(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058225
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】二次電池、及び飛行体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240418BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240418BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240418BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
B64C39/02
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165451
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】521157432
【氏名又は名称】ORLIB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正春
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 喜美雄
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ19
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】エネルギー密度が大きい二次電池、およびエネルギー密度の大きな二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、を備える、飛行体を提供する。
【解決手段】少なくとも正極、負極、及び電解質を構成要素とする二次電池において、前記負極の単位面積当たりの容量と、前記正極の単位面積当たりの容量の比(AC比)が0.3以下であることを特徴とする二次電池により上記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも正極、負極、及び電解質を構成要素とする二次電池において、
前記負極の単位面積当たりの容量と、前記正極の単位面積当たりの容量の比(AC比)が0.3以下である、ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記正極を構成する正極活物質がリチウム含有化合物を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記リチウム含有化合物が、リチウム含有遷移金属酸化物である、請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池と、前記二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、を備える、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、及び飛行体に関する。さらに詳しくは、本発明は、少なくとも正極、負極、及び電解質を構成要素とする二次電池において、前記負極の単位面積当たりの容量と、前記正極の単位面積当たりの容量の比(AC比)が0.3以下であることを特徴とする二次電池、及び、前記二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置とを備える、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器や電気自動車等の市場の拡大とともに、これらに用いられる電池には高エネルギー密度が要求されている。そしてこれまでに、リチウム等のアルカリ金属イオンを荷電担体として、その電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が開発されている。特に、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が大きいために、広く普及している。
【0003】
リチウムイオン二次電池では正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物が用いられ、負極活物質には黒鉛が用いられている。充放電は、これら正負極活物質に対するリチウムイオンの挿入反応、および脱離反応を利用して行われている。しかしながら、よりいっそうの高エネルギー密度化を実現する新しい技術の開発が求められている。
【0004】
こうした要求に対し、負極の高容量密度化や不可逆容量の低減などが検討されている。例えば特許文献1には、多数の電子が反応可能で黒鉛の2倍以上の理論容量をもつSiやSi化合物をリチウム吸蔵層とする負極からなる二次電池が開示されている。特許文献2には、リチウムを吸蔵、放出可能な材料を主体とした電極層にリチウムを主体とした金属箔を張付して不可逆容量を補償した負極からなる二次電池が開示されている。
【0005】
一般にリチウムイオン電池は、リチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質、黒鉛を負極活物質とし、それら含む電極層を対向させて作製される。このとき、単位面積当たりの負極の設計容量と正極の設計容量との比、すなわちAC比は1以上とされることが多く、1以下では充電時にリチウムがイオンの形で吸蔵される量を超えるために金属リウムが析出し、短絡の原因となる。一方、AC比が大きすぎると負極の容量に比例する不可逆容量の割合が大きくなって実質的な容量が低下するため、AC比は1~1.2の範囲で選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-87251号公報
【特許文献2】特開2000-182602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では高容量のSiを活物質としているが、その不可逆容量は黒鉛よりも大きく、実質的な容量増加はほとんどなかった。また、特許文献2ではリチウムを負極上に配置して不可逆容量として失われる容量を補償しているが、その効果は小さく容量はほとんど改善されなかった。また、例えばドローンなどの飛行体では飛行時間が十分ではなく、求められる作業ができないこともあった。このように、高エネルギー密度の二次電池は未だ見出されていないのが現状であった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エネルギー密度が大きい二次電池、およびエネルギー密度が大きな二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、を備える、飛行体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の様態においては二次電池が提供される。本発明に係る二次電池は、少なくとも正極、負極、及び電解質を構成要素とし、AC比が0.3以下であることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る二次電池において、前記正極を構成する正極活物質が発明の効果の点からリチウム含有化合物であることが好ましく、特にリチウム含有遷移金属酸化物であることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の態様においては飛行体が提供される。本発明に係る飛行体は、例えば、第1の態様に係る二次電池を備える。本発明に係る飛行体は、例えば、二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも正極、負極、及び電解質を構成要素とする二次電池において、ACが0.3以下であることにより、負極に起因する不可逆容量が低減し、エネルギー密度が大きく放電電圧の変化が小さい二次電池を得ることができる。また、本発明の二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させることにより、飛行時間の長い飛行体を得ることができる。
【0013】
本発明を実施することにより、例えば事故を起こした原子力発電所の核燃料デブリの調査などでは、できるだけ離れた場所からの長時間の飛行が可能となる。また、このような用途では放射能汚染の蓄積などにより充放電サイクル数が大きくならないうちに、電池を廃棄することも多く、充放電サイクル寿命が短い本発明の二次電池に適している。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る二次電池の一例を示す断面図である。
【
図2】実施例1で作製した二次電池の充放電過程における電圧の変化を示すグラフである。
【
図3】飛行体のシステム構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、特許請求に範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。
【0017】
[二次電池]
本発明に係る二次電池は、少なくとも正極、負極及び電解質を有し、AC比が0.3以下であることに特徴がある。二次電池の形態は特に限定されないが、
図1の例はコイン型の二次電池である。この例の場合は、正極4、負極6及び電解質10を有するとともに、正極ケース2、負極ケース3、ガスケット9、セパレーター5、金属製ばね8で構成されている。
【0018】
(構造要素)
正極ケース2は、正極4の外装部材として設けられており、正極集電体としての役割がある。正極ケース2の底部中央には、電気化学的に酸化還元しうる正極活物質と導電材とから構成された電極層が配設されている。正極4上には、微多孔膜、不織布、織布等の多孔性のシート又はフィルムからなるセパレーター5が積層されている。さらに、セパレーター上には、負極6が配設されている。この負極6の上には金属からなる負極集電体7が積層されている。さらに、負極集電体7上には、金属製のばね8が載置されている。ここではコイン型の二次電池について説明するが、電池形状は特に限定されるものでないのはいうまでもなく、円筒型、角型、シート型等にも適用できる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケースや、モールド樹脂、アルミラミネートフイルム等を使用してもよい。
【0019】
図1において、負極ケース3は、金属製のばね8の付勢力に抗して正極ケース2に固着されている。正極ケース2と負極ケース3とが固着されて形成された内部空間には、正極4、セパレーター5、負極6及び負極集電体7が積層されて載置されるとともに、電解質10が充填されている。内部空間を形成する正極ケース2と負極ケース3との間隙は、ガスケット9を介して封止されている。
【0020】
本発明において、AC比は0.3以下であるが、0の場合には負極6は省略される。通常、二次電池では正極と負極を対向させて使用する。そのため、対向させる単位面積当たりの容量比が電池の特性に影響を与える。本発明においては、正極および負極全体の容量は特に限定されない。また、本発明において、AC比を求める単位面積当たりの容量は設計容量であり、それぞれの電極層の電極活物質の量と理論容量から計算する。
【0021】
(正極と負極)
本発明において、正極を構成する電極活物質は特に限定されず、電気化学的に可逆に酸化還元反応する化合物が使用されるが、特にリチウム含有化合物が好ましい。そうした化合物としては、例えば、一般式LinSm(n、mは整数)で表される硫化リチウムやリチオ化したジスルフィド化合物、キノン化合物、リチウム遷移金属酸化物などが挙げられるが、特に取り扱いの容易さや安定性からリチウム遷移金属酸化物が好ましい。
【0022】
リチウム遷移金属酸化物としては、例えばリチウムマンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムマンガンスピネル、一般式:LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)等のリチウム含有金属酸化物を挙げることができる。
【0023】
本発明において、正極4は、従来の公知の方法で作製することができる。すなわち、リチウム金属酸化物などの正極活物質を導電材及びバインダーと共に混合し、溶剤を加えてスラリーを作製し、そのスラリーを集電体となる電極箔上に従来公知の方法で塗工し、乾燥することにより作製することができる。
【0024】
本発明において、負極6は、従来公知の方法で作製することができる。
【0025】
負極を構成する電極活物質は特に限定されず、電気化学的に可逆に酸化還元反応する化合物が使用される。そうした化合物としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、被覆天然黒鉛などの黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの炭素材料、Li4Ti5O12などのリチウム遷移金属複合酸化物、SiやSiOなどのシリコン化合物を挙げることができる。本発明において、負極の形成は、従来の方法と同様に、例えば電極活物質を導電材(黒鉛等)及びパインダーと共に混合し、溶剤を加えてスラリーを作製し、そのスラリーを集電体となる電極箔上に従来公知の方法で塗工し、乾燥する工程を適用することができる。本発明において、負極集電体となる電極箔は特に制限されないが、発明の効果の点から銅箔、およびステンレス箔が好ましい。
【0026】
本発明において、正極と負極の作製に使用する導電材は特に限定されるものではなく、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素質繊維、グラフェン等の炭素質シート等を挙げることができる。これら導電材は、必要に応じて2種類以上組み合わせて使用することができる。また、溶剤も特に限定されるものではなく、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非プロトン溶媒や、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。バインダーは、電極活物質や導電材を結着させるものであれば特に限定されず、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド樹脂等の各種樹脂を挙げることができる。
【0027】
本発明においてAC比0の場合は負極となる電極箔をそのまま使用する。
【0028】
本発明者らの研究によれば、黒鉛やSiなどの負極活物質を使った場合、充電の場合はAC比の割合までは負極活物質とリチウムが反応し、それ以上では金属Liの形で電極上に析出する。次に、放電ではまず電位の低い金属Liがイオン化し、その後で活物質と反応したリチウムがイオンの形で解離する。反応する電位はLi金属が最も低く、活物質と反応した場合には0.1~0.3V程度高くなる。また、反応速度もLi金属が最も大きく、活物質と反応した場合には小さくなる。すなわち、AC比が1以下の二次電池では、そのAC比以上の領域で電圧が高く高出力の放電が可能となる。本発明者他の検討によれば、ドローンなどの飛行体に使用する場合、AC比0.3以上ではAC比と飛行時間は反比例するが、0.3以下ではAC比に関わらず飛行時間は一定となった。ドローンに要求される大きな出力がこの閾値の理由と考えられる。
【0029】
ところで、AC比が小さいと充放電サイクル寿命が小さくなる。
図2にはAC比0で作製した二次電池について、10サイクルまでの充放電曲線を示す。図から明らかなように充放電を繰り返すごとに容量は10%程度低下するが、3サイクル目でも初期の80%以上を維持している。また、本発明では負極活物質が少ないため、質量を軽減することができ、その結果、エネルギー密度が増大する。さらに負極の電極層が通常の1/3以下であることから、塗工過程における電極の収縮やそりの影響が少なくなり、これまでより薄い電極箔を使用することができる。その結果、エネルギー密度はさらに大きくなる。その結果、例えば事故を起こした原子力発電所の核燃料デブリの調査をドローンで行う場合は、本発明の二次電池を使用することで飛行時間を延長することができ、より離れた地点から飛行させることができる。この用途の場合は検査によって汚染されることもあるため、二次電池とは言っても使用回数は1回から数回に限られる。そのため、本発明の二次電池の充放電サイクル寿命でも問題なく使用できる。
【0030】
(電解質)
本発明において、電解質10は正極4と負極6との間に介在して両電極間の荷電担体輸送を行うものであり、イオン電導性を有するものであれば特に限定されず、室温で10-6S/cm以上のイオン伝導度を有する液体状、ゲル状、及び固体状のものを使用することができる。本発明では反応のしやすさから電解質として液体状、及びゲル状などの電解質が好ましく使用される。液体状の場合は電解質塩を含む有機溶媒であり、電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO3)3、LiC(C2F5SO2)3等を挙げることができ、有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ一ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、プロピルエチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジイソプロピルスルホン、スルホラン、ペンタメチレンスルホン、ヘキサメチレンスルホン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等や、これらの混合溶媒を挙げることができる。
【0031】
本発明において、電解質塩の濃度は特に限定されないが、0.1モル/L~2.5モル/Lの範囲内で任意に選択することができ、1モル/L等の一般的な濃度を使用してもよい。また、電解質には、フルオロエチレンカーボネートやビニレンカーボネート、ハイドロフルオロエーテル、ビフェニル等の電解液添加剤を加えてもよい。
【0032】
電解質10には、高分子化合物に溶媒を含ませてゲル状にしたゲル電解質やイオン性液体、グライム等の対称グリコールジエーテル、鎖状スルホン等を使用してもよい。高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリルーメチルメタクリレート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、さらにはポリエチレンオキシド、エチレンオキシドープロピレンオキシド共重合体、及びこれらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体等に電解液を含有させたもの等を挙げることができる。
【0033】
[二次電池の製造方法]
本発明に係る二次電池の製造方法は、既述した二次電池1を製造する方法であり、少なくとも、正極4、負極6及び電解質10を有する二次電池の製造方法である。この方法で製造した二次電池1は、負極6の単位面積当たりの容量と正極4の単位面積当たりの容量の比が0.3以下であるので、不可逆容量が小さく放電電圧が高く、また変動も小さいという特徴を有している。
【0034】
一般的なリチウムイオン二次電池の製造方法では、電極形成工程、電極とセパレーターの積層工程、電解液の注液・含浸工程、電極引き出し工程、外装工程等で構成されている。本発明では上記のAC比を一定の条件で設定する以外は一般的なリチウムイオン二次電池の製造方法を利用することができる。
【0035】
図3は飛行体11のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、飛行体11は、電源システム12と、制御装置14と、1又は複数の推進力発生装置15と、1又は複数のプロペラ16とを備える。本実施形態において、電源システム12は、1又は複数の二次電池13を有する。
【0036】
本実施形態において、飛行体11は電源システムに蓄電された電気エネルギーを利用して飛行する、飛行体11としては、飛行機、飛行船又は風船、気球、ヘリコプター、ドローンなどが例示される。
【0037】
本実施形態において、二次電池13は飛行体11に搭載される。そのため二次電池のエネルギー密度は大きい方が良い。本発明において、二次電池の質量エネルギー密度は350Wh/kg以上であることが好ましく、400Wh/kg以上であることがより好ましく、450Wh/kg以上であることがさらに好ましい。これにより、飛行体の電源の用途に適した二次電池が得られる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体例に説明する。
【実施例0039】
[実施例1]
(二次電池の作製)
コバルト酸リチウム9.4g、アセチレンブラック0.4g、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)0.3gを含むN-メチルピロリドン(NMP)溶液をそれぞれ秤りとり、NMPを加えて混錬して混合体とした。この混合体にNMPをさらに加えて粘度を調整し、塗工用の正極スラリーを作製した。この正極スラリーをナイフロールコーターで塗工厚さ150μm、幅130mmで厚さ12μmのAl箔上に塗工し、120℃で乾燥して片面塗工電極を得た。その後、同じ組成の正極スラリーを用いて裏面にも厚さ150μmとなるように塗工し、両面塗工箔を得た。次に、得られた両面塗工電極をロールプレスし、集電体であるアルミニウム箔の両面にそれぞれ厚さ50μmの正極活物質層を形成して、コバルト酸リチウムを正極活物質とする正極を得た。
【0040】
上記のように作製した正極を高さ5.5cm、長さ150cmに切り出し、一方の端部から4cmにわたって両面の塗工電極をはがしてアルミ箔を露出させ、超音波溶接機にて幅5mmのアルミニウム製タブを超音波溶接した。次いで、タブを溶接した電極を取り囲むようにその両面にポリオレフィン性のセパレーターフィルムをかぶせ、部分的に熱融着させて固定した。次に厚さ6μmのステンレス箔を、高さ5.7cm、長さ150cmに切り出して、ニッケル製のタブを超音波溶接して負極とした。
【0041】
作製した正極、および負極を重ね、幅4.0cmの巻き芯を用いて巻回して厚さ5mmの巻回体を得た。この巻回体を幅45mm、高さ60mm、深さ5mmで絞り加工したラミネートフィルムに入れ、タブ部分を含む3辺を熱融着した後、ドライ環境下で残りの一辺から電解液を注液、含浸し、真空封止を行って、正極がLiNMC、負極が活物質なしのステンレス箔の二次電池を得た。この二次電池のAC比は0であった。
【0042】
(二次電池の動作確認)
作製した二次電池を、1,0Aの定電流で電圧が4.4Vになるまで充電し、その後、1.0Aの定電流で2.5Vまで放電を行った。その結果、このセルは、放電容量3.8Ahの二次電池であることが確認された。その後、2.5~4.5Vの範囲で充放電を3回繰り返したところ、3サイクル後においても容量は3Ah以上を維持していた。このセルのエネルギーと質量から求めたエネルギー密度は3サイクル目でも400Wh/kg以上であった。
【0043】
また、試作したセルをドローンに搭載して飛行させたところ、同じ重さの従来電池に比べて2倍以上の時間、飛行が可能であった。
【0044】
[比較例1]
(二次電池の作製)
実施例1の方法で塗工し、実施例1と同じ形状に切り出してタブを溶接し、両面にセパレーターをかぶせた。
【0045】
次に、Si粉末7.0g、アセチレンブラック1.2g、平均分子量50,0000のポリアクリル酸10%溶液18gをそれぞれ秤り取り、さらに純水を加えて粘度を調整することで、塗工用の負極スラリーを作製した。このスラリーをナイフロールコーターで厚さ6μmのステンレス箔上に塗工厚さ40μm、幅130mmで塗工し、80℃で乾燥した。その後、ロールプレスして、厚さ20μmのSiを電極活物質とする負極を得た。
【0046】
上のように作製した正極と負極を実施例1と同様の方法で巻回した。その結果、正極の長さで80cmまで巻回したところで厚さが5mm以上となり、それ以上の部分をカットして巻回体とした。その後、実施例1の方法で電解液を注液し、真空封止を行って正極がLiNMC、負極がSiの二次電池を得た。この二次電池のAC比は1.0であった。
【0047】
(二次電池の動作確認)
作製した二次電池を、1,0Aの定電流で電圧が4.5Vになるまで充電し、その後、1.0Aの定電流で2.5Vまで放電を行った。その結果、このセルは、放電容量1.8Ahの二次電池であることが確認された。その後、2.5~4.5Vの範囲で充放電を3回繰り返したところ、100サイクル後においても容量は1.5Ah以上を維持していた。このセルのエネルギーと質量から求めたエネルギー密度は1サイクル目において180Wh/kgであった。
【0048】
また、試作したセルをドローンに搭載して飛行させたところ、出力が小さく離陸することができなかった。
【0049】
[実施例2]
(二次電池の作製)
実施例1の方法で塗工し、実施例1と同じ形状に切り出してタブを溶接し、両面にセパレーターをかぶせた。
【0050】
次に、比較例1と同様の方法でSi粉末、アセチレンブラック、ポリアクリル酸からなる負極スラリーを作製し、ナイフロールコーターを用いてステンレス箔上に塗工厚さ10μm、幅130mmで塗工し、80℃で乾燥した。その後、ロールプレスして、厚さ8μmのSiを電極活物質とする負極を得た。
【0051】
以上のように作製した正極と負極を実施例1と同様の方法で巻回した。その結果、正極の長さで130cmまで巻回したところで厚さが5mm以上となり、それ以上の部分をカットして巻回体とした。その後、実施例1の方法で電解液を注液し、真空封止を行って正極がコバルト酸リチウム、負極がSiの二次電池を得た。この二次電池のAC比は0.25であった。
【0052】
(二次電池の動作確認)
作製した二次電池を、1,0Aの定電流で電圧が4.5Vになるまで充電し、その後、1.0Aの定電流で2.5Vまで放電を行った。その結果、このセルは、放電容量3.2Ahの二次電池であることが確認された。その後、2.5~4.5Vの範囲で充放電を3回繰り返したところ、100サイクル後においても容量は3.0Ah以上を維持していた。このセルのエネルギーと質量から求めたエネルギー密度は1サイクル目において400Wh/kgであった。
【0053】
また、試作したセルをドローンに搭載して飛行させたところ、同じ重さの従来電池に比べて2倍以上の時間、飛行が可能であった。
【0054】
[実施例3]
(二次電池の作製)
実施例1のコバルト酸リチウムに代えてニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(Ni:Co:Mn=1:1:1、LiNMC)を使う以外は実施例1と同じ方法でスラリーを作製、塗工し、実施例1と同じ形状に切り出してタブを溶接し、両面にセパレーターをかぶせた。次に実施例1と同様の方法で厚さ6μmのステンレス箔を切り出し、ニッケル製のタブを超音波溶接して負極とした。
【0055】
以上のように作製した正極と負極を実施例1と同様の方法で巻回した。その後、実施例1の方法で電解液を注液し、真空封止を行って正極がニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(Ni:Co:Mn=1:1:1、LiNMC)、負極が活物質なしのステンレス箔からなる二次電池を得た。この二次電池のAC比は0であった。
【0056】
(二次電池の動作確認)
作製した二次電池を、1,0Aの定電流で電圧が4.5Vになるまで充電し、その後、1.0Aの定電流で2.5Vまで放電を行った。その結果、このセルは、放電容量4.0Ahの二次電池であることが確認された。その後、2.5~4.5Vの範囲で充放電を3回繰り返したところ、100サイクル後においても容量は3.2Ah以上を維持していた。このセルのエネルギーと質量から求めたエネルギー密度は1サイクル目において400Wh/kg以上であった。
【0057】
また、試作したセルをドローンに搭載して飛行させたところ、同じ重さの従来電池に比べて2倍以上の時間、飛行が可能であった。