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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058333
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
F16K7/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165622
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦塚 崇史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プランジャと駆動部間の衝撃を抑制しながらバルブ装置を小型化する。
【解決手段】バルブ装置69は、ハウジング30と、ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路38と、一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部36と、ハウジング内に設けられており、第一導出部と連通しているとともに、外部に流体を導出する二次側通路32と、第一導出部と連通しているとともに端部が二次側通路と連通している連通室20と、第一導出部に形成されている弁座34と、弁座に接触可能であり、第一導出部を開閉する弁体18と、弁体に固定されており、弁体を弁座に対して移動させるプランジャ14と、ハウジングに固定されており、プランジャを可動可能な状態で支持している駆動部40を備えている。弁体は、第一導出部が開弁されているときにプランジャと駆動部の間に介在して弁体の移動を規制する規制部18dを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路の開閉を行うバルブ装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、
前記一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、
前記ハウジング内に設けられており、前記第一導出部と連通しているとともに、外部に流体を導出する二次側通路と、
前記第一導出部と連通しているとともに端部が前記二次側通路と連通している連通室と、
前記第一導出部に形成されている弁座と、
前記弁座に接触可能であり、前記第一導出部を開閉する弁体と、
前記弁体に固定されており、前記弁体を前記弁座に対して移動させるプランジャと、
前記ハウジングに固定されており、前記プランジャを可動可能な状態で支持している駆動部と、
を備えており、
前記弁体は、前記第一導出部が開弁されているときに前記プランジャと前記駆動部の間に介在して前記弁体の移動を規制する規制部を備えている、バルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置であって、
前記弁体は、ダイヤフラム状であり、前記駆動部に固定されている外周部と、前記プランジャに固定されている中央部と、前記外周部と前記中央部の間に設けられているとともに前記弁体が開閉するときに変形する変形部と、を備えており、
前記変形部が、前記外周部から前記中央部に向かうに従って、前記連通室の底面に近づいている、バルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブ装置であって、
前記弁体が閉弁しているときに、前記駆動部と前記変形部との距離が、前記外周部から前記中央部に向かうに従って大きくなっている、バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、バルブ装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、流体流路の開閉を行うバルブ装置が開示されている。特許文献1のバルブ装置は、流体流路を構成しているハウジングと、ハウジング内に設けられている弁座と、弁座に接触可能な弁体と、弁体に固定されているプランジャと、ハウジングに固定されているとともにプランジャを可動可能な状態で支持している駆動部を備えている。特許文献1では、駆動部がプランジャを移動させ、弁体を弁座に対して着座・離反させることにより、流体流路を開閉している。また、特許文献1では、プランジャが駆動部に接触して両者に衝撃が加わることを抑制するため、プランジャと駆動部(ハウジングに対して不動の部分)の間に緩衝部材を配置している。緩衝部材は、プランジャの弁体に固定されている側とは反対側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-232352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバルブ装置の場合、プランジャと駆動部の間に、プランジャが移動するためのスペースに加え、緩衝部材を配置するスペースを確保することが必要となる。プランジャと駆動部の間に緩衝部材を配置しなければ、緩衝部材を配置するスペースを削除できる分、バルブ装置の小型化を実現することができる。しかしながら、プランジャと駆動部の間に緩衝部材を配置しないと、プランジャと駆動部が接触する可能性を排除することができず、両者に衝撃が加わる可能性を排除できない。すなわち、特許文献1では、バルブ部材の小型化と、プランジャと駆動部間の衝撃の抑制は、トレードオフの関係にある。本明細書は、プランジャと駆動部間の衝撃を抑制しながらバルブ装置を小型化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、流体流路の開閉を行うバルブ装置である。このバルブ装置は、ハウジングと、ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、ハウジング内に設けられており、第一導出部と連通しているとともに、外部に流体を導出する二次側通路と、第一導出部と連通しているとともに端部が二次側通路と連通している連通室と、第一導出部に形成されている弁座と、弁座に接触可能であり、第一導出部を開閉する弁体と、弁体に固定されており、弁体を弁座に対して移動させるプランジャと、ハウジングに固定されており、プランジャを可動可能な状態で支持している駆動部を備えていてよい。また、このバルブ装置では、弁体は、第一導出部が開弁されているときにプランジャと駆動部の間に介在して弁体の移動を規制する規制部を備えていてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術のバルブ装置であって、弁体は、ダイヤフラム状であり、駆動部に固定されている外周部と、プランジャに固定されている中央部と、外周部と中央部の間に設けられているとともに弁体が開閉するときに変形する変形部を備えていてよい。また、変形部が、外周部から中央部に向かうに従って、連通室の底面に近づいていてよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第2技術のバルブ装置であって、弁体が閉弁しているときに、駆動部と変形部との距離が、外周部から中央部に向かうに従って大きくなっていてよい。
【発明の効果】
【0008】
第1技術によると、弁体が、プランジャと駆動部の間に衝撃が加わることを緩衝する緩衝部材として機能する。すなわち、第1技術によると、プランジャと駆動部が直接接触することを防止するためだけの緩衝部材を省略することができる。プランジャと駆動部の間に緩衝部材を配置するためのスペースを確保する必要がなく(プランジャの弁体が固定されている側とは反対側に、プランジャが移動するためだけのスペースを確保すればよく)、バルブ装置のサイズを小型化することができる。また、緩衝部材を省略する分、バルブ装置のコスト(材料コスト、製造コスト)を低減することもできる。
【0009】
なお、駆動部が、電磁コイルに通電してプランジャを駆動するタイプ(いわゆる、ソレノイドバルブ)の場合、通常、非通電時に弁体は閉弁しており、通電時に弁体が開弁するノーマリーオフとする。ノーマリーオフを実現するため、プランジャと駆動部の間にばね等を配置し、ばねの付勢力(伸張力)を利用して弁体を弁座に着座させる。この場合、プランジャと駆動部の間には、ばね等を配置するためのスペースを確保することも必要となる。そのため、プランジャと駆動部の間に緩衝部材を配置する従来のバルブ装置においては、緩衝部材のサイズ(表面積)が小さくなる傾向にある。その結果、緩衝部材がプランジャと駆動部に挟持された際に緩衝部材が受ける負荷(面圧)が大きくなり、緩衝部材が劣化しやすくなる。すなわち、緩衝部材の耐久性が低下し、バルブ装置の寿命が短くなる。第1技術によると、弁体に緩衝部材としての機能を付加することにより、緩衝部材のサイズを大きく確保することができ、バルブ装置の寿命を長くすることもできる。
【0010】
第2技術によると、弁体が開弁する(閉弁状態から開弁状態に移行する)ときに、変形部の外周側から駆動部に接触し始める(駆動部と弁体に挟持され始める)。その結果、変形部と駆動部の接触面積を広く確保することができ、弁体(変形部)が受ける負荷が低減し、バルブ装置の寿命をさらに長くすることができる。また、変形部は弁体の外周部と中央部の間に設けられている(すなわち、弁体の変形部、外周部、中央部は一体である)ので、開弁の際に変形部の外周側から駆動部に接触し始めることにより、弁体の中央部(弁体中央部に固定されているプランジャ)が軸ずれすることを抑制することができる。その結果、弁体が閉弁する際もプランジャの軸ずれが抑制され、弁体と弁座の位置ずれも抑制することができる。弁体と弁座の位置ずれを抑制することにより、弁体のシール性を高くすることもできる。
【0011】
第3技術によると、バルブ装置が閉弁している(弁体が弁座に着座している)ときに、連通室の底面と弁体の変形部との距離を大きく確保することができる。換言すると、変形部が連通室の底面に近づくことを抑制することができる。変形部と連通室の底面との距離を確保することにより、例えば低温環境下で流体が氷結した際、変形部と連通室が固着することを抑制することができる。なお、変形粒(弁体の一部分)と連通室が固着すると、バルブ装置を駆動する(弁体を開弁する)ときに、バルブ装置が機能できなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バルブ装置を備えた燃料電池システムの概略図を示す。
図2】バルブ装置の断面図を示す(閉弁状態)。
図3】バルブ装置の断面図を示す(開弁状態)。
図4】バルブ装置の部分拡大図であり、バルブ装置を駆動したときの弁体の状態を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(バルブ装置を用いた燃料電池システム)
まず、図1を参照し、本明細書で開示するバルブ装置を用いた燃料電池システム100について説明する。燃料電池システムは、車両(燃料電池車)に好適に搭載される。燃料電池システム100は、燃料電池スタック90と、燃料電池スタック90に水素ガスを供給する水素系60と、燃料電池スタック90にエアガス(外気)を供給するエア系70と、コントローラ75を備えている。燃料電池システム100では、水素系60から供給された水素ガスと、エア系70から供給された酸素ガス(エアガス)を用いて発電を行う。
【0014】
水素系60は、水素ガスタンク62と、水素供給通路64と、水素排出通路68を備えている。減圧バルブ63が、水素供給通路64上に設けられている。水素ガスタンク62から水素供給通路64に供給された水素ガスは、減圧バルブ63によって調圧される。減圧バルブ63の下流にインジェクタ(図示省略)が設けられており、水素ガスタンク62から供給された水素ガスはインジェクタによって燃料電池スタック90に供給される。水素排出通路68上に、気液分離器66、水素排出バルブ69が設けられている。水素排出バルブ69は、バルブ装置の一例である。水素排出バルブ69は、気液分離器66より下流に設けられている。燃料電池スタック90への水素ガスの供給は、コントローラ75によって制御される。すなわち、コントローラ75は、水素供給通路64のオン・オフ、水素供給通路64を通過する水素ガスの流量を制御する。
【0015】
燃料電池スタック90から排出される水素ガス(水素オフガス)は、気液分離器66に供給される。気液分離器66では、水素オフガスに含まれる水素ガスが抽出される。気液分離器66で抽出された水素ガスは、水素循環ポンプ(図示省略)によって水素供給通路64に戻され、燃料電池スタック90に供給される。一方、気液分離器66で水素ガスが抽出された残分は、水素排出通路68に排出され、排出管84を通じて燃料電池システム100の外部に排出される。なお、排出管84は、後述するエア排出通路80にも接続されている。水素排出通路68の流量は水素排出バルブ69によって調整される。水素排出通路68のオン・オフ、及び、水素排出通路68を通過する水素オフガスの流量もコントローラ75によって制御される。なお、気液分離器66によって水素ガスが抽出された残分には、燃料電池システム100で生じた生成水が含まれている。
【0016】
エア系70は、コンプレッサ72と、エア供給通路74と、エア排出通路80と、バイパス通路78と、エア供給バルブ76と、エア排出バルブ50と、バイパスバルブ79を備えている。コンプレッサ72は、エアガスとして外気をエア供給通路74に圧送する。なお、コンプレッサ72の上流にはエアクリーナ(図示省略)が配置されている。そのため、エア供給通路74には、清浄なエアガスが供給される。エア供給通路74は、燃料電池スタック90とコンプレッサ72を接続している。エア供給通路74上には、エア供給バルブ76が配置されている。具体的には、エア供給通路74は、コンプレッサ72とエア供給バルブ76を接続している上流側エア供給通路74aと、エア供給バルブ76と燃料電池スタック90を接続している下流側エア供給通路74bを備えている。コンプレッサ72を駆動し、エア供給バルブ76が上流側エア供給通路74aと下流側エア供給通路74bを導通させると、エアガスとして外気が燃料電池スタック90に供給される。なお、コンプレッサ72とエア供給バルブ76の間に、インタークーラー(図示省略)が配置されている。燃料電池スタック90には、インタークーラーで温度が調整された(冷却された)エアガスが供給される。
【0017】
エア排出通路80は、燃料電池スタック90に接続されており、燃料電池スタック90からエアオフガスを排出する。排出されたエアオフガスは、排出管84を通じて燃料電池システム100の外部に排出される。エア排出通路80上にはエア排出バルブ50が設けられている。エア排出バルブ50は、バタフライ弁であり、コントローラ75によって制御される。エア排出バルブ50の開度を調整することにより、エアオフガス量が調整される。エアオフガスには、燃料電池システム100で生じた生成水が含まれている。
【0018】
バイパス通路78は、エア供給通路74とエア排出通路80を接続している。具体的には、バイパス通路78の一端は上流側エア供給通路74aに接続されており、他端はエア排出バルブ50の下流でエア排出通路80に接続されている。バイパス通路78上にバイパスバルブ79が配置されており、バイパスバルブ79が開弁すると、エア供給通路74内のエアガスがエア排出通路80に供給される。
【0019】
(水素排出バルブ)
図2及び図3を参照し、水素排出バルブ69について説明する。水素排出バルブ69は、気液分離器66によって水素ガスが抽出された残分(生成水)の流量を調整する。図2に示すように、水素排出バルブ69は、生成水が流通するハウジング30と、ハウジング30内の流路を開閉するバルブ部40を備えている。バルブ部40は、駆動部の一例である。ハウジング30は、一次側通路38が形成されている流体導入部30aと、二次側通路32が形成されている流体導出部30bを備えている。流体導入部30aは、気液分離器66に固定されている。流体導出部30bには、水素排出通路68を構成する連結ホース(図示省略)が取り付けられる。また、一次側通路38と二次側通路32の間には、連通室20が設けられている。水素排出バルブ69の外部(気液分離器66)から水素排出バルブ69内(ハウジング30内)に導入された生成水は、一次側通路38、連通室20、二次側通路32を通過して水素排出バルブ69の外部(水素排出通路68)に導出される。
【0020】
一次側通路38の下流側端部には、第一導出部36が形成されている。第一導出部36は、一次側通路38の側壁に形成されており、連通室20に開口している。第一導出部36は、連通室20内に突出した形状を有しており、端面は後述する弁体18が着座する弁座34を構成している。第一導出部36は、流路面積が一次側通路38より小さく、オリフィス状である。第一導出部36が伸びる方向と一次側通路38が伸びる方向は異なる。第一導出部36は、一次側通路38が伸びる方向に対し、略直交する方向に伸びている。具体的には、第一導出部36は略鉛直方向に伸びており、一次側通路38は略水平方向に伸びている。そのため、一次側通路38に導入された生成水は、一次側通路38を水平方向に移動し、第一導出部36を上方に移動した後、連通室20に導出される。
【0021】
二次側通路32の上流側端部は、連通室20に連通している。そのため、二次側通路32は、連通室20、第一導出部36を介して、一次側通路38に連通している。連通室20から二次側通路32に導入された生成水は、二次側通路32を下方に移動し、二次側通路32の下流側端部に設けられた第二導出部33から、水素排出バルブ69の外部(水素排出通路68)に導出される。
【0022】
バルブ部40は、ハウジング30の上方に固定されている。バルブ部40は、筒状の固定ベース4と、固定ベース4の外周に設けられている電磁コイル10と、固定ベース4の内側に設けられている吸引子8と、固定ベース4の内側で吸引子8と同軸に設けられているプランジャ14と、固定ベース4に固定されている取付板16と、プランジャ14及び取付板16に固定されている弁体18と、カバー6を備えている。
【0023】
電磁コイル10は、固定ベース4の外周面に設けられた凹部に配置されている。吸引子8の上側端部のサイズは、固定ベース4の筒内の断面サイズ(内径)より大きい。吸引子8の上側端部は、固定ベース4の上端面に接触し、固定ベース4の筒内と外部を隔離している。吸引子8の上側端部と固定ベース4の上端面の間には、Oリング2が設けられており、固定ベース4の筒内をシールしている。吸引子8は磁性体であり、その一部が、電磁コイル10の一部に対向している。
【0024】
吸引子8とプランジャ14の間に、コイルばね12が設けられている。コイルばね12は、吸引子8とプランジャ14の双方に固定されており、両者が接触することを防止している。プランジャ14は、取付板16の中央に設けられている貫通孔を通過している。プランジャ14の先端(吸引子8と反対側の端部)に、弁体18が固定されている。なお、プランジャ14の先端側(連通室20内に存在する部分)のサイズは、取付板16の貫通孔のサイズより大きい。
【0025】
弁体18は、ゴム製であり、ダイヤフラム状である。弁体18の中央部18aが、プランジャ14の先端に嵌め込まれ、弁体18とプランジャ14が固定されている。弁体18の外周部18cは、取付板16に固定されている。すなわち、弁体18の外周部18cは、駆動部であるバルブ部40に固定されている。具体的には、外周部18cが、取付板16のハウジング30側表面と、ハウジング30の取付板16側表面に挟持されることにより、弁体18の外周部18cがバルブ部40に固定されている。中央部18aと外周部18cの間には、プランジャ14の動作に合わせて変形な変形部18bが設けられている。変形部18bの内側(中央部18a側)には、プランジャ14の先端部分(取付板16の貫通孔よりサイズが大きい部分)を覆う規制部18dが設けられている。具体的には、規制部18dは、プランジャ14の先端部分の上方(取付板16側)を覆い、プランジャ14の先端部分と取付板16の間に介在している。なお、変形部18bの厚みは、規制部18dを除き、一定である。
【0026】
なお、取付板16は、ハウジング30の上面に固定されている。取付板16をハウジング30に固定すると、弁体18が弁座34に対向する。より具体的には、コイルばね12の付勢力(伸張力)によって弁体18の中央部18aが弁座34に押し付けられ(着座し)、第一導出部36が塞がれる。弁体18(中央部18a)が弁座34に着座している間、一次側通路38と二次側通路32は連通しておらず、生成水が水素排出バルブ69から導出されることはない。また、カバー6は、取付板16の上面に固定されており、固定ベース4及び電磁コイル10を覆い、固定ベース4及び電磁コイル10を外部から隔離している。
【0027】
図3に示すように、電磁コイル10に通電すると、吸引子8が励磁され、プランジャ14が吸引子8に引き付けられる。すなわち、プランジャ14が、吸引子8の励磁力によって吸引子8に引き付けられ、コイルばね12を圧縮しながら上方に移動する。バルブ部40は、ノーマリーオフタイプである。プランジャ14が上方に移動すると、プランジャ14とともに弁体18の中央部18aが上方に移動し、弁体18が弁座34から離れる。弁体18が弁座34から離れると、一次側通路38と二次側通路32が連通し、生成水が水素排出バルブ69から導出される。
【0028】
次に、図4を参照し、水素排出バルブ69を駆動したときの弁体18の状態を説明する。(a)は閉弁状態(非通電時)を示し、(b)は開弁状態(通電時)を示している。まず、閉弁状態(a)の弁体18の状態について説明する。上述したように、弁体18は、中央部18aがプランジャ14に固定され、外周部18cが取付板16に固定(取付板16とハウジング30に挟持)されている。変形部18bは、外周部18cから中央部18aに向けてほぼ直線状に(平坦状に)伸びており、変形部18bは撓んでいない。換言すると、弁体18が閉弁しているときに、変形部18bは、外周部18cから中央部18aに従って連通室20の底面に近づいている。その結果、閉弁時に、変形部18bと連通室20の底面との距離を確保することができる。
【0029】
上述したように、ハウジング30内に導入された生成水は、一次側通路38、連通室20、二次側通路32を通過する。そのため、閉弁時においても連通室20内に生成水が残存していることがある。閉弁時に連通室20内に残存した生成水は、低温環境下において氷結することが起こり得る。生成水が氷結した際に変形部18bと連通室20の底面との距離が確保されていれば、変形部18bと連通室20が固着することを抑制することができる。変形部18bと連通室20の固着を抑制することにより、開弁時(通電時)に弁体18を確実に開弁することができる。また、変形部18bと連通室20の固着を抑制することにより、変形部18bの劣化も抑制することができる。
【0030】
また、閉弁時は、取付板16と変形部18bの距離(取付板16の変形部18b側表面と、変形部18bの取付板16側表面との隙間)が、外周部18c側から中央部18a側に向かうに従って大きくなっている。そのため、閉弁状態(a)から開弁状態(b)に移行する際、変形部18bの外周部18c側から取付板16に接触し始める。その結果、変形部18bのほぼ全面が取付板16に接触し(変形部18bの外周部18c側から中央部18a側の全体が、取付板16に接触し)、変形部18bと取付板16の接触面積を広く確保することができる。例えば、開弁時に変形部の中央部側から取付板に接触する場合、弁体の外周部は固定されているため、変形部の中央部側と外周部側が拘束され、変形部の中間部分(中央部側と外周部側)が取付板に接触しないことが起こり得る。その結果、変形部が受ける負荷が増大し、変形部(弁体)の耐久性が低下する。閉弁状態(a)から開弁状態(b)に移行する際、変形部18bの外周部18c側から取付板16に接触し始めることにより、変形部が受ける負荷を低減し、変形部(弁体)の耐久性が向上する。
【0031】
さらに、閉弁状態(a)から開弁状態(b)に移行する際、変形部18bの外周部18c側から取付板16に接触し始めることにより、開弁時のプランジャ14の軸ずれが抑制され、結果として開弁時のプランジャ14の軸ずれも抑制される。プランジャ14の軸ずれを抑制することにより、閉弁時に、弁体18の中央部18aが弁座34に良好に接触し、弁体18のシール性も向上する。
【0032】
開弁状態(b)に示されているように、開弁時は、取付板16とプランジャ14によって規制部18dが挟持される。その結果、プランジャ14の動き(吸引子8側に向かう上方への動き)が規制され、プランジャ14の上方移動が停止する。プランジャ14の上方移動が停止した状態(開弁状態(b))において、プランジャ14と吸引子8の間には僅かな隙間が存在する。すなわち、水素排出バルブ69では、開弁時にプランジャ14と吸引子8が、直接的、あるいは、緩衝部材を介して間接的に接触することはない。水素排出バルブ69では、プランジャ14と吸引子8の間に緩衝部材を配置することなく、開弁時にプランジャ14と吸引子8の間に衝撃が加わることを抑制することができる。水素排出バルブ69は、プランジャ14と吸引子8の間に緩衝部材を配置するためのスペースを確保する必要がなく、装置の小型化を実現している。
【0033】
なお、上述したように、水素排出バルブ69では、開弁状態(b)において、プランジャ14と吸引子8の間に僅かな隙間が存在する。この隙間に緩衝部材を配置しても、プランジャ14と吸引子8の間に衝撃が加わることを抑制することができる。しかしながら、この場合、装置の小型化を実現しようとすると(プランジャ14と吸引子8の隙間を小さくすると)、緩衝部材の厚みが薄くなり、プランジャ14と吸引子8間の衝撃を良好に低減することができない。また、緩衝部材の厚みを薄くすると、緩衝部材の寿命も低下する。水素排出バルブ69は、小型で高耐久であると評価することもできる。
【0034】
さらに、上述したように、プランジャ14と吸引子8間にはコイルばね12が配置されている。そのため、プランジャ14と吸引子8の間に緩衝部材を配置する場合、コイルばね12が存在しない部分に緩衝部材を配置することが必要となる。その結果、緩衝部材の表面積が小さくなり、プランジャ14と吸引子8間の衝撃を良好に低減することができない(あるいは、配置した緩衝部材の耐久性が低下する)。なお、コイルばね12のサイズを小さくすれば、緩衝部材を配置する面積が大きく確保され、緩衝部材の表面積を大きくすることができる。しかしながら、その場合、コイルばね12の付勢力が低下し、開弁状態(b)において弁体18のシール性が低下する。
【0035】
水素排出バルブ69は、プランジャ14と吸引子8の間に緩衝部材を配置せず、弁体18に設けた規制部18dによってプランジャ14と吸引子8の接触を抑制することにより、装置の小型化、装置の高耐久化、開弁状態(b)における弁体18のシール性の向上、といった利点を得ることができる。
【0036】
(他の実施形態)
上記実施例では、水素排出バルブ69とエア排出バルブ50を備えた燃料電池システム100について説明した。水素排出バルブ69の構造は、エア排出バルブ50に適用することもできる。すなわち、水素排出バルブ69と同様のバルブ装置を、エア排出バルブ50として利用することもできる。
【0037】
上記実施例では、変形部の厚みが、規制部を除き、一定である形態について説明した。すなわち、実施例の水素排出バルブ(バルブ装置)は、規制部の厚みが、規制部以外の変形部の厚みと異なっている。しかしながら、規制部の厚みは、規制部以外の変形部の厚みと同一であってもよい。規制部の厚みは、開弁状態に規制部に加わる力に応じて任意に選択することができる。
【0038】
上記実施例では、変形部が、閉弁状態において、弁体の外周部側から中央部側に向かうに従って連通室の底面に近づいている形態について説明した。しかしながら、この形態は、好ましい形態の一例に過ぎず、例えば、変形部の中間部分(最外周部側と最中央部側の間)に、最中央部側よりも連通室の底面に近い部分が存在していてもよい。少なくとも閉弁状態において変形部と連通室が非接触であれば、生成水が氷結したときに、変形部と連通室が固着することを抑制することができる。
【0039】
また、上記実施例では、閉弁状態において、取付板と変形部の距離が、弁体の外周部側から中央部側に向かうに従って大きくなっている形態について説明した。また、これにより、変形部と取付板の接触面積を広く確保することができる(変形部の中間部分に、取付板と非接触部分が存在しない)ことを説明した。しかしながら、この形態も好ましい形態の一例である。例えば、変形部に溝等を形成し、変形部の厚みが変化し易いようにすれば、開弁時に変形部の中央部側から取付板に接触したとしても、変形部の厚みが変化し(変形部の面方向の長さが変化し)、変形部の全体を取付板に接触させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
14:プランジャ
18:弁体
18d:規制部
20:連通室
30:ハウジング
32:二次側通路
33:第二導出部
34:弁座
36:第一導出部
38:一次側通路
40:駆動部(バルブ部)
69:バルブ装置
図1
図2
図3
図4