(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058214
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電子レンジ用蒸し器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A47J27/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165436
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】501300436
【氏名又は名称】株式会社 クリスタル電器
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】徳山 良輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由男
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA10
4B055BA14
4B055BA61
4B055CA02
4B055CA24
4B055CA25
4B055CA41
4B055CB07
4B055DB15
(57)【要約】
【課題】蒸し鳥のように油分の滲出が多い調理も問題なく行える電子レンジ用蒸し器を提供する。
【解決手段】電子レンジ用蒸し器は、水容器1と電磁波遮蔽通気トレー2と食材載置プレート3と電磁波遮蔽蓋体4と上蓋5とを備えており、電磁波遮蔽通気トレー2と電磁波遮蔽蓋体4とで蒸気調理室8が構成されている。電磁波遮蔽通気トレー2の底板2aに、通気穴23と凹所22とが水平方向にずれた状態で形成されており、食材載置プレート3には、凹所22の上方に位置する連通穴21が形成されている。食材から滲出した油分が水容器1に流下すると、油分が300℃近くまで昇温して水容器1を損傷させるおそれがあるが、油分を含む流下液は凹所22に溜まるため、油分が多い食材の蒸し調理も問題なく行える。従って、調理できる料理のバリエーションを拡大できる。油臭の拡散も防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波透過性素材からなる水容器と、
電磁波遮蔽素材からなる蒸気調理室と、を備え、
前記蒸気調理室は、多数の通気穴が空いた電磁波遮蔽通気トレーと、これを上から覆う電磁波遮蔽蓋体とを有しており、前記水容器で発生した蒸気が前記電磁波遮蔽通気トレーを通過して蒸気調理室に流入する電子レンジ用蒸し器であって、
前記蒸気調理室に、調理によって発生した流下液を溜める凹所が設けられている、
電子レンジ用蒸し器。
【請求項2】
前記蒸気調理室には、前記電磁波遮蔽通気トレーで支持される食材載置プレートが配置されており、
前記食材載置プレートのうち平面視で前記電磁波遮蔽通気トレーの通気穴と重ならない部位に、蒸気が通過すると共に前記流下液が滴下し得る連通穴が開口しており、
前記電磁波遮蔽通気トレーのうち前記連通穴の下方部に前記凹所が形成されている、
請求項1に記載した電子レンジ用蒸し器。
【請求項3】
前記蒸気調理室には、前記電磁波遮蔽通気トレーで支持される中間プレートと、前記中間プレートの上に位置した食材載置プレートとが配置されており、
前記中間プレートに、前記電磁波遮蔽通気トレーを通過した蒸気が通過する中間通気穴と、前記流下液を溜める凹所とが互いに重複しないようにして形成されている一方、
前記食材載置プレートのうち前記中間プレートの凹所の上方に位置した部位に、蒸気と前記流下液とが通る連通穴が空いている、
請求項1に記載した電子レンジ用蒸し器。
【請求項4】
前記蒸気調理室を上から覆う合成樹脂製の上蓋を備えている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した電子レンジ用蒸し器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジを使用して蒸し調理を行うために使用する蒸し器に関するものである。蒸し調理の対象(料理)としては、茶碗蒸しや蒸し鳥、蒸しパン、ふかし芋、餃子、焼売、饅頭、ゆで卵、温野菜などの他に、ご飯(穀飯)やお粥、おこわなども含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジの普及に伴って、電子レンジを蒸し料理の調理に使用することが行われており、このため、蒸し調理用の調理器が提案されている。電子レンジ用の蒸し調理器は、基本要素として、水容器とこれを覆う蓋、及び、食材を支持する通気性トレーとを備えている。すなわち、水容器の水を電磁波で加熱して水蒸気を発生させ、通気性トレーと蓋とで囲われた蒸気調理室に蒸気を充満させて蒸し調理が行われる。水容器は電磁波が透過する必要があるため、一般にポリプロピレン等の合成樹脂で作られている。
【0003】
ここで1つの問題は、食材が電磁波によって加熱されると組織が変化してしまい、蒸し料理としての食味を実現できない場合があるということである。そこで、蒸気調理室を金属板のような電磁波遮蔽素材で作ることにより、食材には蒸気のみが当たって電磁波は照射されないようにしている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、蒸し料理の種類は様々であり、蒸し鳥や餃子のように食材に油分が含まれているものも多い。このように食材に油分が含まれていると、調理の進行と共に油分が食材から滲出し、通気性トレーの通気穴から水容器に滴下することになるが、油分は電磁波(マイクロ波)の照射によって300℃付近まで昇温する一方、合成樹脂製の水容器は一般にポリプロピレンのような汎用樹脂で作られていて耐熱温度は130℃程度であるため、昇温した油分によって水容器が損傷するおそれがあった。
【0006】
また、水容器に流下した油分が水と混合して蒸発することにより、油の臭いが蒸し器の外に拡散して調理環境を悪化させるという問題もあった。なお、食材に油分が含まれていなくても液体成分が滲出して水容器に滴下するが、液体成分に臭いの成分が含まれていると、この場合も特有の臭気を放散して調理環境を悪化させるおそれがあった。
【0007】
油分の昇温による水容器の損傷に対して、例えば水容器をパイレックス(登録商標)等の耐熱ガラス製とすることが考えられるが、この場合はコストが嵩む問題が新たに発生し、また、油臭等の臭いの問題は全く解消できないため抜本的な解決策とは云い難い。
【0008】
本願発明はかかる知見に基づいて成されたものであり、改良された電子レンジ用蒸し器を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は電子レンジ用蒸し器に係るもので、この蒸し器は、請求項1のとおり、
「電磁波透過性素材からなる水容器と、
電磁波遮蔽素材からなる蒸気調理室と、を備え、
前記蒸気調理室は、多数の通気穴が空いた電磁波遮蔽通気トレーと、これを上から覆う電磁波遮蔽蓋体とを有しており、前記水容器で発生した蒸気が前記電磁波遮蔽通気トレーを通過して蒸気調理室に流入する」
という基本構成において、
「前記蒸気調理室に、調理によって発生した流下液を溜める凹所が設けられている」
という特徴を有している。
【0010】
本願発明は、様々に具体化できる。その例として請求項2では、
「前記蒸気調理室には、前記電磁波遮蔽通気トレーで支持される食材載置プレートが配置されており、
前記食材載置プレートのうち平面視で前記電磁波遮蔽通気トレーの通気穴と重ならない部位に、蒸気が通過すると共に前記流下液が滴下し得る連通穴が開口しており、
前記電磁波遮蔽通気トレーのうち前記連通穴の下方部に前記凹所が形成されている」
という構成になっている。
【0011】
他方、請求項3では、
「前記蒸気調理室には、前記電磁波遮蔽通気トレーで支持される中間プレートと、前記中間プレートの上に位置した食材載置プレートとが配置されており、
前記中間プレートに、前記電磁波遮蔽通気トレーを通過した蒸気が通過する中間通気穴と、前記流下液を溜める凹所とが互いに重複しないようにして形成されている一方、
前記食材載置プレートのうち前記中間プレートの凹所の上方に位置した部位に、蒸気と前記流下液とが通る連通穴が空いている」
という構成になっている。
【0012】
更に、請求項1~3のうちのいずれかの展開例として,請求項4では、
「前記蒸気調理室を上から覆う合成樹脂製の上蓋を備えている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、調理に伴って食材から油分が滲出しても、その油分は凹所に溜まって水容器に滴下することはない。従って、水容器がポリプロピレンのような汎用樹脂製であっても、油分がマイクロ波による加熱で昇温して水容器を損傷させるような不具合は生じない。よって、水容器のコストアップ防止と耐久性確保とを実現しつつ、各種の蒸し料理を問題なく調理できる。
【0014】
また、本願発明では、調理によって発生した流下液は凹所に溜まって水容器には滴下しないため、流下液に油分等の臭いの成分が含まれていても、これが水容器においてマイクロ波で加熱されて臭いを放散させるという現象は発生しない。従って、調理環境(キッチン等)の悪化を防止できる。特に、食材に肉や魚が含まれている場合であっても油臭の放散はないため、調理環境の悪化防止の点で特に好適である。
【0015】
このように、本願発明では、水容器の損傷や臭いの問題を考慮する必要がなく様々な食材を蒸すことができるため、臭いや水容器損傷の懸念から従来は敬遠されていた蒸し料理も調理対象に加えることができる。従って、電子レンジを使用して調理できる蒸し料理のバリエーションを拡大して、消費者の食生活向上に大きく貢献できる。よって、消費者にとっても朗報である。
【0016】
請求項2では、水容器で発生した蒸気は、電磁波遮蔽通気トレーの通気穴と食材載置プレートの連通穴とを通って蒸気調理室に流入するため、蒸気による調理機能は確保されている。かつ、食材載置プレートの連通穴は電磁波遮蔽通気トレーの凹所の上に位置しているため、調理によって発生した流下液は電磁波遮蔽通気トレーの凹所に溜められて、水容器に流下することはない。
【0017】
そして、請求項2では、蒸し器に必須の部材である電磁波遮蔽通気トレーに凹所を形成するものであるため、部材点数の増加を防止してコストを抑制できる。また、蒸気調理室の容積の低減も防止できる。
【0018】
他方、電磁波遮蔽通気トレーはアルミ板等の金属板製であって凹所を形成するに当たって深さをあまり深くできないことが多く、このため、流下液の発生量が多いと凹所から溢れてしまうことが懸念されるが、請求項3のように中間プレートを利用して凹所を形成すると、中間プレートを例えば合成樹脂製とすることによって凹所の深さや面積を任意に設定できるため、大量の流下液が発生する調理にも容易に対応して流下液をしっかりと溜めることができる。また、中間プレートは着脱が簡単であるため、溜まった流下液の排除や洗浄を容易に行える利点もある。
利点がある。
【0019】
一般に、電子レンジ用蒸し器では合成樹脂製の上蓋を設けており、本願発明でも請求項4において一般的な形態を踏襲している。そして、上蓋の存在により、美感を向上できると共に、昇温した電磁波遮蔽蓋体から人を保護できる。また、実施形態のように上蓋と水容器とをロック部材で固定することにより、電磁波遮蔽通気トレーと電磁波遮蔽蓋体との接合部を密着させて両者を互いに通電した同一電位に維持し、電磁波遮蔽通気トレーと電磁波遮蔽蓋体との間に放電や局部加熱が発生しない構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は大まかな縦断正面図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図4】第1実施形態を示す図で、(A)は食材載置プレートの底面図、(B)は電磁波遮蔽通気トレーの底面図である。
【
図5】第2実施形態を示す図で、(A)は部分的な縦断正面図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1).第1実施形態の基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するためその前後・左右の文言を使用するが、この方向は、電子レンジに挿脱される方向を前後方向としている。
図2に示すように、実施形態の蒸し器は左右長手の平面視小判形に形成されているが、左右長手の長方形や正方形、或いは円形などの形態も採用可能である。
【0022】
本実施形態に係る蒸し器の基本構造は従来と同様であり、
図1,3に示すように、蒸気源となる水が溜められる上向き開口の水容器1と、水容器1の内部に配置された上向き開口の電磁波遮蔽通気トレー2と、電磁波遮蔽通気トレー2で支持された食材載置プレート3と、電磁波遮蔽通気トレー2に上から重なった下向き開口トレー状の電磁波遮蔽蓋体4と、電磁波遮蔽蓋体4を上から覆う下向き開口トレー状の上蓋5とを備えている。
【0023】
水容器1は、電磁波(マイクロ波)が透過し得るようにポリプロピレン等の合成樹脂で作られている。電磁波遮蔽通気トレー2は、アルミ板のような電磁波が透過しない素材で作られており、
図1,3に示すように、底板2aと周壁2bとを有している。周壁2bの上端には角形のフランジ6が形成されており、フランジ6は、水容器1の内周面に形成された段部7で支持されている。
【0024】
電磁波遮蔽蓋体4もアルミ板のような電磁波が透過しない素材で作られており、電磁波遮蔽蓋体4と電磁波遮蔽通気トレー2とで蒸気調理室8が構成されている。電磁波遮蔽蓋体4は天板と周壁とを有しており、周壁の下端には角形の外向きフランジ9を形成している。上蓋5は下向きに開口したトレー状の形態であり、周壁の下端に外向きのL型フランジ10が形成されて、電磁波遮蔽蓋体4のフランジ9が上蓋5のL型フランジ10に強制嵌合されている。
【0025】
また、上蓋5の天板には左右一対の蒸気抜きボス(排気穴)11を下向きに突設しており、電磁波遮蔽蓋体4の天板は、蒸気抜きボス11に設けた段部に強制嵌合している。従って、電磁波遮蔽蓋体4と上蓋5とは一体になって水容器1に着脱される。
【0026】
上蓋5におけるフランジ9の左右両端部の前後中間部に、2枚の板状リブより成るストッパー12を突設している一方、水容器1の周壁の上端の前後中間部に下向きに開口した把手枠13を左右方向の外向きに突設し、この把手枠13に、上蓋5のストッパー12を上からクランプし得るロック部材14がピン15で回動自在に連結されている。この場合、上蓋5のL型フランジ10には下向きの位置決め片16aを設ける一方、水容器1の外向きの把手枠13には、位置決め片16aが嵌入する位置決め穴16bを設けている。
【0027】
ロック部材14でストッパー12を掴持することにより、上蓋5及び電磁波遮蔽蓋体4は水容器1に固定される。従って、把手枠13を摘んで持ち上げて自由に移動できる。
【0028】
(2).第1実施形態の受液構造
食材載置プレート3はポリプロピレン等の合成樹脂製であり、
図4(A)に示すように、左右両端には指掛け用の切欠き部17を形成している。また、
図1,3,4から理解できるように、食材載置プレート3には、上向き外周リブ18が全周に亙って形成されていると共に、外周よりも僅かに内側に位置した下向き足リブ19が全周に亙って形成されている。
【0029】
更に、食材載置プレート3には、下向きリブで囲われた前後長手の5つの枠部20が形成されて、各枠部20に、前後長手の長穴より成る連通穴21が左右2列ずつ多数形成されている。なお、連通穴21の形態は一例であり、円形や角形などの任意の形状に形成できるし、大きさや個数も任意に設定できる。なお、
図1(A)及び
図3では、食材載置プレート3は端面図として表示している(電磁波遮蔽通気トレー2も同様である。)。
【0030】
既述のとおり、電磁波遮蔽通気トレー2はアルミ等の金属板製であるが、
図1,3,4に示すように、電磁波遮蔽通気トレー2に、食材載置プレート3の枠部20と平面視で重なる凹所22の群を形成し、凹所22の外側に多数の通気穴23が空けられている。
図4(B)のとおり、通気穴23は円形に形成されているが、角形や楕円形などの任意の形状に形成できる。個数や大きさも任意に設定できる。但し、マイクロ波の遮断機能の面からは、円形(特に直径8mm以下)が好ましい。
【0031】
食材載置プレート3の枠部20は必ずしも必要ないが、下向きのリブよりなる枠部20を形成すると、流下液が食材載置プレート3の下面を伝い流れて通気穴23に流下することを防止できるため、流下液の貯留機能を確実化できる利点がある。枠部20を設ける場合、縦横に延びる格子状の下向きリブを形成して、下向きリブで囲われたエリアに連通穴21を空けることも可能である。
【0032】
食材載置プレート3は、アルミ板のような金属板製とすることも可能である。この場合、流下液が金属板の下面を伝わって水容器に滴下するのを防ぐ為、穴は平穴ではなく下方向に高さ1mm程度の縁を付けるか、すり鉢状にテーパを付ける必要がある。金属製食材載置プレートは、形状及び設置時安定の為、外周を直径3mm程度ローリング加工(ヘミング加工)等を施すことが望ましい。
【0033】
図1及び
図3では、凹所22の左右外側に2個の通気穴23が左右に並べて表示されているが、これは便宜的な表示であり、
図4(B)のとおり、実際には、2列の通気穴23は前後にずれて配置されている。
図4(A)に示す符号24は、電磁波遮蔽通気トレー2に設けた足片であり、足片24は電磁波遮蔽通気トレー2の上面に当たっている。
【0034】
(3).第1実施形態の纏め
図1に示すように、食材載置プレート3における下向き足リブ19の突出寸法は、食材載置プレート3における各枠部20の突出寸法よりも大きくなっている。このため、電磁波遮蔽通気トレー2の底板2aと食材載置プレート3との間には、蒸気が通り得る空間25が空いている。このため、
図1(B)に実線矢印26で示すように、電磁波遮蔽通気トレー2の通気穴23から上方に噴出した蒸気は、空間25を通って食材載置プレート3の連通穴21に向かい、連通穴21から蒸気調理室8に噴出する。
【0035】
他方、蒸気による蒸し調理に際しては、食材Wに含まれていた液が滲出したり、食材Wに触れた蒸気が凝縮して水滴化したりというように、食材載置プレート3に伝い落ちる流下液が発生することが多い。特に、蒸し鳥のような肉系・魚系の食材Wを蒸し調理すると、食材からの油分の滲出が多いため、油分を含んだ流下液が発生し、
図1(B)に点線矢印27で示すように、流下液は食材載置プレート3の連通穴21から下方に伝い落ちる。
【0036】
そして、連通穴21から流下した流下液は電磁波遮蔽通気トレー2の凹所22に溜まり、水容器1に流下することはない。このため、マイクロ波で加熱された油分が昇温して水容器1を損傷させるような問題は発生せず、従って、水容器1の耐久性を向上できる。
【0037】
また、流下液には様々な成分が混ざっているため、これが水容器1に流下して煮沸されると、臭いの成分が蒸気に混ざって蒸気調理室8に流入し、蒸気抜きボス11から電子レンジの庫内に侵入し、電子レンジの扉の隙間から室内(主としてキッチン)に広がっていったり、電子レンジの扉を空けると室内に一気に広がったりする現象が生じやすいが、本実施形態では、流下液は水容器1に流れ落ちないため臭いの成分が蒸気に乗って蒸し器の外に拡散する現象を防止又は著しく抑制できる。従って、キッチン等の調理環境の悪化を防止できる。
【0038】
特に、流下液に油分が含まれている場合は、流下液が水容器1に流下すると油分を含んだ蒸気が発生して、油臭が広がって人に不快感を与えやすいが、本実施形態では、食材が油分を含んでいても油臭が調理環境に広がることはないため、臭いがない(或いは少ない)快適な環境下で調理できる。
【0039】
本実施形態のように電磁波遮蔽通気トレー2に凹所22を形成すると、必須部材である電磁波遮蔽通気トレー2を利用するものであるため、部品の増加はなくてコストを抑制できる。また、凹所22は、プレス加工によって電磁波遮蔽通気トレー2に簡単に形成できる。
【0040】
本実施形態(及び第2実施形態)では、食材載置プレート3の上面は平坦になっている。このため、調理によって発生した流下液は食材載置プレート3の下方に流下して、食材載置プレート3の上面に付着したままになることはない。このため、食材が流下液で濡れることを防止して、料理を綺麗に仕上げることができる。
【0041】
(4).他の実施形態
図5では、請求項3の具体例である第2実施形態を示している。この実施形態では、電磁波遮蔽通気トレー2の底板2aはフラットな形状になっていて多数の通気穴(丸穴)が空いており、電磁波遮蔽通気トレー2の底板2aに合成樹脂製の中間プレート28を載置して、中間プレート28に食材載置プレート3が載っている。
【0042】
そして、食材載置プレート3は、基本的には第1実施形態と同じであり、下面に複数列の枠部20が左右に並んで形成されて、枠部20に連通穴21の群が形成されている。他方、中間プレート28には、食材載置プレート3における枠部20の下方に位置した凹所22が形成されており、隣り合った凹所22の間に中間通気穴29が形成されている。中間通気穴29は前後方向に並んでいる。
【0043】
中間プレート28の外周部には、食材載置プレート3が載る二重の上向きリブ30,31を全周に亙って形成しており、内側の上向きリブ31に左右外側に位置した枠部20が内側から嵌合している。従って、食材載置プレート3は、中間プレート28にずれ不能に保持されている。中間プレート28の下面には、全周に亙って延びる環状の囲いリブ32と、短い長さの足リブ33とが形成されている。電磁波遮蔽通気トレー2の通気穴は、囲いリブ32の内側に形成されている。
【0044】
この実施形態では、電磁波遮蔽通気トレー2は水容器1に取り付けたままで中間プレート28を簡単に着脱できるため、溜まった流下液の排除や中間プレート28の洗浄を容易に行える利点もある。
【0045】
また、電磁波遮蔽通気トレー2は平板を深絞りして製造されているため凹所22の深さをあまり深くできないことがあり、すると、流下液の発生量が多いと流下液が凹所22から溢れることが懸念されるが、本実施形態のように中間プレート28を使用すると、凹所22の深さは任意に設定できて必要な容量を確保できるため、流下液の発生量が多い調理にも的確に対応できる。従って、様々な調理への対応性に優れていると云える。
【0046】
図6に示す第3実施形態では、電磁波遮蔽通気トレー2に、逆台形の凹所22とこれに連続した台形の凸部34とを形成して、凸部34の傾斜面に通気穴23を形成している。食材載置プレート3の連通穴21は、平面視で凹所22と重なるように形成しており、通気穴23と連通穴21とは平面視で重なっていない。連通穴21の開口縁に下向きのリブ37を設けて、流下液が食材載置プレート3の下面を伝って通気穴23に向かうことを防止している。
【0047】
食材載置プレート3の下面には凸部34の上面と嵌合しているが、食材載置プレート3と凸部34との間に隙間を設けることも可能である。また、この実施形態では、食材載置プレート3の上面には多数の補助凹所36を形成しており、補助凹所36は縦横に延びるリブ37の群で囲われている。従って、この実施形態では、流下液は補助凹所36にも溜められるが、食材Wはリブ37に載るため、流下液が食材に付着して食味を低下させることはない。
【0048】
なお、電磁波遮蔽通気トレー2は平らな素材板をプレス加工して製造されるが、通気穴23は、凹所22や凸部34を加工する前の平らな状態で打ち抜き形成してもよいし、曲げ加工してからのパンチ加工で形成してもよい(綺麗な円形の穴を形成できる点では後者が有利である。)。
【0049】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、実施形態では、凹所は複数箇所に分離して配置されていたが、電磁波遮蔽通気トレー又は中間プレートに、1つの凹所が一連に広がった状態に形成することも可能である(この場合は、通気穴を設けている部位は凹所から島状に突出している。)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明は、電子レンジ用蒸し器に適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0051】
W 食材
1 水容器
2 電磁波遮蔽通気トレー
3 食材載置プレート
4 電磁波遮蔽蓋体
5 上蓋
8 蒸気調理室
11 蒸気抜きボス(排気穴)
12 ストッパー
13 把手枠
14 ロック部材(フック体)
20 枠部
21 連通穴
22 凹所(溜液部)
23 通気穴
25 空間
28 中間プレート
29 中間通気穴