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特開2024-58223光ファイバーのスリーブ挿通装置および光ファイバーのスリーブ挿通方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058223
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】光ファイバーのスリーブ挿通装置および光ファイバーのスリーブ挿通方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/24 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G02B6/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165447
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健太
(72)【発明者】
【氏名】石津 陽平
(72)【発明者】
【氏名】長江 淳仁
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA04
2H036KA01
2H036LA03
2H036LA08
2H036QA22
(57)【要約】
【課題】複数本の光ファイバーの端末をスリーブに簡単に挿通させることが可能なスリーブ挿通装置およびスリーブ挿通方法を提供する。
【解決手段】光ファイバー束104をその延び方向に沿って動かない固定状態および延び方向に沿ってスライド可能な解除状態に変更可能な状態で保持する固定スライド保持部57を有する固定スライドホルダ50と、固定スライドホルダ50より光ファイバー束104の先端側に配され、光ファイバー束104をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する先端側保持部77を有する先端側ホルダ70と、先端側ホルダ70よりさらに光ファイバー束104の先端側に配され、スリーブ保持部91を有するとともに、光ファイバー束104の延び方向に沿ってスライド可能とされたスリーブステージ90と、を備える、光ファイバーのスリーブ挿通装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の端末を筒状のスリーブ内に挿通させるためのスリーブ挿通装置であって、
前記光ファイバー束をその延び方向に沿って動かない固定状態および延び方向に沿ってスライド可能な解除状態に変更可能な状態で保持する固定スライド保持部を有する固定スライドホルダと、
前記固定スライドホルダより前記光ファイバー束の先端側に配され、前記固定スライド保持部から延出された前記光ファイバー束をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する先端側保持部を有する先端側ホルダと、
前記先端側ホルダよりさらに前記光ファイバー束の先端側に配され、前記スリーブを保持するスリーブ保持部を有するとともに、前記光ファイバー束の延び方向に沿ってスライド可能とされたスリーブステージと、を備え、
前記固定スライド保持部を固定状態とし、前記スリーブステージを前記先端側ホルダとともに前記固定スライドホルダ側にスライドさせることで、前記先端側保持部から徐々に延び出す前記光ファイバー束の端末を前記スリーブ内に挿通させることが可能な光ファイバーのスリーブ挿通装置。
【請求項2】
前記複数本の光ファイバーは、当該複数本の光ファイバーを構成糸の一種として製織された光ファイバー織物の端部から延び出した部分であって、
当該スリーブ挿通装置は、前記光ファイバー織物のシート状の織物本体を平坦な状態で固定する織物固定部と、前記織物固定部と前記固定スライドホルダとの間に配される基端側ホルダと、を備え、
前記基端側ホルダは、前記織物本体から延び出した横並び状態の前記複数本の光ファイバーが束状に集束されつつある三角形状の集束部を前記織物本体のシート面と交差する方向から挟持する挟持部と、前記集束部により束ねられた前記光ファイバー束を、その延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する基端側保持部とを有する請求項1に記載の光ファイバーのスリーブ挿通装置。
【請求項3】
前記光ファイバー織物は異なる光源に接続される複数本の第1ファイバーおよび複数本の第2ファイバーを備え、
前記基端側ホルダは、前記複数本の第1ファイバーが束ねられた第1ファイバー束および前記複数本の第2ファイバーが束ねられた第2ファイバー束を個別に保持する2つの前記基端側保持部を横並びの状態で備え、
前記固定スライドホルダは、前記第1ファイバー束および前記第2ファイバー束を個別に保持する2つの前記固定スライド保持部を横並びの状態で備え、
前記先端側ホルダは、前記第1ファイバー束および前記第2ファイバー束を個別に保持する2つの前記先端側保持部を横並びの状態で備え、
前記スリーブステージは、前記第1ファイバー束および前記第2ファイバー束をそれぞれ挿通させる2つの前記スリーブを保持する2つの前記スリーブ保持部を横並びの状態で備えている請求項2に記載の光ファイバーのスリーブ挿通装置。
【請求項4】
前記基端側保持部、前記固定スライド保持部、および、前記先端側保持部は、前記光ファイバー束を収容可能な溝部と、前記溝部を塞ぐ蓋部とから構成されている請求項2または請求項3に記載の光ファイバーのスリーブ挿通装置。
【請求項5】
複数本の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の端末を筒状のスリーブ内に挿通させるためのスリーブ挿通装置を用いた光ファイバーのスリーブ挿通方法であって、
前記光ファイバー束をその延び方向に沿って動かない固定状態で固定スライド保持部により保持するとともに、前記固定スライド保持部より前記光ファイバー束の先端側において、前記光ファイバー束をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で先端側保持部により保持する保持工程と、
前記先端側保持部から延び出した前記光ファイバー束の先端を切り揃えるカット工程と、
切り揃えられた前記光ファイバー束の先端に前記スリーブを近づけ、前記先端側保持部を前記固定スライド保持部側に移動させることで前記先端側保持部から徐々に延び出す前記光ファイバー束を前記スリーブ内に挿入するスライド挿入工程と、を実行する光ファイバーのスリーブ挿通方法。
【請求項6】
前記複数本の光ファイバーは、当該複数本の光ファイバーを構成糸の一種として製織された光ファイバー織物の端部から延び出した部分であって、
前記保持工程の前に、前記光ファイバー織物のシート状の織物本体を平坦な状態で固定する織物固定工程と、
前記織物本体から延び出した横並び状態の前記複数本の光ファイバーを束ねて基端側保持部により保持する基端側保持工程と、を実行し、
さらに、横並び状態の前記複数本の光ファイバーが束状に集束されつつある三角形状の集束部を前記織物本体のシート面と交差する方向から挟持する集束部挟持工程と、を実行する請求項5に記載の光ファイバーのスリーブ挿通方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、光ファイバーのスリーブ挿通装置および光ファイバーのスリーブ挿通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の光ファイバーの端末を、筒状のスリーブにより集束させる技術が知られている。下記特許文献1には、複数本の光ファイバーを束ねた光ファイバー束の端末を外筒および内筒に挿入し、内筒を外筒にねじ込むことにより、光ファイバーの端末にスリーブを取り付ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-165003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ファイバー束を、当該光ファイバー束の径とさほど変わらない径のスリーブ内に挿入する作業は容易ではなく、作業性の改善が望まれていた。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複数本の光ファイバーの端末をスリーブに簡単に挿通させることが可能なスリーブ挿通装置およびスリーブ挿通方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、複数本の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の端末を筒状のスリーブ内に挿通させるためのスリーブ挿通装置であって、前記光ファイバー束をその延び方向に沿って動かない固定状態および延び方向に沿ってスライド可能な解除状態に変更可能な状態で保持する固定スライド保持部を有する固定スライドホルダと、前記固定スライドホルダより前記光ファイバー束の先端側に配され、前記固定スライド保持部から延出された前記光ファイバー束をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する先端側保持部を有する先端側ホルダと、前記先端側ホルダよりさらに前記光ファイバー束の先端側に配され、前記スリーブを保持するスリーブ保持部を有するとともに、前記光ファイバー束の延び方向に沿ってスライド可能とされたスリーブステージと、を備え、前記固定スライド保持部を固定状態とし、前記スリーブステージを前記先端側ホルダとともに前記固定スライドホルダ側にスライドさせることで、前記先端側保持部から徐々に延び出す前記光ファイバー束の端末を前記スリーブ内に挿通させることが可能とされている。
【0007】
上記構成の装置により光ファイバー束をスリーブに挿通させる際には、まず、光ファイバー束を固定スライド保持部および先端側保持部に保持させ、先端側保持部から延び出した光ファイバー束の先端を切り揃える。そして、スリーブを保持させたスリーブステージを先端側ホルダに向けて、すなわち、切り揃えられた光ファイバー束の先端に向けてスライドさせる。この時、固定スライド保持部を、光ファイバー束が動かない固定状態としておく。このような状態で先端側ホルダをスリーブステージとともに固定スライドホルダ側に移動させることにより、先端側保持部から徐々に延び出す光ファイバー束をスリーブ内に挿入することができる。またこの時、先端側ホルダを固定スライドホルダに近接した位置から固定スライドホルダに近づけることにより、光ファイバー束がスリーブと干渉した場合でも、光ファイバー束に簡単に撓みが生じることを抑制することができる。
【0008】
また、スリーブ内に光ファイバー束の先端側が挿入され、先端側ホルダが固定スライドホルダに当接した後、更にスリーブの奥方に光ファイバー束を進入させる際には、固定スライド保持部の固定状態を一旦解除し、固定スライドホルダを光ファイバー束の基端側にスライドさせる。そしてその後、固定スライド保持部を再び固定状態とすることにより、再び先端側ホルダに近い位置で光ファイバー束を固定し、光ファイバー束の撓みを抑制しつつ、光ファイバー束をスリーブの奥方に挿入することができる。
【0009】
このように、上記構成によれば、光ファイバー束をスリーブに簡単に挿通させることができる。
【0010】
前記複数本の光ファイバーは、当該複数本の光ファイバーを構成糸の一種として製織された光ファイバー織物の端部から延び出した部分であって、当該スリーブ挿通装置は、前記光ファイバー織物のシート状の織物本体を平坦な状態で固定する織物固定部と、前記織物固定部と前記固定スライドホルダとの間に配される基端側ホルダと、を備え、前記基端側ホルダは、前記織物本体から延び出した横並び状態の前記複数本の光ファイバーが束状に集束されつつある三角形状の集束部を前記織物本体のシート面と交差する方向から挟持する挟持部と、前記集束部により束ねられた前記光ファイバー束を、その延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する基端側保持部とを有していてもよい。
【0011】
上記構成によれば、複数本の光ファイバーが、光ファイバー織物の端部から延び出した部分である場合でも、横並びの複数本の光ファイバーを美しい状態で集束させて光ファイバー束とし、光ファイバー束中の個々の光ファイバーが延び方向にずれ難い状態として、一連の操作を実行することができる。
【0012】
前記光ファイバー織物は異なる光源に接続される複数本の第1ファイバーおよび複数本の第2ファイバーを備え、前記基端側ホルダは、前記複数本の第1ファイバーが束ねられた第1ファイバー束および前記複数本の第2ファイバーが束ねられた第2ファイバー束を個別に保持する2つの前記基端側保持部を横並びの状態で備え、前記固定スライドホルダは、前記第1ファイバー束および前記第2ファイバー束を個別に保持する2つの前記固定スライド保持部を横並びの状態で備え、前記先端側ホルダは、前記第1ファイバー束および前記第2ファイバー束を個別に保持する2つの前記先端側保持部を横並びの状態で備え、前記スリーブステージは、前記第1ファイバー束および前記第2ファイバー束をそれぞれ挿通させる2つの前記スリーブを保持する2つの前記スリーブ保持部を横並びの状態で備えていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、光ファイバー織物が個別に集束される複数の光ファイバーを備える場合でも、各ホルダに光ファイバー束を保持する保持部を横並びの状態で設けることができるから、複数の光ファイバー束を一括に複数のスリーブに挿通させることができる。
【0014】
前記基端側保持部、前記固定スライド保持部、および、前記先端側保持部は、前記光ファイバー束を収容可能な溝部と、前記溝部を塞ぐ蓋部とから構成されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、光ファイバー束を溝部の開口から溝部内に収容し、蓋を取り付けるだけで、簡単に光ファイバー束を保持可能な一実施形態を提供することができる。
【0016】
また、本明細書に開示される技術は、複数本の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の端末を筒状のスリーブ内に挿通させるためのスリーブ挿通装置を用いた光ファイバーのスリーブ挿通方法であって、前記光ファイバー束をその延び方向に沿って動かない固定状態で固定スライド保持部により保持するとともに、前記固定スライド保持部より前記光ファイバー束の先端側において、前記光ファイバー束をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で先端側保持部により保持する保持工程と、前記先端側保持部から延び出した前記光ファイバー束の先端を切り揃えるカット工程と、切り揃えられた前記光ファイバー束の先端に前記スリーブを近づけ、前記先端側保持部を前記固定スライド保持部側に移動させることで前記先端側保持部から徐々に延び出す前記光ファイバー束を前記スリーブ内に挿入するスライド挿入工程と、を実行する方法である。
【0017】
前記複数本の光ファイバーは、当該複数本の光ファイバーを構成糸の一種として製織された光ファイバー織物の端部から延び出した部分であって、前記保持工程の前に、前記光ファイバー織物のシート状の織物本体を平坦な状態で固定する織物固定工程と、前記織物本体から延び出した横並び状態の前記複数本の光ファイバーを束ねて基端側保持部により保持する基端側保持工程と、を実行し、さらに、横並び状態の前記複数本の光ファイバーが束状に集束されつつある三角形状の集束部を前記織物本体のシート面と交差する方向から挟持する集束部挟持工程と、を実行してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示される技術によれば、複数本の光ファイバーの端末をスリーブに簡単に挿通させることが可能なスリーブ挿通装置およびスリーブ挿通方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の光ファイバーのスリーブ挿通装置を示す斜視図(保持工程)
図2】スリーブ挿通装置の光ファイバー集束部分の一部拡大平面図
図3】基端側ホルダ本体と基端側保持蓋を組み付ける前の分解正面図
図4】基端側ホルダ本体と基端側保持蓋を組付けた状態の正面図
図5】スリーブ挿通装置の一部分解斜視図
図6】スリーブ挿通方法を示す図であって、織物固定工程および基端側保持工程を示す斜視図
図7】スリーブ挿通方法を示すであって、集束部挟持工程および保持工程を示す斜視図
図8】スリーブ挿通方法を示す図であって、カット工程を示す斜視図
図9】スリーブ挿通方法を示す図であって、スリーブを設置した状態を示す斜視図
図10】スリーブ挿通方法を示すであって、1回目のスライド挿入工程を示す斜視図
図11】スリーブ挿通方法を示す図であって、中間保持部の固定状態を解除してスライド固定ホルダを移動させた状態を示す斜視図
図12】スリーブ挿通方法を示すであって、中間保持部を固定状態とした状態を示す斜視図
図13】スリーブ挿通方法を示すであって、2回目のスライド挿入工程を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
一実施形態を図1から図13によって説明する。各図面の一部にはX軸、Y軸、およびZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。上下方向については図1を基準とし、同図上方向(Z方向)を上、下方向を下とする。また、X方向を正面または前方、X方向の反対を背面または後方、Y方向を右、Y方向の反対を左、あるいは、側方または横方向として説明する。
【0021】
本実施形態のスリーブ挿通装置10は、構成糸として光ファイバー103を含む織物(光ファイバー織物の一例)100のシート状の織物本体101の一端部(延出端部102)から延び出した複数本の光ファイバー103の端末を、金属製で細長い筒状のスリーブ95に挿通させるための装置である。
【0022】
<織物100>
織物100は、例えば車両(自動車)の内装材であるドアトリムを構成する部材に利用される表皮材である。この織物100は、シート状の織物本体101の延出端部102から延び出した複数本の光ファイバー103を金属製のスリーブ95によって結束し、スリーブ95を光源装置に接続することにより、光が入射可能とされる。
【0023】
本実施形態の織物100は、異なる光源に接続される2種類の光ファイバー103A、103Bを含んで構成されている。具体的には、この織物100は、一の光源に接続される複数本の第1ファイバー103Aと、他の光源に接続される複数本の第2ファイバー103Bとを含んで構成されている。第1ファイバー103Aおよび第2ファイバー103Bは、織物本体101において同方向(X方向)に延びる縦糸であって、これらは交互に並んで配置されていてもよく、複数本が塊となって並んで配置されていてもよく、異なる層が積層された積層体から延出されるものであってもよい。本実施形態では、第1ファイバー103Aが構成する層と第2ファイバー103Bが構成する層とが積層された積層体の一端部(延出端部102)の全体から、複数本の第1ファイバー103Aおよび第2ファイバー103Bが重なりつつ延び出した例を示している。
【0024】
上述した複数本の第1ファイバー103Aおよび複数本の第2ファイバー103Bは、それらの並び方向(Y方向)の全体に亘って異なる2方向に集束され、それぞれ異なるスリーブ95(第1スリーブ95Aおよび第2スリーブ95B)に挿通されるものとする。具体的には、複数本の第1ファイバー103Aおよび複数本の第2ファイバー103Bは、図2に示すように、織物本体101の延出端部102を共通の底部とし、頂点が横方向(Y方向)にずれた2つの異なる三角形が上下方向(Z方向)に重なるように、織物本体101の延出端部102から延出されるとともにそれぞれ個別に束ねられ、異なるスリーブ95に挿通されるものとする。
【0025】
なお、以下の説明において、第1ファイバー103Aと第2ファイバー103Bとを区別しない場合には、光ファイバー103として説明する。また、後述する光ファイバー束104および集束部105についても同様に、種類を区別する場合にのみ各符号にAまたはBを付すこととする。
【0026】
<スリーブ挿通装置10>
スリーブ挿通装置10は、例えば図1に示すように、織物100のシート状の織物本体101を固定する織物固定部11と、織物本体101から延び出した複数本の光ファイバー103を束ねた状態で保持する基端側ホルダ20と、基端側ホルダ20よりも光ファイバー103の先端側に配され、基端側ホルダ20から延び出した光ファイバー束104を保持する固定スライドホルダ50と、固定スライドホルダ50よりも光ファイバー103の先端側に配され、固定スライドホルダ50から延び出した光ファイバー束104を保持する先端側ホルダ70と、先端側ホルダ70よりもさらに光ファイバー103の先端側に配され、光ファイバー103を挿通させるためのスリーブ95を保持するスリーブステージ90と、を備えている。これら基端側ホルダ20、固定スライドホルダ50、先端側ホルダ70、およびスリーブステージ90は、織物固定部11からX方向に延びるレール29、59、79に沿って、いずれも、織物固定部11から離れる方向および接近する方向(X方向)に個別に移動可能とされている。
【0027】
なお、以下スリーブ挿通装置10に関しても、横方向(Y方向)に並んで設けられる同一形状の部分について、区別する場合にのみ各符号にAまたはBを付し、区別しない場合にはAまたはBを省略することとする。
【0028】
<織物固定部11>
織物固定部11は、織物本体101の少なくとも一部が載置可能とされ、水平方向に延在する載置面を備えた本体載置台12と、本体載置台12に載置された織物本体101に重ね合わされることで織物本体101を本体載置台12との間で挟持する本体押さえ部13と、を有して構成されている。織物本体101は、複数本の光ファイバー103が延び出す延出端部102がY方向に沿って配され、光ファイバー103がX方向に沿って延び出す向きで、織物固定部11に固定される。
【0029】
なお、例えば本体載置台12を磁性体で形成し、本体押さえ部13を磁石付き錘とすることで、織物本体101を強い力で挟持することができる。
【0030】
<基端側ホルダ20>
織物本体101の延出端部102から横並びに延び出した複数本の第1ファイバー103Aおよび複数本の第2ファイバー103Bは、それぞれ個別に束ねられて第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bとされ(図2参照)、基端側ホルダ20の基端側保持部27に保持される。基端側ホルダ20は、図1および図6に示すように、全体として概ね箱型をなす基端側ホルダ本体21と、基端側保持蓋(蓋部の一例)31と、挟持部材41とを備えて構成されている。
【0031】
基端側ホルダ本体21には、図1および図3に示すように、その上端から光ファイバー束104の延び方向(X方向)と交差する方向(Y方向)にW字形状に並んで切り欠かれた二つのV溝が形成されている。二つのV溝のうち一方は、織物100側から延びる第1ファイバー束104Aを収容する基端側第1溝部22Aであり、他方は、同じく織物100側から延びる第2ファイバー束104Bを収容する基端側第2溝部22Bである。これらの2つの溝部22の底部は、断面半円形状をなしている。
【0032】
このW字形状の基端側第1溝部22Aおよび基端側第2溝部22Bの2つの溝底部の背面側(織物固定部11側)には、織物100から横並び状態で延び出して平面視三角形の頂点に集束されつつある平面視三角形状の複数本の光ファイバー103を載置可能とする光ファイバー載置部23が水平方向に広がっている(図1および図2参照)。光ファイバー載置部23の載置面は、上述した本体載置台12の載置面と面一に配置される高さに設定されている。光ファイバー載置部23は、基端側ホルダ本体21の背面側の一部を階段状に切り欠くことにより形成されている。
【0033】
この水平方向に延在する光ファイバー載置部23は、後方に向けて拡径するように形成されており、その両側方には、立壁24が立ち上がっている。立壁24は、横並びとされた2つのV溝(基端側第1溝部22Aおよび基端側第2溝部22B)の溝底部からやや側方に離れた位置から、それらの対向する壁面が後方に向けて左右両側に広がるように立ち上がっている。これにより、光ファイバー載置部23(基端側ホルダ本体21の背面と2つの立壁24の内壁面とで囲まれた部分)は、後方に向けて拡径する平面視略台形状をなしている(図2参照)。またこの2つの立壁24は、上方に向けてやや拡径している。つまり2つの立壁24の互いに対向する壁面は、光ファイバー載置部23からやや傾斜して外側に広がるように立ち上がっている。
【0034】
また、基端側第1溝部22Aおよび基端側第2溝部22Bの延び方向(X方向)における略中央部分には、溝壁および溝底部から凹状に窪む形で左右方向(Y方向)および下方に向けて全体として矩形の板をくり抜いた形の基端側嵌合凹部26が設けられている(図1参照)。そして、この基端側嵌合凹部26に嵌め入れられる形で、基端側保持蓋31が取り付け可能とされている。
【0035】
基端側保持蓋31は、図1および図3に示すように、基端側第1溝部22Aおよび基端側第2溝部22Bをそれらの延び方向の全体に亘って一括に埋める形で嵌め入れられる略W字形のブロック状をなす基端側蓋本体32と、基端側蓋本体32から側方および下方に張り出し、上述した基端側嵌合凹部26内に嵌め入れられる基端側嵌合部33とを備えている。略W字形状の基端側蓋本体32の2つの下端には、上方に向けて半円形状に切り欠かれてX方向に延びる基端側保持溝34(基端側第1保持溝34Aおよび基端側第2保持溝34B)がそれぞれ形成されている。基端側嵌合部33は、上述した基端側嵌合凹部26に嵌合可能な薄板状をなして基端側蓋本体32から側方および下方に張り出しており、その下端から、2つの基端側保持溝34A、34Bに向けて、逆W字形状に切り欠かれた基端側切欠部35が形成されている。これにより、基端側保持蓋31は、全体として、正面視略M字形状をなしている。
【0036】
図4に示すように、基端側保持蓋31が基端側第1溝部22Aおよび基端側第2溝部22Bを塞ぐように基端側ホルダ本体21に取り付けられた状態において、基端側ホルダ本体21の2つの基端側溝部22の底部と、基端側蓋本体32の2つの基端側保持溝34との間に、それぞれ、光ファイバー束104が前後方向にスライド可能に挿通される大きさの基端側保持部(第1基端側保持部27Aおよび第2基端側保持部27B)が形成されるように設定されている。
【0037】
挟持部材41は、光ファイバー載置部23に載置された複数本の光ファイバー103上に重ね合わされることで、複数本の光ファイバー103を光ファイバー載置部23との間で挟持する部材である。例えば図6に示すように、基端側ホルダ本体21の立壁24の上端は切り欠かれて一段低くなっており、挟持部材41は、これらの立壁24の上面に架け渡されるように配置される板状の架橋部42と、架橋部42から下方に延びて二つの立壁24の間を埋める挟持部本体44とを備えた正面視略T字形状とされている。架橋部42には下方に向けて突出する係合突部43が設けられており、立壁24の上面から窪む係合凹部25に係合することで、基端側ホルダ本体21に対する挟持部材41の位置決めがなされる。挟持部本体44の下面45は、織物本体101から延出されて収束されつつある複数本の光ファイバー103を光ファイバー載置部23との間で挟持可能とするべく、後方から前方にかけて上方に傾斜した傾斜面状とされている。
【0038】
基端側ホルダ本体21に基端側保持蓋31および挟持部材41が組み付けられた状態において、基端側ホルダ20は全体として矩形のブロック状とされる。この基端側ホルダ20は、織物固定部11側からX方向に延びるレール29に沿って、織物固定部11に接近する方向および離隔する方向(X方向)に移動可能とされている。
【0039】
<固定スライドホルダ50>
基端側ホルダ20より光ファイバー103の先端側には、基端側ホルダ20の第1基端側保持部27Aおよび第2基端側保持部27Bから延び出した第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bを保持する固定スライドホルダ50が設けられている。
【0040】
固定スライドホルダ50は、例えば図5に示すように、全体として厚みが厚い板状をなしており、上述した第1基端側保持部27Aおよび第2基端側保持部27Bと同様の形状の第1中間保持部57A、および、第2中間保持部57B(いずれも固定スライド保持部の一例)を有している。
【0041】
具体的には、固定スライドホルダ50は、厚板状の固定スライドホルダ本体51と中間保持蓋(蓋部の一例)61とを備えて構成されている。固定スライドホルダ本体51は、その上端から光ファイバー束104の延び方向と交差する方向(横並び)にW字形状に並んで切り欠かれた二つのV溝を備えている(図1参照)。二つのV溝のうち一方は、基端側ホルダ20から延びる第1ファイバー束104Aを収容する中間第1溝部52Aであり、他方は、同じく基端側ホルダ20から延びる第2ファイバー束104Bを収容する中間第2溝部52Bである。
【0042】
中間第1溝部52Aおよび中間第2溝部52Bの前後方向(X方向)における略中央部分には、それらの溝壁および溝底部から凹状に窪む形で左右方向(Y方向)および下方に向けて全体として矩形の板をくり抜いた形の中間嵌合凹部56が設けられている。そして、この中間嵌合凹部56に嵌め入れられる形で、中間保持蓋61が取り付け可能とされている。
【0043】
中間保持蓋61は、図7に示すように、中間第1溝部52Aおよび中間第2溝部52Bを前後方向の全体に亘って一括に埋める形で嵌め入れられる略W字形のブロック状をなす中間蓋本体62と、中間蓋本体62から側方および下方に張り出し、上述した中間嵌合凹部56内に嵌め入れられる中間嵌合部63とを備えている。W字形状の中間蓋本体62の2つの下端には、上方に向けて半円状に切り欠かれてX方向に延びる中間保持溝64A、64Bがそれぞれ形成されている。中間嵌合部63は、上述した中間嵌合凹部56に嵌合可能な薄板状をなして中間蓋本体62から張り出しており、その下端から、2つの中間保持溝64A、64Bに向けて、逆W字形状に切り欠かれた中間切欠部65が形成されている。これにより、中間保持蓋61は、全体として、正面視略略M字型をなしている。
【0044】
中間保持蓋61が中間第1溝部52Aおよび中間第2溝部52Bを塞ぐように固定スライドホルダ本体51に取り付けられた状態において、固定スライドホルダ本体51の2つの中間溝部52の底部と、中間蓋本体62の2つの中間保持溝64との間に、それぞれ、光ファイバー束104が前後方向にスライド不可能な大きさで、つまり、光ファイバー束104を固定した状態で挿通可能な中間保持部(第1中間保持部57Aおよび第2中間保持部57B)が形成されるように設定されている(図5参照)。
【0045】
固定スライドホルダ本体51に中間保持蓋61が組み付けられた状態において、固定スライドホルダ50は全体として矩形の厚板状をなす。この固定スライドホルダ50は、X方向に延びる一対のレール29に沿って、基端側ホルダ20に接近する方向および離隔する方向(X方向)に移動可能とされている。なお、この固定スライドホルダ50には、その基端側ホルダ20に対する姿勢を正規姿勢に案内する一対のレール59が基端側ホルダ20に向けて延びるように設けられている。
【0046】
<先端側ホルダ70>
さらに、固定スライドホルダ50より光ファイバー103の先端側には、固定スライドホルダ50の第1中間保持部57Aおよび第2中間保持部57Bから延び出した第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bを保持する先端側ホルダ70が設けられている。
【0047】
先端側ホルダ70は、固定スライドホルダ50とほぼ同様の形状をなしており、図5に示すように、第1先端側保持部77A、および、第2先端側保持部77Bを有している。
【0048】
具体的には、先端側ホルダ70は、厚板状の先端側ホルダ本体71と先端側保持蓋(蓋部の一例)81とを備えて構成されている。先端側ホルダ本体71は、図1に示すように、光ファイバー束104の延び方向と交差する方向(横並び)にW字形状に並んで切り欠かれた先端側第1溝部72Aおよび先端側第2溝部72Bを備えており、この2つの溝部72を埋めるように、先端側保持蓋81が取り付けられるようになっている。
【0049】
先端側保持蓋81が先端側第1溝部72Aおよび先端側第2溝部72Bを塞ぐように先端側ホルダ本体71に取り付けられた状態において、先端側第1溝部72Aおよび先端側第2溝部72Bの底部と、先端側蓋本体82の2つの下端に設けられた先端側保持溝84との間に、光ファイバー束104が前後方向にスライド可能な大きさで挿通可能な第1先端側保持部77Aおよび第2先端側保持部77Bが形成されるように設定されている。
【0050】
先端側保持蓋81は、図7に示すように、先端側第1溝部72Aおよび先端側第2溝部72Bを前後方向の全体に亘って一括に埋める形で嵌め入れられる略W字形のブロック状をなす先端側蓋本体82と、先端側蓋本体82から側方および下方に張り出し、先端側嵌合凹部76内に嵌め入れられる先端側嵌合部83とを備えている。W字形状の先端側蓋本体82の2つの下端には、上方に向けて半円状に切り欠かれてX方向に延びる先端側保持溝84A、84Bがそれぞれ形成されている。先端側嵌合部83は、先端側嵌合凹部76に嵌合可能な薄板状をなして先端側蓋本体82から張り出しており、その下端から、2つの先端側保持溝84A、84Bに向けて、逆W字形状に切り欠かれた先端側切欠部85が形成されている。これにより、先端側保持蓋81は、全体として、正面視略略M字型をなしている。
【0051】
先端側保持蓋81が先端側第1溝部72Aおよび先端側第2溝部72Bを塞ぐように先端側ホルダ本体71に取り付けられた状態において、先端側ホルダ本体71の2つの先端側溝部72の底部と、先端側蓋本体82の2つの先端側保持溝84との間に、それぞれ、光ファイバー束104が前後方向にスライド可能に挿通される大きさの先端側保持部(第1先端側保持部77Aおよび第2先端側保持部77B)が形成されるように設定されている(図5参照)。
【0052】
この先端側ホルダ70は、X方向に延びるレール29に沿って、固定スライドホルダ50に接近する方向および離隔する方向(X方向)に移動可能とされている。なお、この先端側ホルダ70には、その姿勢を正規姿勢に案内する一対のレール79が設けられている。
【0053】
<スリーブステージ90>
先端側ホルダ70よりさらに光ファイバー103の先端側には、先端側ホルダ70の第1先端側保持部77Aおよび第2先端側保持部77Bから延び出した第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bを挿通させるための第1スリーブ95Aおよび第2スリーブ95Bを保持するためのスリーブステージ90が設けられている。
【0054】
スリーブステージ90は、例えば図5に示すように、矩形の箱型をなしており、その上面に、光ファイバー103の延び方向(X方向)に延びて第1スリーブ95Aおよび第2スリーブ95Bを嵌め入れる断面半円形の第1スリーブ保持部91Aおよび第2スリーブ保持部91Bが横並びに形成されている。スリーブステージ90の高さは、各スリーブ保持部91A、91Bにスリーブ95A、95Bを嵌め入れた状態において、スリーブ95A、95Bの軸がそれぞれ光ファイバー束104A、104Bの軸の高さと同じ高さとなるように設定されている。
【0055】
このスリーブステージ90は、X方向に延びるレール29に沿って、先端側ホルダ70に接近する方向および離隔する方向(X方向)に移動可能とされている。
【0056】
<光ファイバーのスリーブ挿通方法>
本実施形態のスリーブ挿通装置10は上述した通りであって、次に、光ファイバーのスリーブ挿通方法について詳しく説明する。
【0057】
まず、図1に示すように、基端側ホルダ20を、織物固定部11からやや離れた位置であって、織物固定部11側に移動可能な位置に配置し、固定スライドホルダ50、先端側ホルダ70、およびスリーブステージ90を、順に、それぞれ隣り合うホルダからやや離れた位置に配置する。
【0058】
<織物固定工程>
この状態において、織物本体101を、その延出端部102(光ファイバー103が延び出している端部)が織物固定部11の本体載置台12のうち基端側ホルダ20に近い端部に沿うように、本体載置台12の載置面に載置する。そして、本体押さえ部13を本体載置台12の上方から織物本体101に重ね合わせ、本体載置台12との間に織物本体101を挟持することで、織物本体101を織物固定部11に平坦な状態で固定する。この状態において、本体載置台12(織物固定部11)の端部から、複数本の光ファイバー103が横並びとなった状態で延出されている。
【0059】
<保持工程(基端側保持工程を含む)>
次に、織物固定部11(織物本体101)から横並び状態で延出されてフリーとなった状態の複数本の第1ファイバー103Aおよび第2ファイバー103Bをそれぞれ個別に集束し、集束された第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bを、基端側ホルダ20、固定スライドホルダ50、先端側ホルダ70の各2つの溝部22、52、72および、スリーブステージ90の2つのスリーブ保持部91内に順に収容する(図1および図2参照)。具体的には、第1ファイバー束104Aを、基端側第1溝部22A、中間第1溝部52A、先端側第1溝部72A、第1スリーブ保持部91Aに順に架け渡すように配置するとともに、第2ファイバー束104Bを、基端側第2溝部22B、中間第2溝部52B、先端側第2溝部72B、第2スリーブ保持部91B内に順に架け渡すように配置する。
【0060】
この状態において、織物100の延出端部102から横並び状態で延び出して個別に平面視三角形の頂点に集束されつつある第1ファイバー103Aおよび第2ファイバー103Bは、基端側ホルダ本体21の光ファイバー載置部23上に載置される。詳細には、横並び状態の複数本の第1ファイバー103Aが束状に集束されつつある部分である平面視三角形状の第1集束部105A、および、横並び状態の複数本の第2ファイバー103Bが束状に集束されつつある部分である平面視三角形状の第2集束部105Bは、延出端部102を共通の底辺として異なる頂点(基端側第1溝部22Aおよび基端側第2溝部22B)を有する2つの三角形が積層された状態とされて、光ファイバー載置部23上に載置される(図2参照)。
【0061】
<集束部挟持工程>
次に、基端側ホルダ本体21に基端側保持蓋31を組付ける。この状態において、2つの基端側溝部22と2つの基端側保持溝34とが組み合わされることにより形成された基端側保持部27に挿通された光ファイバー束104は、その延び方向に沿ってスライド可能とされている。そこで、図6に示すように、光ファイバー束104を先端側に引っ張りつつ、基端側ホルダ20をレール29に沿って織物固定部11に近づく方向にスライドさせる。これにより、三角形状の集束部105のX方向の寸法を短くすることができる。
【0062】
なお、はじめから基端側ホルダ20を織物固定部11に近い位置に配置した状態で光ファイバー103を集束することもできるが、光ファイバー103を一旦延出端部102から遠い位置で集束し、その後、集束位置を延出端部102に近づける方が、作業性が良く、三角形の集束部105を美しい状態とし易い。
【0063】
基端側ホルダ20が所定の位置に配置されたら、基端側ホルダ本体21に挟持部材41を組み付け、集束部105を光ファイバー載置部23との間に挟持する(図7参照)。これにより、織物100から延び出して集束された複数本の光ファイバー103が、個別に(ばらばらに)光ファイバー束104の延び方向に沿ってずれ動き難い、安定した状態とされる。
【0064】
<カット工程>
次に、固定スライドホルダ本体51に中間保持蓋61を組付けるとともに、先端側ホルダ本体71に先端側保持蓋81を組付ける。これにより、2つの中間溝部52と、2つの中間保持溝64との組み合わせにより形成された2つの中間保持部(固定スライド保持部の一例)57に保持された光ファイバー束104は、その軸方向に沿ってスライド不可能な固定状態とされる。そして、先端側保持部77から延び出した光ファイバー束104を先端側保持部77の際でカッター等の切削部材により切り揃える。光ファイバー束104の先端面は、先端側ホルダ70の前面と面一とされる(図8参照)。
【0065】
<スライド挿入工程>
次に、スリーブステージ90の2つのスリーブ保持部91A、91Bにそれぞれスリーブ95A、95Bを設置する(図9参照)。そして、スリーブステージ90をレール29に沿って先端側ホルダ70に突き当たる位置まで移動させ、その後、先端側ホルダ70とともに固定スライドホルダ50側に移動させる(図10参照)。すると、先端側ホルダ70の移動に伴って先端側保持部77から光ファイバー束104の先端が徐々に延び出し、スリーブ保持部91に保持されているスリーブ95内に進入する。
【0066】
この進入時に光ファイバー束104がスリーブ95と干渉したり、進入後の挿入過程で光ファイバー束104とスリーブ95との間に摩擦が発生して、光ファイバー束104に織物100側に向かう力が加えられる場合がある。しかし、光ファイバー束104は、上述したように、先端側ホルダ70に近接した位置に配されている中間保持部57によりその軸方向に動かない状態で固定されている。従って、光ファイバー103の張力により撓みが抑制され、もって、光ファイバー束104がスリーブ95内に挿通され易い。
【0067】
また、スリーブ95内に光ファイバー束104の先端側が挿入され、先端側ホルダ70が固定スライドホルダ50に当接した(図10参照)後、更にスリーブ95の奥方に光ファイバー束104を挿入させたい場合には、図11に示すように、固定スライドホルダ本体51から中間保持蓋61を取り外して中間保持部57の固定状態を一旦解除し、固定スライドホルダ50をレール29に沿って光ファイバー束104の基端側(織物固定部11側)にスライドさせる。そしてその後、固定スライドホルダ本体51に中間保持蓋61を組み付けて、中間保持部57を再び固定状態とする(図12参照)ことにより、再び先端側ホルダ70に近い位置で光ファイバー束104を固定し、光ファイバー束104の撓みを抑制しつつ、光ファイバー束104をスリーブ95の奥方に挿入することができる(図13参照)。
【0068】
<作用効果>
次に、作用効果について説明する。本実施形態のスリーブ挿通装置10は、光ファイバー束104をその延び方向に沿って動かない固定状態および延び方向に沿ってスライド可能な解除状態に変更可能な状態で保持する中間保持部57を有する固定スライドホルダ50と、固定スライドホルダ50より光ファイバー束104の先端側に配され、中間保持部57から延出された光ファイバー束104をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する先端側保持部77を有する先端側ホルダ70と、先端側ホルダ70よりさらに光ファイバー束104の先端側に配され、スリーブ95を保持するスリーブ保持部91を有するとともに、光ファイバー束104の延び方向に沿ってスライド可能とされたスリーブステージ90と、を備え、中間保持部57を固定状態とし、スリーブステージ90を先端側ホルダ70とともに固定スライドホルダ50側にスライドさせることで、先端側保持部77から徐々に延び出す光ファイバー束104の端末をスリーブ95内に挿通させることが可能である。
【0069】
上記構成のスリーブ挿通装置10により光ファイバー束104をスリーブ95に挿通させる際には、まず、光ファイバー束104を中間保持部57および先端側保持部77に保持させ、先端側保持部77から延び出した光ファイバー束104の先端を切り揃える。そして、スリーブ95を保持させたスリーブステージ90を先端側ホルダ70に向けて、すなわち、切り揃えられた光ファイバー束104の先端に向けてスライドさせる。この時、中間保持部57を、光ファイバー束104が動かない固定状態としておく。このような状態で先端側ホルダ70をスリーブステージ90とともに固定スライドホルダ50側に移動させることにより、先端側保持部77から徐々に延び出す光ファイバー束104をスリーブ95内に挿入することができる。またこの時、先端側ホルダ70を固定スライドホルダ50に近接した位置から固定スライドホルダ50に近づけることにより、光ファイバー束104がスリーブ95と干渉した場合でも、光ファイバー束104に簡単に撓みが生じることを抑制することができる。
【0070】
また、スリーブ95内に光ファイバー束104の先端側が挿入され、先端側ホルダ70が固定スライドホルダ50に当接した後、更にスリーブ95の奥方に光ファイバー束104を進入させる際には、中間保持部57の固定状態を一旦解除し、固定スライドホルダ50を光ファイバー束104の基端側にスライドさせる。そしてその後、中間保持部57を再び固定状態とすることにより、再び先端側ホルダ70に近い位置で光ファイバー束104を固定し、光ファイバー束104の撓みを抑制しつつ、光ファイバー束104をスリーブ95の奥方に挿入することができる。
【0071】
このように、上記構成のスリーブ挿通装置10によれば、光ファイバー束104をスリーブ95に簡単に挿通させることができる。
【0072】
また、複数本の光ファイバー103は、当該複数本の光ファイバー103を構成糸の一種として製織された織物100の端部から延び出した部分であって、スリーブ挿通装置10は、織物100のシート状の織物本体101を平坦な状態で固定する織物固定部11と、織物固定部11と固定スライドホルダ50との間に配される基端側ホルダ20と、を備え、基端側ホルダ20は、織物本体101から延び出した横並び状態の複数本の光ファイバー103が束状に集束されつつある三角形状の集束部105を織物本体101のシート面と交差する方向から挟持する挟持部(光ファイバー載置部23および挟持部材41)と、集束部105により束ねられた光ファイバー束104を、その延び方向に沿ってスライド可能な状態で保持する基端側保持部27とを有している。
【0073】
上記構成によれば、複数本の光ファイバー103が、織物100の端部から延び出した部分である場合でも、横並びの複数本の光ファイバー103を美しい状態で集束させて光ファイバー束104とし、光ファイバー束104中の個々の光ファイバー103が延び方向にずれ難い安定した状態として、一連の操作を実行することができる。
【0074】
また、織物100は異なる光源に接続される複数本の第1ファイバー103Aおよび複数本の第2ファイバー103Bを備え、基端側ホルダ20は、複数本の第1ファイバー103Aが束ねられた第1ファイバー束104Aおよび複数本の第2ファイバー103Bが束ねられた第2ファイバー束104Bを個別に保持する2つの第1基端側保持部27Aおよび第2基端側保持部27Bを横並びの状態で備え、固定スライドホルダ50は、第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bを個別に保持する2つの第1中間保持部57Aおよび第2中間保持部57Bを横並びの状態で備え、先端側ホルダ70は、第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bを個別に保持する2つの第1先端側保持部77Aおよび第2先端側保持部77Bを横並びの状態で備え、スリーブステージ90は、第1ファイバー束104Aおよび第2ファイバー束104Bをそれぞれ挿通させる2つの第1スリーブ95Aおよび第2スリーブ95Bを保持する2つの第1スリーブ保持部91Aおよび第2スリーブ保持部91Bを横並びの状態で備えている。
【0075】
上記構成によれば、織物100が個別に集束される複数の光ファイバー103を備える場合でも、各ホルダ20、50、70に光ファイバー束104を保持する保持部27、57、77を横並びの状態で設けることができるから、複数の光ファイバー束104を一括に複数のスリーブ95に挿通させることができる。
【0076】
基端側保持部27、中間保持部57、および、先端側保持部77は、光ファイバー束104を収容可能な溝部22、52、72と、溝部22、52、72を塞ぐ保持蓋31、61、81(保持溝34、64、84)とから構成されていてもよい。
【0077】
上記構成によれば、光ファイバー束104を溝部22、52、72の開口から溝内に収容し、保持蓋31、61、81を取り付けるだけで、簡単に光ファイバー束104を保持可能な一実施形態を提供することができる。
【0078】
また、本実施形態は、光ファイバー束104をその延び方向に沿って動かない固定状態で中間保持部57により保持するとともに、中間保持部57より光ファイバー束104の先端側において、光ファイバー束104をその延び方向に沿ってスライド可能な状態で先端側保持部77により保持する保持工程と、先端側保持部77から延び出した光ファイバー束104の先端を切り揃えるカット工程と、切り揃えられた光ファイバー束104の先端にスリーブ95を近づけ、先端側保持部77を中間保持部57側に移動させることで先端側保持部77から徐々に延び出す光ファイバー束104をスリーブ95内に挿入するスライド挿入工程と、を実行する光ファイバー103のスリーブ挿通方法である。
【0079】
また、複数本の光ファイバー103は、当該複数本の光ファイバー103を構成糸の一種として製織された織物100の延出端部102から延び出した部分であって、保持工程の前に、織物100のシート状の織物本体101を平坦な状態で固定する織物固定工程と、織物本体101から延び出した横並び状態の複数本の光ファイバー103を束ねて基端側保持部27により保持する基端側保持工程と、を実行し、さらに、横並び状態の複数本の光ファイバー103が束状に集束されつつある三角形状の集束部105を織物本体101のシート面と交差する方向から挟持する集束部挟持工程と、を含む。
【0080】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0081】
(1)上記実施形態では、各ホルダ20、50、70にそれぞれ保持部27、57、77を2つずつ設ける形態を示したが、各ホルダに設ける保持部の数は上記実施形態に限るものでなく、1つや3つ以上としてもよい。あるいは、織物の幅が大きい場合には、例えば、本実施形態のスリーブ挿通装置10を複数横並びに設けて使用することもできる。
【0082】
(2)各ホルダが光ファイバー束を保持する構成は上記実施形態に限るものでなく、任意の形態とすることができる。また、保持部を溝部と蓋部(保持溝)とで形成する場合であっても、例えば溝部の形状はV溝に限らず、U字形状や矩形の溝とする等、任意に変更可能である。
【0083】
(3)上記実施形態では、織物100から延び出した複数本の光ファイバー103を束ねた光ファイバー束104をスリーブ95に挿通させる形態を示したが、光ファイバー束は織物から延び出した部分に限るものでなく、どのような光ファイバー束に対しても適用可能である。
【0084】
(4)織物100は、車両(自動車)の内装材であるドアトリムを構成する部材の表皮材を例示したが、それに限定されない。例えば、車室内側部のサイドトリム、天井材やインストゥルメントパネル等の他の車両用内装材の表皮材の他、建築等の他の産業においても用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
10:スリーブ挿通装置、11:織物固定部、20:基端側ホルダ、22:基端側溝部(溝部)、23:光ファイバー載置部(挟持部)、27:基端側保持部、31:基端側保持蓋(蓋部)、41:挟持部材(挟持部)、50:固定スライドホルダ、52:中間溝部(溝部)、57:中間保持部(固定スライド保持部)、61:中間保持蓋(蓋部)、70:先端側ホルダ、72:先端側溝部(溝部)、77:先端側保持部、81:先端側保持蓋(蓋部)、90:スリーブステージ、91:スリーブ保持部、95:スリーブ
100:織物、101:織物本体、102:延出端部、103:光ファイバー、103A:第1ファイバー、103B:第2ファイバー、104:光ファイバー束、104A:第1ファイバー束、104B:第2ファイバー束、105:集束部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13