(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058329
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】固体撮像素子パッケージ製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165616
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健太
(72)【発明者】
【氏名】木下 大希
(72)【発明者】
【氏名】沓水 真琴
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA01
4M118FA06
4M118GB01
4M118GB13
4M118HA02
4M118HA11
4M118HA25
4M118HA30
(57)【要約】
【課題】信頼性が高い固体撮像素子パッケージを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、前記固体撮像素子および前記透明基板のうちの一方に、感光性樹脂組成物の積層および露光による樹脂層の形成を2回以上繰り返すことにより複数の樹脂層を有する前記フレームを形成する工程と、前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、を備え、前記フレームを形成する工程において、前記複数の樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光量を、前記複数の樹脂層のうちの他の樹脂層の積層直後の露光量と異ならせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、
前記固体撮像素子および前記透明基板のうちの一方に、感光性樹脂組成物の積層および露光による樹脂層の形成を2回以上繰り返すことにより複数の樹脂層を有する前記フレームを形成する工程と、
前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、
を備え、
前記フレームを形成する工程において、前記複数の樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光量を、前記複数の樹脂層のうちの他の樹脂層の積層直後の露光量と異ならせる、固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項2】
前記フレームを形成する工程において、前記複数の樹脂層のうちの最後の樹脂層の積層直後の露光量を、前記複数の樹脂層のうちの他の樹脂層の積層直後の露光量と異ならせる、請求項1に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項3】
前記フレームを形成する工程において、前記最後の樹脂層の積層直後の露光量を、前記他の樹脂層の積層直後の露光量よりも小さくする、請求項2に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項4】
前記最後の樹脂層の積層直後の露光量は、前記感光性樹脂組成物をBステージ状態に留める露光量である、請求項2に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項5】
前記複数の樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光量は、前記感光性樹脂組成物をBステージ状態に留める露光量である、請求項1に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子パッケージ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を実装した基板に固体撮像素子を取り囲む枠状のフレームを接着し、フレームの開口をガラス板等で覆った固体撮像素子パッケージが利用されている(例えば特許文献1参照)。フレームは、側方からの光が固体撮像素子入射することにより生じるゴースト等の画像品質の低下を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば撮像素子に直接カバーガラスを取り付ける、Glass on Chip (GoC)構造のような固体撮像素子パッケージの小型化および高精細化に対する要求は日々高まっている。しかしながら、フレームの小型化による接着面積の減少により、フレームが個体撮像素子および基板から剥離しやすくなるという不都合が生じ得る。このため、本発明は、信頼性が高い固体撮像素子パッケージを製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、前記固体撮像素子および前記透明基板のうちの一方に、感光性樹脂組成物の積層および露光による樹脂層の形成を2回以上繰り返すことにより複数の樹脂層を有する前記フレームを形成する工程と、前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、を備え、前記フレームを形成する工程において、前記複数の樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光量を、前記複数の樹脂層のうちの他の樹脂層の積層直後の露光量と異ならせる。
【0006】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、前記フレームを形成する工程において、前記複数の樹脂層のうちの最後の樹脂層の積層直後の露光量を、前記複数の樹脂層のうちの他の樹脂層の積層直後の露光量と異ならせてもよい。
【0007】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、前記フレームを形成する工程において、前記最後の樹脂層の積層直後の露光量を、前記他の樹脂層の積層直後の露光量よりも小さくしてもよい。
【0008】
前記最後の樹脂層の積層直後の露光量は、前記感光性樹脂組成物をBステージ状態に留める露光量であってもよい。
【0009】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法において、前記複数の樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光量は、前記感光性樹脂組成物をBステージ状態に留める露光量であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る固体撮像素子パッケージ製造方法によれば、信頼性が高い固体撮像素子パッケージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法により製造される固体撮像素子パッケージの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2のフレーム形成工程の詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ1の断面図である。
【0013】
固体撮像素子パッケージ1は、実装基板10と、実装基板10に実装される固体撮像素子20と、固体撮像素子20に配設される枠状のフレーム30と、固体撮像素子20を間隔を空けて覆うようフレーム30に固定される透明基板40と、実装基板10上のフレーム30および透明基板40の外側を封止する封止材50と、を備える。
【0014】
実装基板10は、固体撮像素子20を支持する構造部材である。このため、実装基板10は、十分な剛性を有する材料から形成される。実装基板10は、電気的に回路に組み込まれる構成要素を有しない単なる支持体であってもよいが、固体撮像素子20に電力を供給し、固体撮像素子20から信号を取り出す回路が形成された回路基板であることが好ましい。本実施形態において、実装基板10は、固体撮像素子20と電気的に接続するために端子11を含む回路が形成された回路基板である。
【0015】
実装基板10としては、例えばポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂等の有機物や、紙やガラス繊維不織布などに前記の有機物を含侵させて加熱硬化させた構造物、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素などのセラミック、金属基板などが挙げられる。この中で好ましいものとしてはガラスエポキシ基板、セラミック基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂基板が挙げられる。これら絶縁基板の表面または内部に、金属配線パターンや金属バンプを有する回路を形成することができる。
【0016】
固体撮像素子20は、撮像を行う機能部21と、機能部21を取り囲むマージン部22と、マージン部22のさらに外側に設けられる接続部23と、を有する。固体撮像素子20は、実装基板10の透明基板40に対向する側に実装され得る。機能部21としては、例えばCMOSイメージセンサ等の2次元撮像素子構造が形成され得る。マージン部22は、フレーム30を固定する領域であり、露出すべき構成要素が設けられていない(埋設配線などは設けられてもよい)。接続部23は、固体撮像素子20を実装基板10等に電気的に接続するための端子231が配設される領域である。本実施形態において、固体撮像素子20と実装基板10は、ワイヤ232によって電気的に接続されている。
【0017】
フレーム30は、透明基板40と共に固体撮像素子20上に機能部21を封入する密閉空間を形成する。フレーム30は、光硬化性樹脂を主体とする感光性樹脂組成物から形成される。フレーム30は、複数の樹脂層31~36を積層してなる。フレーム30は、複数の樹脂層31~36の平面形状が異なることによって、内周面に凹凸を有してもよい。フレーム30の内周面に凹凸を形成することにより、フレーム30の内周面に入射する光を散乱させ、フレーム30で反射した光が機能部21に入射することを抑制できる。樹脂層31~36の数としては、2以上であればよいが、例えば3以上100以下が好ましく、5以上50以下がより好ましい。
【0018】
フレーム30は、固体撮像素子20に対する相対位置姿勢および透明基板40に対する相対位置姿勢を正確に定めるために、固体撮像素子20および透明基板40の両方に、接着剤等を介せずに直接接合されることが好ましい。また、フレーム30は、機能部21に側方から光が入射することを防止できるよう、顔料または光拡散材を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。さらに、フレーム30は、内周面での反射光が機能部21に入射することを抑制するために、内周面が透明基板40側に向かって縮径する逆テーパー状に形成されることが好ましく、例えば階段状またはドーム状に透明基板40側で内周面の縮径率がより小さくなるような形状とされてもよい。
【0019】
透明基板40は、固体撮像素子20に光が入射することを可能にする。透明基板40は、ガラスやサファイヤなどの透明セラミック、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明プラスチックを用いることができ、信頼性の観点から透明セラミックが好ましい。汎用性の観点から、ガラスが用いられることが好ましい。ガラスの種類は特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。透明基板40は、フレーム30に接着剤により接着されてもよいが、透明基板40の一方の面にフレーム30の材料が直接積層されることが好ましい。
【0020】
封止材50は、実装基板10上の固体撮像素子20、フレーム30および透明基板40の外側を封止することにより、フレーム30および透明基板40が外部の物体により固体撮像素子20から引き剥がされることを防止する。また、封止材50は、ワイヤ232を保護し、実装基板10と固体撮像素子20との電気的接続を担保する。
【0021】
封止材50としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、強靭性や耐熱性の観点からエポキシ樹脂が特に好ましい。また、封止材50は、機能部21に意図しないノイズ光が入射することを防止できるよう、光拡散材または光吸収材を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。また、封止材50は、形成を容易にするために、硬化前においてチクソ性有するようシリカ等の充填剤を含有してもよい。
【0022】
以上の固体撮像素子パッケージ1は、
図2に示す本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造できる。本実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、固体撮像素子20に固体撮像素子20を実装する工程(ステップS1:素子実装工程)と、透明基板40に感光性樹脂組成物によってフレーム30を形成する工程(ステップS2:フレーム形成工程)と、実装基板10に実装された固体撮像素子20をフレーム30に接着する工程(ステップS3:素子接着工程)と、を備える。
【0023】
ステップS1の素子実装工程では、実装基板10に固体撮像素子20を実装する。固体撮像素子20の実装方法としては、特に限定されず、例えばワイヤボンディング、フリップチップボンディング等の周知の実装技術を採用することができる。
【0024】
ステップS2のフレーム形成工程では、透明基板40に感光性樹脂組成物の積層および露光による樹脂層31~36の形成を2回以上繰り返すことにより複数の樹脂層31~36を有するフレーム30を形成する。具体的には、フレーム形成工程、
図3に示すように、層番号を管理するループパラメータnを初期設定する工程(ステップS21:ループパラメータ設定工程)と、第n番目の樹脂層31~36の形成条件を取得する工程(ステップS22:条件取得工程)と、感光性樹脂組成物を積層する工程(ステップS23:積層工程)と、積層した感光性樹脂組成物を露光する工程(ステップS24:露光工程)と、形成した樹脂層31~36の数を確認する工程(ステップS25:層数確認工程)と、ループパラメータnを加算する工程(ステップS26:ループパラメータ加算工程)と、を備える。
【0025】
ステップS21のループパラメータ設定工程では、形成する樹脂層31~36の番号を示すループパラメータnを初期値である1に設定する。
【0026】
ステップS22の条件取得工程では、ループパラメータnが示す樹脂層31~36の形成条件を取得する。具体的な形成条件としては、n番目の樹脂層31~36の平面形状、厚み、露光時間等を挙げることができる。形成条件の中でも露光量は、樹脂層31~36によって異なる値とされる。樹脂層31~36のうちの少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光工程における露光量は、樹脂層31~36のうちの他の樹脂層の積層直後の露光工程における露光量と異なる値に設定される。
【0027】
ステップS23の積層工程では、条件取得工程で取得した条件にしたがって感光性樹脂組成物を積層する。感光性樹脂組成物を積層する具体的な手段としては、インクジェット3Dプリンター、光造形3Dプリンター、スクリーン印刷機等を採用できる。
【0028】
ステップS24の露光工程では、条件取得工程で取得した条件にしたがって、積層工程で積層した感光性樹脂組成物を露光する。各露光工程における露光量の下限としては、直前の積層工程で積層された感光性樹脂組成物の流動性を低下させ、次の積層工程で積層される感光性樹脂組成物を支持できる保形成を付与できる最小量とされる。一方、各露光工程における露光量の上限としては、次に積層される樹脂層32~36との密着性の低下および不必要な残留応力の発生を防止するために、直前の積層工程で積層された感光性樹脂組成物をBステージ状態に留める最大量とされる。さらに、全ての樹脂層31~36を積層した時点での最初に積層した樹脂層31の累積露光量が当該樹脂層31をBステージ状態に留めるよう、各露光工程における露光量を設定することが好ましい。
【0029】
ステップS25の層数確認工程では、必要な全ての樹脂層31~36が形成されたか否か、つまりループパラメータnが形成すべき樹脂層31~36の数に到達しているか否かを確認する。全ての樹脂層31~36が形成されている場合はこの処理を終了するが、全ての樹脂層31~36が形成されていない場合は、ステップS26に進む。
【0030】
ステップS26のループパラメータ加算工程では、ループパラメータnに1を加算する。ループパラメータnを加算したなら、ステップS2に戻って、次の樹脂層31~36を形成する。
【0031】
このように、フレーム30を形成する工程において、少なくとも1つの樹脂層31~36の積層直後の露光量を他の樹脂層31~36の積層直後の露光量と異ならせることによって、フレーム30を正確な形状に形成しつつ、フレーム30の強度および密着性を向上できる。例として、一部の樹脂層31~36の積層直後の露光量を他の樹脂層31~36の積層直後の露光量と異ならせてもよく、各樹脂層31~36の積層直後の露光量を徐々に変化させてもよい。
【0032】
特に、最後の樹脂層36の積層直後の露光量を、他の樹脂層31~36の積層直後の露光量と異ならせることによって、フレーム30の強度を向上できる。具体的には、最後の樹脂層31の露光量を、感光性樹脂組成物をBステージ状態まで硬化できる露光量とし、他の樹脂層32~36の露光量を次の樹脂層33~36を支持できる程度まで感光性樹脂組成物を硬化させる最低限の露光量とすることにより、フレーム30の内部の残留応力の生成を抑制し、フレーム30の冷熱衝撃耐性を向上できる。また、最後の樹脂層36の露光量を固体撮像素子20を支持できる程度まで感光性樹脂組成物を硬化させる最低限の露光量とし、他の樹脂層31~35の露光量を感光性樹脂組成物をBステージ状態まで硬化できる露光量とすることにより、フレーム30に、素子接着工程において形状保保持できる強度を付与しつつ、フレーム30と固体撮像素子との密着性を向上できる。
【0033】
ステップS3の素子接着工程では、フレーム30の透明基板40と反対側に固体撮像素子20を接着する。フレーム30と固体撮像素子20との接着は、熱圧着により最後の樹脂層36を固体撮像素子20に溶着させることにより行うことが好ましい。接着剤を使用しないことで、接着剤の厚みのバラツキ等に起因する固体撮像素子20と透明基板40との相対位置の誤差を防止できる。
【0034】
以上の固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造される固体撮像素子パッケージ1は、透明基板40上感光性樹脂組成物によりフレーム30を形成するため、フレーム30の位置決め精度が高く、撮影画像の画像品質が高い。また、本実施形態の固体撮像素子パッケージ製造方法では、フレーム30を複数の樹脂層31~36に分けて段階的に形成し、樹脂層31~36の露光量を異ならせるため、フレーム30の強度および固体撮像素子20に対する接着性を担保できるので、信頼性を向上できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。本発明に係る固体撮像素子パッケージ製造方法では、固体撮像素子および透明基板のうちの一方にフレームを形成し、フレームに他方を接着すればよく、固体撮像素子にフレームを形成し、形成したフレームに透明基板を接着してもよい。また、上述の実施形態では、ループパラメータを用いて樹脂層の露光量等を順次設定したが、全ての樹脂層の形成条件を順番に記述するプログラムに従ってフレームを形成する等の変更が可能である。
【実施例0036】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
<感光性樹脂組成物>
フレームの形成材料として、主鎖に環状ポリシロキサン構造を有し、カチオン重合性基およびアルカリ可溶性基を有する主ポリマー100重量部に、ダイセル社製の脂環式エポキシ化合物「セロキサイド2021P」15~40重量部と、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤「CPI-210S」3重量部と、BASF社製の酸化防止剤「IRGANOX1010」0.1重量部と、フィラーとして日本アエロジル社製のヒュームドシリカ「R974」(比表面積200)、「R8200」(比表面積200)または「R972」(比表面積130)0重量部または5重量部と、を混合した感光性樹脂組成物を調整した。なお、脂環式エポキシ化合物は、感光性樹脂組成物のガラス転移点を調整する目的で配合した。
【0038】
前記主ポリマーは、以下の手順で調整した。先ず、ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製の白金ビニルシロキサン錯体キシレン溶液「Pt-VTSC-3X」124mgを加えて溶液L1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン88gをトルエン176gに溶解させて溶液L2を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下において、溶液L2を温度105℃に加熱した状態で、溶液L2に溶液L1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液L3を得た。なお、得られた溶液L3に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62gをトルエン62gに溶解させて溶液L4を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液L3を温度105℃に加熱した状態で、溶液L3に、溶液L4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液L5を得た。なお、得られた溶液L5に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。次いで、溶液L5を冷却した後、溶液L5から溶媒(トルエン、キシレンおよび1,4-ジオキサン)を減圧留去し、主ポリマーを得た。主ポリマーは、1分子中に複数個のカチオン重合性基と複数個のアルカリ可溶性基とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有していた。
【0039】
<固体撮像素子パッケージの試作>
透明基板に上記感光性樹脂組成物よってフレームを形成し、固体撮像素子パッケージの試作例1~10を試作した。具体的には、透明基板(10cm×10cm、厚み0.4mm)上に、線幅200μm、厚み50μmの四角筒状構造を有するフレームを複数個形成し、透明基板のフレームが設けられていない面にダイシングフィルムを仮接着した後、ダイシングブレードで切断し、ダイシングフィルムをはがして、個片化されたフレーム付透明基板を得た。次いで、得られたフレーム付透明基板と、固体撮像素子が実装された実装基板とを積層し、温度120℃のホットプレート上で500gの荷重を30秒間かけることにより固体撮像素子とフレームを熱圧着し、さらに200℃のオーブンで感光性樹脂組成物を完全に硬化させて固体撮像素子パッケージの試作例を得た。なお、実装基板としては、固体撮像素子を外部と接続するための配線を提供する配線基板を使用した。また、固体撮像素子とフレームを接着した後、実装基板の外周部に封止樹脂を盛り付け、固体撮像素子、フレームおよび透明基板の外周部を封止した。
【0040】
試作例1~3は、インクジェット3Dプリンターを用い、感光性樹脂組成物の積層および紫外光の露光による樹脂層の形成を繰り返すことにより10層の樹脂層を有するフレームを形成した。試作例4~6は、光造形3Dプリンターを用い、10層の樹脂層を有するフレームを形成した。試作例7~9は、スクリーン印刷機を用い、10層の樹脂層を有するフレームを形成した。試作例10は、ディスペンサーを用い、試作例1,4,7は、第1層から第9層までの感光性樹脂組成物の積層直後の紫外光の露光量を10mJ、第10層の感光性樹脂組成物の積層直後の紫外光の露光量を500mJとした(露光量パターン1)。試作例2,5,8は、第1層から第9層までの感光性樹脂組成物の積層直後の紫外光の露光量を500mJ、第10層の感光性樹脂組成物の積層直後の紫外光の露光量を10mJとした(露光量パターン2)。試作例3,6,9は、全10層の感光性樹脂組成物の積層直後の紫外光の露光量を500mJとした(露光量パターン3)。試作例10は、ディスペンス直後の紫外光の露光量を500mJとした(露光量パターン4)。なお、感光性樹脂組成物は、500mJの紫外光の露光量によりBステージ状態まで硬化する。
【0041】
<固体撮像素子パッケージの評価>
[ダイシェア強度]
固体撮像素子パッケージの各試作例について、DAGE製社のダイシェア試験機「SERIES4000」を用いて、固体撮像素子から透明基板を剥離する試験を行い、剥離荷重の最大値をダイシェア強度とした。具体的には、ダイシェア強度は、MIL規格883に準拠し、シェア高さ50μm、シェアスピード80μm/sで測定した。ダイシェア強度が高いほど、接着性が高く、冷熱衝撃等の信頼性が高いと評価される。
【0042】
[冷熱衝撃耐性]
固体撮像素子パッケージの各試作例について、日立ジョンソンコントロールズ空調社製のヒートショック試験装置「コスモピアS」を用いて、-50℃の雰囲気下で30分保持した後、125℃の雰囲気下で30分保持する操作を500サイクル行った。次いで、光学顕微鏡により光半導体装置をガラス基板側から観察し、フレームのクラック箇所の数と、フレームの剥離箇所の数とを計数した。そして、クラック箇所の数と剥離箇所の数との合計が5未満であるものを「A」、クラック箇所の数と剥離箇所の数との合計が5以上10未満であるものを「B」、クラック箇所の数と剥離箇所の数との合計が10以上であるものを「C」とした。
【0043】
固体撮像素子パッケージの各試作例について、フレームの形成方法と、露光量のパターンと、ダイシェア強度と、冷熱衝撃耐性と、を次の表1にまとめて示す。
【0044】
【0045】
インクジェット3Dプリンター、光造形3Dプリンターおよびスクリーン印刷機のいずれを用いる場合でも、少なくとも1つの樹脂層の積層直後の露光量を他の樹脂層の積層直後の露光量と異ならせることによって、樹脂層の積層直後の露光量を一定するよりも冷熱衝撃耐性を向上できることが確認された。さらに、最後の樹脂層の積層直後の露光量を他の樹脂層の積層直後の露光量よりも小さくすることによって、ダイシェア強度を向上できることが確認された。