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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058216
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】フィルムシートおよび包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240418BHJP
   B65D 77/30 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D77/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165438
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】常門 加奈
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA01
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA09
3E067EB07
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD10
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB54
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】フィルムシートを引き裂いて容易に開封でき、かつ、開封した開口にフィルムシートのヒゲ(切れ端)が発生するのを抑制可能な包装体および該包装体を形成するフィルムシートを提供する。
【解決手段】基材1と、前記基材1の厚さ方向Tにおける一方側INに積層された中間層2と、前記中間層2の前記一方側INに積層されたシーラント層3と、を備えるフィルムシート10であって、前記中間層2は、前記中間層2を形成する樹脂の流れ方向に対して垂直な幅方向と、前記樹脂の高分子鎖の配向方向とがなす角度が0°以上35°以下であり、前記フィルムシート10は、前記中間層2の前記流れ方向における引き裂き強度が0.5N以上1.5N以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の厚さ方向における一方側に積層された中間層と、
前記中間層の前記一方側に積層されたシーラント層と、
を備えるフィルムシートであって、
前記中間層は、前記中間層を形成する樹脂の流れ方向に対して垂直な幅方向と、前記樹脂の高分子鎖の配向方向とがなす角度が0°以上35°以下であり、
前記フィルムシートは、前記中間層の前記流れ方向における引き裂き強度が0.5N以上1.5N以下である、
フィルムシート。
【請求項2】
前記中間層は、複屈折率が0.02以上0.05以下である、
請求項1に記載のフィルムシート。
【請求項3】
前記シーラント層は、前記中間層の前記流れ方向における引き裂き強度が0.1N以上0.3N以下である、
請求項2に記載のフィルムシート。
【請求項4】
前記中間層は、二軸延伸ナイロンを含む、
請求項3に記載のフィルムシート。
【請求項5】
前記シーラント層は、一軸延伸ポリプロピレンを含む、
請求項3に記載のフィルムシート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフィルムシートが前記厚さ方向に対向して接着されて、前記フィルムシートの前記厚さ方向における前記一方側の面に囲まれて密封された充填空間が形成されており、
前記充填空間を開封する前記フィルムシートの引き裂き方向と、前記中間層の前記流れ方向とが略一致する、
包装体。
【請求項7】
前記フィルムシートは、
対向した前フィルムおよび後フィルムと、
前記前フィルムおよび前記後フィルムの間に二つ折りにして挟んだ底フィルムと、
を有し、
前記包装体は、前記底フィルムを底面として自立可能である、
請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
前記引き裂き方向における前記フィルムシートの周縁に配置され、前記フィルムシートが切り込まれたノッチ部を備える、
請求項7に記載の包装体。
【請求項9】
前記充填空間の内部圧力が上昇すると開口して前記充填空間の密封状態を解除する通蒸部を前記周縁に備える、
請求項8に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムシートおよび包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムシート同士の外周部をヒートシールして接着し、フィルムシートで囲まれた充填空間に食品等の内容物を充填包装する包装体がある。使用時はフィルムシートを切断して開封し、内容物を取り出す。また、底面を有する包装体は、底面のフィルムシートを広げることで机等に置くことがき、例えば、内容物が食品の場合に、内容物を他の容器へ移し替えることなく包装体から直接スプーン等を使用して容易に喫食することができる即食容器として用いられる。喫食の手軽さを向上させるため、鋏等の道具を使用せずに使用者の手でフィルムシートを引き裂いて容易に包装体を開封できることが求められる。
【0003】
手で容易に引き裂いて開封できる包装体として、特許文献1に記載の易開封性包装袋がある。特許文献1に記載の易開封性包装袋は、直線引き裂き性を有するフィルムと、配向角が0°以上45°以下の二軸延伸フィルムとを積層した包装材(フィルムシート)を用いている。そのため、包装材を引き裂くとき、直線引き裂き性を有するフィルムの易引裂方向に容易に引き裂くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-264237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の易開封性包装袋は、包装材を引き裂いて開封したとき、易開封性包装袋の開口に包装材のヒゲ(切れ端)が発生する虞がある。ここで、ヒゲとは、フィルムシート(包装材)を引き裂いて包装体(易開封性包装袋)を開封したとき、一方の端部が包装体の開口に接続されたまま切り残された帯状のフィルムシートの切れ端を示す。開封した包装体の開口にヒゲが発生すると、包装体を即食容器として使用した際に、フィルムシートのヒゲが、使用者が食品をスプーン等で口へ運ぶ経路を妨害し、喫食しにくくなる。また、包装体の外観の悪化や、喫食時にフィルムシートのヒゲが使用者の口に入る等の安全性の低下が懸念される。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、フィルムシートを引き裂いて容易に開封でき、かつ、開封した開口にフィルムシートのヒゲ(切れ端)が発生するのを抑制可能な包装体および該包装体を形成するフィルムシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のフィルムシートは、基材と、前記基材の厚さ方向における一方側に積層された中間層と、前記中間層の前記一方側に積層されたシーラント層と、を備えるフィルムシートであって、前記中間層は、前記中間層を形成する樹脂の流れ方向に対して垂直な幅方向と、前記樹脂の高分子鎖の配向方向とがなす角度が0°以上35°以下であり、前記フィルムシートは、前記中間層の前記流れ方向における引き裂き強度が0.5N以上1.5N以下である。
【0008】
上記フィルムシートでは、前記中間層は、複屈折率が0.02以上0.05以下であってもよい。
【0009】
上記フィルムシートでは、前記シーラント層は、前記中間層の前記流れ方向における引き裂き強度が0.1N以上0.3N以下であってもよい。
【0010】
上記フィルムシートでは、前記中間層は、二軸延伸ナイロンを含んでいてもよい。
【0011】
上記フィルムシートでは、前記シーラント層は、一軸延伸ポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0012】
本発明の包装体は、上記のいずれかのフィルムシートが前記厚さ方向に対向して接着されて、前記フィルムシートの前記厚さ方向における前記一方側の面に囲まれて密封された充填空間が形成されており、前記充填空間を開封する前記フィルムシートの引き裂き方向と、前記中間層の前記流れ方向とが略一致する。
【0013】
上記包装体では、前記フィルムシートは、対向した前フィルムおよび後フィルムと、前記前フィルムおよび前記後フィルムの間に二つ折りにして挟んだ底フィルムと、を有し、前記包装体は、前記底フィルムを底面として自立可能であってもよい。
【0014】
上記包装体では、前記引き裂き方向における前記フィルムシートの周縁に配置され、前記フィルムシートが切り込まれたノッチ部を備えていてもよい。
【0015】
上記包装体では、前記充填空間の内部圧力が上昇すると開口して前記充填空間の密封状態を解除する通蒸部を前記周縁に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフィルムシートおよび包装体によれば、フィルムシートを引き裂いて容易に開封でき、かつ、開封した開口にフィルムシートのヒゲ(切れ端)が発生するのを抑制可能な包装体および該包装体を形成するフィルムシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る包装体における密封状態の斜視図である。
図2】同包装体における開封状態の斜視図である。
図3】本実施形態に係るフィルムシートの構成の一例を示す断面図である。
図4】同フィルムシートを構成する中間層における配向角を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る包装体100における密封状態の斜視図である。
包装体100は、充填空間100sと、フィルムシート10と、シール部20と、ノッチ部30と、通蒸部40と、を備える。包装体100は、対向したフィルムシート10を加熱および加圧してヒートシールして形成されている。また、包装体100は、フィルムシート10で囲まれた充填空間100sに内容物Cを充填して密封シールされているため、内容物Cは包装体100の外部へ漏れない。包装体100は、底面を有するスタンディングパウチ容器であり、底面を下側にして机等に置くことができる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る包装体100における開封状態の斜視図である。包装体100は、包装体100の上側のノッチ部30からフィルムシート10を引き裂いて開封することで内容物Cを取り出すことができる。
【0021】
図3は、本実施形態に係るフィルムシート10の構成の一例を示す断面図である。フィルムシート10は、複数の樹脂材を積層して形成された複層フィルムである。
【0022】
本実施形態では、図1および図2に示すように、底フィルム10cを下側にして置いた状態の包装体100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、対向したフィルムシート10をヒートシールする際に加圧した方向を「奥行方向D」、奥行方向Dにおける一方側を「前側FR」、奥行方向Dにおける他方側を「後側RR」と定義する。また、上下方向Vおよび奥行方向Dと直交する方向を「水平方向H」、水平方向Hにおける一方側を「左側LT」、水平方向Hにおける他方側を「右側RT」と定義する。
【0023】
また、図3に示すように、フィルムシート10の厚さ方向を「厚さ方向T」、包装体100の内容物Cが充填される側(厚さ方向Tにおける一方側)を厚さ方向Tにおける「内側IN」、内側INと反対側(厚さ方向Tにおける他方側)を厚さ方向Tにおける「外側OU」と定義する。
【0024】
充填空間100sは、フィルムシート10に囲まれた空間であり、包装体100の内容物Cが充填される空間である。充填空間100sは、内容物Cを充填するのに十分な大きさを有する。
【0025】
フィルムシート10は、前フィルム10aと、後フィルム10bと、底フィルム10cと、を備える。前フィルム10aは、包装体100の前側FRに配置されている。後フィルム10bは、包装体100の後側RRに配置されている。前フィルム10aおよび後フィルム10bは、略長方形で、包装体100の充填空間100sに充填される内容物Cを覆うのに十分な形状を有する。前フィルム10aおよび後フィルム10bは、充填空間100sを挟んで奥行方向Dで対向してシールされ、包装体100の側面を形成している。
【0026】
底フィルム10cは、包装体100の下側LOに配置されている。底フィルム10cは、略長方形で、折り畳まれて前フィルム10aと後フィルム10bとの間に挟まれて前フィルム10aおよび後フィルム10bの下側LOとシールされている。底フィルム10cは、包装体100の底面を形成し、内容物Cを充填された包装体100が自立可能な形状を有している。
【0027】
シール部20は、前フィルム10a、後フィルム10bおよび底フィルム10cの外周部のヒートシールされた範囲である。シール部20は、上側シール部20a、左側シール部20b、右側シール部20cおよび底シール部20dを有する。
【0028】
上側シール部20aは、奥行方向Dに対向した前フィルム10aと後フィルム10bとをヒートシールした部位であり、包装体100の上側UPの端部に配置されている。左側シール部20bは、奥行方向Dに対向した前フィルム10aと後フィルム10bとをヒートシールした部位であり、包装体100の左側LTの端部に配置されている。右側シール部20cは、奥行方向Dに対向した前フィルム10aと後フィルム10bとをヒートシールした部位であり、包装体100の右側RTの端部に配置されている。
【0029】
底シール部20dは、奥行方向Dに対向した前フィルム10aと後フィルム10bと底フィルム10cとをヒートシールした部位であり、包装体100の下側LOの端部に配置されている。上側シール部20a、左側シール部20b、右側シール部20cおよび底シール部20dによって充填空間100sの周囲のフィルムシート10をヒートシールすることで、充填空間100sを密封した包装体100が形成されている。
【0030】
包装体100は、奥行方向Dに対向させた前フィルム10aおよび後フィルム10bと、その間に二つ折りにして挟んだ底フィルム10cとをシール部20でヒートシール(接着)して形成されている。包装体100は、一枚のフィルムシート10を折り曲げてヒートシールすることで形成されてもよいし、複数に分割されたフィルムシート10をヒートシールして接続することで形成されてもよい。
【0031】
ノッチ部30は、前フィルム10aおよび後フィルム10bを水平方向Hに引き裂く起点となるV字の切り欠き形状であり、上側シール部20aよりも下側LOの左側シール部20bの側端部に配置されている。ノッチ部30は、左側シール部20bにおける前フィルム10aおよび後フィルム10bを奥行方向Dに貫通して切り込まれた部位である。ノッチ部30は、前フィルム10aおよび後フィルム10bを引き裂く起点となる形状であればよく、例えば、U字の切り欠き形状でもよい。フィルムシート10において、フィルムシート10を引き裂く引き裂き方向における周縁(側端部)にノッチ部30が配置されることで、使用者は、ノッチ部30を起点として、フィルムシート10の引き裂き方向にフィルムシート10を容易に引き裂くことができる。例えば、ノッチ部30がV字の切り欠き形状である場合、ノッチ部30は、V字の開口をフィルムシート10の引き裂き方向に向けて配置される。
【0032】
通蒸部40は、右側シール部20cに配置され、電子レンジ等を用いて加熱された包装体100において、充填空間100sに発生した水蒸気を包装体100の外部へ逃がすための開口である。通蒸部40は、通蒸口41と、通蒸シール部42と、を備える。
【0033】
通蒸口41は、前フィルム10aと後フィルム10bとがヒートシールされていない略長方形の範囲であり、右側シール部20cを上下方向Vに分断している。通蒸口41は、上下方向Vにおいて右側シール部20cに挟まれている。通蒸口41は、充填空間100sに発生した水蒸気を包装体100の外部へ逃がす際、水蒸気が通るためにヒートシールされていない範囲である。
【0034】
通蒸シール部42は、前フィルム10aと後フィルム10bとが略U字形状にヒートシールされた部位であり、U字の開口を右側RTに向けて、U字の開口の端部が右側シール部20cと接続されている。すなわち、右側シール部20cの通蒸口41で分断された範囲において、上下方向Vに分断された右側シール部20cを、通蒸口41を避けて通蒸シール部42が接続している。そのため、包装体100の右側RTにおいて、右側シール部20cおよび通蒸シール部42によって前フィルム10aと後フィルム10bとが連続してヒートシールされている。
【0035】
通蒸シール部42は、剥離部43を備える。
剥離部43は、通蒸シール部42の左側LTの下側LOの角部である。剥離部43は、充填空間100sに水蒸気が発生して充填空間100sの内部圧力が上昇した際に、強い応力集中が生じる場所に設けられている。充填空間100sの圧力が所定の圧力まで上昇したとき、前フィルム10aと後フィルム10bとが奥行方向Dに離間する方向へ剥離部43に力が加わり、剥離部43のヒートシールされた前フィルム10aと後フィルム10bとが剥離する。
【0036】
充填空間100sの圧力がさらに上昇すると、剥離部43を起点として通蒸シール部42のヒートシールされた前フィルム10aと後フィルム10bとが剥離し、充填空間100sと、通蒸口41とが連通する。すなわち、包装体100において、通蒸口41が開口して、包装体100の密封状態が解除され、開口した通蒸口41から充填空間100sに発生した水蒸気が包装体100の外部へ排出される。通蒸口41から水蒸気が排出されることで充填空間100sの圧力の上昇が抑えられ、包装体100の破裂が回避される。
【0037】
次に、複数の樹脂材を積層して形成されたフィルムシート10の層構成について説明する。フィルムシート10は、図3に示すように、基材1と、中間層2と、シーラント層3と、を備える。
【0038】
基材1は、フィルムシート10の外側OUに積層された層である。基材1の材質として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等、積層フィルムの基材として用いられる公知の材質を採用できる。基材1として、セラミック(アルミナ又はシリカ等)の蒸着を施した無機蒸着フィルムを用いるのが望ましい。基材1として無機蒸着フィルムを用いることで、フィルムシート10のバリア性を向上できる。
【0039】
中間層2は、基材1の内側INに積層された層である。中間層2の材質として、二軸延伸ナイロン(ONY)等を採用できる。中間層2として二軸延伸ナイロン(ONY)を用いることで、フィルムシート10の突き刺し強度、耐摩耗性、耐熱性、バリア性等を向上できる。
【0040】
図4は、中間層2における配向角αを模式的に示す正面図である。
中間層2は、配向角αが0°以上35°以下である。中間層2は、さらに、複屈折率が0.02以上0.05以下であるのが望ましい。
【0041】
ここで、配向角αとは、フィルム中での高分子鎖の配向方向D1(主配向軸)と、フィルムの幅方向TD(Transverse Direction)とがなす角の角度αを示している。フィルムの幅方向TDは、フィルムを形成する樹脂の流れ方向MD(Machine Direction)であるフィルムの長手方向に対して垂直な方向である。例えば、フィルム中での高分子鎖の配向方向D1がフィルムの幅方向TDと平行な場合、配向角αは0°である。
【0042】
中間層2は、中間層2を形成する樹脂の流れ方向MDに対して垂直な幅方向TDと、中間層2を形成する樹脂の高分子鎖の配向方向D1とがなす角度(配向角α)が、0°以上35°以下である。
【0043】
延伸フィルムの製造工程において、フィルムの幅方向TDにおける中央部分が、フィルムの幅方向TDにおける端部近傍の部分と比較して遅延又は先行するため、フィルムの幅方向TDにおける端部近傍の配向角αが大きくなる現象(ボーイング現象)が知られている。そのため、配向角αが小さいフィルムを得る方法として、フィルムの幅方向TDにおける中心線Oの近傍である中央部分(さしみタイプ)を使用する方法がある。
【0044】
また、複屈折率とは、異方性を有する材質に光が入射したときに現れる2つの屈折光の屈折率の差であり、フィルムの長手方向MDと幅方向TDとにおける光学的配向バランスの指標である。複屈折率の値が小さいほど、材質の光学異方性が小さい。
【0045】
中間層2において、配向角αを0°以上35°以下にすることで、フィルムシート10を中間層2における流れ方向MDに引き裂いた際、引き裂いたフィルムシート10の端部にヒゲが発生するのを抑制できる。
【0046】
ここで、ヒゲとは、フィルムシート10を引き裂いたとき、フィルムシート10の引き裂かれた端部に接続されたまま切り残された帯状のフィルムシート10の切れ端を示す。また、フィルムシート10を引き裂いて開封した包装体100において、開封した包装体100の開口に接続されたまま切り残された帯状のフィルムシート10の切れ端を示す。
【0047】
包装体100において、中間層2の流れ方向MDが前フィルム10aおよび後フィルム10bの引き裂き方向と一致するようにフィルムシート10を配置することで、包装体100を開封したとき、前フィルム10aおよび後フィルム10bの端部にヒゲが発生するのを抑制でき、包装体100の開口にヒゲが発生するのを抑制できる。
【0048】
シーラント層3は、中間層2の内側INに積層された層である。シーラント層3の材質として、ポリプロピレン(PP)等、積層フィルム同士をヒートシールする際のシーラントとして用いられる公知の材質を採用できる。シーラント層3の引き裂き強度は、0.1N以上0.3N以下が望ましい。また、シーラント層3として、一軸延伸ポリプロピレンフィルム等の易引き裂き性を付与したフィルムを用いるのが望ましい。シーラント層3として一軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いることで、シーラント層3に易引き裂き性を付与し、シーラント層3の引き裂き強度を0.1N以上0.3N以下にできる。
【0049】
例えば、フィルムの長手方向MDに易引き裂き性を有するシーラント層3を用いる場合、包装体100において、シーラント層3の長手方向MDが前フィルム10aおよび後フィルム10bの引き裂き方向と一致するようにフィルムシート10を配置することで、包装体100を開封するとき、前フィルム10aおよび後フィルム10bを容易に引き裂き方向に引き裂くことができる。
【0050】
基材1、中間層2およびシーラント層3を積層する方法として、ドライラミネート、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ワックスラミネーション又はサーマルラミネーション等の公知のラミネート法を採用できる。
【0051】
配向角αが0°以上35°以下の中間層2と、易引き裂き性を有する方向における引き裂き強度が0.1N以上0.3N以下のシーラント層3と、を積層したフィルムシート10において、中間層2の流れ方向MDと、シーラント層3の易引き裂きを有する方向とは一致しており、シーラント層3の易引き裂きを有する方向におけるフィルムシート10の引き裂き強度は、0.5N以上1.5N以下である。
【0052】
フィルムシート10の引き裂き強度を0.5N以上1.5N以下にすることで、フィルムシート10を容易に引き裂くことができる。前フィルム10aおよび後フィルム10bにおいて、包装体100を開封する際に引き裂く方向における引き裂き強度を0.5N以上1.5N以下にすることで、使用者は包装体100を引き裂き方向に容易に引き裂いて開封できる。
【0053】
また、本実施形態において、使用者が包装体100を開封する際に前フィルム10aおよび後フィルム10bを引き裂く方向は、水平方向Hと一致する。そのため、前フィルム10aおよび後フィルム10bにおいて、水平方向Hにおける引き裂き強度が0.5N以上1.5N以下となるようにフィルムシート10を配置する。このとき、包装体100において、フィルムシート10を引き裂いて密封された充填空間100sを開封するとき、フィルムシート10の引き裂き方向と、中間層2の流れ方向MDとが一致する。
【0054】
次に、使用者が包装体100を使用する際の動作について説明する。一例として、内容物Cとして電子レンジによって加熱調理を施される食品が充填された包装体100を使用する際の動作について説明する。
【0055】
内容物C(食品)が充填された包装体100において、使用者は、底フィルム10cを底面として電子レンジ内に包装体100を置き、所定の加熱条件で包装体100を加熱する。
【0056】
包装体100を電子レンジで加熱したとき、内容物Cから充填空間100sに水蒸気が発生し、充填空間100sの圧力が上昇する。充填空間100sの圧力が上昇して所定の圧力に達すると、剥離部43から通蒸シール部42のヒートシールされた前フィルム10aと後フィルム10bとが剥離していき、通蒸口41が開口し、通蒸口41を介して充填空間100sから包装体100の外部へ水蒸気が放出される。充填空間100sから包装体100の外部へ水蒸気が放出されると、充填空間100sの圧力の上昇が抑制されるため、包装体100は破裂しない。
【0057】
包装体100の加熱が完了した後、使用者は、ノッチ部30を起点として、水平方向Hに前フィルム10aおよび後フィルム10bを引き裂いて包装体100を開封する。このとき、前フィルム10aおよび後フィルム10bの水平方向Hにおける引き裂き強度は、0.5N以上1.5N以下である。そのため、使用者は、手で容易に前フィルム10aおよび後フィルム10bを引き裂いて包装体100を開封できる。
【0058】
また、水平方向Hと、前フィルム10aおよび後フィルム10bにおける中間層2の流れ方向MDとは一致しており、中間層2の配向角αが0°以上35°以下であるため、引き裂いた前フィルム10aおよび後フィルム10bの端部におけるヒゲの発生が抑制され、開封した包装体100の開口にヒゲが発生するのを抑制できる。
【0059】
そのため、使用者が開封した包装体100からスプーン等を用いて内容物C(食品)を喫食する際、使用者は、開封した包装体100の開口のヒゲにスプーン又は食品等が接触することなく、容易、かつ、安全に内容物C(食品)を喫食できる。また、開封した包装体100の開口におけるヒゲの発生が抑制されたことで、包装体100の外観が悪化しない。
【0060】
本実施形態のフィルムシート10および包装体100によれば、フィルムシート10に用いる中間層2は、配向角αが0°以上35°以下である。また、中間層2の流れ方向MDにおけるフィルムシート10の引き裂き強度は、0.5N以上1.5N以下である。そのため、フィルムシート10を中間層2の流れ方向MDに引き裂いたとき、フィルムシート10を手で容易に引き裂くことができ、引き裂いたフィルムシート10の端部にヒゲが発生するのを抑制できる。その結果、フィルムシート10を引き裂いて容易に開封でき、かつ、開封した開口にフィルムシート10のヒゲが発生するのを抑制可能な包装体100およびフィルムシート10を提供することができる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0062】
(変形例1)
上記実施形態において、包装体100は、通蒸部40を備えるが、包装体の態様はこれに限定されない。包装体は、通蒸部40を備えなくてもよい。例えば、包装体の内容物Cに加熱を施す必要がない場合、充填空間100sの圧力が上昇して包装体が破裂する虞がないため、包装体は、通蒸部40を備えなくてもよい。
【0063】
(変形例2)
上記実施形態において、通蒸部40は、包装体100の右側RTに配置されるが、通蒸部40の態様はこれに限定されない。通蒸部は、フィルムシート10の周縁に配置されていればよく、包装体の左側に配置されてもよい。
【0064】
(変形例3)
上記実施形態において、ノッチ部30は、包装体100の左側LTに配置されるが、ノッチ部30の態様はこれに限定されない。ノッチ部は、フィルムシート10の引き裂き方向における周縁に配置されていればよく、包装体の右側に配置されてもよい。また、包装体がノッチ部を2つ以上備え、ノッチ部が包装体の右側および左側に配置されてもよい。
【0065】
(変形例4)
上記実施形態において、フィルムシート10は、基材1と、中間層2と、シーラント層3とを備えるが、フィルムシートの態様はこれに限定されない。フィルムシートは、商品名又はロゴ等を印刷する印刷層等を備えていてもよい。フィルムシートが印刷層等を備えていても、フィルムシートの引き裂き強度を0.5N以上1.5N以下にすることで、包装体を容易に開封できる。
【0066】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
基材1として、厚さが12μmの無機蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。中間層2として、厚さが15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを基材1の内側INに積層した。中間層2は、配向角αが0°以上35°以下、かつ、複屈折率が0.02以上0.05以下である。また、シーラント層3として、厚さが60μm、かつ、易引き裂き性を有し、引き裂き強度が2Nの一軸延伸ポリプロピレンフィルムを中間層2の内側INに積層してフィルムシート10を形成した。フィルムシート10において、中間層2の流れ方向MDと、シーラント層3の易引き裂き性を有する方向とが一致し、中間層2の流れ方向MDにおけるフィルムシート10の引き裂き強度は0.5N以上1.5N以下である。
【0068】
奥行方向Dに折り畳んで対向したフィルムシート10において、左側シール部20b、右側シール部20cおよび底シール部20dをヒートシールして袋状にし、内容物Cとして充填空間100sに水を100g充填した後、上側シール部20aをヒートシールして密封し、実施例1の包装体100を形成した。このとき、中間層2の流れ方向MDと、水平方向Hとが一致するように包装体100を形成した。
【0069】
(比較例1)
配向角が35°より大きく、かつ、複屈折率が0.05より大きい二軸延伸ナイロンフィルムを中間層として用いた以外は実施例1と同様の方法により比較例1の包装体を形成した。
【0070】
(実験1)
実施例1および比較例1の包装体において、600W、かつ、2分の加熱条件で電子レンジを用いて加熱し、その後、包装体をノッチ部から水平方向に引き裂いて開封し、開封した包装体の開口にヒゲが発生するか否かを評価した。実施例1および比較例1の包装体を各20個作成し、各包装体において評価した。
【0071】
(実験結果)
実験1の結果を表1に示す。
中間層2として、配向角αが0°以上35°以下、かつ、複屈折率が0.02以上0.05以下の二軸延伸ナイロンフィルムを用いた実施例1は、比較例1と比較して、ヒゲが発生した個数が約4分の1であった。
【0072】
【表1】
【符号の説明】
【0073】
100 包装体
100s 充填空間
10 フィルムシート
10a 前フィルム
10b 後フィルム
10c 底フィルム
1 基材
2 中間層
3 シーラント層
30 ノッチ部
40 通蒸部
T 厚さ方向
IN 内側(厚さ方向における一方側)
OU 外側(厚さ方向における他方側)
V 上下方向
UP 上側
LO 下側
MD 流れ方向(長手方向)
TD 幅方向
D1 配向方向
α 幅方向と配向方向とがなす角度(配向角)
図1
図2
図3
図4