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  • 特開-高周波コイル部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058331
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】高周波コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/02 20060101AFI20240418BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240418BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01F17/02
H05K1/03 610N
H05K1/03 610R
H01F41/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165620
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】柳田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】小池 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E070AA01
5E070AB06
5E070CA06
(57)【要約】
【課題】高い機械的強度及び高いQ値を有する不透明な高周波コイル部品の提供。
【解決手段】高周波コイル部品1は、樹脂4と複数の中空粒子6とを含む封止部2と、巻回された導線から構成されるコイル部5と、を含む。コイル部5は、封止部2中に封止されている。樹脂4は、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である低誘電性樹脂を含む。樹脂4の質量は、Mrと表される。複数の中空粒子6の質量の合計は、Mpと表される。Mr/(Mr+Mp)は、25%以上85%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、複数の中空粒子と、を含む封止部と、
巻回された導線から構成されるコイル部と、
を備え、
前記コイル部は、前記封止部中に封止され、
前記樹脂は、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である低誘電性樹脂を含み、
前記樹脂の質量は、Mrと表され、
前記複数の中空粒子の質量の合計は、Mpと表され、
Mr/(Mr+Mp)は、25%以上85%以下である、
高周波コイル部品。
【請求項2】
前記封止部の23±2℃での比誘電率εr2は、1.00以上2.34以下である、
請求項1に記載の高周波コイル部品。
【請求項3】
前記低誘電性樹脂は、熱硬化性のポリイミドを含む、
請求項1に記載の高周波コイル部品。
【請求項4】
前記熱硬化性のポリイミドは、ポリビスマレイミドを含む、
請求項3に記載の高周波コイル部品。
【請求項5】
前記Mr/(Mr+Mp)は、30%以上70%以下である、
請求項1に記載の高周波コイル部品。
【請求項6】
前記樹脂の体積は、Vrと表され、
前記複数の中空粒子の体積の合計は、Vpと表され、
Vr/(Vr+Vp)は、17%以上78%以下である、
請求項1に記載の高周波コイル部品。
【請求項7】
前記Vr/(Vr+Vp)は、20%以上60%以下である、
請求項6に記載の高周波コイル部品。
【請求項8】
前記複数の中空粒子が、ガラスを含む、
請求項1に記載の高周波コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波回路に用いられる小型の高周波コイル部品(インダクタ等)として、下記特許文献1に示されるような積層型コイル部品が知られている。積層型コイル部品は、絶縁層を介して積層された複数の導線パターンから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-24735号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】加藤悠人(Yuto KATO)著, 誘電率等材料定数の測定技術と標準供給に関する調査研究(A survey on measurement techniques of dielectric properties anddissemination of their national standards), 産総研計量標準報告(AISTBulletin of Metrology) Vol.9, No.1,2014年3月,国立研究開発法人産業技術総合研究所(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)計量標準総合センター(National Metrology Institute of Japan)発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層型コイル部品とは異なる構造を有する高周波コイル部品として、樹脂中に封止された巻線コイル(コイル部)から構成されるコイル部品(巻回型コイル部品)も知られている。従来の巻回型コイル部品の製造に用いられる一般的な樹脂の表面張力は比較的大きい。樹脂の大きい表面張力に因り、巻線コイルを樹脂中に封止する成形工程中に空気が樹脂中に巻き込まれ易く、空隙が樹脂中に形成され易い。樹脂中の空隙は、巻回型コイル部品の機械的強度等の特性の劣化及びばらつきを引き起こす。
また、従来の巻回型コイル部品の製造に用いられる一般的な樹脂は透明であるため、着色料などを用いない場合は樹脂中に封止されたコイル部が外側から視認され、巻回型コイル部品の外観(審美性)が損なわれる。透明な樹脂中に封止されたコイル部に因る光の乱反射に因り、巻回型コイル部品を電子回路に実装する際のコイル部の取り扱い性が損なわれる。これらの理由から、コイル部が封止される樹脂は不透明であることが望まれている。
また、巻回型コイル部品では、高周波数帯域において従来よりも高いQ値(品質係数; Quality Factor)を達成し、電力損失(誘電損失)を抑制することが望まれている。Q値は一般的に(2πfL)/Rと表される無次元量である。fは交流電流の周波数であり、Lは巻回型コイル部品のインダクタンスであり、Rはコイル部の抵抗成分である。
【0006】
本開示の一側面の目的は、高い機械的強度及び高いQ値を有する不透明な高周波コイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示の一側面は下記の高周波コイル部品に関する。
【0008】
[1] 樹脂と、複数の中空粒子と、を含む封止部と、巻回された導線から構成されるコイル部と、を含み、コイル部は、封止部中に封止され、樹脂は、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である低誘電性樹脂を含み、樹脂の質量は、Mrと表され、複数の中空粒子の質量の合計は、Mpと表され、Mr/(Mr+Mp)は、25%以上85%以下である、高周波コイル部品。
【0009】
[2] 封止部の23±2℃での比誘電率εr2は、1.00以上2.34以下である、[1]に記載の高周波コイル部品。
【0010】
[3] 低誘電性樹脂は、熱硬化性のポリイミドを含む、[1]又は[2]に記載の高周波コイル部品。
【0011】
[4] 熱硬化性のポリイミドは、ポリビスマレイミドを含む、[3]に記載の高周波コイル部品。
【0012】
[5] Mr/(Mr+Mp)は、30%以上70%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の高周波コイル部品。
【0013】
[6] 樹脂の体積は、Vrと表され、複数の中空粒子の体積の合計は、Vpと表され、Vr/(Vr+Vp)は、17%以上78%以下である、[1]~[5]のいずれかに高周波コイル部品。
【0014】
[7] Vr/(Vr+Vp)は、20%以上60%以下である、[6]に記載の高周波コイル部品。
【0015】
[8] 複数の中空粒子が、ガラスを含む、[1]~[7]のいずれかに記載の高周波コイル部品。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、高い機械的強度及び高いQ値を有する不透明な高周波コイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る高周波コイル部品の模式的な斜視図である。
図2図2は、図1に示される高周波コイル部品の模式的な断面図であり、図2に示される断面は、コイル部の中心軸線を含み、且つ高周波コイル部品が有する一対の端子電極を横断する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本開示は下記実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る高周波コイル部品1は、封止部2、コイル部5、及び一対の端子電極3を含む。高周波コイル部品1が用いられる周波数帯域は、例えば、1GHz以上10GHz以下、2GHz以上7GHz以下、又は3GHz以上7GHz以下であってよい。高周波コイル部品1の寸法は限定されないが、例えば、高周波コイル部品1の最大幅及び最小幅其々は、数百μm以上数mm以下であってよい。例えば、高周波コイル部品1は、3225サイズ(3.2mm×2.5mm)、3216サイズ(3.2mm×1.6mm)、2012サイズ(2.0mm×1.2mm)、1608サイズ(1.6mm×0.8mm)、1005サイズ(1.0mm×0.5mm)、0603サイズ(0.6mm×0.3mm)、又は0402サイズ(0.4mm×0.2mmサイズ)のチップ部品であってよい。
【0020】
コイル部5は、巻回された導線から構成される。つまり、コイル部5が巻線コイルである点において、高周波コイル部品1は積層型コイル部品と異なる。コイル部5の巻き数(ターン数)は限定されない。コイル部5の全体は、封止部2中に封止(埋設)されている。ただし、端子電極3と接続されるコイル部5の端部(引き出し部5a、5bの先端)は、封止部2中に封止(埋設)されていなくてもよい。封止部2中に封止される前のコイル部5は空芯コイルであるが、封止部2中に封止されたコイル部5の内側は封止部2で充填されている。封止部2の形状は限定されないが、図1及び図2に示される封止部2は直方体である。封止部2は対向する第一端面及び第二端面を有し、一方の端子電極3は第一端面を覆い、他方の端子電極3は第二端面を覆う。コイル部5の一方の端部(引き出し部5a)は、一方の端子電極3と電気的に接続され、コイル部5の他方の端部(引き出し部5b)は、他方の端子電極3と電気的に接続されている。
【0021】
高周波コイル部品1の構造は、図1及び図2に示される構造に限定されない。例えば、一対の端子電極3は、封止部2の一つの側面内に形成されてよく、一方の端子電極3は、一側面の一端側に配置され、他方の端子電極3は、同一側面の他端側に配置されてよい。つまり、一対の端子電極3は、封止部2の一つの側面上に形成されていてよく、一対の端子電極3が封止部2の一つの側面内に収まっていてよい。
【0022】
封止部2は、樹脂4と、複数の中空粒子6(中空粒子6からなる粉末)と、を含む。中空粒子6とは、空隙を内包する絶縁性の粒子である。封止部2は、樹脂4及び複数の中空粒子6のみからなっていてもよい。複数の中空粒子6は封止部2中に略均一に分散していてよい。樹脂4自体及び中空粒子6自体が透明である場合であっても、封止部2中の複数の中空粒子6に因り、封止部2中の光(可視光)の屈折又は散乱が起き易い。その結果、光が封止部2中で直進し難く、封止部2及び高周波コイル部品1全体を不透明にすることができる。
【0023】
樹脂4は、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である低誘電性樹脂を含む。樹脂4の一部が低誘電性樹脂であってもよく、樹脂4の全部が低誘電性樹脂であってもよい。中空粒子6は空隙を内包するので、中空粒子6自体の比誘電率は、空気の比誘電率(約1.00)に近い。さらに、低誘電性樹脂の23±2℃での比誘電率εr1が3.00未満である。これらの理由により、封止部2は低い比誘電率を有することが可能であり、高周波コイル部品1が上記の高周波数帯域において高いQ値を有することが可能であり、高周波コイル部品1における電力損失を低減することができる。低誘電性樹脂の23±2℃での比誘電率εr1が低いほどQ値は増加し易い。しかし、23±2℃での比誘電率εr1が2.00未満である低誘電性樹脂は、未だ発明者らによって見出されていない。低誘電性樹脂の比誘電率εr1が3.00以上である場合、高周波コイル部品1は高いQ値を有し難い。
【0024】
封止部2の23±2℃での比誘電率εr2は、1.00以上2.34以下、又は2.01以上2.34以下であってよい。封止部の23±2℃での比誘電率εr2が2.34以下であることに因り、高周波コイル部品1が上記の高周波数帯域において高いQ値を有し易く、高周波コイル部品1における電力損失を低減し易い。封止部2の比誘電率εr2は、樹脂4の比誘電率(低誘電性樹脂の比誘電率εr1)、中空粒子6自体の比誘電率、及び樹脂4(低誘電性樹脂)及び中空粒子6其々の質量又は体積の割合に依存する。これらの因子に基づいて、封止部2の比誘電率εr2を自在に調整することができる。
【0025】
樹脂4の質量は、Mrと表され、複数の中空粒子6の質量の合計は、Mpと表される。Mr/(Mr+Mp)は、25%以上85%以下であり、Mp/(Mr+Mp)は、15%以上75%以下である。Mr/(Mr+Mp)が25%以上85%以下であることに因り、高い機械的強度及び高いQ値を両立することが可能であり、高周波コイル部品1を透明にすることも可能である。同様の理由から、Mr/(Mr+Mp)は、30%以上80%以下であってよく、Mp/(Mr+Mp)は、20%以上70%以下であってよい。Mr/(Mr+Mp)は、30%以上70%以下であってもよく、Mp/(Mr+Mp)は、30%以上70%以下であってもよい。
【0026】
中空粒子6は空隙を内包するので、中空粒子6自体の比誘電率は、空気の比誘電率(約1.00)に近く、低誘電性樹脂の比誘電率εr1よりも低い傾向がある。したがって、Mp/(Mr+Mp)(封止部2中の中空粒子6の割合)の増加に伴って、封止部2の比誘電率εr2は低下し、Q値は増加する傾向がある。換言すれば、Mr/(Mr+Mp)(封止部2中の樹脂4の割合)の減少に伴って、封止部2の比誘電率εr2は増加し、Q値は低下する傾向がある。しかし、Mr/(Mr+Mp)が25%未満である場合(Mp/(Mr+Mp)が75%より高い場合)、未硬化の樹脂4及び中空粒子6を含む混合物(封止部2の原料)の粘度が高過ぎるので、成形工程においてコイル部5を封止部2中に封止し難い。さらにMr/(Mr+Mp)が25%未満である場合(Mp/(Mr+Mp)が75%より高い場合)、封止部2の原料中の中空粒子6が多過ぎるので、混合物が流動し難く、摩擦等で中空粒子6同士に大きい負荷がかかるため、中空粒子6が割れ易い。その結果、低い比誘電率の因子である空隙が減少し、封止部2の比誘電率εr2が増加し易く、Q値が低下し易い。
一方、Mr/(Mr+Mp)が85%より高い場合(Mp/(Mr+Mp)が25%未満である場合)、封止部2中の中空粒子6が少な過ぎる。その結果、封止部2及び高周波コイル部品1全体が不透明になり難く、封止部2の比誘電率εr2が増加し易く、Q値が低下し易い。更に、Mr/(Mr+Mp)が高過ぎる場合、回路基板等に高周波コイル部品をはんだ付け実装する際に封止部2の変形等の不具合が発生し易い。また、Mr/(Mr+Mp)が高過ぎる場合、高周波コイル部品1(封止部2)の機械的強度がばらつき易く、機械的強度の標準偏差が増加し易い。
Mp/(Mr+Mp)(封止部2中の中空粒子6の割合)の増加に伴って、封止部2の熱膨張が抑制される傾向がある。
【0027】
樹脂4の体積は、Vrと表され、複数の中空粒子6の体積の合計は、Vpと表される。Vpは、各中空粒子6内の空隙の容積を含む。Vr/(Vr+Vp)は、17%以上78%以下であってよく、Vp/(Vr+Vp)は、22%以上83%以下であってよい。Vr/(Vr+Vp)は、20%以上60%以下であってもよく、Vp/(Vr+Vp)は、40%以上80%以下であってもよい。Vr/(Vr+Vp)の上下限値其々の技術的意義は、上述されたMr/(Mr+Mp)の上下限値其々の技術的意義と同様である。Vp/(Vr+Vp)の上下限値其々の技術的意義は、上述されたMp/(Mr+Mp)の上下限値其々の技術的意義と同様である。
【0028】
低誘電性樹脂の比誘電率εr1、及び封止部2の比誘電率εr2其々の測定方法は限定されない。例えば、εr1及びεr2其々は、ハーモニック共振器摂動法等の共振法で測定されてよい。例えば、上記非特許文献1に記載された共振法によって、εr1及びεr2其々が測定されてよい。共振法では、励振線を通じて電磁波が共振器に入射され、共振器内に特定の電磁界モードが励振される。そして、2つの励振線の間の電磁波の透過量(Sパラメータ)の測定から、共振周波数が特定される。共振器内に試料がある場合の共振周波数と、共振器内に試料が無い場合の共振周波数と、の差(共振周波数の変化量)から、試料の比誘電率(複素誘電率の実部)が導出される。εr1及びεr2其々が測定される共振周波数は、例えば、1GHz以上10GHz以下、2GHz以上7GHz以下、又は3GHz以上7GHz以下であってよい。
【0029】
樹脂4は複数の種類の樹脂を含んでよい。樹脂4は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のうち一方又は両方を含んでよい。樹脂4は、一種類の低誘電性樹脂を含んでもよく、樹脂4は、複数の種類の低誘電性樹脂を含んでもよい。樹脂4に含まれる低誘電性樹脂は、その23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である樹脂である限り、限定されない。例えば、低誘電性樹脂は、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、低誘電率BT(ビスマレイミド-トリアジン)レジン、特殊シアネート、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂であってよい。例えば、低誘電性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、及びポリアリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂であってよい。ただし、全ての種類の上記の樹脂が低誘電性樹脂として利用可能であるわけではない。全ての種類の上記の樹脂のうち、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である上記の樹脂が、低誘電性樹脂として利用可能である。例えば、全ての種類のポリイミドが低誘電性樹脂として利用可能であるわけではない。全ての種類のポリイミドのうち、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満であるポリイミドが、低誘電性樹脂として利用可能である。全ての種類のエポキシ樹脂が低誘電性樹脂として利用可能であるわけではない。全ての種類のエポキシ樹脂のうち、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満であるエポキシ樹脂が、低誘電性樹脂として利用可能である。
【0030】
低誘電性樹脂は、熱硬化性のポリイミドを含んでよい。低誘電性樹脂が熱硬化性のポリイミドを含むことに因り、高周波コイル部品1の高い機械低強度及び高いQ値が両立し易く、高周波コイル部品1の耐熱性が向上し易い。同様の理由から、熱硬化性のポリイミドは、ポリビスマレイミド(ビスマレイミド樹脂)を含んでよい。ポリビスマレイミドは、ビスマレイミド類と、コモノマーと、から形成される共重合体ある。ビスマレイミド類は、任意の有機基と、有機基に結合する2つ以上のマレイミド環を有する化合物である。マレイミド環において炭素-炭素二重結合を構成する一対の炭素其々は、独立に、水素若しくはハロゲンから選ばれる1価の原子、又は1価の有機基と結合していてよい。ビスマレイミド類の任意の有機基がマレイミド環を有していてもよい。任意の有機基の少なくとも一部がマレイミド環を有する場合、ビスマレイミド類及びコポリマーが三次元的に重合することに因り、高周波コイル部品1の機械低強度及び耐熱性が向上し易い。例えば、ビスマレイミド類と重合するコモノマーは、ビニル化合物、アリル化合物、アリルフェノール類、イソシアネート類、及び芳香族アミン類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。
【0031】
例えば、以下の市販のポリビスマレイミドの原料モノマー類、原料オリゴマー類、あるいは原料混合物類等(これらは全て未硬化物である。)が、低誘電性樹脂の原料として用いられてよい。以下のBMI-2500、BMI-2560、BMI-3000J、BMI-6100、DMI-2550、及びDMI-2555のいずれも、Designer Molecules, Inc.製のポリミスマレイミドの原料である。
【0032】
<BMI-2500>
23±2℃での比誘電率εr1: 約2.30以上2.32以下。
CAS番号: 2020378-57-6。
組成: 1,1’-(オクタヒドロ-1H-4,7-メタノインデン-2,5-ジイル)ジメタンアミン(不飽和脂肪酸(C=18)の二量体として得られる環式ダイマー酸(C=36を主成分とする。)を還元しアミノ化して得られるダイマージアミン(カルボキシ基をアミノメチル基にしたものに限る。))・フラン-2,5-ジオン・1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトラオン重縮合物。
(BMI-2500:Amines, C36-alkylenedi-, polymers withoctahydro-4,7-methano-1H-indenedimethanamine and pyomellitic dianhydride,maleated.)
【0033】
<BMI-2560>
23±2℃での比誘電率εr1: 約2.5。
CAS番号: 2126832-79-7。
組成: アミン、C36-アルキレンジ-、無水マレイン酸及び4,4’-メチレンビス[2-メチルシクロヘキサンアミン]-5,5’-オキシビス[1,3-イソベンゾフランジオン]ポリマーとの反応生成物。
(BMI-2560:Amines, C36-alkylenedi-, reaction products with maleic anhydride and4,4’-methylenebis[2-methylcyclohexanamine]-5,5’-oxybis[1,3-isobenzofurandione]polymer.)
【0034】
<BMI-3000J>
23±2℃での比誘電率εr1: 約2.44以上2.47以下。
CAS番号: 921213-77-6。
組成: (1,2-ビス(オクチルマレイミド)-3-オクチル-4-ヘキシル)シクロヘキシルオリゴマー。
(BMI-3000J:Amines, C36-alkylenedi-, polymers with pyromellitic dianhydride, maleated.)
【0035】
<BMI-6100>
23±2℃での比誘電率εr1: 約2.85以上2.89以下。
CAS番号: 2127116-97-4
組成: 1,3-イソベンゾフランジオン、5,5’-[(1-メチルエチリデン)ビス(4,1-フェニレンオキシ)]ビス‐,4,4’-メチレンビス[2,6-ジエチルベンゼンアミン]とのポリマー、無水マレイン酸及び4,4’-[(1-メチルエチリデン)ビス(4,1-フェニレンオキシ)]ビス[べンゼンアミン]の反応生成物。
(BMI-6100:1,3-Isobenzofurandione, 5,5'-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxy)]bis-,polymer with 4,4'-methylenebis[2,6-diethylbenzenamine], reaction products withmaleic anhydride and4,4'-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxy)]bis[benzenamine].)
【0036】
<DMI-2550、DMI-2555>
23±2℃での比誘電率εr1: 2.00以上3.00未満。
CAS番号: 1911605-95-2。
組成: 1H-ピロール-2,5-ジオン、1,1’-C36-アルキレンビス-ジクミルペルオキシド。
(DMI-2550/DMI-2555:1H-Pyrrole-2,5-dione, 1,1’-C36-alkylenebis- Dicumyl Peroxide)
【0037】
中空粒子6は、ガラス、セラミックス、及びポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでよい。封止部2は、組成が異なる複数の種類の中空粒子6を含んでもよい。ガラスは、低い比誘電率においてセラミックスよりも優れている。更にガラスは、高い機械的強度においてポリマーよりも優れている。封止部2に含まれる樹脂4が液晶ポリマーである場合、液晶ポリマー中の中空粒子6は割れ易いため、液晶ポリマー中の中空粒子6の割合(上述のVp/(Vr+Vp))を50%以上に調整することは困難である。一方、ガラスからなる中空粒子6は割れ難いため、ガラスからなる中空粒子6の体積の割合(上述のVp/(Vr+Vp))を50%以上に調整することが可能である。したがって、中空粒子6がガラスからなる場合、中空粒子6の体積の割合の増加に因り、封止部2の比誘電率εr2を低下させ易い。これらの理由から、中空粒子6はガラスを含むことが好ましい。中空粒子6を構成するガラスの組成は限定されない。例えば、中空粒子6を構成するガラスは、アルミナ硼珪酸ガラス、ソーダ石灰硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、及び有機ガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。例えば、有機ガラスは、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、又はポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のポリカーボネートであってよい。市販の中空粒子6としては、例えば、太平洋セメント株式会社製のセルスフィアーズ(アルミナ硼珪酸ガラスを含む中空粒子)、又はスリーエムジャパン株式会社製の3Mグラスバブルズ(ソーダ石灰硼珪酸ガラスを含む中空粒子)が用いられてよい。中空粒子6は、中空ガラス、ガラスバルーン、グラスバブル、中空ビーズ、又はマイクロバルーンと言い換えられてよい。
【0038】
中空粒子6の粒径(平均粒径)は、1μm以上30μm以下、1μm以上20μm以下、1μm以上5μm以下、又は3μm以上4μm以下であってよい。中空粒子の粒径が小さいほど、高周波コイル部品1を小型化し易い。中空粒子6の粒径が小さいほど、高周波コイル部品1の製造過程において、中空粒子6が凝集し易く、封止部2の原料(未硬化の樹脂4及び中空粒子6を含む混合物)の粘度が増加する傾向がある。空隙を含む中空粒子6の全体の比誘電率は、例えば、1.2以上2.1以下であってよい。中空粒子6の中空率(中空粒子6における空隙の体積の割合)は、例えば、50体積%以上95体積%以下、55体積%以上90体積%以下、又は60体積%以上80体積%以下であってよい。
【0039】
封止部2は、硬化剤、硬化促進剤(硬化触媒)、及びシランカップング剤(界面活性剤)、又はこれらに由来する化合物等の他の成分を更に含んでよい。封止部2の原料が、未硬化の樹脂4及び中空粒子6に加えて更にシランカップリング剤を含む場合、高周波コイル部品1の製造過程において、疎水性の樹脂4が、両親媒性のシランカップリング剤を介して、親水性の中空粒子6の表面に結合し易い。その結果、未硬化の樹脂4の表面張力が抑制され、成形工程中に空気が樹脂4中に巻き込まれ難く、樹脂4中の空隙の形成が抑制され易い。また樹脂4がシランカップリング剤を介して中空粒子6の表面に結合することにより、封止部2及び高周波コイル部品1其々の機械的強度が増加し易い。
【0040】
コイル部5を構成する導線の組成は限定されない。例えば、コイル部5を構成する導線は、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素を含んでよい。コイル部5を構成する導線の表面は、ポリウレタン等の絶縁層によって被覆されていてよい。
【0041】
端子電極3の組成は限定されない。例えば、端子電極3は、銀(Ag)、錫(Sn)、銅(Cu)、及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれる少なとも一種の金属元素を含んでよい。これらの金属元素を含む合金から端子電極3が構成されてもよい。端子電極3は、封止部2の表面に積層された複数の金属層を含んでもよい。
【0042】
上述の成形工程では、真空成形が用いられてよい。真空成形は、以下の手順で実施されてよい。
【0043】
まず、封止部2の原料として、未硬化の樹脂4、中空粒子6及び有機溶媒の混合により、スラリー又はペーストが調製される。未硬化の樹脂4自体が液体である場合、有機溶媒は用いられなくてもよい。スラリー又はペーストは、硬化剤、硬化促進剤(硬化触媒)、シランカップング剤(界面活性剤)、及びワックス(潤滑剤)等の添加剤を更に含んでよい。
【0044】
コイル部5が、金型のキャビティー内に設置される。続いて、スラリー又はペーストが、キャビティー内へ充填される。スラリー又はペーストが充填された金型はオーブンに投入される。金型に充填されたスラリー又はペーストは、例えばオーブンによって加熱した状態において乾燥され、半硬化の成形体が得られる。次に、真空成形機を用いて加圧した状態で成形体を加熱し、半硬化の成形体が硬化される。この結果、コイル部5が樹脂4によって封止された封止部2が形成される。
未硬化の樹脂4自体が液体であり、溶剤が用いられない場合、スラリー又はペーストが、キャビティー内へ充填された後、半硬化のための乾燥を実施しなくてよい。金型に充填されたスラリー又はペーストを、真空成形機を用いて加圧した状態で加熱することにより、コイル部5が封止された封止部2が形成される。
熱可塑性樹脂で封止する場合、成形工程は射出成形を用いてもよい。樹脂4が熱可塑性樹脂のみである場合、硬化剤及び硬化促進剤は用いられなくてもよい。
【0045】
成形工程後、一対の端子電極3を封止部2の表面に形成することにより、高周波コイル部品1が得られる。端子電極3の形成方法は、例えば、導電性ペーストの塗布及び焼き付け、電解めっき、並びに無電解めっき等の方法、又はこれらの組合せであってよい。端子電極3の形成前、封止部2の切削加工により、封止部2の寸法が調整されてもよい。
【0046】
本開示は必ずしも上述された実施形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、本開示の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本開示に含まれる。
【実施例0047】
以下の実施例及び比較例により、本開示が詳細に説明される。本開示は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
<封止部の23±2℃での比誘電率εr2の測定>
[工程1] 0.6gのジクミルパーオキシド(DCP)を、30gのテトラリン(1,1,2,2-テトラヒドロナフタレン)中で溶解して、溶液が調製された。テトラリンは、純正化学株式会社製であった。ジクミルパーオキシドは、日油株式会社製であった。
【0049】
[工程2] 30gのビスマレイミド樹脂が上記溶液に溶解された。ビスマレイミド樹脂としては、上述されたBMI-3000Jが用いられた。ビスマレイミド樹脂は、硬化前の低誘電性樹脂に相当する。
【0050】
[工程3] 中空粒子からなる粉末が、工程2において調製された上記溶液へ添加された。中空粒子としては、太平洋セメント株式会社製のセルスフィアーズ(アルミナ硼珪酸ガラスを含む中空粒子)が用いられた。ビスマレイミド樹脂(低誘電性樹脂)及び中空粒子其々の質量比及び体積比は、下記表1に示される値に調整された。
下記の表1及び表2中の低誘電性樹脂の質量比は、上述されたMr/(Mr+Mp)に相当する。下記の表1及び表2中の低誘電性樹脂の体積比は、上述されたVr/(Vr+Vp)に相当する。
下記の表1及び表2中の中空粒子の質量比は、上述されたMp/(Mr+Mp)に相当する。下記の表1及び表2中の中空粒子の体積比は、上述されたVp/(Vr+Vp)に相当する。
さらに、シランカップリング剤が上記溶液へ添加され、溶液が攪拌された。シランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社製のKBM-303及びKBM-573が用いられた。KBM-303は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。KBM-573は、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランである。KBM-303の質量の割合は、100質量部の中空粒子に対して1質量部であった。KBM-573の質量の割合も、100質量部の中空粒子に対して1質量部であった。
以上の工程により、実施例1の封止部の原料(ペースト)が調製された。
【0051】
[工程4] 上記原料が、100℃で24時間乾燥され、半硬化体が得られた。
【0052】
[工程5] 真空成形機を用いた成形工程により、上記半硬化体から基板が作製された。この基板は、コイル部が封止されていない封止部に相当する。成形圧力は、0.6MPaであった。封止部中の樹脂の熱硬化のために、成形工程では、加圧された原料が150℃で0.5時間加熱された後、200℃で1時間加熱された。基板の寸法は、縦幅130mm×横幅50mm×厚み1mmであった。
【0053】
[工程6]角棒が、上記基板から切り出された。角棒の寸法は、縦幅130mm×横幅1mm×厚み1mmであった。
【0054】
[工程7] ハーモニック共振器摂動法により、上記角棒(封止部)の23±2℃での比誘電率εr2が測定された。比誘電率εr2は、3.4GHz、5.3GHz、及び7.0GHz其々の共振周波数において測定された。比誘電率εr2の測定には、株式会社関東電子応用開発(現社名:EMラボ株式会社)製の測定システムが用いられた。実施例1の比誘電率εr2は、下記表1に示される。
【0055】
<熱膨張係数の測定>
上記工程1~5により、上記基板が作製された。測定用の試料(小さい基板)が、上記基板から切り出された。試料の寸法は、縦幅5mm×横幅5mm×厚み1mmであった。-20~290℃の範囲での試料の変位量が測定され、変位量から試料の熱膨張係数(単位:ppm/K)が算出された。試料の変位量は窒素雰囲気中で測定された。試料の昇温速度は、10℃/分であった。変位量の測定には、株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械分析装置(TMA7000)が用いられた。実施例1の熱膨張係数は、下記表1に示される。
【0056】
<耐熱性の評価>
上記工程1~6により、上記角棒が作製された。角棒を、溶融したはんだ槽中に10秒間浸漬した後、角棒が観察された。はんだ槽への浸漬に因る角棒の外観異常、変色、及び変形のいずれも起きていなかった。はんだ槽の温度は300℃であった。はんだとしては、千住金属工業株式会社製の鉛フリーはんだ(M705)が用いられた。M705は、3.0質量%のAg、0.5質量%のCu、及び残部のSnからなる合金である。
【0057】
<3点曲げ強度の測定>
上記工程1~4により、乾燥された上記原料が調製された。真空成形機を用いた成形工程により、乾燥された上記原料からシートが作製された。このシートは、コイル部が封止されていない封止部に相当する。成形圧力は、0.6MPaであった。成形工程では、加圧された原料が150℃で0.5時間加熱された後、200℃で1時間加熱された。シートの寸法は、縦幅50mm×横幅50mm×厚み0.2mmであった。長方形状の試料が、上記シートから切り出された。試料の寸法は、縦幅20mm×横幅5mm×厚み0.2mmであった。この試料の3点曲げ強度(単位:MPa)が測定された。3点曲げ強度の測定には、株式会社島津製作所製の卓上型精密万能試験機(オートグラフAGS-5kNX)が用いられた。ロードセルの荷重は、1kNであった。支点間距離は、5mmであった。ロードセルの移動速度は、0.5mm/分であった。実施例1の3点曲げ強度(10個の試料の平均値)は、下記表1に示される。
上記の方法で計10個の試料の3点曲げ強度が測定され、3点曲げ強度の標準偏差が算出された。実施例1の3点曲げ強度の標準偏差は、下記表1に示される。
【0058】
<透明性の評価、及びQ値の測定>
上記工程1~3により、実施例1の封止部の原料(ペースト)が調製された。
巻回された銅線から構成されるコイル部(空芯コイル)が準備された。銅線の断面の直径は、25μmであった。銅線の表面は、ポリウレタン系の絶縁層で被覆されていた。絶縁層の厚みは、4μmであった。
複数のコイル部が、金型のキャビティー内に設置された。上記ペーストが、キャビティー内へ充填された。キャビティー内のコイル部及びペーストを、大気中において100℃で24時間乾燥させることにより、コイル部が封止された封止シートが得られた。大気中での乾燥後、真空成形機中で封止シートを150℃で0.5時間加熱し、さらに200℃で1時間加熱することにより、封止シート中の樹脂が硬化された。樹脂の硬化後の封止シートの寸法は、縦幅20mm×横幅20mm×高さ0.2mmであった。樹脂の硬化後、1個のコイル部が封止された直方体状の封止部(高周波コイル部品)が、封止シートから切り出された。高周波コイル部品の寸法は、縦幅0.4mm×横幅0.2mm×高さ0.2mmであった。
高周波コイル部品中のコイル部を視認できなかった。つまり、コイル部が封止された封止部は不透明であった。下記表1及び表2に記載の「不透明」とは、高周波コイル部品中のコイル部を視認できないことを意味する。下記表1及び表2に記載の「透明」とは、高周波コイル部品中のコイル部を視認できることを意味する。
1~20GHzでの高周波コイル部品のSパラメータが測定された。Sパラメータの測定には、キーサイトテクノロジー株式会社製のネットワークアナライザ(E5071C)が用いられた。測定されたSパラメータに基づき、3GHz、5GHz及び7GHz其々におけるQ値が算出された。実施例1のQ値は、下記表1に示される。
【0059】
(実施例2~7、及び比較例1~7)
実施例6及び比較例4の場合、低誘電性樹脂として、BMI-3000Jの代わりに、BMI-6100が用いられた。未硬化のBMI-6100は、70質量%のアニソールを含有するビスマレイミド樹脂の溶液である。
実施例6及び比較例4の場合、テトラリンは用いられず、上記工程3の前に、50gのBMI-6100及び0.3gのジクミルパーオキシドを混合することにより、溶液が調製された。
【0060】
実施例7及び比較例5の場合、低誘電性樹脂として、BMI-3000Jの代わりに、BMI-2500(別のビスマレイミド樹脂)が用いられた。
【0061】
比較例6及び7の場合、BMI-3000Jの代わりにエポキシ樹脂が用いられた。つまり比較例6及び7の場合、上記工程1及び2の代わりに、28.7gのエポキシ樹脂の溶液、及び34.3gの硬化剤の溶液が混合された。エポキシ樹脂の溶液としては、DIC株式会社製のN-680-75Mが用いられた。N-680-75Mは、75質量%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(固形分)、及びメチルエチルケトン(MEK)から構成される溶液である。硬化剤としては、DIC株式会社製のHPC-8000L-65MTが用いられた。HPC-8000L-65MTは、65質量%の活性エステル型硬化剤(固形分)、トルエン、及びMEKから構成される溶液である。
硬化された上記エポキシ樹脂の23±2℃での比誘電率は、3.00以上である。つまり、比較例6及び7に用いれたエポキシ樹脂は、23±2℃での比誘電率εr1が2.00以上3.00未満である低誘電性樹脂に該当しない。ただし、以下では、説明の便宜上、比較例6及び7に用いれたエポキシ樹脂は、形式的に低誘電性樹脂の一種として表記される。
【0062】
実施例2~7、及び比較例1~7其々の工程3では、低誘電性樹脂及び中空粒子其々の質量比(体積比)が、下記表1及び表2に示される各値に調整された。
【0063】
比較例6及び7其々の工程4では、封止部の原料が、110℃で3時間乾燥された。
【0064】
比較例6及び7其々の工程5(成形工程)では、加圧された原料が150℃で1時間加熱された後、200℃で2時間加熱された。
【0065】
比較例6及び7の場合、コイル部が封止された上記封止シートが、大気中において110℃で3時間乾燥された。大気中での乾燥後、真空乾燥機中で封止シートを150℃で1時間加熱し、さらに200℃で2時間加熱することにより、封止シート中の樹脂が硬化された。
【0066】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例2~7及び比較例1~7其々の各工程、各評価、及び各測定が実施された。
ただし、比較例3の場合、中空粒子の質量比が高く、封止部の原料(ペースト)の粘度が高過ぎたため、封止部を作製することはできず、上記の評価及び測定を実施することもできなかった。
また比較例6及び7の場合、熱膨張係数及び3点曲げ強度の測定、並びに耐熱性及び透明性の評価は実施されなかった。
【0067】
実施例2~7及び比較例2~5のいずれの場合も、はんだ槽への浸漬に因る角棒の外観異常、変色、及び変形のいずれも起きなかった。比較例1の場合、角棒の外観異常及び変色は起きなかったが、はんだ槽への浸漬に因り、角棒が変形してしまった。
実施例1~5、比較例1及び2其々の上記評価及び測定の結果は、下記表1に示される。
実施例6、7及び比較例4~7其々の上記評価及び測定の結果は、下記表2に示される。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0070】
例えば、本発明の一側面に係る高周波コイル部品は、高周波回路用のインダクタに好適である。
【符号の説明】
【0071】
1…高周波コイル部品、2…封止部、3…端子電極、4…樹脂、6…中空粒子、5…コイル部、5a,5b…コイル部の引き出し部。
図1
図2