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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058270
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240418BHJP
   C08F 10/14 20060101ALI20240418BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08F10/14
B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165528
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 絵美
(72)【発明者】
【氏名】平松 愛由
【テーマコード(参考)】
4F100
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03J
4F100AK05C
4F100AK06B
4F100AK07B
4F100AL01A
4F100AT00
4F100BA02
4F100CC102
4F100CC10A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100JB06
4F100JB06A
4F100JK14
4F100JL14
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA17P
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100DA09
4J100DA22
4J100DA24
4J100DA28
4J100DA36
4J100JA13
4J100JA20
(57)【要約】
【課題】従来の4-メチル-1-ペンテン系重合体よりも保存安定性に優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂層を備え、かつ、撥水性に優れる積層体を提供すること。
【解決手段】基材層(I)と下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)とを備える積層体およびその製造方法;(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である。;(b)DSCで測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である。;(c)DSCで測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(I)と、
下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)と、
を備える積層体;
(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である;
(b)示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である;
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
【請求項2】
前記基材層(I)が、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が200℃以下のポリオレフィンを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記融点が200℃以下のポリオレフィンが、ポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層(II)の表面自由エネルギーが、32mN/m以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層(II)の水接触角が97°以上である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~4.5dl/gの範囲にある、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量(U1)が84~100モル%であり、
エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の量(U2)が0~16モル%(ただし、前記U1および前記U2の合計を100モル%とする)である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項8】
前記α-オレフィンが、炭素数6~18のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記樹脂層(II)の厚みが25μm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項10】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、未変性の重合体である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1または2に記載の積層体の製造方法であって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および有機溶媒(B)を含む組成物(X)を準備する工程(1)と、
前記基材層(I)の少なくとも一方の面に前記組成物(X)を塗布し、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)を形成する工程(2)と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項12】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~4.5dl/gの範囲にある、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイス、半導体デバイス、光学部材、プリント回路基板などには、保護用、絶縁用、平坦化用、耐熱用、耐光用、耐候用などの各種コーティング剤が用いられる。これらのコーティング剤を用いて作成されたフィルムには、用途に応じて、耐熱性、透明性、電気絶縁性などの特性が要求される。
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、表面張力が非常に低いことにより離型性に優れ、かつ耐熱性も高いため、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂層をプラスチック基板に積層した積層体は、産業用離型フィルム等として、しばしば利用されている。
【0003】
コーティングなどにより高い耐熱性、良好な電気絶縁性等を示すフィルムを形成し得る組成物として、例えば、特許文献1、および、2には、所定の4-メチル-1-ペンテン共重合体および当該共重合体と溶媒とを含む組成物が開示されている。また、混合気体に対し、選択透過性を有する極薄重合体膜の製造方法として、特許文献3には、25~80℃の温度に保持された4-メチル-1-ペンテン共重合体のシクロヘキセン溶液を用いた成膜法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-227421号公報
【特許文献2】特開2015-34258号公報
【特許文献3】特開昭55-41808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、産業用離型フィルムの用途においては特に高い撥水性が求められる場合があるところ、特許文献1および2に記載の共重合体およびこれを用いた離型フィルムの撥水性には改良の余地があり、さらに撥水性の高い離型フィルムおよびこれを実現できる4-メチル-1-ペンテン系重合体が求められている。
また、特許文献3に記載の共重合体は溶剤への溶解性に改良の余地があり、より溶解性が高くワニス化させた際の保存安定性に優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体が求められていた。
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、従来の4-メチル-1-ペンテン系重合体より保存安定性に優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂層を備え、かつ、撥水性に優れる積層体、および、その積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討を進めた結果、基材層(I)、ならびに、特定の要件を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)を備える積層体によれば、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材層(I)と、
下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)と、
を備える積層体;
(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である;
(b)示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である;
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
<2> 前記基材層(I)が、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が200℃以下のポリオレフィンを含む、<1>に記載の積層体。
<3> 前記融点が200℃以下のポリオレフィンが、ポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である、<2>に記載の積層体。
<4> 前記樹脂層(II)の表面自由エネルギーが、32mN/m以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層体。
<5> 前記樹脂層(II)の水接触角が97°以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体。
<6> 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~4.5dl/gの範囲にある、<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体。
<7> 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量(U1)が84~100モル%であり、
エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の量(U2)が0~16モル%(ただし、前記U1および前記U2の合計を100モル%とする)である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層体。
<8> 前記α-オレフィンが、炭素数6~18のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)である、<7>に記載の積層体。
<9> 前記樹脂層(II)の厚みが25μm以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の積層体。
<10> 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、未変性の重合体である<1>~<9>のいずれか1つに記載の積層体。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法であって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および有機溶媒(B)を含む組成物(X)を準備する工程(1)と、
前記基材層(I)の少なくとも一方の面に前記組成物(X)を塗布し、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)を形成する工程(2)と、
を含む、積層体の製造方法。
<12> 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~4.5dl/gの範囲にある、<11>に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、従来の4-メチル-1-ペンテン系重合体よりも保存安定性に優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂層を備え、かつ、撥水性に優れる積層体、および、その積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<積層体>
本発明の積層体は、基材層(I)と、要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)と、を備える。
以下、本発明の積層体が備える各構成について以下に説明する。
【0011】
<樹脂層(II)>
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
樹脂層(II)は、下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む。
なお、以下の記載において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を「構成単位(i)」と記載することがある。同様に、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位を「構成単位(ii)」と記載することがある。
【0012】
〔要件(a)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が、180℃を超え220℃以下であり、好ましくは184~217℃、より好ましくは188~215℃である。
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が上記範囲にあると、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)の撥水性および撥油性が良好である。
なお、上記融点(Tm)は後述する実施例に記載の方法により求められる。
前記融点(Tm)の値は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の立体規則性、および、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における構成単位(ii)の含有率に依存する傾向がある。このため後述するオレフィン重合用触媒を用い、さらには構成単位(ii)の含有率を制御することにより、融点(Tm)を調整することができる。
【0013】
〔要件(b)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が、230℃以下であり、好ましくは230℃未満、より好ましくは228℃以下、さらに好ましくは228℃未満である。
ここで、吸熱終了温度(TmE)とは、融解が終了した温度を意味する。吸熱終了温度(TmE)および後述する発熱開始温度(TcS)は、一般にいう、ベースラインと定常ライン接線との交点であるオンセット、および、オフセットとは異なる指標である。
前記吸熱終了温度(TmE)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を重合する際に用いるオレフィン重合用触媒の種類、構成単位(ii)の含有率の調整などにより所望の値とすることができる。
吸熱終了温度(TmE)は後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0014】
吸熱終了温度(TmE)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、撥水性および撥油性に優れる。このため、吸熱終了温度(TmE)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等から形成される樹脂層も撥水性および撥油性に優れる傾向がある。また、吸熱終了温度(TmE)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、吸熱終了温度(TmE)が上記範囲外の4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、コーティング剤の調製時に使用可能な溶媒に溶解しやすい。このため、吸熱終了温度(TmE)上記範囲にあると、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等の性状が均一になる傾向にある。
【0015】
〔要件(c)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が、210℃以下であり、好ましくは210℃未満、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは200℃未満である。
前記発熱開始温度(TcS)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を重合する際のオレフィン重合用触媒を適切に選択すること、構成単位(ii)の含有率を制御することなどにより所望の値とすることができる。
【0016】
発熱開始温度(TcS)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、撥水性および撥油性に優れる。このため、発熱開始温度が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等から形成される樹脂層も撥水性および撥油性に優れる傾向がある。また、発熱開始温度が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、発熱開始温度が上記範囲にない4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、後述する有機溶媒(B)に溶解しやすい。このため、発熱開始温度(TcS)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いて調製されたコーティング剤等の性状が均一になる傾向にある。
【0017】
本発明の積層体に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、要件(a)~(c)を満たすので、撥水性および撥油性を保ちつつ、溶媒への溶解性にも優れる。また、要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、溶媒への溶解性に優れるため、溶媒中で溶解したままの状態を保ちやすいので、保存安定性にも優れる。このため、要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、要件(a)~(c)のいずれか1つ以上を満たさない4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、溶媒に溶解された場合の保存安定性も良好である。
【0018】
樹脂層(II)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、下記要件(d)~(g)の1つ以上をさらに満たしてもよく、好ましくは下記要件(d)~(g)の1つ以上を満たす。
【0019】
〔要件(d)〕
135℃デカリン中で測定した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の極限粘度[η]が、好ましくは0.5~4.5dl/g、より好ましくは0.65~4.4dl/g、さらに好ましくは0.8~4.3dl/gである。
極限粘度[η]の値が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、撥水性および撥油性が良好である。また、極限粘度[η]の値が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含むコーティング剤は、塗工性が良好であり、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の樹脂層の形成に適している。
極限粘度[η]は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を製造する際の重合工程における水素の添加量により調整することが可能である。極限粘度[η]は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0020】
〔要件(e)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(構成単位(i))の量(U1)は、好ましくは84~100モル%、より好ましくは87~99.0モル%、さらに好ましくは90~98.5モル%であり、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(構成単位(ii))の量(U2)は、好ましくは0~16モル%、より好ましくは1.0~13モル%、さらに好ましくは1.5~10モル%である。ただし、上記U1およびU2の合計を100モル%とする。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)において構成単位(ii))の量(U2)が0~16モル%の範囲にある場合、重合体が結晶化し始める温度および結晶が完全に溶ける温度をより低下しやすくなるので、重合体を溶媒へ溶解した時の保存安定性も担保されると本発明者らは推察している。
なお、U1およびU2は、後述する実施例に記載の測定方法により求められる。U1およびU2が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、撥水性および撥油性に優れる。このため、U1およびU2が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤を用いて形成される樹脂層も撥水性および撥油性に優れる傾向にある。
【0021】
上記構成単位(ii)を導くα-オレフィンは、直鎖状のα-オレフィンであってもよい。上記構成単位(ii)を導くα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
これらの中でも撥水性および撥油性の観点から、α-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)は、炭素数6~18のα-オレフィンが好ましく、炭素数が6~18の直鎖状のα-オレフィンが好ましい。具体的には、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、および、1-オクタデセンがより好ましく、1-デセン、1-ヘキサデセン、および、1-オクタデセンが特に好ましい。
【0022】
上記構成単位(ii)は、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィンからなる群から選択される1種のみに由来するものであってもよく、また、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィンからなる群から選択される2種以上に由来するものであってもよい。
【0023】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、構成単位(i)および構成単位(ii)のみからなる共重合体であってもよいし、構成単位(i)および構成単位(ii)に加えて、4-メチル-1-ペンテン、エチレン、および、炭素数3~20のα-オレフィン(但し、4-メチル-1-ペンテンを除く)以外の重合性モノマー(以下、「他の重合性モノマー」ともいう。)から導かれる構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでいてもよい。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計量(U1+U2)は100モル%である。
【0024】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、その他の構成単位は、本発明の目的を損なわない程度の少量含まれることが好ましい。具体的にはその他の構成単位の含有量は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の全構成単位に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下である。
その他の構成単位は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
上記他の重合性モノマーの好ましい具体例としては、スチレン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類が挙げられる。
【0026】
ここで、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、その他の構成単位を含む場合、構成単位(ii)とその他の構成単位との合計含有量が、前記構成単位(ii)の含有量0~16モル%を満たすことが好ましい。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)とその他の構成単位との合計量は100モル%である。
【0027】
〔要件(f)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、好ましくは、未変性の重合体である。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が未変性の重合体であるとは、例えば、カルボキシ基等の極性官能基によりグラフト変性を受けていない重合体であることを意味している。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が未変性の重合体である場合、被離型材(離型材の上に積層する相手材)との離型性に優れる傾向にある。
【0028】
〔要件(g)〕
示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc)が、好ましくは110~220℃、より好ましくは120~210℃、さらに好ましくは130~200℃である。
結晶化温度(Tc)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、撥水性および撥油性および成形性の観点から好ましい。このため、結晶化温度(Tc)が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等は、性状や保存安定性が良好になる傾向にある。
結晶化温度(Tc)は後述する実施例に記載の測定方法により求められる。
【0029】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法が挙げられる。例えば、オレフィン重合用触媒の存在下、4-メチル-1-ペンテンおよび上述した構成単位(ii)を導く特定のオレフィンと、さらに必要に応じて上記他の重合性モノマーとを、公知の重合方法により製造する方法が挙げられる。
【0030】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造の際に使用可能なオレフィン重合用触媒の例として、メタロセン触媒を挙げられる。好ましいメタロセン触媒としては、国際公開第2001/53369号、国際公開第2001/27124号、特開平3-193796号公報、特開平02-41303号公報、国際公開第2006/025540号、あるいは、国際公開第2014/123212号に記載のメタロセン触媒が挙げられる。
【0031】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、一旦上記触媒等で製造した4-メチル-1-ペンテン系重合体を、押出機やミキサー等の中で熱処理して、要件(a)~(c)を満たすように4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を調製してもよい。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、市販の4-メチル-1-ペンテン系重合体(例えば、三井化学(株)製、製品名:TPX等)を、押出機やミキサー等の中で熱処理することにより、要件(a)~(c)を満たすように調製してもよい。
【0032】
[樹脂層(II)の厚さ]
樹脂層(II)の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。得られる積層体においてカールの発生を抑制する観点から、樹脂層(II)の厚みは、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、好ましくは0.01~20μm、さらに好ましくは0.03~10μmである。
樹脂層(II)の厚さが上記範囲にあると、基材層(I)の一方の面だけに樹脂層(II)を形成した場合でも、得られる積層体にカールが発生しづらくなる。また、樹脂層(II)の厚さが上記範囲であることにより、基材層(I)がカールを抑制するための中間層を備えた多層構造となっていない場合においても、積層体でカールが発生しづらくなる。
【0033】
[樹脂層(II)の物性]
樹脂層(II)の表面自由エネルギーが、32mN/m以下であることが好ましく、29mN/m以下であることがより好ましく、26mN/m以下であることがさらに好ましい。当該表面自由エネルギーの下限は特に制限されないが、例えば0mN/m超とすることができる。
樹脂層(II)の表面自由エネルギーが上記範囲内であると、積層体の撥水性および撥油性がより優れるるため、例えば、包装体の最内層に本発明の積層体を用いた場合、水溶性または親油性の内容物をが出しやすくすることができ、また包装体の内層に内容物による汚れを付きにくくすることができる。
樹脂層(II)の表面自由エネルギーは、樹脂層(II)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の組成(例えば4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量や、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位以外の構成単位の種類や量)などにより制御することができる。
表面自由エネルギーは、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0034】
また、樹脂層(II)の水接触角は、97°以上であることが好ましく、100°以上であることがより好ましく、101°以上であることがさらに好ましい。当該水接触角の上限は特に制限されないが、例えば180°未満とすることができる。
樹脂層(II)の水接触角が上記範囲内であると、積層体の撥水性に優れるため、例えば包装体の内層に積層体を用いた場合、水溶性の内容物を取り出しやすくなったり、内容物による内層の汚れが付きにくくなったりする。
樹脂層(II)の水接触角は、樹脂層(II)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の組成(例えば4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量や、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位以外の構成単位の種類や量)などにより制御することができる。水接触角は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0035】
樹脂層(II)は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。積層体が樹脂層(II)を2層以上備える場合は、上述した樹脂層(II)が要件(a)~(c)を満たす限り、これら樹脂層(II)は同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
<基材層(I)>
本発明の積層体は基材層(I)を備える。
基材層(I)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が200℃以下のポリオレフィンを含むことが好ましく、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が200℃以下のポリオレフィンからなる層であることがさらに好ましい。
基材層(I)は、単層体であってもよいし、複層体であってもよい。また、基材層(I)は、例えば融点が200℃以下のポリオレフィンを含むフィルムであってもよく、当該ポリオレフィンを射出成形、ブロー成形などの公知の方法で成形したボトルなどの成形体であってもよい。さらに、基材層(I)は、紙、不織布、金属および後述するガスバリア層にラミネートされた層であってもよい。
【0037】
融点が200℃以下のポリオレフィンとしては、特に制限はなく、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体等の線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4-メチル-1-ペンテン系重合体(ただし、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に該当するものを除く)、ポリブテンなどが挙げられる。
なお、“高密度ポリエチレン”は、ポリエチレンの密度が0.940g/cm3を超えるポリエチレンであることが好ましい。
また、“低密度ポリエチレン”は、ポリエチレンの密度が0.940g/cm3以下であることが好ましい。
【0038】
これらのなかでも、融点200℃以下のポリオレフィンは、ポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂であるが好ましく、ポリプロピレンおよび低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂であることがより好ましい。
【0039】
また、基材層(I)はの成形方法は、押出、一軸あるいは二軸延伸等の一般的な方法でよく、特に限定されない。
また、基材層(I)は、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
また、基材層(I)は、本発明の目的を損なわない範囲で、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が200℃超のポリオレフィンを含んでいてもよい。
基材層(I)の厚さは通常10~100μmであるが、特に限定されない。
【0040】
<<その他の層>>
本発明の積層体は、上記基材層(I)と上記樹脂層(II)以外の層(以下、「その他の層」ともいう。)とを備えていてもよい。
その他の層としては、保護層、プライマー層、ガスバリア層等などの層が挙げられる。積層体は、例えば、基材層(I)とプライマー層とを接するように積層させて、基材層(I)のプライマー層側と、樹脂層(II)と、が接するように積層させたものであってもよい。
本発明の積層体が後述するように離型紙、離型フィルム等として用いられる場合等は、本発明の積層体としては、その積層体の最外層に少なくとも1つの樹脂層(II)を備えることが好ましい一形態である。
また、積層体は、紙、不織布、金属およびガスバリア層からなる群から選択される層と基材層(I)とを接するように積層させていてもよい。当該ガスバリア層としては、所望するガスの透過を抑制する層であれば特に制限はなく、たとえば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、酸化ケイ素などから形成される層を挙げることができる。
【0041】
<<積層体の製造方法>>
本発明の積層体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、以下の製造方法により本発明の積層体を好適に製造できる。すなわち、本発明の積層体の製造方法は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および有機溶媒(B)を含む組成物(X)を準備する工程(1)と、基材層(I)の少なくとも一方の面に前記組成物(X)を塗布し、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)を形成する工程(2)とを含むことが好ましい。
なお、本発明の積層体は、基材層(I)の一方の面のみに樹脂層(II)を備えていてもよく、また、基材層(I)の両方の面に樹脂層(II)を備えていてもよい。さらに、基材層(I)は、プライマー層等のその他の層を、樹脂層(II)を形成する表面側に備えていてもよい。
積層体の製造方法において、基材層(I)および基材層(II)並びに基材層(II)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、上記積層体における基材層(I)、基材層(II)および4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0042】
[組成物(X)を準備する工程(1)]
工程(1)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と有機溶媒(B)とを含む組成物(X)を準備する工程である。組成物(X)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を有機溶媒(B)に溶解させたコーティング剤として用いてもよい。
【0043】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量は、組成物(X)の全質量に対して、通常、0.01~50質量%であり、好ましくは0.05~30質量%、より好ましくは0.07~25質量%、さらに好ましくは0.1~20質量%、特に好ましくは1.0~20質量%、最も好ましくは3.0~20質量%である。有機溶媒(B)の含有量は、組成物(X)の全質量に対して、通常、50~99.99質量%であり、好ましくは70~99.95質量%、より好ましくは75~99.93質量%、さらに好ましくは80~99.90質量%、特に好ましくは80.0~99.0質量%、最も好ましくは80.0~97.0質量%である。
【0044】
組成物(X)の全質量に対する4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および有機溶媒(B)の含有量が前記範囲内であることにより、組成物(X)をコーティング剤等として用いた場合に、ハンドリング性とコーティング剤から樹脂層(II)を形成する際の溶媒の除去のしやすさとのバランスが良好となる。
【0045】
〔有機溶媒(B)〕
有機溶媒(B)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶解できれば特に制限はない。有機溶媒(B)としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げられる。これらの中でも、有機溶媒(B)としては、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を好適に用いることができる。
【0046】
〔組成物(X)に含まれるその他の成分〕
組成物(X)は、本発明の目的を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および有機溶媒(B)以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)をさらに必要に応じて、含んでいてもよい。その他の成分としては、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、レベリング剤、強化剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。
なお、組成物(X)を用いて製造された樹脂層(II)にも、組成物(X)に含まれるその他成分が含まれ得る。
その他の成分は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
その他の成分の含有量は、本発明の目的を損なわない任意の量とすることができるが、その他の成分の合計含有量は、組成物(X)100質量部に対して通常0.005~5質量部、好ましくは0.01~3質量部程度である。
【0047】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物等が挙げられる。酸化防止剤は1種単独であってもよいぢ、あるいはこれらを数種類組み合わせたてもよい。
【0048】
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の含有量は、組成物(X)100質量部に対して通常0.1~3質量部、好ましくは0.1~2質量部程度であることが望ましい。
【0049】
スリップ剤としては、例えば、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸等の飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドが挙げられる。これらのうち、スリップ剤としては、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。スリップ剤の含有量は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して0.01~5質量部の範囲であることが好ましい。
【0050】
アンチブロッキング剤としては、例えば、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状、もしくは液状のシリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、例えば架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末等が挙げられる。これらのうち、アンチブロッキング剤としては、微粉末シリカおよび架橋されたアクリル、並びに、メタクリル樹脂粉末が好ましい。
【0051】
また後述するように組成物(X)をコーティング剤として用いる場合には、組成物(X)にレベリング剤を添加するのも好ましい態様である。組成物(X)より形成した樹脂層(II)の表面粗さを小さくするためのレベリング剤としては、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤等が挙げられる。レベリング剤としては、、上記有機溶媒(B)と相溶性が良いものが好ましく、レベリング剤の含有量は、好ましくは組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に対して1~50,000ppmの範囲である。
【0052】
強化剤としては、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の金属の酸化物、多官能アルコキシ化合物あるいはそのオリゴマー、粘土鉱物等が挙げられる。強化剤の含有量としては、組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5~50質量部である。
強化剤の含有量の含有量が上記範囲にあると、コーティング剤として用いた組成物(X)より形成された樹脂層(II)の硬度や弾性率を高めることができる。
【0053】
〔組成物(X)の製造方法〕
工程(1)は、組成物(X)の製造する工程を含んでいてもよい。組成物(X)の製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、有機溶媒(B)に4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を添加し、有機溶媒(B)の沸点以下の温度で、所定の時間撹拌することで製造することができる。また、別途準備した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を熱処理して、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を調整した後、得られた4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を有機溶媒(B)に添加し、有機溶媒(B)の沸点以下の温度で、所定の時間撹拌することでも、組成物(X)を製造することができる。
【0054】
[樹脂層(II)を形成する工程(2)]
樹脂層(II)を形成する工程(工程(2))は、基材層(I)の少なくとも一方の面に前記組成物(X)を塗布し、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂層(II)を形成する工程である。
以下、工程(2)で行われる処理の例を説明する。
工程(2)では、具体的には、上記工程(1)で調製された組成物(X)を、基材層(I)の一方の面に塗布し、組成物(X)中の有機溶媒(B)の沸点に近い温度に加熱することで組成物(X)中の有機溶媒(B)をある程度、除去することが好ましい。
基材層(I)の表面に組成物(X)を塗布する方法は、特に限定されないが、はけやブラシを用いた塗布、スプレーによる吹き付け、スクリーン印刷法、フローコーティング、スピンコート、ディッピングによる方法や、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、ロールコート、ダイコート等を用いてロールや平板に塗布する方法等が挙げられる。
【0055】
工程(2)が組成物(X)中の有機溶媒(B)を除去する工程を含む場合、組成物(X)中から有機溶媒(B)が完全に除去されることが好ましいが、組成物(X)中に含まれている4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を樹脂層(II)として形成し得る程度に溶媒(B)が除去されれば特に制限はされない。具体的には、組成物(X)を用いて形成された樹脂層(II)の質量100%に対して、有機溶媒(B)が0.001~0.5質量%程度になるまで、有機溶媒(B)が除去されることが好ましい。
有機溶媒(B)を除去する方法は、特に限定されず、自然乾燥であってもよいが、一般的には30~220℃で加熱し乾燥することで除去される。
また4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の熱劣化や熱分解を防ぎ、かつ、生産性の向上、および、発泡や劣化等を抑制するために、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の融点(Tm)以下の温度で有機溶媒(B)を除去するのが好ましい。発泡を防ぎながら短時間で乾燥させるために、2段階以上もしくは連続的に温度を上昇させながら乾燥してもよい。また、乾燥工程の後に水、メタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレン等の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が溶解しにくい溶媒に浸漬する工程、あるいはその溶媒の蒸気雰囲気下に曝す工程を経ることによって樹脂層(II)に残留する溶媒を低減することもできる。
乾燥後の樹脂層(II)中に残留する有機溶媒(B)の含有量は、0.5質量%以下、好ましくは0.05質量%以下さらに好ましくは0.01質量%以下である。
【0056】
<<積層体の用途>>
本発明の積層体は、基材層(I)が紙にラミネートされた例えば融点200℃以下のポリオレフィンである場合離型紙等の各種工程紙、印画紙、テープセパレーターとして好適に用いられる。例えば、合成皮革用離型紙、ゴム製造用工程紙、ウレタン硬化用離型紙、エポキシ硬化用離型紙、太陽電池製造用工程紙、半導体製造用工程紙、燃料電池製造用工程紙、電気電子部品製造用工程紙、半導体製品製造用工程紙、回路基板製造用工程紙、フレキシブルプリント基板用離型紙、リジット基板用離型紙、リジットフレキシブル基板用離型紙、先端複合材料製造用工程紙、炭素繊維複合材硬化用離型紙、ガラス繊維複合材硬化用離型紙、アラミド繊維複合材硬化用離型紙、ナノ複合材硬化用離型紙、フィラー充填材硬化用離型紙、耐熱耐水印画紙、OA紙、粘着テープセパレーター、シリコンテープセパレーター、接着剤セパレーター等の用途がある。
【0057】
本発明の積層体は、前述のように撥水性に優れるため、基材層(I)として基材フィルム(好ましくは融点が200℃以下のポリオレフィン)を用いた場合、各種表示デバイス、半導体デバイス、光学部材、プリント回路基板、キャパシタ等の保護用フィルム、日用雑貨包装材、食品包材、食品容器、レトルト容器、保護フィルム、化粧フィルムおよびシート、シュリンクフィルム、輸液バッグ、熱融着フィルム、医療容器、離型フィルムまたは離型フィルムの離型層などとしても好適に用いられる。
また、本発明の積層体は、他にもボトルなど撥水性を高める用途に好適に活用できる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
<重合体の物性の測定方法>
[組成]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(構成単位(i))の量(U1)、および、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(構成単位(ii)の量(U2))は、以下の装置および条件により、13C-NMRスペクトルより算出した。
【0060】
日本電子(株)製のECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてo-ジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C-NMRスペクトルにより、4-メチル-1-ペンテン、および、α-オレフィンの組成を定量化した。
なお、後述する比較例で使用している4-メチル-1-ペンテン系重合体についても同様の方法で、構成単位(i)および構成単位(ii)の量を求めた。
【0061】
[極限粘度[η]]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち、試料である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を約20mg計り取り、デカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
なお、後述する比較例で使用している4-メチル-1-ペンテン系重合体についても同様の方法で極限粘度[η]を求めた。
【0062】
[融点(Tm)、吸熱終了温度(TmE)、発熱開始温度(TcS)、および、結晶化温度(Tc)]
セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC)測定装置(型番:DSC220C)を用い、ASTM D3418に準拠して発熱・吸熱曲線を求め、以下のように融点(Tm)と結晶化温度(Tc)を求めた。
【0063】
試料約5mgを測定用アルミパンにつめ、10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温し、280℃で5分間保持した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで降温し、20℃で5分間保持した後、再度10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温した。1回目の降温時に発現した結晶化ピークを、結晶化温度(Tc)とした。結晶化ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを結晶化温度(Tc)とした。2回目の昇温時に発現した融解ピークを、融点(Tm)とした。融解ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを融点(Tm)とした。
【0064】
上記融解(吸熱)曲線の、吸熱が終了したときの温度を吸熱終了温度(TmE)とした。また、上記結晶化(発熱)曲線の、発熱が開始されたときの温度を発熱開始温度(TcS)とした。
【0065】
上記開始および終了点は、吸熱または発熱の、開始または終了時に熱量が一定になるベースラインに対し、ベースラインから曲線が乖離して熱量に差が出始めたことが確認できる点である。
【0066】
<調製例1:(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドの調製>
国際公開第2014/123212号の予備実験5(段落[0346]~[0348])に記載の方法を用いて、(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを合成した。
【0067】
<製造例1:重合体1の製造>
充分に窒素置換した容量1.5Lの撹拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン220mLを装入した。このオートクレーブに、1-デセン30mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、撹拌を開始した。次に、オートクレーブに水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
その後、液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.039mmol含み、さらに、上記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.00013mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始10分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を撹拌しながら注ぎ、重合体1を析出させた。得られた重合体1を130℃、減圧下で10時間乾燥した。重合体1の各種物性を表1に示す。
【0068】
<製造例2:重合体2の製造>
[合成例2-1:オレフィン重合用触媒の製造]
30℃下、充分に窒素置換した200mLの撹拌機を付けた三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製デカン30mLおよび粒子状でありD50が28μm、アルミニウム原子含有量が43質量%である固体状ポリメチルアルミノキサン(国際公開第2014/123212号に記載の方法を用いて合成)をアルミニウム原子換算で14.65mmol装入し、懸濁液とした。その懸濁液に、上記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド50.0mg(0.0586mmol)を4.58mmol/Lのトルエン溶液として撹拌しながら加えた。1時間後、撹拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで洗浄した後、デカンを加え50mLのスラリー液とした(ジルコニウム原子担持率98%)。
【0069】
[合成例2-2:予備重合触媒成分の調製]
合成例2-1で調製したスラリー液に、25℃、窒素気流下でトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を1.0mL装入した。15℃に冷却した後、4-メチル-1-ペンテン10mLを60分かけて反応器内に装入した。4-メチル-1-ペンテンの装入開始時点を予備重合開始とした。予備重合開始から2.0時間後に撹拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで3回洗浄した。予備重合触媒成分はデカンスラリー(9.5g/L、ジルコニウム原子換算で0.56mmol/L)とした。
【0070】
[重合体2aの製造]
室温、窒素気流下で、内容積1Lの撹拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL挿入し40℃まで昇温した。40℃到達後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を0.8mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入し、次いで上記合成例2-2の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.00175mmol装入した。水素を23.75NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン230mLと製品名:リニアレン168(出光興産(株)製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)22.4mLとの混合液を2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。上記混合液の装入開始時点を重合開始とし、45℃で4.5時間保持した。重合開始から1時間後および2時間後にそれぞれ水素を23.75NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、重合体2aを得た。収量は142gであった。重合体2a中に含まれる構成単位の含量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテン含量(U1)は96.5mol%、α-オレフィン含量(U2)は3.5mol%であった。重合体2aの融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は4.2dl/gであった。
【0071】
[重合体2の製造]
重合体2aに、耐熱安定剤としてフェノール系安定剤Irganox1010 0.02phr(チバBASF製)を配合し、東洋精機製作所社製ラボプラストミルのミキサーを使用して、樹脂温度280℃、スクリュー回転数150rpmで混錬することにより、重合体2を得た。得られた重合体2の各種物性を表1に示す。なお、重合体2の4-メチル-1-ペンテン含量(U1)およびα-オレフィン含量(U2)は、重合体2aと同じであるとした。
【0072】
<製造例3:重合体3の製造>
充分窒素置換した容量1.5Lの撹拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン230mLを装入した。このオートクレーブに、リニアレン168(出光興産(株)製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)20mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、撹拌を開始した。次に水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
その後、液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.033mmol含み、さらに、上記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.00011mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始13分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を撹拌しながら注ぎ、重合体3を析出させた。得られた重合体3を130℃、減圧下で10時間乾燥した。重合体3の各種物性を表1に示す。
【0073】
<製造例4:重合体4の製造>
充分に窒素置換した容量1.5Lの撹拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン230mLを装入した。このオートクレーブに、1-デセン15mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、撹拌を開始した。次に水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
その後、予め調製しておいた液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.06mmol含み、さらに、上記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.0002mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始30分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を撹拌しながら注ぎ、重合体4を析出させた。得られた重合体4を130℃、減圧下で10時間乾燥した。得られた重合体4の各種物性を表1に示す。
【0074】
<製造例5:重合体5の製造>
[合成例5-1:オレフィン重合用触媒の製造]
30℃下、充分に窒素置換した100mLの撹拌機を付けた三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製デカン29.9mLおよび粒子状でありD50が8μm、アルミニウム原子含有量が42質量%である固体状ポリメチルアルミノキサン(東ソーファインケム社製)をアルミニウム原子換算で14.3mmol装入し、懸濁液とした。その懸濁液に、上記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド50.0mg(0.0586mmol)を4.59mmol/Lのトルエン溶液として撹拌しながら加えた。1.5時間後に撹拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで洗浄した後、デカンを加え50mLのスラリー液とした(ジルコニウム原子担持率96%)。
【0075】
[合成例5-2:予備重合触媒成分の調製]
合成例5-1で調製したスラリー液に、窒素気流下でジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL-H)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で1.0mmol/mL)を4.0mL装入し、さらに3-メチル-1-ペンテンを15mL(10.0g)装入した。3-メチル-1-ペンテンの装入開始時点を予備重合開始とした。重合開始から1.5時間後撹拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法により洗浄効率95%となるように洗浄した。予備重合触媒成分はデカンスラリー100mLとした(ジルコニウム原子回収率93%、ジルコニウム原子換算で0.548mmol/L)。
【0076】
[重合体5の製造]
室温(25℃)、窒素気流下で、内容積1Lの撹拌機を付けたSUS製オートクレーブに、精製デカン425mLと、トリエチルアルミニウム溶液(アルミニウム原子換算で1.0mmol/mL)0.4mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)とを装入した。次いで、合成例5-2により先に調製した予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.0014mmol加え、40℃まで昇温した。
40℃到達後、水素を30NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン106mLを30分かけてオートクレーブ内へ連続的に一定の速度で装入した。4-メチル-1-ペンテンの装入開始時点を重合開始時点とし、45℃で3時間保持した。重合開始時点から3時間経過後、45℃にて系内を脱圧、残存水素を系外に排出するため、窒素(0.6MPa)による加圧および脱圧を3回行った。
その後、45℃、窒素気流下で、水素を30NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン79.4mLと1-デセン7.4mLとの混合液を30分かけてオートクレーブ内へ連続的に一定の速度で装入した。4-メチル-1-ペンテンと1-デセンとの混合液の装入開始時点を2回目の重合開始時点とし、45℃で3時間保持した。2回目の重合開始時点から3時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液(スラリー)を濾過して固体状物質(重合体5)を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥した。得られた重合体5の各種物性を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
[基材層(I)(基材フィルム)の作製]
ポリプロピレン((株)プライムポリマー製、銘柄:F113G)を、Tダイ付きキャストフィルム成形機を用い、シリンダー温度230℃でフィルム成形することで、厚さ100μmのキャストフィルム(基材フィルムI-1)を得た。得られたキャストフィルムを基材層(I)として用いた。
また、ポリプロピレンを低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製、銘柄:SP0540)に変更し、シリンダー温度200℃でフィルム成形した以外は基材フィルムI-1と同様にして厚さ100μmのキャストフィルム(基材フィルムI-2)を得た。得られたキャストフィルムを基材層(I)として用いた。
【0079】
<実施例1>
[組成物(X1)の調製]
10gの重合体1に対して、酸化防止剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量%、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロオピオネートを0.1質量%添加し、固形分濃度が5質量%になるようにメチルシクロヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)を添加して、90℃、1時間、200rpmで撹拌して重合体1を含む組成物(X1)を調製した。
【0080】
[積層体の作製]
上記で調製した組成物(X1)より形成される樹脂層(II)の乾燥後の厚さが0.3μmとなるようにアプリケーターの設定を調整し、組成物(X1)を25℃で上記で作製した基材フィルムI-1に塗布して、アプリケーターで均一に伸ばした後、100℃で20秒乾燥し、基材フィルムI-1および樹脂層(II)を備える積層体を得た。
【0081】
[保存安定性]
10gの重合体1に対して、固形分濃度が5質量%になるようにメチルシクロヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)を添加して、撹拌機付き容器に入れ、90℃、1時間、200rpmで撹拌して重合体1を含む組成物を得た後に、24時間、室温(23℃)で保管した。その後、組成物を可視光線下にて目視で観察し、下記評価基準に従い保存安定性を評価した。AAおよびBBの評価である場合、保存安定性に優れる。
〔評価基準〕
AA:組成物が透明であった。
BB:組成物が白濁して見えたが、組成物に流動性が見られた。
CC:組成物が白濁して見え、かつ組成物に流動性が見られなかった。
【0082】
[表面自由エネルギー]
表面張力の異なる液体として蒸留水、ジヨードメタン、および、ブロモナフタレンを選択し、これらの液体を用いて表面自由エネルギーを求めた。上記で作製した積層体の樹脂層(II)の表面に選択したこれらの液体をに滴下し、各種液体による積層体の濡れの状態をDropMaster500画像処理式・固液界面解析システム(協和界面科学(株)製)を用いて解析することにより、樹脂層(II)の表面自由エネルギー(mN/m)を求めた。
【0083】
[水の接触角の測定]
DropMaster500画像処理式・固液界面解析システム(協和界面科学(株)製)を用いて、実施例および比較例で得られた積層体(フィルム)の樹脂層(II)側に水滴を落としたときの接触角値を測定した。
接触角値が大きいほど、疎水性度が高く、極性が高い材料に対する離型性が高く、撥水性に優れるといえることを意味する。
【0084】
[ヘキサデカンの接触角測定]
DropMaster500画像処理式・固液界面解析システム(協和界面科学(株)製)を用いて、実施例および比較例で得られた積層体(フィルム)の樹脂層(II)にヘキサデカン(富士フイルム和光純薬(株)製)を落とし、滴下10秒後の接触角値を測定した。接触角値が大きいほど、撥油性が高いことを意味する。
なお、試験液滴下直後にぬれ拡がり測定結果が5°未満となったの場合は、表中に「<5」と記載した。
【0085】
<実施例2>
重合体1の代わりに重合体2を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物(X2)を調製し積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0086】
<実施例3>
重合体1の代わりに重合体3を用いた以外は、実施例1と同様に、組成物(X3)の調製、積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0087】
<実施例4>
重合体1の代わりに重合体4を用いた以外は、実施例1と同様に、組成物(X4)の調製、積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0088】
<実施例5>
乾燥後に得られる樹脂層(II)の厚さが5.0μmとなるようにアプリケーターの設定を調整した以外は実施例2と同様に、積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0089】
<実施例6>
乾燥後に得られる樹脂層(II)の厚さが0.1μmとなるようにアプリケーターの設定を調整した以外は実施例2と同様に、積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0090】
<実施例7~12>
基材層の種類を基材フィルムI-2に変更した以外は実施例1と同様にして実施例7~12にかかる積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表3に示す。
【0091】
<比較例1>
基材フィルムI-1をそのまま用いて、水接触角および表面自由エネルギーの測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0092】
<比較例2>
基材フィルムI-2をそのまま用いて、水接触角および表面自由エネルギーの測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0093】
<比較例3>
重合体1の代わりに重合体5を用い、実施例1と同様にして90℃、1時間、200rpmで撹拌したが、重合体5のほとんどが溶解せず溶け残った。このように、塗膜作製できる程度に十分な濃度で重合体5が溶解している組成物を得られず、比較例3の組成物では、積層体を作製することができなかった。そのため、表4中の評価結果の欄には「N/D」と記載した。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表2~4に示されるとおり、実施例1~12の本発明に係る積層体は、比較例1および2の積層体に比べて、撥水性に優れることがわかる。実施例1~12の本発明に係る積層体の樹脂層に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体は、比較例3の積層体の樹脂層に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体と比べて、保存安定性に優れることがわかる。また、実施例1~12の本発明に係る積層体は、比較例1~3の積層体に比べて、撥油性にも優れることがわかる。