(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005832
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】血液処理回路用の加温バッグおよび加温バッグ収容体
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240110BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61M1/36 175
A61M1/16 167
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106235
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 健志
(72)【発明者】
【氏名】山辺 康平
(72)【発明者】
【氏名】尾上 慶次
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077DD18
4C077EE01
4C077EE03
4C077JJ02
4C077JJ03
4C077JJ15
4C077KK17
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】 エア抜け性を向上させることができ、あるいは、加温効率を向上させつつ圧損の増大を抑制することができる加温バッグ等を提供する。
【解決手段】 血液処理回路1に用いられて当該回路1を流れる液体をヒータ303により加温するための加温バッグ2は、流路10が形成された平坦なバッグ本体11と、バッグ本体11に接続されて流路10に連通するチューブ12と、を備え、流路10は、バッグ本体11の面に沿った方向のうち液体の通流方向に直交する幅方向の寸法である幅寸法Wが、バッグ本体11の面に垂直な厚み方向の寸法である厚み寸法Tよりも大きい、扁平な流路断面を有し、チューブ12の内径をΦとした場合に幅寸法Wは1.5Φ≦W≦4.0Φを満たし、厚み寸法Tは0.2Φ≦T≦0.6Φを満たす。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグであって、
液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体と、前記バッグ本体に接続されて前記流路に連通するチューブと、を備え、
前記流路は、前記バッグ本体の面に沿った方向のうち前記液体の通流方向に直交する幅方向の寸法である幅寸法Wが、前記バッグ本体の面に垂直な厚み方向の寸法である厚み寸法Tよりも大きい、扁平な流路断面を有し、
前記チューブの内径をΦとした場合に、幅寸法Wは1.5Φ≦W≦4.0Φを満たし、厚み寸法Tは0.2Φ≦T≦0.6Φを満たす、
加温バッグ。
【請求項2】
前記流路の幅寸法Wは、より好ましくは2.0Φ≦W≦3.5Φを満たし、前記流路の厚み寸法Tは、より好ましくは0.3Φ≦T≦0.5Φを満たす、
請求項1に記載の加温バッグ。
【請求項3】
血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグであって、
それぞれ独立して液体が通流する第1流路および第2流路が形成された平坦なバッグ本体を備え、
前記第1流路および前記第2流路は、前記バッグ本体の面に沿った第1方向に直線状に延びると共に前記第1方向に直交する第2方向に並ぶ複数の直線流路と、隣接する2つの前記直線流路の端部同士を接続する曲線流路とを有し、前記直線流路および前記曲線流路は液体の通流方向に直交する断面が平坦な扁平流路を成し、かつ、前記第1流路および前記第2流路は、何れも前記第1方向の寸法の方が前記第2方向の寸法よりも大きい横長形状を成すと共に、互いに前記第2方向に並んで配設され、
前記バッグ本体は、前記ヒータにより加温されるときに、前記第1方向が水平方向に沿うと共に前記第2方向が垂直方向に沿う姿勢で支持される被支持部を有する、
加温バッグ。
【請求項4】
前記流路は、前記第1方向一方側の前記曲線流路から他方側の前記曲線流路までの前記第1方向の長さ寸法Lと、前記流路の前記第2方向の寸法Hとが、2.5H≦L≦3.5Hを満たす、
請求項3に記載の加温バッグ。
【請求項5】
前記寸法Lは、より好ましくは2.8H≦L≦3.2Hを満たす、
請求項4に記載の加温バッグ。
【請求項6】
前記バッグ本体に接続されて前記第1流路および前記第2流路の各上流端に連通する入口チューブと各下流端に連通する出口チューブとを更に備え、
前記バッグ本体の前記第1方向の一方側および他方側のうち何れかの同一側に、前記入口チューブおよび前記出口チューブの全てが設けられている、
請求項5に記載の加温バッグ。
【請求項7】
血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグ、および、前記加温バッグを収容する収容袋、を備える加温バッグ収容体であって、
前記加温バッグは、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体と、前記バッグ本体に接続されて前記流路に連通するチューブと、を備え、
前記流路は、前記バッグ本体の面に沿った第1方向に直線状に延びると共に前記第1方向に直交する第2方向に並ぶ複数の直線流路と、隣接する2つの前記直線流路の端部同士を接続する曲線流路とを有し、
前記チューブは、前記バッグ本体の前記第1方向の一方側および他方側のうち何れか一方に接続され、
前記加温バッグは、前記第1方向において前記チューブが接続されている側の前記曲線流路上を通り、かつ、前記第2方向へ延びる折り線に沿って折り曲げられた状態で、前記収容袋に収容されている、
加温バッグ収容体。
【請求項8】
前記チューブは、周回した状態で固定され、前記加温バッグに重ねられた状態で前記収容袋に収容されている、
請求項7に記載の加温バッグ収容体。
【請求項9】
前記チューブは、前記流路の第2方向の寸法H以上の径で周回されている、
請求項8に記載の加温バッグ収容体。
【請求項10】
血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグ、および、前記加温バッグを収容する収容袋、を備える加温バッグ収容体であって、
前記加温バッグは、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体を備え、
前記収容袋には、前記バッグ本体と、前記バッグ本体の形状を支持するための支持体とが重ねられた状態で収容されている、
加温バッグ収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腎代替療法、単純血漿交換療法、および二重濾過血漿交換療法などの血液処理回路に用いられる加温バッグおよび加温バッグ収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
腎障害などを発症した患者に対する治療法として、腎代替療法(Renal Replacement Therapy:RRT)と称される血液処理法がある。RRTは、持続的腎代替療法(continuous RRT:CRRT)および間歇的腎代替療法(intermittent RRT:IRRT)を含む。例えば、CRRTでは、患者の体外に出した血液を濾過器(持続緩徐式血液濾過器)に通し、透析および濾過を行うことで、血液に対する除水、電解質の調整、老廃物の除去等を、長時間にわたって施す。このようなCRRTを含むRRTに用いられる血液処理回路の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
また、RRTによる治療を行うためには、濾過器に導入される透析液や、返血に導入される補液の温度を適切に管理する必要がある。そのため、各液が濾過器や返血に導入される前にヒータで適温に温めるべく、血液処理回路には、各液が通流する流路が形成された加温バッグがヒータに近接して備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加温バッグの流路内にエアが存在すると、このエアが断熱媒体となってヒータの熱が液へ伝わりにくくなり、流路内の液を適切に加温できない可能性がある。流路内にエアが存在し得る原因として、使用前のプライミングによって排出しきれなかったエアが残存する事象や、使用中にヒータによって加温された流路内の液が気化する事象などが考えられる。従って、加温バッグについては、流路内のエアが流路内を流れる液によって排出されやすいこと、すなわち、エア抜け性が好適であることが求められる。
【0006】
また、例えばCRRTでは、透析液および補液という2液を用いるため、これら2液を効率的に加温する必要がある。一般的に加温バッグの流路は、ヒータからの伝熱面積を大きく確保して加温効率を上げるために、複数の折り返し部分を有する蛇行流路として形成されている。しかしながら、折り返し部分では液の通流抵抗が大きく圧損が増大する。圧損が増大すると、単位時間当たりの供給量が少なくなるため、全体の治療時間が長時間化したり、途中で供給量を増加させたりする必要があり、患者の負担につながる。従って、加温効率を向上させつつ圧損の増大を抑制できる加温バッグが求められる。
【0007】
さらに、未使用の加温バッグは、滅菌袋に梱包された状態で特定のガスにより滅菌処理された後、ガス抜きのために真空処理されて、加温バッグ収容体として保管される。ここで、真空処理時に、滅菌袋内のガスが排出されるのに伴って、滅菌袋と共に加温バッグが変形しうる。加温バッグが変形して折り目が形成されたまま保管されると、使用時に滅菌袋から取り出された加温バッグにおいても折れ痕が残ってしまう場合がある。そして、この折れ痕が流路部分に形成されると、流路のこの部分でのエア抜け性が低下してしまう。従って、折れ痕によるエア抜け性の低下が生じにくい態様で滅菌袋に加温バッグを収容することが求められる。
【0008】
そこで本開示は、エア抜け性を向上させることができ、あるいは、加温効率を向上させつつ圧損の増大を抑制することができる加温バッグ、並びに、保管時の折れ痕によるエア抜け性の低下を抑制できる加温バッグ収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る加温バッグは、血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグであって、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体と、前記バッグ本体に接続されて前記流路に連通するチューブと、を備え、前記流路は、前記バッグ本体の面に沿った方向のうち前記液体の通流方向に直交する幅方向の寸法である幅寸法Wが、前記バッグ本体の面に垂直な厚み方向の寸法である厚み寸法Tよりも大きい、扁平な流路断面を有し、前記チューブの内径をΦとした場合に、幅寸法Wは1.5Φ≦W≦4.0Φを満たし、厚み寸法Tは0.2Φ≦T≦0.6Φを満たす。
【0010】
これにより、流路を扁平にしてヒータ接触面積を大きく確保して加温効率を向上しつつ、高いエア抜け性を確保することができる。すなわち、設計検討を進めていく中で、加温効率は流路を扁平にして幅寸法Wを大きくするほど上昇する一方、流れの中心軸から離れた部位において気泡の押し出し力が弱くなり、気泡残留が多くなることが確認された。加温効率が悪いと、液体の温度設定が安定性に欠けるものとなる一方、気泡が多くなると、液体を患者に流す際の悪影響や、実質的に通流断面積が狭まって圧損が増大することによる流量制御の精度低下が懸念される。そこで、加温効率とエア抜け性との関係について検討した結果、内径Φと幅寸法Wと厚み寸法Tとの比率を上記の範囲に定めることにより、当該関係を良好なものにできることを見いだした。
【0011】
また、本開示の第2の態様に係る加温バッグは、第1の態様において、前記流路の幅寸法Wは、より好ましくは2.0Φ≦W≦3.5Φを満たし、前記流路の厚み寸法Tは、より好ましくは0.3Φ≦T≦0.5Φを満たしてもよい。これにより、加温効率の向上とエア抜け性の向上とを、より良好なバランスで実現することができる。
【0012】
本開示の第3の態様に係る加温バッグは、血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグであって、それぞれ独立して液体が通流する第1流路および第2流路が形成された平坦なバッグ本体を備え、前記第1流路および前記第2流路は、前記バッグ本体の面に沿った第1方向に直線状に延びると共に前記第1方向に直交する第2方向に並ぶ複数の直線流路と、隣接する2つの前記直線流路の端部同士を接続する曲線流路とを有し、前記直線流路および前記曲線流路は液体の通流方向に直交する断面が平坦な扁平流路を成し、かつ、前記第1流路および前記第2流路は、何れも前記第1方向の寸法が前記第2方向の寸法よりも大きい横長形状を成すと共に、互いに前記第2方向に並んで配設され、前記バッグ本体は、前記ヒータにより加温されるときに、前記第1方向が水平方向に沿うと共に前記第2方向が垂直方向に沿う姿勢で支持される被支持部を有する。
【0013】
すなわち、第1流路および第2流路は互いに上下に並べて配置されると共に、第1流路および第2流路が有する複数の直線流路は略水平方向へ延びる構成となる。このように、各流路を折り返し構造とすることでヒータとの接触面積を大きく確保して加温効率を向上させつつ、折り返し部分となる曲線流路の個数を少なくして圧損の増大を抑制することができる。すなわち、本開示の加温バッグは、被支持時に直線流路が水平方向へ延びる姿勢となるため、第1流路および第2流路を上下に並べることにより、例えばこれらを左右に並べた場合に比べて、直線流路の長さ寸法を大きく確保することができ、その結果、折り返し数を少なくして圧損を抑制することができる。また、加温効率の向上を図るべく扁平流路を採用すると、圧損に起因する流量制御の精度低下の問題が生じるが、上記のように曲線流路の個数を少なくすることで、この問題の発生を抑制することができる。
【0014】
また、本開示の第4の態様に係る加温バッグは、第3の態様において、前記流路は、前記第1方向一方側の前記曲線流路から他方側の前記曲線流路までの前記第1方向の長さ寸法Lと、前記流路の前記第2方向の寸法Hとが、2.5H≦L≦3.5Hを満たしてもよい。これにより、通流する液体の圧損の増大を抑制でき、高精度な流量制御が可能となる。
【0015】
また、本開示の第5の態様に係る加温バッグは、第4の態様において、前記寸法Lは、より好ましくは2.8H≦L≦3.2Hを満たしてもよい。これにより、圧損増大の更なる抑制が可能となる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る加温バッグは、第5の態様において、前記バッグ本体に接続されて前記第1流路および前記第2流路の各上流端に連通する入口チューブと各下流端に連通する出口チューブとを更に備え、前記バッグ本体の前記第1方向の一方側および他方側のうち何れかの同一側に、前記入口チューブおよび前記出口チューブの全てが設けられていてもよい。これにより、各チューブがバッグ本体における同一側に設けられているので、血液処理回路が備えるヒータへの加温バッグの装着作業が容易となる。
【0017】
本開示の第7の態様に係る加温バッグ収容体は、血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグ、および、前記加温バッグを収容する収容袋、を備える加温バッグ収容体であって、前記加温バッグは、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体と、前記バッグ本体に接続されて前記流路に連通するチューブと、を備え、前記流路は、前記バッグ本体の面に沿った第1方向に直線状に延びると共に前記第1方向に直交する第2方向に並ぶ複数の直線流路と、隣接する2つの前記直線流路の端部同士を接続する曲線流路とを有し、前記チューブは、前記バッグ本体の前記第1方向の一方側および他方側のうち何れか一方に接続され、前記加温バッグは、前記第1方向において前記チューブが接続されている側の前記曲線流路上を通り、かつ、前記第2方向へ延びる折り線に沿って折り曲げられた状態で、前記収容袋に収容されている。
【0018】
このように、バッグ本体を折り曲げることで立体的な形状となるため、真空処理で収縮する収容袋から受ける外力への耐性が高くなり、折れ痕が生じにくくなる。よって、折れ痕によるエア抜け性の低下が生じにくくなる。実際、本願発明者は様々な収容態様を考案し、各態様について実際に加温バッグ収容体を構成し、真空処理し、それらを開封した後の加温バッグについてエア抜け性の観点から観察を行ったところ、上述した態様の加温バッグ収容体が、保管時にはコンパクトでありながら、使用時におけるエア抜け性も良好であることを見いだした。
【0019】
また、本開示の第8の態様に係る加温バッグ収容体は、第7の態様において、前記チューブは、周回した状態で固定され、前記加温バッグに重ねられた状態で前記収容袋に収容されていてもよい。これにより、周回した状態のチューブが外力に対する高い耐性を発揮するため、真空処理したときに収容袋に作用する力によってバッグ本体が変形するのを抑制できる。従って、バッグ本体での折れ痕の形成を抑制でき、流路のエア抜け性を好適に確保することができる。
【0020】
また、本開示の第9の態様に係る加温バッグ収容体は、第8の態様において、前記チューブは、前記流路の第2方向の寸法H以上の径で周回されていてもよい。これにより、収容袋に加わる力は、バッグ本体よりも更にチューブに作用しやすくなるため、バッグ本体の変形を更に抑制可能となる。
【0021】
本開示の第10の態様に係る加温バッグ収容体は、血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグ、および、前記加温バッグを収容する収容袋、を備える加温バッグ収容体であって、前記加温バッグは、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体を備え、前記収容袋には、前記バッグ本体と、前記バッグ本体の形状を支持するための支持体とが重ねられた状態で収容されている。
【0022】
これにより、バッグ本体に折れ痕が形成されにくくなる。すなわち、真空処理によって収容袋が収縮しても、その収縮力を支持体が受け止めるため、バッグ本体に収縮力が作用することによる変形が生じにくい。従って、バッグ本体に折れ痕が形成されにくく、折れ痕によるエア抜け性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示に係る加温バッグによれば、エア抜け性を向上させることができ、あるいは、加温効率を向上させつつ圧損の増大を抑制することができる。また、本開示に係る加温バッグ収容体によれば、保管時の折れ痕によるエア抜け性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る加温バッグを含む血液回路の一例であるRRT用血液処理回路の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、加温バッグの構成を示す正面図である。
【
図3】
図3Aは、血液処理装置における加温バッグの装着箇所の構成を示す斜視図である。
図3Bは、血液処理装置に加温バッグを装着した様子を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2の流路をIV-IV線で切断したおきの断面図である。
【
図5】
図5は、エア抜け性についてコンピュータを用いて解析を行った結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る加温バッグ収容体において、収容袋への収容前の加温バッグの態様を示す写真代用図である。
【
図7】
図7は何れも実施例1についての写真代用図であり、上図は真空引き後の加温バッグ収容体を示し、下図は展開された加温バッグを示す。
【
図8】
図8は、比較例1に係る加温バッグ収容体において、収容袋への収容前の加温バッグの態様を示す写真代用図である。
【
図9】
図9は何れも比較例1についての写真代用図であり、上図は真空引き後の加温バッグ収容体を示し、中図は収容袋から取り出された加温バッグを示し、下図は展開された加温バッグを示す。
【
図10】
図10は、比較例2に係る加温バッグ収容体において、収容袋への収容前の加温バッグの態様を示す写真代用図である。
【
図11】
図11は何れも比較例2についての写真代用図であり、上図は真空引き後の加温バッグ収容体を示し、中図は収容袋4から取り出された加温バッグを示し、下図は展開された加温バッグを示す。
【
図12】
図12は、比較例3に係る加温バッグ収容体において、収容袋への収容前の加温バッグの態様を示す写真代用図である。
【
図13】
図13は何れも比較例3についての写真代用図であり、上図は真空引きした後に収容袋から取り出された加温バッグを示し、下図は展開された加温バッグを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態に係る血液処理回路用の加温バッグおよび加温バッグ収容体について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、各開示の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する加温バッグおよび加温バッグ収容体は本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は以下の実施形態に限定されず、開示の趣旨を逸脱しない範囲で構成の追加、削除、変更が可能である。
【0026】
(実施の形態1)
[1.RRT用血液処理回路の全体構成]
本開示は、腎代替療法(RRT)用、単純血漿交換療法(PE)用、あるいは、二重濾過血漿交換療法(DEPP)用等の血液浄化療法用の血液処理回路に用いられる加温バッグおよび当該加温バッグ収容体に適用できる。以下ではRRT用の血液回路を例示して、本開示の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、RRT用の血液処理回路の全体構成を示す模式図であり、一例として、HDF(血液濾過透析)に用いられる血液処理回路1を例示している。この血液処理回路1は、概ね、図の右側の血液用セット100と左側の処理液用セット200と中央の加温用セット300の3つのセットから成る。
【0028】
[1-1.血液用セット]
血液用セット100は、主として脱血ライン101、濾過器102、および返血ライン103を備えている。脱血ライン101は可撓性のチューブを有し、患者の血管と濾過器102との間を接続する。脱血ライン101の途中には血液ポンプ110が設けられており、この血液ポンプ110が作動すると、脱血ライン101を通じて患者の血液が濾過器102へ送られる。
【0029】
脱血ライン101において血液ポンプ110の上流側部分(患者側部分)には、生食ライン111が合流している。生食ライン111には生理食塩水の入ったバッグ112が接続されており、プライミング時に脱血ライン101へ生理食塩水が供給される。脱血ライン101において、血液ポンプ101の上流側部分であって生食ライン111の合流点より上流側部分(患者側部分)には、薬剤ライン113が合流している。薬剤ライン113には抗凝固剤等の薬剤が入ったシリンジ114が接続されており、脱血ライン101を通る血液に薬剤ライン113を通じて抗凝固剤等が注入される。
【0030】
脱血ライン101において血液ポンプ110の下流側部分には、ドリップチャンバから成る動脈圧チャンバ115が介在している。この動脈圧チャンバ115から延びる圧力測定ライン501に疎水性フィルタから成る患者保護フィルタ501Aを介して圧力モニタ(図示せず)を接続することで、脱血ライン101中の血液の圧力を測定することができる。また、動脈圧チャンバ115からは前希釈ライン116が延びており、これに電解質液等の補液の入ったバッグを接続することで、脱血ライン101を通る血液を補液により前希釈できる。
【0031】
濾過器102は、円筒状のケース120と、このケース120に収容されたフィルタ121とを備えている。フィルタ121は、例えば複数の中空糸が束ねられた構成になっている。ケース120は、一方の端部に設けられた血液入口ポート122と、他方の端部に設けられた血液出口ポート123と、一方の端部近傍の周部に設けられた透析液ポート124と、他方の端部近傍の周部に設けられた排液ポート125とが設けられている。そして、上述した脱血ライン101の下流端は、血液入口ポート122に接続されている。
【0032】
ケース120の血液出口ポート123には、返血ライン103の上流端が接続されている。返血ライン103は可撓性のチューブを有し、濾過器102と患者の血管との間を接続する。返血ライン103の途中には、混合チャンバ130が介在しており、後述する処理液用セット200から送られてくる補液がこの混合チャンバ130にて返血に供給可能になっている。また、混合チャンバ130からは圧力測定ライン502が延びており、患者保護フィルタ502Aを介して圧力モニタ(図示せず)に接続される。
【0033】
[1-2.処理液用セット]
処理液用セット200は、主として供給液ライン201、ポンプユニット202、および排液ライン203を備えている。供給液ライン201は、透析液および補液として共通する液体が貯留される貯留バッグ210と、貯留バッグ210に一端が接続された共通ライン211と、共通ライン211の他端に接続され、液体が一時的に貯留される計量用の第1液体バッグ212と、を有している。
【0034】
また、供給液ライン201は、更に透析液ライン213および後補液ライン214を有している。すなわち、共通ライン211の途中、2か所に分岐が設けられ、各分岐から透析液ライン213および後補液ライン214が延びている。このうち後補液ライン214の方が透析液ライン213よりも、共通ライン211に沿って第1液体バッグ212に近い位置から分岐している。
【0035】
排液ライン203は、濾過器102の排液ポート125に一端が接続された回収ライン230と、回収ライン230の他端に接続され、排液が一時的に貯留される計量用の第2液体バッグ231と、を有している。更に排液ライン203は、回収ライン230の途中の分岐から延びる廃棄ライン232と、廃棄ライン232の下流端に配置されたタンク233と、を有している。
【0036】
なお、処理液用セット200が備える各ライン201,203(これらを構成する各ライン211,213,214,230,232を含む)は、いずれも可撓性のチューブから成る。また、回収ライン230の途中からは圧力測定ライン503が延びており、患者保護フィルタ503Aを介して圧力モニタ(図示せず)に接続される。
【0037】
ポンプユニット202は、例えば3つのフィンガーポンプ221~223を備え、血液処理装置400の側面に、上下に並べて設けられている。上側に位置するフィンガーポンプ221には後補液ライン214の途中部分がセットされ、中央に位置するフィンガーポンプ222には透析液ライン213の途中部分がセットされ、下側のフィンガーポンプ223には回収ライン230の途中部分がセットされる。
【0038】
[1-3.加温用セット]
加温用セット300は、透析液加温ライン301および後補液加温ライン302を備えている。このうち透析液加温ライン301は、その上流端が透析液ライン213の下流端に接続され、その下流端は濾過器102の透析液ポート124に接続されている。また、後補液加温ライン302は、その上流端が後補液ライン214の下流端に接続され、その下流端は混合チャンバ130に接続されている。
【0039】
また、加温用セット300はヒータ303を備えている。このヒータ303は血液処理装置400に備えられ、供給電力に応じた熱量を発する。加温セット300は、ヒータ303に接するように設けられる加温バッグ2を備えている。本実施の形態に係る加温バッグ2は2つの流路10を有し、一方の流路10は透析液加温ライン301の途中に介在してその一部を構成し、他方の流路10は後補液加温ライン302の途中に介在してその一部を構成している。従って、ヒータ303が発熱することによって各流路10内の液体が加温される。なお、加温バッグ2の詳細については後述する。
【0040】
[2.血液処理回路の動作]
このような血液処理回路1は、概ね次のように動作する。すなわち、血液用セット100にて血液ポンプ110が駆動すると、患者からの脱血が脱血ライン101に沿って、補液および抗凝固剤等が注入されつつ濾過器102へ送り込まれる。濾過器102に送られた血液は、フィルタ121により濾過され、生成した排液は、処理液用セット200の排液ライン203によってタンク233に回収される。
【0041】
一方、濾過器102に送られた血液中の一部の成分は、透析液ポート124を通じて処理液用セット200から供給される透析液中に拡散し、これも処理液用セット200の排液ライン203によってタンク233に回収される。そして、濾過器102でのこのような濾過および拡散を経た血液は、途中の混合チャンバ130で補液が供給されつつ、返血ライン103を通じて患者へ戻される。
【0042】
また、上記のような回路動作の中で、透析液ポート124から濾過器102に供給される透析液は、事前に加温セット300により適温に温められる。また、混合チャンバ130において返血に供給される補液も、事前に加温セット300により適温に温められる。以下ではこの加温セット300が備える加温バッグ2について詳述する。
【0043】
[3.加温バッグ]
図2は、本実施の形態に係る加温バッグ2の構成を示す正面図である。この加温バッグ2は、液体が通流する流路10が形成された平坦なバッグ本体11と、バッグ本体11に接続されて流路10に連通するチューブ12とを備えている。なお、ここではバッグ本体11の厚み方向を「前後方向」とし、前後方向に交差する水平方向を「左右方向」(または第1方向)とし、前後方向に交差する鉛直方向を「上下方向」(または第2方向)とする。
【0044】
図2に示すバッグ本体11は、前方から見た正面視形状が矩形状であって、特に左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも大きい横長の長方形状を成している。このバッグ本体11は、可撓性のある合成樹脂製の2枚のシートを溶着(例えば、高周波溶着)して形成されており、内部にはそれぞれ独立して液体が通流する2つの流路10として第1流路10Aおよび第2流路10Bが形成されている。第1流路10Aおよび第2流路10Bは、互いに同様の構成になっており、かつ、互いに上下方向(第2方向)に並んで配設されている。
【0045】
第1流路10Aは、直線流路21および曲線流路22を有する蛇行流路を成している。より具体的には、直線流路21は、バッグ本体11の面に沿った左右方向(第1方向)に直線状に延びる流路であり、かつ、上下方向(第2方向)に複数並んで設けられている。
図2の例では、6本の直線流路21が上下方向に並んで設けられている。また、曲線流路22は、隣接する2つの直線流路21の端部同士を接続する流路であり、概ね半円の円弧状を成している。
図2の例では、下から2本の直線流路21の左端部同士、下から2本目と3本目の直線流路21の右端部同士、下から3本目と4本目の直線流路21の左端部同士、下から4本目と5本目の直線流路21の右端部同士、並びに、上から2本の直線流路21の左端部同士のそれぞれが、曲線流路22によって接続されている。
【0046】
また、第1流路10Aにおいて、曲線流路22の内径側の縁部22cは、横向きの雫形状を成している。より具体的には、上下に隣接する直線流路21を接続する曲線流路22は、各直線流路21に接続される端部分に位置するテーパ部分22a,22aと、これらのテーパ部分22a,22aの間に位置して円弧状を成す円弧部分22bと、を有している。このうち円弧部分22bは直線流路21よりも幅方向寸法(径方向寸法)が小さく、幅寸法が異なる直線流路21と円弧部分22bとをテーパ状に幅寸法が変化するテーパ部分22a,22aが結んでいる。これにより、円弧部分22bの内径側の縁部と、これに続くテーパ部分22a,22aの縁部とで、曲線流路2の内径側の縁部22cが雫形状を成している。
【0047】
このような第1流路10Aは、下から1本目の直線流路21の右端に第1接続口23が接続され、上から1本目の直線流路21の右端に第2接続口24が接続されている。この第1接続口23および第2接続口24のそれぞれにチューブ12の一端が接続され、当該チューブ12の他端は、透析液加温ライン301を構成するチューブに接続されている。
【0048】
また、
図2に示すように、第1流路10Aの第1接続口23は直線流路21よりも上下方向寸法(幅寸法)が大きい。より具体的には、第1接続口23は、直線流路21に近いテーパ部分23aと直線流路21から遠い挿入部分23bとを有している。このうち、挿入部分23bは、一定の幅寸法を有する直線状を成すと共に、その幅寸法は直線流路21よりも大きい。また、テーパ部分23aは、下側の縁部が第1方向に延びる直線縁部23cを成す一方、上側の縁部は第1方向に対して傾斜して延びる傾斜縁部23dを成している。
【0049】
これによりテーパ部分23aは、第1方向に向かうに従って幅寸法が一定割合で変化するテーパ状を成し、直線流路21に接続される側の端部は直線流路21と同一幅寸法を成し、かつ、挿入部分23bに接続される側の端部は挿入部分23bと同一幅寸法を成している。この結果、下から1本目の直線流路21および第1接続口23は、それぞれの下側の縁部が平行かつ連続的な1本の直線状を成す一方で、上側の縁部については直線流路21の上側縁部と挿入部分23bの上側縁部との間の段差をテーパ部分23aの上側縁部(すなわち、傾斜縁部23d)が接続する形態となっている。
【0050】
このように、第1接続口23の挿入部分23bが直線流路21よりも幅寸法が大きいゆえ、チューブ12を第1接続口23に挿入しやすい。また、直線流路21と挿入部分23bとの間にテーパ部分23aを設けているため、第1接続口23付近でのエア抜け性が向上している。
【0051】
また、上述したようにテーパ部分23aの縁部は一方が直線縁部23cであり他方が傾斜縁部23dであるため、ここに接続されたチューブ12の仮想中心線(通流断面の中心線)12Lは、第1接続口23に続く直線流路21の仮想中心線21Lに対して上方にオフセットしている。すなわち、チューブ12の仮想中心線12Lは、第2方向において、曲線流路22の外径側の縁部22dよりも内径側の縁部22cの方に近くなるように位置している。従って、曲線流路22において雫形状を成す内径側の縁部22c近傍での流速が大きくなり、ここでのエア抜け性が向上している。
【0052】
なお、第1流路10Aが有する上側の第2接続口24は、上述した下側の第1接続口23と上下に対称的な形状となっている。従って、第2接続口24は、第1接続口23におけるテーパ部分23a、挿入部分23b、直線縁部23c、および傾斜縁部23dと同様の構成を成すテーパ部分24a、挿入部分24b、特選縁部24c、および傾斜縁部24dを有する。そして、第2接続口24へのチューブ12の挿入のしやすさ、第2接続口24付近でのエア抜け性の向上、並びに、第2接続口24に接続されるチューブ12のオフセット配置に基づく曲線流路22でのエア抜け性の向上については、第1接続口23について上述したのと同様の効果を奏する。
【0053】
第2流路10Bも第1流路10Aと同様に、直線流路21および曲線流路22を有する蛇行流路を成している。すなわち、第2流路10Bも6本の直線流路21が上下方向に並んで設けられ、隣接する2つの直線流路21の端部同士が曲線流路22により接続されている。具体的には、
図2の例の場合、下から2本の直線流路21の左端部同士、下から2本目と3本目の直線流路21の右端部同士、下から3本目と4本目の直線流路21の左端部同士、下から4本目と5本目の直線流路21の右端部同士、並びに、上から2本の直線流路21の左端部同士のそれぞれが、曲線流路22によって接続されている。
【0054】
このような第2流路10Bは、下から1本目の直線流路21の右端部が第1接続口23を成し、上から1本目の直線流路21の右端部が第2接続口24を成している。この第1接続口23および第2接続口24のそれぞれにチューブ12の一端が接続され、当該チューブ12の他端は、後補液加温ライン302を構成するチューブに接続されている。
【0055】
なお、第2流路10Bが有する曲線流路22、第1接続口23、および第2接続口24のより具体的な構成は、第1流路10Aについて説明した曲線流路22、第1接続口23、および第2接続口24の構成と同じであり、かつ、同様の作用効果を奏する。従って、ここでの詳細な説明は省略する。
【0056】
図1に示す血液回路1の構成例の場合、加温バッグ2の第1流路10Aでは、下側の第1接続口23が第1流路10Aの上流端(透析液の通流方向の上流端)に位置し、上側の第2接続口24が第1流路10Aの下流端に位置している。従って、第1流路10Aにおいて、第1接続口23に連通するチューブ12は入口チューブ13を成し、第2接続口24に連通するチューブ12は出口チューブ14を成している。
【0057】
また、第2流路10Bについても、下側の第1接続口23が第2流路10Bの上流端(後補液の通流方向の上流端)に位置し、上側の第2接続口24が第2流路10Bの下流端に位置している。従って、第2流路10Bにおいて、第1接続口23に連通するチューブ12は入口チューブ13を成し、第2接続口24に連通するチューブ12は出口チューブ14を成している。
【0058】
なお、各流路10A,10Bの上下何れの接続口23,24が上流端および下流端の何れになるかは、血液回路1の構成に応じて変わり得る。例えば、上述した例とは反対に、第1流路10Aおよび第2流路10Bのそれぞれにおいて、第1接続口23が下流端となり第2接続口24が上流端となる場合もある。また例えば、第1流路10Aでは第1接続口23が上流端となり第2接続口24が下流端となり、かつ、第2流路10Bでは第1接続口23が下流端となり第2接続口24が上流端となる場合もあり、これと反対の構成となる場合もある。
【0059】
ただし、本実施の形態に係る加温バッグ2では、何れの場合においても、第1接続口23および第2接続口24がバッグ本体11における左右方向の同一側(
図2の例では右側)に位置している。従って、チューブ12(入口チューブ13および出口チューブ14)は、バッグ本体11の左右方向の同一側に接続して設けられている。このように、バッグ本体11に接続される全てのチューブ12を同一側に設けることにより、血液処理装置400への加温バッグ2の装着作業が容易になる。
【0060】
ここで、加温バッグ2の血液処理装置400への装着に関する構成について説明する。
【0061】
図3Aは、血液処理装置400における加温バッグ2の装着箇所の構成を示す斜視図である。また、
図3Bは、血液処理装置400に加温バッグ2を装着した様子を示す斜視図である。
図3Aに示すように、血液処理装置400の筐体401の側壁402には扉403が設けられている。扉403は、側壁402に対して下端部が蝶番404を介して枢支されており、上端部を手前から下方へ動かすことで閉じた状態から開くことができる。扉403を開くと、バッグ装着部405が露出する。
【0062】
バッグ装着部405は、左右方向に長寸の長方形状を成す内壁406を有している。この内壁406は、加温バッグ2のバッグ本体1の正面視したときの面積とほぼ同じかそれより大きい面積を有する垂直な壁面を有している。この内壁406にはヒータ303が内蔵して備えられている。ヒータ303は、通電されることにより昇温する発熱体で構成され、昇温することで内壁406の外面に熱が伝えられる。また、内壁406の上端部にはフック状を成す2つの支持部407a,407bが左右に離隔して突設されている。また、内壁406の左端部における上下方向の中央より下寄りの位置にはボス状を成す別の1つの支持部407cが突設されている。
【0063】
一方、
図2に示すように、加温バッグ2には、バッグ装着部405に装着するための被支持部25a~25cが設けられている。このうち被支持部25a,25bは、バッグ本体11の上端部の左右の端部近傍の位置に設けられ、被支持部25cは、左端部における上下方向の中央より下寄りの位置に設けられている。また、上端の被支持部25a,25bは、左右方向に長寸の長円形状を成す開口であって、バッグ本体11を前後方向に貫通して形成されている。左端の被支持部25cは、上下方向に長寸の長円形状を成す開口であって、バッグ本体11を前後方向に貫通して形成されている。なお、被支持部25a,25bに比べて被支持部25cは、長軸方向の寸法が小さい。
【0064】
図3Bに示すように、加温バッグ2は、バッグ装着部405の内壁406に内蔵されたヒータ303に重なるようにして装着される。すなわち、加温バッグ2はその上端2か所の被支持部25a,25bがバッグ装着部405の支持部407a,407bに挿通されて懸架される。また、加温バッグ2の残りの被支持部25cに支持部407cを通すことで、加温バッグ2がより適切に位置決めされる。
【0065】
このようにしてバッグ装着部405に加温バッグ2が装着された状態では、ヒータ303に対して加温バッグ2の流路10が正面視で重なる。従って、この状態でヒータ303に通電して加熱すると、流路10内の液体を効率的に加温することができる。
【0066】
また、バッグ装着部405に加温バッグ2が装着された状態において、この加温バッグ2は、その左右方向(第1方向)が水平方向に沿うと共に、上下方向(第2方向)が垂直方向に沿う姿勢となる。換言すれば、加温バッグ2のバッグ本体11は、ヒータ303により加温されるときに、第1方向が水平方向に沿うと共に第2方向が垂直方向に沿う姿勢で支持される被支持部25a~25cを有する。
【0067】
すなわち、本実施の形態に係る加温バッグ2は、第1流路10Aおよび第2流路10Bは互いに上下に並べて配置されると共に、第1流路10Aおよび第2流路10Bが有する複数の直線流路21は略水平方向へ延びる構成である。これにより、各流路を折り返し構造とすることでヒータ303との接触面積を大きく確保して加温効率を向上させつつ、折り返し部分となる曲線流路の個数を少なくして圧損の増大を抑制することができる。
【0068】
また、
図3Aに示すように、血液処理装置400のバッグ装着部405は、その左右方向一方(
図3Aでは右側)において上下方向に延びる縁部408に、チューブ12を保持するための保持部408a~408dが設けられている。縁部408は、上下方向に直交する断面が矩形状を成し、左右方向の幅寸法が一定の角柱状を成している。保持部408a~408dは、このような縁部408の、内壁406に近い側の角部分を切り欠くようにして形成されている。より具体的には、保持部408a~408dは、縁部408の角部分に形成されて前方向および左方向に開口した上下幅寸法が一定の切欠きを成している。また、保持部408a~408dを前方から見たときに奥行方向に位置する面である内底面は、内壁406に近い部分(
図3Aの左端部分)から遠い部分(
図3Aの右端部分)へ向かうに従って手前(前側)に位置するように傾斜した面になっている。さらに、保持部408a~408dの上下幅寸法は、チューブ12の外径と同一寸法、または、それよりも若干小さい寸法となっている。
【0069】
このような保持部408a~408dは、被支持部25a~25cによりバッグ本体11が支持されたときに、バッグ本体11から延びるチューブ12の根元(バッグ本体11との接続箇所近傍部分)に対応する位置に設けられている。そして、加温バッグ2をバッグ装着部405に装着する際、上述したように支持部407a~407cによりバッグ本体11の被支持部25a~25cが支持されると共に、保持部408a~408dにチューブ12が嵌め込まれて上下から挟持され保持される。これにより、チューブ12の根元付近でキンクが発生するのを防止できると共に、バッグ本体11の撚れを防止してその平坦性を維持することができる。
【0070】
なお、チューブ12を保持する保持部408a~408dの構成は上で例示したものに限られない。保持部408a~408dは、縁部408を左右に貫通する溝状に構成してもよいし、その他の保持構造を採用してもよい。
【0071】
次に、加温バッグ2の流路10の詳細構成について説明する。
【0072】
図2に示す加温バッグ2が備える流路10は、第1方向(左右方向)の寸法Lが第2方向(上下方向)の寸法Hよりも大きい横長形状を成しており、更には、寸法Lと寸法Hとの比率が一定の範囲内に収まるように設定されている。これについて具体的に説明する。
【0073】
すなわち、1つの流路10(第1流路10Aまたは第2流路10B)において、第1方向一方側の曲線流路22の一方側端部から、第1方向他方側の曲線流路22の他方側端部までの、第1方向の寸法をLとする。また、前記1つの流路10において、第2方向一方側の直線流路21の一方側端部から、第2方向他方側の直線流路21の他方側端部までの、第2方向の寸法をHとする。このとき、当該流路10の寸法Lは、2.5H≦L≦3.5Hを満たす構成になっている。
【0074】
これにより、流路10において、加温効率の向上およびコンパクト化のために折り返し構造を採用しつつも、折り返し箇所数の増加を抑制して液体の圧損が増大するのを抑制することができる。また、圧損の抑制により、ポンプユニット202による液体の流量制御の精度向上を図ることもできる。
【0075】
また、上記流路10において寸法Lは、より好ましくは2.8H≦L≦3.2Hを満たす構成であってもよい。この場合、流路10は、より一層、圧損増大の抑制および流量制御の精度向上を図ることが可能となる。なお、
図2の加温バッグ2では、第1流路10Aおよび第2流路10Bのいずれも、2.8H≦L≦3.2Hを満たす構成になっているが、いずれか一方の流路10のみについて当該関係を満たす構成を採用することとしてもよい。
【0076】
一方、流路10は、直線流路21および曲線流路22が液体の通流方向に直交する断面が平坦な扁平流路を成し、更には、その断面における幅寸法Wと厚み寸法Tとの比率についても、一定の範囲内に収まるように設定されている。これについて具体的に説明する。
【0077】
すなわち、
図4に示すように、1つの流路10(第1流路10Aまたは第2流路10B)の直線流路21において、バッグ本体11の面に沿った方向のうち、液体の通流方向に直交する第2方向の寸法を幅寸法Wとする。また、バッグ本体11の面に垂直な厚み方向(すなわち、前後方向)の寸法を厚み寸法Tとする。更に、当該流路10に接続されるチューブ12の内径をΦとする。このとき、当該流路の幅寸法Wおよび厚み寸法Tは、W>T、1.5Φ≦W≦4.0Φ、および、0.2Φ≦T≦0.6Φを満たす構成になっている。
【0078】
これにより、ヒータ303と流路10との接触面積の増大による加温効率の向上と、エア抜け性の向上とを図ることができる。すなわち、流路10の扁平度合いを高めるほどヒータ303との接触面積が増大して加温効率が向上する一方、同時に、通流中心から幅方向に離れた領域では流速が低下して気泡の残留が生じやすくなる。また、扁平度合いを高め過ぎると、幅方向の端の領域での流速低下により、却って加温効率が低下する場合もある。そこで、幅寸法Wおよび厚み寸法Tを上記範囲に設計することにより、加温効率の向上とエア抜け性の向上とを、好適なバランスで実現することができる。
【0079】
また、上記流路10において幅寸法Wは、より好ましくは2.0Φ≦W≦3.5Φを満たし、厚み寸法Tについては、より好ましくは0.3Φ≦T≦0.5Φを満たす構成であってもよい。これにより、より一層、加温効率の向上およびエア抜け性の向上を好適なバランスで実現することができる。
【0080】
なお、このような幅寸法W,厚み寸法T,内径Φの関係は、流路10の全ての部分で成り立っている必要はなく、流路10の一部において成り立てばよく、その場合、少なくとも当該一部において上述した作用効果は発揮される。例えば、流路10は、直線流路21の全部または一部において上記関係が成り立つ一方で、曲線流路22は上記関係が成り立たない構成であってもよい。
【0081】
[実施例および比較例]
チューブ12の内径Φに対する流路10の幅寸法Wを変えて、当該流路10内に液体を通流させたときのエア抜け性について、コンピュータを用いて解析を行った。その結果を
図5に示す。
図5において、解析結果5A~5Fの6つは比較例であり、解析結果5G~5Iの3つは本開示の実施例である。
【0082】
解析結果5A~5Iで用いた流路10は、同一面積内に折り返し流路として構成されており、いずれも、厚み寸法Tは同一であり、接続されるチューブ12は内径Φが3.3mmのものを用いている。このうち解析結果5A~5Cで用いた流路10は、2本の直線流路21を1つの曲線流路22で接続した構成(折り返し数:1)であり、直線流路21の幅寸法Wは36.5mm(=約11.06Φ)である。解析結果5D~5Fで用いた流路10は、4本の直線流路21を3つの曲線流路22で接続した構成(折り返し数:3)であり、直線流路21の幅寸法Wは17.5mm(=約5.30Φ)である。解析結果5G~5Iで用いた流路10は、6本の直線流路21を5つの曲線流路22で接続した構成(折り返し数:5)であり、直線流路21の幅寸法Wは11.0mm(=約3.33Φ)である。
【0083】
この解析では、各流路10に対して内部に液体が存在せずエアで満たされた状態から、所定の液体を所定の流量だけ通流させた。その結果、エアが残留している箇所であるエア残留部30を、所定の解析ソフトウェアを用いて抽出し、画像化して表示した。なお、解析ソフトウェアとしては公知のものを使用できるが、ここでは3D INDUSTRIAL IMAGING Co., Ltd.社製の製品「HADI-S(version1.7)」を使用した。また、解析のための諸条件は適宜設定することができるが、
図5の場合は一例として、液体としてはRO水を食紅で着色したものを用い、その流量は20mL/minとし、通液開始後、出口側から液体が流出するまで通液を継続した。また、液体の通流時は直線流路21が水平方向に対して平行となるように設定した。
【0084】
この結果、
図5に示すように、解析結果5A~5Cおよび解析結果5D~5Fでは、主に流路10の縁部付近に比較的大きなエア残留部30が形成されたのに対し、解析結果5G~5Iでは、そのようなエア残留部30の形成は見られなかった。従って、解析結果5G~5Fで用いた流路10は、残留エアによる断熱現象が生じにくく、加温効率の向上の観点で好適と判断される。また、解析結果5A~5Cと解析結果5D~5Fを比べると、幅寸法Wが小さかった解析結果5D~5Fの方がエア残留部30の総面積は小さくなる傾向が見られた。従って、流路10の幅寸法Wと小さくするほど、加温効率の向上が期待できる。
【0085】
(実施の形態2)
例えば実施の形態1で説明したような加温バッグは、製造後に、滅菌袋に梱包された状態で特定のガスにより滅菌処理され、次に、ガス抜きのために真空処理されて、加温バッグ収容体として、使用されるまでの間、保管される。しかし、真空処理時に滅菌袋に外圧がかかり、加温バッグが変形する場合がある。特に、バッグ本体が、可撓性の2枚の樹脂シートを重ね合わせて、流路となる部分以外の部分を貼り合わせて(例えば、高周波溶着により)構成されている場合は剛性が低く変形しやすい。また、流路の幅寸法が厚み寸法より大きい扁平流路を成す場合にも、例えば円形断面の流路に比べて剛性が低いため、変形しやすい。このように真空処理で変形が生じると、使用時に滅菌袋から取り出されても、加温バッグに折れ痕が残ってしまう場合がある。そして、この折れ痕が流路部分に形成されると、流路のこの部分でエアがトラップされやすく、エア抜け性が低下してしまう。そこで、本実施の形態では、折れ痕によるエア抜け性の低下が生じにくい態様で滅菌袋に加温バッグを収容した加温バッグ収容体について説明する。
【0086】
本実施の形態に係る加温バッグ収容体は、血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグ、および、前記加温バッグを収容する収容袋、を備えている。このうち加温バッグは、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体と、前記バッグ本体に接続されて前記流路に連通するチューブと、を備え、前記流路は、前記バッグ本体の面に沿った第1方向に直線状に延びると共に前記第1方向に直交する第2方向に並ぶ複数の直線流路と、隣接する2つの前記直線流路の端部同士を接続する曲線流路とを有し、 前記チューブは、前記バッグ本体の前記第1方向の一方側および他方側のうち何れか一方に接続されている。そして、加温バッグは、前記第1方向において前記チューブが接続されている側の前記曲線流路上を通り、かつ、前記第2方向へ延びる折り線に沿って折り曲げられた状態で、前記収容袋に収容されている。
【0087】
また、本実施の形態に係る加温バッグ収容体は、血液処理回路に用いられて前記回路を流れる液体をヒータにより加温するための加温バッグ、および、前記加温バッグを収容する収容袋、を備える加温バッグ収容体であって、前記加温バッグは、液体が通流する流路が形成された平坦なバッグ本体を備え、前記収容袋には、前記バッグ本体と、前記バッグ本体の形状を支持するための支持体とが重ねられた状態で収容されている。
【0088】
これにより、折れ痕によるエア抜け性の低下が生じにくくなる。すなわち、本願発明者は後述する実施例1および比較例1~3のような様々な収容態様を考案し、各態様について実際に加温バッグ収容体を構成し、真空処理し、それらを開封した後の加温バッグについてエア抜け性の観点から観察を行った。その結果、上述した態様の加温バッグ収容体が、保管時にはコンパクトでありながら、使用時におけるエア抜け性も良好であることを見いだした。
【0089】
ここで、先に説明した実施の形態1に係る加温バッグ2は、液体が通流する流路10が形成された平坦なバッグ本体11と、バッグ本体11に接続されて流路10に連通するチューブ12と、を備え、流路10は、バッグ本体11の面に沿った第1方向(左右方向)に直線状に延びると共に第1方向に直交する第2方向(上下方向)に並ぶ複数の直線流路21と、隣接する2つの直線流路21の端部同士を接続する曲線流路22とを有し、チューブ12は、バッグ本体11の第1方向の一方側および他方側のうち何れか一方に接続されている。従って、実施の形態1で説明した加温バッグ2は、本実施の形態に係る加温バッグ収容体を構成する加温バッグとして好適に採用される。なお、前述したように、実施の形態1に係る加温バッグ2のバッグ本体は、可撓性の2枚の樹脂シートを重ね合わせて溶着した構成であり、かつ、流路10は扁平流路を成しており、加温効率が向上する半面、比較的変形しやすい構成になっている。
【0090】
以下、加温バッグ2を用いて様々の収容態様による加温バッグ収容体を構成した、本実施の形態に係る実施例および比較例について説明する。
【0091】
[実施例1]
図6は、実施例1に係る加温バッグ収容体3において、収容袋4への収容前の加温バッグ2の態様を示す写真代用図である。実施例1では、加温バッグ2を、折り線F1に沿って折り曲げた。この折り線F1は、第1方向(左右方向)の一方側および他方側のうちチューブ12が接続されている側の曲線流路22上を通り、かつ、第2方向(上下方向)へ延びている。この態様を維持しつつ、加温バッグ2を収容袋4に収容した。
【0092】
図7の上図は、加温バッグ2を収容袋4に収容した状態で、所定の真空引き装置を用いて収容袋4内のガス抜きを行った真空引き後の状態を示す写真代用図であり、
図7の下図は、ガス抜きされた加温バッグ収容体3が開封されて中から取り出されて展開された加温バッグ2の状態を示す写真代用図である。
図7の上図の写真から分かるように、真空引きによって収容袋4は収縮した。しかしながら、
図7の下図の写真に示すように、加温バッグ2には折り線F1が設定された曲線流路22に折れ痕が見られるものの、その他の部分には目立った折れ痕が見られなかった。従って、実施例1の加温バッグ収容体3は、使用時の加温バッグにおいて、2折れ痕に起因するエア抜け性の低下を抑制することができる。
【0093】
ところで、実施例1の加温バッグ2は、
図6および
図7の上図からも分かるように、チューブ12が、周回した状態でテープ等の固定部材31により固定され、加温バッグ2のバッグ本体11に重ねられた状態となっている。この場合、周回状態のチューブ12が外力に対する高い耐性を発揮する。換言すれば、周回して固定された状態のチューブ12は、バッグ本体11の形状を支持(維持)する支持体を成しており、この支持体はバッグ本体11に重ねられた状態で収容袋4に収容されている。従って、真空処理したときに収容袋4に作用する力によってバッグ本体11が変形するのを抑制される。さらに、実施例1の加温バッグ2は、チューブ12が、流路10の第2方向の寸法H以上の径Dで周回されていている。これにより、収容袋4に加わる力は、バッグ本体11よりもチューブ12に作用しやすくなるため、バッグ本体11の変形を更に抑制可能となる。
【0094】
なお、上記実施例1では「支持体」として周回した状態のチューブ12を例示しているが、本開示に係る加温バッグ収容体の態様はこれに限られない。例えば、加温バッグ2とは別部材として、バッグ本体11と同一またはほぼ同一の形状および面積を有しバッグ本体11よりも硬質素材から成る支持用シートを用意し、この支持用シートをバッグ本体11と重ねて収容袋4に収容することとしてもよい。
【0095】
[比較例1]
図8は、比較例1に係る加温バッグ収容体3Aにおいて、収容袋4への収容前の加温バッグ2の態様を示す写真代用図である。比較例1の加温バッグ2は、チューブ12が周回された状態で固定部材31により固定されている。一方、バッグ本体11は展開状態であって折り曲げられていない。この態様を維持しつつ、加温バッグ2を収容袋4に収容した。なお、
図8から明らかなように、この比較例1の場合にはバッグ本体11の形状を支持する支持体は存在していない。
【0096】
図9の上図は、加温バッグ2を収容袋4に収容した状態で、所定の真空引き装置を用いて収容袋4内のガス抜きを行った真空引き後の状態を示す写真代用図であり、
図9の中図は、ガス抜き後の加温バッグ2を収容袋4から取り出した状態を示す写真代用図であり、
図9の下図は、収容袋4から取り出された加温バッグ2を展開した状態を示す写真代用図である。
【0097】
比較例1の加温バッグ収容体3Aの場合、
図9の上図に示すように、真空引きによって収容袋4が収縮するのに伴って加温バッグ2も変形した。実際、
図9の中図に示すように、収容前に展開状態であったバッグ本体11は真空引き後には大きく変形した。このような加温バッグ2を展開すると、
図9の下図から分かるように、様々の箇所に折れ痕が形成されていた。
【0098】
このように、比較例1の加温バッグ収容体3Aは、加温バッグ2の様々の箇所に折れ痕が形成されると共に、真空引きによる変形態様が予測困難であるため、折れ痕の形成箇所を制御するのが難しい。図示は省略するが、実際、バッグ本体11を展開状態のまま収容袋4に収容して真空引きした例を他にも複数実施したが、加温バッグ2には実施するごとに異なる変形が生じたため、折れ痕の制御が困難であることが分かった。従って、このような加温バッグ2は、実施例1の場合に比べて、エア抜け性が低いと共に個体ごとの性能安定性も低くなることが分かる。
【0099】
[比較例2]
図10は、比較例2に係る加温バッグ収容体3Bにおいて、収容袋4への収容前の加温バッグ2の態様を示す写真代用図である。比較例2の加温バッグ2は、チューブ12が周回された状態で固定部材31により固定されている。一方、バッグ本体11は巻き四つ折り状態とした。具体的には、バッグ本体11を第1方向に沿った折り線F2(
図11の下図参照)で二つ折りし、さらに、第1方向に沿った折り線F3(
図11の下図参照)で二つ折りした。これにより、バッグ本体11は、直線流路21の長手方向(第1方向)に沿った横長の態様となった。この態様を維持しつつ、加温バッグ2を収容袋4に収容した。なお、
図10から明らかなように、この比較例2の場合にはバッグ本体11の形状を支持する支持体は存在していない。
【0100】
図11の上図は、加温バッグ2を収容袋4に収容した状態で、所定の真空引き装置を用いて収容袋4内のガス抜きを行った真空引き後の状態を示す写真代用図であり、
図11の中図は、ガス抜き後の加温バッグ2を収容袋4から取り出した状態を示す写真代用図であり、
図11の下図は、収容袋4から取り出された加温バッグ2を展開した状態を示す写真代用図である。
【0101】
比較例2の加温バッグ収容体3Bの場合、
図11の上図に示すように、真空引きによって収容袋4が収縮するのに伴って加温バッグ2も変形した。具体的には、
図11の中図に示すように、巻き四つ折りされて横長形状を成すバッグ本体11は、その長手方向の異なる2か所で屈曲していた。このような加温バッグ2を展開すると、
図11の下図から分かるように、様々の箇所に折れ痕が形成されていた。
【0102】
このように、比較例2の加温バッグ収容体3Bは、加温バッグ2の様々の箇所に折れ痕が形成されると共に、各折れ痕でのバッグ本体11の変形度合いが比較的大きかった。従って、このような加温バッグ2は、コンパクトであって収容袋4を小型化できるものの、実施例1の場合に比べるとエア抜け性が低いことが分かる。
【0103】
[比較例3]
図12は、比較例3に係る加温バッグ収容体において、収容袋4への収容前の加温バッグ2の態様を示す写真代用図である。比較例3の加温バッグ2は、チューブ12が周回された状態で固定部材31により固定されている。一方、バッグ本体11は、折らずに、第2方向に沿った軸周りに巻いた。これにより、バッグ本体11は、他の例と比較して最もコンパクトになった。そして、この態様を維持しつつ、加温バッグ2を収容袋4に収容した。なお、
図12から明らかなように、この比較例3の場合にはバッグ本体11の形状を支持する支持体は存在していない。
【0104】
図13の上図は、加温バッグ2を収容袋4に収容した状態で真空引きした後に収容袋4から取り出した加温バッグ2の状態を示す写真代用図であり、
図13の下図は、収容袋4から取り出された加温バッグ2を展開した状態を示す写真代用図である。
【0105】
比較例3の加温バッグ収容体の場合、
図13の上図に示すように、真空引きによって収容袋4が収縮するのに伴って加温バッグ2も変形した。具体的には、縦長に巻かれたバッグ本体11は、その長手方向の途中で大きく屈曲していた。このような加温バッグ2を展開すると、
図13の下図から分かるように、バッグ本体11の全体にわたって多くの箇所に折れ痕が形成されていた。
【0106】
このように、比較例3の加温バッグ収容体は、加温バッグ2の様々の箇所に折れ痕が形成されると共に、各折れ痕でのバッグ本体11の変形度合いが比較的大きかった。従って、このような加温バッグ2は、コンパクトであって収容袋4を小型化できるものの、実施例1の場合に比べるとエア抜け性が低いことが分かる。
【0107】
なお、本開示は上述した実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本開示の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示は、腎代替療法、単純血漿交換療法、および二重濾過血漿交換療法などの血液処理回路に用いられる加温バッグおよび加温バッグ収容体に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 血液回路
2 加温バッグ
3 加温バッグ収容体
4 収容袋
10 流路
10A 第1流路
10B 第2流路
11 バッグ本体
12 チューブ(支持体)
13 入口チューブ
14 出口チューブ
21 直線流路
22 曲線流路
25a 被支持部
25b 被支持部
25c 被支持部