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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058302
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】エンジン点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/08 20060101AFI20240418BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20240418BHJP
   F02P 15/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F02B23/08 M
F02B23/08 L
F02P13/00 301A
F02P15/08 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165580
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔平
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
【Fターム(参考)】
3G019BB12
3G019GA15
3G019KA17
3G023AA02
3G023AB02
3G023AB03
3G023AG02
(57)【要約】
【課題】2つの着火点で、高い空燃比領域において、混合気を確実に燃焼させることが可能な点火制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン点火装置は、一対の吸気バルブと一対の排気バルブとの間に配置されて、燃焼室内の混合気に点火する第1点火プラグと、一対の吸気バルブの間に配置されて、第1点火プラグによる点火に続いて燃焼室内の混合気に点火する第2点火プラグと、燃焼室内の燃料の燃焼状態を算出するMBF算出部(算出部)と、超希薄燃焼を行う場合に、第1点火プラグに対して点火を指示した後で、MBF算出部が算出した燃料の燃焼状態が所定の状態であることを条件として、第2点火プラグに対して点火を指示する点火指示部(点火制御部)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の吸気バルブと一対の排気バルブとの間に配置されて、燃焼室内の混合気に点火する第1点火プラグと、
一対の前記吸気バルブの間に配置されて、前記第1点火プラグによる点火に続いて前記燃焼室内の混合気に点火する第2点火プラグと、
前記燃焼室内の燃料の燃焼状態を算出する算出部と、
超希薄燃焼を行う場合に、前記第1点火プラグに対して点火を指示した後で、前記算出部が算出した燃料の燃焼状態が所定の状態であることを条件として、前記第2点火プラグに対して点火を指示する点火制御部と、を備える、
エンジン点火装置。
【請求項2】
前記第2点火プラグの火花ギャップは、上面視で、前記一対の吸気バルブのバルブ中心を結ぶ線分の中点の位置に設置される、
請求項1に記載のエンジン点火装置。
【請求項3】
前記点火制御部は、
超希薄燃焼を行う場合に、前記第1点火プラグに対して点火を指示した後で、過去の燃焼サイクルで発生した熱発生量の平均値に対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生量の比率で算出される熱発生量の比率が所定値よりも大きいことを条件として、前記第2点火プラグに対して点火を指示する、
請求項1または請求項2に記載のエンジン点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会の実現に向けて、希薄燃焼、高EGRを実現する高希釈エンジンの開発が行われている(例えば、特許文献1)。希薄燃焼の課題はNOxの低減であり、そのために、空燃比(A/F)が所定値(例えば24)を超えた状態、即ち超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)と呼ばれる領域で安定した燃焼を行うのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-270824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空燃比が所定値を超える領域で燃焼を成立させるためには、燃焼を高速に行う必要がある。しかし、空燃比が24を超える領域では、燃焼が遅く未燃が多くなる。そのために、特許文献1に開示された点火装置では、多点着火制御を行っている。
【0005】
しかしながら、従来の多点着火は、混合気の空間的な偏りについて考慮されておらず、混合気の空間的な偏りを考慮した点火装置の配置について言及されていなかった。また、従来の多点着火では、着火点を3点以上設けていたため、コストや消費電力の増加を招いていた。
【0006】
本発明の目的は、2点の着火点で、高い空燃比領域において、混合気を確実に燃焼させることが可能なエンジン点火装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の点火制御装置は、一対の吸気バルブと一対の排気バルブとの間に配置されて、燃焼室内の混合気に点火する第1点火プラグと、一対の前記吸気バルブの間に配置されて、前記第1点火プラグによる点火に続いて前記燃焼室内の混合気に点火する第2点火プラグと、前記燃焼室内の燃料の燃焼状態を算出する算出部と、超希薄燃焼を行う場合に、前記第1点火プラグに対して点火を指示した後で、前記算出部が算出した燃料の燃焼状態が所定の状態であることを条件として、前記第2点火プラグに対して点火を指示する点火制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、2つの着火点で、高い空燃比領域において、混合気を確実に燃焼させることができる。
【0009】
また、本発明に係るエンジン点火装置において、前記第2点火プラグの火花ギャップは、上面視で、前記一対の吸気バルブのバルブ中心を結ぶ線分の中点の位置に設置される。
【0010】
この構成によれば、第1点火プラグによる着火で燃焼しきれなかった未燃焼ガスが、タンブル流に乗って吸気バルブの付近に到達した際に、第2点火プラグで着火するため、燃焼室における混合気の燃焼を空間的に均一にすることができる。したがって、効果的な火炎伝播を実現でき、これによって燃焼の高速化を実現することができる。
【0011】
また、本発明に係るエンジン点火装置において、点火制御部は、超希薄燃焼を行う場合に、前記第1点火プラグに対して点火を指示した後で、過去の燃焼サイクルで発生した熱発生量の平均値に対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生量の比率で算出される熱発生量の比率が所定値よりも大きいことを条件として、前記第2点火プラグに対して点火を指示する。
【0012】
この構成によれば、第1点火プラグによる着火で燃焼しきれなかった未燃焼ガスが第2点火プラグ付近に到達するタイミングを高い精度で予測して、予測されたタイミングで第2点火プラグに点火することによって、未燃焼ガスを確実に燃焼させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2つの着火点で、高い空燃比領域において、混合気を確実に燃焼させることが可能なエンジン点火装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、実施形態に係るエンジン点火装置を備えたエンジンのシリンダヘッドの1例を示す縦断面図である。
図1B図1Bは、実施形態に係るエンジン点火装置を備えたエンジンのシリンダヘッドの1例を示す横断面図である。
図2図2は、実施形態に係るエンジン点火装置のハードウエア構成の一例を示す縦断面図および横断面図である。
図3図3は、実施形態に係るエンジン点火装置のECUが備える機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、実施形態に係るエンジン点火装置のECUが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
(エンジン点火装置の概略構成)
図1A図1Bを用いて、実施形態のエンジン点火装置10の概略構成を説明する。図1Aは、実施形態に係るエンジン点火装置を備えたエンジンのシリンダヘッドの1例を示す縦断面図である。図1Bは、実施形態に係るエンジン点火装置を備えたエンジンのシリンダヘッドの1例を示す横断面図である。
【0017】
図1A図1Bに示すように、エンジンのシリンダヘッド11は、一対の吸気バルブ15a,15bと一対の排気バルブ17a,17bとを備える。
【0018】
吸気バルブ15aは、吸気ポート14aを流れる空気または混合気を燃焼室13に導入する。吸気バルブ15bは、吸気ポート14bを流れる空気または混合気をシリンダヘッド11の内部に導入する。
【0019】
排気バルブ17aは、燃焼室13で発生した燃焼ガスを、排気ポート16aを通して排気する。排気バルブ17bは、燃焼室13で発生した燃焼ガスを、排気ポート16bを通して排気する。ここで、吸気ポート14aと排気ポート16aとは、エンジンを上面から見た場合に、図1Bに示すように直線上に対称に配置されている。また、吸気ポート14bと排気ポート16bとも、エンジンを上面から見た場合に、直線上に対称に配置されている。
【0020】
なお、エンジン点火装置10が適用されるエンジンは、燃料を吸気ポート14a,14bの内部に噴射するポート噴射式であってもよいし、燃料を燃焼室13に直接噴射する直噴式であってもよい。
【0021】
シリンダヘッド11には、混合気に点火する第1点火プラグ18と第2点火プラグ19とが、燃焼室13の内部に向けて設置される。
【0022】
第1点火プラグ18は、燃焼室13の真上に、一対の吸気バルブ15a,15bと一対の排気バルブ17a,17bとの間の位置に設置されて、火花ギャップ18aで発生した火花によって、燃焼室13内の混合気に点火する。
【0023】
第2点火プラグ19は、一対の吸気バルブ15a,15bの間に設置されて、火花ギャップ19aで発生した火花によって、燃焼室13内の混合気に点火する。なお、第2点火プラグ19による点火は、第1点火プラグ18による点火が行われた後で行われる。詳しくは後述する。
【0024】
以下、エンジン点火装置10が、ポート噴射式のエンジンに適用された場合について、混合気の挙動を説明する。
【0025】
図1Aに示す吸入行程において、吸気バルブ15a,15bが開いてピストン12が矢印Aの方向に下降すると、混合気は、吸気ポート14a,14bから燃焼室13内に吸入される。燃焼室13に進入した混合気は、吸気ポート14a,14bにおける流れの方向を維持して、燃焼室13の奥、即ちY軸正側に向かって進行する。
【0026】
その後、混合気は、吸入行程において矢印Aの方向に下降するピストン12の上縁に沿って折り返し、吸気バルブ15a,15bの側、即ちY軸負側に向かって進行する。即ち、燃焼室13内に吸入された混合気は、燃焼室13内で、図1AにおけるX軸に対して時計回りの縦渦であるタンブル流Tを形成する。特に、本実施形態のエンジン点火装置10が適用されるエンジンでは、一対の吸気バルブ15a,15bに連通する一対の吸気ポート14a,14bと、一対の排気バルブ17a,17bに連通する一対の排気ポート16a,16bと、は直線上に対称に配置されているため、燃焼後の排気とそれに続く吸気とが低抵抗で実行されることによって、タンブル流Tを発生させやすい。
【0027】
エンジン点火装置10は、吸入行程に続く圧縮行程の後で、吸入した混合気に着火を行う。エンジン点火装置10は、まず、第1点火プラグ18の火花ギャップ18aに火花を発生させる。火花ギャップ18aに発生した火花によって、混合気が燃焼する。混合気の燃焼は、火花ギャップ18aの位置から、タンブル流Tに乗って、燃焼室13内における第1点火プラグ18から排気バルブ17a,17bに亘る領域に広がる。
【0028】
このようにして発生した混合気の燃焼は、タンブル流Tに乗って、吸気バルブ15a,15bの側に伝播する。しかし、燃焼が吸気バルブ15a,15bの側に伝播する頃には、タンブル流Tの勢いが落ちて混合気の流れが崩れる、いわゆる乱流崩壊が発生する。この乱流崩壊によって、第1点火プラグ18の着火で燃焼しなかった未燃焼の混合気が発生する。
【0029】
本実施形態のエンジン点火装置10は、第1点火プラグ18による着火に続いて、タンブル流が乱流崩壊を発生した際に、吸気バルブ15a,15bの近傍で第2点火プラグ19に着火する。これによって、第1点火プラグ18による着火で燃焼しなかった未燃焼ガスを燃焼させる。
【0030】
なお、タンブル流Tが乱流崩壊を発生したことは、例えば、過去の燃焼サイクルで発生した熱量の平均値に対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱量の比率が所定値よりも大きいことによって判定すればよい。詳しくは後述する。
【0031】
(エンジン点火装置のハードウエア構成)
図2を用いて、エンジン点火装置10の概略構造を説明する。図2は、実施形態に係るエンジン点火装置のハードウエア構成の一例を示す縦断面図および横断面図である。
【0032】
実施形態のエンジン点火装置10は、エンジンに設置されて、燃焼室13に吸入した混合気に着火する。
【0033】
シリンダヘッド23によって形成された燃焼室13の頂部には、一対の吸気ポート14a,14bと一対の吸気バルブ15a,15b、および一対の排気ポート16a,16bと一対の排気バルブ17a,17bとが設置される。一対の吸気ポート14a,14bと一対の吸気バルブ15a,15b、および一対の排気ポート16a,16bと一対の排気バルブ17a,17bとは、図1Bおよび図2の横断面図に示すように、それぞれが直線上に対称に配置されている。このようなポート配置とバルブ配置をとることによって、燃焼室13に吸入された混合気がタンブル流Tを発生しやすい。
【0034】
燃焼室13の頂上には第1点火プラグ18が設置される。また、一対の吸気バルブ15a,15bの間には第2点火プラグ19が設置される。第2点火プラグ19は、図2の横断面図に示すように、当該第2点火プラグ19の火花ギャップ19aが、燃焼室13を上方から見て、一対の吸気バルブ15a,15bのバルブ中心15c,15dを結ぶ線分の中点の位置に設置される。超希薄燃焼では、燃焼前半(MBF=50%)まで燃焼室13の排気側で燃焼し、燃焼後半(MBF=50%)以降は、燃焼室13の吸気側で燃焼する。つまり、吸気側一対の吸気バルブ15a,15bの間で、タンブル流が崩壊されると予想される位置(MBF=60%のときに燃焼火炎がいると予想される位置)である吸気側一対の吸気バルブ15a,15bの間に、第2点火プラグ19が設置される。なお、MBFは、燃焼状態を示すパラメータであり、詳しくは後述する。
【0035】
燃焼室13の下方には、燃焼室13のボア壁面22に沿って摺動するピストン12が設置される。ピストン12の下方に連結されたコンロッド20の他端部は、クランクシャフト21に接続される。燃焼室13で発生した混合気の爆発力は、ピストン12の上下運動を発生させる。ピストン12の上下運動は、クランクシャフト21の回転運動に変換されて、エンジンが搭載された車両の駆動力を生み出す。
【0036】
燃焼室13のボア壁面22には、筒内圧センサ30が設置される。筒内圧センサ30は、エンジンの燃焼圧力を計測する。筒内圧センサ30を用いて、燃焼圧力を時系列で計測することによって、エンジンの燃焼に伴う燃焼室13内の圧力変動を計測することができる。筒内圧センサ30としては、例えば、圧力の変動を抵抗値の変動として検出する圧電素子等が用いられる。
【0037】
クランクシャフト21の近傍には、クランク角センサ31が設置される。クランク角センサ31は、クランクシャフト21の回転角度を計測する。クランク角センサ31は、例えば、クランクシャフト21の周囲に設置した、クランクシャフト21と共に回転する、周囲にスリットを設けた円盤の回転角度を、フォトトランジスタ等の光学素子や電磁ピックアップ等で計測する。
【0038】
排気ポート16a,16bには、空燃比センサ32が設置される。空燃比センサ32は、排気ガス中の酸素濃度を計測する。空燃比センサ32としては、例えばOセンサやA/Fセンサ等が用いられる。
【0039】
筒内圧センサ30、クランク角センサ31、空燃比センサ32のそれぞれの出力は、ECU25に入力される。ECU25は、空燃比センサ32から取得した酸素濃度に基づいて、空燃比を算出する。そして、ECU25は、空燃比が所定の値(例えば24)よりも大きいことを条件として、第1点火プラグ18に点火する。実施形態のエンジン点火装置10は、超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)と呼ばれる、理論空燃比に対して燃料濃度が半分程度の空燃比の領域で、混合気を燃焼させる。具体的には、例えば空燃比24程度の領域で燃焼を起こさせる。
【0040】
また、ECU25は、筒内圧センサ30から取得した筒内圧に基づいて、燃焼室13で発生した過去所定サイクル(例えば10サイクル)の熱発生総量の平均値である平均熱発生量Qtを算出する。そして、ECU25は、筒内圧センサ30から取得した筒内圧と、クランク角センサ31から取得したクランク角に基づいて、現在の燃焼サイクルにおける熱発生率Qi(J/deg)を算出する。更に、ECU25は、熱発生率Qiの積分値である熱発生量Q(J)を算出する。そして、ECU25は、過去所定サイクルの平均熱発生量Qtに対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生率の積分値(熱発生量Q)の比率(Q/Qt)で算出される熱発生量の比率(MBF(Mass Burned Function)ともいわれる)が所定値よりも大きいことを条件として、第2点火プラグ19に点火する。
【0041】
また、ECU25は、イグニッションスイッチ33の状態を検出することによって、エンジンが動作しているか停止しているかを判定する。なお、イグニッションスイッチ33は、非図示のセルモータに電源を供給してエンジンを始動させるためのスイッチである。エンジンが動作している際は、イグニッションスイッチ33はON状態を保持する。
【0042】
(ECUの機能構成)
図3を用いて、エンジン点火装置10が備えるECU25の機能構成を説明する。図3は、実施形態に係るエンジン点火装置のECUが備える機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0043】
ECU25は、ROM(Read Only Memory)等に記憶された制御プログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して動作させることによって、図3に示す空燃比算出部41と、筒内圧計測部42と、クランク角計測部43と、平均熱発生量算出部44と、MBF算出部45と、点火指示部46と、イグニッションスイッチ状態検出部47とを機能部として実現する。なお、これらの機能部の一部または全ては、専用ハードウエアによって実現されてもよい。
【0044】
空燃比算出部41は、混合気の空燃比を算出する。
【0045】
筒内圧計測部42は、燃焼室13内の燃焼圧力を計測する。
【0046】
クランク角計測部43は、クランクシャフト21の回転角度を計測する。具体的には、クランク角計測部43は、クランク角センサ31の出力を読み取ることによって、クランクシャフト21の回転角度を計測する。
【0047】
平均熱発生量算出部44は、過去の燃焼サイクルで発生した熱量の平均値を算出する。具体的には、平均熱発生量算出部44は、筒内圧センサ30から取得した筒内圧に基づいて、燃焼室13で発生した過去所定サイクル(例えば10サイクル)の熱発生総量の平均値である平均熱発生量Qtを算出する。
【0048】
MBF算出部45は、過去所定サイクルの平均熱発生量Qtに対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生率の積分値(熱発生量Q)の比率(Q/Qt)、即ち熱発生量の比率(MBF)を算出する。なお、MBF算出部45は、本開示における算出部の一例である。
【0049】
点火指示部46は、空燃比が所定値(例えば24)以上である場合に、第1点火プラグ18に対して点火を指示する。また、点火指示部46は、第1点火プラグ18に対して点火を指示した後で、MBF算出部45が算出した熱発生量の比率(MBF)が所定値(例えば60%)よりも大きいことを条件として、第2点火プラグ19に対して点火を指示する。点火指示部46は、本開示における点火制御部の一例である。なお、熱発生量の比率(MBF)が60%よりも大きくなるタイミングは、タンブル流が崩壊するタイミングとほぼ重なる。タンブル流が崩壊すると、燃焼速度が遅くなり、燃焼が弱まることが推定されるため、そのタイミングを検出して、第2点火プラグ19に対して点火を指示することによって、未燃焼の混合気を燃焼させる。
【0050】
イグニッションスイッチ状態検出部47は、イグニッションスイッチ33がON状態、即ちエンジンが動作しているか、またはOFF状態、即ちエンジンが停止しているかを判定する。
【0051】
(エンジン点火装置が行う処理の流れ)
図4を用いて、エンジン点火装置10が行う処理の流れを説明する。図4は、実施形態に係るエンジン点火装置のECUが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0052】
イグニッションスイッチ状態検出部47は、イグニッションスイッチ33がONであるかを判定する(ステップS11)。イグニッションスイッチ33がONであると判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、イグニッションスイッチ33がONであると判定されない(ステップS11:No)とステップS11の判定を繰り返す。
【0053】
ステップS11において、イグニッションスイッチ33がONであると判定されると、空燃比算出部41は、空燃比が24よりも大きいかを判定する(ステップS12)。空燃比が24よりも大きいと判定される(ステップS12:Yes)とステップS13に進む。一方、空燃比が24よりも大きいと判定されない(ステップS12:No)とステップS14に進む。なお、ステップS12では、空燃比が24よりも大きいかを判定しているが、具体的な空燃比の値は一例であって、24に限定されるものではない。
【0054】
ステップS12において、空燃比が24よりも大きいと判定されると、平均熱発生量算出部44は、過去10サイクルの熱発生量を平均化して、平均熱発生量Qtを算出する(ステップS13)。なお、ステップS13では、過去10サイクルの熱発生量を平均化しているが、具体的なサイクル数は一例であって、10サイクルに限定されるものではない。
【0055】
点火指示部46は、第1点火プラグ18に対して点火を指示する(ステップS15)。
【0056】
筒内圧計測部42は、燃焼室13内の燃焼圧力を計測する(ステップS16)。
【0057】
MBF算出部45は、ステップS16で計測された筒内圧波形を熱発生率Qi(J/deg)に変換する(ステップS17)。
【0058】
続いて、MBF算出部45は、熱発生率Qiを積分することによって、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生量の積分値である熱発生量Qを算出する(ステップS18)。
【0059】
更に、MBF算出部45は、過去10サイクルの平均熱発生量Qtに対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生量Qの比率(Q/Qt)、即ちМBFが60%よりも大きいかを判定する(ステップS19)。MBFが60%よりも大きいと判定される(ステップS19:Yes)とステップS20に進む。一方、MBFが60%よりも大きいと判定されない(ステップS19:No)と、ステップS12に戻って、前記した処理を繰り返す。
【0060】
ステップS19において、MBFが60%よりも大きいと判定されると、点火指示部46は、第2点火プラグ19に対して点火を指示する(ステップS20)。その後、ステップS21に進む。
【0061】
ステップS12に戻って、ステップS12において、空燃比が24よりも大きいと判定されないと、点火指示部46は、第1点火プラグ18に対して点火を指示する(ステップS14)。その後、ステップS21に進む。
【0062】
ステップS14またはステップS20に続いて、イグニッションスイッチ状態検出部47は、イグニッションスイッチ33がOFFであるかを判定する(ステップS21)。イグニッションスイッチ33がOFFであると判定される(ステップS21:Yes)と、ECU25は、図4の処理を終了する。一方、イグニッションスイッチ33がOFFであると判定されない(ステップS21:No)と、ステップS12に戻って、前記した処理を繰り返す。なお、ステップS13に記載した処理は、必ずしもこの位置で行う必要はなく、ステップS19の前であれば、いつ行ってもよい。
【0063】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態に係るエンジン点火装置10は、一対の吸気バルブ15a,15bと一対の排気バルブ17a,17bとの間に配置されて、燃焼室13内の混合気に点火する第1点火プラグ18と、一対の吸気バルブ15a,15bの間に配置されて、燃焼室13内の混合気に点火する第2点火プラグ19と、燃焼室13内の燃料の燃焼状態を算出するMBF算出部45(算出部)と、超希薄燃焼を行う場合に、第1点火プラグ18に対して点火を指示した後で、MBF算出部45が算出した燃料の燃焼状態が所定の状態であることを条件として、第2点火プラグ19に対して点火を指示する点火指示部46(点火制御部)と、を備える。したがって、燃焼後半の速度を向上させることができるため、燃焼室13内における混合気の燃焼を空間的に均一にすることができる。これによって、効果的な火炎伝播を実現でき、燃焼の高速化を実現することができる。そのため、高い空燃比領域において、混合気を確実に燃焼させることができるため、NOxと未燃焼ガスの排出量が低減するとともに、車両の燃費が向上する。また、着火点は2点でよいため、3点以上の多点着火を行う装置に比べて、コストおよび消費電力を低減することができる。
【0064】
また、実施形態に係るエンジン点火装置10において、第2点火プラグ19の火花ギャップ19aは、上面視、即ち燃焼室13の上方から見て、一対の吸気バルブ15a,15bのバルブ中心15c,15dを結ぶ線分の中点の位置に設置される。したがって、第1点火プラグ18による着火で燃焼しきれなかった未燃焼ガスが、タンブル流Tに乗って吸気バルブ15a,15bの付近に到達した際に、第2点火プラグ19で着火するため、燃焼室13における混合気の燃焼を空間的に均一にすることができる。したがって、効果的な火炎伝播を実現でき、これによって燃焼の高速化を実現することができる。
【0065】
また、実施形態に係るエンジン点火装置10において、点火指示部46(点火制御部)は、超希薄燃焼を行う場合に、第1点火プラグ18に対して点火を指示した後で、過去の燃焼サイクルで発生した熱発生量の平均値に対する、現在の燃焼サイクルで発生した熱発生量の比率で算出される熱発生量の比率が所定値よりも大きいことを条件として、第2点火プラグ19に対して点火を指示する。したがって、第1点火プラグ18による着火で燃焼しきれなかった未燃焼ガスが第2点火プラグ19付近に到達するタイミングを高い精度で予測して、予測されたタイミングで第2点火プラグ19に点火することによって、未燃焼ガスを確実に燃焼させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10 エンジン点火装置
11 シリンダヘッド
12 ピストン
13 燃焼室
14a,14b 吸気ポート
15a,15b 吸気バルブ
15c,15d バルブ中心
16a,16b 排気ポート
17a,17b 排気バルブ
18 第1点火プラグ
18a 火花ギャップ
19 第2点火プラグ
19a 火花ギャップ
20 コンロッド
21 クランクシャフト
22 ボア壁面
23 シリンダヘッド
25 ECU
30 筒内圧センサ
31 クランク角センサ
32 空燃比センサ
33 イグニッションスイッチ
41 空燃比算出部
42 筒内圧計測部
43 クランク角計測部
44 平均熱発生量算出部
45 MBF算出部(算出部)
46 点火指示部(点火制御部)
47 イグニッションスイッチ状態検出部
Q 熱発生量
Qi 熱発生率
Qt 平均熱発生量
T タンブル流
図1A
図1B
図2
図3
図4