体分子の物質量が特定されると(S107にてYES)、統計部106は、個々状態のうちの同一の状態が関連付けられた生体分子の物質量の統計を算出する。より具体的には、統計部106は、個々状態のうちの同一の状態が関連付けられた生体分子の物質量の統計を、個々状態ごとに算出することで、個々状態ごとの生体分子の物質量の統計を示す統計情報を作成する(S108)。また、統計部106は、区画領域ごとに統計情報を作成する。
本例では、統計部106が、個々状態のうちの同一の状態が関連付けられた生体「A」、生体「B」、および生体「C」の生体分子の物質量の統計を、個々状態ごとに算出することで、
図7(F)に示す統計情報が作成される。
図7(F)には、領域20における生体分子の物質量の統計が示されている。この統計情報には、個々状態ごとに、生体「A」、生体「B」、および生体「C」の各々の生体分子の物質量の統計が示されている。
【0060】
<状態特定処理>
次に、状態特定処理の流れについて、状態特定処理により特定された状態に関する情報が端末30に出力されるまでの一例を参照しながら説明する。状態特定処理は、サーバ装置10が対象生体の状態を特定する処理である。本実施形態では、状態特定システム1のユーザが、状態特定処理に用いられる対象分布情報を指定して状態特定処理の実行をサーバ装置10に指示すると、状態特定処理が開始される。なお、状態特定処理に用いられる対象分布情報としてユーザに指定された対象分布情報を、以下では、使用分布情報と称することがある。
【0061】
図8は、状態特定処理の流れを示したフローチャートである。また、
図9乃至
図12は、状態特定処理において特定された状態に関する情報が端末30に出力されるまでの一例を示した図である。
なお、以下では、対象生体が生体「D」であり、且つ、
図9(A)に示す二つの対象分布情報が使用分布情報である例について説明する。
図9(A)には、使用分布情報として、生体「D」についての前期分布情報および後期分布情報が示されている。この前期分布情報および後期分布情報には、それぞれ、
図6(A)に示した分布情報と同じように、互いに異なる七つの生体分子の分布が示されている。また、生体「D」は、例えば、人間である。
【0062】
まず、領域識別部103は、使用分布情報において生体分子が存在する領域を、使用分布情報ごとに識別する(S201)。
区画部104は、領域識別部103に識別された領域を、使用分布情報ごとに区画する(S202)。
本例では、ステップ202において、区画部104は、前期分布情報および後期分布情報において生体分子が示された領域を、
図9(B)に示すように、領域1乃至領域20からなる二十の領域に区画する。すなわち、区画部104は、使用分布情報において生体分子が示された領域を、比較分布情報に対して行った区画(
図6(B)参照)と同じように区画する。
【0063】
次に、物質量特定部105は、各使用分布情報について、区画領域に含まれる生体分子の物質量を区画領域ごとに特定する(S203)。これにより、本例では、
図9(C)に示すように、生体「D」について前期分布情報および後期分布情報に示された生体分子の物質量が、区画領域ごとに特定される。
図9(C)は、生体分子が得られた時点を図中横軸とし、生体分子の物質量を図中縦軸とした場合において、区画領域に存在する生体分子を区画領域ごとに示した図である。
図9(C)において、「●」の記号は、前期分布情報に示された生体分子を意味し、「▲」の記号は、後期分布情報に示された生体分子を意味する。
【0064】
次に、検出部107は、変化条件を満たす生体分子を検出する(S204)。より具体的には、検出部107は、区画領域ごとに、生体分子が変化条件を満たすか否かを判定し、変化条件を満たすと判定した生体分子を検出する。
本例では、
図9(C)に示す、領域14、領域15、および領域20において、後期分布情報に示された生体分子の物質量が、前期分布情報に示された生体分子の物質量から変化している。より具体的には、領域14においては、後期分布情報に示された生体分子の物質量が、前期分布情報に示された生体分子の物質量よりも増加している。また、領域15および領域20においては、後期分布情報に示された生体分子の物質量が、前期分布情報に示された生体分子の物質量よりも減少している。そして、この領域14、領域15、および領域20にそれぞれ含まれる生体分子が、何れも、変化条件を満たすものとして検出部107に検出される。
【0065】
なお、変化条件を満たす複数の生体分子、すなわち、領域14および領域15に含まれる生体分子と領域20に含まれる生体分子とは、異なる生体分子である。異なる生体分子の一例としては、ヘモグロビンとトランスフェリン等が挙げられる。また、異なる生体分子の他の一例としては、ヘモグロビンHbAとヘモグロビンHbA2等が挙げられる。すなわち、異なる生体分子は、生体分子を構成する分子が同一でなければよい。
【0066】
次に、対象決定部108は、検出分子と比較する対象である比較統計情報を決定する(S205)。対象決定部108は、記憶部102に記憶されている統計情報のうちの、検出分子が示された区画領域と座標が同一である区画領域を対象とする統計情報を、比較統計情報に決定する。
本例では、対象決定部108は、領域20を対象とする統計情報の各々を、生体「D」について領域20に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。この比較統計情報には、
図10(D)に示すように、包括状態である「インフルエンザ」が関連付けられ領域20を対象とする統計情報も含まれる。また、図示を省略するが、対象決定部108は、領域15を対象とする統計情報の各々を、生体「D」について領域15に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。さらに、対象決定部108は、領域14を対象とする統計情報の各々を、生体「D」について領域14に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。
【0067】
次に、状態特定部109は、比較統計情報に示された生体分子のうちの、同一類似条件を満たす生体分子を抽出する(S206)。より具体的には、状態特定部109は、検出分子と、比較統計情報に示された生体分子とを比較することで、比較統計情報に示された生体分子のうちの同一類似条件を満たす生体分子を抽出する。
本例では、状態特定部109は、
図10(E)に示すように、二つの比較統計情報にそれぞれ示された生体分子が、何れも、生体「D」についての領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと判定する。この二つの比較統計情報のうちの一方は、包括状態である「インフルエンザ」が関連付けられ領域20を対象とする比較統計情報である。この比較統計情報の図中破線箇所Aには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されており、この箇所Aに示された生体分子が、生体「D」についての領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。なお、「インフルエンザ」が関連付けられ領域20を対象とするこの比較統計情報は、
図7(F)に示した統計情報である。また、二つの比較統計情報のうちのもう一方は、包括状態である「COVID(Corona Virus Disease)-19」が関連付けられ領域20を対象とする比較統計情報である。この比較統計情報の図中破線箇所Bにもまた、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されており、この箇所Bに示された生体分子が、生体「D」についての領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。
【0068】
このように、複数の比較統計情報にそれぞれ示された生体分子が、何れも、一の区画領域に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと判定される場合がある。付言すると、インフルエンザウイルスとCOVID-19とは、ともに感染症である点で共通しており、対象生体がインフルエンザウイルスに感染した場合とCOVID-19に感染した場合とで、対象生体における特定の生体分子が、同一のまたは類似する変化を示すことがある。この場合、状態特定部109は、抽出した比較統計情報に示された生体分子と、比較が済んでいない区画領域に含まれる検出分子とを比較する。
本例では、状態特定部109は、
図11(F)に示すように、生体「D」についての領域14に示された検出分子と、「インフルエンザ」が関連付けられ領域14を対象とする比較統計情報に示された生体分子とを比較する。また、状態特定部109は、生体「D」についての領域14に示された検出分子と、「COVID-19」が関連付けられ領域14を対象とする比較統計情報に示された生体分子とを比較する。さらに、状態特定部109は、生体「D」についての領域15に示された検出分子と、「インフルエンザ」が関連付けられ領域15を対象とする比較統計情報に示された生体分子とを比較する。また、状態特定部109は、生体「D」についての領域15に示された検出分子と、「COVID-19」が関連付けられ領域15を対象とする比較統計情報に示された生体分子とを比較する。
【0069】
ここで、「インフルエンザ」が関連付けられ領域14を対象とする比較統計情報の図中破線箇所Cには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増大が示されている。そして、この箇所Cに示された生体分子が、生体「D」についての領域14に示された検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。また、「インフルエンザ」が関連付けられ領域15を対象とする比較統計情報の図中破線箇所Dには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。そして、この箇所Dに示された生体分子が、生体「D」についての領域15に示された検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。
一方で、「COVID-19」が関連付けられ領域14を対象とする比較統計情報には、時間が経過しても生体分子の物質量が変化しないことが示されている。そして、この生体分子は、生体「D」についての領域14に示された検出分子に対して同一類似条件を満たさないと状態特定部109に判定される。また、「COVID-19」が関連付けられ領域15を対象とする比較統計情報には、時間が経過しても生体分子の物質量が変化しないことが示されている。そのため、この生体分子もまた、生体「D」についての領域15に示された検出分子に対して同一類似条件を満たさないと状態特定部109に判定される。
この場合、状態特定部109は、「インフルエンザ」が関連付けられている統計情報に示された生体分子を、同一類似条件を満たす生体分子として抽出する。なお、同一類似条件を満たすものとして状態特定部109に抽出された生体分子が示された比較統計情報を、以下では、抽出統計情報と称することがある。
【0070】
次に、状態特定部109は、抽出統計情報から、対象生体の状態を特定する。より具体的には、状態特定部109は、抽出統計情報に関連付けられた包括状態を、対象生体の状態に特定する(S207)。なお、状態特定部109が特定した対象生体の状態を、以下では、特定状態と称することがある。
本例では、状態特定部109は、抽出統計情報に関連付けられている包括状態である「インフルエンザ」を、生体「D」の状態に特定する。
【0071】
なお、本例では、「インフルエンザ」が関連付けられた比較統計情報に示された生体分子、および「COVID-19」が関連付けられた比較統計情報に示された生体分子が、何れも、領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすことを説明した。
【0072】
ここで、
図11(G)は、前期分布情報および後期分布情報の領域7に含まれる生体分子、「インフルエンザ」が関連付けられ領域7を対象とする比較統計情報、および「COVID-19」が関連付けられ領域7を対象とする比較統計情報を示した図である。
図11(G)に示した各図において、横軸は生体分子が得られた時点であり、縦軸は生体分子の物質量である。また、
図11(G)において、「●」の記号は、前期分布情報に示された生体分子を意味し、「▲」の記号は、後期分布情報に示された生体分子を意味する。
図11(G)に示すように、生体「D」についての領域7においては、前期分布情報に示された生体分子の物質量と、後期分布情報に示された生体分子の物質量とで、変化がない。また、「インフルエンザ」が関連付けられ領域7を対象とする比較統計情報においても、時間の経過に伴う生体分子の物質量の変化はない。一方で、「COVID-19」が関連付けられ領域7を対象とする比較統計情報の図中破線箇所Eには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そのため、生体「D」について、領域20における生体分子が
図10(E)の箇所Bの変化を示し、領域7における生体分子が
図11(G)の箇所Eの変化を示す場合、状態特定部109は、生体「D」の状態を「COVID-19」に特定する。
【0073】
なお、本実施形態では、状態特定部109は、「インフルエンザ」が関連付けられた比較統計情報に示された生体分子が、領域20、領域15および領域14に含まれる各検出分子の何れに対しても同一類似条件を満たすことに応じて、対象生体の状態を「インフルエンザ」に特定している。ここで、「インフルエンザ」が関連付けられた比較統計情報に示された生体分子が、領域20に含まれる検出分子および領域15に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たす一方で、領域14に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たさない場合がある。この場合、対象生体の状態を、「インフルエンザ」とは異なる状態に特定してもよい。
【0074】
次に、出力部110は、特定状態に関する情報を、端末30に出力する(S208)。
本例では、出力部110は、
図12に示すように、端末30の表示部31に、状態通知画面40を表示させる。状態通知画面40は、特定状態をユーザに通知するための画面である。状態通知画面40には、生体識別部41と、状態通知部42と、時期通知部43と、将来状態通知部44とが表示されている。
なお、以下では、状態通知画面40が表示された日にちは、後期分布情報に示された生体分子が得られた日にちと同一であるものとする。
【0075】
生体識別部41には、対象生体を識別するための情報が示されている。図示の例では、生体識別部41には、対象生体を識別する情報を含む「Dさん」のテキストが示されている。
状態通知部42には、特定状態が示されている。図示の例では、状態通知部42には、「現在の状態」のテキスト、および、特定状態である「インフルエンザ」のテキストが示されている。
【0076】
時期通知部43には、対象生体が特定状態になった時期が示されている。図示の例では、時期通知部43には、「現在の状態になった時期」のテキスト、および、対象生体が特定状態になった時期である「1日前」のテキストが示されている。なお、対象生体が特定状態になった時期は、比較生体が抽出統計情報に関連付けられた包括状態になった時点と、同一類似条件を満たす生体分子が得られた時点との関係から、状態特定部109に特定される。
本例では、
図7(F)に示す抽出統計情報において、同一類似条件を満たす生体分子、すなわち、図中破線箇所Aに示した生体分子が得られた時点は、個々状態のうちの一つである「1日」の時点である。また、比較生体が「インフルエンザ」になった時点は、個々状態のうちの一つである「感染」が関連付けられた生体分子が得られた時点であり、「1日」の時点の1日前である。そのため、状態特定部109は、対象生体が特定状態になった時期を、時期通知部43に表示された「1日前」に特定する。
【0077】
将来状態通知部44には、対象生体について状態特定部109に特定された将来の状態が、この将来の状態になる時期とともに示されている。対象生体について状態特定部109に特定された将来の状態を、以下では、将来状態と称することがある。図示の例では、将来状態通知部44には、「今後の状態」のテキストと、将来の状態と将来の状態になる時期とを含む「1日後:発熱」のテキストおよび「5日後:平熱」のテキストが示されている。なお、将来状態は、抽出統計情報に関連付けられた個々状態のうちの、同一類似条件を満たす生体分子が得られた時点よりも後の時点に関連付けられた状態である。また、将来状態になる時期は、同一類似条件を満たす生体分子が得られた時点と、将来状態が関連付けられた時点との関係から、状態特定部109に特定される。
本例では、
図7(F)に示す統計情報において、将来状態である「発熱」および「平熱」が関連付けられた時点は、「2日目」および「6日目」であり、同一類似条件を満たす生体分子が得られた時点の1日後および5日後である。そのため、状態特定部109は、対象生体が将来状態である「発熱」および「平熱」になる時期を、将来状態通知部44に表示された「1日後」および「5日後」に特定する。
【0078】
以上の通り、本実施形態では、検出部107は、対象分布情報に示された複数の生体分子のうちの、変化条件を満たす生体分子を検出する。また、対象決定部108は、変化条件を満たす生体分子を含む区画領域に応じて、比較統計情報を決定する。そして、状態特定部109は、変化条件を満たす生体分子と、比較統計情報に示された生体分子との関係から、対象生体の状態を特定する。すなわち、本実施形態では、状態特定部109は、複数の生体分子のうちの、分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じて、対象生体の状態を特定する。生体分子の変化について定められた条件としては、例えば、変化条件などが挙げられる。また、生体分子の対象としては、複数の生体分子のうちの、区画領域に含まれる生体分子などが挙げられる。
この場合、一の生体分子のみならず、複数の生体分子を用いて対象生体の状態を特定することができる。また、特定された対象生体の状態を踏まえて、この対象生体の状態を改善する方法が決定されてもよい。すなわち、対象生体への関わり方を決定するために、対象生体の状態の特定結果が用いられてもよい。
【0079】
特に、本実施形態の状態特定システム1は、対象生体から何れの生体分子を採取するかを予め定めることなく、対象生体から採取した成分を用いて2次元電気泳動像を作成し、作成した2次元電気泳動像に示された生体分子の各々から、対象生体の状態を特定する。
ここで、対象生体について特定する対象の状態に応じて、対象生体から何れの生体分子を採取するかを予め決定しておき、決定した生体分子のみを用いて、対象生体の状態を特定する手法も考えられる。しかしながら、この場合、決定した生体分子とは異なる他の生体分子が時間の経過に伴い変化した場合であっても、他の生体分子に応じて対象生体の状態を特定することができない。
そこで、本実施形態では、対象生体から得られた成分に含まれる全ての生体分子を用いて、対象生体の状態を特定している。
【0080】
なお、本実施形態の状態特定部109は、対象生体の現在の状態のみならず、対象生体の今後の状態も特定している(
図12参照)。すなわち、上述した「対象生体の状態を特定する」ことには、対象生体の現在の状態を特定することのみならず、対象生体の将来の状態を特定することも含まれる。
【0081】
また、本実施形態では、2次元電気泳動像に示された生体分子には、機能が既知である生体分子のみならず、機能が未知である生体分子も含まれている。
ここで、機能が既知である生体分子のみを用いて、対象生体の状態を特定する手法も考えられる。しかしながら、この場合、機能が既知である生体分子の何れも変化条件を満たさない場合には、対象生体の状態を特定できない。そこで、本実施形態では、機能が既知である生体分子のみならず、機能が未知である生体分子も用いて、対象生体の状態を特定している。
【0082】
また、本実施形態では、出力部110は、対象生体の状態に関して、分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象に応じた情報を出力する。
この場合、一の生体分子のみならず、複数の生体分子を用いて対象生体の状態に関する情報を出力することができる。
【0083】
特に、本実施形態では、生体分子の対象は、生体分子のうちの変化条件を満たす部分である。
この場合、生体分子の全体としては、生体分子の変化について定められた条件を満たさない場合であっても、対象生体の状態を特定することができる。
【0084】
また、本実施形態では、生体「A」について、領域14および領域15に含まれる一の生体分子が変化条件を満たすとともに、領域20に含まれる一の生体分子が変化条件を満たすことに応じて、この生体「A」の状態が「インフルエンザ」と特定された。また、上述の通り、生体「A」について、領域20に含まれる一の生体分子が変化条件を満たすとともに、領域7に含まれる一の生体分子が変化条件を満たす場合には、生体「A」の状態が「COVID-19」と特定されることを説明した。すなわち、本実施形態では、状態特定部109は、複数の生体分子のうちの何れの生体分子の対象が変化条件を満たすかに応じて、対象生体の状態を特定する。
この場合、複数の生体分子に応じて対象生体の状態を特定することができる。
【0085】
また、本実施形態では、分布情報において、生体分子の物理量に応じて分けられた複数の区分の各々における生体分子に関する情報が含まれる。そして、変化条件は、複数の区分の各々について定められている。生体分子の物理量としては、例えば、分子量や等電点等が挙げられる。また、区分としては、例えば、区画領域が挙げられる。
この場合、変化条件を満たす生体分子の対象の物理量に応じて、対象生体の状態を特定することができる。
【0086】
また、本実施形態では、生体「A」について、領域20に含まれる一の生体分子が変化条件を満たすとともに、領域14および領域15に含まれる一の生体分子が変化条件を満たすことに応じて、この生体「A」の状態が「インフルエンザ」と特定されている。すなわち、本実施形態では、状態特定部109は、対象生体における第1生体分子の特定の対象と第2生体分子の特定の対象とが何れも変化条件を満たすことに応じて、対象生体の状態を特定する。
この場合、単一の生体分子における特定の対象が変化条件を満たすことのみに応じて対象生体の状態を特定する構成に比べて、対象生体の状態を特定する精度を向上させることができる。
【0087】
特に、本実施形態では、生体「A」について、領域20において物質量が減少した一の生体分子が変化条件を満たし、領域14において物質量が増加した一の生体分子が変化条件を満たしている。すなわち、本実施形態では、第1生体分子における特定の対象の物理量の増加が変化条件を満たし、第2生体分子における特定の対象の物理量の減少が変化条件を満たす。
この場合、第1生体分子における物理量の変化の傾向と、第2生体分子における物理量の変化の傾向とが異なる場合であっても、対象生体の状態を特定することができる。
【0088】
また、本実施形態では、生体「A」について、領域20に含まれる一の生体分子および領域14に含まれる一の生体分子が変化条件を満たし、領域7に含まれる一の生体分子が変化条件を満たさないことに応じて、生体「A」の状態が「インフルエンザ」と特定された。また、生体「A」について、領域20に含まれる一の生体分子および領域7に含まれる一の生体分子が変化条件を満たし、領域14に含まれる一の生体分子が変化条件を満たさない場合には、生体「A」の状態が「COVID-19」と特定されることを説明した。すなわち、本実施形態では、状態特定部109は、対象生体の第1生体分子における特定の対象および第2生体分子における特定の対象が変化条件を満たし且つ第3生体分子の特定の対象が変化条件を満たさない場合に、対象生体の状態を第1状態に特定する。また、状態特定部109は、対象生体の第1生体分子における特定の対象および第3生体分子における特定の対象が変化条件を満たし且つ第2生体分子における特定の対象が変化条件を満たさない場合に、対象生体の状態を第2状態に特定する。
この場合、第1状態と、第2状態とで、共通の生体分子が生体分子の変化について定められた条件を満たす場合であっても、対象生体の状態を特定することができる。
【0089】
また、本実施形態では、生体「A」について、一の生体分子のうちの領域14に含まれる部分と領域15に含まれる部分とが変化条件を満たすことに応じて、この生体「A」の状態が「インフルエンザ」と特定されている。すなわち、本実施形態では、状態特定部109は、特定の生体分子の第1部分と第2部分とが何れも変化条件を満たすことに応じて、対象生体の状態を特定する。
この場合、一の生体分子における一の部分が変化条件を満たすことのみに応じて対象生体の状態を特定する構成に比べて、対象生体の状態を特定する精度を向上させることができる。
【0090】
特に、本実施形態では、生体「A」について、一の生体分子のうちの、領域14に含まれる部分の物質量の増加が変化条件を満たし、領域15に含まれる部分の物質量の減少が変化条件を満たすことに応じて、この生体「A」の状態が「インフルエンザ」と特定されている。すなわち、本実施形態では、第1部分の特定の物理量の増加が変化条件を満たし、第2部分の物理量の減少が変化条件を満たす。
この場合、第1部分における物理量の変化の傾向と、第2部分における物理量の変化の傾向とが異なる場合であっても、対象生体の状態を特定することができる。
【0091】
なお、状態特定部109による状態の特定の手法は、上記の例に限定されない。例えば、比較統計情報に示された生体分子との関係から、領域1乃至領域5からなる一の生体分子について、領域1に含まれる部分の物質量の変化が変化条件を満たすか、領域5に含まれる部分の物質量の変化が変化条件を満たすかによって、対象生体について特定される状態が異なってもよい。すなわち、状態特定部109は、対象生体の特定の生体分子の第1部分が変化条件を満たし且つ第2部分が変化条件を満たさない場合に、対象生体の状態を第1状態に特定し、対象生体の特定の生体分子の第1部分が変化条件を満たさずに第2部分が変化条件を満たす場合に、対象生体の状態を第1状態とは異なる第2状態に特定してもよい。
生体分子のうち翻訳後修飾される箇所によって、この生体分子の状態が異なる場合がある。一例を挙げると、アミノ酸を含む特定の生体分子にリン酸基が付加される場合において、20番目のアミノ酸がリン酸化されている場合と、45番目のアミノ酸がリン酸化されている場合とで、この特定の生体分子の活性化状態や機能が異なる。本実施形態では、このような、生体分子の異なる状態から、対象生体のそれぞれの状態を特定することができる。より具体的には、それぞれ異なる状態である生体分子の物理量の変化から、対象生体のそれぞれの状態を特定することができる。
【0092】
(状態特定処理の他の例)
次に、
図9(A)に示した例とは異なる対象分布情報が用いられる場合に行われる状態特定処理の例について説明する。
図13および
図14は、状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【0093】
以下では、対象生体が生体「E」であり、且つ、
図13(A)に示す二つの対象分布情報が使用分布情報である例について説明する。
図13(A)には、使用分布情報として、生体「E」についての前期分布情報および後期分布情報が示されている。この前期分布情報および後期分布情報には、それぞれ、
図6(A)に示した分布情報と同じように、互いに異なる七つの生体分子の分布が示されている。また、
図13(A)に示す前期分布情報は、生体「E」が抗がん剤を摂取する前日に生体「E」から得られた成分に含まれる各生体分子が示された対象分布情報である。また、
図13(A)に示す後期分布情報は、生体「E」が抗がん剤を摂取した翌日に生体「E」から得られた成分に含まれる各生体分子が示された対象分布情報である。なお、生体「E」は、例えば、人間である。
領域識別部103は、各使用分布情報において生体分子が存在する領域を識別する。また区画部104は、各使用分布情報において、生体分子が存在する領域を、比較分布情報に対して行った区画(
図6(B)参照)と同じように、領域1乃至領域20からなる二十の領域に区画する。
【0094】
物質量特定部105は、各使用分布情報について、区画領域に含まれる生体分子の物質量を区画領域ごとに特定する。また、検出部107は、区画領域ごとに、生体分子が変化条件を満たすか否かを判定し、変化条件を満たすと判定した生体分子を検出する。
本例では、
図13(A)に示す、領域6、領域19、および領域20において、後期分布情報に示された生体分子の物質量が、前期分布情報に示された生体分子の物質量から変化している。より具体的には、領域6および領域19においては、後期分布情報に示された生体分子の物質量が、前期分布情報に示された生体分子の物質量よりも減少している。また、領域20においては、後期分布情報に示された生体分子の物質量が、前期分布情報に示された生体分子の物質量よりも増加している。そして、この領域6、領域19、および領域20の各々の前期分布情報と後期分布情報とに示された生体分子が、変化条件を満たすものとして検出部107に検出される。
【0095】
次に、対象決定部108は、変化条件を満たす生体分子である検出分子と比較する対象である比較統計情報を決定する。
本例では、対象決定部108は、
図13(B)に示すように、領域20を対象とする統計情報の各々を、生体「E」について領域20に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。また、対象決定部108は、領域19を対象とする統計情報の各々を生体「E」について領域19に示された検出分子に対する比較統計情報に決定し、領域6を対象とする統計情報の各々を生体「E」について領域6に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。これらの比較統計情報には、
図13(B)に示すように、包括状態である「抗がん剤効果あり」が関連付けられた統計情報、および、包括状態である「抗がん剤効果なし」が関連付けられた統計情報が含まれる。
図13(B)は、状態特定部109に比較される情報を示した図である。より具体的には、
図13(B)は、前期分布情報および後期分布情報に含まれる生体分子、「抗がん剤効果あり」が関連付けられた比較統計情報、および「抗がん剤効果なし」が関連付けられた比較統計情報を示した図である。また、
図13(B)において、「●」の記号は、前期分布情報に示された生体分子を意味し、「▲」の記号は、後期分布情報に示された生体分子を意味する。
【0096】
次に、状態特定部109は、比較統計情報のうちの、同一類似条件を満たす生体分子を抽出する。
本例では、「抗がん剤効果あり」が関連付けられ領域20を対象とする比較統計情報の図中破線箇所aには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そして、この箇所aに示された生体分子が、生体「E」についての領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。また、「抗がん剤効果なし」が関連付けられ領域20を対象とする比較統計情報の図中破線箇所bには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そして、この箇所bに示された生体分子が、生体「E」についての領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。この場合、状態特定部109は、抽出した比較統計情報に示された生体分子と、比較が済んでいない区画領域に示された検出分子とを比較する。より具体的には、状態特定部109は、生体「E」についての領域19に含まれる検出分子と、領域19を対象とする比較統計情報とを比較する。また、状態特定部109は、生体「E」についての領域6に含まれる検出分子と、領域6を対象とする比較統計情報とを比較する。
【0097】
ここで、「抗がん剤効果あり」が関連付けられ領域19を対象とする比較統計情報の図中破線箇所cには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。そして、この箇所cに示された生体分子が、生体「E」についての領域19に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に特定される。また、「抗がん剤効果あり」が関連付けられ領域6を対象とする比較統計情報の図中破線箇所dには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。そして、この箇所dに示された生体分子が、生体「E」についての領域6に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に特定される。
一方で、「抗がん剤効果なし」が関連付けられ領域19を対象とする比較統計情報には、時間が経過しても生体分子の物質量が変化しないことが示されている。そして、この生体分子は、領域19に示された検出分子に対して同一類似条件を満たさないと状態特定部109に判定される。また、「抗がん剤効果なし」が関連付けられ領域6を対象とする比較統計情報には、時間が経過しても生体分子の物質量が変化しないことが示されている。そして、この生体分子は、領域6に示された検出分子に対して同一類似条件を満たさないと状態特定部109に判定される。
【0098】
この場合、状態特定部109は、「抗がん剤効果あり」が関連付けられている比較統計情報に示された生体分子を、同一類似条件を満たす生体分子として抽出する。また、状態特定部109は、抽出した比較統計情報に関連付けられた包括状態である「抗がん剤効果あり」を、生体「E」の状態に特定する。
また、出力部110は、状態特定部109に特定された状態に関する状態通知画面40(
図12参照)を、端末30の表示部31に表示させる。
【0099】
なお、本例では、「抗がん剤効果あり」が関連付けられた比較統計情報に示された生体分子、および「抗がん剤効果なし」が関連付けられた比較統計情報に示された生体分子が、何れも、領域20に含まれる検出分子に対して同一類似条件を満たすことを説明した。
【0100】
ここで、
図14(C)は、前期分布情報および後期分布情報の領域1に含まれる生体分子、「抗がん剤効果あり」が関連付けられ領域1を対象とする比較統計情報、および「抗がん剤効果なし」が関連付けられ領域1を対象とする比較統計情報を示した図である。
図14(C)に示した各図において、横軸は生体分子が得られた時点であり、縦軸は生体分子の物質量である。また、
図14(C)において、「●」の記号は、前期分布情報に示された生体分子を意味し、「▲」の記号は、後期分布情報に示された生体分子を意味する。
図14(C)に示すように、生体「E」についての領域1においては、前期分布情報に示された生体分子の物質量と、後期分布情報に示された生体分子の物質量とで、変化がない。また、「抗がん剤効果あり」が関連付けられ領域1を対象とする比較統計情報においても、時間の経過に伴う生体分子の物質量の変化がない。一方で、「抗がん剤効果なし」が関連付けられ領域1を対象とする比較統計情報の図中破線箇所eには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そのため、生体「E」について、領域20に含まれる生体分子が
図13(B)の箇所bの変化を示し、領域1に含まれる生体分子が
図14(C)の箇所eの変化を示す場合には、状態特定部109は、生体「E」の状態を「抗がん剤効果なし」に特定する。
【0101】
以上の通り、本実施形態では、情報取得部101は、対象生体に特定の作用が働く前からこの特定の作用が働いた以降への時間の経過に伴う生体分子の状態の特定が可能である使用分布情報を取得する。特定の作用としては、例えば、抗がん剤の摂取が挙げられる。そして、状態特定部109は、特定の生体分子における特定の対象が変化条件を満たす場合に、対象生体の状態を特定の作用に係る第1状態に特定し、特定の生体分子における特定の対象が変化条件を満たさない場合に、対象生体の状態を特定の作用に係る第2状態に特定する。特定の生体分子における特定の対象としては、例えば、生体分子のうちの領域19に示された部分が挙げられる(
図13(A)、
図13(B)参照)。また、第1状態としては、例えば、対象生体が抗がん剤を摂取したことによる効果がある状態が挙げられる。また、第2状態としては、例えば、対象生体が抗がん剤を摂取したことによる効果がない状態が挙げられる。
この場合、対象生体に特定の作用が働いたことによる対象生体への影響を特定することができる。
【0102】
特に、本実施形態では、状態特定部109は、第1生体分子における特定の対象が変化条件を満たし、且つ、第2生体分子における特定の対象が変化条件を満たさない場合に、対象生体の状態を第1状態に特定し、第1生体分子における特定の対象が変化条件を満たさずに第2生体分子における特定の対象が変化条件を満たす場合に、対象生体の状態を第2状態に特定する。第2生体分子における特定の対象としては、例えば、生体分子のうちの領域1に示された部分が挙げられる(
図13(A)、14(C)参照)。
この場合、第1生体分子における特定の対象が変化条件を満たさないことのみに応じて対象生体の状態が第2状態に特定される構成に比べて、対象生体の状態を第2状態に特定する精度を向上させることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、使用分布情報において、領域20に含まれる生体分子と、領域19に含まれる生体分子と、領域6に含まれる生体分子とが何れも変化条件を満たす場合に、状態特定部109が対象生体を第1状態に特定しているが、これに限定されない。
例えば、使用分布情報において、領域19に含まれる生体分子が変化条件を満たし、領域6に含まれる生体分子が変化条件を満たさない場合において、「抗がん剤効果あり」が関連付けられ領域19を対象とする比較統計情報に示された生体分子が同一類似条件を満たす場合には、状態特定部109は、対象生体を「抗がん剤効果あり」に特定してもよい。すなわち、状態特定部109は、第1生体分子における特定の対象および第2生体分子における特定の対象が何れも変化条件を満たす場合に、対象生体の状態を第1状態に特定し、第1生体分子における特定の対象が変化条件を満たさずに第2生体分子における特定の対象が変化条件を満たす場合に、対象生体の状態を第1状態に特定してもよい。第1生体分子における特定の対象としては、例えば、生体分子のうちの領域19に含まれる部分が挙げられる。また、第2生体分子における特定の対象としては、例えば、生体分子のうちの領域6に含まれる部分が挙げられる(
図13(A)、
図13(B)参照)。
この場合、対象生体が第1状態であるにも関わらず対象生体が第1状態とは異なる状態であると特定されることを抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態では、状態特定部109は、対象生体の特定の作用に係る状態を、個々状態としての健康状態が関連付けられた包括状態に特定しているが、これに限定されない。
状態特定部109は、例えば、対象生体の生体分子の変化に基づいて、対象生体の状態を、個々状態としての肉体状態が関連付けられた包括状態に特定してもよい。一例を挙げると、状態特定部109は、対象生体の状態を、肉体状態である「筋肉痛」(
図4(A)参照)が関連付けられた「トレーニング効果あり」に特定してもよい。また、他の一例を挙げると、状態特定部109は、対象生体の状態を、肉体状態である「疲労感」が関連付けられた「トレーニング効果なし」に特定してもよい。「トレーニング効果あり」および「トレーニング効果なし」は、対象生体によるトレーニングの実施に係る状態の一例である。また、トレーニングの実施は、特定の作用の一例である。
また、状態特定部109は、例えば、対象生体の生体分子の変化に基づいて、対象生体の状態を、個々状態としての脳状態が関連付けられた包括状態に特定してもよい。一例を挙げると、状態特定部109は、対象生体の状態を、脳状態である「3時間学習」(
図4(A)参照)および肉体状態である「8時間睡眠」が関連付けられた「記憶力向上」に特定してもよい。また、他の一例を挙げると、状態特定部109は、対象生体の状態を、脳状態である「3時間学習」および肉体状態である「4時間睡眠」が関連付けられた「記憶力低下」に特定してもよい。このように、包括状態情報には、個々状態情報のうちの二つ以上の情報が関連付けられてもよい。「記憶力向上」および「記憶力低下」は、対象生体による学習に係る状態の一例である。また、学習は、特定の作用の一例である。また、特定の作用が働いた対象生体の状態として状態特定部109が特定する状態は、特定の作用が働いたことの効果がある状態および効果がない状態のみならず、特定の作用が働いたことにより良い影響が生じた状態および悪い影響が生じた状態の何れかであってもよい。
また、状態特定部109は、例えば、対象生体の生体分子の変化に基づいて、対象生体の状態を、個々状態としての美容状態が関連付けられた包括状態に特定してもよい。一例を挙げると、状態特定部109は、例えば、対象生体の状態を、美容状態である「スキンクリームA使用」(
図4(A)参照)が関連付けられた「肌年齢40歳」に特定してもよい。また、他の一例を挙げると、状態特定部109は、対象生体の状態を、美容状態である「スキンクリームB使用」が関連付けられた「肌年齢25歳」に特定してもよい。「肌年齢40歳」および「肌年齢25歳」は、対象生体によるスキンクリームの使用に係る状態の一例である。また、スキンクリームの使用は、特定の作用の一例である。
【0105】
(状態特定処理の他の例)
次に、
図9(A)に示した例および
図13(A)に示した例の何れとも異なる対象分布情報が用いられる場合に行われる状態特定処理の例について説明する。
図15および
図16は、状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。
【0106】
以下では、対象生体が生体「F」であり、且つ、
図15に示す四つの対象分布情報が使用分布情報である例について説明する。
図15には、使用分布情報として、生体「F」について生体分子が得られた時点がそれぞれ異なる四つの対象分布情報が示されている。この四つの使用分布情報には、それぞれ、
図6(A)に示した分布情報と同じように、互いに異なる七つの生体分子の分布が示されている。以下では、
図15に示す四つの使用分布情報において、生体分子が得られた時点が早い分布情報から、順に、第1時点分布情報、第2時点分布情報、第3時点分布情報、第4時点分布情報とそれぞれ称することがある。なお、生体「F」は、例えば、バナナである。
【0107】
本例では、区画部104は、各使用分布情報において、全ての領域を区画する。付言すると、各使用分布情報は、
図15に示すように、横軸が生体分子の等電点について1乃至11からなる座標により示され、縦軸が生体分子の分子量について1乃至9からなる座標により示された2次元直交座標系である。また、横軸の座標が大きいほど、生体分子の等電点が大きいことを意味し、縦軸の座標が大きいほど、生体分子の分子量が大きいことを意味する。そして、区画部104は、各使用分布情報に示された領域を、座標ごとの領域に区画する。
図15に示す例では、各使用分布情報においては、全ての領域が区画されることにより、生体分子が存在する区画領域と、生体分子が存在しない区画領域とが設けられる。
【0108】
なお、図示を省略するが、本例では、区画部104は、記憶部102に記憶されている比較分布情報についても、
図15に示す使用分布情報と同じように、全ての領域を区画する。また、物質量特定部105は、比較分布情報における区画領域に含まれる生体分子の物質量を、区画領域ごとに特定する。さらに、統計部106は、生体分子の物質量の統計を区画領域ごとに算出し、区画領域ごとに統計情報を作成する。
【0109】
物質量特定部105は、各使用分布情報について、区画領域に含まれる生体分子の物質量を区画領域ごとに特定する。また、検出部107は、区画領域ごとに、生体分子が変化条件を満たすか否かを判定し、変化条件を満たすと判定した生体分子を検出する。
本例では、横軸の座標が「9」であり縦軸の座標が「5」である領域、すなわち領域(9、5)においては、第2時点分布情報に示された生体分子の物質量が、第1時点分布情報に示された生体分子の物質量よりも減少している。また、領域(9、5)においては、第4時点分布情報に示された生体分子の物質量が、第3時点分布情報に示された生体分子の物質量よりも増加している。さらに、領域(3、7)においては、第3時点分布情報には生体分子が示されていない一方で、第4時点分布情報には生体分子が示されている。そして、この場合、検出部107は、領域(9、5)の第1時点分布情報と第2時点分布情報とに示された生体分子を、変化条件を満たすものとして検出する。また、検出部107は、領域(9、5)の第3時点分布情報と第4時点分布情報とに示された生体分子を、変化条件を満たすものとして検出する。さらに、検出部107は、領域(3、7)の第4時点分布情報に示された生体分子を、変化条件を満たすものとして検出する。
なお、領域(3、7)においては、第1時点分布情報と、第2時点分布情報と、第3時点分布情報とで、生体分子の物質量に変化はない。より具体的には、領域(3、7)においては、第1時点分布情報と、第2時点分布情報と、第3時点分布情報とで、生体分子が示されていない。
【0110】
次に、対象決定部108は、変化条件を満たす生体分子である検出分子と比較する対象である比較統計情報を決定する。
本例では、対象決定部108は、
図16に示すように、領域(9、5)を対象とする統計情報の各々を、生体「F」について領域(9、5)に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。また、対象決定部108は、領域(3、7)を対象とする統計情報の各々を、生体「F」について領域(3、7)に示された検出分子に対する比較統計情報に決定する。これらの比較統計情報には、
図16に示すように、包括状態である「品質良」が関連付けられた統計情報、および、包括状態である「品質悪」が関連付けられた統計情報が含まれる。
図16は、状態特定部109に比較される情報を示した図である。より具体的には、
図16は、使用分布情報の各々に示された生体分子、「品質良」が関連付けられた比較統計情報、および「品質悪」が関連付けられた比較統計情報を示した図である。
【0111】
なお、
図16に示す生体「F」の生体分子において、●の記号は、第1時点分布情報に示された生体分子を意味し、▲の記号は、第2時点分布情報に示された生体分子を意味し、■の記号は、第3時点分布情報に示された生体分子を意味し、★の記号は、第4時点分布情報に示された生体分子を意味する。
【0112】
次に、状態決定部109は、比較統計情報のうちの、同一類似条件を満たす生体分子を抽出する。
本例では、包括状態である「品質良」が関連付けられ領域(9、5)を対象とする比較統計情報の図中破線箇所アには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。そして、この箇所アに示された生体分子が、第1時点分布情報および第2時点分布情報の領域(9、5)に示された生体分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。また、包括状態である「品質悪」が関連付けられ領域(9、5)を対象とする比較統計情報の図中破線箇所イには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。そして、この箇所イに示された生体分子が、第1時点分布情報および第2時点分布情報の領域(9、5)に示された生体分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。
【0113】
また、本例では、包括状態である「品質良」が関連付けられ領域(9、5)を対象とする比較統計情報の図中破線箇所ウには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そして、この箇所ウに示された生体分子が、第3時点分布情報および第4時点分布情報の領域(9、5)に示された生体分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。また、包括状態である「品質良」が関連付けられ領域(3、7)を対象とする比較統計情報の図中破線箇所エには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そして、この箇所エに示された生体分子が、第4時点分布情報の領域(3、7)に示された生体分子に対して同一類似条件を満たすと状態特定部109に判定される。
一方で、包括状態である「品質悪」が関連付けられ領域(9、5)を対象とする比較統計情報には、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加は示されていない。この場合、この比較統計情報に示された生体分子は、第3時点分布情報および第4時点分布情報の領域(9、5)に示された生体分子に対して同一類似条件を満たさないと状態特定部109に判定される。また、包括状態である「品質悪」が関連付けられ領域(3、7)を対象とする比較統計情報には、時間が経過しても生体分子の物質量が変化しないことが示されている。この場合、この比較統計情報に示された生体分子は、第4時点分布情報の領域(3、7)に示された生体分子に対して同一類似条件を満たさないと状態特定部109に判定される。
【0114】
この場合、状態特定部109は、「品質良」が関連付けられている比較統計情報に示された生体分子を、同一類似条件を満たす生体分子として抽出する。また、状態特定部109は、抽出した比較統計情報に関連付けられた包括状態である「品質良」を、生体「F」の状態に特定する。
また、出力部110は、状態特定部109に特定された状態に関する状態通知画面40(
図12参照)を、端末30の表示部31に表示させる。
【0115】
以上の通り、
図15に示す使用分布情報のうちの、第1時点分布情報、第2時点分布情報、および第3時点分布情報においては、領域(3、7)に生体分子が示されていない。すなわち、本実施形態では、使用分布情報には、複数の区画領域の各々における複数の時点での生体分子の存在に関する情報が含まれ、この複数の区画領域には、複数の時点のうちの少なくとも一の時点において対象生体の生体分子が存在していない領域が含まれる。
この場合、生体分子が存在していなかった領域における生体分子の変化に応じて、対象生体の状態を特定することができる。
【0116】
また、本実施形態では、情報取得部101は、第1期間における対象生体の生体分子の変化の特定が可能な情報と、第1期間よりも後の第2期間における生体分子の変化の特定が可能な情報とを含む情報を取得する。第1期間としては、例えば、第1時点分布情報に示された生体分子が得られた時点から、第2時点分布情報に示された生体分子が得られた時点までの期間が挙げられる。また、第2期間としては、例えば、第3時点分布情報に示された生体分子が得られた時点から、第4時点分布情報に示された生体分子が得られた時点までの期間が挙げられる。そして、状態特定部109は、第1期間における変化について変化条件を満たす生体分子の対象と、第2期間における変化について変化条件を満たす生体分子の対象とに応じて、対象生体の状態を特定する。
この場合、生体分子が単一の期間における変化について変化条件を満たすことのみに応じて対象生体の状態を特定する構成に比べて、対象生体の状態を特定する精度を向上させることができる。
【0117】
特に、本実施形態では、第1期間における変化について変化条件を満たす生体分子の対象は、第2期間における変化について変化条件を満たす生体分子の対象と同じである。この生体分子の対象は、例えば、領域(9、5)に含まれる生体分子が挙げられる(
図15、
図16参照)。
この場合、特定の生体分子の複数の期間における変化に応じて対象生体の状態を特定することができる。
【0118】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、状態特定システム1が対象生体の状態を特定する点で、第1の実施形態と共通する。
一方で、第2の実施形態は、状態特定システム1のユーザが、対象生体について状態特定部109に何れの種類の状態を特定させるかを選択できる点で、第1の実施形態とは異なる。
以下、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、以下で説明する点を除き、第1の実施形態と同じ構成である。また、以下では、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と同じ構成については、説明を省略することがある。
【0119】
図17は、第2の実施形態の状態特定処理の流れを示したフローチャートである。また、
図18は、第2の実施形態の状態特定処理が行われる場合に端末30の表示部31に表示される画像を示した図である。また、
図19は、第2の実施形態の状態特定処理により対象生体の状態が特定されるまでの一例を示した図である。なお、以下では、対象生体が生体「G」である例について説明する。また、生体「G」は、例えば、人間である。
本実施形態においても、状態特定システム1のユーザが、状態特定処理に用いられる対象分布情報を指定して状態特定処理の実行をサーバ装置10に指示すると、状態特定処理が開始される。
【0120】
まず、情報取得部101は、対象生体の状態を特定する指示があったか否かを判定する(
図17のS301)。ユーザが対象生体の状態を特定する指示を端末30に入力すると、指示があった旨が端末30からサーバ装置10に通知される。情報取得部101は、この通知を受けたか否かにより、対象生体の状態を特定する指示があったか否かを判定する。また、否定結果が継続する間、情報取得部101は、ステップ301の処理を繰り返す。
【0121】
対象生体の状態を特定する指示があった旨が端末30からサーバ装置10に通知された場合(S301にてYES)、情報取得部101は、状態特定部109に何れの種類の状態を特定させるかが選択されたか否かを判定する(S302)。ユーザが何れの種類の状態を状態特定部109に特定させるかを端末30において選択すると、選択された状態の種類を示す種類情報が、端末30からサーバ装置10に送信される。情報取得部101は、この種類情報を取得したか否かにより、状態特定部109に何れの種類の状態を特定させるかが選択されたか否かを判定する。また、否定結果が継続する間、情報取得部101は、ステップ302の処理を繰り返す。
【0122】
本例では、状態特定処理において、ユーザが対象生体の状態を特定する指示を端末30に入力すると、
図18(A)に示すように、端末30の表示部31には、選択画面50が表示される。選択画面50は、状態特定部109に何れの種類の状態を特定させるかをユーザに選択させるための画面である。選択画面50には、選択促進部51と、項目部52と、決定部53とが示されている。
選択促進部51には、状態特定部109に何れの種類の状態を特定させるかの選択をユーザに促すための情報が示されている。図示の例では、選択促進部51には、「知りたい状態の種類を選んでください」のテキストが示されている。
【0123】
項目部52には、ユーザが選択できる項目が示される。項目部52には、項目選択部521が示されている。
項目選択部521は、状態特定部109が特定する状態の種類について区分けされた項目が示される。図示の例では、項目選択部521には、状態特定部109が特定する状態について区分けされた「健康状態」、「肉体状態」、「脳状態」、「美容状態」を含む項目が示されている。また、図示の例では、項目選択部521において「健康状態」が選択されている。
【0124】
項目選択部521において「健康状態」が選択されている状態で、ユーザが、決定部53を選択すると、
図18(B)に示すように、選択画面50の項目部52には、選択項目部522と、詳細選択部523とが表示される。また、選択画面50には、戻り部54と、決定部55とが表示される。
【0125】
項目部52の選択項目部522には、項目選択部521において選択された項目が示される。図示の例では、選択項目部522には、「健康状態」が示されている。
項目部52の詳細選択部523には、選択項目部522に示された項目についてさらに区分けされた項目が示されている。詳細選択部523に示された項目は、ユーザが選択できる項目である。図示の例では、詳細選択部523には、選択項目部522に示された「健康状態」についてさらに区分けされた「インフルエンザ」、「COVID-19」、「ノロウイルス」、「肝炎」を含む項目が示されている。また、図示の例では、詳細選択部523において、「インフルエンザ」が選択されている。
【0126】
ユーザが戻り部54を選択すると、
図18(A)に示す選択画面50が再び端末30の表示部31に表示される。
また、詳細選択部523において「インフルエンザ」が選択されている状態で、ユーザが決定部55を選択すると、選択された状態の種類である「インフルエンザ」を示す種類情報が、端末30からサーバ装置10に送信される。
【0127】
情報取得部101が種類情報を取得すると(S302にてYES)、次のステップに進む。対象決定部108は、記憶部102に記憶されている統計情報のうちの、情報取得部101に取得された種類情報が包括状態情報として関連付けられている統計情報を、対象生体の生体分子と比較する対象の統計情報として抽出する(S303)。より具体的には、対象決定部108は、種類情報が関連付けられている統計情報であって、抽出条件を満たす生体分子が示されている領域を対象とする統計情報を抽出する。抽出条件は、対象決定部108が対象生体の生体分子と比較する対象の統計情報を抽出するために定められた条件である。本実施形態の抽出条件は、時間の経過に伴い物質量が変化した生体分子が示されている領域を対象とする統計情報を抽出する観点から定められている。また、本実施形態では、統計情報に含まれる生体分子の物質量が時間の経過に伴い予め定められた値以上変化していることが、抽出条件として定められている。
【0128】
図19(A)は、記憶部102に記憶されている統計情報の一例を示した図である。本例では、記憶部102には、
図19(A)に示すように、種類情報である「インフルエンザ」が包括状態情報として関連付けられている統計情報が記憶されている。また、「インフルエンザ」が関連付けられ領域20を対象とする統計情報の図中破線箇所Iには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。また、「インフルエンザ」が関連付けられ領域15を対象とする統計情報の図中破線箇所IIには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の減少が示されている。さらに、「インフルエンザ」が関連付けられ領域14を対象とする統計情報の図中破線箇所IIIには、時間の経過に伴う生体分子の物質量の増加が示されている。そして、この場合、対象決定部108は、「インフルエンザ」がそれぞれ関連付けられた、領域20を対象とする統計情報、領域15を対象とする統計情報、および領域14を対象とする統計情報を、何れも、抽出条件を満たす統計情報として抽出する。
【0129】
次に、物質量特定部105は、各使用分布情報について、区画領域に示された生体分子の物質量を区画領域ごとに特定する(S304)。
次に、対象決定部108は、ステップ303において抽出した統計情報に示された生体分子と比較する対象生体の生体分子を決定する(S305)。より具体的には、対象決定部108は、ステップ303において抽出された統計情報と対象の座標が同一である区画領域に含まれる生体分子を、比較の対象の生体分子に決定する。
【0130】
本例では、上記の通り、領域20を対象とする統計情報、領域15を対象とする統計情報、および領域14を対象とする統計情報が抽出されている。この場合、対象決定部108は、生体「G」についての使用分布情報に示された生体分子のうちの、領域20に含まれる生体分子、領域15に含まれる生体分子、および領域14に含まれる生体分子を、それぞれ、比較の対象の生体分子に決定する。
図19(B)は、ステップ303において抽出された統計情報と、この統計情報との比較の対象として対象決定部108に決定された対象生体の生体分子を示した図である。
図19(B)には、統計情報として、「インフルエンザ」がそれぞれ関連付けられ、領域20を対象とする統計情報、領域15を対象とする統計情報、および領域14を対象とする統計情報が示されている。また、
図19(B)には、生体「G」の生体分子として、各使用分布情報において、領域20に含まれる生体分子、領域15に含まれる生体分子、および領域14に含まれる生体分子が示されている。
図19(B)に示した各図において、横軸は生体分子が得られた時点であり、縦軸は生体分子の物質量である。
【0131】
次に、状態特定部109は、統計情報と対象生体の生体分子とを比較し、比較した結果から、対象生体の状態を特定する(S306)。より具体的には、状態特定部109は、比較の対象として対象決定部108に決定された生体分子が、特定条件を満たすか否かに基づいて、対象生体の状態を特定する。特定条件は、状態特定部109が、対象生体の状態を、統計情報に関連付けられた包括状態であると特定するために定められた条件である。本実施形態では、対象生体における生体分子の物質量の時間の経過に伴う変化の値と、統計情報において抽出条件を満たす生体分子の物質量の変化の値との差が、予め定められた値以下であることが、特定条件として定められている。
【0132】
状態特定部109は、対象生体の生体分子が特定条件を満たす場合、ステップ303において抽出された統計情報に関連付けられた包括状態を、対象生体の状態に特定する。また、状態特定部109は、対象生体の生体分子が特定条件を満たさない場合、ステップ303において抽出された統計情報に関連付けられた包括状態ではない状態を、対象生体の状態に特定する。
なお、対象決定部108に比較の対象として決定された対象生体の生体分子が、複数の区画領域における生体分子である場合がある。この場合、状態特定部109は、各区画領域に含まれる生体分子が、何れも特定条件を満たす場合に、対象生体の生体分子が特定条件を満たすと判定する。また、状態特定部109は、各区画領域に含まれる生体分子の何れかが特定条件を満たさない場合、対象生体の生体分子が特定条件を満たさないと判定する。
【0133】
本例では、
図19(B)に示すように、生体「G」について領域20に含まれる生体分子は、時間が経過しても物質量が変化していない。
また、生体「G」について領域15に含まれる生体分子は、時間の経過に伴い物質量が増加している。この生体分子の物質量の変化は、「インフルエンザ」が関連付けられ領域15を対象とする統計情報に示された生体分子の物質量の減少とは逆の傾向の変化である。
さらに、生体「G」について領域14に含まれる生体分子は、時間が経過しても物質量が変化していない。
この場合、状態特定部109は、対象生体の生体分子が特定条件を満たさないと判定する。さらに、状態特定部109は、生体「G」が、統計情報に関連付けられた「インフルエンザ」ではない状態であると特定する。
【0134】
次に、出力部110は、状態特定部109に特定された状態に関する情報を、端末30に出力する(S307)。
本例では、出力部110は、
図18(C)に示すように、端末30の表示部31に、状態通知画面40を表示させる。本実施形態の状態通知画面40には、生体識別部41と、状態通知部42と、注意喚起部45と、詳細促進部46と、否定部47と、決定部48とが示されている。
【0135】
生体識別部41には、対象生体を識別する情報を含む「Gさん」のテキストが示されている。
状態通知部42には、「現在の状態」のテキストと、状態特定部109に特定された状態を示す「インフルエンザではありません」のテキストとが示されている。
【0136】
注意喚起部45には、対象生体の状態についてユーザに注意を喚起するための情報が示されている。本実施形態では、出力部110は、使用分布情報における何れかの区画領域に含まれる生体分子が変化条件を満たす場合に、注意喚起部45を表示させる。
対象生体の生体分子の物質量が変化した場合、この変化に伴い対象生体の状態に変化が生じた場合がある。そこで、本実施形態のサーバ装置10は、使用分布情報に示された生体分子が変化条件を満たす場合には、対象生体の生体分子が特定条件を満たさない場合であっても、対象生体の状態についてユーザに注意喚起をする。
【0137】
本例では、
図19(B)に示すように、生体Gについて領域15に含まれる生体分子のうちの、図中破線箇所IVに示す生体分子は、時間の経過に伴い物質量が増加しており、この箇所IVに示された生体分子が、変化条件を満たす。そのため、状態通知画面40に、注意喚起部45が表示される。図示の例では、注意喚起部45には、「注意」のテキストと、「健康状態について、健康ではない他の状態である可能性があります」のテキストとが示されている。
【0138】
詳細促進部46には、対象生体の詳細な状態を状態特定部109に特定させることをユーザに促す情報が示されている。図示の例では、詳細促進部46には、「他の状態を特定しますか?」のテキストが示されている。
ユーザが否定部47を選択すると、対象生体の詳細な状態は特定されず、状態特定処理が終了する。
また、ユーザが決定部48を選択すると、
図8に示す状態特定処理が実行される。これにより、対象生体について、対象生体の詳細な状態が特定されるとともに、特定された状態に関する状態通知画面40(
図12参照)が端末30の表示部31に表示される。
【0139】
以上の通り、本実施形態では、対象生体について状態特定部109に何れの種類の状態を特定させるかがユーザに選択されると、情報取得部101は、選択された状態の種類を示す種類情報を取得する。そして、対象決定部108は、種類情報から特定される状態の種類から、対象生体の状態の特定に用いる使用分布情報を決定する。さらに、状態特定部109は、対象決定部108に決定された使用分布情報に示された生体分子の変化から、対象生体の状態を特定する。すなわち、本実施形態では、情報取得部101は、生体の状態について区分けされた複数の項目のうちの、状態特定システム1に特定される対象の項目に関する項目情報を取得する。そして、状態特定部109は、項目情報から特定される項目に応じて定められる生体分子の対象について使用分布情報から特定される変化に応じて、対象生体の状態を特定する。項目情報としては、例えば、種類情報が挙げられる。また、情報取得部101は、項目情報を取得する項目情報取得手段としても捉えられる。
この場合、複数の生体分子のうちの、対象生体について特定される対象の状態の項目によって定められた生体分子に応じて、対象生体の状態を特定することができる。
【0140】
なお、本実施形態において、使用分布情報が
図9(A)に示した二つの対象分布情報であり、状態特定部109に特定させる状態の種類として「インフルエンザ」が選択された場合、状態特定部109は、対象生体の状態を「インフルエンザ」に特定する。また、この場合、出力部110は、
図12に示した状態通知画面40を端末30の表示部31に表示させる。
また、本実施形態において、使用分布情報が
図13(A)に示した二つの対象分布情報であり、状態特定部109に特定される状態の種類として「抗がん剤の効果」が選択された場合、状態特定部109は、対象生体の状態を「抗がん剤効果あり」に特定する。また、出力部110は、状態特定部109に特定された状態に関する状態通知画面40を表示部31に表示する。
また、本実施形態において、使用分布情報が
図15に示した四つの対象分布情報であり、状態特定部109に特定される状態の種類として「品質」が選択された場合、状態特定部109は、対象生体の状態を「品質良」に特定する。また、出力部110は、状態特定部109に特定された状態に関する状態通知画面40を表示部31に表示する。
【0141】
次に、本発明者が行った実施例について説明する。
【0142】
[実施例]
本発明者は、生体の生体分子が複数示された2次元電気泳動像を、複数の時点で得られた生体分子についてそれぞれ作成し、作成した複数の2次元電気泳動像から、2次元電気泳動に示された各生体分子の物質量の時間の経過に伴う変化を調べた。この実施例においては、生体分子の物質量の変化を調べる対象の生体を、三頭の競走馬とした。この三頭の馬を個別に説明する場合、それぞれ、「馬A」、「馬B」、「馬C」と称する場合がある。また、生体分子の物質量の変化を調べる対象の馬を区別することなく説明する場合、対象馬と称する場合がある。本発明者は、対象馬から得られた血清を用いて、血清に含まれる各タンパク質が示された2次元電気泳動像を作成した。
なお、血清が得られた時点における対象馬の年齢は、何れも、2歳である。また、対象馬から血清が得られた時点において、馬Aの体重は、348kgであり、馬Bの体重は、379kgであり、馬Cの体重は、377kgであった。
【0143】
図20(A)は、馬Aから一の時点で得られた血清に含まれる各タンパク質が示された2次元電気泳動像を示した図である。この2次元電気泳動像においては、図中横軸にタンパク質の等電点の分布が示され、図中縦軸にタンパク質の分子量の分布が示された2次元直交座標系で、各タンパク質の物質量の分布が示されている。この2次元電気泳動像に示された黒色の画像は、それぞれ、タンパク質である。また、この黒色の画像の濃度が高いほど、それぞれのタンパク質の物質量が多いことを意味する。
本発明者は、各対象馬について、十五の時点で対象馬から血清を得て、得られた血清ごとに2次元電気泳動像を作成した。より具体的には、各対象馬をインフルエンザウイルスに感染させ、感染させた日から14日が経過するまでの各日で対象馬から血清を得て、得られた血清ごとに2次元電気泳動像を作成した。
【0144】
また、本発明者は、作成した2次元電気泳動像に示された領域を、複数の領域に区画した。
図20(B)は、
図20(A)の2次元電気泳動像が複数の領域に区画された状態を示す図である。図示の例では、2次元電気泳動像に示された領域が、338の領域に区画されている。また、区画した領域の一例である二十の領域に対して、それぞれ、1乃至20の番号を付した。本発明者は、作成した2次元電気泳動像の各々について、
図20(B)に示した例と同じように、領域を区画した。
【0145】
また、本発明者は、作成した2次元電気泳動像の各々について、区画した領域ごとに、領域に含まれるタンパク質の物質量を特定した。さらに、本発明者は、特定したタンパク質の物質量について、各対象馬の統計を算出した。より具体的には、発明者は、対象馬をインフルエンザウイルスに感染された日から経過した日ごとの、タンパク質の物質量の統計を算出した。また、この統計の算出は、2次元電気泳動像において区画された領域ごとに行われた。そして、発明者は、算出した統計から、時間の経過に伴うタンパク質の物質量の変化を評価した。
【0146】
(比較例)
また、実施例に対する比較例として、各対象馬について、対象馬がインフルエンザウイルスに感染した日から14日が経過するまでの各日において、体温を測定するとともに、対象馬から得られたタンパク質の一例としてのアミロイドAの物質量を測定した。
図21(A)は、対象馬の体温を示した図である。
図21(A)において、横軸には、対象馬がインフルエンザウイルスに感染してから経過した日数が示され、縦軸には、対象馬の体温が示されている。また、
図21(A)において、「●」の記号は、馬Aを示し、「▲」の記号は、馬Bを示し、「■」の記号は、馬Cを示す。
また、
図21(B)は、対象馬から得られたアミロイドAの物質量を示した図である。
図21(B)において、横軸には、対象馬がインフルエンザウイルスに感染してから経過した日数が示され、縦軸には、対象馬のアミロイドAの物質量が示されている。また、
図21(B)において、「●」の記号は、馬Aを示し、「▲」の記号は、馬Bを示し、「■」の記号は、馬Cを示す。
【0147】
図21(A)から、何れの対象馬についても、インフルエンザウイルスに感染してから二日が経過したときに、体温の上昇が確認された。そのため、馬がインフルエンザウイルスに感染してから二日経過したときの体温の上昇に基づいて、この馬がインフルエンザウイルスに感染していると特定される。すなわち、ユーザが、馬の体温からこの馬がインフルエンザウイルスに感染していることを特定するためには、馬がインフルエンザウイルスに感染してから二日を要する。
【0148】
また、
図21(B)から、何れの対象馬についても、インフルエンザウイルスに感染してから三日が経過したときに、アミロイドAの物質量の増加が確認された。そのため、馬がインフルエンザウイルスに感染してから三日経過したときのアミロイドAの物質量の増加に基づいて、この馬がインフルエンザウイルスに感染していると特定される。すなわち、ユーザが、馬のアミロイドAの物質量からこの馬がインフルエンザウイルスに感染していることを特定するためには、馬がインフルエンザウイルスに感染してから三日を要する。なお、比較例において説明した手法は、機能が既知である生体分子のみを用いて対象生体の状態を特定する手法の一例として捉えられる。
【0149】
図22は、各対象馬の血清に含まれる各タンパク質の物質量について算出された統計を示した図である。
図22には、2次元電気泳動像において区画された338の領域のうちの、タンパク質の物質量の変化が確認された領域に含まれるタンパク質の物質量の統計が示されている。
図22に示す各図において、横軸には、対象馬がインフルエンザウイルスに感染してから経過した日数が示され、縦軸には、2次元電気泳動像において区画された領域に含まれるタンパク質の物質量が示されている。図示の例では、領域11、領域18、領域20、領域25、領域37、領域38、領域42、領域56、領域58、領域59、領域80、領域101、領域105、領域106、領域107、領域108、領域116、領域119、領域124、領域125、領域136、領域137、領域169を対象として、各対象馬のタンパク質の物質量、および各対象馬のタンパク質の物質量の統計が、対象馬がインフルエンザウイルスに感染してから経過した日数ごとに示されている。
なお、
図22の各領域における数字の「1」は、馬Aのタンパク質の物質量を意味する。また、
図22の各領域における数字の「2」は、馬Bのタンパク質の物質量を意味する。また、
図22の各領域における数字の「3」は、馬Cのタンパク質の物質量を意味する。また、
図22の各領域における実線は、各対象馬のタンパク質の物質量について算出された統計を意味する。
【0150】
図22から、何れの対象馬についても、インフルエンザウイルスに感染してからの時間の経過に伴うタンパク質の物質量の変化が確認された。特に、領域11、領域18、領域20、領域101、領域105、領域106、領域107、領域119、領域124、領域125、領域136、および領域137における統計から、インフルエンザウイルスに感染してから一日が経過したときの、タンパク質の物質量の減少が確認された。また、領域37、領域38、領域42、領域56、領域58、領域80、領域116における統計から、インフルエンザウイルスに感染してから一日が経過したときの、タンパク質の物質量の増加が確認された。
そのため、馬がインフルエンザウイルスに感染してから一日経過したときの
図22に示すタンパク質の物質量の変化に基づいて、この馬がインフルエンザウイルスに感染していると特定される。すなわち、ユーザが、
図22に示すタンパク質の物質量の変化から馬がインフルエンザウイルスに感染していることを特定するためには、馬がインフルエンザウイルスに感染してから一日を要する。言い換えると、ユーザが、生体の状態を特定するために、生体分子が示された2次元電気泳動像を用いる場合、生体の体温を用いる場合や生体のアミロイドAの物質量を用いる場合に比べて、早期に生体の状態を特定することができる。また、2次元電気泳動像に示された各生体分子の変化から生体の状態を特定するため、単一の生体分子の変化から生体の状態を特定する構成に比べて、生体の状態を特定する精度を向上させることができる。なお、本実施例において説明した手法は、機能が既知である生体分子のみならず機能が未知である生体分子も用いて対象生体の状態を特定する手法の一例として捉えられる。
【0151】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0152】
上述した実施形態では、状態特定処理において用いられた使用分布情報(
図9(A)、
図13(A)、
図15参照)に応じて、対象生体について状態特定部109に特定された状態が異なっている。ここで、各使用分布情報に示された生体分子は、何れも、各対象生体から得られた成分に含まれる全ての生体分子であり、何れの生体分子を対象生体から取得するか予め定められたものではない。
【0153】
上述した実施形態では、情報取得部101は、複数の生体分子に関する情報が含まれる2次元電気泳動像を分子情報として取得しているが、これに限定されない。
情報取得部101は、例えば、単一の生体分子に関する情報である分子情報を、生体分子ごとに取得してもよい。すなわち、情報取得部101が分子情報を複数の生体分子について取得することには、複数の生体分子に関する情報である分子情報を取得すること、および、分子情報を生体分子ごとに複数取得することの何れも含まれる。
【0154】
また、上述した実施形態では、生体分子の物理量の分布を示す情報が、生体分子の分子量を示す情報、生体分子の等電点を示す情報、生体分子の物質量を示す情報等であることを説明したが、これに限定されない。
生体分子の物理量の分布を示す情報は、例えば、生体分子の電荷量の分布を示す情報であってもよい。また、例えば、2次元電気泳動像において、生体分子の等電点の分布が示される代わりに、生体分子の電荷量の分布が示されてもよい。また、生体分子の物理量の分布を示す情報は、例えば、生体分子の疎水性の分布を示す情報や、生体分子の立体構造を示す情報であってもよい。この場合において、2次元電気泳動像においては、x軸およびy軸の一方に生体分子の疎水性の分布が示され、他方に生体分子の分子量の分布が示された画像であってもよい。また、2次元電気泳動像においては、x軸およびy軸の一方に生体分子の立体構造が示され、他方に生体分子の等電点の分布が示された画像であってもよい。付言すると、2次元電気泳動像において、x軸に示される情報と、y軸に示される情報は、それぞれ異なる物性を示す情報であれば、何れの物性を示す情報であってもよい。また、生体分子解析装置20は、上述した物性を示す情報のうちの、それぞれ異なる物性を示す3つの情報が、x軸、y軸、z軸にそれぞれ示された3次元からなる電気泳動像を作成してもよい。そして、この3次元からなる電気泳動像が、生体の状態の特定に用いられてもよい。
【0155】
また、上述した実施形態では、分布情報に生体分子の分布が示されることを説明したが、これに限定されない。
例えば、生体分子の物質量を示す情報が、生体分子の等電点ごとや生体分子の電荷量ごとに作成されてもよい。また、生体分子の物質量を示す情報が、生体分子の分子量ごとに作成されてもよい。そして、サーバ装置10は、生体分子の等電点ごとに作成された情報、生体分子の電荷量ごとに作成された情報、生体分子の分子量ごとに作成された情報などから、生体分子の分布を特定してもよい。
【0156】
また、上述した実施形態では、分子情報は、生体分子の物理量が示された情報であることを説明したが、これに限定されない。
分子情報は、例えば、生体分子が存在するか否かが示された情報であってもよい。すなわち、分子情報は、生体分子に関する情報であればよい。
【0157】
また、上述した実施形態では、統計部106により統計される対象の生体分子は、それぞれ、個々状態のうちの同一の状態が関連付けられている生体分子であることを説明したが、これに限定されない。
統計部106により統計される対象の生体分子は、例えば、複数の生体が特定の包括状態になったときから経過した日数が同一であるときにこの複数の生体からそれぞれ得られた生体分子であってもよい。
【0158】
また、上述した実施形態では、統計部106により統計される対象の生体分子は、それぞれ、異なる生体の生体分子であったが、これに限定されない。
統計部106により統計される対象の生体分子には、同一の生体の生体分子が含まれてもよい。
【0159】
また、上述した実施形態では、検出部107が比較に用いる分布情報が、三つ以上の使用分布情報のうちの、生体分子が得られた時点が最も近い二つの分布情報であることを説明したが、これに限定されない。検出部107が比較に用いる分布情報は、三つ以上の使用分布情報のうちの、生体分子が得られた時点が離れた二つの分布情報であってもよい。一例を挙げると、検出部107は、
図15に示す第1時点分布情報および第4時点分布情報を比較に用いて、第1時点分布情報に示された生体分子から、第4時点分布情報に示された生体分子への変化を検出してもよい。
【0160】
また、上述した実施形態では、検出部107が比較する生体分子や、対象決定部108が比較の対象に決定する生体分子は、それぞれ、座標が同一である区画領域に含まれる生体分子であることを説明したが、これに限定されない。
検出部107が比較する生体分子や、対象決定部108が比較の対象に決定する生体分子は、互いに対応する区画領域に含まれる生体分子であれば、それぞれ座標が異なる区画領域に含まれる生体分子であってもよい。この場合に、検出部107や対象決定部108は、比較の対象である生体分子が、それぞれ、予め定められた座標の範囲に示されていることを条件として、互いに対応する区画領域に含まれる生体分子を特定してもよい。また、検出部107や対象決定部108は、比較の対象である生体分子と他の生体分子との分布情報における配置の関係から、互いに対応する区画領域に含まれる生体分子を特定してもよい。
【0161】
また、上述した実施形態では、状態特定部109は、対象生体の状態を、同一類似条件を満たす生体分子が示された統計情報に関連付けられた包括状態に特定しているが、これに限定されない。
状態特定部109は、対象生体の状態を、同一類似条件を満たす生体分子が示された統計情報に関連付けられた個々状態の何れかに特定してもよい。
【0162】
また、上述した実施形態では、状態特定部109は、対象生体における生体分子の物質量の変化に応じて、対象生体の状態を特定しているが、これに限定されない。
例えば、検出部107が、対象生体に係る分子情報から、生体分子の分子量の変化、生体分子の等電点の変化、生体分子の電荷量の変化、生体分子の存在の有無の変化等を検出してもよい。そして、状態特定部109は、検出部107に検出された変化に対応する変化があった比較生体に係る分子情報を抽出し、抽出した分子情報に関連付けられた比較生体の状態を、対象生体の状態に特定してもよい。すなわち、対象生体の状態の特定に用いられる生体分子の変化は、生体分子の物質量の変化に限定されない。
【0163】
また、上述した実施形態では、サーバ装置10は、一の生体について生体分子が得られた時点が異なる複数の分子情報を取得し、取得した複数の分子情報から時間の経過に伴う生体分子の変化を特定しているが、これに限定されない。
サーバ装置10は、特定の期間における生体分子の変化が示された情報など、時間の経過に伴う生体分子の変化が示された分子情報を取得してもよい。生体分子の変化としては、例えば、生体分子の特定の物理量の変化や、生体分子の存在の有無の変化等が挙げられる。また、特定の物理量としては、例えば、物質量、分子量、等電点、電荷量等が挙げられる。そして、サーバ装置10は、取得した分子情報から、時間の経過に伴う生体分子の変化を特定してもよい。すなわち、分子情報は、サーバ装置10による生体分子の変化の特定が可能な情報であれば、何れの態様の情報であってもよい。
【0164】
また、上述した実施形態では、生体分子が変化することが変化条件として定められているが、これに限定されない。
例えば、生体分子が変化しないことが変化条件として定められてもよい。一例を挙げると、二つの生体分子の物質量の差が予め定められた値以下であることが、変化条件として定められてもよい。そして、状態特定部109は、変化条件を満たす生体分子に対応する比較生体の生体分子が示された分子情報を抽出し、抽出した分子情報に関連付けられた状態を、対象生体の状態に特定してもよい。
一例を挙げると、
図9(B)に示す使用分布情報において、領域20に含まれる生体分子の物質量が変化しないことで変化条件を満たし、且つ、領域15に含まれる生体分子の物質量が変化しないことで変化条件を満たす場合に、対象生体の状態を、「インフルエンザ」および「COVID-19」の何れでもない他の状態に特定すること等が挙げられる。他の状態としては、例えば、対象生体が健康である状態等が挙げられる。
【0165】
また、上述した、対象生体に特定の作用が働く前からこの特定の作用が働いた以降への時間の経過に伴う生体分子の状態の特定が可能である分子情報には、時間の経過に伴い生体分子が変化したことの特定が可能である情報のみならず、時間の経過に伴う生体分子の変化がないことの特定が可能である情報も含まれる。
【0166】
また、検出部107は、生体分子の変化の程度を検出してもよい。より具体的には、検出部107は、各使用分布情報から、区画領域に含まれる生体分子の変化の程度が、複数段階のうちの何れの段階であるかを検出してもよい。そして、状態特定部109は、検出部107に検出された段階に対応する変化が示された比較生体に係る分布情報を抽出し、抽出した分布情報に関連付けられた状態を、対象生体の状態に特定してもよい。
【0167】
また、状態特定部109は、検出分子と統計情報に示された生体分子とを比較することを説明したが、これに限定されない。
状態特定部109は、例えば、検出分子と、一の比較生体に係る比較分布情報に示された生体分子とを比較してもよい。そして、この比較分布情報に示された生体分子が同一類似条件を満たす場合には、この比較分布情報に関連付けられた状態を、対象生体の状態に特定してもよい。
【0168】
また、上述した実施形態では、対象生体が、比較生体とは異なっているが、これに限定されない。
対象生体は、比較生体と同一の生体であってもよい。
【0169】
また、上述した実施形態においては、状態特定部109は、対象生体の生体分子と、対象生体と同じ属性の生体である比較生体の生体分子とを比較することにより、対象生体の状態を特定しているが、これに限定されない。
状態特定部109は、対象生体の生体分子と、対象生体とは異なる属性の生体である比較生体の生体分子とを比較することにより、対象生体の状態を特定してもよい。一例を挙げると、状態特定部109は、対象生体である人間の生体分子と、比較生体である馬の生体分子とを比較することにより、対象生体の状態を特定してもよい。この場合において、サーバ装置10は、生体分子の物理量についての特性を、生体の属性ごとに特定し、特定した特性に基づいて、比較分子情報に示される生体分子の物理量を、比較生体の属性ごとに補正してもよい。そして、サーバ装置10は、対象生体の生体分子と、比較分子情報における補正後の生体分子とを比較することにより、対象生体の状態を特定してもよい。
【0170】
また、状態特定部109は、機械学習の成果に基づいて、対象生体の状態を特定してもよい。
状態特定部109は、2次元電気泳動像に示された各生体分子の物質量の分布と、この2次元電気泳動像に示された生体分子が生体から得られた時点における生体の状態と、が関連付けられた分布情報および個々状態情報を教師データとして、生体分子の分布と生体の状態との関係を学習する。状態特定部109は、学習結果に基づいて、分布情報を入力として、個々状態情報を出力する学習モデルを生成する。そして、状態特定部109は、生成した学習モデルに基づき、対象生体に係る分布情報から、この対象生体の状態を特定してもよい。言い換えると、状態特定部109は、入力された分布情報に示された生体分子の分布を個々状態情報に関連付けてパターン認識することで、対象生体に係る分布情報に示された生体分子の分布のパターンから対象生体の状態を特定してもよい。このように、状態特定部109は、対象生体の生体分子を、他の生体分子と比較することなく、対象生体の状態を特定してもよい。なお、分布情報において状態特定部109にパターン認識された生体分子は、分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件を満たす生体分子の対象として捉えられる。また、分子情報から特定される生体分子の変化について定められた条件とは、分布情報から特定される生体分子が状態特定部109にパターン認識されることである。また、条件を満たす生体分子の対象は、分布情報に示された生体分子の分布である。
【0171】
また、上述した実施形態では、状態特定システム1に、サーバ装置10と生体分子解析装置20とがそれぞれ設けられる構成を説明したが、これに限定されない。
例えば、サーバ装置10と生体分子解析装置20とが一体化された装置が状態特定システム1に設けられてもよい。すなわち、状態特定システム1に設けられる一の装置を用いて、生体分子の解析、分子情報の作成、および、対象生体の状態の特定を行うようにしてもよい。
【0172】
また、本実施形態では、ユーザが端末30やサーバ装置10を操作することにより個々状態情報や包括状態情報を入力することを説明したが、これに限定されない。
例えば、ビデオカメラ等の撮影手段を用いて生体を撮影してもよい。さらに、生体を解析する解析手段を用いて、撮影された動画に映っている生体を解析し、解析結果から、この生体の状態を示した個々状態情報や包括状態情報を作成し、作成した情報を情報取得部101に送信してもよい。このように、情報取得部101は、端末30とは異なる機能手段から情報を取得してもよい。
【0173】
また、本実施形態では、サーバ装置10が、対象生体の状態を特定する構成としたが、これに限定されない。
例えば、端末30がサーバ装置10の機能を有してもよい。言い換えると、端末30が、サーバ装置10の情報取得部101、記憶部102、領域識別部103、区画部104、物質量特定部105、統計部106、検出部107、対象決定部108、状態特定部109、出力部110等の機能を備えることとしてもよい。
【0174】
また、本発明の実施形態を実現するプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネットなどの通信手段を用いて提供することも可能である。
【0175】
また、上記では、複数の実施形態を説明したが、一の実施形態に含まれる構成と他の実施形態に含まれる構成とを入れ替えたり、一の実施形態に含まれる構成を他の実施形態に付加したりしても良い。
【符号の説明】
【0176】
1…状態特定システム、10…サーバ、20…生体分子解析装置、30…端末、40…状態通知画面、101…情報取得部、102…記憶部、109…状態特定部、110…出力部