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特開2024-5828塗工装置用データ処理装置、塗工装置用データ処理方法、塗工装置用データ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005828
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】塗工装置用データ処理装置、塗工装置用データ処理方法、塗工装置用データ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20240110BHJP
   G01D 9/00 20060101ALI20240110BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B05C11/00
G01D9/00 F
G01D9/00 A
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106230
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【テーマコード(参考)】
2F070
4F042
【Fターム(参考)】
2F070AA01
2F070BB01
2F070CC11
2F070DD01
2F070FF09
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA14
4F042DF23
4F042DH09
4F042ED03
(57)【要約】
【課題】効率的に塗工装置のデータを保存できる塗工装置用データ処理装置等を提供する。
【解決手段】塗工装置2用のデータ処理装置1は、基材3に塗工処理を施す塗工装置2の生データを取得する生データ取得部11と、所定の基準期間に亘って取得された一連の生データに統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する統計データ生成部13と、統計データを保存する統計データ保存部14と、を備える。統計データに基づいて基準期間における塗工装置2の異常を判定する異常判定部15と、異常が判定された基準期間に亘って取得された一連の生データを保存する生データ保存部16と、異常が判定されなかった基準期間に亘って取得された一連の生データを破棄する生データ破棄部17を更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に塗工処理を施す塗工装置の生データを取得する生データ取得部と、
所定の基準期間に亘って取得された一連の前記生データに統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する統計データ生成部と、
前記統計データを保存する統計データ保存部と、
を備える塗工装置用データ処理装置。
【請求項2】
前記統計データに基づいて前記基準期間における前記塗工装置の異常を判定する異常判定部と、
異常が判定された前記基準期間に亘って取得された一連の前記生データを保存する生データ保存部と、
を更に備える請求項1に記載の塗工装置用データ処理装置。
【請求項3】
前記異常判定部によって異常が判定されなかった前記基準期間に亘って取得された一連の前記生データを破棄する生データ破棄部を更に備える、請求項2に記載の塗工装置用データ処理装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、所定の異常判定閾値と前記統計データの比較に基づいて、前記基準期間における前記塗工装置の異常を判定する、請求項2に記載の塗工装置用データ処理装置。
【請求項5】
前記統計データは、前記基準期間に亘って取得された一連の前記生データの、最大値、最小値、ピークピーク値、二乗平均平方根、周波数解析データの少なくともいずれかを含む、請求項1から4のいずれかに記載の塗工装置用データ処理装置。
【請求項6】
前記基準期間は、前記基材が所定の基準長を移動する期間である、請求項1から4のいずれかに記載の塗工装置用データ処理装置。
【請求項7】
基材に塗工処理を施す塗工装置の生データを取得する生データ取得ステップと、
所定の基準期間に亘って取得された一連の前記生データに統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する統計データ生成ステップと、
前記統計データを保存する統計データ保存ステップと、
を備える塗工装置用データ処理方法。
【請求項8】
基材に塗工処理を施す塗工装置の生データを取得する生データ取得ステップと、
所定の基準期間に亘って取得された一連の前記生データに統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する統計データ生成ステップと、
前記統計データを保存する統計データ保存ステップと、
をコンピュータに実行させる塗工装置用データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗工装置用データ処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材に塗工処理を施す塗工装置が開示されている。塗工処理部の上流および下流には、当該塗工処理部に対して基材を押圧しながら、上流側から下流側に向かう搬送方向に沿って塗工前後の基材を搬送するガイドローラが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-217947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗工装置の監視等を目的として、基材の張力等の各種の生データが測定および保存される。典型的には、基材が所定の基準長を移動する度に、生データの測定および保存が行われる。しかし、塗工装置における基材の搬送速度は例えば印刷機における基材の搬送速度より小さいことが多く、基準長毎の生データの測定および保存では時間間隔が大きくなってしまい、塗工装置の挙動を正確に把握することが困難になる恐れがある。一方、基準長を短くすることで生データの測定および保存の時間間隔を短くすることもできるが、保存される生データの量が増えてしまうため、確認に長い時間を要するだけでなく、保存のためのストレージも大容量化してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、効率的に塗工装置のデータを保存できる塗工装置用データ処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の塗工装置用データ処理装置は、基材に塗工処理を施す塗工装置の生データを取得する生データ取得部と、所定の基準期間に亘って取得された一連の生データに統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する統計データ生成部と、統計データを保存する統計データ保存部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、生データに比べて量が少ない統計データを保存することで、効率的に塗工装置のデータを保存できる。
【0008】
本発明の別の態様は、塗工装置用データ処理方法である。この方法は、基材に塗工処理を施す塗工装置の生データを取得する生データ取得ステップと、所定の基準期間に亘って取得された一連の生データに統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する統計データ生成ステップと、統計データを保存する統計データ保存ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率的に塗工装置のデータを保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基材に塗工処理を施す塗工装置用のデータ処理装置の構成を模式的に示す。
図2】生データ取得部によって取得される生データと、統計データ生成部によって生成される統計データの具体例を示す。
図3図2における生データの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、基材3に塗工処理を施す塗工装置2用のデータ処理装置1の構成を模式的に示す。基材3としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状またはシート状のものが例示される。本実施形態では、シート状の基材3を搬送方向(図1において概ね左から右に向かう方向)に搬送しながら、その表面および/または裏面に塗工処理を施すロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式のコータまたは塗工装置2について説明する。
【0014】
塗工装置2は、塗工処理部を構成する第1塗工ローラ21および第2塗工ローラ22と、基材3の張力を検出する張力検出器23と、基材3の搬送方向の移動量を測定する測長ローラ24を備える。
【0015】
第1塗工ローラ21および第2塗工ローラ22は、基材3の塗工面(表面および/または裏面)に塗工材をコーティングする塗工処理部を構成する。例えば、第1塗工ローラ21の表面の一部は不図示の液槽等に溜められた塗工材に浸っており、第1塗工ローラ21が図1における時計回り方向に回転することで、基材3を搬送方向に搬送しながら表面(図1における下面)に塗工材をコーティングする。同様に、第1塗工ローラ21に加えてまたは代えて、第2塗工ローラ22の表面の一部が不図示の液槽等に溜められた塗工材に浸っており、第2塗工ローラ22が図1における反時計回り方向に回転することで、基材3を搬送方向に搬送しながら裏面(図1における上面)に塗工材をコーティングしてもよい。
【0016】
第1塗工ローラ21および第2塗工ローラ22は、基材3の塗工面に塗工処理を施しながら、基材3を表裏両面から挟み込んで搬送する。例えば、第1塗工ローラ21および第2塗工ローラ22の一方は、不図示の駆動モータによって回転駆動される駆動ローラであり、第1塗工ローラ21および第2塗工ローラ22の他方は、駆動ローラと連動して回転する従動ローラである。
【0017】
張力検出器23は、基材3の搬送方向の張力を検出する。張力検出器23の構成や原理は任意であるが、例えば、エアシリンダ等によって付勢されて基材3に張力を付加するダンサローラを備え、その位置を張力として検出するダンサを張力検出器23として利用してもよい。後述するように、本実施形態ではデータ処理装置1の生データ取得部11が、張力検出器23によって検出された基材3の張力を、データ処理装置1の処理対象の「生データ」として取得する。但し、基材3の張力は生データの一例に過ぎず、塗工装置2の運用や監視に有用な各種のデータを、基材3の張力に加えてまたは代えて、データ処理装置1の処理対象の生データとしてもよい。このような他の生データとしては、後述する測長ローラ24においても検出可能な基材3の各部の搬送速度、塗工厚その他の塗工品質の指標、塗工装置2の各部や周囲における温度、湿度、気圧、輝度等が例示される。
【0018】
測長ローラ24は、基材3の搬送方向の移動量を測定する。測長ローラ24自体および/または測長ローラ24を回転駆動する不図示の駆動モータには、それらの回転角度を検出するエンコーダが設けられる。例えばインクリメンタル方式のエンコーダは、所定回数(複数)のA相、B相のパルス信号と一回のZ相のパルス信号を、測長ローラ24および/または駆動モータの一回転毎に出力する。A相、B相のパルス信号はカウンタによって計数され、Z相のパルス信号によって計数値がリセットされる。測長ローラ24および/または駆動モータの各回転において増加するA相、B相のパルス信号の計数値は、測長ローラ24および/または駆動モータの位相または回転位置を表す。
【0019】
後述するように、データ処理装置1の基準長測定部12は、基材3が所定の基準長を移動したことを検知するが、このような基準長はエンコーダが出力するZ相のパルスに基づいて設定されるのが好ましい。例えば、測長ローラ24に設けられたエンコーダがZ相のパルスを出力する間隔を基準長として設定すれば、測長ローラ24の周長(典型的には円周)が基準長となる。また、測長ローラ24に設けられたエンコーダがZ相のパルスをN回(Nは自然数)出力する間隔を基準長として設定すれば、測長ローラ24の周長のN倍が基準長となる。このようにエンコーダの通常動作において出力されるZ相のパルスを利用することで、基準長測定部12は特段の追加的な処理を行うことなく基準長を直接的に測定できる。なお、基準長はA相、B相のパルスに基づいて設定されてもよい。また、エンコーダは、アブソリュート方式等の他の任意の方式の位相検出器または回転位置検出器でもよい。
【0020】
データ処理装置1は、生データ取得部11と、基準長測定部12と、統計データ生成部13と、統計データ保存部14と、異常判定部15と、生データ保存部16と、生データ破棄部17を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。例えば、データ処理装置1の機能ブロックの一部または全部は、塗工装置2と同じ敷地や建物に設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよいし、塗工装置2と異なる敷地や建物に設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよい。
【0021】
生データ取得部11は、塗工装置2の生データを取得する。本実施形態の例では、生データ取得部11が、張力検出器23によって検出された基材3の張力を生データとして取得する。生データ取得部11が生データを取得する頻度は可能な限り高いことが好ましく、例えば生データ取得部11が実現されるコンピュータやプロセッサの制御周期(典型的には数ms)とするのが好ましい。なお、生データ取得部11は、後述する基準長測定部12が最初の基準長(例えば、測長ローラ24に設けられたエンコーダが出力する最初のZ相の信号)を検知したことをトリガとして、張力検出器23からの生データの取得を開始してもよい。また、生データ取得部11は、少なくとも基準長分の生データを一時的に記憶する一次記憶領域を備え、後述する異常判定部15の判定結果に応じて後述する生データ保存部16へのデータ転送処理を実行する。
【0022】
基準長測定部12は、測長ローラ24および/または駆動モータに設けられたエンコーダが出力するパルスに基づいて、基材3が所定の基準長を移動したことを検知する。以下では基準長をリピート長ともいう。統計データ生成部13は、所定の基準期間に亘って生データ取得部11によって取得された一連の生データ(張力等)に統計処理を施して、少なくとも一つの統計データを生成する。この基準期間は、基材3が基準長測定部12によって測定される基準長を移動する期間である。例えば、周長が1,000mmの測長ローラ24に設けられたエンコーダがZ相のパルスを出力する間隔(すなわち1,000mm)を基準長とする場合、統計データ生成部13は基材3が1,000mmを移動する間に生データ取得部11によって数msの制御周期で取得された一連の生データに統計処理を施す。つまり、基材3が1,000mmを移動する度に、一組の統計データが統計データ生成部13によって生成される。
【0023】
統計データ生成部13によって生成される統計データは、基準期間すなわち基準長(1,000mm)に亘って取得された一連の生データの、最大値、最小値、ピークピーク値(pp値:peak-to-peak value)、二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)、周波数解析データの少なくともいずれかを含む。ここで、周波数解析データとは、基準期間に亘って取得された一連の時間領域の生データを、フーリエ変換等によって周波数領域に変換することで得られる各種のデータ(例えば、特定の周波数区間におけるデータの強度)である。
【0024】
図2は、生データ取得部11によって取得される生データと、統計データ生成部13によって生成される統計データの具体例を示す。また、図3は、図2における生データの時間変化を示すグラフである。これらの例における生データは、張力検出器23によって検出される基材3の張力の基準値「0」からの正負方向の変動である。
【0025】
図2における「データ番号」は、生データ取得部11が実現されるコンピュータやプロセッサの制御周期(数ms)で取得される生データに便宜的に付される通し番号である。図2および図3の例では、基材3の搬送速度が一定の生産速度であることを前提として、「20」個のデータ番号または生データが基準期間および/または基準長に相当する。つまり、基材3が基準長の1,000mmを移動する間に「20」個の生データが生データ取得部11によって取得され、基材3が基準長の1,000mmを移動する度に一組の統計データが統計データ生成部13によって生成される。
【0026】
具体的には、基準長測定部12が最初の基準長(例えば、測長ローラ24に設けられたエンコーダが出力する最初のZ相の信号)を検知したことをトリガとして起動される生データ取得部11は、起動直後にデータ番号「0」の生データ「0.000」を取得する。また、統計データ生成部13は、基準長測定部12が最初の基準長を検知したことをトリガとして生データ取得部11と実質的に同時に起動されてもよく、データ番号「0」までの基準期間および/または基準長の統計データとして、基準期間および/または基準長の到達時点であるデータ番号「0」の生データ「0.000」を「周期データ」として生成してもよい。但し、この「周期データ」は「生データ」と同じであり、この時点では最大値等の他の統計データを生成するための他の「生データ」が生データ取得部11によって収集されていないため、統計データ生成部13は未だ起動されなくてもよい。
【0027】
データ番号「0」の時点から基材3が基準長の1,000mmを移動する間(周長1,000mmの測長ローラ24が一回転する間)に、生データ取得部11はデータ番号「1」~「20」の「20」個の生データを取得する。また、統計データ生成部13は、データ番号「1」~「20」の基準期間および/または基準長の統計データとして、基準期間および/または基準長の到達時点であるデータ番号「20」の生データ「0.913」を「周期データ」として生成すると共に、データ番号「1」~「20」の一連の生データの「MAX」(最大値)、「MIN」(最小値)、「RMS」(二乗平均平方根)、「PP」(ピークピーク値)等の他の統計データを生成する。図2の例では、データ番号「14」の生データ「0.913」がデータ番号「20」における「MAX」となり、データ番号「11」の生データ「-1.000」がデータ番号「20」における「MIN」となり、両者の差である「1.991」がデータ番号「20」における「PP」となる。なお、データ番号「20」における「RMS」(0.473)は、二乗平均平方根の周知の定義をデータ番号「1」~「20」の一連の生データに適用することで得られる。
【0028】
データ番号「20」の時点から基材3が基準長の1,000mmを移動する間に、生データ取得部11はデータ番号「21」~「40」の「20」個の生データを取得する。また、統計データ生成部13は、データ番号「21」~「40」の基準期間および/または基準長の統計データとして、基準期間および/または基準長の到達時点であるデータ番号「40」の生データ「0.745」を「周期データ」として生成すると共に、データ番号「21」~「40」の一連の生データの「MAX」、「MIN」、「RMS」、「PP」等の他の統計データを生成する。図2の例では、データ番号「33」の生データ「1.000」がデータ番号「40」における「MAX」となり、データ番号「30」の生データ「-1.488」がデータ番号「40」における「MIN」となり、両者の差である「2.488」がデータ番号「40」における「PP」となる。なお、データ番号「40」における「RMS」(0.583)は、二乗平均平方根の周知の定義をデータ番号「21」~「40」の一連の生データに適用することで得られる。
【0029】
データ番号「40」の時点から基材3が基準長の1,000mmを移動する間に、生データ取得部11はデータ番号「41」~「60」の「20」個の生データを取得する。また、統計データ生成部13は、データ番号「41」~「60」の基準期間および/または基準長の統計データとして、基準期間および/または基準長の到達時点であるデータ番号「60」の生データ「-0.305」を「周期データ」として生成すると共に、データ番号「41」~「60」の一連の生データの「MAX」、「MIN」、「RMS」、「PP」等の他の統計データを生成する。図2の例では、データ番号「58」の生データ「0.993」がデータ番号「60」における「MAX」となり、データ番号「55」の生データ「-1.000」がデータ番号「60」における「MIN」となり、両者の差である「1.993」がデータ番号「60」における「PP」となる。なお、データ番号「60」における「RMS」(0.499)は、二乗平均平方根の周知の定義をデータ番号「41」~「60」の一連の生データに適用することで得られる。
【0030】
図3は、図2に示されているデータ番号「0」~「60」の生データを含む生データの時間変化を示すグラフである。本図では、図2に続くデータ番号「61」~「200」の生データも示されている。菱形のマークは、統計データ生成部13が基準期間および/または基準長の到達時点であるデータ番号「0」「20」「40」「60」「80」等において統計データとして生成または保存する「周期データ」を表している。
【0031】
統計データ保存部14は、統計データ生成部13によって生成された統計データを保存する。図2に示されるように、統計データ生成部13は基準期間および/または基準長に相当する「20」個の生データが生データ取得部11によって取得される度に、「周期データ」「MAX」「MIN」「RMS」「PP」の「5」個の統計データを生成する。後述するように統計データに基づいて異常が検知された場合を除き、「20」個の生データは保存されずに破棄され、「5」個の統計データのみが統計データ保存部14によって保存される。このように本実施形態によれば、生データに比べて量が少ない統計データを保存することで、効率的に塗工装置2のデータを保存できる。なお、基準期間および/または基準長に相当する「20」という生データの数は便宜的な例に過ぎず、実際には「20」より大幅に多くなる場合もある。このように基準期間および/または基準長の生データ数が多くなったとしても、統計データ保存部14によって保存される統計データの数は変わらないため、保存のためのストレージ(統計データ保存部14)の大容量化を効果的に防止できる。
【0032】
異常判定部15は、統計データ生成部13によって生成された統計データに基づいて基準期間および/または基準長における塗工装置2の異常を判定する。具体的には、異常判定部15は、所定の異常判定閾値と各統計データの比較に基づいて、基準期間および/または基準長における塗工装置2の異常を判定する。図2の例では、「周期データ」「MAX」「MIN」「RMS」「PP」の「5」個の統計データのそれぞれについて、個別に異常判定閾値が設定される。異常判定閾値は固定的な値でもよいし、過去の統計データの平均値等の統計値に基づいて適応的に設定される値でもよい。例えば、「MIN」については「-1.200」という固定的な異常判定閾値が設定され、それを各基準期間および/または各基準長における「MIN」が下回った場合、当該各基準期間および/または当該各基準長において塗工装置2に異常があったと異常判定部15によって判定される。
【0033】
図2の例では、データ番号「40」の「MIN」(-1.488)が異常判定閾値(-1.200)を下回っているため、データ番号「21」~「40」の基準期間および/または基準長において塗工装置2に異常があったと異常判定部15によって判定される。図3では、異常判定部15が異常を判定したデータ番号「21」~「40」の基準期間および/または基準長が矩形枠で囲まれている。この異常の原因はデータ番号「30」の生データ「-1.488」であるが、異常判定部15は当該生データではなく統計データとしての「MIN」に基づいて異常を的確に判定できる。このように、異常判定部15は膨大な生データを一つずつ確認する必要がなく、少数の統計データに基づいて効率的に塗工装置2の異常を判定できる。
【0034】
生データ保存部16は、異常判定部15によって異常が判定された基準期間および/または基準長に亘って取得された一連の生データを保存する。前述のように、一連の生データは生データ取得部11における一次記憶領域に一時的に記憶されており、異常が判定された基準期間および/または基準長に対応するもののみが生データ保存部16に転送されて保存される。図2および図3の例では、異常が判定されたデータ番号「21」~「40」の生データが生データ保存部16によって保存される。このように、異常が判定されたデータ番号「21」~「40」の基準期間および/または基準長については、統計データ生成部13によって生成されたデータ番号「40」の統計データが統計データ保存部14に保存されるのに加え、データ番号「21」~「40」の生データが生データ保存部16に保存される。生データ保存部16によって保存された一連の生データを参照することで、当該基準期間および/または当該基準長における塗工装置2の異常の詳細な分析や原因の特定を効果的に行える。
【0035】
なお、統計データ保存部14および生データ保存部16は、同じストレージで構成してもよいし、異なるストレージで構成してもよい。また、統計データ保存部14が統計データを保存する定常監視用のファイルと、生データ保存部16が生データを保存する異常記録用のファイルは、同じものでもよいし異なるものでもよい。このようなストレージやファイルの構成に関わらず、統計データ保存部14による統計データ(定常監視データ)と生データ保存部16による生データ(異常記録データ)は、互いに識別可能かつ互いに参照可能な態様で保存されるのが好ましい。
【0036】
一方、生データ破棄部17は、異常判定部15によって異常が判定されなかった基準期間および/または基準長に亘って取得された一連の生データを破棄する。具体的には、生データ取得部11における一次記憶領域に一時的に記憶されている生データのうち、異常が判定されなかった基準期間および/または基準長に対応するものが消去される。図2の例では、異常が判定されなかったデータ番号「0」~「20」およびデータ番号「41」~「60」の生データが生データ破棄部17によって破棄される。このように、異常が判定されなかった基準期間および/または基準長については、統計データ生成部13によって生成された最小限の統計データのみが統計データ保存部14に保存され、生データは生データ保存部16に保存されない。従って、本実施形態によれば、生データの保存のためのストレージ(生データ保存部16)の大容量化を効果的に防止できる。
【0037】
以上のような本実施形態によれば、印刷機に比べて基材の搬送速度が小さい塗工装置2においても、小容量のストレージで効率的にデータを保存しながら、挙動や異常を正確に把握できる。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0039】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 データ処理装置、2 塗工装置、3 基材、11 生データ取得部、12 基準長測定部、13 統計データ生成部、14 統計データ保存部、15 異常判定部、16 生データ保存部、17 生データ破棄部。
図1
図2
図3