(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058268
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】分類方法および分類装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20240418BHJP
【FI】
G06Q30/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165525
(22)【出願日】2022-10-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://www.j-mac.or.jp/poster/dtl.php?ps_id=331、令和4年9月15日 〔刊行物等〕 日本マーケティング学会 第11回マーケティングカンファレンス2022、令和4年10月16日 〔刊行物等〕 https://conference.wdc-jp.com/bms/2022/、令和4年7月11日 〔刊行物等〕 日本行動計量学会第50回大会、令和4年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(71)【出願人】
【識別番号】522404214
【氏名又は名称】コペンハーゲンビジネススクール
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】中林 宏美
(72)【発明者】
【氏名】小竹山 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】加納 史子
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB02
5L049BB02
(57)【要約】
【課題】価値観が多様化する消費者を、精度よく分類すること。
【解決手段】本発明は、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタに分類する第1分類ステップと、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタに分類する第2分類ステップと、を含む、分類方法を提供する。前記価値観クラスタには、文化的価値観に関する文化的価値観クラスタと、美容もしくは健康またはその両方についての個人的な観点に関する個人観点価値観クラスタと、が含まれてよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタに分類する第1分類ステップと、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタに分類する第2分類ステップと、を含む、分類方法。
【請求項2】
前記価値観クラスタには、
文化的価値観に関する文化的価値観クラスタと、
美容もしくは健康またはその両方についての個人的な観点に関する個人観点価値観クラスタと、が含まれる、
請求項1に記載の分類方法。
【請求項3】
前記観点には、自己基点観点と、他者基点観点と、が含まれる、
請求項2に記載の分類方法。
【請求項4】
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタのそれぞれは、アンケートの回答データに基づいて分類される、
請求項2または3に記載の分類方法。
【請求項5】
前記第1分類ステップは、
前記回答データを因子分析してスコアを取得する因子分析ステップと、
前記スコアをクラスタリングするクラスタリングステップと、を含む、
請求項4に記載の分類方法。
【請求項6】
前記クラスタリングステップにおいて、k-means法を用いてクラスタリングする、
請求項5に記載の分類方法。
【請求項7】
前記第1分類ステップは、
前記クラスタリングステップの後に、
前記文化的価値観クラスタおよび前記個人観点価値観クラスタの交差解析により、消費者のペルソナ像を推定する第1推定ステップをさらに含む、
請求項5に記載の分類方法。
【請求項8】
前記第2分類ステップの後に、
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタを互いに関連付けることにより、消費者のペルソナ像の意識・行動を推定する第2推定ステップをさらに含む、
請求項2または3に記載の分類方法。
【請求項9】
前記第2推定ステップにおいて、
前記文化的価値観クラスタおよび前記個人観点価値観クラスタの交差点に対する前記意識・行動クラスタの割合に基づいて、前記ペルソナ像の意識・行動を推定する、
請求項8に記載の分類方法。
【請求項10】
前記アンケートにおいて、前記価値観に関する質問項目はリッカート尺度の回答形式を含み、前記意識・行動に関する質問項目はマルチプルアンサーの回答形式を含む、
請求項4に記載の分類方法。
【請求項11】
前記意識・行動に関する質問項目は、意識および行動の両面を評価できる質問項目を含む、
請求項10に記載の分類方法。
【請求項12】
前記第2分類ステップは、確率的ブロックモデルを用いてクラスタリングする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の分類方法。
【請求項13】
前記確率的ブロックモデルは、無限関係モデルである、
請求項12に記載の分類方法。
【請求項14】
前記第2推定ステップの後に、
消費者に対する訴求要素を提供する提供ステップをさらに含む、
請求項8に記載の分類方法。
【請求項15】
前記提供ステップの後に、
価値観に関する情報を取得する取得ステップをさらに含む、
請求項14に記載の分類方法。
【請求項16】
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタと、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタと、を互いに関連付けて記録しているデータベースを備えている、分類装置。
【請求項17】
前記データベースは、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関するアンケートの回答データをさらに記録し、前記回答データ、前記価値観クラスタ、および前記意識・行動クラスタを互いに関連付けて記録している、
請求項16に記載の分類装置。
【請求項18】
前記価値観クラスタに関するデータを取得および蓄積する取得蓄積部をさらに備えている、
請求項16または17に記載の分類装置。
【請求項19】
前記回答データに基づいて、前記価値観クラスタを導出する導出部をさらに備えている、
請求項17に記載の分類装置。
【請求項20】
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタに基づいて、ペルソナ像を推定する推定部をさらに備えている、
請求項16または17に記載の分類装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分類方法および分類装置に関する。
【背景技術】
【0002】
美容もしくは健康またはその両方の分野において、消費者の商品やサービスに求める付加価値は多様化および細分化している。そのため、世界の消費者のニーズを満たす商品開発や、マーケティング戦略の立案が困難になりつつある。
【0003】
そこで、消費者が持つ価値観に基づいて商品およびサービスなどを選択する傾向にあることを活用し、この価値観に基づいて消費者をクラスタに分類するマーケティング手法が提案されている。
【0004】
たとえば特許文献1では、「消費者を分類する価値観クラスタを複数生成するクラスタ生成部を備える価値観クラスタ生成装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されている技術は、明細書の段落0020などに記載されているとおり、消費者の購買行動または意識に関する情報に基づいて、価値観を特定している。つまり、この技術は、消費者の表層心理に顕在する行動に基づいて、消費者の価値観を特定している。
【0007】
しかし、近年、市場の国際化に伴い、消費者の価値観が多様化している。そのため、消費者の表層心理に顕在する行動に基づいて、消費者をクラスタに分類することが困難になっている。
【0008】
そこで、発明者らは、消費者の深層心理に潜在する価値観が、消費者のクラスタ分類に有効であることに着目し、本発明を完成させた。本発明は、価値観が多様化する消費者を、精度よく分類する分類方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタに分類する第1分類ステップと、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタに分類する第2分類ステップと、を含む、分類方法を提供する。
前記価値観クラスタには、
文化的価値観に関する文化的価値観クラスタと、
美容もしくは健康またはその両方についての個人的な観点に関する個人観点価値観クラスタと、が含まれてよい。
前記観点には、自己基点観点と、他者基点観点と、が含まれてよい。
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタのそれぞれは、アンケートの回答データに基づいて分類されてよい。
前記第1分類ステップは、
前記回答データを因子分析してスコアを取得する因子分析ステップと、
前記スコアをクラスタリングするクラスタリングステップと、を含んでよい。
前記クラスタリングステップにおいて、k-means法を用いてクラスタリングしてよい。
前記第1分類ステップは、
前記クラスタリングステップの後に、
前記文化的価値観クラスタおよび前記個人観点価値観クラスタの交差解析により、消費者のペルソナ像を推定する第1推定ステップをさらに含んでよい。
前記分類方法は、前記第2分類ステップの後に、
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタを互いに関連付けることにより、消費者のペルソナ像の意識・行動を推定する第2推定ステップをさらに含んでよい。
前記第2推定ステップにおいて、
前記文化的価値観クラスタおよび前記個人観点価値観クラスタの交差点に対する前記意識・行動クラスタの割合に基づいて、前記ペルソナ像の意識・行動を推定してよい。
前記アンケートにおいて、前記価値観に関する質問項目はリッカート尺度の回答形式を含み、前記意識・行動に関する質問項目はマルチプルアンサーの回答形式を含んでよい。
前記意識・行動に関する質問項目は、意識および行動の両面を評価できる質問項目を含んでよい。
前記第2分類ステップは、確率的ブロックモデルを用いてクラスタリングしてよい。
前記確率的ブロックモデルは、無限関係モデルであってよい。
前記分類方法は、前記第2推定ステップの後に、
消費者に対する訴求要素を提供する提供ステップをさらに含んでよい。
前記分類方法は、前記提供ステップの後に、
価値観に関する情報を取得する取得ステップをさらに含んでよい。
また、本発明は、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタと、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタと、を互いに関連付けて記録しているデータベースを備えている、分類装置を提供する。
前記データベースは、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関するアンケートの回答データをさらに記録し、前記回答データ、前記価値観クラスタ、および前記意識・行動クラスタを互いに関連付けて記録していてよい。
前記分類装置は、前記価値観クラスタに関するデータを取得および蓄積する取得蓄積部をさらに備えていてよい。
前記分類装置は、前記回答データに基づいて、前記価値観クラスタを導出する導出部をさらに備えていてよい。
前記分類装置は、前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタに基づいて、ペルソナ像を推定する推定部をさらに備えていてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、価値観が多様化する消費者を、精度よく分類できる。なお、本発明の効果は、ここに記載されている効果に限定されず、本明細書内に記載されているいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】消費者の意識・行動クラスタに関するアンケートの一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る第1分類ステップS1の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る第1分類ステップS1の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示す図である。
【
図6】消費者の意識・行動因子に関するクラスタリング結果の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すイメージ図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る分類方法が利用するコンピュータ50の構成例を示すブロック図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すイメージ図である。
【
図11】本技術の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本技術の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の一実施形態に係る分類装置100の構成例を示すブロック図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る分類装置100の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が限定されることはない。また、本技術は、下記の実施例およびその変形例のいずれかを組み合わせることができる。
【0013】
以下の実施形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った用語で構成を説明することがある。たとえば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、完全に平行な状態からたとえば数%程度ずれた状態を含むことも意味する。他の「略」を伴った用語についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0014】
特に断りがない限り、図面において、「上」とは図中の上方向または上側を意味し、「下」とは、図中の下方向または下側を意味し、「左」とは図中の左方向または左側を意味し、「右」とは図中の右方向または右側を意味する。また、図面については、同一または同等の要素または部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態(分類方法の例1)
(1)概要
(2)アンケート
(3)価値観クラスタ
(4)意識・行動クラスタ
(5)クラスタの関連付け
(6)ハードウェア構成
2.第2の実施形態(分類方法の例2)
3.第3の実施形態(分類方法の例3)
4.第4の実施形態(分類方法の例4)
5.第5の実施形態(分類装置の例1)
6.第6の実施形態(分類装置の例2)
【0016】
<1.第1実施形態(分類方法の例1)>
<(1)概要>
従来、消費者の表層心理に顕在する意識または行動に基づいて、消費者をクラスタに分類するマーケティング手法が行われている。たとえば、国または地域、性別、年齢などの属性情報や表層意識および購買等の行動情報などのデータが、マーケティング手法に用いられている。
【0017】
しかし、近年、市場の国際化に伴い、消費者の価値観が多様化している。そのため、上記のような表層的なデータのみを用いて消費者をクラスタに分類することが困難になっている。
【0018】
そこで、発明者らは、消費者の深層心理に潜在する価値観が、消費者のクラスタ分類に有効であることに着目し、本発明を完成させた。本発明は、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタに分類する第1分類ステップと、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタに分類する第2分類ステップと、を含む、分類方法を提供する。
【0019】
このことについて
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る分類方法は、第1分類ステップS1と、第2分類ステップS2と、を含む。
【0020】
第1分類ステップS1にて、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタに分類する。これにより、たとえば、国または地域、性別、年齢などの属性情報や表層意識および購買等の行動情報などの表層的なデータにとらわれることなく、消費者の深層心理に潜在する価値観に基づき精度よく消費者を分類できる。
【0021】
この価値観クラスタには、文化的価値観に関する文化的価値観クラスタと、美容もしくは健康またはその両方についての個人的な観点に関する個人観点価値観クラスタと、が含まれていることが好ましい。
【0022】
文化的価値観は、個人が幸せに生きる上で大切と考える、個人の深層心理に潜在する価値観である。文化的価値観は、個人が属する文化および環境などを反映し、望ましい個人の在り方を示す先行要因となりうる。文化的価値観の一例として、消費、経済、調和、自立、承認、愉楽、健診、環境、および平和などに関する価値観が挙げられる。
【0023】
一方で、個人観点価値観は、ある特定の分野における、個人の深層心理に潜在する価値観である。個人観点価値観は、特定の分野において、望ましい個人の在り方を示す先行要因となりうる。この特定の分野は、たとえば美容もしくは健康またはその両方でありうるが、それ以外の分野であってもよい。美容もしくは健康またはその両方についての個人観点価値観の対象の一例として、美容、ファッション、ライフスタイル、健康、フード、および消費などに関する価値観が挙げられる。特に、美容に関する価値観の一例として、外見、協調、挑戦、他者評価、および多様性などに関する価値観が挙げられる。
【0024】
この基本価値観を応用した文化的価値観と、個人観点価値観と、のそれぞれを指標として消費者をクラスタリングすることにより、表層的なデータのみに基づいてクラスタリングする場合に比べて、消費者のペルソナ像を精度よく推定できる。
【0025】
図1の説明に戻る。次に、第2分類ステップS2にて、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタに分類する。意識・行動クラスタは、意識・行動因子に基づいて分類されることができる。意識・行動因子は、特定の分野において、個人の表層心理にある顕在的な意識もしくは行動またはその両方の先行要因である。意識・行動因子は、特定の分野において、個人の意識と行動実態を説明できる。
【0026】
この特定の分野は、たとえば美容もしくは健康またはその両方でありうるが、それ以外の分野であってもよい。たとえば、美容に関する意識の一例として、美容における基本思想、サステナビリティ、ウェルビーイング、製品の機能および成分、ブランド、デジタル、プロモーション、デザイン、ファッション、所有、消費などに関する意識が挙げられる。
【0027】
本発明によれば、第1分類ステップS1において価値観クラスタに分類することで消費者のペルソナ像をある程度特定する。次に、第2分類ステップS2において、どのような意識をしてどのような行動をしているかを示す意識・行動クラスタを分類する。これらのクラスタを関連付けることにより、消費者のペルソナ像を精度よく推定できる。
【0028】
なお、従来のように、購買履歴データなど表層的なデータのみを用いて消費者のペルソナ像を推定する場合、数万人規模のビッグデータの解析が必要であった。一方、本技術のように潜在する価値観により消費者のペルソナ像を推定する場合、たとえば数百人規模のスモールデータの解析により消費者のペルソナ像を推定できる。
【0029】
<(2)アンケート>
分類方法の一例について具体的に説明する。価値観クラスタおよび意識・行動クラスタのそれぞれは、たとえば、アンケートの回答データに基づいて分類されることができる。消費者の潜在する価値観に関するアンケートの回答データに基づいて、価値観クラスタに分類できる。消費者の顕在する意識・行動因子に関するアンケートの回答データに基づいて、意識行動クラスタに分類できる。
【0030】
アンケートの質問形式は、「はい」または「いいえ」を選択して回答する回答形式と、数値(たとえば、1~7)で段階的に回答するリッカート尺度の回答形式と、を含んでよい。数値で段階的に回答する回答形式については、数値に応じて回答データに重みづけをしてもよい。なお、アンケートは、「はい」または「いいえ」を選択して回答する回答形式のみでもよく、数値で段階的に回答する回答形式のみでもよい。
【0031】
価値観クラスタについて、特には、文化的価値観に関するアンケートの回答データに基づいて、文化的価値観クラスタに分類できる。個人観点価値観に関するアンケートの回答データに基づいて、個人観点価値観クラスタに分類できる。
【0032】
文化的価値観に関するアンケートとして、世界的に標準化されている基本価値観に関するアンケートを用いることができる。
【0033】
特に、このアンケートにおいて、価値観に関する質問項目はリッカート尺度の回答形式を含んでいることが好ましい。リッカート尺度の回答形式を採用することで、各価値観の強度を同時に測定することも可能となり、より精緻な価値観クラスタの作成に適している。
【0034】
また、意識・行動に関する質問項目はマルチプルアンサーの回答形式を含むことが好ましい。マルチプルアンサーの回答形式とは、一つの質問に対して、複数の選択項目の中から一つまたは複数の項目を選択する質問形式である。これにより、選択項目が類似している消費者同士を同じ意識・行動クラスタにクラスタリングすることができる。マルチプルアンサーの回答形式は、特に意識・行動が多様化および細分化するグローバル社会において、意識・行動クラスタを作成するのに適している。
【0035】
さらに、意識・行動に関する質問項目は、意識および行動の両面を評価できる質問項目を含むことが好ましい。これにより、深層心理である価値観と、表層する意識と行動の3項目を測定し関連づけることができる。その結果、人の深層心理から思考・行動までの一連のプロセスを包括的に把握および理解することを可能とする。
【0036】
アンケートの一例について
図2を参照しつつ説明する。
図2は、消費者の意識・行動クラスタに関するアンケートの一例を示す図である。
図2に示されるとおり、この意識・行動に関する質問項目はマルチプルアンサーの回答形式を含んでいる。また、質問項目は、Sustainabilityなどのカテゴリーごとに、意識(Consciousness)および行動(Action)の両面を評価できる質問項目を含んでいる。
【0037】
回答者(消費者)は、これらの選択項目の中から、自分にとって価値が高い一つまたは複数の項目を選択する。これにより、たとえば「Protect environment」と「Carbon-Neutral」の両者を選択する回答者が多い傾向にあるとき、この複数の回答者を同じ意識・行動クラスタに分類できる。
【0038】
<(3)価値観クラスタ>
図1に示される第1分類ステップS1の一例について、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る第1分類ステップS1の一例を示すフローチャートである。
図3に示されるとおり、第1分類ステップS1は、回答データを因子分析してスコアを取得する因子分析ステップS11と、スコアをクラスタリングするクラスタリングステップS12と、を含む。
【0039】
因子分析ステップS11にて用いる因子分析の一例として、検証的因子分析(CFA:Confirmatory Factor Analysis)または探索的因子分析(EFA:Exploratory Factor Analysis)などを用いることが好ましい。
【0040】
クラスタリングステップS12にて用いるクラスタリングの一例として、ウォード法、最短距離法、最長距離法、群平均法、センドロイド法、重み付き平均法、メジアン法、混合ガウスモデル(GMM:Gaussian Mixture Model)、またはk-means法などを用いることができる。特に、混合ガウスモデル(GMM)またはk-means法を用いることが好ましく、k-means法を用いることがより好ましい。
【0041】
なお、このクラスタリングには、機械学習(教師なし学習)によるクラスタリング手法が用いられることができる。機械学習とは、あるデータの中から一定の規則を発見し、その規則に基づいて未知のデータに対する推測や予測などを実現する学習手法の一つである。機械学習については公知の技術が用いられることができる。
【0042】
まず、因子分析ステップS11にて、文化的価値観に関するアンケートの回答データを因子分析してスコアを取得する。この因子分析には、検証的因子分析(CFA)と探索的因子分析(EFA)を組み合わせたMultiGroup CFAにて分析することが好ましい。
【0043】
次に、クラスタリングステップS12にて、このスコアをクラスタリングして、文化的価値観クラスタに分類する。
【0044】
同様に、因子分析ステップS11にて、個人観点価値観に関するアンケートの回答データを因子分析してスコアを取得する。この因子分析には、検証的因子分析(CFA)と探索的因子分析(EFA)を組み合わせたMultiGroup CFAにて分析するが好ましい。
【0045】
次に、クラスタリングステップS12にて、このスコアをクラスタリングして、個人観点価値観クラスタに分類する。
【0046】
この文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観の交差解析により、消費者のペルソナ像(価値観クラスタ)を推定できる。したがって、第1分類ステップS1は、クラスタリングステップS12の後に、文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタの交差解析により、消費者のペルソナ像を推定する第1推定ステップをさらに含むことが好ましい。
【0047】
このことについて
図4を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る第1分類ステップS1の一例を示すフローチャートである。
図4に示されるとおり、第1分類ステップS1は、クラスタリングステップS12の後に、第1推定ステップS13をさらに含んでいる。
【0048】
第1推定ステップS13では、文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタの交差解析を行う。これにより、文化的な価値観と個人の観点における価値観の両者の性質を併せ持つペルソナ像を特定できる。
【0049】
このことについて5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示す図である。横軸は、文化的価値観クラスタの識別番号を示す。縦軸は、個人観点価値観クラスタの識別番号を示す。
図5に示されるとおり、文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタの交差解析が行われている。
【0050】
たとえば、横軸の識別番号が「A0」である文化的価値観クラスタと、縦軸の識別番号が「B7」である個人観点価値観クラスタと、の交差点に位置する価値観クラスタ(ペルソナ像)が特に多いことがわかる。
【0051】
個人観点価値観クラスタについて、その観点には、自己基点観点と、他者基点観点と、が含まれていてよい。自己基点観点は、自己を基点とする観点である。他者基点観点は、他者を基点とする観点である。
【0052】
自己基点観点の一例として、「外見および体面の重要視」「多様性」「刺激および挑戦」などの観点が挙げられる。「外見および体面の重視」の観点は、内面より外見を重要視しているという観点である。「多様性」の観点は、それぞれの人の容姿の違いを認めて、自己の美しさを大切にするという観点である。「刺激および挑戦」の観点は、美しくなる努力、新しい美容、刺激的な美容体験などを望むという観点である。個人観点価値観に関するアンケートの回答データを因子分析することにより、この3つの自己基点観点が特に重要であることが特定できた。
【0053】
一方、他者基点観点の一例として、「周囲からの評価」「協調」などの観点が挙げられる。「周囲からの評価」の観点は、他者からの賞賛、他者からの見られ方を重要視するという観点である。「協調」の観点は、周囲および情報に影響されやすいという観点である。個人観点価値観に関するアンケートの回答データを因子分析することにより、この2つの他者基点観点が特に重要であることが特定できた。
【0054】
図5に示されるように、文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタを互いに掛け合わせることにより、特定の人の価値観が、自己基点観点および他者基点観点のいずれをより重要視しているかを特定できる。つまり、消費者のペルソナ像を特定できる。
【0055】
なお、この消費者のペルソナ像を特定するために、文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタのほかのクラスタ(因子)が掛け合わされてもよい。後述する他の実施形態についても同様である。
【0056】
<(4)意識・行動クラスタ>
図1に示される第2分類ステップS2は、行列データに対して行と列のそれぞれでクラスタリングする共クラスタリングを用いてクラスタリングすることが好ましい。特に、確率的ブロックモデル(SBM:Stochastic Block Model)を用いてクラスタリングすることが好ましく、さらには確率的ブロックモデル(SBM)に包括される無限関係モデル(Infinite Relational Model)を用いてクラスタリングすることがより好ましい。
【0057】
第2分類ステップS2では、1つの回答データから2つ以上の解釈性を得ることができる。たとえば、アンケートの選択項目に基づいて回答データをクラスタリングした第1意識・行動クラスタに分類できる。あわせて、回答者クラスタに基づいて回答データをクラスタリングした第2意識・行動クラスタに分類できる。
【0058】
意識・行動クラスタの一例について
図6を参照しつつ説明する。
図6は、消費者の意識・行動因子に関するクラスタリング結果の一例を示す図である。縦に並ぶ項目において、アンケートの選択項目に基づいて回答データをクラスタリングした結果が、キーワードの分類結果にて示されている。選択項目をクラスタリングすることにより、解釈性の高いキーワードを作成することができ、さらにキーワードが類似するものでキーワード分類カテゴリーを作成することができる。このように本発明によれば、世界の回答者の関心のもつキーワード特性を明確に表現できる。
【0059】
また、
図6において、横に並ぶ項目は回答者クラスタを示す。たとえば、
図2に示されるアンケートにおいて、選択項目が類似している複数の回答者が同じ回答者クラスタに分類される。横に並ぶ項目と縦に並ぶ項目が交差する部分の色が濃いほど、回答者はそのキーワードを重要視していることを示している。たとえば、回答者クラスタ「kj-13」は、「人生への自信」「プラスチック容器低減」などを特に重要視していることがわかる。
【0060】
<(5)クラスタの関連付け>
文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタが互いに掛け合わされた価値観クラスタと、意識・行動クラスタと、を互いに関連付けることにより、消費者のペルソナ像の意識・行動を推定できる。このことについて
図7を参照しつつ説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る分類方法は、第2分類ステップS2の後に、価値観クラスタおよび意識・行動クラスタを互いに関連付けることにより、消費者のペルソナ像の意識・行動を推定する第2推定ステップS3をさらに含むことが好ましい。これにより、第1推定ステップS13(
図4参照)において推定されたペルソナ像の意識もしくは行動またはその両方を推定できる。つまり、ペルソナ像を精度よく推定できる。たとえば、「特定の価値観を持つ消費者ペルソナ像は、特定の意識および行動をする傾向にある」ということが推定できる。
【0061】
このことについて、さらに
図8を参照しつつ説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すイメージ図である。
図8に示される例では、識別番号が「A1」である文化的価値観クラスタと、識別番号が「B2」である個人観点価値観クラスタと、が互いに掛け合わされた価値観クラスタ(ペルソナ像)Cが示されている。
【0062】
この価値観クラスタCは、意識・行動クラスタDに関連付けられている。この意識・行動クラスタDに属する消費者は、たとえば、思想については、自己表現、健康、ウェルビーイングを重要視している。また、サステナビリティについては、成分および容器を重要視している。また、消費については、人としての最低限のサステナビリティ消費は意識しており、美容へのこだわりは強くなく、周囲の人と協調する美容を意識している。
【0063】
価値観クラスタおよび意識・行動クラスタの関連付けには、機械学習が用いられることができる。機械学習の機能を備えたコンピュータ及び学習モデルなどを用いることにより実現できる。学習モデルは、たとえば、価値観クラスタおよび意識・行動クラスタを互いに関連付けて機械学習することができる。
【0064】
機械学習の手法は特に限定されないが、例えば、ID3やランダムフォレストなどの決定木学習、相関ルール学習などが用いられてよい。あるいは、人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)、ディープニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)など、各種のニューラルネットワークが用いられてよい。あるいは、遺伝的プログラミング(GP:Genetic Programming)、帰納論理プログラミング(ILP:Inductive Logic Programming)、ファジィアルゴリズム、進化的アルゴリズム(EA:Evolutionary Algorithm)、強化学習(Reinforcement Learning)、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、クラスタリング(Clustering)、ベイジアンネットワーク(Bayesian Network)などが用いられてよい。さらには、これらの手法を組み合わせたものや、これらを深層学習(Deep Learning)の技術を用いて発展させたものであってもよい。
【0065】
本発明によれば、たとえば、美容もしくは健康またはその両方に関する消費者マップを生成できる。
【0066】
あるいは、本発明によれば、購買履歴データなど、消費者の行動の特定が可能なデータへの接続が可能となる。また、価値観による消費者の理解、および、価値観に関するマーケティングが可能となる。
【0067】
あるいは、本発明によれば、価値観の推移を分析することにより、消費者の美容や商品に対する付加価値について予測できる。
【0068】
<(6)ハードウェア構成>
本発明の一実施形態に係る分類方法が利用するコンピュータのハードウェア構成について
図9を参照しつつ説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る分類方法が利用するコンピュータ50の構成例を示すブロック図である。
図9に示されるとおり、コンピュータ50は、構成要素として、演算部101、ストレージ102、メモリ103、および表示部104を備えていてよい。それぞれの構成要素は、たとえばデータの伝送路としてのバスで接続されていてよい。
【0069】
演算部101は、たとえばCPU、GPUなどで構成される。演算部101は、コンピュータ50が備えているそれぞれの構成要素を制御する。本発明を実現するプログラムを演算部101が読み込むことによりコンピュータ50が機能する。
【0070】
ストレージ102は、演算部101が使用するプログラム、演算パラメータなどの制御用データ、およびアンケートの回答データなどを記憶する。ストレージ102は、たとえばHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などで構成される。
【0071】
メモリ103は、たとえば演算部101により実行されるプログラムなどを一時的に記憶する。メモリ103は、たとえばRAM(Random Access Memory)などを利用することにより実現される。
【0072】
表示部104は、情報を表示する。表示部104は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)またはOLED(Organic Light-Emitting Diode)等により実現される。
【0073】
図示を省略するが、コンピュータ50は、通信インタフェースを備えていてもよい。この通信インタフェースは、たとえばWi-Fi、Bluetooth(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)などの通信技術を利用して、情報通信ネットワークを介して通信する機能を有する。たとえば、演算部101は、この通信インタフェースを介して得られたデータに基づいて、消費者のペルソナ像を推定できる。
【0074】
コンピュータ50は、たとえばサーバであってもよいし、スマートフォン端末、タブレット端末、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)、携帯用音楽プレーヤー、携帯用ゲーム機、またはウェアラブル端末(HMD:Head Mounted Display、メガネ型HMD、時計型端末、バンド型端末等)であってもよい。
【0075】
本発明を実現するプログラムは、コンピュータ50のほかのコンピュータ装置またはコンピュータシステムに格納されてもよい。この場合、コンピュータ50は、このプログラムが有する機能を提供するクラウドサービスを利用することができる。このクラウドサービスとして、たとえばSaaS(Software as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)等が挙げられる。
【0076】
さらにこのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(たとえばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(たとえば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(たとえば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、上記プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、および電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線および光ファイバ等の有線通信路、または無線通信路を介して、上記プログラムをコンピュータに供給できる。
【0077】
本発明の第1実施形態に係る分類方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0078】
<2.第2実施形態(分類方法の例2)>
図7に示される第2推定ステップS3において、文化的価値観クラスタおよび個人観点価値観クラスタの交差点に対する意識・行動クラスタの割合に基づいて、ペルソナ像の意識・行動を推定することが好ましい。
【0079】
この交差点は、
図5に示される文化的価値観クラスタとおよび個人観点価値観クラスタの交差点である。この交差点に対する意識・行動クラスタの割合に基づいて、ペルソナ像の意識・行動を推定できる。
【0080】
このことについて
図10を参照しつつ説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る分類方法の一例を示すイメージ図である。
図10に示される例では、識別番号が「A1」である文化的価値観クラスタと、識別番号が「B2」である個人観点価値観クラスタと、が互いに掛け合わされた価値観クラスタCが示されている。
【0081】
この価値観クラスタCは、意識・行動クラスタの割合に基づいて、意識・行動クラスタD1,D2,D3のいずれかに関連付けられる。
【0082】
再び
図8を参照しつつ説明する。第1分類ステップS1により分類された価値観クラスタCと、選択項目に基づいて回答データをクラスタリングした第1意識・行動クラスタE1と、が関連付けられることが好ましい。回答者クラスタに基づいて回答データをクラスタリングした第2意識・行動クラスタE2は、消費者の意識・行動の傾向として、価値観と意識・行動との関連性の把握に用いられることができる。これにより、ある価値観において、どのような意識・行動を持つ消費者がどのくらいの割合で存在するかを把握できる。
【0083】
図10に示されるとおり、たとえば、意識・行動クラスタの割合が45%であるとき、価値観クラスタC、は意識・行動クラスタD1に関連付けられる。この意識・行動クラスタD1に関連付けられる消費者は、文化的価値観が個人観点価値観より高い傾向にありうる。この意識・行動クラスタD1に関連付けられる消費者は、たとえば、思想については、自己表現および自己満足を重要視している。また、サステナビリティについては、成分、容器、倫理を重要視している。また、消費については、リサイクルを意識した購買、および自然保護につながる企業への賛同を重要視している。
【0084】
たとえば、意識・行動クラスタの割合が30%であるとき、価値観クラスタCは、意識・行動クラスタD2に関連付けられる。この意識・行動クラスタD2に関連付けられる消費者は、文化的価値観および個人観点価値観が同等である傾向にありうる。この意識・行動クラスタD2に関連付けられる消費者は、たとえば、思想については、自己表現、健康、ウェルビーイングを重要視している。また、サステナビリティについては、成分および容器を重要視している。また、消費については、人としての最低限のサステナビリティ消費は意識しており、美容へのこだわりは強くなく、周囲の人と協調する美容を意識している。
【0085】
たとえば、意識・行動クラスタの割合が25%であるとき、価値観クラスタCは、意識・行動クラスタD3に関連付けられる。この意識・行動クラスタD3に関連付けられる消費者は、文化的価値観が個人観点価値観より低い傾向にありうる。この意識・行動クラスタD3に関連付けられる消費者は、たとえば、思想については、自己表現、他者に比べた優位性、他者からの見え方を重要視している。また、サステナビリティについては意識していない。また、消費については、世間体を意識してサステナビリティを意識しているように見せかけたり、自己の目的達成のための機能や見た目のデザインを重要視したりしている。
【0086】
本発明の第2実施形態に係る分類方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0087】
<3.第3実施形態(分類方法の例3)>
本技術の一実施形態に係る分類方法は、
図7に示される第2推定ステップS3の後に、消費者に対する訴求要素を提供する提供ステップをさらに含んでいてよい。このことについて
図11を参照しつつ説明する。
図11は、本技術の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
【0088】
図11に示されるとおり、本技術の一実施形態に係る分類方法は、第2推定ステップS3の後に、消費者に対する訴求要素を提供する提供ステップS4をさらに含む。この訴求要素は、たとえば、宣伝、広告、およびSNS(Social networking service)などにおいて、消費者に訴えかけることにより、消費者の購買意欲を促進する要素である。第2推定ステップS3においてペルソナ像の意識・行動を推定できるため、このペルソナ像に特に効果的な訴求要素を提供できる。
【0089】
本発明の第3実施形態に係る分類方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0090】
<4.第4実施形態(分類方法の例4)>
本技術の一実施形態に係る分類方法は、
図11に示される提供ステップS4の後に、価値観に関する情報を取得する取得ステップS5をさらに含んでいてよい。このことについて
図12を参照しつつ説明する。
図12は、本技術の一実施形態に係る分類方法の一例を示すフローチャートである。
【0091】
図12に示されるとおり、本技術の一実施形態に係る分類方法は、提供ステップS4の後に、価値観に関する情報を取得する取得ステップS5をさらに含む。この価値観に関する情報は、たとえば、消費者の購買履歴データなど、消費者の行動の特定が可能な情報でありうる。あるいは、価値観に関する情報は、たとえば、SNSなどのインターネット上の情報でありうる。
【0092】
取得した価値観に関する情報に基づいて、たとえば、価値観クラスタおよび意識・行動クラスタの関連付けを再度行うことができる。これにより、消費者に提供した訴求要素の効果を取り入れることができる。その結果、ペルソナ像の意識・行動を精度よく推定できる。
【0093】
本発明の第4実施形態に係る分類方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0094】
<5.第5実施形態(分類装置の例1)>
本発明は、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタと、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタと、を互いに関連付けて記録しているデータベースを備えている、分類装置を提供する。
【0095】
本発明の一実施形態に係る分類装置の構成例について
図13を参照しつつ説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る分類装置100の構成例を示すブロック図である。
図13に示されるとおり、分類装置100は、演算部10と、データベース20と、制御部30と、を備えている。
【0096】
演算部10は、第1実施形態における第1分類ステップS1および第2分類ステップS2などを行う。演算部10は、たとえばCPU、GPU、およびプログラムなどで構成される。
【0097】
データベース20は、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタと、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタと、を互いに関連付けて記録している。データベース20は、たとえばHDDまたはSSDなどを用いることにより実現できる。
【0098】
データベース20は、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関するアンケートの回答データをさらに記録し、回答データ、価値観クラスタ、および意識・行動クラスタを互いに関連付けて記録していてよい。
【0099】
演算部10は、データベース20に記録されている回答データに基づいて、価値観クラスタを導出する導出部11を備えていてよい。
【0100】
演算部10は、データベース20に記録されている価値観クラスタおよび意識・行動クラスタに基づいて、ペルソナ像を推定する推定部12をさらに備えていてよい。
【0101】
本発明の第5実施形態に係る分類装置について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0102】
<6.第6実施形態(分類装置の例2)>
本発明の一実施形態に係る分類装置100は、価値観クラスタに関するデータを取得および蓄積する取得蓄積部をさらに備えていてよい。このことについて
図14を参照しつつ説明する。
図14は、本発明の一実施形態に係る分類装置100の構成例を示すブロック図である。
図14に示されるとおり、分類装置100は、価値観クラスタに関するデータを取得および蓄積する取得蓄積部40をさらに備えている。
【0103】
この取得蓄積部40は、消費者のクラスタ分類に必要なデータを取得および蓄積する。取得蓄積部40は、たとえば、情報通信ネットワークを介して情報を取得してもよいし、不揮発性メモリを介して情報を取得してもよいし、ユーザのキーボード操作またはタッチパネル操作による情報を受け付けてもよい。
【0104】
たとえば、取得蓄積部40は、購買履歴データなど、消費者の行動の特定が可能な情報を取得できる。あるいは、取得蓄積部40は、SNSなどのインターネット上の情報を取得できる。これにより、たとえば、文化的価値観と個人観点価値観のキーワードをもとに、単語の埋め込みなどの自然言語処理技術を利用して、SNS利用者を分類できる。あるいは、特定の消費者ペルソナ像が、SNSにおいてどのような発言をする傾向にあるかを特定できる。その結果、この消費者ペルソナ像に対する適切なマーケティングが可能となる。
【0105】
あるいは、本発明によれば、価値観の推移を分析することにより、消費者の美容や商品に対する付加価値について予測できる。
【0106】
本発明の第6実施形態に係る分類方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0107】
なお、本発明に係る実施形態は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0108】
また、本発明は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタに分類する第1分類ステップと、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタに分類する第2分類ステップと、を含む、分類方法。
[2]
前記価値観クラスタには、
文化的価値観に関する文化的価値観クラスタと、
美容もしくは健康またはその両方についての個人的な観点に関する個人観点価値観クラスタと、が含まれる、
[1]に記載の分類方法。
[3]
前記観点には、自己基点観点と、他者基点観点と、が含まれる、
[2]に記載の分類方法。
[4]
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタのそれぞれは、アンケートの回答データに基づいて分類される、
[2]または[3]に記載の分類方法。
[5]
前記第1分類ステップは、
前記回答データを因子分析してスコアを取得する因子分析ステップと、
前記スコアをクラスタリングするクラスタリングステップと、を含む、
[4]に記載の分類方法。
[6]
前記クラスタリングステップにおいて、k-means法を用いてクラスタリングする、
[5]に記載の分類方法。
[7]
前記第1分類ステップは、
前記クラスタリングステップの後に、
前記文化的価値観クラスタおよび前記個人観点価値観クラスタの交差解析により、消費者のペルソナ像を推定する第1推定ステップをさらに含む、
[5]または[6]に記載の分類方法。
[8]
前記第2分類ステップの後に、
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタを互いに関連付けることにより、消費者のペルソナ像の意識・行動を推定する第2推定ステップをさらに含む、
[2]から[7]のいずれか一つに記載の分類方法。
[9]
前記第2推定ステップにおいて、
前記文化的価値観クラスタおよび前記個人観点価値観クラスタの交差点に対する前記意識・行動クラスタの割合に基づいて、前記ペルソナ像の意識・行動を推定する、
[8]に記載の分類方法。
[10]
前記アンケートにおいて、前記価値観に関する質問項目はリッカート尺度の回答形式を含み、前記意識・行動に関する質問項目はマルチプルアンサーの回答形式を含む、
[4]から[9]のいずれか一つに記載の分類方法。
[11]
前記意識・行動に関する質問項目は、意識および行動の両面を評価できる質問項目を含む、
[10]に記載の分類方法。
[12]
前記第2分類ステップは、確率的ブロックモデルを用いてクラスタリングする、
[1]から[11]のいずれか一つに記載の分類方法。
[13]
前記確率的ブロックモデルは、無限関係モデルである、
[12]に記載の分類方法。
[14]
前記第2推定ステップの後に、
消費者に対する訴求要素を提供する提供ステップをさらに含む、
[8]から[13]のいずれか一つに記載の分類方法。
[15]
前記提供ステップの後に、
価値観に関する情報を取得する取得ステップをさらに含む、
[14]に記載の分類方法。
[16]
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関する価値観クラスタと、
美容もしくは健康またはその両方についての消費者の顕在する意識・行動に関する意識・行動クラスタと、を互いに関連付けて記録しているデータベースを備えている、分類装置。
[17]
前記データベースは、美容もしくは健康またはその両方についての消費者の潜在する価値観に関するアンケートの回答データをさらに記録し、前記回答データ、前記価値観クラスタ、および前記意識・行動クラスタを互いに関連付けて記録している、
[16]に記載の分類装置。
[18]
前記価値観クラスタに関するデータを取得および蓄積する取得蓄積部をさらに備えている、
[16]または[17]に記載の分類装置。
[19]
前記回答データに基づいて、前記価値観クラスタを導出する導出部をさらに備えている、
[17]または[18]に記載の分類装置。
[20]
前記価値観クラスタおよび前記意識・行動クラスタに基づいて、ペルソナ像を推定する推定部をさらに備えている、
[16]から[19]のいずれか一つに記載の分類装置。
【符号の説明】
【0109】
S1 第1分類ステップ
S11 因子分析ステップ
S12 クラスタリングステップ
S13 第1推定ステップ
S2 第2分類ステップ
S3 第2推定ステップ
S4 提供ステップ
S5 取得ステップ
100 分類装置
10 演算部
11 導出部
12 推定部
20 データベース
30 制御部
40 取得蓄積部