(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058228
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】乗物内装構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165455
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友輝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠二
(72)【発明者】
【氏名】穴沢 一洋
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE26
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】乗物室内の意匠性を悪化させることなく、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えることのない乗物内装構造を提供する。
【解決手段】互いに異なるボディパネルを覆う第1内装材16および第2内装材18によって水平方向に連続する意匠を形成する乗物内装構造10において、第2内装材18は、ボディパネルを覆う主体となる本体部材30と、本体部材30の乗物室内側に重畳して配され、第1内装材16のアームレスト部16aと連続するように、第2内装材18が覆うボディパネルまたは本体部材30のいずれか一方44に対して取り付けられるアームレスト部材32と、を備え、アームレスト部材32と前記一方44との間に、介装部材56を介装させることが可能とし、介装させる介装部材56の数を変更することによって、アームレスト部材32の本体部材30に対する高さ位置を変更可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のボディを構成する第1ボディパネルの乗物室内側を覆う第1内装材と、乗物のボディを構成し、前記第1ボディパネルとは異なる第2ボディパネルの乗物室内側を覆う第2内装材と、を含み、前記第1内装材および前記第2内装材によって水平方向に連続する意匠を形成する乗物内装構造であって、
前記第1内装材は、前記第2内装材側の端部まで延びるアームレスト部を有し、
前記第2内装材は、
前記第2ボディパネルを覆う主体となる本体部材と、
前記本体部材の乗物室内側に重畳して配され、前記アームレスト部と連続するように、前記第2ボディパネルまたは前記本体部材のいずれか一方に対して取り付けられるアームレスト部材と、を備え、
前記アームレスト部材と前記一方との間に、介装部材を介装させることが可能とされ、介装させる前記介装部材の数を変更することによって、前記アームレスト部材の前記本体部材に対する高さ位置を変更可能とされた乗物内装構造。
【請求項2】
前記一方は、乗物室内側に向かって張り出したブラケット部を備え、
前記ブラケット部は、上方を向いて前記アームレスト部材を締結するための取付面を有し、
前記アームレスト部材は、前記取付面に対向する対向面を有し、
前記取付面と前記対向面との間に、前記介装部材を介装することが可能とされた請求項1に記載の乗物内装構造。
【請求項3】
複数の前記介装部材の各々は、板状の部材であり、一方側の面から突出する2以上の突起部と、前記2以上の突起が嵌合する同数の穴部と、を有するものとされ、
前記アームレスト部材は、前記対向面における下面側に、前記突起部と前記穴部との一方と同一形状の連結部を有し、複数の前記介装部材を重ねた状態で保持することが可能とされた請求項2に記載の乗物内装構造。
【請求項4】
前記第2内装材は、前記取付面と前記対向面とを締結した部分を、乗物室内側から覆う締結部カバー部材を備える請求項2または請求項3に記載の乗物内装構造。
【請求項5】
前記アームレスト部材は、前記対向面より下側の部分から下方に向かって延び出した延出部を有し、
前記本体部材は、前記延出部を挿入させる貫通孔を有し、
前記延出部は、乗物室内外方向において一定幅の寸法とされている請求項2または請求項3に記載の乗物内装構造。
【請求項6】
前記第1内装材は、前記第1ボディパネルとしてのサイドドアの乗物室内側を覆うドアトリムであり、
前記第2内装材は、前記ドアトリムの後方側において乗物室の側壁部を形成するリアサイドトリムである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗物内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物室内には、乗員が腕を置くことができるアームレストが設けられる場合がある。近年では、乗物室内のシートのアレンジが多様化する中、例えば、下記特許文献1のように、アームレストを複数の内装材に跨って設けられること、換言すれば、複数の内装材に連続するようにアームレストが設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の内装材の各々は、乗物のボディを構成するボディパネルを覆うものであるが、上記特許文献1のように、連続するアームレストを形成する内装材の各々が覆うボディパネルが互いに異なる場合がある。そのような場合、例えば、各内装材は、それぞれが取り付けられるボディパネルの基準に合わせられるため、内装材と内装材との間には、僅かなズレが生じる場合がある。つまり、各内装材におけるアームレスト部分の高さにズレが生じる場合があるのである。そのような場合、僅かなズレであっても、乗物室内の意匠性を悪化させたり、アームレストを使用する乗員に違和感を生じさせたりするという問題がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、乗物室内の意匠性を悪化させることなく、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えることのない乗物内装構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願に開示される乗物内装構造は、
乗物のボディを構成する第1ボディパネルの乗物室内側を覆う第1内装材と、乗物のボディを構成し、前記第1ボディパネルとは異なる第2ボディパネルの乗物室内側を覆う第2内装材と、を含み、前記第1内装材および前記第2内装材によって水平方向に連続する意匠を形成する乗物内装構造であって、
前記第1内装材は、前記第2内装材側の端部まで延びるアームレスト部を有し、
前記第2内装材は、
前記第2ボディパネルを覆う主体となる本体部材と、
前記本体部材の乗物室内側に重畳して配され、前記アームレスト部と連続するように、前記第2ボディパネルまたは前記本体部材のいずれか一方に対して取り付けられるアームレスト部材と、を備え、
前記アームレスト部材と前記一方との間に、介装部材を介装させることが可能とされ、介装させる前記介装部材の数を変更することによって、前記アームレスト部材の前記本体部材に対する高さ位置を変更可能とされたことを特徴とする。
【0007】
2つの内装材に連続してアームレストが形成されるような場合、製造段階において、第1ボディパネル,第1内装材,第2ボディパネル,第2内装材を全て組み付けた状態とするまで、2つの内装材に形成されたアームレストの高さに、ズレが生じているか否かは確認することが難しい。そのため、アームレストが2つの内装材に連続する構成においてズレが生じたとしても、特別に対応することはなかったのが現状である。本願に開示の乗物内装構造は、介装部材の数を調整することで、第2内装材のアームレスト部材の高さを、第1内装材のアームレスト部の高さに合わせることができるため、乗物室内の意匠性の悪化を防止するとともに、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えないようにすることができる。なお、本願に開示の乗物内装構造は、例えば、定められた数の介装部材を介装させた状態において、アームレスト部材が第1内装材のアームレスト部の高さになるように設計しておけば、アームレスト部材が、アームレスト部に対して高い場合にも、低い場合にも対応することが可能である。
【0008】
本願に開示の乗物内装構造における「介装部材」は、例えば、比較的厚みが薄い板状のものが望ましい。また、介装部材は、例えば、樹脂製や金属製で、介装された状態において、厚みが変化しない程度の剛性を有しているものが望ましい。つまり、本願に開示の乗物内装構造においては、樹脂製の介装部材のみ、金属製の介装部材のみ、または、樹脂製の介装部材と金属製の介装部材とを重ね合わせて利用することが可能である。ちなみに、本願に開示の乗物内装構造において「介装部材の数を変更する」とは、介装部材を0にすることをも含む。
【0009】
上記構成において、前記一方は、乗物室内側に向かって張り出したブラケット部を備え、前記ブラケット部は、上方を向いて前記アームレスト部材を締結するための取付面を有し、前記アームレスト部材は、前記取付面に対向する対向面を有し、前記取付面と前記対向面との間に、前記介装部材を介装することが可能とされた構成とすることができる。
【0010】
この構成の乗物内装構造は、アームレスト部材を、複数の介装部材を介装させた状態で、ブラケット部に載せ置くようにして締結する構成となっており、比較的容易に、アームレスト部材の高さ変更を行うことが可能である。
【0011】
上記構成において、複数の前記介装部材の各々は、板状の部材であり、一方側の面から突出する2以上の突起部と、前記2以上の突起が嵌合する同数の穴部と、を有するものとされ、前記アームレスト部材は、前記対向面における下面側に、前記突起部と前記穴部との一方と同一形状の連結部を有し、複数の前記介装部材を重ねた状態で保持することが可能とされた構成とすることができる。
【0012】
この構成の乗物内装構造は、アームレスト部材に対して必要な数の介装部材を取り付けた状態で、アームレスト部材を取り付け位置にセットすることができるため、アームレスト部材の取り付け、つまり、アームレスト部材の高さ変更を容易に行うことが可能である。
【0013】
上記構成において、前記第2内装材は、前記取付面と前記対向面とを締結した箇所を、乗物室内側から覆う締結部カバー部材を備える構成とすることができる。
【0014】
この構成の乗物内装構造は、締結部カバー部材を組み付ける前において、取付面と対向面とを締結する箇所に乗物室内からアクセスすることができる。したがって、この構成の乗物内装構造によれば、第2ボディパネルに本体部材を取り付けた後であっても、介装部材の数を変更して、アームレスト部材の高さ変更を行うことが可能である。つまり、この構成の乗物内装構造によれば、実際に、第1内装材のアームレスト部と比較して、第2内装部材のアームレスト部材の高さを変更することができるため、より確実に、アームレスト部材をアームレスト部の高さに合わせることができる。
【0015】
上記構成において、前記アームレスト部材は、前記対向面より下側の部分から下方に向かって延び出した延出部を有し、前記本体部材は、前記延出部を挿入させる貫通孔を有し、前記延出部は、乗物室内外方向において一定幅の寸法とされている構成とすることができる。
【0016】
この構成の乗物内装構造は、アームレスト部材の下側が、本体部材に形成された貫通孔に対して、延出部を挿し込む構成となっている。したがって、この構成の乗物内装構造は、アームレスト部材の本体部材に対する上下方向の位置変更を許容しつつ、アームレスト部材がいずれの高さ位置にある場合においても乗物室内外方向の変位を抑制することができる。
【0017】
上記構成において、前記第1内装材は、前記第1ボディパネルとしてのサイドドアの乗物室内側を覆うドアトリムであり、前記第2内装材は、前記ドアトリムの後方側において乗物室の側壁部を形成するリアサイドトリムである構成とすることができる。
【0018】
乗物のシートは、リクライニングや、前後への移動が許容される構成が多く、シートの側方に存在するサイドドアにアームレストを設けただけでは、アームレストの前後方向の寸法が十分でない場合がある。この構成の乗物内装構造によれば、サイドドアのアームレスト部が後方のリアサイドトリムにまで延びているため、シートをリクライニングした場合やシートを後方に移動させた場合であっても、乗員が快適にアームレストを使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、乗物室内の意匠性を悪化させることなく、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えることのない乗物内装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の車両内装構造が採用された車両を車室内からの視点において示す図
【
図2】本車両内装構造の要部である第2内装材のアームレスト部材周辺を拡大して示す図
【
図4】アームレスト部材を本体部材から取り外した状態を示す斜視図
【
図5】アームレスト部材を本体部材に対して取り付けるための構成要素を分解して示す斜視図
【
図9】アームレスト部材が本体部材に取り付けられた状態を車室外側からの視点において示す図
【
図10】アームレスト部材が本体部材に取り付けられた状態を車両後方側からの視点において示す断面図
【
図11】2つのカバー部材を取り付ける前の状態を車両前方側からの視点において示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態である乗物内装構造は、乗物としての車両に採用された車両内装構造10である。この車両内装構造10を、
図1から
図12によって説明する。なお、図面の一部には、符号Fr,Rr,In,Out,U,Dを用いて方向を示しており、それぞれ車両の前方側,後方側,車幅方向における車室内側(車両左側),車室外側(車両右側),上側,下側を表している。
【0022】
本実施形態の車両内装構造10は、
図1に示すように、車両の側壁であるサイドドア12と車両本体のサイドボディ14とを含む部分の内装構造に採用されている。詳しく言えば、本車両内装構造10は、サイドドア12のドアパネル(第1ボディパネル)の車室(乗物室)内側を覆うドアトリム16と、サイドボディ14におけるリアサイドパネル(第2ボディパネル)の車室内側を覆うリアサイドトリム18と、を含み、それらドアトリム16とリアサイドトリム18とによって水平方向に連続する意匠を形成する部分に採用されている。なお、本実施形態においては、車両右側を用いて説明するが、車両左側も同様の車両内装構造10が採用されている。
【0023】
ドアトリム16は、相対的に下側の部分を構成する概して板状のロアボード20と、相対的に上側の部分を構成する概して板状のアッパボード21と、それらロアボード20とアッパボード21との間に配されて車室内側に膨出した形状のアームレストボード22とからなる。そのアームレストボード22は、車両前後方向において、ドアトリム16の後端まで延びている。つまり、ドアトリム16は、上下方向における中央付近に、車両前後方向に延びるアームレスト部16aが設けられている。
【0024】
本車両内装構造10が採用された車両は、
図1に示すように、リアシート24が後方側に大きくリクライニングできる構成となっている。ドアトリム16に設けられたアームレスト部16a(以下、「ドア側アームレスト部16a」と呼ぶ場合がある)は、後端縁まで延びているものの、リクライニングさせたリアシート24に着座した乗員に対しては、後方側に長さが不足する。そのため、本実施形態においては、リアサイドトリム18に対して、そのドア側アームレスト部16aに連続するアームレスト部18a(以下、「延長アームレスト部18a」と呼ぶ場合がある)が設けられている。なお、リアサイドトリム18は、
図1に示すように、ドアトリム16と同じ高さ位置でリアシート24の右側周囲を形成するシートサイドガーニッシュ26と、そのシートサイドガーニッシュ26の上側部分に配されてクォータウィンドウの窓枠部27aを形成するクォータウィンドウトリム27と、を含んで構成され、延長アームレスト部18aは、シートサイドガーニッシュ26に設けられている。
【0025】
本実施形態の車両内装構造10が採用された車両は、製造段階において、第1内装材であるドアトリム16と、ドアトリム16が取り付けられる第1ボディパネルとしてのドアパネルと、第2内装材であるリアサイドトリム18と、リアサイドトリム18が取り付けられる第2ボディパネルとしてのリアサイドパネルを含むボディ本体とは、当然、別々に製造され、後工程においてそれらが組み付けられることになる。ドアトリム16は、ドアパネルの基準に対して製造され、リアサイドトリム18は、リアサイドパネルの基準に対して製造されており、ドアトリム16とリアサイドトリム18とは、複数の基準を介しているため、それらの間には僅かな誤差が生じ得る。そして、本実施形態の車両内装構造10においては、ドアトリム16とリアサイドトリム18とに跨ってアームレストが形成されているため、製造段階において、それらを全て組み付けた状態とするまで、ドア側アームレスト部16aと延長アームレスト部18aとの高さに、ズレが生じているか否かを確認することが難しい。一方で、それらの高さに僅かにでもズレが生じると、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えたり、車室内の意匠性を悪化させたりするという問題が生じる。本実施形態の車両内装構造10は、そのような問題に対処可能な構造を有している。
【0026】
本実施形態の車両内装構造10は、そのシートサイドガーニッシュ26に特徴を有することで、上記の問題に対処可能な構造となっている。以下に、そのシートサイドガーニッシュ26の構成について詳しく説明する。シートサイドガーニッシュ26は、リアサイドパネルを覆う主体となる本体部材30と、上述した延長アームレスト部18aを形成するためのアームレスト部材32と、を含んで構成される。また、本体部材30は、大きく分けて3つの部材である下側部材34,上側前方部材35,上側後方部材36からなる。アームレスト部材32は、本体部材30の車室内側に重畳して配されている。詳しく言えば、
図2および
図3に示すように、下側部材34と上側前方部材35との上下方向における間で、かつ、シートサイドガーニッシュ26における前端に位置している。
【0027】
本実施形態の車両内装構造10において、このアームレスト部材32は、本体部材30に対する高さを容易に変更可能な構成とされている。それにより、本車両内装構造10は、車室内の意匠性の悪化を防止するとともに、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えないようにすることができる。本車両内装構造10は、
図4および
図5に示すように、アームレスト部材32を本体部材30から取り外すこと、さらに言えば、シートサイドガーニッシュ26をリアサイドパネルに取り付けた後であっても取り外すことができるようになっている。
【0028】
本体部材30は、下側部材34,上側前方部材35,上側後方部材36とは別に、それらに囲まれた部分でアームレスト部材32の車室外側部分を形成し、アームレスト部材32を取り付けるための取付部材40を備えている。この取付部材40は、車室内外方向に貫通する開口42を有し、リアサイドパネルに固定された状態において、そのリアサイドパネルの板面から車室内側に向かって張り出すように固定されたブラケット44が、開口42から車室内側に突出する状態とされる。ブラケット44は、開口42の上縁付近から車室内側に向かって張り出しており、上方を向いた取付面44aを有している。取付面44aには、
図4および
図5に示すように、方形状の貫通孔46が形成されており、その貫通孔46にグロメット48が取り付けられている。なお、取付部材40は、アームレスト部材32を取り付けるための孔などを他にも有するものであるが、それらについては後述することとする。
【0029】
一方、アームレスト部材32は、
図5および
図6に示すように、上面側と車室内側の意匠面を形成するアームレスト本体部50と、そのアームレスト本体部50の裏面側から車室内側に向かって張り出して、本体部材30側に取り付けるための取付部52と、を備えている。その取付部52は、アームレスト本体部50の上方側において前後方向に長く水平方向に延び出した水平面部53と、その水平面部53の前端から連続してアームレスト本体部50の前方側に沿って下方に延びる前方壁面部54と、を有している。水平面部53は、下面側に、ブラケット44の取付面44aに対向する対向面53aを有している。そして、本実施形態の車両内装構造10においては、取付面44aと対向面53aとの間に、介装プレート(介装部材)56を介装させることが可能とされている。
【0030】
介装プレート56は、合成樹脂製のもので、
図7および
図8に示すように、概して長方形の板状の部材である。介装プレート56には、厚み方向に貫通する2種類で計3つの貫通孔58,59が形成されている。貫通孔58は、介装プレート56の中央に形成されたものであり、後に説明する締結具を挿通させるもの(以下、「挿通孔58」と呼ぶこととする)である。一方、もう1種の2つの貫通孔59は、十字形状の貫通孔(以下、「十字孔59」と呼ぶこととする)であり、挿通孔58の中心から短手方向に定められた距離L1だけ離れた長手方向に延びる直線状で、挿通孔58から等距離となる位置に形勢されている。また、介装プレート56は、
図8に示すように、2つの突起部60が形成されている。これら2つの突起部60は、2つの十字孔59と反対側に、挿通孔58の中心から短手方向において距離L1だけ離れた長手方向に延びる直線状で、挿通孔58と十字孔59との距離と等しくなる位置に形成されている。
【0031】
したがって、2枚の介装プレート56は、
図5に示したように、挿通孔58を中心として180°回転させた状態として、各介装プレート56の挿通孔58を合わせることで、2つの十字孔59と2つの突起部60の位置が一致し、2つの突起部60を2つの十字孔(穴部に相当する)59に嵌め込むことができるようになっている。つまり、この介装プレート56は、3枚以上でも重ね合わせることが可能である。また、前述した対向面53aには、挿通孔58とほぼ同一の内径の貫通孔62が形成されるとともに、介装プレート56に形成された突起部60と同一形状の2つの突起部63が、貫通孔62(
図5参照)に対して、挿通孔58と突起部60と同じ位置関係となるように形成されている(
図9参照)。したがって、この対向面53aには、2つの突起部(連結部に相当する)63を利用して、介装プレート56を取り付けること、つまり、
図6に示すように、対向面53aの下面側に、介装プレート56を保持させることが可能とされている。
【0032】
そして、アームレスト部材32は、例えば2枚の介装プレート56を対向面53aの下面側に保持させた状態で、
図9および
図10に示すように、その介装プレート56を、前述したブラケット44の取付面44a上に重ねるように、詳しく言えば、取付面44aに取り付けられたグロメット48に重ねるように載せ置かれ、スクリュー66によって上方側(車室内)から締結される。
【0033】
なお、アームレスト部材32(詳しく言えば、取付部52)には、
図6に示すように、対向面53aの前方側と後方側との各々に、下方に向かって突出した上方側突出部52a,52bが形成されるとともに、取付部52の下縁から下方に向かって突出した3つの下方側突出部52cが形成されている。一方、取付部材40には、
図4に示すように、上方側突出部52a,52bおよび3つの下方側突出部52cを挿入させる挿入孔40a,40b,40cが形成されている。これら上方側突出部52a,52bおよび3つの下方側突出部52cは、挿入孔40a,40b,40cに対して上下方向に挿抜可能で、引っ掛かることがない形状とされており、上述したスクリュー66によって締結していない状態においては、アームレスト部材32を容易に着脱可能とされいている。
【0034】
ちなみに、下方側突出部52cは、車室内外方向(車幅方向)において一定幅の寸法とされており、挿入穴40cに挿入された状態において、車室内外方向への変位が規制される。つまり、介装プレート56の枚数が変更された場合であっても、アームレスト部材32の取付部材40に対する上下方向への位置変更が許容されつつ、アームレスト部材32の下側部分の車室内外方向への変位が規制される構成となっているのである。つまり、これら下方側突出部52cは、対向面53aより下側の部分から下方に向かって延び出して、車室(乗物室)内外方向において一定幅の寸法とされている延出部として機能するものとなっている。
【0035】
シートサイドガーニッシュ26は、
図3,
図5および
図10に示すように、対向面53aを含む水平面部53を上方側から覆う上方側カバー部材70を備えている。つまり、その上方側カバー部材70を取り外せば、
図11に示すように、アームレスト部材32は、取付部材40に対して車室内から締結作業を行えるようになっており、シートサイドガーニッシュ26をリアサイドパネルに取り付けた後であっても、アームレスト部材32を着脱することが可能とされているのである。つまり、上方側カバー部材70は、取付面44aと対向面53aとを締結した箇所を車室内側から覆う締結部カバー部材として機能するものとなっている。
【0036】
また、シートサイドガーニッシュ26は、
図3および
図5に示すように、前方壁面部54と、その前方壁面部54と取付部材40との前方側の隙間(
図11参照)を覆う前方側カバー部材72を備えている。この前方側カバー部材72は、裏面側に、2つの嵌合爪74,75と、位置決め用突起76と、掛止爪78と、を備えている。2つの嵌合爪74,75は、アームレスト部材32の前方壁面部54に形成された被嵌合孔54a,54bに対して嵌合するものである。なお、嵌合爪74は、上下方向に弾性変形する板バネ74aを有し、もう1つの嵌合爪75は、車幅方向に弾性変形する板バネ75aを有するものとなっている。したがって、それら2つの嵌合爪74,75によって、アームレスト部材32に対して、上下方向および車幅方向のいずれにも変位しないように、しっかりと固定される構成となっている。
【0037】
一方で、位置決め用突起76と掛止爪78とは、取付部材40に対して係合する部分となっており、それら位置決め用突起76と掛止爪78とが係合する係合孔40d,40eが形成されている。位置決め用突起76に対応する係合孔40dは、
図10に示すように、概して前後方向に貫通する孔であるが、上下方向の寸法が、位置決め用突起76の寸法に比較して余裕のある寸法とされている。また、掛止爪78に対応する係合孔40eは、概して斜め上方に貫通する孔であり、掛止爪78は、その係合孔40eに斜め上方から入り込む構成となっている。そのため、掛止爪78と係合孔40eとによって、前方側カバー部材72は、前後方向への変位は規制するものの、上下方向への位置変化は許容する構成となっている。以上のような構成から、前方側カバー部材72は、アームレスト部材32に対して定められた位置に取り付けられるものの、取付部材40に対しては、上下方向の位置変化を許容する構成となっているのである。
【0038】
本実施形態の車両内装構造10が採用された車両は、介装プレート56を2枚介装させた状態において、ドア側アームレスト部16aと延長アームレスト部18aとの高さが一致するように設計されている。しかしながら、前述したように、すべてを組み付けた後に、それらドア側アームレスト部16aと延長アームレスト部18aとの高さズレが確認される場合がある。
【0039】
そのような場合であっても、本実施形態の車両内装構造10によれば、アームレスト部材32を本体部材30から取り外し、介装プレート56の数を変更して、再度、本体部材30に取り付けることで、アームレスト部材32の本体部材30に対する高さ位置を変更することができる。具体的には、延長アームレスト部18aがドア側アームレスト部16aより高い場合には、介装プレート56の数を1枚あるいは0枚とし、延長アームレスト部18aがドア側アームレスト部16aより低い場合には、介装プレート56の数を1枚あるいは複数枚追加して3枚以上とする。これにより、延長アームレスト部18aの高さを、ドア側アームレスト部16aの高さにほぼ一致させることができ、車室内の意匠性を悪化させることなく、アームレスト使用時に乗員に違和感を与えないようにすることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
(1)上記実施形態の車両内装構造10においては、アームレスト部材32と第2ボディパネルに固定されたブラケット44との間に介装部材を介装可能な構成とされていたが、本体部材30に取付面を設けてその本体部材30との間に介装部材を介装可能な構成とすることもできる。
【0042】
(2)上記実施形態の車両内装構造10においては、アームレスト部材32が介装部材を保持することが可能な構成とされていたが、それに限定されない。例えば、上記のように、本体部材30が取付面を有しており、その取付面が介装部材を取り付けることが可能な寸法を確保できる場合には、その取付面に介装部材を取り付ける構成を採用することもできる。ただし、上記実施形態の車両内装構造10のように、取り外したアームレスト部材32に対して介装部材を取り付ける方が、作業性が良いと考えられる。
【0043】
(3)上記実施形態の車両内装構造10における介装部材の形状や重ね合わせる構成は、特に限定されない。ただし、上記実施形態の車両内装構造10のように、介装プレート56をアームレスト部材32の対向面53aの下面に保持させる場合には、介装プレート56の厚みと同程度の突起部60を嵌合させる構造によって、しっかりと保持させることができる。そして、厚みと同程度の突起部60を設けたことで、突起とその突起が係合する穴部とを同じ位置に設けることが難しく、上記実施形態の車両内装構造10のように、交互に180°ずつ回転させて重ね合わせることが可能な構成が好適である。
【0044】
(4)上記実施形態の車両内装構造10は、サイドドア12とサイドボディ14とに跨るアームレストに採用されていたが、それに限定されない。サイドドアとピラーガーニッシュとの間にアームレストが跨るような場合など、互いに異なるボディパネルに取り付けられる2つの車両用内装材にアームレストが跨るような場合に、上記実施形態のような構成の車両内装構造を採用することが可能である。
【0045】
(5)上記実施形態において、本発明の乗物用内装構造は、車両(自動車)に提供されるものとされていたが、それに限定されず、本発明の乗物用内装構造は、種々の乗物において提供されるものに適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…車両内装構造〔乗物内装構造〕、12…サイドドア、14…サイドボディ、16…ドアトリム〔第1内装材〕、16a…ドア側アームレスト部、18…リアサイドトリム〔第2内装材〕、18a…延長アームレスト部、26…シートサイドガーニッシュ、30…本体部材、32…アームレスト部材、40…取付部材、40a,40b,40c…挿入孔、44…ブラケット〔第2ボディパネル側〕、44a…取付面、52c…下方側突出部〔延出部〕、53a…対向面、56…介装プレート〔介装部材〕、59…十字孔〔穴部〕、60…突起部、63…突起〔連結部〕、70…上方側カバー部材〔締結部カバー部材〕