(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058300
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240418BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165578
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】大島 由也
(72)【発明者】
【氏名】小野 博
(72)【発明者】
【氏名】堀江 亮介
(72)【発明者】
【氏名】山田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 修一
(72)【発明者】
【氏名】鷹巣 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】矢田 剛裕
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA12
5E070CB02
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる、積層コイル部品を提供する。
【解決手段】コイル導体13Aの辺部31Aは、積層時において、引出導体12の影響を受けやすい部分である。コイル導体13Fの辺部32Fは、積層時において、引出導体12の影響を受けにくい部分である。これに対し、辺部31Aは、コイル導体13Aの他の辺部32,33,34、及び辺部32Fよりも線幅が大きい。これにより、積層時において、辺部31Aは、大きな線幅を有することで、引出導体12からの影響を低減することができる。以上より、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで(例えば、
図6(a)参照)、不良品の発生を抑制できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に対向する第1の面及び第2の面を有する素体と、
前記素体内において、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数のコイル導体を積層することによって構成されるコイル部と、
前記素体内において、前記コイル部と接続されて前記第1の面に露出する第1の引出導体と、
前記素体内において、前記コイル導体と接続されて前記第2の面に露出する第2の引出導体と、を備え、
前記第1の引出導体と前記第2の方向で隣り合う第1のコイル導体は、前記第1の面側において、前記第1の面に沿って延在する第1の辺部を含み、
前記第2の引出導体と前記第2の方向で隣り合う第2のコイル導体は、前記第2の面側において、前記第2の面に沿って延在する第2の辺部を含み、
前記第1の辺部は、前記第1のコイル導体の他の辺部、及び前記第2の辺部よりも線幅が大きい、積層コイル部品。
【請求項2】
前記第2の方向において、前記第1の引出導体とは反対側で前記第1のコイル導体と隣り合う第3のコイル導体は、前記第1の面側で前記第1の面に沿って延在する第3の辺部を含み、前記第3の辺部は、前記第3のコイル導体の他の辺部、及び前記第2の辺部よりも線幅が大きい、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第2のコイル導体は前記第1の面側で前記第1の面に沿って延在する第4の辺部を含み、
前記第1の辺部は、前記第4の辺部よりも線幅が大きい、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第1の辺部は、前記第1のコイル導体の前記他の辺部に比べて、前記コイル部における外周側及び内周側の両側に広がって線幅が大きくなっている、請求項1に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、当該素体の面に形成した外部電極と、を備える積層コイル部品が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、積層コイル部品は、素体内に形成されたコイル部と、コイル部と接続されて素体の一方の面に露出する引出導体と、素体の他方の面に露出する引出導体と、を備える。コイル部のコイル導体の四方の辺部の線幅は一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有する積層コイル部品では、各引出導体及びコイル導体を積層するときに、一方の引出導体付近のコイル導体が、引出導体の影響を受けることによって荷崩れ(他の層のコイル導体に対してずれる)してしまう場合があった。これにより、積層コイル部品が狙いの特性を得られないという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる、積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における積層コイル部品は、第1の方向に対向する第1の面及び第2の面を有する素体と、素体内において、第1の方向と直交する第2の方向に複数のコイル導体を積層することによって構成されるコイル部と、素体内において、コイル部と接続されて第1の面に露出する第1の引出導体と、素体内において、コイル導体と接続されて第2の面に露出する第2の引出導体と、を備え、第1の引出導体と第2の方向で隣り合う第1のコイル導体は、第1の面側において、第1の面に沿って延在する第1の辺部を含み、第2の引出導体と第2の方向で隣り合う第2のコイル導体は、第2の面側において、第2の面に沿って延在する第2の辺部を含み、第1の辺部は、第1のコイル導体の他の辺部、及び第2の辺部よりも線幅が大きい。
【0007】
この積層コイル部品では、第1の引出導体と第2の方向で隣り合う第1のコイル導体は、第1の面側において、第1の面に沿って延在する第1の辺部を含む。第2の引出導体と第2の方向で隣り合う第2のコイル導体は、第2の面側において、第2の面に沿って延在する第2の辺部を含む。第1のコイル導体の第1の辺部は、積層時において、第1の引出導体の影響を受けやすい部分である。第2のコイル導体の第2の辺部は、積層時において、第1の引出導体の影響を受けにくい部分である。これに対し、第1の辺部は、第1のコイル導体の他の辺部、及び第2の辺部よりも線幅が大きい。これにより、積層時において、第1の辺部は、大きな線幅を有することで、第1の引出導体からの影響を低減することができる。以上より、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる。
【0008】
第2の方向において、第1の引出導体とは反対側で第1のコイル導体と隣り合う第3のコイル導体は、第1の面側で第1の面に沿って延在する第3の辺部を含み、第3の辺部は、第3のコイル導体の他の辺部、及び第2の辺部よりも線幅が大きくてよい。このように、第1の引出導体と隣り合う第1のコイル導体のみならず、次層の第3のコイル導体の第1の面側の第3の辺部の線幅を大きくすることで、更にコイル導体の荷崩れを抑制できる。
【0009】
第2のコイル導体は第1の面側で第1の面に沿って延在する第4の辺部を含み、第1の辺部は、第4の辺部よりも線幅が大きくてよい。このように、第1の引出導体から離れている第2のコイル導体については、第1の面側の第4の辺部の線幅を大きくしない。このように、第1の引出導体の影響が少ない第4の辺部を不要に大きくすることを抑制できる。
【0010】
第1の辺部は、第1のコイル導体の他の辺部に比べて、コイル部における外周側及び内周側の両側に広がって線幅が大きくなっていてよい。これにより、第1の辺部は、外周側及び内周側の両方にて第1の引出導体の影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる、積層コイル部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態における積層コイル部品の斜視図である。
【
図2】
図1に示す積層コイル部品の概略断面図である。
【
図3】
図1に示す積層コイル部品を分解して各層を積層方向から見た場合の展開図である。
【
図4】コイル導体の通常導体パターン及び幅広導体パターンを示す。
【
図5】コイル導体の通常導体パターン及び幅広導体パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施形態における積層コイル部品1の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態における積層コイル部品1の斜視図である。
図2は、
図1の積層コイル部品の概略断面図である。
図3は、
図1に示す積層コイル部品1を分解して各層を積層方向から見た場合の展開図である。X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差する方向である。本実施形態における積層コイル部品は、複数の層をZ軸方向に積層することによって形成されている。層間の境界は、視認できない程度に一体化されている。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。特に限定されないが、本実施形態では、Y軸方向が請求項における「第1の方向」に該当し、Z軸方向が請求項における「第2の方向」に該当する。
【0015】
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その外表面として、Y軸方向に互いに対向する一対の端面2a(第1の面)及び端面2b(第2の面)と、一対の端面2a,2bを連結するように一対の端面2a,2bの対向方向に延びる4つの側面2c,2d,2e,2fと、を有している。側面2c,2dはZ軸方向に対向する。側面2e,2fはX軸方向に対向する。側面2dは、例えば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(例えば、回路基板又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面として規定される。
【0016】
各端面2a,2bの対向方向と、各側面2c,2dの対向方向と、各側面2e,2fの対向方向とは、互いに略直交している。なお、直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0017】
図2に示されるように、素体2の内部には、コイル部10と、引出導体12(第1の引出導体)と、引出導体14(第2の引出導体)と、が設けられる。コイル部10は、複数のコイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fをスルーホールで電気的に接続することで構成される。コイル部10の中心軸AXは、Z軸方向に延びる。引出導体12は、素体2内において、コイル部10と接続されて端面2aに露出する。引出導体14は、素体2内において、コイル部10と接続されて端面2bに露出する。
【0018】
素体2は、複数の絶縁体層11と、複数のコイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fと、引出導体12,14とが積層されることによって構成されている。各絶縁体層11は、Z軸方向に積層されている。以下、各側面2c,2dの対向方向を「積層方向」という場合もある。なお、積層方向における側面2c側を「上」と称し、積層方向における側面2d側を「下」と称する場合があるが、各層同士の位置関係を特定するために用いる語であり、製造状態や使用状態における上下の方向を限定するものではない。各絶縁体層11は、積層方向からみて略矩形形状を呈している(
図3参照)。
【0019】
各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14は、積層方向に互いに離間して配置されている。各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14の間には、それぞれ絶縁体層11が配置されている。各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14は、積層方向で略同じ厚みを有している。各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14は、絶縁体層11を介して積層方向に互いに重なって配置されている。本実施形態では、上から順に、引出導体12、コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F、及び引出導体14の順で積層されている。
【0020】
各絶縁体層11の材料としては、積層コイル部品1の用途に応じて最適な材料を採用してよい。例えば、積層コイル部品1が積層セラミックコイルである場合、絶縁体層11は、Al、Zr、Ti等を含むガラスセラミックスの焼結体から構成される。例えば、積層コイル部品1が積層フェライトコイルである場合、絶縁体層11は、Fe、Mn、Zn等のフェライト材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体であってよい。例えば、積層コイル部品1がチップビーズである場合、絶縁体層11は、MnFe2O4、ZnFe2O4等のフェライト材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体であってよい。
【0021】
図1に示すように、外部電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、外部電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、各外部電極4,5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。各外部電極4,5は、導電材(例えば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各外部電極4,5は、導電性金属粉末(例えば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各外部電極4,5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、例えばNi、Snなどが用いられる。
【0022】
外部電極4は、端面2a上に位置する電極部分4aと、側面2d上に位置する電極部分4bと、側面2c上に位置する電極部分4cと、側面2e上に位置する電極部分4dと、側面2f上に位置する電極部分4eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分4aは、端面2aの全面を覆っている。電極部分4bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分4cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分4dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分4eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分4a,4b,4c,4d,4eは、一体的に形成されている。
【0023】
外部電極5は、端面2b上に位置する電極部分5aと、側面2d上に位置する電極部分5bと、側面2c上に位置する電極部分5cと、側面2e上に位置する電極部分5dと、側面2f上に位置する電極部分5eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分5aは、端面2bの全面を覆っている。電極部分5bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分5cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分5dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分5eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分5a,5b,5c,5d,5eは、一体的に形成されている。
【0024】
次に、
図3を参照して、各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14の構成について詳細に説明する。
図3に示すように、絶縁体層11は、縁部11a,11b、11e,11fを有している。縁部11aは、端面2aに対応する位置に形成されている。縁部11bは、端面2bに対応する位置に形成されている。縁部11eは、側面2eに対応する位置に形成されている。縁部11fは、側面2fに対応する位置に形成されている。なお、縁部11a,11b,11e,11fの符号は、引出導体12の絶縁体層11にのみ形成されているが、他の絶縁体層11も同様の縁部11a,11b,11e,11fを有する。
【0025】
引出導体12は、辺部21と、引出辺部22と、パッド部23と、を有する。辺部21は、X軸方向の負側の縁部11f(側面2f)側において、縁部11fに沿って延在する。辺部21は、Y軸方向の負側の縁部11a(端面2a)側に設けられる。引出辺部22は、辺部21のY軸方向の負側の端部から、縁部11aまで延びる。パッド部23は、辺部21のY軸方向の正側の端部において、辺部21の線幅よりも幅広な矩形を成している。
【0026】
引出導体14は、辺部26と、引出辺部27と、パッド部28と、を有する。辺部226は、X軸方向の負側の縁部11f(側面2f)側において、縁部11fに沿って延在する。辺部26は、Y軸方向の正側の縁部11b(端面2b)側に設けられる。引出辺部27は、辺部26のY軸方向の正側の端部から、縁部11bまで延びる。パッド部28は、辺部26のY軸方向の負側の端部において、辺部26の線幅よりも幅広な矩形を成している。
【0027】
コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、辺部31,32,33,34と、一対のパッド部36,37を有する。パッド部36は、各辺部の線幅よりも幅広な矩形を成しており、一段上側の絶縁体層11の導体のパッド部とスルーホール導体16を介して電気的に接続される。パッド部37は、各辺部の線幅よりも幅広な矩形を成しており、一段下側の絶縁体層11の導体のパッド部とスルーホール導体16を介して電気的に接続される。
【0028】
辺部31は、Y軸方向の負側の縁部11a(端面2a)側において、縁部11aに沿って延在する。辺部32は、Y軸方向の正側の縁部11b(端面2b)側において、縁部11bに沿って延在する。辺部33は、X軸方向の正側の縁部11e(側面2e)側において、縁部11eに沿って延在する。辺部34は、X軸方向の負側の縁部11f(側面2f)側において、縁部11fに沿って延在する。辺部31,32のX軸方向の正側の端部は、辺部33のY軸方向における端部に接続される。辺部31,32のX軸方向の負側の端部は、辺部34のY軸方向における端部に接続される。四つの辺部31,32,33,34によって略矩形環状の導体パターンが形成される。導体パターンのうち、パッド部36とパッド部37との間の領域では導体パターンが途切れており、辺部が省略されている。
【0029】
コイル導体13A(第1のコイル導体)は、上側の引出導体12とZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Aは、辺部34のY軸方向における略中央位置にパッド部36を有し、辺部31のX軸方向の負側の端部にパッド部37を有する。
【0030】
コイル導体13B(第3のコイル導体)は、Z軸方向において、引出導体12とは反対側でコイル導体13Aと隣り合う。コイル導体13Bは、辺部34のY軸方向における負側の端部にパッド部36を有し、辺部33のY軸方向の負側の端部にパッド部37を有する。なお、パッド部36は、X軸方向における正側へ、辺部34から突出する部分を有する。パッド部37は、X軸方向における負側へ、辺部33から突出する部分を有する。従って、パッド部36,37の突出部分は辺部31として機能する。
【0031】
コイル導体13Cは、上側のコイル導体13BとZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Cは、辺部31のX軸方向における正側の端部にパッド部36を有し、辺部33のY軸方向における略中央位置にパッド部37を有する。コイル導体13Dは、上側のコイル導体13CとZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Dは、辺部32のX軸方向における正側の端部にパッド部37を有し、辺部33のY軸方向における略中央位置にパッド部36を有する。
【0032】
コイル導体13Eは、Z軸方向において、引出導体14とは反対側でコイル導体13Fと隣り合う。コイル導体13Eは、辺部34のY軸方向における正側の端部にパッド部37を有し、辺部33のY軸方向の正側の端部にパッド部36を有する。なお、パッド部37は、X軸方向における正側へ、辺部34から突出する部分を有する。パッド部36は、X軸方向における負側へ、辺部33から突出する部分を有する。従って、パッド部36,37の突出部分は辺部32として機能する。
【0033】
コイル導体13F(第2のコイル導体)は、下側の引出導体14とZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Fは、辺部34のY軸方向における略中央位置にパッド部37を有し、辺部32のX軸方向の負側の端部にパッド部36を有する。
【0034】
ここで、本実施形態においては、辺部31の線幅が他の辺部と同じである通常導体パターン50と、辺部31の線幅が大きくなっている幅広導体パターン51と、が用いられる。幅広導体パターン51では、縁部11a(端面2a)に沿った辺部31が、他の辺部32,33,34よりも線幅が大きい。
図4及び
図5を参照して、通常導体パターン50及び幅広導体パターン51について説明する。
図4(a)(b)(c)は、それぞれコイル導体13A,13B,13Cを示す。
図5(a)(b)(c)は、それぞれコイル導体13D,13E,13Fを示す。
図4(a)(b)(c)及び
図5(a)(b)(c)の上段側は、通常導体パターン50を示し、下段側は、幅広導体パターン51を示す。
【0035】
図4(a)に示すように、通常導体パターン50のコイル導体13Aの辺部31,32,33,34は、それぞれ線幅W1,W2,W3,W4を有する。線幅とは、辺部31,32,33,34の延在方向及び積層方向と直交する方向における寸法である。線幅W1,W2,W3,W4は、互いに同じ寸法でもよいし、性能に影響を及ぼさない範囲で互いに異なる寸法であってもよい。これに対し、幅広導体パターン51の辺部31は、線幅W1よりも大きい線幅W5を有する。線幅W5は、他の辺部32,33,34の線幅W2,W3,W4よりも大きい。下段側の幅広導体パターン51の辺部31には、通常導体パターン50における辺部31の線幅が仮想線で示されている。当該仮想線で示すように、幅広導体パターン51における辺部31は、辺部32,33,34に比べて、コイル部10における外周側及び内周側の両側に広がって線幅が大きくなっている。
【0036】
図4(b)に示すように、通常導体パターン50のコイル導体13Bでは、パッド部36,37によって構成される辺部31は、他の線幅より大きい線幅W6を有する。幅広導体パターン51の辺部31は、線幅W6よりも大きい線幅W7を有する。下段側の幅広導体パターン51の辺部31には、通常導体パターン50における辺部31の線幅が仮想線で示されている。当該仮想線で示すように、幅広導体パターン51における辺部31は、通常導体パターン50における辺部31に比べて、コイル部10における外周側及び内周側の両側に広がって線幅が大きくなっている。
【0037】
図4(c)及び
図5(a)(b)(c)に示すように、他のコイル導体13C,13D,13E,13Fについては、通常導体パターン50の辺部31は線幅W1を有し、幅広導体パターン51の辺部31は線幅W5を有する。
【0038】
図3に示すように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、上から一層目及び二層目のコイル導体13A,13Bについては幅広導体パターン51を用い、他のコイル導体13C,13D,13E,13Fについては通常導体パターン50を用いている。
【0039】
コイル導体13A(第1のコイル導体)の辺部31A(第1の辺部)は、コイル導体13Aの他の辺部32,33,34、及びコイル導体13D(第2のコイル導体)の辺部32(第2の辺部)よりも線幅が大きい。また、コイル導体13B(第2のコイル導体)の辺部31B(第3の辺部)は、コイル導体13Bの他の辺部32,33,34、及びコイル導体13Dの辺部32よりも線幅が大きい。コイル導体13Aの辺部31A及びコイル導体13Bの辺部31Bは、コイル導体13Fの辺部31F(第4の辺部)よりも線幅が大きい。また、コイル導体13Aの辺部31A及びコイル導体13Bの辺部31Bは、他のコイル導体13C,13D,13Eの辺部31よりも線幅が大きい。
【0040】
次に、本実施形態に係る積層コイル部品1の作用・効果について説明する。
【0041】
まず、
図6(b)を参照して、比較例に係る積層コイル部品の素体202について説明する。素体202では、コイル導体13A、13Bを含め全てのコイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fについて、通常導体パターン50が用いられている。そのため、引出導体12に近い辺部31A,31Bの線幅は辺部31Fと同様である。素体202を積層するときは、引出導体12側がベース部材120に押し付けられる。そのため、引出導体12付近のコイル導体13A,13Bが、引出導体12の影響を受けることによって荷崩れ(他の層のコイル導体に対してずれる)してしまう場合があった。具体的には、引出導体12の引出辺部22がコイル導体13Aの外周側に位置することによって、積層時にコイル導体13Aがコイル内周側に押し出されることによって荷崩れが生じる場合があった。これにより、積層コイル部品が狙いの特性を得られないという問題があった。
【0042】
一方、本実施形態に係る積層コイル部品1では、引出導体12とZ軸方向で隣り合うコイル導体13Aは、端面2a側において、端面2aに沿って延在する辺部31Aを含む。引出導体13とZ軸方向で隣り合うコイル導体13Fは、端面2b側において、端面2bに沿って延在する辺部32Fを含む。コイル導体13Aの辺部31Aは、積層時において、引出導体12の影響を受けやすい部分である。コイル導体13Fの辺部32Fは、積層時において、引出導体12の影響を受けにくい部分である。これに対し、辺部31Aは、コイル導体13Aの他の辺部32,33,34、及び辺部32Fよりも線幅が大きい。これにより、積層時において、辺部31Aは、大きな線幅を有することで、引出導体12からの影響を低減することができる。以上より、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで(例えば、
図6(a)参照)、不良品の発生を抑制できる。
【0043】
Z軸方向において、引出導体12とは反対側でコイル導体13Aと隣り合うコイル導体13Bは、端面2a側で端面2aに沿って延在する辺部31Bを含み、辺部31Bは、コイル導体13Bの他の辺部32,33,34、及び辺部32Fよりも線幅が大きくてよい。このように、引出導体12と隣り合うコイル導体13Aのみならず、次層のコイル導体13Bの端面2a側の辺部31Bの線幅を大きくすることで、更にコイル導体の荷崩れを抑制できる。
【0044】
コイル導体13Fは端面2a側で端面2aに沿って延在する辺部31Fを含み、辺部31Aは、辺部31Fよりも線幅が大きくてよい。このように、引出導体12から離れているコイル導体13Fについては、端面2a側の辺部31Fの線幅を大きくしない。このように、引出導体12の影響が少ない辺部31Fを不要に大きくすることを抑制できる。
【0045】
辺部31Aは、コイル導体13Aの他の辺部32,33,34に比べて、コイル部10における外周側及び内周側の両側に広がって線幅が大きくなっていてよい。これにより、辺部31Aは、外周側及び内周側の両方にて引出導体12の影響を低減することができる。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、引出導体の形状は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、引出導体の構成を変更することに伴い、コイル導体の積層順序なども適宜変更可能である例えば、
図7(a)に示す引出導体12は、
図3のものに比して、辺部21を省略した構成を有する。この場合、上から順に、コイル導体13A,13F,13Eの順で積層してよい。このとき、一層目と二層目のコイル導体13A,13Fとして幅広導体パターン51を用いればよい。
図7(b)に示す引出導体12は、
図7(a)のものX軸方向の正側に延びるように配置したものである。この場合、上から順に、コイル導体13B,13A,13Fの順で積層してよい。このとき、一層目と二層目のコイル導体13B,13Aとして幅広導体パターン51を用いればよい。
【0048】
その他、引出導体12として、
図8(a)(b)(c)(d)に示すような形状を採用してもよい。
【0049】
また、各層のコイル導体の形状は上述の実施形態に限定されず、適宜変更可能である。
【0050】
[形態1]
第1の方向に対向する第1の面及び第2の面を有する素体と、
前記素体内において、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数のコイル導体を積層することによって構成されるコイル部と、
前記素体内において、前記コイル部と接続されて前記第1の面に露出する第1の引出導体と、
前記素体内において、前記コイル導体と接続されて前記第2の面に露出する第2の引出導体と、を備え、
前記第1の引出導体と前記第2の方向で隣り合う第1のコイル導体は、前記第1の面側において、前記第1の面に沿って延在する第1の辺部を含み、
前記第2の引出導体と前記第2の方向で隣り合う第2のコイル導体は、前記第2の面側において、前記第2の面に沿って延在する第2の辺部を含み、
前記第1の辺部は、前記第1のコイル導体の他の辺部、及び前記第2の辺部よりも線幅が大きい、積層コイル部品。
[形態2]
前記第2の方向において、前記第1の引出導体とは反対側で前記第1のコイル導体と隣り合う第3のコイル導体は、前記第1の面側で前記第1の面に沿って延在する第3の辺部を含み、前記第3の辺部は、前記第3のコイル導体の他の辺部、及び前記第2の辺部よりも線幅が大きい、形態1に記載の積層コイル部品。
[形態3]
前記第2のコイル導体は前記第1の面側で前記第1の面に沿って延在する第4の辺部を含み、
前記第1の辺部は、前記第4の辺部よりも線幅が大きい、形態1又は2に記載の積層コイル部品。
[形態4]
前記第1の辺部は、前記第1のコイル導体の前記他の辺部に比べて、前記コイル部における外周側及び内周側の両側に広がって線幅が大きくなっている、形態1~3の何れか一項に記載の積層コイル部品。
【符号の説明】
【0051】
1…積層コイル部品、2…素体、2a…端面(第1の面)、2b…端面(第2の面)、10…コイル部、12…引出導体(第1の引出導体)、14…引出導体(第2の引出導体)、13A…コイル導体(第1のコイル導体)、13F…コイル導体(第2のコイル導体)、13B…コイル導体(第3のコイル導体)、31A…辺部(第1の辺部)、31B…辺部(第3の辺部)、31F…辺部(第4の辺部)、32F…辺部(第2の辺部)。