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特開2024-58336積層コイル部品の製造方法、及び積層コイル部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058336
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】積層コイル部品の製造方法、及び積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20240418BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240418BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240418BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F17/00 D
H01F27/00 160
H01F41/04 C
H01F27/29 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165626
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】大島 由也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】唯木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】戸沢 洋司
(72)【発明者】
【氏名】大澤 滋
(72)【発明者】
【氏名】小澤 翼
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD04
5E062FF01
5E062FG12
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB02
5E070BA12
5E070CB03
5E070CB13
5E070CB17
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる積層コイル部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層コイル部品において、素体2は、引出導体12の次に積層されるコイル導体13Aを備える。また、積層コイル部品は、引出導体14の直前に積層されるコイル導体13Fを備える。コイル導体13Aは、積層時において、引出導体12の影響を受けやすい部分である。コイル導体13Fは、積層時において、引出導体12の影響を受けにくい部分である。これに対し、引出導体12と、コイル導体13Aとの積層方向における距離L1A、L1Bは、引出導体14と、コイル導体13Fとの積層方向における距離L2A、L2Bよりも大きくなるように、絶縁体シート50を積層する。これにより、積層時において、コイル導体13Aは、引出導体12から離れていることで、引出導体12からの影響を受けにくくする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンの導体が形成された絶縁体シートを順に積層することで積層コイル部品を製造する積層コイル部品の製造方法であって、
最初に積層される第1の引出導体と、次に積層される第1のコイル導体との積層方向における距離は、最後に積層される第2の引出導体と、前記第2の引出導体の直前に積層される第2のコイル導体との前記積層方向における距離よりも大きくなるように、前記絶縁体シートを積層する、積層コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記第1のコイル導体と、前記第1のコイル導体の次に積層される第3のコイル導体の距離は、前記第1の引出導体と前記第1のコイル導体の距離よりも小さくなるように、前記絶縁体シートを積層する、請求項1に記載の積層コイル部品の製造方法。
【請求項3】
素体と、
前記素体内において、所定のパターンの複数のコイル導体を積層方向に積層することで形成されるコイル部と、
前記素体内において、前記コイル部と接続され、前記素体から露出する第1の引出導体、及び第2の引出導体と、を備え、
前記コイル部は、前記第1の引出導体と前記積層方向において隣り合う第1のコイル導体と、前記第2の引出導体と前記積層方向において隣り合う第2のコイル導体と、を有し、
前記第1の引出導体と前記第1のコイル導体との前記積層方向における距離は、前記第2の引出導体と前記第2のコイル導体との前記積層方向における距離よりも大きい、積層コイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品の製造方法、及び積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、当該素体の面に形成した外部電極と、を備える積層コイル部品が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、積層コイル部品は、素体内に形成されたコイル部と、コイル部と接続されて素体の一方の面に露出する引出導体と、素体の他方の面に露出する引出導体と、を備える。導体間の距離はいずれの箇所においても一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-082280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有する積層コイル部品では、各引出導体及びコイル導体を積層するときに、一方の引出導体付近のコイル導体が、引出導体の影響を受けることによって荷崩れ(他の層のコイル導体に対してずれる)してしまう場合があった。これにより、積層コイル部品が狙いの特性を得られないという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる、積層コイル部品の製造方法、及び積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における積層コイル部品の製造方法は、所定のパターンの導体が形成された絶縁体シートを順に積層することで積層コイル部品を製造する積層コイル部品の製造方法であって、最初に積層される第1の引出導体と、次に積層される第1のコイル導体との積層方向における距離は、最後に積層される第2の引出導体と、第2の引出導体の直前に積層される第2のコイル導体との積層方向における距離よりも大きくなるように、絶縁体シートを積層する。
【0007】
積層コイル部品は、最初に積層される第1の引出導体の次に積層される第1のコイル導体を備える。また、積層コイル部品は、最後に積層される第2の引出導体の直前に積層される第2のコイル導体を備える。第1のコイル導体は、積層時において、第1の引出導体の影響を受けやすい部分である。第2のコイル導体は、積層時において、第1の引出導体の影響を受けにくい部分である。これに対し、第1の引出導体と、第1のコイル導体との積層方向における距離は、第2の引出導体と、第2のコイル導体との積層方向における距離よりも大きくなるように、絶縁体シートを積層する。これにより、積層時において、第1のコイル導体は、第1の引出導体から離れていることで、第1の引出導体からの影響を受けにくくすることができる。以上より、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる。
【0008】
第1のコイル導体と、第1のコイル導体の次に積層される第3のコイル導体の距離は、第1の引出導体と第1のコイル導体の距離よりも小さくなるように、絶縁体シートを積層してよい。第1のコイル導体は、コイル導体間の距離よりも第1の引出導体から離れていることで、第1の引出導体からの影響を受けにくくすることができる。
【0009】
本発明の一つの態様における積層コイル部品は、素体と、素体内において、所定のパターンの複数のコイル導体を積層方向に積層することで形成されるコイル部と、素体内において、コイル部と接続され、素体から露出する第1の引出導体、及び第2の引出導体と、を備え、コイル部は、第1の引出導体と積層方向において隣り合う第1のコイル導体と、第2の引出導体と積層方向において隣り合う第2のコイル導体と、を有し、第1の引出導体と第1のコイル導体との積層方向における距離は、第2の引出導体と第2のコイル導体との積層方向における距離よりも大きい。
【0010】
この積層コイル部品によれば、上述の積層コイル部品の製造方法と同様な作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで、不良品の発生を抑制できる、積層コイル部品の製造方法、及び積層コイル部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態における積層コイル部品の斜視図である。
図2図1に示す積層コイル部品の概略断面図である。
図3図1に示す積層コイル部品を分解して各層を積層方向から見た場合の展開図である。
図4】本実施形態に係る積層コイル部品の製造方法を示す工程図である。
図5図5(a)は、積層工程における焼成前の素体の状態を示す概略断面図であり、図5(b)は、積層工程における焼成後の素体の状態を示す概略断面図である。
図6】焼成後の素体の断面を示す写真である。
図7】実施形態及び比較例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
まず、図1図3を参照して、本実施形態における積層コイル部品1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態における積層コイル部品1の斜視図である。図2は、図1の積層コイル部品の概略断面図である。図3は、図1に示す積層コイル部品1を分解して各層を積層方向から見た場合の展開図である。X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差する方向である。本実施形態における積層コイル部品は、複数の層をZ軸方向に積層することによって形成されている。層間の境界は、視認できない程度に一体化されている。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。特に限定されないが、本実施形態では、Z軸方向が請求項における「積層方向」に該当する。
【0015】
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その外表面として、Y軸方向に互いに対向する一対の端面2a及び端面2bと、一対の端面2a,2bを連結するように一対の端面2a,2bの対向方向に延びる4つの側面2c,2d,2e,2fと、を有している。側面2c,2dはZ軸方向に対向する。側面2e,2fはX軸方向に対向する。側面2dは、例えば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(例えば、回路基板又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面として規定される。
【0016】
各端面2a,2bの対向方向と、各側面2c,2dの対向方向と、各側面2e,2fの対向方向とは、互いに略直交している。なお、直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0017】
図2に示されるように、素体2の内部には、コイル部10と、引出導体12(第1の引出導体)と、引出導体14(第2の引出導体)と、が設けられる。コイル部10は、複数のコイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fをスルーホールで電気的に接続することで構成される。コイル部10の中心軸AXは、Z軸方向に延びる。引出導体12は、素体2内において、コイル部10と接続されて端面2aに露出する。引出導体14は、素体2内において、コイル部10と接続されて端面2bに露出する。
【0018】
素体2は、複数の絶縁体層11と、複数のコイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fと、引出導体12,14とが積層されることによって構成されている。各絶縁体層11は、Z軸方向に積層されている。以下、各側面2c,2dの対向方向を「積層方向」という場合もある。なお、積層方向における側面2c側を「上」と称し、積層方向における側面2d側を「下」と称する場合があるが、各層同士の位置関係を特定するために用いる語であり、製造状態や使用状態における上下の方向を限定するものではない。各絶縁体層11は、積層方向からみて略矩形形状を呈している(図3参照)。
【0019】
各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14は、積層方向に互いに離間して配置されている。各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14の間には、それぞれ絶縁体層11が配置されている。各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14は、積層方向で略同じ厚みを有している。各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14は、絶縁体層11を介して積層方向に互いに重なって配置されている。本実施形態では、上から順に、引出導体12、コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F、及び引出導体14の順で積層されている。
【0020】
各絶縁体層11の材料としては、積層コイル部品1の用途に応じて最適な材料を採用してよい。例えば、積層コイル部品1が積層セラミックコイルである場合、絶縁体層11は、Al、Zr、Ti等を含むガラスセラミックスの焼結体から構成される。例えば、積層コイル部品1が積層フェライトコイルである場合、絶縁体層11は、Fe、Mn、Zn等のフェライト材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体であってよい。例えば、積層コイル部品1がチップビーズである場合、絶縁体層11は、MnFe、ZnFe等のフェライト材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体であってよい。
【0021】
図1に示すように、外部電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、外部電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、各外部電極4,5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。各外部電極4,5は、導電材(例えば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各外部電極4,5は、導電性金属粉末(例えば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各外部電極4,5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、例えばNi、Snなどが用いられる。
【0022】
外部電極4は、端面2a上に位置する電極部分4aと、側面2d上に位置する電極部分4bと、側面2c上に位置する電極部分4cと、側面2e上に位置する電極部分4dと、側面2f上に位置する電極部分4eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分4aは、端面2aの全面を覆っている。電極部分4bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分4cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分4dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分4eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分4a,4b,4c,4d,4eは、一体的に形成されている。
【0023】
外部電極5は、端面2b上に位置する電極部分5aと、側面2d上に位置する電極部分5bと、側面2c上に位置する電極部分5cと、側面2e上に位置する電極部分5dと、側面2f上に位置する電極部分5eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分5aは、端面2bの全面を覆っている。電極部分5bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分5cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分5dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分5eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分5a,5b,5c,5d,5eは、一体的に形成されている。
【0024】
次に、図3を参照して、各コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13F及び各引出導体12,14の構成について詳細に説明する。図3に示すように、絶縁体層11は、縁部11a,11b、11e,11fを有している。縁部11aは、端面2aに対応する位置に形成されている。縁部11bは、端面2bに対応する位置に形成されている。縁部11eは、側面2eに対応する位置に形成されている。縁部11fは、側面2fに対応する位置に形成されている。なお、縁部11a,11b,11e,11fの符号は、引出導体12の絶縁体層11にのみ形成されているが、他の絶縁体層11も同様の縁部11a,11b,11e,11fを有する。
【0025】
引出導体12は、辺部21と、引出辺部22と、パッド部23と、を有する。辺部21は、X軸方向の負側の縁部11f(側面2f)側において、縁部11fに沿って延在する。辺部21は、Y軸方向の負側の縁部11a(端面2a)側に設けられる。引出辺部22は、辺部21のY軸方向の負側の端部から、縁部11aまで延びる。パッド部23は、辺部21のY軸方向の正側の端部において、辺部21の線幅よりも幅広な矩形を成している。
【0026】
引出導体14は、辺部26と、引出辺部27と、パッド部28と、を有する。辺部226は、X軸方向の負側の縁部11f(側面2f)側において、縁部11fに沿って延在する。辺部26は、Y軸方向の正側の縁部11b(端面2b)側に設けられる。引出辺部27は、辺部26のY軸方向の正側の端部から、縁部11bまで延びる。パッド部28は、辺部26のY軸方向の負側の端部において、辺部26の線幅よりも幅広な矩形を成している。
【0027】
コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、辺部31,32,33,34と、一対のパッド部36,37を有する。パッド部36は、各辺部の線幅よりも幅広な矩形を成しており、一段上側の絶縁体層11の導体のパッド部とスルーホール導体16を介して電気的に接続される。パッド部37は、各辺部の線幅よりも幅広な矩形を成しており、一段下側の絶縁体層11の導体のパッド部とスルーホール導体16を介して電気的に接続される。
【0028】
辺部31は、Y軸方向の負側の縁部11a(端面2a)側において、縁部11aに沿って延在する。辺部32は、Y軸方向の正側の縁部11b(端面2b)側において、縁部11bに沿って延在する。辺部33は、X軸方向の正側の縁部11e(側面2e)側において、縁部11eに沿って延在する。辺部34は、X軸方向の負側の縁部11f(側面2f)側において、縁部11fに沿って延在する。辺部31,32のX軸方向の正側の端部は、辺部33のY軸方向における端部に接続される。辺部31,32のX軸方向の負側の端部は、辺部34のY軸方向における端部に接続される。四つの辺部31,32,33,34によって略矩形環状の導体パターンが形成される。導体パターンのうち、パッド部36とパッド部37との間の領域では導体パターンが途切れており、辺部が省略されている。
【0029】
コイル導体13A(第1のコイル導体)は、上側の引出導体12とZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Aは、辺部34のY軸方向における略中央位置にパッド部36を有し、辺部31のX軸方向の負側の端部にパッド部37を有する。
【0030】
コイル導体13B(第3のコイル導体)は、Z軸方向において、引出導体12とは反対側でコイル導体13Aと隣り合う。コイル導体13Bは、辺部34のY軸方向における負側の端部にパッド部36を有し、辺部33のY軸方向の負側の端部にパッド部37を有する。なお、パッド部36は、X軸方向における正側へ、辺部34から突出する部分を有する。パッド部37は、X軸方向における負側へ、辺部33から突出する部分を有する。従って、パッド部36,37の突出部分は辺部31として機能する。
【0031】
コイル導体13Cは、上側のコイル導体13BとZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Cは、辺部31のX軸方向における正側の端部にパッド部36を有し、辺部33のY軸方向における略中央位置にパッド部37を有する。コイル導体13Dは、上側のコイル導体13CとZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Dは、辺部32のX軸方向における正側の端部にパッド部37を有し、辺部33のY軸方向における略中央位置にパッド部36を有する。
【0032】
コイル導体13Eは、Z軸方向において、引出導体14とは反対側でコイル導体13Fと隣り合う。コイル導体13Eは、辺部34のY軸方向における正側の端部にパッド部37を有し、辺部33のY軸方向の正側の端部にパッド部36を有する。なお、パッド部37は、X軸方向における正側へ、辺部34から突出する部分を有する。パッド部36は、X軸方向における負側へ、辺部33から突出する部分を有する。従って、パッド部36,37の突出部分は辺部32として機能する。
【0033】
コイル導体13F(第2のコイル導体)は、下側の引出導体14とZ軸方向で隣り合う。コイル導体13Fは、辺部34のY軸方向における略中央位置にパッド部37を有し、辺部32のX軸方向の負側の端部にパッド部36を有する。
【0034】
図2に示すように、引出導体12とコイル導体13AとのZ軸方向(積層方向)における距離はL1A、引出導体14とコイル導体13FとのZ軸方向における距離L2Aよりも大きい。また、コイル導体13Aと、コイル導体13Bの距離L3Aは、引出導体12とコイル導体13Aの距離L1Aよりも小さくなる。なお、コイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fのそれぞれの間の距離は、距離L3Aで等しくなる。また、距離L3Aは、距離L2Aと等しくてよい。ただし、距離L3Aと距離L2Aとの関係は特に限定されず、距離L3Aは距離L2Aより大きくても小さくていもよい。
【0035】
次に、図4図6を参照して、本実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法を示す工程図である。図5(a)は、積層工程における焼成前の素体2の状態を示す概略断面図である。図5(b)は、積層工程における焼成後の素体2の状態を示す概略断面図である。図6は、焼成後の素体2の断面を示す写真である。
【0036】
図4に示すように、まず、所定のパターンの導体が形成された絶縁体シート50を準備する絶縁体シート準備工程を実行する(ステップS10)。絶縁体シート50(図5(a)参照)は、焼成後において絶縁体層11となるシート部材である。絶縁体シート50上には、図3に示す各導体12,13A,13B,13C,13D,13E,13F,14の導体パターンが形成されている。また、絶縁体シート50に形成されたスルーホール51には、スルーホール導体16を形成されるためのペーストが充填される。
【0037】
次に、複数の絶縁体シート50を積層して、素体2を形成する積層工程を実行する(ステップS20)。図5(a)に示すように、積層工程S20では、上側の導体が形成された絶縁体シート50から順に積層する。すなわち、ベース部材120に対して、引出導体12の絶縁体シート50、コイル導体13Aの絶縁体シート50、コイル導体13Bの絶縁体シート50、コイル導体13Cの絶縁体シート50、コイル導体13Dの絶縁体シート50、コイル導体13Eの絶縁体シート50、コイル導体13Fの絶縁体シート50、及び引出導体14の絶縁体シート50の順で積層される。なお、スルーホール導体16は、上側の引出導体12から下側の引出導体14側へ向かうに従って、細くなるように形成される。積層工程S20においては、上側の引出導体12が下側に配置され、下側の引出導体14が上側に配置される。従って、積層工程S20においては、スルーホール導体16は、上側へ向かうに従って細くなるように配置される。
【0038】
最初に積層される引出導体12と、次に積層されるコイル導体13Aとの積層方向における距離L1Bは、最後に積層される引出導体14と、引出導体14の直前に積層されるコイル導体13Fとの積層方向における距離L2Bよりも大きくなるように、絶縁体シート50を積層する。また、コイル導体13Aと、コイル導体13Aの次に積層されるコイル導体13Bの距離L3Bは、引出導体12とコイル導体13Aの距離L1Bよりも小さくなるように、絶縁体シート50を積層する。なお、各導体の距離は、例えば、絶縁体シート50の厚みや絶縁体シート50の材料を調整することで大きくしたり小さくしたりできる。
【0039】
ここで、図5(a)に示す、焼成前の状態の絶縁体シート50及び各導体は曲がりなく平面状に形成されている。これに対し、図6に示すように、焼成後の素体2においては、絶縁体シート50は互いに一体化し、各導体には曲がりが生じる。そのため、図5(b)に示すように、焼成後の素体2における導体間の距離は、次のように測定する。具体的に、引出導体12の主面のうち、スルーホール導体16の経大部分を測定点P1とし、コイル導体13Aの主面のうち、測定点P1と積層方向に対応する位置を測定点P2とする。このときの測定点P1と測定点P2との間の距離が、焼成後の引出導体12とコイル導体13Aとの間の距離L1Aとなる。コイル導体13Fの主面のうち、スルーホール導体16の経大部分を測定点P3とし、引出導体14の主面のうち、測定点P3と積層方向に対応する位置を測定点P4とする。このときの測定点P3と測定点P4との間の距離が、焼成後の引出導体14とコイル導体13Fとの間の距離L2Aとなる。コイル導体13Aの主面のうち、スルーホール導体16の経大部分を測定点P5とし、コイル導体13Bの主面のうち、測定点P5と積層方向に対応する位置を測定点P6とする。このときの測定点P5と測定点P6との間の距離が、焼成後のコイル導体13Aとコイル導体13Bとの間の距離L3Aとなる。
【0040】
次に、素体2に対して外部電極4,5を形成する外部電極形成工程を実行する(ステップS30)。これにより、積層コイル部品1が完成する。
【0041】
次に、本実施形態に係る積層コイル部品1の作用・効果について説明する。
【0042】
まず、図7(b)を参照して、比較例に係る積層コイル部品の素体202について説明する。素体202では、全ての導体12,13A,13B,13C,13D,13E,13F,14間の距離が一定である。そのため、引出導体12とコイル導体13Aとの間の積層方向における距離は、引出導体14とコイル導体13Fとの間の積層方向における距離と同じである。素体202を積層するときは、引出導体12側がベース部材120に押し付けられる。そのため、引出導体12付近のコイル導体13A,13Bが、引出導体12の影響を受けることによって荷崩れ(他の層のコイル導体に対してずれる)してしまう場合があった。具体的には、引出導体12の引出辺部22がコイル導体13Aの外周側に位置することによって、積層時にコイル導体13Aがコイル内周側に押し出されることによって荷崩れが生じる場合があった。これにより、積層コイル部品が狙いの特性を得られないという問題があった。
【0043】
本実施形態における積層コイル部品1の製造方法は、所定のパターンの導体が形成された絶縁体シート50を順に積層することで積層コイル部品1を製造する積層コイル部品1の製造方法であって、最初に積層される引出導体12と、次に積層されるコイル導体13Aとの積層方向における距離L1Bは、最後に積層される引出導体14と、引出導体14の直前に積層されるコイル導体13Fとの積層方向における距離L2Bよりも大きくなるように、絶縁体シート50を積層する。
【0044】
積層コイル部品1は、最初に積層される引出導体12の次に積層されるコイル導体13Aを備える。また、積層コイル部品1は、最後に積層される引出導体14の直前に積層されるコイル導体13Fを備える。コイル導体13Aは、積層時において、引出導体12の影響を受けやすい部分である。コイル導体13Fは、積層時において、引出導体12の影響を受けにくい部分である。これに対し、引出導体12と、コイル導体13Aとの積層方向における距離L1Bは、引出導体14と、コイル導体13Fとの積層方向における距離よりも大きくなるように、絶縁体シート50を積層する。これにより、積層時において、コイル導体13Aは、引出導体12から離れていることで、引出導体12からの影響を受けにくくすることができる。以上より、積層時におけるコイル導体の荷崩れを抑制することで(図7(a)参照)、不良品の発生を抑制できる。
【0045】
コイル導体13Aと、コイル導体13Aの次に積層されるコイル導体13Bの距離L3Bは、引出導体12とコイル導体13Aの距離L1Bよりも小さくなるように、絶縁体シート50を積層してよい。コイル導体13Aは、コイル導体13A,13B間の距離よL3Bよりも引出導体12から離れていることで、引出導体12からの影響を受けにくくすることができる。
【0046】
本実施形態における積層コイル部品1は、素体2と、素体2内において、所定のパターンの複数のコイル導体13A,13B,13C,13D,13E,13Fを積層方向に積層することで形成されるコイル部10と、素体2内において、コイル部10と接続され、素体2から露出する引出導体12、及び引出導体14と、を備え、コイル部10は、引出導体12と積層方向において隣り合うコイル導体13Aと、引出導体14と積層方向において隣り合うコイル導体13Fと、を有し、引出導体12とコイル導体13Aとの積層方向における距離L1Aは、引出導体14とコイル導体13Fとの積層方向における距離L2Aよりも大きい。
【0047】
この積層コイル部品1によれば、上述の積層コイル部品1の製造方法と同様な作用・効果を得ることができる。
【0048】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、引出導体の形状は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、引出導体の構成を変更することに伴い、コイル導体の積層順序なども適宜変更可能である。
【0050】
また、各層のコイル導体の形状は上述の実施形態に限定されず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…積層コイル部品、2…素体、10…コイル部、12…引出導体(第1の引出導体)、14…引出導体(第2の引出導体)、13A…コイル導体(第1のコイル導体)、13F…コイル導体(第2のコイル導体)、13B…コイル導体(第3のコイル導体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7