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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058260
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】遊星歯車伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240418BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F16H57/04 D
F16H1/28
F16H57/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165513
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ロバート ウイリアム マーク
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA25
3J027FB16
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J063AA21
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA03
3J063BA11
3J063BB41
3J063CA01
3J063CB04
3J063CB06
3J063CD46
3J063XD03
3J063XD24
3J063XD32
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
(57)【要約】
【課題】オイルポンプを備える小型の遊星歯車伝達装置を提供すること。
【解決手段】遊星歯車伝達装置10は、リングギヤ23がケーシング30に相対回転不能に固定されると共に、プラネタリーギヤ22を軸支するプラネタリーキャリア25がサンギヤ21を中心としてケーシング30に相対回転可能に支持され、ケーシング30内に潤滑油となるオイルを圧送するオイルポンプ50がサンギヤ21に対してオフセットした位置に配置され、プラネタリーキャリア25には、オイルポンプ50を駆動する伝達部として機能するポンプドライブギヤ60が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内にサンギヤと、該サンギヤの外周で前記サンギヤに噛み合う複数のプラネタリーギヤと、該プラネタリーギヤの外周で前記プラネタリーギヤに噛み合うリングギヤと、を備える遊星歯車伝達装置において、
前記リングギヤが前記ケーシングに相対回転不能に固定されると共に、前記プラネタリーギヤを軸支するプラネタリーキャリアが、前記サンギヤを中心として前記ケーシングに相対回転可能に支持され、
前記ケーシング内に潤滑油となるオイルを圧送するオイルポンプが、前記サンギヤに対してオフセットした位置に配置され、
前記プラネタリーキャリアには、前記オイルポンプを駆動する伝達部が設けられた遊星歯車伝達装置。
【請求項2】
前記オイルポンプがトロコイド式であり、
前記伝達部が、前記オイルポンプのポンプ軸に設けられたドリブンギヤに噛み合うドライブギヤである請求項1に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項3】
前記プラネタリーキャリアは、前記プラネタリーギヤを挟んで反対側に基盤部を備え、前記基盤部におけるプラネタリーギヤの反対側に、前記ドライブギヤが固定される請求項2に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項4】
前記ドライブギヤの外径を、前記プラネタリーキャリアの外径を超えない範囲にした請求項3に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項5】
前記基盤部を回転自在に支持する第1の軸受部材を有し、
前記オイルポンプが、前記第1の軸受部材の径方向外側に位置する請求項4に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項6】
前記オイルポンプが、前記第1の軸受部材、前記プラネタリーキャリア、及び前記リングギヤで囲まれる領域に配置され、かつ、軸方向視で、前記プラネタリーキャリアの最外周位置と重なる請求項5に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項7】
前記ケーシングは、駆動源と一体化される第1ケーシングと、前記第1ケーシングに連結される第2ケーシングとを含む分割構造を有し、
前記オイルポンプにつながるオイル通路が、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとに跨がって形成される請求項1から6のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項8】
前記ケーシングは、駆動源と一体化される第1ケーシングと、前記第1ケーシングに連結される第2ケーシングとを含む分割構造を有し、
前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとによって、前記オイルポンプのポンプ軸を回転自在に支持する請求項1から6のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項9】
前記オイルポンプの吐出口となる複数のオイル吐出口と、各オイル吐出口のそれぞれにつながるオイル通路とが設けられる請求項1から6のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項10】
当該遊星歯車伝達装置の回転軸が鉛直方向に沿う向きとされ、前記ケーシングの下部に溜まるオイルに前記オイルポンプが浸かる構成である請求項1から6のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
【請求項11】
当該遊星歯車伝達装置は、航空機が有する垂直離着陸用のローターと、前記ローターの駆動源との間の動力伝達機構を構成する請求項1から6のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシング内にサンギヤと、該サンギヤの外周で前記サンギヤに噛み合う複数のプラネタリーギヤと、該プラネタリーギヤの外周で前記プラネタリーギヤに噛み合うリングギヤと、を備える遊星歯車伝達装置が知られている。この種の遊星歯車伝達装置の各所にオイルを供給し、潤滑を行うためにはオイルポンプが必要となるが、本文献中の遊星歯車伝達装置内にオイルポンプの記載がないことから、通常は遊星歯車伝達装置外に設けたオイルポンプからオイルを遊星歯車伝達装置内に導入しているものと考えられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-220495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、外部のオイルポンプからオイルを導入する構成は、オイルポンプ、潤滑構造、及び遊星歯車伝達装置を含む全体構成が大型化し、構造も複雑化してしまう。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、オイルポンプを備える小型の遊星歯車伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ケーシング内にサンギヤと、該サンギヤの外周で前記サンギヤに噛み合う複数のプラネタリーギヤと、該プラネタリーギヤの外周で前記プラネタリーギヤに噛み合うリングギヤと、を備える遊星歯車伝達装置において、前記リングギヤが前記ケーシングに相対回転不能に固定されると共に、前記プラネタリーギヤを軸支するプラネタリーキャリアが、前記サンギヤを中心として前記ケーシングに相対回転可能に支持され、前記ケーシング内に潤滑油となるオイルを圧送するオイルポンプが、前記サンギヤに対してオフセットした位置に配置され、前記プラネタリーキャリアには、前記オイルポンプを駆動する伝達部が設けられた遊星歯車伝達装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
オイルポンプを備える小型の遊星歯車伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る遊星歯車伝達装置を備える航空機を示す図である。
図2】遊星歯車伝達装置の断面を周辺構成と共に示す図である。
図3】遊星歯車機構の一部を周辺構成と共に示す分解斜視図である。
図4】オイルポンプの分解斜視図である。
図5】第2ケーシングと第1ケーシングを斜め上方から示す斜視図である。
図6】第2ケーシングを斜め下方から示す斜視図である。
図7】第1ケーシングのオイルの流れを示す図である。
図8】歯車装置内のオイルの流れを示す断面図である。
図9】歯車装置内の図8と異なるオイルの流れを示す断面図である。
図10】歯車装置内の図8及び図9と異なるオイルの流れを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る遊星歯車伝達装置10を備える航空機1を示す図である。
この航空機1は、VTOL機(Vertical Take-Off and Landing aircraft)等の垂直離着陸タイプの航空機であり、垂直離着陸用のローター2と、推進用のローター3とを備えている。各ローター2,3の駆動源はモーターである。この航空機1は、各ローター2,3を個別に駆動する複数のモーター等に供給する電力を蓄電するバッテリーや、モーター等を制御する制御ユニット等を備えている。この航空機1の各ローター2,3の数や位置は適宜に変更してもよい。また、この航空機1は、ガスタービン等を用いて電力を発電する発電機を備えたハイブリッド型の航空機であってもよいし、有人タイプ又は無人タイプのいずれの飛行体でもよい。また、各ローター2,3の駆動源はモーター以外でもよい。
【0010】
図2は、遊星歯車伝達装置10の断面を周辺構成と共に示す図である。
遊星歯車伝達装置10は、垂直離着用のローター2と、ローター駆動用のモーター2Mとの間に配置され、モーター2Mの回転を減速してローター2に伝達する装置であり、ローター用の歯車装置、動力伝達装置、及び変速装置等と言うこともできる。以下の説明において、遊星歯車伝達装置10を「歯車装置10」と表記する。
【0011】
図2中、符号UPは、この歯車装置10を航空機1に搭載した状態での上方向を示している。この歯車装置10の下方にモーター2Mが配置され、歯車装置10の上方にローター2が配置される。本説明における方向の記載は、特に明示しない限り、航空機1に搭載した状態の方向である。
【0012】
歯車装置10は、モーター2Mの回転が伝達される入力軸11と、ローター2を回転させる出力軸12と、入力軸11の回転を減速して出力軸12に伝達する遊星歯車機構20と、これらを収容するケーシング30とを備えている。
入力軸11と出力軸12とは同じ軸C1上に配置される。この軸C1は、遊星歯車機構20、及び歯車装置10のそれぞれの中心を通る軸(中心軸)に相当しており、上下方向に延びる軸(鉛直軸)でもある。以下、ケーシング30を「ギヤケーシング30」と表記し、軸C1を「中心軸C1」と表記する。
【0013】
図2に示すように、ギヤケーシング30の下面には、締結部材40によりモーター2M側のケーシング41が固定される。このケーシング41は、モーター2Mのケースであるモーターケーシングであり、入力軸11はモーター2Mによって回転駆動される。つまり、モーター2Mは、ギヤケーシング30と一体となるように連結されている。なお、ケーシング41は、モーターケーシングでなくてもよく、例えば、モーターケーシングとギヤケーシング30との間に位置する他のケーシングでもよい。
ギヤケーシング30は、最も下に位置する下ケーシングを構成する第1ケーシング31と、上下中間に位置する中間ケーシングを構成する第2ケーシング32と、最も上に位置する上ケーシングを構成する第3ケーシング33とからなる上下分割構造に形成されている。
【0014】
入力軸11は、第1ケーシング31の中央(中心軸C1に相当する位置)に設けられた貫通孔31Cを貫通することにより、第1ケーシング31内に進入する。遊星歯車機構20は、入力軸11と一体に回転するサンギヤ21と、サンギヤ21の外周でサンギヤ21に噛み合う複数のプラネタリーギヤ22と、プラネタリーギヤ22の外周でプラネタリーギヤ22に噛み合うリングギヤ23とを備えている。
【0015】
図3は、遊星歯車機構20の一部を周辺構成と共に示す分解斜視図である。
図2に示すように、サンギヤ21は、入力軸11の外周に嵌合される。さらに図3も合わせて参照して、プラネタリーギヤ22は、サンギヤ21の周囲に所定の角度間隔で設けられ、プラネタリーキャリア25に回転(自転)自在に支持される。
本構成のプラネタリーキャリア25は、プラネタリーギヤ22の上方に位置するプラネタリーキャリア本体部25Aと、プラネタリーギヤ22を挟んで反対側である下側に位置する基盤部25Bとを備えている。
【0016】
プラネタリーキャリア本体部25Aは、出力軸12と、出力軸12よりも大径のフランジ部25AFとを一体に備えている。基盤部25Bは、下方に突出する筒部25BTを一体に有する円盤形状に形成され、プラネタリーギヤ22と同数の筒体26が等角度間隔で嵌まる複数の孔部25BHを有している。
図2に示すように、各筒体26は、プラネタリーキャリア本体部25Aのフランジ部25AFと、基盤部25Bとの間に保持される。そして、各筒体26の外周に、軸受22Jを介してプラネタリーギヤ22が回転自在に支持される。これにより、プラネタリーギヤ22が、プラネタリーキャリア本体部25Aと基盤部25Bとの間に回転自在に設けられる。なお、本実施形態のプラネタリーギヤ22は3個であるが、3個に限定しなくてもよい。また、プラネタリーキャリア25の形状等は適宜に変更してもよい。
【0017】
リングギヤ23は、内周に歯列を有し、各プラネタリーギヤ22に噛み合う(図3参照)。このリングギヤ23は、第3ケーシング33に回転不能に固定される。プラネタリーキャリア本体部25Aは、上側の軸受42Uを介して第3ケーシング33に回転自在に支持される。また、基盤部25Bは、下側の軸受42Lを介して第2ケーシング32に回転自在に支持される。なお、プラネタリーキャリア本体部25Aと基盤部25Bとは一体で回転する。
【0018】
上側の軸受42Uの支持構造については、第3ケーシング33内に、下方から軸受支持用の筒状の軸受ハウジング35が取り付けられる。そして、この軸受ハウジング35の外周面と、プラネタリーキャリア本体部25Aのフランジ部25AFの最外周部から上方に延出する上方延出筒部25AWとの間に、上側の軸受42Uが挿入される。この軸42Uの支持構造によれば、フランジ部25AFの内周側に軸受42Uが収まるように配置されるので、軸受42Uがフランジ部25AFの外周側に張り出さず、第3ケーシング33を径方向に拡張させることなく、小型化し易くなる。
【0019】
下側の軸受42Lの支持構造については、基盤部25Bの筒部25BTに、下側の軸受42Lの内周面が嵌合し、第2ケーシング32に、下側の軸受42Lの外周面が嵌合する外周筒部32BT(図5参照)を設けている。基盤部25Bの筒部25BT(図2参照)は、モーター2M側に延出し、プラネタリーキャリア本体部25Aの最外周部(上方延出筒部25AWに相当)よりも内周側に設けられ、下側の軸受42Lは、上側の軸受42Uよりも小径のものを用いた。これにより、軸受42Lの径方向外側に、後述するオイルポンプ50のスペースを確保した。なお、各軸受42L,42Uのサイズ等は仕様に応じて適宜に設定すればよい。
【0020】
ところで、歯車装置10の各部は潤滑油で潤滑することが望まれる。
本構成では、潤滑油となるオイルを供給するオイルポンプ50を、ギヤケーシング30内に設けている。
図2に示すように、オイルポンプ50は、下側の軸受42Uの径方向外側に配置されることによって、サンギヤ21に対して径方向にオフセットした位置に配置され、プラネタリーキャリア25に設けられたポンプドライブギヤ60によって容易にオイルポンプ50を回転駆動することが可能である。
【0021】
オイルポンプ50及びその周辺構造について詳述する。
図3に示すように、ポンプドライブギヤ60は、外周に歯列を有するリング形状に形成され、基盤部25Bに対し、下方から複数の締結部材61(図2)によって固定される。図2に示すように、ポンプドライブギヤ60の中心軸は、遊星歯車機構20の中心軸C1と一致し、ポンプドライブギヤ60は、基盤部25Bの外径を超えない範囲に配置される。
【0022】
本構成では、ポンプドライブギヤ60が、サンギヤ21の周囲に空くスペースであって、基盤部25Bの下方に空くスペースを利用して配置される。より具体的には、ポンプドライブギヤ60が、基盤部25Bと下側の軸受42Lとの間であって、基盤部25Bの筒部25BTよりも径方向外側に配置される。そのため、ポンプドライブギヤ60を配置することによって、ギヤケーシング30が軸方向及び径方向に大型化する事態を抑制でき、歯車装置10の大型化を抑制できる。
なお、下側の軸受42Lは本発明の「第1の軸受部材」に相当し、上側の軸受42Uは、本発明の「第2の軸受部材」、又は「他の軸受部材」に相当する。
【0023】
図4は、オイルポンプ50の分解斜視図である。
オイルポンプ50は、ポンプ軸51と、ポンプ軸51の上部に固定されるポンプドリブンギヤ52と、ポンプ軸51の下部に設けられ、オイルを圧送する圧力を発生する圧送部53とを備えている。このオイルポンプ50は、トロコイド式である。すなわち、圧送部53は、ポンプ軸51に固定されるインナーローター53Aと、インナーローター53Aを囲むアウターローター53Bとを備える。アウターローター53Bは、ポンプ軸51から偏心した軸線周りに回転自在に、ギヤケーシング30内に配置される。インナーローター53Aは、アウターローター53Bに対し径方向に偏心した軸線周りに回転する。これにより、インナーローター53Aとアウターローター53Bとの間に区画されるセル室を、オイル吸入口71(図5)とオイル吐出口72(図5)とに順に連通させると共に、オイル吸入口71からオイル吐出口72に連通する間にセル室の容積を減少し、セル室に導入されたオイルを加圧してオイル吐出口72に供給する。なお、圧送部53を含むオイルポンプ50の形状や構造は、図4のものに限定しなくてもよい。
【0024】
本構成において、オイルポンプ50のポンプ軸51は、第2ケーシング32と第1ケーシング31とに回転自在に支持される。
図5は、第2ケーシング32と第1ケーシング31を斜め上方から示す斜視図である。図6は、第2ケーシング32を斜め下方から示す斜視図である。
図5及び図6に示すように、第2ケーシング32には、入力軸11が通る筒部32Tから径方向にオフセットした位置に、ポンプ軸51の上部を軸支する軸支部32Sが設けられる。図5に示すように、第1ケーシング31には、第2ケーシング32の軸支部32Sに対向する位置、換言すると、入力軸11が通る貫通孔31Cから径方向にオフセットした位置に、ポンプ軸51の下部を軸支する軸支部31Sが設けられる。
【0025】
ポンプ軸51は、上下一対のフランジブッシュ54(図4)を介して上下一対の軸支部32S,31Sに支持された後、上方からポンプドリブンギヤ52、及びロックナット55(図4)が順に取り付けられる。これにより、図2に示すように、ポンプ軸51を上下に指向させた状態でオイルポンプ50がギヤケーシング30に軸支される。
本構成では、図2に示すように、オイルポンプ50が、径方向(左右方向や幅方向に相当)で、サンギヤ21及び下側の軸受42Lよりも径方向外側に位置し、リングギヤ23の最外周部よりも径方向内側に位置している。また、オイルポンプ50は、軸方向で、プラネタリーキャリア25、上側の軸受42U、サンギヤ21及びリングギヤ23よりも下方に位置し、第1ケーシング31よりも上方に位置している。
【0026】
そのため、オイルポンプ50は、径方向視で、下側の軸受42L、及び、プラネタリーキャリア25の基盤部25B(筒部25BTの部分)と重なる領域に配置され、軸方向視で、プラネタリーキャリア25の最外周位置と重なる領域に配置される。これにより、オイルポンプ50、軸受42L、及び、プラネタリーキャリア25の基盤部25Bを互いに近接させてコンパクトに配置できる。
【0027】
続いて、ギヤケーシング30内の潤滑に関わる構成について説明する。
図5に示すように、第2ケーシング32は、上下方向に延びる筒状の外周壁32Wと、入力軸11が通る筒部32Tと、筒部32Tから周囲に拡径するフランジ部32Fとを一体に有している。外周壁32Wの最外周部には、周方向に間隔を空けて締結用貫通孔32Hが形成されている。これら締結用貫通孔32Hには、第2ケーシング32を、第1ケーシング31及び第3ケーシング33に締結固定するための締結部材(例えばボルト)が通される。フランジ部32Fは、下方に凹んで下側の軸受42Lの外周面が嵌まる凹形状に形成されることによって、下側の軸受42Lを支持する軸受ハウジングとして機能する。
【0028】
外周壁32Wとフランジ部32Fとの間には、ポンプ軸51の上部を軸支する軸支部32Sが設けられると共に、この軸支部32Sを除いて環状に凹む凹み部32Kが設けられる。この凹み部32Kには、周方向に間隔を空けて、貫通孔32KHが設けられる。これら貫通孔32KHは、上方からのオイルを下方(第1ケーシング31)に落下させるためのオイル通し孔として機能する。
【0029】
図6に示すように、第2ケーシング32の外周壁32Wには、外周壁32Wを上下方向に貫通するオイル通路32Xが設けられる。このオイル通路32Xは、第1ケーシング31に設けられたオイル吐出通路74A(図5)と連通する。また、第2ケーシング32の筒部32Tには、第1ケーシング31に設けられたオイル吐出通路74C(図5)に連通するオイル通路32Yが周方向に間隔を空けて設けられる。
【0030】
図7は、第1ケーシング31のオイルの流れを示す図である。なお、図7中の矢印はオイルの流れる方向を示している。
図6及び図7に示すように、第1ケーシング31は、上面が平面の円板形状に形成され、第1ケーシング31の中央に、入力軸11が通る貫通孔31Cを有し、第1ケーシング31の最外周部に、周方向に間隔を空けて締結用貫通孔31Hを有している。締結用貫通孔31Hは、第2ケーシング32の締結用貫通孔32Hと連通する。
第1ケーシング31の上面には、ポンプ軸51の下部を軸支する軸支部31Sが設けられる。さらに、第1ケーシング31の上面には、複数の溝が形成され、これら溝によって、オイル吸入口71、オイル吐出口72、オイル吸入口71につながるオイル吸入通路73、及び、オイル吐出口72につながるオイル吐出通路74がそれぞれ形成されている。
【0031】
オイル吸入口71は、軸支部31Sに対し、中心軸C1を基準とする周方向一方側に設けられる。オイル吸入通路73は、中心軸C1を中心とする環状に延びる溝で形成され、オイル吸入通路73の一端がオイル吸入口71につながる。このオイル吸入通路73は、第2ケーシング32に設けられた貫通孔32KHと上下方向に重なる位置にあり、貫通孔32KHから下方に落下したオイルが流入する。
オイル吐出口72は、軸支部31Sに対して、オイル吸入口71の反対側、換言すると、軸支部31Sに対して、中心軸C1を基準とする周方向他方側に設けられる。このオイル吐出口72の径方向外側端は、ケーシング外周側に向けてオイルを吐出する第1オイル吐出口72Aとして機能する。また、このオイル吐出口72の径方向内側端は、ケーシング内周側に向けてオイルを吐出する第2オイル吐出口72Bとして機能する。
【0032】
図7に示すように、第1オイル吐出口72Aから吐出されたオイルは、第1オイル吐出口72から径方向外側に延びるオイル吐出通路74Aを経由して、第2ケーシング32に設けられたオイル通路32X(図5図6)に供給される。
ここで、図8図9及び図10は、歯車装置10内のオイルの流れを示す断面図である。
【0033】
図8に示すように、第3ケーシング33には、第2ケーシング32に設けられたオイル通路32Xにつながるオイル通路33Xが設けられる。このオイル通路33Xは、図8中にオイルの流れを矢印で示すように、第3ケーシング33を通って、上側の軸受42U、及びプラネタリーキャリア25に向けて、第1オイル吐出口72Aからのオイルを供給する。これにより、上側の軸受42U、及びその周囲等がオイルで潤滑される。このオイルは重力により下方に落下し、ギヤケーシング30内に貯留され、再びオイル吸入口71からオイルポンプ50に吸入される。なお、図8図10中の符号L1、L2は、ギヤケーシング30内に貯留されるオイル溜まりラインの一例である。
【0034】
図7に示すように、第2オイル吐出口72Bから吐出されたオイルは、第2オイル吐出口72Bから径方向内側に延びるオイル吐出通路74Bを経由して、貫通孔31Cの周囲に設けられた環状のオイル吐出通路74Cに供給される。
環状のオイル吐出通路74Cは、第2ケーシング32の筒部25BTに設けられた複数のオイル通路32Y(図6図9)に連通する。
複数のオイル通路32Yは、プラネタリーキャリア25内に設けられた異なるオイル通路25Y1(図9)、及びオイル通路25Y2(図10)のそれぞれに連通するオイル通路である。
【0035】
図9に示すように、第1のオイル通路25Y1は、下方から供給されたオイルを、サンギヤ21に供給するオイル通路に形成されている。また、図10に示すように、第2のオイル通路25Y2は、下方から供給されたオイルを、プラネタリーギヤ22の軸受22Jに供給するオイル通路に形成されている。
図9に示すように、第1のオイル通路25Y1からサンギヤ21に供給されたオイルは、サンギヤ21とプラネタリーギヤ22との噛み合い部等を潤滑した後に重力により落下し、ギヤケーシング30内に貯留され、再びオイル吸入口71からオイルポンプ50に吸入される。
【0036】
図10に示すように、第2のオイル通路25Y2から軸受22Jに供給されたオイルは、プラネタリーギヤ22とリングギヤ23の噛み合い部等を潤滑した後に重力により落下し、ギヤケーシング30内に貯留され、再びオイル吸入口71からオイルポンプ50に吸入される。以上によりギヤケーシング30内の複数箇所が適切に潤滑される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の歯車装置10は、リングギヤ23がギヤケーシング30に相対回転不能に固定されると共に、プラネタリーギヤ22を軸支するプラネタリーキャリア25が、サンギヤ21を中心としてギヤケーシング30に相対回転可能に支持され、ギヤケーシング30内にオイルを圧送するオイルポンプ50が、サンギヤ21に対してオフセットした位置に配置され、プラネタリーキャリア25には、オイルポンプ50を駆動する伝達部として機能するポンプドライブギヤ60が設けられる。
【0038】
この構成によれば、オイルポンプ50がサンギヤ21に対してオフセットした位置に配置されるので、オイルポンプ50とサンギヤ21とを別軸で配置しながら、プラネタリーキャリア25に設けた伝達部によって容易にオイルポンプ50を駆動できる。また、伝達部がオイルポンプ50のみを駆動することによって、伝達部の軸方向の厚さ(ポンプドライブギヤ60の歯厚に相当)を抑えることができる。これらにより、オイルポンプ50とサンギヤ21とを同軸で配置することを避けると共に伝達部を軸方向に短縮し易くなり、オイルポンプ50を備える歯車装置10を軸方向に小型化できる。
【0039】
また、オイルポンプ50がトロコイド式であり、伝達部が、オイルポンプ50のポンプ軸51に設けられたポンプドリブンギヤ52に噛み合うポンプドライブギヤ60である。この構成によれば、簡易な伝達機構でトロコイド式のオイルポンプ50を駆動することができる。そのため、構造の複雑化や部品点数の増大を抑制でき、歯車装置10をより小型化し易くなる。
なお、ポンプドリブンギヤ52は本発明の「ドリブンギヤ」に相当し、ポンプドライブギヤ60は本発明の「ドライブギヤ」に相当する。
【0040】
また、プラネタリーキャリア25は、プラネタリーギヤ22を挟んで反対側に基盤部25Bを備え、基盤部25Bにおけるプラネタリーギヤ22の反対側に、ポンプドライブギヤ60が固定される。この構成によれば、基盤部25Bを基準にして、プラネタリーギヤ22による動力伝達経路と、オイルポンプ50への動力伝達経路とを振り分けたレイアウトにでき、動力伝達機構の複雑化を抑制し、歯車装置10をより小型化し易くなる。
【0041】
また、ポンプドライブギヤ60の外径を、プラネタリーキャリア25の外径を超えない範囲にしている。この構成によれば、ポンプドライブギヤ60の影響による歯車装置10の大径化を抑制しながら、ポンプドライブギヤ60の外径を、プラネタリーキャリア25の外径を超えない範囲で調整でき、設計自由度の向上に有利となる。
【0042】
また、基盤部25Bを回転自在に支持する第1の軸受部材として機能する軸受42Lを有し、オイルポンプ50が、軸受42Lの径方向外側に位置する。この構成によれば、オイルポンプ50と軸受42Lとが軸方向に並んで歯車装置10が軸方向に大型化する事態を回避しながら、軸受42Lの径方向外側のスペースを、オイルポンプ50の配置スペースに有効利用できる。
【0043】
また、オイルポンプ50は、軸受42Lの径方向外側、かつ、サンギヤ21を基準としたリングギヤ23の最外周部よりも径方向内側の位置に配置され、軸方向視で、プラネタリーキャリア25の最外周位置と重なる位置に配置される。これにより、オイルポンプ50は、軸受42L、プラネタリーキャリア25、及びリングギヤ23で囲まれる領域に配置され、かつ、軸方向視で、プラネタリーキャリア25の最外周位置と重なる。この構成によれば、オイルポンプ50、軸受42L、プラネタリーキャリア25、及びリングギヤ23をコンパクトに配置でき、全体の小型化に有利となる。
【0044】
また、ギヤケーシング30は、駆動源となるモーター2Mと一体化される第1ケーシング31と、第1ケーシング31に連結される第2ケーシング32とを含む分割構造を有し、オイルポンプ50につながるオイル通路の少なくとも一部(オイル通路32X、33X)は、第1ケーシング31と第2ケーシング32とに跨がって形成されている。この構成によれば、モーター2Mと一体化される分割構造のギヤケーシング30を利用してオイル通路を形成でき、小型化に有利であり、かつ、オイルを抜くことなく、歯車装置10とモーター2Mとを分離することが可能であり、メンテナンス性の向上に有利である。
【0045】
また、第1ケーシング31と第2ケーシング32とによって、オイルポンプ50のポンプ軸51を回転自在に支持している。この構成によれば、分割構造のギヤケーシング30を利用してポンプ軸51を支持するので、ポンプ軸51の支持構造を簡易かつコンパクトにし易くなり、歯車装置10の小型化に有利となる。
【0046】
また、オイルポンプ50の吐出口となる複数のオイル吐出口72A,72Bと、各オイル吐出口72A,72Bのそれぞれにつながるオイル通路(オイル吐出通路74A,74B、オイル通路32X,33X,25Y1,25Y2)とが設けられる。この構成によれば、単一のオイルポンプ50から複数の箇所に吐出圧の高いオイルを供給し易くなり、多くの箇所を適切に潤滑し易くなる。
【0047】
また、歯車装置10が有する全ての回転軸が鉛直方向に沿う向きとされ、ギヤケーシング30の下部に溜まるオイルにオイルポンプ50が浸かる構成である。この構成によれば、オイルポンプ50を備えつつ上下方向にコンパクトな歯車装置10を提供でき、かつ、途切れることがない確実なオイル供給をし易くなる。
しかも、この歯車装置10は、垂直離着陸用のローター2と、駆動源となるモーター2Mとの間の動力伝達機構を構成するので、航空機1の機体の前面投影面積を低減し、飛行時の空気抵抗を低減し易くなる。
【0048】
本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明を、図1に示す航空機1に使用する歯車装置10に適用する場合を説明したが、これに限定されず、他の航空機、及び、航空機以外の移動体(車両、鞍乗り型車両、船舶)等に使用する歯車装置に適用してもよい。また、歯車装置10が有する全ての回転軸が鉛直方向に沿う向きとされる場合を例示したが、鉛直方向に限定しなくてもよいし、一部の回転軸を異なる方向に沿う向きにしてもよい。さらに、オイルポンプ50を駆動する伝達部を、ポンプドライブギヤ60及びポンプドリブンギヤ52からなる歯車機構で構成する場合を説明したが、この構成に限定しなくてもよい。例えば、オイルポンプ50を駆動する伝達部を、歯車機構以外の動力伝達機構で構成してもよい。
【0049】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0050】
(構成1)ケーシング内にサンギヤと、該サンギヤの外周で前記サンギヤに噛み合う複数のプラネタリーギヤと、該プラネタリーギヤの外周で前記プラネタリーギヤに噛み合うリングギヤと、を備える遊星歯車伝達装置において、前記リングギヤが前記ケーシングに相対回転不能に固定されると共に、前記プラネタリーギヤを軸支するプラネタリーキャリアが、前記サンギヤを中心として前記ケーシングに相対回転可能に支持され、前記ケーシング内に潤滑油となるオイルを圧送するオイルポンプが、前記サンギヤに対してオフセットした位置に配置され、前記プラネタリーキャリアには、前記オイルポンプを駆動する伝達部が設けられた遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、オイルポンプがサンギヤに対してオフセットした位置に配置されるので、オイルポンプとサンギヤとを別軸で配置しながら、プラネタリーキャリアに設けた伝達部によって容易にオイルポンプを駆動できる。また、伝達部がオイルポンプのみを駆動することによって、伝達部の軸方向の厚さを抑え易くなる。これらにより、オイルポンプとサンギヤとを同軸で配置することを避けると共に伝達部を軸方向に短縮し易くなり、オイルポンプを備える小型化の遊星歯車伝達装置を提供できる。
【0051】
(構成2)前記オイルポンプがトロコイド式であり、前記伝達部が、前記オイルポンプのポンプ軸に設けられたドリブンギヤに噛み合うドライブギヤである構成1に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、簡易な伝達機構でトロコイド式のオイルポンプを駆動するでき、構造の複雑化や部品点数の増大を抑制し、遊星歯車伝達装置をより小型化し易くなる。
【0052】
(構成3)前記プラネタリーキャリアは、前記プラネタリーギヤを挟んで反対側に基盤部を備え、前記基盤部におけるプラネタリーギヤの反対側に、前記ドライブギヤが固定される構成1又は2に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、基盤部を基準にして、プラネタリーギヤによる動力伝達経路と、オイルポンプへの動力伝達経路とを振り分けたレイアウトにでき、動力伝達機構の複雑化を抑制し、遊星歯車伝達装置をより小型化し易くなる。
【0053】
(構成4)前記ドライブギヤの外径を、前記プラネタリーキャリアの外径を超えない範囲にした構成1から3のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、ポンプドライブギヤの影響による遊星歯車伝達装置の大径化を抑制しながら、ポンプドライブギヤの外径を、プラネタリーキャリアの外径を超えない範囲で調整でき、設計自由度の向上に有利となる。
【0054】
(構成5)前記基盤部を回転自在に支持する第1の軸受部材を有し、前記オイルポンプが、前記第1の軸受部材の径方向外側に位置する構成3又は4に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、オイルポンプと第1の軸受部材とが軸方向に並んで遊星歯車伝達装置が軸方向に大型化する事態を回避しながら、第1の軸受の径方向外側のスペースを、オイルポンプの配置スペースに有効利用できる。
【0055】
(構成6)前記オイルポンプが、前記第1の軸受部材、前記プラネタリーキャリア、及び前記リングギヤで囲まれる領域に配置され、かつ、軸方向視で、前記プラネタリーキャリアの最外周位置と重なる構成5に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、オイルポンプ、第1の軸受部材、プラネタリーキャリア、及びリングギヤをコンパクトに配置でき、遊星歯車伝達装置をより小型化し易くなる。
【0056】
(構成7)前記ケーシングは、駆動源と一体化される第1ケーシングと、前記第1ケーシングに連結される第2ケーシングとを含む分割構造を有し、前記オイルポンプにつながるオイル通路が、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとに跨がって形成される構成1から6のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、駆動源と一体化される分割構造のケーシングを利用してオイル通路を形成でき、小型化に有利であり、かつ、オイルを抜くことなく、遊星歯車伝達装置と駆動源とを分離することが可能であり、メンテナンス性の向上に有利である。
【0057】
(構成8)前記ケーシングは、駆動源と一体化される第1ケーシングと、前記第1ケーシングに連結される第2ケーシングとを含む分割構造を有し、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとによって、前記オイルポンプのポンプ軸を回転自在に支持する構成1から7のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、分割構造のケーシングを利用してポンプ軸を支持するので、ポンプ軸の支持構造を簡易かつコンパクトにし易くなり、遊星歯車伝達装置をより小型化し易くなる。
【0058】
(構成9)前記オイルポンプの吐出口となる複数のオイル吐出口と、各オイル吐出口のそれぞれにつながるオイル通路とが設けられる構成1から8のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、オイルポンプから複数の箇所に吐出圧の高いオイルを供給し易くなり、多くの箇所を適切に潤滑し易くなる。
【0059】
(構成10)当該遊星歯車伝達装置の回転軸が鉛直方向に沿う向きとされ、前記ケーシングの下部に溜まるオイルに前記オイルポンプが浸かる構成である構成1から9のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、オイルポンプを備えつつ、上下方向にコンパクトな歯遊星歯車伝達装置を提供し易くなり、かつ、途切れることがない確実なオイル供給をし易くなる。
【0060】
(構成11)当該遊星歯車伝達装置は、航空機が有する垂直離着陸用のローターと、前記ローターの駆動源との間の動力伝達機構を構成する構成1から10のいずれか一項に記載の遊星歯車伝達装置。
この構成によれば、航空機の機体の前面投影面積を低減し、飛行時の空気抵抗を低減し易くなる。
【符号の説明】
【0061】
1…航空機、2…ローター、2M…モーター(駆動源)、10…遊星歯車伝達装置、11…入力軸、12…出力軸、20…遊星歯車機構、21…サンギヤ、22…プラネタリーギヤ、23…リングギヤ、25…プラネタリーキャリア、25B…基盤部、25Y1…第1のオイル通路、25Y2…第2のオイル通路、30…ケーシング(ギヤケーシング)、31…第1ケーシング、32…第2ケーシング、32X,32Y,33X…オイル通路、41…ケーシング(モーターケーシング)、42L…軸受(第1の軸受部材)、42U…軸受(第2の軸受部材)、50…オイルポンプ、51…ポンプ軸、52…ポンプドリブンギヤ、53…圧送部、60…ポンプドライブギヤ(伝達部)、72A,72B…オイル吐出口、74A,74B…オイル吐出通路、C1…中心軸。
図1
図2
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図10