(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058239
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20240418BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240418BHJP
【FI】
G01C21/34
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165474
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】小田島 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】寺戸 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】須藤 隆徳
【テーマコード(参考)】
2F129
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2F129DD20
2F129DD64
2F129DD66
2F129EE54
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129HH18
2F129HH20
2F129HH21
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】複数の地点の最適な巡回順を効率的に決定するための情報を生成する。
【解決手段】情報処理装置において、計算部は、複数地点の地点間の直線距離を計算し、探索部は、地点間の経路を探索する。生成部は、直線距離と経路に基づいて、複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する。そして、探索部は、直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、生成部は、探索された経路に基づき、コストの少なくとも一部を更新する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数地点の地点間の直線距離を計算する計算部と、
前記地点間の経路を探索する探索部と、
前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成部と、
を備え、
前記探索部は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、
前記生成部は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
更新されたコストを含む評価情報に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定する巡回順決定部と、
前記巡回順に基づいて、前記複数地点を経由する案内経路を決定する案内経路決定部と、
を備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
探索条件を設定する設定部を備え、
前記探索部は、前記探索条件に応じて前記地点間の経路を計算し、
前記案内経路決定部は、前記探索条件に応じて案内経路を決定する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記探索条件は、交通情報を含む請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記探索部は、所定の時間内または経路の探索回数内に経路を探索する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数地点の地点間の直線距離を計算する計算工程と、
前記地点間の経路を探索する探索工程と、
前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成工程と、
を備え、
前記探索工程は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、
前記生成工程は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
複数地点の地点間の直線距離を計算する計算部、
前記地点間の経路を探索する探索部、
前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成部、
としてコンピュータを機能させ、
前記探索部は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、
前記生成部は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の地点の巡回順を決定する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば荷物の配送などにおいて、複数の地点に立ち寄る経路(以下、「巡回経路」とも呼ぶ。)を探索する場合がある。従来の巡回経路の探索では、直線距離を基に巡回順を決めているため、河川や線路などを何度も跨ぐような経路が提案されてしまうことがあった。
【0003】
なお、特許文献1は、複数の地点について、それぞれの地点間の経路を探索し、案内経路を決める手法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法は、複数の地点全ての組合せについて経路を探索して案内経路を決めているため、経路探索のために必要な計算資源や計算時間が膨大となってしまう。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、複数の地点の最適な巡回順を効率的に決定するための情報を生成することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、複数地点の地点間の直線距離を計算する計算部と、前記地点間の経路を探索する探索部と、前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成部と、を備え、前記探索部は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、前記生成部は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、情報処理方法であって、複数地点の地点間の直線距離を計算する計算工程と、前記地点間の経路を探索する探索工程と、前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成工程と、を備え、前記探索工程は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、前記生成工程は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、プログラムであって、複数地点の地点間の直線距離を計算する計算部、前記地点間の経路を探索する探索部、前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成部、としてコンピュータを機能させ、前記探索部は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、前記生成部は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係る案内経路探索システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの好適な実施形態では、情報処理装置は、複数地点の地点間の直線距離を計算する計算部と、前記地点間の経路を探索する探索部と、前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成部と、を備え、前記探索部は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、前記生成部は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新する。
【0012】
上記の情報処理装置において、計算部は、複数地点の地点間の直線距離を計算し、探索部は、地点間の経路を探索する。生成部は、直線距離と経路に基づいて、複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する。そして、探索部は、直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、生成部は、探索された経路に基づき、コストの少なくとも一部を更新する。この情報処理装置によれば、更新により、経路に基づくコストが含まれた評価情報が生成されるようになる。
【0013】
上記の情報処理装置の一態様は、更新されたコストを含む評価情報に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定する巡回順決定部と、前記巡回順に基づいて、前記複数地点を経由する案内経路を決定する案内経路決定部と、を備える。この態様では、経路に基づくコストを評価情報として利用することにより、最適な巡回順が決定可能となる。
【0014】
上記の情報処理装置の他の一態様は、探索条件を設定する設定部を備え、前記探索部は、前記探索条件に応じて前記地点間の経路を計算し、前記案内経路決定部は、前記探索条件に応じて案内経路を決定する。この態様では、ユーザが設定した探索条件に従ってコストを更新するための経路探索がなされるとともに、巡回順に従う案内経路が決定される。好適な例では、探索条件は、交通情報を含む。
【0015】
上記の情報処理装置の他の一態様では、前記探索部は、所定の時間内または経路の探索回数内に経路を探索する。この態様では、所定の時間内または経路の探索回数内に限り経路が探索され、コストの更新が行われる。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態では、情報処理方法は、複数地点の地点間の直線距離を計算する計算工程と、前記地点間の経路を探索する探索工程と、前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成工程と、を備え、前記探索工程は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、前記生成工程は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする。この方法でも、更新により、経路に基づくコストが含まれた評価情報が生成されるようになる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、プログラムは、複数地点の地点間の直線距離を計算する計算部、前記地点間の経路を探索する探索部、前記直線距離と前記経路に基づいて、前記複数地点の巡回順を決定するための地点間のコストが含まれた評価情報を生成する生成部、としてコンピュータを機能させ、前記探索部は、前記直線距離の短い地点間から順に経路を探索し、前記生成部は、探索された経路に基づき、前記コストの少なくとも一部を更新することを特徴とする。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記のコンテンツ出力装置を実現することができる。このプログラムは記憶媒体に記憶して使用することができる。
【実施例0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[全体構成]
図1は、実施例に係る案内経路作成システムの構成例を示す図である。案内経路作成システム1は、サーバ装置100と、複数の端末装置5を備える。サーバ装置100と複数の端末装置5は、有線又は無線により相互に通信可能に構成されている。端末装置5は、複数の地点を巡回する案内経路を要求するユーザが操作する端末装置であり、例えば、ナビゲーション装置などの車載器、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォンなどが挙げられる。
【0019】
基本的な動作として、まず、ユーザは端末装置5を操作して、案内経路を構成する複数の地点(以下、「巡回地点」とも呼ぶ。)を入力する。端末装置5は、入力された複数の巡回地点の情報をサーバ装置100へ送信する。
【0020】
サーバ装置100は、ユーザが入力した複数の巡回地点について最適な巡回順を決定し、その巡回順に従った案内経路を作成して端末装置5へ送信する。ユーザは、サーバ装置100から送信された案内経路に従って移動することにより、全ての巡回地点を効率よく巡回することができる。
【0021】
なお、サーバ装置100は、複数の巡回地点を経由する案内経路を端末装置5へ送信する代わりに、複数の巡回地点の巡回順を端末装置5へ送信してもよい。この場合、ユーザは、端末装置5を操作して、サーバ装置100から指定された巡回順で各巡回地点を経由する案内経路を探索すればよい。
【0022】
図2は、サーバ装置100の概略構成を示す図である。サーバ装置100は、主に、通信部111と、制御部112と、記憶部113とを有する。サーバ装置100内の各要素は、バスライン114を介して相互に接続されている。
【0023】
通信部111は、制御部112の制御に基づき、端末装置5などの外部装置とのデータ通信を行う。記憶部113は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。記憶部113には、サーバ装置100が所定の処理を実行するためのプログラム113aが記憶される。また、記憶部113は、地図データベース(DB)113bを備える。地
図DB113bには、経路案内に必要な種々のデータが記録されている。
【0024】
制御部112は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などを含み、サーバ装置100の全体を制御する。また、制御部112は、記憶部113に記憶されたプログラムを実行することで、後述する案内経路作成処理を実行する。
【0025】
以上の構成において、制御部112は、計算部、探索部、生成部、巡回順決定部、及び、案内経路決定部の一例である。
【0026】
[案内経路の作成方法]
次に、複数の巡回地点を経由する案内経路の作成方法について説明する。
(直線距離と経路距離)
まず、巡回地点間の直線距離と経路距離について説明する。複数の巡回地点の巡回順を決定するために考慮する事項として、直線距離と経路距離がある。「直線距離」とは、2つの地点間の地図上の距離であり、実際に車両や人などが移動する道路を考慮していない距離である。一方、「経路距離」とは、2つの地点の一方から他方に移動する際に通る経路の距離であり、実際に車両や人などが移動する道路の距離の総和である。即ち、経路距離は、2つの地点間の経路を実際に計算することにより得られる距離である。
【0027】
図3(A)は、巡回地点間の直線距離の例を示す。具体的に、
図3(A)は、地点X~Zの各地点間の直線距離を示している。なお、
図3(A)において、実線81は道路を示し、グレーの領域82は川を示し、黒の領域83は橋を示している。
【0028】
図3(A)の例において、地点XY間の直線距離は0.5kmであり、地点YZ間の直線距離は0.6kmであり、地点XZ間の直線距離は0.65kmとなっている。よって、地点X~Zの巡回順を決定する際に、直線距離の近い順に各地点を経由すると仮定した場合、巡回順はX→Y→Zとなる。
【0029】
図3(B)は、巡回地点間の経路距離の例を示す。具体的に、
図3(B)は、直線距離に基づいて決定された巡回順X→Y→Zで移動した場合の経路を破線85で示している。なお、
図3(B)においても、実線81は道路を示し、グレーの領域82は川を示し、黒の領域83は橋を示している。
【0030】
図3(B)から理解されるように、直線距離に基づいて決定された巡回順X→Y→Zで実際に移動すると、川82を渡るために橋83を通る必要がある。このため、一度橋83を渡って地点Yに移動し、さらに橋83を再度渡って地点Zに行くことになり、走行距離のロスが大きい。なお、
図3(B)の場合、巡回順をX→Z→Yとすれば走行距離のロスは最小限に抑えられる。
【0031】
(巡回順の決定方法)
このように、複数の地点の巡回順を決める際、直線距離のみを利用すると、計算時間は短くて済むが、川や線路、海などがあった場合に距離ロスの大きい巡回順になってしまう。一方、全ての地点間について経路探索を行い、実施の経路の距離を算出して巡回順を決めることとすると、計算時間が膨大となってしまう。
【0032】
そこで、本実施例では、サーバ装置100は、まず複数の地点間の直線距離を計算して各地点間の直線距離コストを算出する。「コスト」とは、サーバ装置100が複数の地点の巡回順を決めるために参照する指標であり、評価情報の一例である。コストの小さい地点間は地点間で移動しやすいことを示すため、巡回順のルート順番で前後に採用されやすい。また、「直線距離コスト」とは、直線距離に基づいて算出されたコストであり、例えば、直線距離自体でもよく、直線距離の値を所定値で除算した値であってもよく、直線距離を時間に置き換えたような値でもよい。
【0033】
次に、サーバ装置100は、直線距離コストの小さい地点間から順に経路探索を行って経路距離を計算し、経路距離コストを算出する。「経路距離コスト」とは、経路距離に基づいて算出されたコストであり、例えば、経路距離自体でもよく、経路距離の値を所定値で除算した値であってもよく、経路距離を時間に置き換えたような値でもよい。
【0034】
そして、サーバ装置100は、経路距離コストを算出した地点間については、直線距離コストを経路距離コストで置き換えることで、コストを更新していく。なお、直線距離の短い地点間から経路距離を計算し、コストを更新していく理由は、直線距離の短い地点ペアの方が、最適な巡回順の決定に与える影響が大きいと考えられるからである。サーバ装置100は、この処理を所定の制限時間内に実行し、制限時間が終了した際にこの処理を終了する。これにより、制限時間の範囲内において、直線距離コストが小さい地点間から順に、直線距離コストが経路距離コストに置き換えられていく。即ち、時間の許す限り、多くの地点について経路距離に基づいて巡回順が決定されるようになる。なお、制限時間の代わりに所定の経路探索回数を用い、所定の経路探索回数の範囲内で直線距離コストから経路距離コストへの置き換えを行うようにしてもよい。また、制限時間による制限と、経路探索回数による制限の両方を同時に用いてもよい。
【0035】
図4(A)は、直線距離に基づいて作成したコスト表の例を示す。この例では、4つの地点A~Dの巡回順を決定するものとする。サーバ装置100は各地点間の直線距離を計算して直線距離コストに変換し、コスト表を作成する。
【0036】
図4(B)は、
図4(A)に示すコスト表における直線距離コストの一部を、経路距離コストで置き換えた例を示す。
図4(B)において、矩形で囲まれている数値は、経路距離コストを示す。サーバ装置100は、
図4(A)に示すコスト表において、直線距離コストが小さい地点間から順に経路探索を行って経路距離コストを算出し、直線距離コストを経路距離コストに置き換えている。
図4の例では、
図4(A)における地点間CD(直線距離コスト「3」)、地点間AB(直線距離コスト「8」)、地点間AC(直線距離コスト「12」)、地点間BC(直線距離コスト「14」)の順に、直線距離コストが経路距離コストに置き換えられている。
【0037】
例えば、直線距離コストから経路距離コストへの置き換えが
図4(B)の状態まで進んだときに所定の制限時間が到来したとする。この場合、サーバ装置100は、
図4(B)に示すコスト表を用いて、地点A~Dの巡回順を決定する。具体的には、サーバ装置100は、4つの地点A~Dの全ての巡回順(巡回パターン)について、直線距離コストと経路距離コストの合計を算出し、合計が最も小さい巡回順を最適な巡回順と決定する。
【0038】
このように、本実施例では、複数の巡回地点について、まず各地点間の直線距離コストを算出し、次に直線距離コストの小さい地点間から順に実際に経路探索を行って経路距離コストを算出して、直線距離コストを経路距離コストに置き換える。これにより、制限時間内又は所定の経路探索回数の範囲内において、より多くの地点間について経路距離コストを用いて巡回順が決定されることになるので、直線距離コストのみを用いて巡回順を決定する場合と比較して、より適切な巡回順を得ることができる。
【0039】
(案内経路作成処理)
次に、案内経路決定処理について説明する。
図5は、案内経路作成処理のフローチャートである。案内経路作成処理は、ユーザの入力した複数の巡回地点を経由する巡回順を決定し、その巡回順に従って各地点を経由する案内経路を作成してユーザに提供する処理である。この処理は、
図2に示す制御部112が予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0040】
まず、ユーザが端末装置5を操作して出発地(または端末装置5の現在位置)、終点となる目的地、及び、複数の巡回地点を入力し、サーバ装置100へ送信すると、サーバ装置100はユーザが入力した出発地、目的地及び複数の巡回地点を対象地点とする直線距離コストのコスト表を作成する(ステップS11)。次に、サーバ装置100は、作成されたコスト表において、直線距離が近い地点間から順に所定数(n個)の地点間の経路探索を行い、コスト表における直線距離コストを経路距離コストに置き換える(ステップS12)。
【0041】
次に、サーバ装置100は、ステップS13以下の処理の初回実行時か否かを判定する(ステップS13)。
図5に示すように、ステップS13~S18はループ処理を構成しており、サーバ装置100は、このループ処理の初回実行時であるかを判定する。ループ処理の初回実行時である場合(ステップS13:Yes)、サーバ装置100は、そのときのコスト表に基づいて最適巡回順を算出する(ステップS15)。この場合、コスト表は、ステップS12で直線距離が近い地点間からn個だけが探索距離コストに置き換えられた状態にあり、サーバ装置100は、その状態のコスト表示に基づいて最適巡回順を算出する。具体的には、サーバ装置100は、コスト表に基づいて、全ての巡回地点の巡回順(巡回パターン)について総コストを計算し、総コストが最小となる巡回順を最適巡回順とする。
【0042】
次に、サーバ装置100は、算出された最適巡回順における探索距離コストの採用率が100%であるか否かを判定する(ステップS16)。探索距離コストの採用率が100%である場合(ステップS16:Yes)、その最適巡回順は採用された地点間における全ての地点間について探索距離コストを用いて算出された精度の高いものであり、さらにループ処理を繰り返して最適巡回順を算出する必要がないので、処理はステップS19へ進む。
【0043】
一方、探索距離コストの採用率が100%でない場合(ステップS16:No)、サーバ装置100は、ループ処理の回数が所定回数を超えたか否かを判定する(ステップS17)。ループ処理の回数が所定回数を超えた場合(ステップS17:Yes)、処理はステップS19へ進む。一方、ループ処理の回数が所定回数を超えていない場合(ステップS17:No)、サーバ装置100は、処理時間が所定の制限時間を超えたか否かを判定する(ステップS18)。処理時間が制限時間を超えた場合(ステップS18:Yes)、処理はステップS19へ進む。一方、処理時間が制限時間を超えていない場合(ステップS18:No)、処理はステップS13へ戻る。
【0044】
こうして、算出された最適巡回順における探索距離コストの採用率が100%となるか、ループ処理の回数が所定回数を超えるか、処理時間が制限時間を超えるまで、ステップS13~S18のループ処理が繰り返される。
【0045】
ステップS18の判定結果がNoとなり、処理がステップS13へ戻った場合、ループ処理は初回実行時ではないので、ステップS13の判定結果はNoとなる。この場合、サーバ装置100は、コスト表に含まれるコストのうち、前回のループ処理において最適巡回順を求めた際に直線距離コストが使用された地点間について経路探索を行い、それらの直線距離コストを探索距離コストに置き換える(ステップS14)。そして、処理はステップS15へ進む。こうして、ループ処理が繰り返されるたびに、前回ループ処理で得られた最適巡回順において直線距離コストが使用されていた地点間のコストが、探索距離コストに置き換えられていく。これにより、所定回数のループ処理の範囲内、かつ、所定の制限時間内において、より多くの経路距離コストを用いて最適巡回順が算出されることになる。
【0046】
そして、算出された最適巡回順における探索距離コストの採用率が100%となるか(ステップS16:Yes)、ループ処理の回数が所定回数を超えるか(ステップS17:Yes)、処理時間が制限時間を超えた場合(ステップS18:Yes)、サーバ装置100は、その時点で得られている最適巡回順に基づいて案内経路を作成し、出力する(ステップS19)。これにより、ユーザが入力した複数の地点を最適な巡回順で巡回する案内経路がサーバ装置100からユーザの端末装置5へ送信される。そして、案内経路決定処理は終了する。
【0047】
[変形例]
(変形例1)
上記の実施例では、サーバ装置100は、コスト表の一部を直線距離コストから経路距離コストに置き換えるために各地点ペア間の経路探索を行うが、この際の経路探索条件をユーザが指定できるようにしてもよい。経路探索条件とは、例えば、高速道路や有料道路を利用するか否か、渋滞情報を考慮するか否か、交通規制などを考慮するか否か、走行距離と料金のいずれを優先するかなど、経路探索において考慮する各種の条件を言う。
【0048】
具体的には、
図5のステップS11において、ユーザは、サーバ装置100へ案内経路の提供を要求する際に、複数の巡回地点を入力するとともに、経路探索条件を指定する。サーバ装置100は、ステップS13において、ユーザが指定した経路探索条件に従って経路探索を行い、経路距離コストを算出する。また、このようにユーザが経路探索条件を指定した場合、サーバ装置100は、ステップS16において案内経路を計算する場合にも、ユーザが指定した経路探索条件を利用する。これにより、サーバ装置100は、ユーザが指定した巡回地点をユーザが指定した経路探索条件に従って走行する場合に最適な案内経路を作成し、ユーザに提供することが可能となる。
【0049】
(変形例2)
上記の実施例では、案内経路作成システム1をサーバ装置100と端末装置5で構成し、サーバ装置100が案内経路作成処理を実行している。その代わりに、
図2に示すようなサーバ装置100の構成を端末装置5内に設け、端末装置5が独立して案内経路作成処理を行うこととしてもよい。この場合、ユーザが端末装置5に複数の巡回地点を入力すると、端末装置5が
図5に示すような処理を行い、最適な案内経路を作成してユーザに提示する。
【0050】
(変形例3)
上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータである制御部等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0051】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。