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特開2024-58213再粘着制御装置、再粘着制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058213
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】再粘着制御装置、再粘着制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B60L15/20 Y
B60L15/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165435
(22)【出願日】2022-10-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA15
5H125DD16
5H125EE51
5H125EE63
(57)【要約】
【課題】空転または滑走が発生したときに駆動輪を路面に再粘着させるとともに、駆動輪と路面との粘着力を高い状態で維持することができる再粘着制御装置を提供する。
【解決手段】再粘着制御装置は、車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、
を備える再粘着制御装置。
【請求項2】
前記増減信号を位相補償して前記リミットサイクルを前記粘着力最大値の近傍に維持する位相補償器をさらに備える、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項3】
前記リミットサイクルの周期を制限する周期制限器をさらに備える、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項4】
前記周期制限器は、前記滑り状態判定器の判定結果が切り換わってから所定時間を経過していない場合に、前記駆動力の漸増および漸減の切り替えを制限する保持指令を出力し、前記所定時間を経過した場合に前記駆動力の漸増および漸減の切り替えを許可する続行指令を出力し、
前記リミットサイクル発生器は、前記滑り状態判定器の判定結果と、前記周期制限器の保持指令または続行指令と、増減信号の値との組み合わせを定めた決定表に基づいて、出力する前記増減信号を決定する、
請求項3に記載の再粘着制御装置。
【請求項5】
前記車両の速度および前記車両における車輪の路面に対する垂直抗力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記駆動力を漸増または漸減する時間変化率、前記滑り閾値、および前記粘着閾値を修正する設定値修正器をさらに備える、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項6】
前記設定値修正器は、
前記車両の速度から前記リミットサイクルの周期および振幅を検出し、
検出した前記周期および前記振幅の少なくとも一方が予め設定した標準値より所定量を超えて変動した場合に、前記標準値からの超過量に比例して前記時間変化率、前記滑り閾値、および前記粘着閾値を修正する、
請求項5に記載の再粘着制御装置。
【請求項7】
前記滑り速度と、前記滑り閾値よりも大きい値である第2の滑り閾値および前記粘着閾値よりも大きい値である第2の粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する第2の滑り状態判定器をさらに備え、
前記リミットサイクル発生器は、前記滑り状態判定器の判定結果に基づく増減信号を、前記第2の滑り状態判定器の判定結果に基づいて調節する、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項8】
前記リミットサイクル発生器は、前記駆動輪の駆動力に代えて、前記駆動輪の制動力を漸増または漸減する増減信号を出力する、
請求項1から7の何れか一項に記載の再粘着制御装置。
【請求項9】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、
を有する再粘着制御方法。
【請求項10】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、
を再粘着制御装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再粘着制御装置、再粘着制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の加速減速は、車輪(駆動輪)を駆動する内燃機や電動機の動力を加減して行われる。しかし車輪と路面や線路の粘着力は粘着係数μにより制限される。例えば、車輪の垂直抗力がWであるならば、粘着力の最大値はμWである。図15に示すように、粘着係数μは一定値ではなく、車輪の滑り率λに依存し、粘着係数μが最大(極大、ピーク)となる滑り率λがある。滑り率λとは、車輪と路面の周速度差を、駆動側の周速度で除した値である。滑り率λが0と極大値(図15の例ではλ≒0.05)との間(粘着領域)では、滑り率λが増大するにつれて粘着係数μは増大する。一方、滑り率λが極大値より大きい状態(空転領域)では、滑り率λが増大するにつれて粘着係数μは減少する。従って、図15の例では、滑り率を0.05程度にして運転すると、車両の加減速は最大化される。
【0003】
しかし、滑り率λと粘着係数μのグラフは、路面の状態、たとえば乾燥状態か湿潤状態かなどに依存して形状が変わるので、粘着係数μの最大値で運転するためには、最大値を探索することが必要である。そもそも、最大値以前に滑り率λに対応する粘着係数μまたは粘着力を直接的に計ることもできないので、粘着係数μは他の計測値から推定するなどの別の手間がさらに必要となる。もちろん、所望する車両の駆動力が粘着力の最大値より充分に小さければこのような技術は必須ではない。このような技術は、湿潤した路面を加速しながら登板するときのような、粘着力の最大値に近いかまたは瞬間的に粘着力の最大値を超える駆動力が要るときに、最大値に近い駆動力を安定して提供するところに価値がある。
【0004】
特許文献1では、動力装置である電動機の出力トルクと滑り率λの計測値から、滑り率λに対応する粘着係数μを推定している。静的には、電動機の出力トルクは粘着力を超えないから、電動機の出力トルクから粘着係数を推定することは原理的には可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5940290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば車輪が濡れた落ち葉を踏んで粘着係数が変化した瞬間に、濡れた落ち葉に対して適切な粘着係数μの値はわからない。従来技術では、粘着係数μの値を推定するには、トルクと滑り率のデータが収集されるのを待たなければならない。また、従来技術では、粘着係数の推定の演算に時間がかかるので、十分な速応性が得られない。このため、粘着係数の推定値に基づいて車両を制御する従来技術では、濡れた落ち葉を踏んだ場合などのように粘着係数の極大値の急な変化に追随することが困難となり、車輪と路面との粘着力が低下してしまう可能性があった。
【0007】
本開示の目的は、空転または滑走が発生したときに駆動輪を路面に再粘着させるとともに、駆動輪と路面との粘着力を高い状態で維持することができる再粘着制御装置、再粘着制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、再粘着制御装置は、車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、を備える。
【0009】
本開示の一態様によれば、再粘着制御方法は、車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、を有する。
【0010】
本開示の一態様によれば、プログラムは、車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、を再粘着制御装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、空転または滑走が発生したときに駆動輪を路面に再粘着させるとともに、駆動輪と路面との粘着力を高い状態で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る車両の全体構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る再粘着制御装置の機能を説明するための図である。
図4】第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能を説明するための第1の図である。
図6】第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能を説明するための第2の図である。
図7】第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能を説明するための第3の図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能を説明するための第4の図である。
図9】第2の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図10】第3の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図11】第3の実施形態に係る設定値修正器の機能を説明するための図である。
図12】第4の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図13】第4の実施形態に係る再粘着制御装置の機能を説明するための図である。
図14】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図15】粘着係数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について、図1図3を参照しながら説明する。
【0014】
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る車両の全体構成を示す概略図である。
図1に示す車両90は、例えば、軌道上を走行する鉄道車両である。車両90は、再粘着制御装置10と、駆動輪91を駆動する動力装置20とを備える。
【0015】
動力装置20は、駆動力指令に従って駆動輪91を駆動または制動する。再粘着制御装置10は、駆動輪91と路面Rとの粘着力を維持するように駆動力指令を増減させるトルク緩和信号を出力する。なお、駆動力指令は、既知の車両制御装置(不図示)が操作者の操作等に従って算出したものである。
【0016】
(再粘着制御装置の機能構成)
図2は、第1の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、再粘着制御装置10は、滑り状態判定器100と、リミットサイクル発生器101とを備える。
【0017】
滑り状態判定器100は、車両90の駆動輪91(駆動輪)の路面に対する滑り速度に基づいて、駆動輪91が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する。
【0018】
リミットサイクル発生器101は、滑り状態判定器100の判定結果に基づいて、駆動輪91の駆動力(もしくは制動力)を漸増または漸減する増減信号を出力し、駆動輪91と路面Rとの粘着力の最大値を通るリミットサイクルを発生させる。
【0019】
(再粘着制御装置の処理について)
図3は、第1の実施形態に係る再粘着制御装置の機能を説明するための図である。
ここでは、図3を参照しながら本実施形態に係る再粘着制御装置10の具体的な処理の内容について説明する。
【0020】
駆動輪91の慣性能率をJ[kgm]、駆動輪91の角速度をω[rad/s]、駆動輪91の半径をr[m]、車両90の速度をv[m/s]、駆動輪91と路面Rとの粘着力をF[N]、動力装置20による駆動輪91の駆動トルクをT[Nm]とすると、駆動輪91の運動方程式は次式(1)のように表される。
【0021】
【数1】
【0022】
粘着力Fは周方向に作用し、路面Rと駆動輪91との周速差rω-v(滑り速度)に依存する粘着係数μと、駆動輪91の垂直抗力W(N)から次式(2)のように表される。
【0023】
【数2】
【0024】
式(1)のr―1Tは周方向の駆動力[N]である。駆動トルクは駆動輪91の運動エネルギーを増す向きのトルク(動力装置20の力行トルク)である。トルクが駆動輪91の運動エネルギーを減らす向きに駆動輪91に作用するなら制動トルク(動力装置20の回生トルクまたはブレーキトルク)である。駆動トルクと制動トルクは向き(正負)が違うだけで、駆動輪91の滑りはどちらも同じ式で表される。
【0025】
本実施形態では、主に再粘着制御装置10が力行時における駆動輪91の滑り状態(空転)を検知し、駆動トルクを増減して駆動輪91を再粘着させる空転再粘着制御装置として機能する例について説明するが、同じ技術は制動トルクにも適用できる。したがって、再粘着制御装置10は、回生時における駆動輪91の滑り状態(滑走)を検知し、制動トルクを増減して駆動輪91を再粘着させる滑走再粘着制御装置としても機能する。滑走再粘着制御装置として機能する場合、以下の説明における「駆動力」、「駆動力指令」、「空転」は、それぞれ「制動力」、「制動力指令」、「滑走」に読み替える。
【0026】
図3は、横軸を路面Rと駆動輪91の周速差rω-v、縦軸を駆動力r―1Tまたは粘着力Fとして、本実施形態の再粘着制御装置10が動作したときの駆動力r―1Tと周速差rω-vとの関係を点A~点Eで表している。また、実線のグラフは周速差に対する粘着力Fを表している。
【0027】
滑り状態判定器100は、入力された周速差rω―v(滑り速度)と、滑り閾値SVおよび粘着閾値SVとを比較する。滑り状態判定器100は、周速差が滑り閾値SVを超える場合に、滑り状態であると判定して駆動力を緩和する緩和指令を出力する。また、滑り状態判定器100は、周速差が粘着閾値SV以下である場合に、粘着状態であると判定して緩和を解除する解除指令を出力する。
【0028】
リミットサイクル発生器101は、滑り状態判定器100から入力された緩和指令または解除指令に基づいて、トルク緩和増減信号を出力する。
【0029】
リミットサイクル発生器101に緩和指令が入力されると、緩和解除切替器1011からトルク緩和増減指令として、緩和率-α[定格トルク/秒]が出力される。トルク緩和増減指令を時間積分して定格トルクTmxを乗じたものがトルク緩和増減信号である。また、リミットサイクル発生器101に解除指令が入力されると、緩和解除切替器1011からトルク緩和増減指令として、緩和率+α[定格トルク/秒]が出力され、トルク緩和増減信号は0に向けて回復する。トルク緩和増減信号は、上限ULは0、下限LLは-1に設定されている。空転しない通常の運転状態では、滑り状態判定器100は解除指令を継続的に出力するので、トルク緩和増減信号は通常は上限の0である。空転すると、滑り状態判定器100は緩和指令を出力する。そうすると、リミットサイクル発生器101は、トルク緩和増減信号を0から緩和率-αで低下させる。
【0030】
本実施形態では、リミットサイクル発生器101が出力するトルク緩和増減信号をトルク緩和信号Tとする。トルク緩和信号Tは、空転再粘着制御前のトルク指令Tを減らす(0に近付ける)ことが目的である。空転再粘着制御前のトルク指令Tの符号の負のときには、トルク緩和信号Tは空転再粘着制御前のトルク指令Tから差し引かなければならない。空転再粘着制御前のトルク指令Tの符号による場合分けは、例えば符号関数sgn(T)で実現すればよい。符号関数sgn(T)の値はTが正のとき1、Tが負のとき-1である。空転再粘着制御後のトルク指令T*は次式(3)で表される。
【0031】
【数3】
【0032】
ここで、図3を参照しながら、再粘着制御装置10が発生させるリミットサイクルについて説明する。
図3の例では、初期状態は点Aであり、最大粘着力となる周速差で運転しているとする。また、この状態でステップ的に駆動力を増やして運転点を点A’に変えた後、点A’における駆動力を保持したとする。点A’では、r―1T-F>0だから駆動輪91は加速し、運転点の軌跡は点A’から右方向に移動する。
【0033】
滑り状態判定器100は、周速差rω-vを入力し駆動輪91が滑り状態か粘着状態か判定する。滑り状態判定器100は、点Bにおいて周速差が滑り閾値SVを超えると、滑り状態と判定し緩和指令を出力する。リミットサイクル発生器101は、緩和指令に基づき駆動力を漸減するためのトルク緩和増減信号(トルク緩和信号T)を出力する。例えば、リミットサイクル発生器101は予め定めた漸減率でトルク緩和信号Tを負側に大きくする。トルク緩和信号Tは駆動力指令Tに加算され、結果として駆動力は漸減する。したがって、点Bから後、運転点は縦軸について下方に向かう。横軸については、r―1T-F>0だから駆動輪91は加速し周速差は増加するので、点Bから後も運転点は右側に移動する。結局、運転点は点Bの右下に移動する。
【0034】
漸減率を負側に充分に大きく設定しておけば、駆動力は低下してやがて粘着力に一致するときが来る。図3では、駆動力と粘着力とが一致するときを点Cで表している。点Cでは、式(1)に従って駆動輪91の加速が止まり、周速差の増加も止まり、それ以降は周速差は減少に転じる。その結果、運転点は点C以降は左下に向かう。
【0035】
その後、周速差が粘着閾値SVまで低減すると、滑り状態判定器100は、粘着状態になったと判定して解除指令を出力する。そうすると、リミットサイクル発生器101は、緩和信号の解除を開始する。具体的に、図3の例では、滑り状態判定器100は点Dにおいて解除指令を出力し、リミットサイクル発生器101はそれ以前のトルク緩和信号Tを負側へ漸増する制御から漸減する制御に切り替える。緩和信号の解除を開始すると駆動力は漸増する。このため、運転点は点D以降は縦軸については上側に向かう。周速差については、依然r―1T-F<0であるので駆動輪91は継続的に減速し、運転点は点D以降、左上に向かう。
【0036】
そして、点Eにて駆動力と粘着力が釣合って再粘着する。再粘着する点E以降も緩和信号の解除は継続するので、運転点は粘着力Fのグラフに沿って上側に移動する。運転点が粘着力の最大値となる点Aに達した後も緩和信号の解除を継続すると、再び空転状態となり、運転点は右上(点Bの方向)に移動する。
【0037】
このように、本実施形態の再粘着制御装置10は、リミットサイクル発生器101によりトルク緩和信号Tを漸増または漸減して、駆動力をランプ状に増加または減少させる。そうすると、空転発生時に、運転点は駆動力と周速差とからなる二次元平面に粘着力の最大値を通る周期軌道(A→B→C→D→E→A)、すなわちリミットサイクルを作る。2周目の軌道は1周目とは多少ずれるかもしれないが、3周目以降は同じ周期軌道を生じる。
【0038】
粘着力が一時的に低下した原因(例えば、濡れた落ち葉を踏んだこと)が解消され、粘着力が向上して最大粘着力が点A’より大きくなれば、空転しないので、周期軌道は消滅する。空転再粘着制御は、駆動輪91と路面Rとの粘着力が点A’以上に回復するまでの一時的な機能である。
【0039】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態の再粘着制御装置10は、滑り速度に基づいて駆動輪91の滑り状態を判定する滑り状態判定器100と、滑り状態判定器100の判定結果に基づいて、駆動輪91の駆動力または制動力を漸増または漸減する増減信号Tを出力するリミットサイクル発生器101とを備える。
【0040】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、空転した駆動輪91を単に再粘着させるのみでなく、空転が起きたときも粘着力の最大値の周囲にリミットサイクルを生じさせて粘着力を比較的高い状態に保つことができるという効果を得ることができる。
【0041】
また、再粘着制御装置10は、従来技術のように粘着係数を推定を行わないので、推定に要するデータの収集が不要であり、また、演算処理に要する時間を大幅に短縮することができる。したがって、再粘着制御装置10は、例えば濡れた落ち葉を踏んだ場合などのように、粘着係数の極大値の急な変化に追随可能な速応性の高い再粘着制御を行うことができる。
【0042】
<第1の実施形態の変形例>
次に、第1の実施形態の変形例について図4図8を参照しながら説明する。
【0043】
図4は、第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、再粘着制御装置10は、さらに位相補償器102を備えていてもよい。
【0044】
位相補償器102は、リミットサイクル発生器101が出力するトルク緩和増減信号を位相補償して、リミットサイクルを粘着力の最大値の近傍に維持する。
【0045】
図5図8は、第1の実施形態の変形例に係る再粘着制御装置の機能を説明するための図である。
ここでは、図5図8を参照しながら、位相補償器102により、リミットサイクルの軌道の周長を小さくする技術について説明する。
【0046】
運転点が閉軌道を一周する周期をtと記すと、運転点が周期軌道を一周する間の有効な駆動力の期待値<r―1T>は次式(4)で表される。
【0047】
【数4】
【0048】
図5は、閉軌道の大きさと駆動力の期待値(平均値)との関係を表している。破線の周期軌道G2(A→B→C→D→E→A)は大きな周期軌道の例である。実線の周期軌道G1(a→b→c→d→e→a)は小さな周期軌道の例である。駆動力の平均値は、例えば、周期軌道G1についてはa,b,c,d,eにより囲まれる範囲のうち、粘着力Fのグラフの内側の面積(網掛け部)を上下に二等分する値である。周期軌道G2についても同様である。大きな周期軌道G2と小さな周期軌道G1とを比較すると、小さな周期軌道G1のほうが駆動力の平均値が大きい。したがって、小さな周期軌道G1によると車両90はより急な加速または減速が可能となる。
【0049】
このように、空転再粘着の周期軌道を小さくすると、有効な駆動力の期待値が向上する。そこで、空転再粘着の周期軌道を小さくする技術を説明する。本変形例では、図4に示すように、再粘着制御装置10は、滑り状態判定器100およびリミットサイクル発生器101に加えて、位相補償器102を用いることが特徴である。なお、本実施形態では、リミットサイクル発生器101が出力したトルク緩和増減信号を位相補償器102で位相補償した値がトルク緩和信号Tである。
【0050】
また、図6に示すように、周速差の平衡点がSVとSVの中間にあるとして周期軌道(リミットサイクル)の周期と振幅を評価する。平衡点における粘着力をFとする。評価を簡単化するために、次式(5)のように粘着力Fを周速差で線形近似する。
【0051】
【数5】
【0052】
粘着力の比例係数C[N/(m/s)]は、運転点が周期軌道(例えば、a→b→c→d→e→a)を辿るときの周速差と粘着力から次式(6)で計算されるが、簡単に0で近似する。
【0053】
【数6】
【0054】
次式(7)のように滑り閾値SVと粘着閾値SVとの差をhで表す。
【0055】
【数7】
【0056】
運転点が空転再粘着の周期軌道を成すとき、本実施形態の空転再粘着制御の閉ループ系は図7のようにモデル化できる。周速差の平衡点に対する偏差をx、緩和率または解除率をyと記す。閉ループ系の線形部分の伝達関数をG、非線形部分の記述関数をNで表すと、本実施形態の空転再粘着制御の閉ループ系は次式(8)で表される。
【0057】
【数8】
【0058】
記述関数N(X)について説明する。記述関数は、リレー要素などの非線形要素の入出力の関係をゲインと位相で近似的に表すものである。非線形要素の入出力の関係は入力の振幅に依存する。空転再粘着制御では、非線形要素はヒステリシス付きのリレーであり、入力がx、出力がyである。入力xの時間波形を、次式(9)のような一般的な正弦波で表す。Xは振幅である。
【0059】
【数9】
【0060】
非線形要素Nに周期的な入力xを与えると何等かの周期的な出力yが得られる。出力yは次式(10)のフーリエ展開により表現することができる。
【0061】
【数10】
【0062】
このとき,記述関数N(X)は次式(11)のように表される。
【0063】
【数11】
【0064】
ただし、a、bは式(12)~(13)である。また、式(12)~(13)のβは式(14)である。
【0065】
【数12】
【0066】
【数13】
【0067】
【数14】
【0068】
記述関数を用いれば、空転再粘着制御の閉ループ系のリミットサイクルの周期軌道の解析ができる。閉ループを点Pで開いて考える。ヒステリシス付きリレーの入力に、x=Xsin(ωt)の正弦波信号を与えると、その出力yには、角周波数ωを基本波とする歪んだ波形が生じるだろう。しかし、線形部分の伝達関数Gにより歪の成分である高調波は減衰し、出力yには線形部分に相当するXsin(ωt)だけが残ったとしよう。このとき、点Pを閉じると、閉ループ系にはx=Xsin(ωt)のリミットサイクルが持続することになる。それが起きる条件は、次式(15)である。
【0069】
【数15】
【0070】
ここに、G(jω)は伝達関数G(s)の角周波数ωに対する応答関数の値、N(X)は記述関数Nの振幅Xに対する値である。したがって、複素平面上にG(jω)と1/N(X)の軌跡を描いて、両軌跡に交点が存在するなら、リミットサイクルが発生することが確かめられる。
【0071】
図8は、G(jω)と1/N(X)の軌跡の例である。実線L1は1/N(X)の軌跡であり、振幅Xがh/2のときは虚軸Imに座標(0,―jπh/8α)で接し、振幅Xが拡大すると-∞方向に虚軸Imから遠ざかる。
【0072】
破線L2と点線L3で示す伝達関数G(jω)の軌跡について、G(jω)はω→0のときに実軸Re上の-∞であり、角周波数ωが大きくなると虚軸Imに漸近し、角周波数ωが無限大で虚軸Imに沿って原点Oに到達する。
【0073】
点線L3で示す伝達関数の軌跡は、位相補償器102の設定値γの値が小さいときを表している。L3は1/N(X)と点Qで交差するので、リミットサイクルは点Qに対応する振幅Xと角周波数ωで発生する。
【0074】
破線L2で示す伝達関数の軌跡は、位相補償器102の設定値γの値が大きいときを表している。設定値γによる位相進み補償の効果によって,破線のL2は点線L3よりも虚軸に近接し、1/N(X)と点Qで交差する。リミットサイクルは点Qに対応する振幅Xと角周波数ωで発生する。
【0075】
点Qは点Qの右側にあるので、γを大きくするとXの振幅が小さくなる。Xは周速差rω-vの振幅を表すから、γを大きくすれば周速差、すなわち滑り速度を小さくできる。より具体的には、図4の例のように、γが小さいとG2(A→B→C→D→E→A)のように大きな周期軌道が発生し、粘着力の低下は相対的に大きくなる。γが大きいとG1(a→b→c→d→e→a)のように小さな周期軌道が発生し、粘着力の低下は相対的に小さくなる。
【0076】
なお、γの値は、リミットサイクルが粘着力の最大値を含み、且つγの値が最大となるように試験を行って決定する。
【0077】
このように、位相補償器102は、リミットサイクル発生時に周速差(滑り速度)の振幅を小さくし、粘着力の低下を小さくすることができる。
【0078】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について図9を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0079】
図9は、第2の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係る再粘着制御装置10は、周期制限器103をさらに備える。周期制限器103は、リミットサイクルの周期を制限する。
【0080】
なお、図9には、周期制限器103を第1の実施形態の変形例(図4)の構成に追加した例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、周期制限器103を第1の実施形態(図2)の構成に追加してもよい。
【0081】
再粘着制御装置10は、空転時に粘着力の最大値の近傍でリミットサイクルを生じさせ、最大値に近い粘着力を継続的に得ることを可能とする。そのためには、リミットサイクルは短周期であることが望ましい。トルク緩和信号Tの正負を短い周期で交番させれば周速差も短い周期で増減し、大きな滑りとならないからである。
【0082】
しかし、リミットサイクルの周期が極端に短周期となり、駆動輪91の駆動系や制動系の固有周期を励起すると、異常な振動が起きる恐れがある。例えば、駆動系や制動系の固有周期が0.1秒程度であるならば、リミットサイクルの周期を、例えば0.2秒程度を下限として駆動系や制動系の固有周期を励起させなくすることは有効である。
【0083】
その目的のため、本実施形態では、周期制限器103を追加する。周期制限器103は、滑り状態判定器100の出力が緩和指令または解除指令に切り替わった時点から所定時間(例えば、0.2秒)経過するまでは保持指令を出力し、所定時間を経過後に続行指令を出力する。保持指令はトルク増減信号を前回値から変化させないように禁止する指令、続行指令は緩和指令または解除指令に基づきトルク増減信号の変化を許可する指令である。
【0084】
本実施形態に係るリミットサイクル発生器101は、緩和解除切替器1011に代えて、決定表1012によって駆動輪91を駆動するトルクを緩和するか、または解除するかを定める。決定表1012は、第1の入力(INPUT1)と第2の入力(INPUT2)とからトルクの緩和レートまたは解除レートを出力する。滑り状態判定器100の出力(緩和指令または解除指令)が第1の入力であり、周期制限器103の出力(保持指令または続行指令)が第2の入力である。
【0085】
本実施形態の特徴である、決定表1012と周期制限器103の動作を説明する。滑り状態判定器100の出力が解除指令から緩和指令に変化した後すぐに、例えば0.1秒後に、滑り状態判定器100が解除指令を出力したとしよう。決定表1012の第1の入力の値は「解除」である。周期制限器103は、緩和指令が開始してから0.2秒経過するまでは保持指令を出力するよう設定されているとすると、0.2秒経過するまでは周期制限器103は保持指令を出力し、決定表の第2の入力の値は「保持」である。第1の入力が「解除」、第2の入力が「保持」のとき、図9に示すように、決定表1012の出力は「0」である。また、0.2秒経過後は、第2の入力が「続行」に切り替わるので、決定表1012の出力は「+α」となる。その結果、駆動トルクは0.2秒経過するまで前回値が保持されるので、0.2秒より短い周期のリミットサイクルは起きない。一方、周期制限器103の無い場合に同じことが起きるなら、駆動トルクは遅滞なく解除されてリミットサイクルが進展するので、短周期のリミットサイクルを防ぐことができない。
【0086】
このようにして、周期制限器103は短周期のリミットサイクルを回避し、駆動系や制動系の励振の発生を抑制する。
【0087】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態について図10図11を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0088】
図10は、第3の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施形態に係る再粘着制御装置10は、設定値修正器104をさらに備える。設定値修正器104は、滑り速度に基づいて、緩和率αおよび解除率α(時間変化率)、滑り閾値SV、粘着閾値SVを修正する。
【0089】
なお、図10には、設定値修正器104を第1の実施形態の変形例(図4)の構成に追加した例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、設定値修正器104を第1の実施形態(図2)、または第2の実施形態(図9)の構成に追加してもよい。
【0090】
再粘着制御装置10の設定値である緩和率α、解除率α、滑り閾値SV、粘着閾値SVは、車両90の速度毎に相応しい値がある。このため、これらの設定値を車両の速度に応じて変更してもよい。また車両90の速度の他にも、輪重計などで計測した、車両90における車輪の路面Rに対する垂直抗力Wに基づいてこれらの設定値を変更してもよい。
【0091】
リミットサイクルの振幅や周期も、車両90の速度毎に標準的な値がある。もし、リミットサイクルの振幅や周期が標準的な値から大きくそれるならば、設定値を修正して振幅や周期が標準的な値から大きくそれることを抑制する。このため、設定値修正器104は、周期・振幅検出器1041により、車両90の速度からリミットサイクルの周期tおよび振幅Mを検出する。
【0092】
図11は、第3の実施形態に係る設定値修正器の機能を説明するための図である。
図11に示す修正関数1042は、検出した振幅Mが標準的な値に対し±Dを超えて変動する場合は、その超過に比例して各設定値を調節する。同様に、修正関数1042は、検出した周期tが標準的な値に対し±Dtcを超えて変動する場合は、その超過に比例して各設定値を調節する。
【0093】
例えば、振幅がDを超過するならば超過の度合に比例して緩和率αと解除率αを大きくして滑り速度が大きくなる前に駆動トルクを緩和する。また、滑り閾値SVと粘着閾値SVは振幅Mの範囲に含まれるよう調節する。滑り閾値SVおよび粘着閾値SVを修正するための比例係数K11,K21は正の値を設定する。また、緩和率αおよび解除率αを修正するための比例係数K31,K41も正の値を設定する。修正関数1042は、比例係数に基づく修正量を修正前の設定値に加算して、修正後の設定値を決定する。以降、滑り状態判定器100およびリミットサイクル発生器101は、修正後の設定値を使って処理を行う。
【0094】
このようにすることで、再粘着制御装置10は、車両90の速度に応じて適切な振幅および周期を有するリミットサイクルを発生させることができる。
【0095】
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態について図12図13を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0096】
図12は、第4の実施形態に係る再粘着制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図12に示すように、本実施形態に係る再粘着制御装置10は、第2の滑り状態判定器100Aをさらに備える。また、リミットサイクル発生器101は、第2の緩和解除切替器1011Aをさらに備え、第2の緩和解除切替器1011Aの出力に基づいてトルク緩和増減信号を調節する。
【0097】
なお、図12には、第2の滑り状態判定器100Aおよび第2の緩和解除切替器1011Aを第1の実施形態の変形例(図4)の構成に追加した例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、これらを第1の実施形態(図2)、第2の実施形態(図9)、または第3の実施形態(図10)の構成に追加してもよい。
【0098】
図13は、第4の実施形態に係る再粘着制御装置の機能を説明するための図である。
第2の滑り状態判定器100Aは、第2の滑り閾値SV1Aと第2の粘着閾値SV2Aとを有する。図13に示すように、第2の滑り閾値SV1Aおよび第2の粘着閾値SV2Aは、それぞれ、既存の滑り閾値SVおよび粘着閾値SVより大きな値を設定する。
【0099】
そして、第2の緩和解除切替器1011Aは、第2の滑り閾値SV1Aに対応して第2の緩和率-αを、第2の粘着閾値SV2Aに対応して第2の解除率0を設定する。さらに、トルク緩和増減信号の増減率は上述の実施形態では緩和解除切替器1011の出力のみから決定していたが、本実施形態では緩和解除切替器1011の出力と第2の緩和解除切替器1011Aの出力の和で決定する。
【0100】
このように和を用いると、図13に示すように、滑り速度が第2の滑り閾値SV1Aを超える点B2以降では、緩和率に-αが追加される。これによりリミットサイクルの軌道が小さくなり、有効な駆動力を増やすことができる。
【0101】
<コンピュータ構成>
図14は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図を示す。
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、および、インタフェース904を備える。
【0102】
上述の再粘着制御装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。
【0103】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0104】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0105】
<付記>
上述の実施形態は、例えば以下のように把握される。
【0106】
(1)第1の態様によれば、再粘着制御装置10は、車両90の駆動輪91の路面Rに対する滑り速度と、滑り閾値SVおよび粘着閾値SVとに基づいて、駆動輪91が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器100と、滑り状態判定器100の判定結果に基づいて、駆動輪91の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、駆動輪91と路面Rとの粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器101と、を備える。
【0107】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、空転した駆動輪91を単に再粘着させるのみでなく、空転が起きたときも粘着力の最大値の周囲にリミットサイクルを生じさせて粘着力を比較的高い状態に保つことができるという効果を得ることができる。また、再粘着制御装置10は、従来技術のように粘着係数を推定を行わないので、推定に要するデータの収集が不要であり、また、演算処理に要する時間を大幅に短縮することができる。したがって、再粘着制御装置10は、例えば濡れた落ち葉を踏んだ場合などのように、粘着係数の極大値の急な変化に追随可能な速応性の高い再粘着制御を行うことができる。
【0108】
(2)第2の態様によれば、第1の態様に係る再粘着制御装置10は、増減信号を位相補償してリミットサイクルを粘着力最大値の近傍に維持する位相補償器102をさらに備える。
【0109】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、リミットサイクル発生時に周速差(滑り速度)の振幅を小さくし、粘着力の低下を小さくすることができる。
【0110】
(3)第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る再粘着制御装置10は、リミットサイクルの周期を制限する周期制限器103をさらに備える。
【0111】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、短周期のリミットサイクルを回避し、駆動系や制動系の励振の発生を抑制することができる。
【0112】
(4)第4の態様によれば、第3の態様に係る再粘着制御装置10は、周期制限器103は、滑り状態判定器100の判定結果が切り換わってから所定時間を経過していない場合に、駆動力の漸増および漸減の切り替えを制限する保持指令を出力し、所定時間を経過した場合に駆動力の漸増および漸減の切り替えを許可する続行指令を出力し、リミットサイクル発生器101は、滑り状態判定器100の判定結果と、周期制限器103の保持指令または続行指令と、増減信号の値との組み合わせを定めた決定表1012に基づいて、出力する増減信号を決定する。
【0113】
このようにすることで、再粘着制御装置10は、所定時間よりも短周期のリミットサイクルを抑制することができる。
【0114】
(5)第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る再粘着制御装置10は、車両90の速度および車両90における車輪の路面に対する垂直抗力Wの少なくともいずれか一方に基づいて、駆動力を漸増または漸減する時間変化率α,α、滑り閾値SV、および粘着閾値SVを修正する設定値修正器104をさらに備える。
【0115】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、車両90の速度に応じて適切な振幅および周期を有するリミットサイクルを発生させることができる。
【0116】
(6)第6の態様によれば、第5の態様に係る再粘着制御装置10において、設定値修正器104は、車両90の速度からリミットサイクルの周期および振幅を検出し、検出した周期および振幅の少なくとも一方が予め設定した標準値より所定量±Dを超えて変動した場合に、標準値からの超過量に比例して時間変化率α,α、滑り閾値SV、および粘着閾値SVを修正する。
【0117】
このようにすることで、再粘着制御装置10は、リミットサイクルの周期および振幅が標準値に近づくように、リミットサイクルを適切に調整することができる。
【0118】
(7)第7の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る再粘着制御装置10は、滑り速度と、滑り閾値SVよりも大きい値である第2の滑り閾値SV1Aおよび粘着閾値SVよりも大きい値である第2の粘着閾値SV2Aとに基づいて、駆動輪91が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する第2の滑り状態判定器100Aをさらに備え、リミットサイクル発生器101は、滑り状態判定器100の判定結果に基づく増減信号を、第2の滑り状態判定器100Aの判定結果に基づいて調節する。
【0119】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、リミットサイクルの軌道を小さくして、有効な駆動力を増やすことができる。
【0120】
(8)第8の態様によれば、第1から第7の何れか一の態様に係る再粘着制御装置10において、リミットサイクル発生器101は、駆動輪91の駆動力に代えて、駆動輪91の制動力を漸増または漸減する増減信号を出力する。
【0121】
このような構成を有していることにより、再粘着制御装置10は、回生時において滑走した駆動輪91を単に再粘着させることができるとともに、滑走が起きたときも粘着力の最大値の周囲にリミットサイクルを生じさせて粘着力を比較的高い状態に保つことができるという効果を得ることができる。
【0122】
(9)第9の態様によれば、再粘着制御方法は、車両90の駆動輪91の路面Rに対する滑り速度と、滑り閾値SVおよび粘着閾値SVとに基づいて、駆動輪91が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、滑り状態であるか粘着状態であるかの判定結果に基づいて、駆動輪91の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、駆動輪91と路面Rとの粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、を有する。
【0123】
(10)第10の態様によれば、プログラムは、車両90の駆動輪91の路面Rに対する滑り速度と、滑り閾値SVおよび粘着閾値SVとに基づいて、駆動輪91が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、滑り状態であるか粘着状態であるかの判定結果に基づいて、駆動輪91の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、駆動輪91と路面Rとの粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、を再粘着制御装置10に実行させる。
【符号の説明】
【0124】
10 再粘着制御装置
100 滑り状態判定器
100A 第2の滑り状態判定器
101 リミットサイクル発生器
1011 緩和解除切替器
1011A 第2の緩和解除切替器
1012 決定表
102 位相補償器
103 周期制限器
104 設定値修正器
1041 周期・振幅検出器
1042 修正関数
20 動力装置
90 車両
91 駆動輪
900 コンピュータ
901 プロセッサ
902 主記憶装置
903 補助記憶装置
904 インタフェース
910 外部記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、
を備え
前記滑り状態判定器は、前記滑り速度が前記滑り閾値を超える場合に滑り状態であると判定し、前記滑り速度が前記粘着閾値以下である場合に粘着状態であると判定し、
前記リミットサイクル発生器は、前記判定結果が滑り状態である場合に、前記駆動輪の駆動力を所定の緩和率で減少する増減信号を継続して出力して前記駆動力を漸減し、前記判定結果が粘着状態である場合に、前記駆動輪の駆動力を所定の解除率で増加する増減信号を継続して出力して前記駆動力を漸増する、
再粘着制御装置。
【請求項2】
前記増減信号を位相補償して前記リミットサイクルを前記粘着力最大値の近傍に維持する位相補償器をさらに備える、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項3】
前記リミットサイクルの周期を制限する周期制限器をさらに備える、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項4】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、
前記増減信号を位相補償して前記リミットサイクルを前記粘着力最大値の近傍に維持する位相補償器と、
を備える再粘着制御装置。
【請求項5】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、
前記リミットサイクルの周期を制限する周期制限器と、
を備える再粘着制御装置。
【請求項6】
前記周期制限器は、前記滑り状態判定器の判定結果が切り換わってから所定時間を経過していない場合に、前記駆動力の漸増および漸減の切り替えを制限する保持指令を出力し、前記所定時間を経過した場合に前記駆動力の漸増および漸減の切り替えを許可する続行指令を出力し、
前記リミットサイクル発生器は、前記滑り状態判定器の判定結果と、前記周期制限器の保持指令または続行指令と、増減信号の値との組み合わせを定めた決定表に基づいて、出力する前記増減信号を決定する、
請求項3に記載の再粘着制御装置。
【請求項7】
前記周期制限器は、前記滑り状態判定器の判定結果が切り換わってから所定時間を経過していない場合に、前記駆動力の漸増および漸減の切り替えを制限する保持指令を出力し、前記所定時間を経過した場合に前記駆動力の漸増および漸減の切り替えを許可する続行指令を出力し、
前記リミットサイクル発生器は、前記滑り状態判定器の判定結果と、前記周期制限器の保持指令または続行指令と、増減信号の値との組み合わせを定めた決定表に基づいて、出力する前記増減信号を決定する、
請求項5に記載の再粘着制御装置。
【請求項8】
前記車両の速度および前記車両における車輪の路面に対する垂直抗力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記駆動力を漸増または漸減する時間変化率、前記滑り閾値、および前記粘着閾値を修正する設定値修正器をさらに備える、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項9】
前記設定値修正器は、
前記車両の速度から前記リミットサイクルの周期および振幅を検出し、
検出した前記周期および前記振幅の少なくとも一方が予め設定した標準値より所定量を超えて変動した場合に、前記標準値からの超過量に比例して前記時間変化率、前記滑り閾値、および前記粘着閾値を修正する、
請求項に記載の再粘着制御装置。
【請求項10】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、
前記車両の速度および前記車両における車輪の路面に対する垂直抗力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記駆動力を漸増または漸減する時間変化率、前記滑り閾値、および前記粘着閾値を修正する設定値修正器と、
を備え、
前記設定値修正器は、
前記車両の速度から前記リミットサイクルの周期および振幅を検出し、
検出した前記周期および前記振幅の少なくとも一方が予め設定した標準値より所定量を超えて変動した場合に、前記標準値からの超過量に比例して前記時間変化率、前記滑り閾値、および前記粘着閾値を修正する、
再粘着制御装置。
【請求項11】
前記滑り速度と、前記滑り閾値よりも大きい値である第2の滑り閾値および前記粘着閾値よりも大きい値である第2の粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する第2の滑り状態判定器をさらに備え、
前記リミットサイクル発生器は、前記滑り状態判定器の判定結果に基づく増減信号を、前記第2の滑り状態判定器の判定結果に基づいて調節する、
請求項1に記載の再粘着制御装置。
【請求項12】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する滑り状態判定器と、
前記滑り状態判定器の判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるリミットサイクル発生器と、
前記滑り速度と、前記滑り閾値よりも大きい値である第2の滑り閾値および前記粘着閾値よりも大きい値である第2の粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定する第2の滑り状態判定器と、
を備え、
前記リミットサイクル発生器は、前記滑り状態判定器の判定結果に基づく増減信号を、前記第2の滑り状態判定器の判定結果に基づいて調節する、
再粘着制御装置。
【請求項13】
前記リミットサイクル発生器は、前記駆動輪の駆動力に代えて、前記駆動輪の制動力を漸増または漸減する増減信号を出力する、
請求項1から11の何れか一項に記載の再粘着制御装置。
【請求項14】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、
前記滑り状態であるか粘着状態であるか判定するステップの判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、
を有し、
前記滑り状態であるか粘着状態であるか判定するステップは、前記滑り速度が前記滑り閾値を超える場合に滑り状態であると判定し、前記滑り速度が前記粘着閾値以下である場合に粘着状態であると判定し、
前記リミットサイクルを発生させるステップは、前記判定結果が滑り状態である場合に、前記駆動輪の駆動力を所定の緩和率で減少する増減信号を継続して出力して前記駆動力を漸減し、前記判定結果が粘着状態である場合に、前記駆動輪の駆動力を所定の解除率で増加する増減信号を継続して出力して前記駆動力を漸増する、
再粘着制御方法。
【請求項15】
車両の駆動輪の路面に対する滑り速度と、滑り閾値および粘着閾値とに基づいて、前記駆動輪が滑り状態であるか粘着状態であるかを判定するステップと、
前記滑り状態であるか粘着状態であるか判定するステップの判定結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力を漸増または漸減する増減信号を出力し、前記駆動輪と前記路面との粘着力最大値を通るリミットサイクルを発生させるステップと、
を再粘着制御装置に実行させるプログラムであって、
前記滑り状態であるか粘着状態であるか判定するステップは、前記滑り速度が前記滑り閾値を超える場合に滑り状態であると判定し、前記滑り速度が前記粘着閾値以下である場合に粘着状態であると判定し、
前記リミットサイクルを発生させるステップは、前記判定結果が滑り状態である場合に、前記駆動輪の駆動力を所定の緩和率で減少する増減信号を継続して出力して前記駆動力を漸減し、前記判定結果が粘着状態である場合に、前記駆動輪の駆動力を所定の解除率で増加する増減信号を継続して出力して前記駆動力を漸増する、
プログラム