(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058209
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】対震ユニット丁番
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240418BHJP
E05D 5/12 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
E06B5/00 E
E05D5/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165427
(22)【出願日】2022-10-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】309015570
【氏名又は名称】米川 満之
(72)【発明者】
【氏名】米川 満之
(57)【要約】
【課題】南海トラフ地震の発生の可能性が高くなっている現在、室内で閉じ込められて、家屋からの逃げ遅れが危惧されている。地震発生時に家屋からの逃げ遅れを防ぐための対震ユニット丁番の提供を課題とする。
【解決手段】第1管部(16)と第1軸体(15)により、前記第1管部内においてスライドが可能である第1対震丁番(10)と、第2管部(16)と第2軸体(25)により、前記第2管部内において移動可能である第2対震丁番(20)の両方を備える対震ユニット丁番(30)を提供し、扉に設置することにより、周辺構造物(3)の移動に干渉されることなく、扉本来の機能を維持することが可能な構造物を提供し、安全な場所へ脱出することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の上方部に取付ける第1上側羽根と枠体部の上方部に取付けて、前記第1上側羽根と係合する第1下側羽根とで構成される第1対震丁番と、
扉の下方部に取付ける第2上側羽根と枠体部の下方部に取付けて、前記第2上側羽根と係合する第2下側羽根とで構成される第2対震丁番と、
を備える対震ユニット丁番であって、
前記第1上側羽根は、第1上側羽根板と、前記第1上側羽根板と一体となった第1軸体とを備え、
前記第1下側羽根は、第1下側羽根板と、前記第1下側羽根板と一体となった第1管部とを備え、
前記第1軸体の下部側を前記第1管部に挿入することで、前記第1上側羽根が前記第1下側羽根に回転可能に係合されており、
前記第2上側羽根は、第2上側羽根板と、前記第2上側羽根板と一体となった第2軸体とを備え、
前記第2下側羽根は、第2下側羽根板と、前記第2下側羽根板と一体となった第2管部とを備え、
前記第2軸体の下部側を前記第2管部に挿入することで、前記第2上側羽根が前記第2下側羽根に回転可能に係合されており、
前記第1管部の形状は、前記第1軸体が、第1管部内においてスライド可能な形状をなし、
前記第2管部の形状は、前記第2軸体が、第2管部内において移動可能な形状をなすことを特徴とする対震ユニット丁番。
【請求項2】
第1軸体は、第1上側羽根板と一体となった第1円柱部と前記第1円柱部の底面から延設される第1シャフトを備えると共に、
前記第1円柱部の下部の周囲を覆う位置にパイプを備え、かつ前記パイプは、下部を切り欠いている切り欠き部と、パイプ部で構成されており、
第1管部は、平面視略コの字状の形状をなし、前記第1管部より上側に飛び出る長方形の突き出し板を第一下側羽根板側に備え、
扉が閉まっている時は、前記突き出し板は、前記パイプの切り欠き部に位置して係合し、扉が開いている時は、前記突き出し板は、前記パイプのパイプ部に位置して係合している、
ことを特徴とする請求項1に記載の対震ユニット丁番。
【請求項3】
第1管部は、平面視略コの字状の形状をなし、通常時に前記第1管部内での第1軸体のスライドを静止する係止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の対震ユニット丁番。
【請求項4】
第1管部の平面視略コの字状の形状の先端が内側に屈曲している構造を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の対震ユニット丁番。
【請求項5】
第2軸体は、第2上側羽根板と一体となった第2円柱部と前記第2円柱部の底面から延設される第2シャフトを備えると共に、
前記第2シャフトは鉛筆状に尖った円錐台部を先端に備え、
第2管部は、底面から上面開口に向けて開口径が広がるような筒状の形状をなすと共に、
前記第2管部の底面には、第2溝部を備え、第2上側羽根が第2下側羽根に係合された状態において、
前記円錐台部が前記第2溝部に合わさる、
ことを特徴とする請求項4に記載の対震ユニット丁番。
【請求項6】
第1軸体は、第1上側羽根板と一体となった第1円筒部と前記第1円筒部に嵌合して第1円筒部内で回転自在に保持される第1偏芯軸で構成され、
前記第1偏芯軸は、前記第1円筒部に嵌合する第1円柱形状部と前記第1円柱形状部の底面から延設されると共に、第一円柱形状部の底面に対して偏芯した位置に配置される第1偏芯シャフトとを備えている、
第2軸体は、第2上側羽根板と一体となった第2円筒部と前記第2円筒部
に嵌合して第2円筒部内で回転自在に保持される第2偏芯軸で構成され、
前記第2偏芯軸は、前記第2円筒部に嵌合する第2円柱形状部と前記第2円柱形状部の底面から延設されると共に、第2円柱形状部の底面に対して偏芯した位置に配置される第2偏芯シャフトとを備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の対震ユニット丁番。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地震により建物の周辺構造物に歪みが生じた場合にも、扉が開く機構を
持つ対震ユニット丁番を提供する。
【背景技術】
【0002】
建物の周辺構造物に固定される従来の扉は、地震による周辺構造物の変形により扉全体または一部が変形して、開閉機能に支障を生じ、扉本来の開閉機能が損なわれる。この変形の対策扉として(イ)耐震丁番とラッチ受けで構成されたもの、(ロ)ローラーを有する金具を扉先端に取り付け、変形による干渉抵抗を軽減するもの、(ハ)周辺構造物の変形を扉枠と扉に干渉させない機能をもたせたものが知られている。特許文献1は(ハ)であり、周辺構造物と扉枠とのクリアランスと自立機構で開閉機能を有するものが知られている。
【0003】
非特許文献1では地震発生後の層間変位角1/60以下をAランク、1/60を超え1/20以下をBランク、1/20を超えるものをCランクとし、Bランクまでは建物の倒壊のおそれは無いとされる。
Bランクの場合、1/60~1/20であるので、水平方向の移動変形は、
扉高さ2000mmとすると、1/60で33mm(2000×1/60=33)、1/20で100mm(2000×1/20=100)となり、水平方向の移動変形は33mmから100mmとなり、最大100mmまでの移動変形であれば、建物の倒壊は免れるとの報告である。
層間変位角とは建物の1階部分の高さに対する横ずれの比をラジアンで表すと定義されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】(財)日本建築防災協会出版の被災建築物応急危険度判定マニュアル
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、地震発生後に非特許文献1のBランクの1/20の層間変位角の変形(移動)により前後左右全ての層間変位角の変形(変動)に機能する構造物はない。
【0007】
本発明は非特許文献1のBランク1/20の層間変位の前後左右全てに機能するもので、地震発生時の外力、通常使用時の外力や故意による外力による移動など、建屋が倒壊するまでの変形に干渉されることなく、扉が開く
機構を持つ丁番を提供するものである。
【0008】
南海トラフ地震の発生の可能性が高くなっている現在、室内で閉じ込められて、家屋からの逃げ遅れが危惧されている。地震発生時に家屋からの逃げ遅れを防ぐための対震ユニット丁番の提供を課題とする。
また、対震ユニット丁番の提供は、新築の家やリフォームの家など新たに扉を取り付ける場合だけではなく、既存の家屋などへの普及が進むように、既存の扉の丁番を対震ユニット丁番に変更するだけで、地震発生時に家屋からの逃げ遅れを防ぐための脱出ユニット扉を提供し、安価で比較的簡単に地震発生に備えることができることを課題とする。
【0009】
小さな地震でも、周辺構造物が変形してしまい、扉が開きにくくなった場合に、周辺構造物と扉の位置関係を丁番で調整し、扉の開閉がスムーズとなる対震ユニット丁番を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段として、請求項1では、扉(1)の上方部に取付ける第1上側羽根(11)と枠体部(2)の上方部に取付けて、前記第1上側羽根(11)と係合する第1下側羽根(12)とで構成される第1対震丁番(10)と、
扉(1)の下方部に取付ける第2上側羽根(21)と枠体部(2)の下方部に取付けて、前記第2上側羽根(21)と係合する第2下側羽根(22)とで構成される第2対震丁番(20)と、
を備える対震ユニット丁番(30)であって、
前記第1上側羽根(11)は、第1上側羽根板(13)と、前記第1上側羽根板(13)と一体となった第1軸体(15)とを備え、
前記第1下側羽根(12)は、第1下側羽根板(14)と、前記第1下側羽根板(14)と一体となった第1管部(16)とを備え、
前記第1軸体(15)の下部側を前記第1管部(16)に挿入することで、前記第1上側羽根(11)が前記第1下側羽根(12)に回転可能に係合されており、
前記第2上側羽根(21)は、第2上側羽根板(23)と、前記第2上側羽根板(23)と一体となった第2軸体(25)とを備え、
前記第2下側羽根(22)は、第2下側羽根板(24)と、前記第2下側羽根板(24)と一体となった第2管部(26)とを備え、
前記第2軸体(25)の下部側を前記第2管部(26)に挿入することで、前記第2上側羽根(21)が前記第2下側羽根(22)に回転可能に係合されており
前記第1管部(16)の形状は、前記第1軸体(15)が、前記第1管部(16)内においてスライド可能な形状をなし、
前記第2管部(26)の形状は、前記第2軸体(25)が、前記第2管部(26)内において移動可能な形状をなすことを特徴とする対震ユニット丁番(30)を提供する。
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項2では、第1軸体(15)は、第1上側羽根板(13)と一体となった第1円柱部(151)と前記第1円柱部(151)の底面から延設される第1シャフト(152)を備えると共に、
前記第1円柱部(151)の下部の周囲を覆う位置にパイプを備え、かつ前記パイプは、下部を切り欠いている切り欠け部(153)と、パイプ部(154)で構成されており、
第1管部(16)は、平面視略コの字状の形状をなし、前記第1管部(16)より上側に飛び出る長方形の突き出し板(163)を第一下側羽根板(14)側に備え、
扉(1)が閉まっている時は、前記突き出し板(163)は、前記パイプの切り欠け部(153)に位置して係合し、扉(1)が開いている時は、前記突き出し板(163)は、パイプ部(154)に位置して係合している、
ことを特徴とする請求項1に記載の対震ユニット丁番(30)を提供する。
【0012】
上記課題を解決するための手段として、請求項3では、第1管部(16)は、平面視略コの字状の形状をなし、通常時に前記第1管部(16)内での第1軸体(15)のスライドを静止する係止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の対震ユニット丁番(30)を提供する。
【0013】
上記課題を解決するための手段として、請求項4では、前記第1管部(16)の平面視略コの字状の形状の先端が内側に屈曲している構造を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の対震ユニット丁番(30)を提供する。
【0014】
上記課題を解決するための手段として、請求項5では、第2軸体(25)は、第2上側羽根板(23)と一体となった第2円柱部(251)と前記第2円柱部(251)の底面から延設される第2シャフト(252)を備えると共に、前記第2シャフト(252)は鉛筆状に尖った円錐台部(259)を先端に備え、第2管部(26)は、底面から上面開口に向けて開口径が広がるような筒状の形状をなすと共に、前記第2管部(26)の底面には、第2溝部(261)を備え、第2上側羽根(21)が第2下側羽根(22)に係合された状態において、前記円錐台部(259)が前記第2溝部(261)に合わさることを特徴とする請求項4に記載の対震ユニット丁番(30)を提供する。
【0015】
上記課題を解決するための手段として、請求項6では、第1軸体(15)は、第1上側羽根板(13)と一体となった第1円筒部(155)と前記第1円筒部(155)に嵌合して第1円筒部(155)内で回転自在に保持される第1偏芯軸(156)とで構成され、前記第1偏芯軸(156)は、前記第1円筒部(155)に嵌合する第1円柱形状部(157)と、前記第1円柱形状部(157)の底面から延設されると共に第一円柱形状部の底面に対して偏芯した位置に配置される第1偏芯シャフト(158)とを備えている。
また、第2軸体(25)は、第2上側羽根板(23)と一体となった第2円筒部(253)と前記第2円筒部(253)に嵌合して第2円筒部(253)内で回転自在に保持される第2偏芯軸(254)で構成され、前記第2偏芯軸(254)は、前記第2円筒部(253)に嵌合する第2円柱形状部(255)と前記第2円柱形状部(255)の底面から延設されると共に、円柱形状部(255)の底面に対して偏芯した位置に配置される第2偏芯シャフト(256)を備えている、ことを特徴とする請求項5に記載の対震ユニット丁番(30)を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の対震ユニット丁番(30)を使った扉(1)によって、周辺構造物(3)の移動に干渉されることなく、扉本来の機能を維持することが可能な構造物を提供でき、安全な場所へ脱出することが可能となる。
【0017】
また新築の家やリフォームの家に取り付けるだけではなく、既存の扉の丁番を対震ユニット丁番(30)に変更するだけで、家屋から逃げられる機能を持たせた扉を提供することが可能となる。また、これによって費用の負担が少なく、比較的簡単に地震に備えることが可能となる。
【0018】
本発明の対震ユニット丁番(30)を使った扉(1)によって、周辺構造物(3)の移動に干渉されることなく、扉本来の機能を維持することが可能な構造物を提供でき、扉(1)と枠体部(2)の位置が地震によりずれが生じた場合でも、偏芯シャフトを備えた丁番により調整することで、地震前と同じ開閉可能な扉を維持し修復が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】第1上側羽根と第1下側羽根の一例を示す第1対震丁番の斜視図
【
図4】第1対震丁番と第2対震丁番の移動前後の斜視図
【
図5】第1上側羽根と第1下側羽根の一例を示す第1対震丁番の斜視図
【
図7】偏芯軸を備えている第1軸体の一例を示す斜視図
【
図8】周辺構造物がAの方向に傾いた場合の脱出ユニット扉斜視図
【
図9】周辺構造物がBの方向に傾いた場合の脱出ユニット扉斜視図
【
図10】周辺構造物がCの方向に傾いた場合の脱出ユニット扉斜視図
【
図11】周辺構造物がDの方向に傾いた場合の脱出ユニット扉斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示
す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明は以下のものに特定されない。
本発明の一実施の形態に係る対震ユニット丁番(30)を扉(1)や周辺構造物(3)の枠体部(2)に取り付けた構成図を、
図1に示す。
扉(1)の上方部の側面にネジによって第1上側羽根板(13)を取り付け、枠体部(2)の上方部にネジによって第1下側羽根板(14)を取り付ける。また、第1上側羽根板(13)と一体となった第1軸体(15)を、第1管部(16)内に挿入することで、前記第1上側羽根(11)が前記第1下側羽根(12)に取り付けられて、扉(1)や枠体部(2)と第1対震丁番(10)の係合が完了する。
更に扉(1)の下方部の側面にネジによって第2上側羽根板(23)を取り付け、枠体部(2)の下方部にネジによって第2下側羽根板(24)を取り付ける。また、第2上側羽根板(23)と一体となった第2軸体(25)の下部側を、第2下側羽根板(24)と一体となった第2管部(26)内に挿入することで、前記第2上側羽根(21)と前記第2下側羽根(22)に取り付けられて、扉(1)や枠体部(2)と第2対震丁番(20)の係合が完了する。
第1対震丁番(10)と第2対震丁番(20)を合わせた対震ユニット丁番(30)が扉(1)に取り付けられ、第1軸体(15)や第2軸体(25)によって、扉(1)が回転する機構を持つ。
上記扉(1)に対震ユニット丁番(30)を取り付けた構造体を脱出ユニット扉(31)とし、周辺構造物(3)に固定された枠体部(2)に取り付けられている。
【0021】
本発明の一実施の形態に係る第1対震丁番(10)を構成する第1軸体(15)
と第1管部(16)を一例とし
図2により説明する。
第1軸体(15)の第1円柱部(151)の下部の周囲を覆う位置に切り欠け部(153)付きのパイプ(20mmφ)を溶接して設置した。また、第1管部(16)は、平面視略コの字状の形状をしており、第一管部(16)の第1下側羽根板側の内部に長方形の突き出し板(163)を第1管部(16)より上側に飛び出るように設置した。突き出し板(163)の飛び出る高さは、パイプの切り欠け部(153)と3mm重なるように取付け、更にパイプの切り欠け部(153)の幅10mmは、突き出し板(163)の幅5mmより長くした。
また、第1軸体(15)と第1管部(16)を取り付けた状態においては、突き出し板(163)は、先端部をパイプ部(154)の内側に入れることで、第1管部(16)の回転と共に、パイプ部(154)に沿って内面を移動する。
扉(1)が閉まっている時は、パイプの切り欠け部(153)と突き出し板(163)が重なる位置に設定して係合し、扉が開いている時は、パイプ部(154)と突き出し板(163)が重なる位置に設定し係合している。
以上の結果、
扉(1)が開いている時は、第1管部(16)内に取り付けた突き出し板(163)を、第1軸体(15)に取り付けたパイプ部(154)で抑えることで、第1軸体(15)の第1シャフト(152)は、第1管部内のスライドを防ぎ、扉(1)が外れることを防ぐ構造とした。
また、扉(1)が閉まった時は、突き出し板(163)の先端部が、パイプの切り欠け部(153)と3mm重なっているため、係合した状態を保っているが、地震が発生し、第1下側羽根(12)が移動した場合には、突き出し板(163)が係合部であるパイプの切り欠け部(153)より外れることで、第1軸体(15)の第1シャフト(152)は第1管部(16)内をスライドし、第1軸体(15)は、元の位置に留まる。第1軸体(15)に含まれる第1上側羽根板(13)は、扉(1)に取り付けられているため、扉(1)は移動することはなく、扉(1)を簡単に開けることができる。
【0022】
本発明の一実施の形態に係る第1対震丁番(10)を構成する第1管部(16)の係止部の一例とし
図3により説明する。
図3(a)又は
図3(b)の様に、第1管部(16)は、平面視略コの字状の形状をしており、第1管部(16)の内部に係止部として突起部(165)もしくは湾曲部(166)を設けて、正常時は、第1軸体(15)を支えているが、枠体部(2)に取り付けられた第1下側羽根(12)が移動した場合には、第1軸体(15)が突起部(165)や湾曲部(166)を乗り越えることで第1管部(16)はスライドする機構になっている。
また、他の方法として、
図3(c)の様に、第1管部(16)の底部に係止部として第1溝部(167)を設けることで、正常時は第1軸体(15)が、第1溝部に嵌合して第1軸体(15)を支えているが、枠体部(2)に取り付けられた第1下側羽根(12)が移動した場合には、底部の第1溝部(167)を第1軸体(15)が乗り越えることで、第1管部(16)はスライドする機構になっている。
【0023】
本発明の一実施の形態に係る対震ユニット丁番(30)の第1耐震丁番(10)と
第2耐震丁番(20)を取り付けた状態で、周辺構造物(3)や枠体部(2)が地震などによって移動した場合の挙動について
図4により説明する。
周辺構造物(3)の枠体部(2)が地震等によって移動した場合は、枠体部(2)に取り付けた第1管部(16)と扉(1)に取り付けた第1軸体(15)の関係において、第1軸体(15)が、第1管部(16)内の係止部を超えることで、第一管部(16)が移動する。この結果、扉(1)に取り付けた第1軸体(15)は、移動することはなく、元の位置を保つことができる。
また、同時に枠体部(2)の下側も移動し、枠体部(2)に取り付けた第2管部(26)と扉(1)に取り付けた第2軸体(25)の関係において、第2管部(26)の底面から上面開口に向けて開口径が広がるような筒状の形状によって、第2管部(26)は、移動する。
図4(a)は移動前、
図4(b)は移動後を表す。
以上の結果、第1軸体(15)や第2軸体(25)に取り付けられた扉(1)は移動しないために、扉を開放することが可能となる。
【0024】
本発明の一実施の形態に係る第1対震丁番(10)を構成する第1軸体(15)と第1管部(16)の一例とし
図5により説明する。
第1管部(16)のコの字状の形状の先端を内側に曲げた先端部(164)を設けることで、第1管部(16)内を第1軸体(15)がスライドしても、第1軸体(15)は、第1管部(16)内に留まり、第1軸体(15)と第1管部(16)とは、完全に切り離された状態としない構造としている。この事により、第1管部(16)がスライドしても、枠体部(2)と扉(1)が完全に離れない状態を保つことで、扉(1)や枠体部(2)による損傷事故を防ぐことが可能となる。
【0025】
本発明の一実施の形態に係る第2対震丁番(20)を構成する第2軸体(25)と第2管部(26)の一例とし
図6により説明する。
図6(a)の様に第2軸体(25)において、第2円柱部(251)の底面から延設される第2シャフト部(252)は、先端が鉛筆状に尖った円錐台形状の円錐台部(259)がある。一方、第2管部(26)は、底面から上面開口に向けて開口径が広がるような筒状の形状をしており、底面の形状は円形であり、上面に向かって広がり開口部は楕円形となる構造としている。また、
図6(b)のように、底面の形状を四角形とし、上面に向かって広がり開口部は長方形となる構造としても良い。
また、
図6(c)の様に、第2管部の底面には、第2溝部(261)があり、第2上側羽根が第2下側羽根に係合された状態において、第2軸体(25)の第2シャフト(252)の先端にある円錐台部(259)が、前記第2管部(26)の底面の第2溝部(261)に合わさり、扉(1)の回転軸となる。
地震が発生した場合に、第1軸体(15)が第1管部(16)をスライドすることに連動して、第2軸体(25)の第2シャフト(252)が、第2管部(26)内を移動し、扉の回転軸が移動する構造になっている。
【0026】
地震が発生した後、軽微な揺れであっても、枠体部(2)と扉(1)が接触してしまい扉(1)の開閉の動きが悪くなることがある。
この様な時に、第1偏芯軸(156)を備えている対震ユニット丁番(30)を使って、枠体部(2)と扉(1)の位置を偏芯シャフト(158)により調整することで、枠体部(2)と扉(1)が接触している状況を解除し、扉(1)をスムーズに開閉することができる。以下、具体的な構造や調整について
図7を使って説明する。
第1軸体(15)は、第1上側羽根板(13)と一体となった第1円筒部(155)に嵌合して第1円筒部(155)の内部を自在に回転できる第1偏芯軸(156)の二重構造となっている。更に、第1偏芯軸(156)は、第1円筒部(155)の内部を自在に回転できる円柱形状部(157)と円柱形状部(157)の底面に対して偏芯した位置にある第1偏芯シャフト(158)を備えている。
図7(a)は、第1円筒部(155)の内部に第1偏芯軸(156)が嵌合している図であり、円柱形状部(157)の底面に対して、第1偏芯シャフト(158)が偏芯している状況を示している。
また、
図7(b)は、第1円筒部(155)から第1偏芯軸(156)を切り離している図である。第1偏芯軸(156)の頭部には、第1十文字形状の溝(17)があり、更に第1円筒部(155)の外側表面の中央部には、第1セットボルト(159)が取り付けられており、第1セットボルト(159)の先端は、第1円柱形状部(157)の表面に設置された第1固定溝(168)に達して、固定される構造となっている。
枠体部(2)と扉(1)が接触してしまい扉(1)の開閉の動きが悪くなっている時は、最初に、第1円筒部(155)にある第1セットボルト(159)を緩める。第1偏芯軸(156)を動かすには、頭部にある第1十文字形状の溝(17)にドライバーを入れて、第1偏芯軸(156)を回すことで、第1偏芯シャフト(158)が、前後左右に動き、第1軸体(15)と第1管部(16)の縦横方向の位置を調整することができる。
位置を調整した後は、第1円筒部(155)にある第1セットボルト(159)を締めて固定させる。
第2円柱部(251)も第1円柱部(151)と同じ様に、
第2円筒部(253)に嵌合して第2円筒部(253)の内部を自在に回転できる第2偏芯軸(254)の二重構造となっている。更に、第2偏芯軸(254)は、第2円筒部(253)の内部を自在に回転できる第2円柱形状部(255)と第2円柱形状部(255)の底面に対して偏芯した位置にある第2偏芯シャフト(256)を備えている。
また、第2偏芯軸(254)の頭部には、第2十文字形状の溝(27)があり、更に第2円筒部(253)の外側表面の中央部には、第2セットボルト(257)が取り付けられており、第2セットボルト(257)の先端は、第2円柱形状部(255)の表面に設置された第2固定溝(258)に達して、固定される構造となっている。
第2円柱部(251)は、第1円柱部(151)と同じ構造になっているため、第2円柱部(251)については、図示を省略する。
偏芯機構を持たせた第1対震丁番(10)と第2対震丁番(20)の両方を使って、枠体部(2)と扉(1)の位置を調整することで、扉(1)をスムーズに開閉することができる。
【0027】
地震が発生し、周辺構造物(3)が移動した時の脱出ユニット扉(31)の挙動について、以下に説明する。
図8,
図9,
図10,
図11のように周辺構造物(3)が四方に移動した場合の脱出ユニット扉(31)を次のように想定した。
脱出ユニット扉(31)は、周辺構造物(3)より室外側に配置されていると仮定し、脱出ユニット扉(31)と周辺構造物(3)の関係について、周辺構造物(3)が傾いた方向を次のA,B,C,Dのように想定した。
この場合脱出ユニット扉(31)を室外から見て、扉(1)の右側の対震ユニット丁番(30)を軸として室外側に開くとした。
A. 室内側へ傾いた場合
B. 室外から見て、右側へ変形した場合
C. 室外から見て、左側へ変形した場合
D. 室外側へ傾いた場合
【0028】
Aの場合、
図8のように脱出ユニット扉(31)は、周辺構造物(3)と共に室
内側に移動する。脱出ユニット扉(31)は室内側に移動するが、脱出ユニット扉(31)には干渉するものはなく、脱出ユニット扉(31)は通常通り開けることが可能であり、部屋(室内)から脱出することができる。
【0029】
Bの場合、
図9のように脱出ユニット扉(31)は周辺構造物(3)と共に右側に移動しているが、脱出ユニット扉(31)は周辺構造物(3)より室外側に配置されているため、周辺構造物(3)及び床(4)に干渉されないため、脱出ユニット扉(31)は通常通り開けることが可能であり、部屋(室内)から脱出することができる。
【0030】
Cの場合、
図10のように周辺構造物(3)が左側に移動した場合、
図4の様に、(0023)で説明した対震ユニット丁番(30)の第1管部(16)や第2管部(26)は、枠体部(2)と共に移動するが、第1軸体(15)や第2軸体(25)は、移動することなく、脱出ユニット扉(31)は、水平状態を保つことができ、通常通り開けることが可能であり、部屋(室内)から脱出することができる。
【0031】
Dの場合、
図11のように脱出ユニット扉(31)は周辺構造物(3)と共に室外側に移動する。脱出ユニット扉(31)は室外側に移動するが、閉まった状態では扉(1)に干渉するものはない。扉(1)を開ける操作をすると、扉(1)の左側の底辺部が床(4)に干渉し、扉(1)を右に移動させる力が加わる。
図4の様に、(0023)で説明した丁番の第1軸体(15)や第2軸体(25)が、第1管部(16)内や第2管部(26)内をスライドと移動することにより、扉(1)は右方向に移動し、扉(1)を開けることが可能となる。その結果、部屋(室内)から脱出することができる。
【0032】
扉が大きい時や重量が重い扉の時には、2カ所の丁番では耐久性がなく、丁番は3カ所設置することが想定される。この場合は、上方部に第1対震丁番(10)、中央部にも第1対震丁番(10)、下方部には第2耐震丁番(20)を設置した構造体にすると共に、各軸体(2か所の第1軸体と第2軸体)を支えるために、各管部(2か所の第1管部と第2管部)の底部に溝部(167,261)を備えることで、2カ所の丁番を設置した時と同様な機能を得ることができ、地震が発生したときでも脱出ユニット扉(31)は通常通り開けることが可能であり、部屋(室内)から脱出することができる。
更に、4か所以上の丁番が設置された時にも、3カ所設置と同じように、下方部に第2対震丁番を設置する構造体とし、それ以外の丁番を第1対震丁番とすることで、2カ所の丁番を設置した時と同様な機能を得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 扉
2 枠体部
3 周辺構造物
4 床
10 第1対震丁番
11 第1上側羽根
12 第1下側羽根
13 第1上側羽根板
14 第1下側羽根板
15 第1軸体
151 第1円柱部
152 第1シャフト
153 切り欠け部
154 パイプ部
155 第1円筒部
156 第1偏芯軸
157 第1円柱形状部
158 第1偏芯シャフト
159 第1セットボルト
16 第1管部
163 突き出し板
164 先端部
165 突起部
166 湾曲部
167 第1溝部
168 第1固定溝
17 第1十文字形状の溝
20 第2対震丁番
21 第2上側羽根
22 第2下側羽根
23 第2上側羽根板
24 第2下側羽根板
25 第2軸体
251 第2円柱部
252 第2シャフト部
253 第2円筒部
254 第2偏芯軸
255 第2円柱形状部
256 第2偏芯シャフト
257 第2セットボルト
258 第2固定溝
259 第2円錐台部
26 第2管部
261 第2溝部
27 第2十文字形状の溝
30 対震ユニット丁番
31 脱出ユニット扉