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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058246
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】捺染物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 15/00 20060101AFI20240418BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20240418BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20240418BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240418BHJP
   D06M 11/155 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
D06B15/00
D06P5/00 106
D06M13/144
D06M13/17
D06M11/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165484
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 涼
(72)【発明者】
【氏名】林 暁子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴久
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓海
【テーマコード(参考)】
3B154
4H157
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
3B154AB19
3B154AB27
3B154BA18
3B154BB02
3B154BF02
3B154BF10
3B154DA24
4H157AA02
4H157BA15
4H157CA05
4H157CA25
4H157CA29
4H157DA01
4H157GA06
4L031AB31
4L031BA07
4L031DA09
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA11
4L033BA14
(57)【要約】
【課題】べたつきが抑制された捺染物を製造することできる、捺染物の製造方法を提供する。
【解決手段】凝集剤、水溶性有機溶剤、及び水を含む前処理液を布に付与する工程と、前記前処理液が付与された前記布に、色材、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクを付与する工程と、前記前処理液及び前記インクが付与された前記布を乾燥する工程と、前記布を乾燥する工程と同時又は前記布を乾燥する工程の後に、前記布に多孔質基材を接触させ前記布を加圧する工程とを含む、捺染物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤、水溶性有機溶剤、及び水を含む前処理液を布に付与する工程と、
前記前処理液が付与された前記布に、色材、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクを付与する工程と、
前記前処理液及び前記インクが付与された前記布を乾燥する工程と、
前記布を乾燥する工程と同時又は前記布を乾燥する工程の後に、前記布に多孔質基材を接触させ前記布を加圧する工程とを含む、捺染物の製造方法。
【請求項2】
前記多孔質基材が、植物繊維、ポリウレタン樹脂、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の捺染物の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質基材の坪量が、50g/m以上である、請求項1又は2に記載の捺染物の製造方法。
【請求項4】
前記布に多孔質基材を接触させ前記布を加圧する工程において、前記布を10Pa以上の圧力で加圧する、請求項1又は2に記載の捺染物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、捺染物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織物、編み物、不織布等の布等に、文字、絵、図柄等の画像を形成する方法として、インクジェット法を用いた捺染方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、黒等の濃色の布に、多価金属塩を含む前処理液を付着させた後、熱処理により前処理液中が付与された布を乾燥させ、次いで、白色顔料を含む白色の捺染インクジェット用インクを印刷して白色画像を形成し、その上に色インクを用いて所望の画像を形成し、さらに熱処理を行ってインクが付与された布を乾燥する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-30014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
布にインクを印刷し、乾燥して得られた捺染物の印刷部がべたつく場合がある。
本発明の実施形態は、べたつきが抑制された捺染物を製造することできる、捺染物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、凝集剤、水溶性有機溶剤、及び水を含む前処理液を布に付与する工程と、前記前処理液が付与された前記布に、色材、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクを付与する工程と、前記前処理液及び前記インクが付与された前記布を乾燥する工程と、前記布を乾燥する工程と同時又は前記布を乾燥する工程の後に、前記布に多孔質基材を接触させ前記布を加圧する工程とを含む、捺染物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、べたつきが抑制された捺染物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことはいうまでもない。
【0009】
一実施形態による捺染物の製造方法は、凝集剤、水溶性有機溶剤、及び水を含む前処理液を布に付与する工程と、前処理液が付与された布に、色材、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクを付与する工程と、前処理液及びインクが付与された布を乾燥する工程と、布を乾燥する工程と同時又は布を乾燥する工程の後に、布に多孔質基材を接触させ布を加圧する工程とを含む。
この捺染物の製造方法を用いる場合、べたつきが抑制された捺染物を製造することができる。
【0010】
理論に拘束されるものではないが、乾燥後の捺染物に残留する、前処理液、インク等に由来する水溶性有機溶剤が、べたつきの原因となり得ると推測される。例えば、ポリエステル等の親水性の低い材料を含む布は、良好な発色の画像を得るために、綿のような親水性のより高い材料を含む布に比べ、より多量の前処理液、インク等が用いられる傾向がある。前処理液やインクの使用量が多いと、乾燥後の捺染物に残留する水溶性有機溶剤の量も多くなる傾向があり、べたつきが悪化しやすいと推測される。また、濃色の布に対しては、布に前処理液を付与したのち、ホワイトインクを付与して白色画像を形成し、その上に、カラーインクを用いて画像を形成する方法があるが、そのような方法を用いる場合にも、前処理液、ホワイトインク、及びカラーインクを使用するため、水溶性有機溶剤の捺染物における残留量がより多くなり、乾燥後のべたつきが悪化しやすいと推測される。また、例えば、前処理液を布に付与した後、乾燥工程を設けずに、いわゆるウェットオンウェット法でインクを付与する場合も、全ての印刷工程の後の乾燥後の捺染物に残留する水溶性有機溶剤の量が多くなる傾向があり、べたつきが悪化しやすいと推測される。
【0011】
実施形態の捺染物の製造方法では、多孔質基材を布に接触させ、布を加圧することで、布に付着した前処理液、インク等に由来する水溶性有機溶剤を除去することができる。
【0012】
一実施形態による捺染物の製造方法は、凝集剤、水溶性有機溶剤、及び水を含む前処理液を布に付与する工程と、前処理液が付与された布に、色材、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクを付与する工程と、前処理液及びインクが付与された布を乾燥する工程と、布を乾燥する工程と同時又は布を乾燥する工程の後に、布に多孔質基材を接触させ布を加圧する工程とを含むことができる。
以下、布、前処理液、及びインクについて説明する。
【0013】
<布>
一実施形態の捺染物の製造方法は、布への印刷に好ましく用いることができる。
布に含まれる繊維としては、例えば、綿、絹、羊毛、麻等の天然繊維;ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、キュプラ、アセテート等の化学繊維等を挙げることができる。布は、1種又は2種以上の繊維を含んでよい。また、布は、織物、編物、又は不織布等であってよい。
一実施形態の捺染物の製造方法では、例えば、ポリエステル繊維等の比較的親水性の低い繊維を含む布に対して前処理液及びインクの量を比較的多く用いた場合でも、べたつきの抑制された捺染物を製造することができる。
【0014】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤を含むことができる。
凝集剤としては、インクに含まれる色材等を凝集させる作用を備える成分を用いることができる。凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオン性ポリマー、有機酸、又はこれらの組合せを用いることができる。
【0015】
多価金属塩は、2価以上の多価金属イオンとアニオンから構成される。2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+等が挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl、NO 、CHCOO、I、Br、SO 2-、ClO 等が挙げられる。多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。多価金属塩は、水和物であってもよく、無水和物であってもよい。
【0016】
多価金属塩は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0017】
カチオン性ポリマーとして、例えば、カチオン性水溶性樹脂、又はカチオン性水分散性樹脂を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
カチオン性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びその塩、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの共重合体等が挙げられる。カチオン性ポリマーの例として、エピクロロヒドリン-アミン重縮合物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等も挙げられる。
カチオン性ポリマーの市販品として、例えばハイモ株式会社のハイマックスSC-506等が挙げられる。
【0018】
カチオン性ポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0019】
有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、トリカルバリル酸、グリコール酸、チオグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、グルコン酸、ピルビン酸、オキサル酢酸、ジグリコール酸、安息香酸、フタル酸、マンデル酸、サリチル酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
これらは、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前処理液は、凝集剤を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
【0021】
凝集剤は、有効成分量で、前処理液全量に対して、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。凝集剤は、有効成分量で、前処理液全量に対し、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。凝集剤は、有効成分量で、前処理液全量に対し、1~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%がさらに好ましい。
なお、本明細書において、多価金属塩として金属塩水和物を用いる場合は、多価金属塩の量(有効成分量)は、無水和物に換算した量である。以下、多価金属塩の量について同じである。
【0022】
前処理液は、水溶性有機溶剤を含むことができる。
水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0023】
これらの水溶性有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水溶性有機溶剤の前処理液中の含有量は、前処理液全量に対し、5~50質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましい。
【0024】
前処理液は、水を含むことができる。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。
【0025】
水は前処理液全量に対して、20~90質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
前処理液は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
【0027】
前処理液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤又はこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0028】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型界面活性剤;アセチレン系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0030】
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレン基を有する界面活性剤等を挙げることができる。
【0031】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグリコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、エボニックインダストリーズ社製サーフィノールシリーズ「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等、日信化学工業株式会社製オルフィンシリーズ「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」、川研ファインケミカル株式会社製「アセチレノールE100」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0032】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイスSAG002」、「シルフェイス503A」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0033】
また、その他の非イオン性界面活性剤として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲン102KG」、「エマルゲン103」、「エマルゲン104P」、「エマルゲン105」、「エマルゲン106」、「エマルゲン108」、「エマルゲン120」、「エマルゲン147」、「エマルゲン150」、「エマルゲン220」、「エマルゲン350」、「エマルゲン404」、「エマルゲン420」、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」、「エマルゲン1108」、「エマルゲン4085」、「エマルゲン2025G」等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製エマールシリーズ「エマール0」、「エマール10」、「エマール2F」、「エマール40」、「エマール20C」等、ネオペレックスシリーズ「ネオペレックスGS」、「ネオペレックスG-15」、「ネオペレックスG-25」、「ネオペレックスG-65」等、ペレックスシリーズ「ペレックスOT-P」、「ペレックスTR」、「ペレックスCS」、「ペレックスTA」、「ペレックスSS-L」、「ペレックスSS-H」等、デモールシリーズ「デモールN、デモールNL」、「デモールRN」、「デモールMS」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0035】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アセタミンシリーズ「アセタミン24」、「アセタミン86」等、コータミンシリーズ「コータミン24P」、コータミン86P」、「コータミン60W」、「コータミン86W」等、サニゾールシリーズ「サニゾールC」、「サニゾールB-50」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0036】
両性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アンヒトールシリーズ「アンヒトール20BS」、「アンヒトール24B」、「アンヒトール86B」、「アンヒトール20YB」、「アンヒトール20N」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0037】
界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
界面活性剤の含有量は、有効成分量で、前処理液全量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。
【0039】
前処理液の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより得ることができる。
【0040】
前処理液のpHは、3~9が好ましく、4~8がより好ましい。
前処理液の粘度は、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0041】
前処理液は、捺染用として好ましく用いることができる。前処理液の付与方法はとくに限定されないが、例えば、インクジェット法で付与されてもよい。
【0042】
<インク>
インクとしては、例えば、白色の色材を含むホワイトインク、非白色の色材を含むカラーインク等が挙げられる。カラーインクとしては、例えば、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインク等が挙げられる。
【0043】
インクは色材を含むことができる。インクは、色材としては、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0044】
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
インク中における顔料粒子の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
【0046】
顔料として自己分散性顔料を配合してもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、亜リン酸基、亜リン酸エステル基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
【0047】
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
【0048】
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270」、「CAB-O-JET450C」等、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1」、「BONJET BLACK CW-2」、「BONJET BLACK CW-3」、「BONJET BLACK CW-4」等が挙げられる(いずれも商品名)。
顔料として、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を用いてもよい。
【0049】
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ等が挙げられる。後述する顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。
【0050】
染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち水溶性の染料および還元等により水溶性になった水溶性染料を好ましく用いることができる。また、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、ニトロ系等の分散染料も好ましく用いることができる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
色材の含有量は、印刷濃度とインク粘度の観点から、インク全量に対して0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、例えば、5~10質量%であってもよい。
【0052】
色材として顔料をインク中に配合する場合、インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等に代表される顔料分散剤を用いることができる。
【0053】
高分子分散剤としては、例えば、市販品として、EVONIK社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W」、「TEGOディスパース750W」、「TEGOディスパース755W」、「TEGOディスパース757W」、「TEGOディスパース760W」等、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース41090」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース44000」、「ソルスパース46000」等、BASFジャパン株式会社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57」、「ジョンクリル60」、「ジョンクリル62」、「ジョンクリル63」、「ジョンクリル71」、「ジョンクリル501」等、ビックケミージャパン株式会社製の「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-190」、「DISPERBYK-193」、「DISPERBYK-199」等、第一工業製薬株式会社製の「ポリビニルピロリドンK-30」、「ポリビニルピロリドンK-90」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0054】
界面活性剤型分散剤としては、例えば、花王株式会社製デモールシリーズ「デモールP」、「デモールEP」、「デモールN」、「デモールRN」、「デモールNL」、「デモールRNL」、「デモールT-45」等のアニオン性界面活性剤、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60」、「エマルゲンA-90」、「エマルゲンA-500」、「エマルゲンB-40」、「エマルゲンL-40」、「エマルゲン420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0055】
顔料分散剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料分散剤を使用する場合のインク中の量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、有効成分の質量比で顔料1に対し、0.005~0.5が好ましい。
【0056】
インクは、バインダ樹脂を含むことができる。
バインダ樹脂としては、例えば、水分散性樹脂、水溶性樹脂、又はこれらの組み合わせ等を用いることができる。バインダ樹脂としては、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両イオン性樹脂、非イオン性樹脂のいずれであってもよいが、アニオン性樹脂、非イオン性樹脂、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0057】
バインダ樹脂としては、水分散性樹脂が好ましい。水分散性樹脂は、水中で水に溶解することなく分散して水中油(O/W)型エマルション形成できるものである。水分散性樹脂は、インク中では、樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。水分散性樹脂は、樹脂エマルションとしてインクに配合することができる。
【0058】
水分散性樹脂は、水に安定に分散させるために親水性基及び/又は親水性セグメントを樹脂に導入した自己乳化型の樹脂でもよいし、分散剤を用いて樹脂を強制的に分散させた強制乳化型樹脂でもよい。
水分散性樹脂は、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は両性のいずれであってもよいが、アニオン性、又は非イオン性が好ましい。
【0059】
水分散性樹脂の平均粒子径は、インクジェット吐出性の観点から、600nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下がより好ましい。例えば、水分散性樹脂の平均粒子径は、10nm~600nmの範囲であってよく、50nm~300nmの範囲であってよく、50nm~200nmの範囲であってよい。
本明細書において、水分散性樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法による体積基準の平均粒子径である。
【0060】
水分散性樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
水分散性樹脂の種類としては、例えば、
スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、又はこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;
メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂粒子が挙げられる。これらの単独樹脂の樹脂エマルションを用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂エマルションを用いてもよい。
【0062】
水分散性樹脂のエマルションの市販品としては、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス470」等が挙げられる(商品名)。
【0063】
水分散性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水分散性樹脂は、インク全量に対し、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。
【0064】
上記のバインダ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
バインダ樹脂は、インク全量に対し、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。
【0065】
インクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。
水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液で説明したものから選択して用いることができる。
【0066】
水溶性有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤は、インク全量に対し、5~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0067】
インクは水を含むことができる。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、インク全量に対して、30~70質量%で含まれることが好ましく、35~65質量%で含まれることがより好ましく、40~60質量%で含まれることがさらに好ましい。
【0068】
インクは、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤等が挙げられる。
【0069】
インクは、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤又はこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0070】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0071】
界面活性剤としては、例えば、上記した前処理液で説明したものから選択して用いることができる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0072】
界面活性剤の含有量は、有効成分量で、インク全量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。
【0073】
インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことによりインクを得ることができる。
【0074】
インクのpHは、インクの貯蔵安定性の観点から、7.0~10.0が好ましく、7.5~9.0がより好ましい。
インクの粘度は、例えばインクジェット吐出性の観点から、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0075】
インクは、捺染用として好ましく用いることができる。
インクの付与方法は特に限定されないが、例えば、インクジェット法によって布に付与することができる。
インクは、前処理液が付与された布に付与することが好ましい。
【0076】
<捺染物の製造方法>
一実施形態の捺染物の製造方法は、上記した前処理液を布に付与する工程(以下、「前処理液付与工程」とも称する。)と、前処理液が付与された布に、上記したインクを付与する工程(以下、「インク付与工程」とも称する。)と、前処理液及びインクが付与された布を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」とも称する。)と、布を乾燥する工程と同時又は布を乾燥する工程の後に、布に多孔質基材を接触させ布を加圧する工程(以下、「加圧工程」とも称する。)とを含むことができる。布としては、上記した布を用いることができる。
【0077】
前処理液付与工程について説明する。
前処理液を布に付与する方法は特に限定されず、例えば、エアブラシ等を用いるスプレー法、浸漬法、パッド法、コーティング法等の任意の方法を用いることができ、さらにインクジェット印刷(インクジェット法)、スクリーン印刷等の各種印刷方法を用いてもよい。
インクジェット法は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから前処理液又はインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を布に付着させるようにすることが好ましい。
【0078】
前処理液を付与する領域は、インクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、インクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、布の全面であってもよい。
前処理液の付与領域、及びインクの付与領域は、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
【0079】
布への前処理液の付与量は、布の材料等によって適宜選択することができる。布への前処理液の付与量は、例えば、10g/m以上、50g/m以上、又は100g/m以上であってよい。一方、布への前処理液の付与量は、例えば、250g/m以下が好ましく、200g/mが以上より好ましく、150g/m以下がさらに好ましい。布への前処理液の付与量は、例えば、10~250g/mが好ましく、50~200g/mがより好ましく、100~150g/mがさらに好ましい。
【0080】
インク付与工程について説明する。
インクを布に付与する方法は特に限定されず、例えば、エアブラシ等を用いるスプレー法、浸漬法、パッド法、コーティング法等の任意の方法を用いることができ、さらにインクジェット印刷(インクジェット法)、スクリーン印刷等の各種印刷方法を用いてもよい。
インクは、インクジェット法で布に付与することが好ましい。インクジェット法は、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから前処理液又はインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を布に付着させるようにすることが好ましい。
【0081】
前処理液及びインクをインクジェット法で付与する場合、前処理液の付与と、インクの付与は、別々の印刷装置で行ってもよく、1つの印刷装置を用いて行ってもよい。
【0082】
インクは、前処理液の付与領域と、付与領域が少なくても部分的に重なるように付与することが好ましい。前処理液の付与領域とインクの付与領域は、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
【0083】
インクは、前処理液が付与された布に、ウェットオンウェット法で付与してもよいし、前処理液が付与された布を乾燥してから付与してもよい。ウェットオンウェット法では、インクは、前処理液が付与された布から水分を完全に除去しない状態で付与されることが好ましい。好ましくは、インクは、前処理液が付与された布が湿潤状態を保つ状態で付与され得る。例えば、前処理液を布に付与した後、加熱乾燥などの乾燥工程を行わずにインクを布に付与することが好ましい。前処理液付与後、インク付与までの布表面の温度は、40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。前処理液付与後、布上の前処理液の揮発分の残存量が90質量%以上の状態で、インクが付与されることが好ましい。布に前処理液を付与してからインクを付与するまでの時間は、0.1~200秒であることが好ましい。
【0084】
布へのインクの付与量は、布の材料、インクの種類等によって適宜選択することができる。
【0085】
布へのホワイトインクの付与量は、例えば、100g/m以上、200g/m以上、又は300g/m以上であってよい。一方、布へのホワイトインクの付与量は、600g/m以下が好ましく、500g/m以上がより好ましく、400g/m以下がさらに好ましい。布へのホワイトインクの付与量は、例えば、100~600g/mが好ましく、200~500g/mがより好ましく、300~400g/mがさらに好ましい。
【0086】
布へのカラーインクの付与量は、例えば、5g/m以上、7g/m以上、又は100g/m以上であってよい。一方、布へのカラーインクの付与量は、50g/m以下が好ましく、45g/m以上がより好ましく、40g/m以下がさらに好ましい。布へのカラーインクの付与量は、例えば、5~50g/mが好ましく、7~45g/mがより好ましく、10~40g/mがさらに好ましい。
【0087】
乾燥工程について説明する。
乾燥工程で、布を乾燥する方法は特に限定されないが、例えば加熱処理等の能動的乾燥方法で布を乾燥することが好ましい。
【0088】
布を加熱処理する場合の加熱温度は、布の材料等によって適宜選択することができる。加熱温度は、例えば、100℃以上が好ましい。熱処理温度は、布へのダメージを低減する観点から、200℃以下が好ましい。
加熱処理には、加熱装置等を用いてもよい。加熱装置は、特に制限されないが、例えば、ヒートプレス、ロールヒータ、温風装置、赤外線ランプヒーター等を用いることができる。
加熱処理時間は、加熱方法等に応じて適宜設定すればよく、例えば、1秒~10分が好ましく、5秒~5分であってよい。
【0089】
加圧工程について説明する。
一実施形態の捺染物の製造方法は、乾燥工程と同時又は乾燥工程の後に、布に多孔質基材を接触させ布を加圧する工程(「加圧工程」)を含むことができる。
【0090】
多孔質基材は、特に限定されない。多孔質基材の材料としては、例えば、紙、布、樹脂等が挙げられる。多孔質基材の形状はとくに限定されないが、例えば、シート状、ブロック状、ロール状等が例示される。
紙としては、普通紙、紙ワイプ、ティッシュペーパー、キッチンペーパー等が挙げられる。布としては、例えば、上記した、捺染印刷の印刷媒体として用いる布として説明したものから選択することができる。樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂を含む、シート状、ブロック状、ロール状等の多孔質基材を用いてもよい。
【0091】
べたつきのより効果的な抑制の観点から、植物繊維、ポリウレタン樹脂、又はそれらの組合せを含む多孔質基材を用いることが好ましい。特定の理論に拘束されるものではないが、植物繊維は水酸基を持つセルロースを含むため、水溶性有機溶剤との親和性が比較的高く、捺染物に含まれている水溶性有機溶剤が多孔質基材に移行しやすくなるため、べたつきの軽減に効果的であると推測される。また、ポリウレタン樹脂は、例えばポリエステル樹脂等に比べて親水性が高い傾向にあり、水溶性有機溶剤が多孔質基材に移行しやすいと推測される。
植物繊維を含む多孔質基材としては、例えば、綿、麻等を含む布、及び紙等が挙げられる。
【0092】
水溶性有機溶剤の多孔質基材への効率的な移行、及びべたつきのより効果的な抑制の観点から、多孔質基材の坪量は、40g/m以上であることが好ましく、50g/m以上であることがより好ましい。
多孔質基材の坪量は、例えば、100g/m以上であってもよい。
多孔質基材の坪量は、例えば、500g/m以下、450g/m、又は400g/m以下であってよい。
多孔質基材の坪量は、例えば、40~500g/m、50~450g/m、又は100g~400g/mであってよい。
【0093】
多孔質基材を接触させる場所は、例えば、布の、前処理塩基及びインクが付与された印面でもよく、印面の裏面でもよく、印面と裏面の両方でもよい。
布を加圧する方法としては、例えば、重しを捺染物の上に置く等が挙げられる。例えば、後述するように、ヒートプレスを用いてもよい。
【0094】
加圧工程は、乾燥工程と同時に行ってよく、乾燥工程の後に行ってもよい。加圧工程を乾燥工程と同時に行う方法としては、例えば、布に多孔質基材を接触させ、ヒートプレスを用いて、加圧及び加熱を行う方法が挙げられる。
【0095】
加圧工程で布に加える圧力は、例えば、1Pa以上であってよい。水溶性有機溶剤の多孔質基材への効率的な移行、及びべたつきのより効果的な抑制の観点から、加圧工程で布に加える圧力は、10Pa以上であることが好ましく、50Pa以上であることがより好ましく、100Pa以上であることがさらに好ましい。布に加える圧力は、例えば、80,000Pa以下、60,000Pa以下、又は50,000Pa以下であってよい。加圧工程で、布に加える圧力は、例えば、1~80,000Paであってよく、10~80,000Paであることが好ましく、50~60,000Paであることがより好ましく、100~50,000Paであることがさらに好ましい。
【0096】
水溶性有機溶剤の多孔質基材への効率的な移行、及びべたつきのより効果的な抑制の観点から、加圧工程で布を加圧する時間は、加圧工程で布に加える圧力が100Pa未満の場合、1時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。加圧工程で布に加える圧力が100Pa以上の場合は30秒以上が好ましく、1分以上がより好ましい。
【0097】
布に、例えば霧吹き等で水を付与してから布を加圧してもよい。
水を付与する領域は、前処理液及びインクを付与した領域を少なくとも含むことが好ましい。
布に水を付与することで、前処理液及びインクが付与された布に含まれている水溶性有機溶剤が付与された水に移行することで多孔質基材に移行しやすくなり、捺染物のべたつきをより効果的に抑制することができると推測される。
【0098】
捺染物の製造方法では、例えば、複数種のインクを布に付与してもよい。例えば、濃色の布を用いて捺染物を製造する場合、インク付与工程として、ホワイトインクを用いた工程と、続けてカラーインクを用いた工程を行い、その後、乾燥工程を行ってもよい。
捺染物の製造方法は、その他の工程を含んでよい。例えば、後処理液を付与する工程を設けてもよい。
【0099】
本開示は、下記の実施形態を含む。
<1>
凝集剤、水溶性有機溶剤、及び水を含む前処理液を布に付与する工程と、
前記前処理液が付与された前記布に、色材、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクを付与する工程と、
前記前処理液及び前記インクが付与された前記布を乾燥する工程と、
前記布を乾燥する工程と同時又は前記布を乾燥する工程の後に、前記布に多孔質基材を接触させ前記布を加圧する工程とを含む、捺染物の製造方法。
<2>
前記多孔質基材が、植物繊維、ポリウレタン樹脂、又はこれらの組合せを含む、<1>に記載の捺染物の製造方法。
<3>
前記多孔質基材の坪量が、50g/m以上である、<1>又は<2>に記載の捺染物の製造方法。
<4>
前記布に多孔質基材を接触させ前記布を加圧する工程において、前記布を10Pa以上の圧力で加圧する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の捺染物の製造方法。
【実施例0100】
以下、本発明の実施形態を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
【0101】
1.前処理液の作製
表1に前処理液の処方を示す。表1に記載の配合比で原材料を混合し、孔径3μmのセルロースアセテートメンブレンフィルターでろ過し、前処理液UC1を得た。
【0102】
表1に記載の原材料の詳細は以下の通りである。
(多価金属塩)
塩化カルシウム(無水):富士フイルム和光純薬株式会社製
【0103】
(水溶性有機溶剤)
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0104】
(界面活性剤)
アセチレノールE100:アセチレングリコール系界面活性剤、川研ファインケミカル株式会社製、有効成分100質量%
【0105】
【表1】
【0106】
2.ホワイトインクの作製
(1)顔料分散体の作製
白色顔料として酸化チタン「R62N」(堺化学工業株式会社製)250g、顔料分散剤として「デモールEP」(花王株式会社製)10g(有効成分で2.5g)を用い、イオン交換水740gと混合し、ビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、DYNO-MILL KDL A型)を用いて、0.5mmΦのジルコニアビーズを充填率80%、滞留時間2分で分散し、白色顔料分散体(顔料分25質量%)を得た。
【0107】
(2)インクの作製
表2にホワイトインクW1の処方を示す。表2に記載の配合比で原材料を混合し、孔径3μmのセルロースアセテートメンブレンフィルターでろ過し、ホワイトインクW1を得た。
【0108】
表2に記載のホワイトインクW1の原材料の詳細は以下の通りである。
【0109】
(顔料分散体)
白色顔料分散体:上記の方法で得られた白色顔料分散体、顔料分25質量%
【0110】
(樹脂エマルション)
スーパーフレックス470:水分散性ポリウレタン樹脂エマルション、第一工業製薬株式会社製、樹脂分38質量%
【0111】
(水溶性有機溶剤)
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0112】
(界面活性剤)
アセチレノールE100:アセチレングリコール系界面活性剤、川研ファインケミカル株式会社製、有効成分100質量%
【0113】
【表2】
【0114】
3.カラーインクの作製
表3にカラーインクC1の処方を示す。表3に記載の配合比で原材料を混合し、孔径3μmのセルロースアセテートメンブレンフィルターでろ過し、カラーインクC1を得た。
【0115】
表3に記載のカラーインクC1の原材料の詳細は以下の通りである。
【0116】
(顔料分散体)
CAB-O-JET450C:顔料分散体、キャボット社製、顔料分15質量%
【0117】
(樹脂エマルション)
スーパーフレックス470:水分散性ポリウレタン樹脂エマルション、第一工業製薬株式会社製、樹脂分38質量%
【0118】
(水溶性有機溶剤)
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0119】
(界面活性剤)
アセチレノールE100:アセチレングリコール系界面活性剤、川研ファインケミカル株式会社製、有効成分100質量%
【0120】
【表3】
【0121】
4.捺染物の作製
上記で作製した前処理液UC1、ホワイトインクW1及びカラーインクC1を用いて、以下の手順で実施例1~12及び比較例1の捺染物を作製した。
【0122】
黒ポリエステルTシャツ(トムス株式会社製「Glimmer」(商品名))の表面の10cm×20cmの部分に、前処理液UC1を、付与量が120g/mとなるように、インクジェット法で付与した。前処理液UC1付与後、乾燥工程を設けずに、前処理液UC1を付与した部分にホワイトインクW1を、付与量が360g/mとなるように、インクジェット法で付与した。ホワイトインクW1を付与後、ホワイトインクW1を付与した部分にカラーインクC1を、付与量が20g/mとなるように、インクジェット法で付与して、ベタ画像を形成した。前処理液の付与、ホワイトインクの付与及びカラーインクの付与には、いずれも、印刷装置として、マスターマインド社製「MMP-8130」(商品名)を使用した。
カラーインク付与後、FUSION社製ヒートプレスを用いて、120℃で2分間加熱処理して布を乾燥させた。
【0123】
実施1~3及び5~13では、このようにして前処理液付与、インク(ホワイトインク及びカラーインク)付与及び乾燥を行った布に対して、表4~6に記載の多孔質基材を、前処理液及びインクを付与した印刷面の裏側に接触させ、表4~6に記載の圧力相当となるよう重しを布に載せた。表4~6に記載の時間、重しを置いた後、重しを外して、実施1~3及び5~13の捺染物を得た。
実施例4については、前処理液付与、インク付与及び乾燥を行った布に対して、水を、霧吹きで、約50g/mの付与となるように付与し、表4に記載の多孔質基材を、前処理液及びインクを付与した印刷面の裏側に接触させ、表4に記載の圧力相当となるよう重しを布に載せた。表4に記載の時間、重しを置いた後、重しを外して、実施例4の捺染物を得た。
比較例1については、前処理液付与、インク付与及び乾燥を行った布を、以下の評価に用いた。
【0124】
表4~6に記載の多孔質基材の詳細は下記のとおりである。表4~6に、各多孔質基材の素材及び各多孔質基材の坪量(g/m)も記載する。
【0125】
多孔質基材1:紙ワイプ(日本製紙クレシア株式会社製「キムタオル」(商品名))
多孔質基材2:普通紙(日本紙通商株式会社販売オフィス用紙「プレミアムホワイト」)
多孔質基材3:キッチンペーパー(アスクル株式会社販売ペーパータオル、パルプ100%)
多孔質基材4:ティッシュペーパー(アスクル株式会社販売オリジナルソフトパックティッシュレギュラー150W)
多孔質基材5:布(トムス株式会社製綿Tシャツ「Printstar」(商品名))
多孔質基材6:アズワン株式社製液体吸収マット
多孔質基材7:トーヨーポリマー株式会社社製「ルビーセル」(商品名)
多孔質基材8:布(トムス株式会社製ポリエステル白色Tシャツ「Glimmer 00300-ACT」(商品名))
【0126】
4.捺染物のべたつきの評価
上記のようにして得られた捺染物の印面を手で触って評価し、以下の基準で判定した。
<べたつきの判定基準>
S:べたつきを全く感じない。
A:べたつきをごくわずかに感じる。
B:べたつきをやや感じる。
C:べたつきを感じるが、手に有機溶剤の付着は確認されない。
D:べたつきを顕著に感じ、手に有機溶剤の付着が確認される。
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
実施例1~12で得られた捺染物では、多孔質基材を布に接触させて布を加圧する工程を行っていない比較例1に比べて、べたつきの発生が抑制されていた。