(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058272
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 231/20 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
C07D231/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165532
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229656
【氏名又は名称】株式会社日本ファインケム
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 諒太
(72)【発明者】
【氏名】風間 祐輝
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の方法に比べて入手しやすい原料を用いて、簡便且つ高収率、高純度で得ることができる、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を取得する新たな工業的な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記反応式Aに示されるように、ジアルキルアミノアクリル酸エステルとアルキルヒドラジンとを反応することにより、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを合成し、晶析時に有機酸を添加することにより、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を簡便に得ることができる製造方法である。(反応式A)
(式中、R
1、R
2、およびR
3はそれぞれ独立にC1~C6のアルキル基であり、R
4は水素原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C3~C6のシクロアルキル基、またはアリール基であり、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2、およびR
3はそれぞれ独立にC1~C6のアルキル基を表す。)
で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルと、一般式(2)
【化2】
(式中、R
4は水素原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C3~C6のシクロアルキル基、またはアリール基であり、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよい。)
で表されるアルキルヒドラジンと、を反応させて、一般式(3)
【化3】
(式中、R
4は水素原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C3~C6のシクロアルキル基、またはアリール基であり、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよい。)
で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを得る製造方法であって、有機酸を添加して晶析することにより、一般式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を取得する、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの製造方法。
【請求項2】
副生するジアルキルアミンを50%当量以上除去した後に、有機酸を添加して晶析することによる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
晶析時に含まれる塩基成分の0.8~1.2当量に相当する有機酸を添加することによる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
添加する有機酸が有機スルホン酸またはカルボン酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
添加する有機酸が有機スルホン酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
添加する有機酸がパラトルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシピラゾール類の製造法に関するもので、詳細には、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの工業的製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールは、医薬品および除草剤を中心とした作物保護剤を製造するための中間体として使用されている。例えば医薬品ではVR1受容体拮抗作用による抗炎症剤、5-LO阻害効果による喘息薬、精神障害治療薬に、農薬では複数の畑作用除草剤の中間体として開示されており、5-ヒドロキシピラゾール類は有用な化合物としてその製造方法に関心がもたれている。これまで、ヒドロキシピラゾール類の主な製造方法として以下の合成法が知られてきた。
1)アルコキシメチレンマロン酸ジアルキルとアルキルヒドラジンとにより環化して1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール-4-カルボン酸アルキルを合成し、次にこの反応生成物を加水分解と脱炭酸を同時に行なうことにより1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール類を得る製造方法(特許文献1)
2)ヒドラジンのアクリル酸エステルへの付加により形成される3-ヒドラジノプロピオン酸エステルをアルデヒドと脱水縮合反応させて対応するヒドラゾンを製造し、続いて環化することで1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール類を得る製造方法(特許文献2)
3)3-アルコキシアクリル酸エステルをアルキルヒドラジンと反応させて、直接1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール類を得る製造方法(特許文献3および4)
【0003】
上記の1番目の製造方法は多くの工程を必要とする。原料であるアルコキシメチレンマロン酸ジアルキルを得た後、アルキルヒドラジンにより環化して1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール-4-カルボン酸アルキルを合成し、更に加水分解反応、脱炭酸反応を経て、ようやく目的の1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールが得られる。さらに、得られた反応物には、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールに加えて、同時に生成される位置異性体の1-アルキル-3-ヒドロキシピラゾールが含まれ、それらを目的化合物から分離するには複雑な手順が必要である。そのため、この合成法は収率が低い。
【0004】
2番目の製造方法も、多くの工程を必要とし複雑である。ヒドラジンのアクリル酸エステルへの付加反応により形成される3-ヒドラジノプロピオン酸エステルをアルデヒドと脱水縮合反応させて対応するヒドラゾンを製造し、続いて環化することで、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールが得られる。この複雑な方法からは多くの副生物が生成し、低い収率しか得られない。
【0005】
3番目の製造方法は、3-アルコキシアクリル酸エステルを用いて1段階で1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを得ることが可能であるが、3-アルコキシアクリル酸エステルは製造するのが難しく、高価である。
【0006】
その結果、これらの3つの合成経路は1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの単離が困難であり、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール類の経済的かつ効率的な工業的製造方法として満足のゆくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61-257974号公報
【特許文献2】特公平7-30031号公報
【特許文献3】米国特許第6,392,058号明細書
【特許文献4】国際公開第2017/004674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであり、農薬、特に除草剤の中間体として有用な1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの効率的な製造方法であって、簡便且つ高収率、高純度で得ることができる工業的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、下記反応式Aに示されるように、ジアルキルアミノアクリル酸エステルとアルキルヒドラジンとを反応させて1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを合成するに際し、副生するジアルキルアミンに対して塩を形成する有機酸を添加すると、ジアルキルアミンによる1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの晶析溶媒に対する溶解度の増加が抑制され、生成したジアルキルアミン塩は晶析溶媒に溶解し、晶析により1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールが結晶として高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。この製造方法は、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの昇華や分解を抑制し、高収率化及びコスト削減が期待できる工業的製造方法を提供するものである。
(反応式A)
【化1】
(式中、R
1、R
2、およびR
3はそれぞれ独立にC1~C6のアルキル基であり、R
4は水素原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C3~C6のシクロアルキル基、またはアリール基であり、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0010】
すなわち、本発明は、上記の反応式Aに従い、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを合成した後、有機酸を添加して晶析し、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を取得することを特徴とする製造方法の発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの製造方法によれば、入手しやすいジアルキルアミノアクリル酸エステルから短工程で簡便な操作によって、農業用除草剤等を製造する上に有用な1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを、従来の方法に比べて簡便且つ高収率、高純度で得ることが可能であり、工業的な製造方法として使用することができる製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
出願人は、以前、一般式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルと、一般式(2)で表されるアルキルヒドラジンと、を反応させることにより、一般式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを得る製造方法について提案した(特願2021-92213)。この反応方法は、従来技術の反応方法に比べて入手しやすいジアルキルアミノアクリル酸エステルを用いて1段階で1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを簡便に得ることができる優れた反応方法であり、当該反応方法を用いた製造方法が提供されている。
【0013】
しかしながら、更に検討を重ねたところ、この製造方法では、副生するジアルキルアミンが晶析時に含まれると、晶析溶媒に対する1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの溶解度が増加し、結晶収率が大きく低下することがわかった。ジアルキルアミンは副生するアルコールや反応に使用した溶媒と共に濃縮により除去可能であるが、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールがジアルキルアミンと塩を形成し、ジアルキルアミンの留出除去の弊害となる。そのためジアルキルアミンは低減するほど高温・高減圧濃縮が必要となるが、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールは高温・高減圧で分解及び昇華が発生することから、濃縮時の分解や昇華による減圧ラインの閉塞が問題となることがわかった。また、沸点が低いジアルキルアミンは悪臭物質であり、高温・高減圧濃縮ではスケールアップするほどガスの発生量が増大する。減圧設備や除害設備の能力にもよるが、大量生産時は熱分解を抑制しつつ短時間でジアルキルアミンを除去することは実質的に難しい。然るに、当該合成方法は、工業的製造方法として設備対応が非常に困難な方法であることがわかった。これに対して、本発明は、有機酸を添加して晶析することにより、一般式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を取得するという方法により、上記の問題を解決したものである。
【0014】
すなわち、本発明に係る1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの製造方法は、上記反応式Aで表されるように、一般式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルと、一般式(2)で表されるアルキルヒドラジンと、を反応させることにより、一般式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを得る製造方法であって、有機酸を添加して晶析することにより、一般式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を取得する、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの製造方法である。
以下、本発明に係る1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの製造方法について、出発原料となる化合物や目的化合物、および反応方法や晶析方法などを含む製造方法について具体的に説明する。
【0015】
(ジアルキルアミノアクリル酸エステル)
出発原料となるジアルキルアミノアクリル酸エステルは、次の一般式(1)で表されるものである。
一般式(1):
【化2】
式中の、R
1、R
2、およびR
3はそれぞれ独立に炭素数が1~6、すなわちC1~C6のアルキル基であり、当該アルキル基には、直鎖のアルキル基および分岐鎖を有するアルキル基のいずれもが含まれ、これらのアルキル基のうちでは、R
1およびR
2としては、メチル基、エチル基が、除去のしやすさならびに経済性の観点から好ましく、メチル基が特に好ましい。また、R
3としてはメチル基、エチル基が、除去のしやすさならびに経済性の観点から好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0016】
このような式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルは、近年需要が大幅に増えているシプロキサン、タリビット、クラビット、ノルフロキサシンなどのフルオロキノロン合成抗菌薬の原料として需要が増加しているものである。
【0017】
また、このような式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルは、酢酸エステルとナトリウムアルコキシドに、一酸化炭素もしくはギ酸エステルを反応させた後、ジアルキルアミンないしはその鉱酸塩を反応させることで容易に合成することができるもので、例えば、東京化成工業株式会社や富士フイルム和光純薬株式会社などから市販品としても入手が可能である。
【0018】
(アルキルヒドラジン)
また、上記ジアルキルアミノアクリル酸エステルと反応させる、アルキルヒドラジンは、一般式(2)で表される化合物である。
一般式(2)
【化3】
式中のR
4は水素原子、炭素数1~6、すなわちC1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C3~C6のシクロアルキル基、またはアリール基であることが好ましく、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0019】
ここで、本発明は、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを得ることを主たる目的とし、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの場合について説明するものであるが、R4が水素原子、アルケニル基またはアリール基の場合、生成物は、それぞれ5-ヒドロキシピラゾール、1-アルケニル-5-ヒドロキシピラゾール、および1-アリール-5-ヒドロキシピラゾールとなり、アルキル基とは異なる置換基とはなるが、この場合であっても、本発明で説明するアルキルヒドラジンを用いて1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを合成する場合と同様に合成することができるものであった。
したがって、反応に用いるヒドラジンの誘導体として、アルキル基でないものも含めた結果、厳密にみて「アルキル」とは言えないものの、一般式(2)で表される化合物について、アルキル基以外の場合を含めて「アルキルヒドラジン」と総称したものである。なお、この点は、アルキルヒドラジンを用いて得られる反応生成物である一般式(3)で表される化合物についても、同様に、アルキル基でない場合も含めて「1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール」と総称している。
【0020】
反応に用いる炭素数が1~6、すなわちC1~C6のアルキル基としては、直鎖のアルキル基および分岐鎖を有するアルキル基のいずれのアルキル基も含まれ、これらのアルキル基のうちでは、メチル基、エチル基が、経済性の観点から好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0021】
また、炭素数が2~6、すなわちC2~C6のアルケニル基としては、直鎖でも分岐鎖のものでもよく、また、二重結合の位置は、末端ないし中間を問わず何れの位置にあってもよい。このようなアルケニル基としては、アリル基が、生理活性や更なる修飾反応の応用性の観点から好ましい。
【0022】
また、炭素数が3~6、すなわちC3~C6のシクロアルキル基としては、シクロアルキル基にアルキル基が置換したものやアルキレン基を介してシクロアルキルが結合した場合も含まれる。なお、シクロアルキル基の場合、炭素数としては、環を構成する炭素の数を意味し、環に結合するアルキル基やアルキレン基の炭素数は、上記の炭素数3~6のものには含まれない。これらの、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基が、生理活性の観点から好ましい。
【0023】
また、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよいが、式中のR4は炭素数が大きくなると反応性が低下するため、炭素数の上限はC18であることが好ましい。なお、R4として、C1~C6のアルキル基、およびC2~C6のアルケニル基の場合、これらの基に上記のC1~C6のアルキル基が置換しているとみなしたとしても、当該アルキル基およびアルキニル基の炭素数は、いずれも6以内のものであることが必要となり、C1~C6のアルキル基が置換している場合を考える必要はない。
【0024】
なお、これらの置換基R4は、医薬、農薬などの中間原料として用いられる場合には、これらに医薬、農薬の中間原料として適合するものが選ばれるが、一般に、アルキル基、アリール基であることが多い。
【0025】
上記のアルキルヒドラジンは、ヒドラジンのアルキル化により合成できるが、例えば、東京化成工業株式会社や富士フイルム和光純薬株式会社などより市販品としても入手することができる。また、このようなアルキルヒドラジンは、水溶液としても市販されており、その濃度は、アルキルヒドラジンの種類によって異なるものの、一般に、30~50%程度である。本発明の製造方法においては、アルキルヒドラジンそのものでも、市販されているような、水溶液でも用いることができる。
【0026】
(1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾール)
上記の式(1)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと、式(2)のアルキルヒドラジンとを反応させて得られる生成物は一般式(3)で表される、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールである。
一般式(3)
【化4】
式中の、R
4は、式(2)で表されるアルキルヒドラジンのR
4と同じ置換基であり、得られる式(3)で表される化合物が農薬や医薬の中間原料であることを考慮すると、R
4としては、アルキル基、アリール基であることが好ましく、これらの基はハロゲン、水酸基、アルコキシ基、またはC1~C6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0027】
ところで、3-置換(例えば、3-アルコキシ基)-アクリル酸エステルとアルキルヒドラジンとの反応による1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの合成では、生成物である1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールが酸性を示すため、アルキルヒドラジンと塩を形成する。そのため、反応を終結させるためには、アルキルヒドラジンを過剰に用いるか、あるいは、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールと塩を形成する塩基成分の添加が必用であった。これに対して、本発明の製造方法では、式(1)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと、式(2)のアルキルヒドラジンとを反応させることにより、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールが得られるが、この際、ジアルキルアミンが副生すると共に、生成物である1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールとジアルキルアミンとが塩を形成するため、過剰な塩基成分を添加することなく、反応が終結することから、簡便且つ高収率、高純度で目的物を得ることができる。
【0028】
本発明の1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを製造するには、反応式Aで示されるように、式(1)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと、式(2)のアルキルヒドラジンとを、無溶媒下もしくは溶媒の存在下で反応させ、有機酸を添加して晶析することにより、目的化合物である式(3)の1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを得ることができる。
【0029】
本発明では、反応における式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルと、式(2)で表されるアルキルヒドラジンとの仕込量は、ジアルキルアミノアクリル酸エステル1.0当量に対してアルキルヒドラジンが0.5~2.0当量の範囲であり、好ましくは0.8~1.2当量の範囲であり、より好ましくは1.0当量である。ジアルキルアミノアクリル酸エステルを過剰に仕込むと、目的化合物である1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールとジアルキルアミノアクリル酸エステルとの副反応により収率が低下する。アルキルヒドラジンを過剰に仕込むと、晶析工程にアルキルヒドラジンが残存し易く、目的化合物である1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの母液へのロスが増加し、収率が低下する。
【0030】
本発明では、式(2)で表されるアルキルヒドラジンは、上述のごとく、アルキルヒドラジンそのもの、すなわち、高純度のアルキルヒドラジンで反応することができるのはもちろんであるが、水や他の溶媒を含有したアルキルヒドラジンであっても反応することができる。例えば、市販されている水を含むアルキル(例えば、メチル)ヒドラジンも、水を除去することなく、水を含有する水溶液の状態でそのまま用いることができ、アルキル(メチル)ヒドラジンをそのまま用いた場合とほぼ同等の結果を得ることができる。アルキルヒドラジンは一般的に引火点が低く、酸化により引火しやすい性質を持つが、水の存在は、アルキルヒドラジンの引火点を低下させ、取り扱いが容易となるという面で好ましいこともある。
【0031】
本発明では、反応は無溶媒でも可能であるが、反応熱を除去するため溶媒を使用してもよい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリルが挙げられる。これらの溶媒のうち、アルコール、ニトリルが好ましく、アルコールが特に好ましい。これらの溶媒は単独でも2種以上を混合しても使用が可能であり、混合比率は任意の割合が可能である。溶媒の使用量は式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステル1.0質量部に対して0.01~5.0質量部の範囲であり、好ましくは0.1~1.0質量部の範囲が好ましい。
【0032】
反応は、式(1)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと式(2)のアルキルヒドラジンとを反応させればよく、式(1)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと式(2)のアルキルヒドラジンとを反応容器中に同時に添加、混合して反応してもよいし、式(1)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと式(2)のアルキルヒドラジンとの何れかの化合物に、他方の化合物を添加しつつ反応させてもよい。本反応は発熱を伴うことから、式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルあるいは式(2)で表されるアルキルヒドラジンの何れかを滴下して反応すること、または式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルと式(2)で表されるアルキルヒドラジンを同時に滴下して反応することが望ましいが、未反応のジアルキルアミノアクリル酸エステルは温度が高いと分解が進行するため、(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルを滴下することがより望ましい。
【0033】
原料の滴下温度は、式(2)で表されるアルキルヒドラジンを滴下することで反応する場合、または式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルと式(2)で表されるアルキルヒドラジンと同時に滴下することで反応する場合は、低い温度が望ましい。原料滴下の温度範囲は-20℃~60℃であり、0℃~40℃が好ましい。原料滴下後の反応温度の範囲は0℃~80℃であり、0℃~60℃が好ましい。式(1)で表されるジアルキルアミノアクリル酸エステルを滴下することで反応する場合、原料の滴下温度および原料滴下後の反応温度の範囲は0℃~80℃であり、0℃~60℃が好ましい。反応が進行するにしたがって反応速度が低下することから、反応後半は反応温度を上げることが好ましい。本発明では、原料の滴下時間は1~20時間の範囲であり、好ましくは2~10時間の範囲である。原料滴下後の反応時間は1~30時間の範囲であり、好ましくは2~20時間の範囲である。
【0034】
これらの反応温度の範囲、反応時間の範囲であれば、位置異性体の生成が少なく、高純度かつ高収率で最終反応物を得ることができる。なお、反応温度が上記範囲よりも高い場合、および反応時間が上記範囲よりも長い場合には、副反応が起こり、収率の低下や純度の低下が見られるため、上記の温度範囲および時間の範囲で反応を行うことが好ましい。
また、原料滴下の際の温度は、滴下中の過剰な反応を避けるため、低い方がよいが、上記の滴下温度、滴下時間の範囲であれば、滴下後の反応に影響を与えることがなく、好ましいものとなる。
【0035】
本発明では、式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を晶析により取得するが、副生するジアルキルアミンが残存すると1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの晶析溶媒への溶解度を大きく増大させるため、晶析前に除去することが望ましい。ジアルキルアミンは濃縮により除去ができるが、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールは熱に不安定であり濃縮中に分解が進行する。特にスケールアップすると沸点が低く悪臭物質であるジアルキルアミンの処理に時間を要し、熱分解により収率が低下する。また、ジアルキルアミンの除去率が上がると1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの昇華が発生するため、冷却器や減圧ラインが閉塞する。以上のことからジアルキルアミンは濃縮によりすべてを除去することは実質的に困難であるため、一部を除去することが望ましい。濃縮は常圧や減圧により実施され、減圧度は常圧から真空までの範囲で実施できる。使用する溶媒、副生するアルコールやアミンの種類にもよるが、一般に濃縮温度は30~120℃の範囲であり、好ましくは50~100℃の範囲である。また、濃縮時に窒素などの不活性ガス或いは揮発性の有機溶媒を滴下しながら濃縮することで、ジアルキルアミンがガス及び溶媒と同伴して留出し、除去効果の増大及び濃縮時間の短縮が可能となる。
【0036】
濃縮により留去されずに残存したジアルキルアミンは、晶析時に1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶化を阻害する。晶析溶媒によって異なるが、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの晶析溶媒に対する溶解度は、残存しているジアルキルアミン量に対して、数倍当量も増加する。これに対し、ジアルキルアミン塩を形成し、且つ晶析溶媒に溶解する塩を形成する有機酸を添加することにより、晶析溶媒に対する1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの溶解度は、残存しているジアルキルアミン量の当量を大きく下回る当量まで低下する。晶析条件によって異なるが、ジアルキルアミンが残存している晶析時に有機酸を添加することにより、ジアルキルアミンが要因である1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの溶解度は約1/10まで低下する。添加する有機酸の当量数が少ないと、塩を形成しないジアルキルアミンによる1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの溶解度増加が見られ、また、過剰であっても1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの溶解度が増加することから、晶析時に含まれる塩基成分の0.8~1.2当量の範囲であり、好ましくは1.0当量である。
【0037】
形成するジアルキルアミン塩の量が晶析溶媒の溶解度を超えると、晶析により1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶を取得する際に、ジアルキルアミン塩が1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶中に混入するため、有機酸の添加量は少ないほど望ましい。副生するジアルキルアミンは副生するアルコールや溶媒の濃縮により50%以上が除去されるが、ジアルキルアミンの濃縮率が上がるほど1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの分解も進行する。したがって、添加する有機酸としては、副生するジアルキルアミンの50%当量以下とすることが望ましい。
【0038】
添加する有機酸としては、ジアルキルアミンと形成する塩が晶析溶媒に溶解する必要があり、また、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールがジアルキルアミンと塩を形成するため、1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールより強い酸、つまりpKaとしては3以下の有機酸が使用される。酸の種類としては、特に限定されないが、有機スルホン酸やカルボン酸が好ましく、具体的には、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などが用いられる。
【0039】
本発明では、式(3)で表される1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを再結晶により結晶を取得するが、晶析溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルが好ましく、特にアセトニトリルや酢酸エチルが好ましい。
【0040】
以上のように、本発明における反応後の晶析工程は、好ましくは、まず、反応上がり液中の副生したジアルキルアミンを除去、好ましくは50%当量以上除去した後に、特定の有機酸を添加し、晶析を行うことになるが、この際、必要に応じて晶析溶媒を用いることができる。ここで、副生ジアルキルアミンの除去は、例えば、反応上がり液を常圧下および/または減圧下で濃縮することにより行うことができるが、イオン交換樹脂や吸着剤による処理などアミンを除去できる他の方法によっても可能である。その後、残存するジアルキルアミンの量に応じて、有機酸を添加して、通常の手法により晶析を行うことにより、目的生成物の結晶を得ることができる。
【0041】
晶析により分離した1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールは、晶析溶媒に溶解しているジアルキルアミン塩を除去するために、晶析溶媒で洗浄することが望ましい。晶析溶媒により洗浄することにより、得られた1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールの結晶中のジアルキルアミン塩の含量は、0.1%以下に除去することができる。再結晶後に濾過、乾燥することにより、高純度の一般式(3)で表される1-アルキル―5-ヒドロキシピラゾールを得ることができる。この場合、蒸留やカラムクロマトグラフィー等の精製工程は一切必要としない、簡便な製造方法が提供される。
【実施例0042】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。
【0043】
実施例1
冷媒冷却還流管を付した1000mLの4つ口フラスコ中にモノメチルヒドラジン115.7g(2.5mol)とメタノール160.7gを加え、温度を20℃以下に保持しながらジメチルアミノアクリル酸エチル71.9g(0.5mol)を30分かけて滴下した。その後、20℃で1時間撹拌した。撹拌後、ジメチルアミノアクリル酸エチル287.7g(2.0mol)を2時間かけて滴下した後、60℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールの収率は95.8%、位置異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールの収率は0.6%であった。
【0044】
反応終了後、反応液636.0gを減圧濃縮により溶媒とともに副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は80℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると34.3gであり、副生量の70%が除去された。濃縮後、アセトニトリル275.0gとパラトルエンスルホン酸一水和物143.3g(0.75mol)を加え、60℃で溶解後に、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが167.0g(1.70mol)得られた。収率は67.8%であり、純度は99.9%であった。結晶中のパラトルエンスルホン酸・ジメチルアミン塩は0.1%以下であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0045】
実施例2
冷媒冷却還流管を付した3000mLの4つ口フラスコ中にモノメチルヒドラジン393.5g(8.5mol)とメタノール546.3gを加え、温度を20℃以下に保持しながらジメチルアミノアクリル酸エチル245g(1.7mol)を30分かけて滴下した。その後、20℃で1時間撹拌した。撹拌後、ジメチルアミノアクリル酸エチル978.2g(6.8mol)を2時間かけて滴下した後、60℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールの収率は95.8%、位置異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールの収率は0.6%であった。
【0046】
反応終了後、反応液2163gの液中にメタノール291.8gを吹き込みながら減圧濃縮により溶媒とともに、副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は80℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると48.5gであり、副生量の87.3%が除去された。濃縮後、アセトニトリル935.0gとパラトルエンスルホン酸一水和物204.7g(1.08mol)を加え、60℃で溶解後、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を遠心分離機で分離し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが604.0g(6.15mol)得られた。収率は72.3%であり、純度は99.9%であった。結晶中のパラトルエンスルホン酸・ジメチルアミン塩は0.1%以下であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0047】
実施例3
冷媒冷却還流管を付した1000mLの4つ口フラスコ中にモノメチルヒドラジン115.7g(2.5mol)とメタノール160.7gを加え、温度を20℃以下に保持しながらジメチルアミノアクリル酸エチル72g(0.5mol)を30分かけて滴下した。その後、20℃で1時間撹拌した。撹拌後、ジメチルアミノアクリル酸エチル287.7g(2.0mol)を2時間かけて滴下した後、60℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールの収率は95.7%、位置異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールの収率は0.6%であった。
【0048】
得られた反応液636.1gのうち100.1gの液中に窒素を吹込みながら減圧濃縮により溶媒とともに、副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は80℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると3.9gであり、副生量の11.6%(副生量の88.4%が除去された)が残存した。濃縮液にアセトニトリル82.5gとパラトルエンスルホン酸一水和物16.6g(0.09mol)を加え、60℃に溶解後、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが56.9g(0.58mol)得られた。収率は77.3%であり、純度は99.9%であった。結晶中のパラトルエンスルホン酸・ジメチルアミン塩は0.1%以下であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0049】
実施例4
冷媒冷却還流管を付した500mLの4つ口フラスコ中にモノメチルヒドラジン50.9g(1.1mol)とメタノール70.7gを加え、温度を20℃以下に保持しながらジメチルアミノアクリル酸エチル31.7g(0.2mol)を30分かけて滴下した。その後、20℃で1時間撹拌した。撹拌後、ジメチルアミノアクリル酸エチル126.6g(0.9mol)を2時間かけて滴下した後、60℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールの収率は94.8%、位置異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールの収率は0.6%であった。
【0050】
反応終了後、反応液278.9gの液中に窒素を吹き込みながら減圧濃縮により溶媒とともに、副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は90℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると4.3gであり、副生量の91.4%が除去された。濃縮後、アセトニトリル121.0gを加えたアセトニトリル溶液222.8gのうち101.3gにメタンスルホン酸4.1g(0.04mol)を加え、60℃に溶解後、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが33.5g(0.33mol)得られた。収率は66.7%であり、純度は99.9%であった。結晶中のメタンスルホン酸・ジメチルアミン塩は0.1%以下であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0051】
実施例5
実施例3と同様にして得られた反応液636.1gを減圧濃縮により溶媒とともに副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は80℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると24.5gであり、副生量の78.7%が除去された。濃縮後、アセトニトリル275.5gを加えたアセトニトリル溶液561.8gの内112.4gにトリフルオロメタンスルホン酸16.3g(0.11mol)を加え、60℃で溶解後に、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが34.9g(0.36mol)得られた。収率は69.8%であり、純度は99.9%であった。結晶中のトリフルオロメタンスルホン酸・ジメチルアミン塩は0.1%以下であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0052】
実施例6
実施例5で得られたアセトニトリル溶液561.8gの内112.4gにギ酸5.0g(0.11mol)を加え、60℃で溶解後に、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが22.6g(0.23mol)得られた。収率は45.1%であり、純度は99.9%であった。結晶中のギ酸・ジメチルアミン塩は0.1%以下であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0053】
比較例1
実施例3で得られた反応液636.1gのうち100.1gの液中に窒素を吹き込みながら減圧濃縮により溶媒と共に、副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は80℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると4.0gであり、副生量の11.8%(副生量の88.2%が除去された)が残存した。濃縮液にアセトニトリル82.5gを加え、60℃に溶解後、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが30.2g(0.31mol)得られた。収率は41.0%であり、純度は99.9%であった。異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0054】
比較例2
実施例5で得られたアセトニトリル溶液561.8gの内220.3gを60℃に溶解後、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが13.4g(0.14mol)得られた。収率は13.7%であり、純度は99.9%であった。異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
【0055】
比較例3
実施例4と同様にして得られた反応液278.9gの液中に窒素を吹き込みながら減圧濃縮により溶媒とともに、副生したジメチルアミンを除去した。濃縮終了時の濃縮液温度は90℃であり、減圧度は50mmHgであった。濃縮液中のジメチルアミンを分析すると5.7gであり、副生量の88.6%が除去された。濃縮後、アセトニトリル121.0gを加えて得られたアセトニトリル溶液224.2gのうち101.9gに硫酸2.9g(0.03mol)を加え、60℃に溶解後、0℃に冷却して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、集めた結晶を乾燥すると、1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールが36.6g(0.33mol)得られた。収率は65.5%であり、純度は87.8%であった。結晶中の硫酸・ジメチルアミン塩は12.2%であり、異性体である1-メチル-3-ヒドロキシピラゾールは検出されなかった。
本発明の製造方法は、農薬用除草剤として有用な1-アルキル-5-ヒドロキシピラゾールを、入手しやすいジアルキルアミノアクリル酸エステルから簡便且つ高収率、高純度で得ることができ、工業的な製造方法として有用なものである。