(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058345
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】音叉型圧電振動片および当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20240418BHJP
H03H 9/215 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H03H9/19 J
H03H9/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165639
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 倭佳
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA01
5J108BB02
5J108CC06
5J108CC11
5J108DD05
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE17
5J108GG03
5J108GG16
5J108HH02
(57)【要約】
【課題】 音叉型圧電振動片が超小型になっても振動腕で生じさせた振動を保持部において充分に振動減衰させ、周波数等の特性変動を抑制する。
【解決手段】 音叉型圧電振動片2は、一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された基部21と、前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕22,23と、前記基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部261と、伸長部端から横方向に伸長した屈曲伸長部262を有するとともに、前記励振電極に接続する引出電極が形成された保持部26と、前記伸長部に設けられた第一接続部と前記屈曲伸長部に設けられた第二接続部と、前記第一接続部と前記第二接続部間に形成された振動減衰部263と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された基部と、
前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕と、
前記基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部と、伸長部端から横方向に伸長した屈曲伸長部を有するとともに、前記励振電極に接続された配線電極が形成された保持部と、
前記伸長部に設けられた第一接続部、および前記屈曲伸長部に設けられた第二接続部と
前記第一接続部と前記第二接続部間に形成された振動減衰部と、
を有する音叉型圧電振動片。
【請求項2】
前記基部は一方の端部から他方の端部に向かって幅寸法が漸次減少する縮小テーパ部を有し、前記縮小テーパ部の端部でくびれ部を形成しており、前記伸長部は前記くびれ部から伸長するとともに、その幅が漸次拡大する拡大テーパ部を有し、前記振動減衰部は前記拡大テーパ部に続いて形成されていることを特徴とする請求項1記載の音叉型圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の前記音叉型圧電振動片を、導通配線が形成され、複数の搭載部を有する容器に収納し、前記搭載部に前記第一の接続部と前記第二の接続部を各々導電接合し、前記容器をリッドにより気密封止した音叉型圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音叉型圧電振動片と、当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
音叉型水晶振動子や音叉型水晶発振器等の圧電振動デバイスは基準クロック源として様々な電子機器に用いられている。例えば、表面実装型の音叉型圧電振動子は、音叉型圧電振動片を導通配線が形成された絶縁性容器に収納し、リッドにより気密封止した構成である。
【0003】
音叉型圧電振動片の構成例として、基部と当該基部の一端側から同一方向に突出する一対の振動腕を備えるとともに、基部の他端側においては幅狭部が形成されるとともにL字形状に屈曲した保持部が設けられた構成があげられる。前記振動腕には振動腕を駆動させるための一対の励振電極等が形成され、励振電極は前記保持部に引出されている。前記保持部と前記絶縁性容器の搭載電極とが導電接合され、電気的な接合が行われる。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の音叉型圧電振動片は、基部の他端側においては幅狭部が形成されるとともにL字形状に屈曲した保持部が設けられる構成であり、音叉型圧電振動片の振動、すなわちひずみエネルギーを効率的に減衰させることができる利点を有している。
【0006】
しかしながら、音叉型圧電振動片をさらに小型化する際においては、振動の減衰が十分には行えず、保持部を介して振動が容器に漏れ出すことにより、音叉型圧電振動子としての周波数変動やクリスタルインピーダンス(CI)変動等の特性変動を生じさせることがあるという問題点があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、音叉型圧電振動片が超小型になっても振動腕で生じさせた振動を保持部において充分に振動減衰させ、周波数等の特性変動の抑制された音叉型圧電振動片および当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による音叉型圧電振動片は、一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された基部と、前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕と、前記基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部と、伸長部端から横方向に伸長した屈曲伸長部を有するとともに、前記励振電極に接続する引出電極が形成された保持部と、前記伸長部に設けられた第一接続部と前記屈曲伸長部に設けられた第二接続部と、前記第一接続部と前記第二接続部間に形成された振動減衰部と、を有する構成を特徴としている。
【0009】
本構成によれば、基部は一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された構成を採っている。また保持部は、基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部と、伸長部端から横方向に伸長した屈曲伸長部を有する構成としている。そして振動減衰部は、前記第一接続部と前記第二接続部間に形成された構成を採っている。
【0010】
このような構成により振動腕による音叉振動、すなわちひずみエネルギーが基部において効率的に減衰するとともに、保持部に振動減衰部が形成されたことにより、第一接続部と第二接続部におけるひずみエネルギーを更に減衰させることができる。
【0011】
前記基部において、一方の端部から他方の端部に向かって幅寸法が漸次減少する縮小テーパ部を有し、前記縮小テーパ部の端部でくびれ部を形成した構成とするとともに、前記保持部においても、前記伸長部は前記くびれ部から伸長するとともに、その幅が漸次拡大する拡大テーパ部を有し、前記振動減衰部は前記拡大テーパ部に続いて形成されている構成としてもよい。
【0012】
このような構成により振動腕による音叉振動、すなわちひずみエネルギーが基部においてさらに効率的に減衰するとともに、拡大テーパ部を有し、振動減衰部は前記拡大テーパ部に続いて形成されている構成とすることにより、第一接続部と第二接続部におけるひずみエネルギーを極小にすることができる。
【0013】
なお、前記振動減衰部の構成として、切り欠き部や屈曲部あるいは薄肉部からなる構成としてもよい。これら切り欠き部や屈曲部、薄肉部は平面視で曲率を有する構成であると振動の減衰を効率的に行うことができるので好ましい。
【0014】
また振動減衰部とテーパ部の境界領域に角部を形成することにより、振動の減衰を更に効率的に行うことができる。前記角部はその先端の凸部が曲率を有する構成であってもよいが、鋭利な凸部構成であってもよい。角部は角度が鋭角であるほど振動の減衰効果が大きくなる傾向があるので好ましい。
【0015】
上記各構成の音叉型圧電振動片を気密容器に収納した音叉型圧電振動デバイスに適用することもできる。すなわち、音叉型圧電振動片を導通配線が形成され、複数の搭載部を有する気密性を有する容器に収納し、前記搭載部に前記第一の接続部と前記第二の接続部を各々導電接合し、前記容器をリッドにより気密封止した音叉型圧電振動デバイスであってもよい。容器内に音叉型圧電振動片のみを収納した音叉型圧電振動子構成や、音叉型圧電振動片に加えて、発振回路用のIC部品や他のディスクリート部品を収納した音叉型圧電振動発振器構成に適用することもできる。
【0016】
上記構成によれば、音叉型圧電振動片駆動時の振動、すなわちひずみエネルギーが、容器に漏れ出ることを抑制した音叉型圧電振動デバイスを得ることができる。このような振動漏れは圧電振動デバイス自体の周波数等の特性変動を生じさせるが、本発明により振動漏れを最大限に抑制することができるので、特性変動を抑制した音叉型圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、音叉型圧電振動片が超小型になっても振動腕で生じさせた振動を保持部において充分に振動減衰させ、周波数等の特性変動の抑制された音叉型圧電振動片および当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一の実施形態を示す本発明の実施形態に係る音叉型圧電デバイスのリッド封止前の平面図である。
【
図2】
図1においてリッド封止後のA-A断面図である。
【
図3】第一の実施形態で示す音叉型圧電振動片の一方の主面の平面図である。
【
図4】第一の実施形態で示す音叉型圧電振動片の他方の主面の平面図である。
【
図5】有限要素法による解析モデルにおける一方の主面の基本形状並びに寸法を示す図である。
【
図7】有限要素法による解析モデルを示す図(従来構成)である。
【
図8】有限要素法による解析モデルを示す図(本発明構成)である。
【
図9】有限要素法による
図7と
図8のモデルの解析結果を示すグラフである。
【
図10】有限要素法による他の解析モデルを示す図(従来構成)である。
【
図11】有限要素法による他の解析モデルを示す図(本発明構成)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の実施形態
《音叉型水晶振動子の説明》
以下、本発明の実施形態として、音叉型水晶振動片(音叉型圧電振動片)を用いた音叉型水晶振動子(音叉型圧電振動子)を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。本実施形態における音叉型水晶振動子は略直方体状のパッケージ構造からなる表面実装型の水晶振動子である。本実施形態ではその平面視の外形寸法は例えば縦1.6mm、横1.0mmとなっている。なお、音叉型水晶振動子の平面視の外形寸法は当該寸法に限定されるものではないが、本発明は上記寸法以下の超小型の水晶振動子に対して好適である。
【0020】
本発明の実施形態に係る音叉型水晶振動子Xは、
図1および
図2に示すように容器1と、容器1に導電接合される音叉型水晶振動片2と、容器を気密封止するリッド3とからなる。
【0021】
容器1はセラミックの多層技術によって構成された、電極配線された平面視矩形状の気密性を有する絶縁性容器である。容器1は平板状の下層体11の上方に上層枠体12が積層され、上層枠体12の上面には金属層からなる封止部13が周状に形成された構成である。また下層体の一部には搭載部14、15が近接した状態で形成されている。これら搭載部14,15は金属膜からなる下層電極14a、15aとその上部に上層電極14b、15bが形成されている。
【0022】
これら金属膜は多層厚膜形成技術を用いて形成され、本実施の形態においては下層電極14aの面積より上層電極14bの面積が小さく形成され、また下層電極15aの面積より上層電極15bの面積が小さく形成されている。上記搭載部14,15は、図示していないが容器に形成された電極配線により、各々端子電極1A、1Bに電気的に接続されている。
【0023】
なお、前記封止部13、搭載部14,15及び前記端子電極1A、1Bは、W(タングステン)メタライズ層の表面に、Ni(ニッケル)層、Au(金)層をメッキ等の手法を用いて積層形成することによって形成されている。なお前記メタライズ層として、タングステンの代わりにモリブデンを用いてもよい。また搭載部14,15においては、下層と上層のメタライズ層を形成し、その上部にNi層およびAu層をメッキ形成している。
【0024】
このような構成により、容器1は断面で見て凹形の収納部10を有した構成となり、前記収納部10内の搭載部に音叉型水晶振動片2が導電接合される。
【0025】
音叉型水晶振動片2については、
図3と
図4を参照して説明する。音叉型水晶振動片2は水晶板のX-Y軸からなる平板から形成され、基部21と、前記基部21のY軸方向の一方の端部からY軸方向に沿って平行に伸びる一対の振動腕22,23と、前記振動腕22,23の先端部続いて振動腕より幅広く形成された幅広部24,25と、前記基部21のY軸方向の他方の端部からY軸方向に伸びる保持部26とからなる。
【0026】
前記基部21には中央線CLに対して線対称の位置に貫通孔21a,21bが形成されている。前記貫通孔21a,21bの内側には、図示しないが表裏をつなぐに金属膜が形成され、これにより微細な線幅による配線電極の電極切れ(金属膜の切断等)の問題を回避することができ、一方の主面と他方の主面の電極接続の信頼性を確保する役割を担っている。
【0027】
また、前記基部21は前記一方の端部から他方の端部に向かって、漸次その幅が小さくなる構成で、外周には縮小テーパ部21c、21dを有している。本実施の形態において、縮小テーパ部21c、21dは曲率の変わる湾曲構成を採っている。そして基部21の下端において保持部が形成されることにより、基部21と保持部26との連結部分において、幅寸法が小さく形成されたくびれ部21e,21fが形成されている。
【0028】
振動腕22,23の表裏両主面には、それぞれ一条の溝221,222,231,232が設けられた構成であり、これら各溝は前記基部近くから前記幅広部近くまで伸長して形成されている。なお、溝221,222と溝231,232はそれぞれ表裏対向して形成されている。
【0029】
また、基部に近い領域では、振動腕の幅が漸次広くなるように形成され、基部21と振動腕22,23との素体強度を向上させている。
【0030】
振動腕22,23には一対の励振電極E1,E2が形成され、振動腕が音叉振動を行うよう電極配置される。振動腕22,23各々に設けられた溝にも励振電極が形成され、例えば振動腕22の両主面(前記溝を含む表裏)には一方の励振電極E1が形成され、振動腕22の両側面には他方の励振電極E2が形成される。また、振動腕23の両主面(前記溝を含む表裏)には他方の励振電極E2が形成され、振動腕22の両側面には一方の励振電極E1が形成される。このような電極構成において各励振電極に交流電界を印加すると、圧電現象に基づく音叉振動が励振される。
【0031】
これら励振電極E1,E2は、基部21に形成された電極配線並びに保持部26に形成された電極配線を介して、後述する第一接続部B1および第二接続部B2に電気的につながっている。
【0032】
幅広部24,25には前記励振電極E1,E2と同様の極構成による金属膜が形成されており、振動腕22の両側面に形成された励振電極(金属膜)が振動腕22の幅広部24の両主面および両側面に形成され、振動腕23の両側面に形成された励振電極が振動腕23の幅広部25の両主面および両側面に形成されている。そして、
図3に示すように、一方の主面における幅広部には上記金属膜の上部に調整用金属膜24a,25aが形成されている。
【0033】
保持部26は、基部下端すなわちくびれ部21e、21fから下方に伸びる伸長部Xと、伸長部261から横方向に屈曲して伸びる屈曲伸長部262からなる。また、屈曲伸長部262には振動減衰部263が形成されている。
【0034】
前記伸長部261は、前記くびれ部21e、21fから漸次その幅が広くなる構成の拡大テーパ部261a,261bを形成している。なお、拡大テーパ部261a,261bは左右対称のシンメトリー構成となっている。そして拡大テーパ部261bの端部から振動減衰部263が形成されている。
【0035】
本実施の形態において、振動減衰部263は円弧状構成からなる切り欠き部の構成を採っている。この点について詳述すると、拡大テーパ部261bの端部と振動減衰部263すなわち切り欠き部との境界には角部2621が形成されている。この角部2621の存在は、前記くびれ部21e,21fおよび拡大テーパ部261a,261bの存在とともに前記ひずみエネルギーの減衰には重要であり、角部2621があることにより、より効率的に振動の減衰を行うことができる。前記角部は前述したとおり、その先端の凸部が曲率を有する構成であってもよいが、鋭利な凸部構成であってもよい。角部は角度が鋭角であるほど振動の減衰効果が大きくなる傾向があるので好ましい。
【0036】
保持部の伸長部261には第一接続部B1が形成され、屈曲伸長部262には第二接続部B2が形成されている。保持部26には前述のとおり一対の電極配線が形成されており、一方の電極が第一接続部B1に接続され、他方の電極が第二接続部B2に形成されている。これら第一接続部B1、第二接続部B2は、電極配線上にメッキによる厚肉の金属層からなっており、いわゆる金属バンプを形成している。
【0037】
なお、前記励振電極および基部や保持部に形成された電極配線で用いられる金属材料の例としては、水晶片に接して下地金属膜としてCrまたはTiが用いられ、前記下地金属膜の上層に上層金属膜としてAuが用いられているが、これら金属材料以外の構成であってもよい。これら金属膜形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法により形成される。また前記第一接続部、第二接続部の材料はAuをあげることができるが、これは前述のとおりメッキ法により形成される。
【0038】
リッド3はコバール(kovar)を基体とする平面視矩形状の金属性の平板体であり、リッドの封止面、すなわち容器の封止部13と接合される面には、銀ろう(銀、銅、亜鉛の三元素合金)が圧延等の手法により形成されたクラッド材構成となっている。このクラッド材構成の板材の表裏面にニッケル層を形成している。このリッド3の構成は容器との封止接合をシーム溶接によることを予定した構成であるが、ろう材接合を行う場合は、例えば金錫ろうをコバール等の基体に形成し、加熱によりろう材接合を行ってもよい。
【0039】
容器1内に電極形成された音叉型水晶振動片2を収納し、容器1の搭載部14,15と第一接続部B1、第二接続部B2とをフリップチップボンディングにより接合する。このような接合は導電性樹脂接合材による接合と比べて小さな領域にて導電接合することができ、ガス発生のある樹脂材を用いない構成であるので、圧電振動子の特性変動を抑制するメリットを有している。なお、導電性樹脂接合材により導電接合を行ってもよい。
【0040】
《音叉型水晶振動子のシミュレーション》
次に、有限要素法により音叉型水晶振動片の形状に基づくひずみエネルギー密度比について解析を行った。このひずみエネルギー密度比は、音叉型水晶振動片全体のひずみエネルギー密度と、接続部(第一接続部と第二接続部)のひずみエネルギー密度の比率を確認したものであり、接続部が音叉型水晶振動片全体に対してどれぐらい動いているかを確認する指標となる。ひずみエネルギー密度比は小さいほど振動漏れが小さいと考えられ、音叉型圧電振動デバイスとしての特性変動に影響するものである。
【0041】
図5、
図6は解析モデルの基本的形状並びに寸法を示している。なお、これらモデルにおいて基部に貫通孔を2つ形成している。
図7乃至
図9の解析においては、貫通孔を有しない構成の解析であるが、貫通孔形成以外の形状、寸法についてはこのモデルに基づき設定している。
【0042】
図7乃至
図9の解析は基部に貫通孔を有さない構成で、従来構成(
図7に示す構成)と本発明構成(
図8に示す振動減衰部を設けた構成)について、ひずみエネルギー密度比をシミュレーションした結果を
図9にグラフ表示したものである。
図8に示す本発明構成においては、拡大テーパ部と振動減衰部の境界領域に角部が形成された構成である。
【0043】
図9のグラフから、従来の振動減衰部を設けない音叉型水晶振動片に対して、振動減衰部(円弧状の切り欠き)を屈曲伸長部に形成した音叉型水晶振動片のほうが、ひずみエネルギー密度比が低下しており、振動減衰部形成による振動漏れ低減効果が得られていることが理解できる。
【0044】
図10乃至
図12の解析は基部に貫通孔を形成した構成で、従来構成(
図10に示す構成)と本発明構成(
図11に示す振動減衰部を設けた構成)について、ひずみエネルギー密度比をシミュレーションした結果を
図12にグラフ表示したものである。
図11に示す本発明構成においては、拡大テーパ部と振動減衰部の境界領域に角部が形成された構成である。構成については
図3および
図4参照。
【0045】
図12のグラフから従来の振動減衰部を設けない音叉型水晶振動片に対して、振動減衰部(円弧状の切り欠き)を屈曲伸長部に形成した音叉型水晶振動片のほうが、ひずみエネルギー密度比が低下しており、振動減衰部形成による振動漏れ低減効果が得られていることが理解できる。
【0046】
第2の実施形態
次に第2の実施形態について、
図13とともに説明する。第2の実施形態においては、振動減衰部の構成と、第一接続部B1と第二接続部B2の位置関係が異なっている。拡大テーパ部261bの端部から屈曲伸長部262が伸びているが、振動減衰部264は第一の実施形態とは反対側、すなわち音叉型水晶振動片の最下端の辺側に形成されている。振動減衰部264は円弧状の切り欠き部であり、この切り欠き部の開始点は仮想線L1と前記最下端の辺との交点領域から始まっている。なお、仮想線L1は拡大テーパ部261bの端部から中央線CLと平行に下方に伸長した線である。
【0047】
また第一接続部は中央線CL上に形成されるとともに、第二接続部の形成位置は第一接続部よりもギャップGの寸法(例えば0.01mm~0.02mm)だけ上方に形成されている。
【0048】
このような構成により、保持部における振動減衰部形成による振動の減衰効果と、保持部自体の機械的強度の低下を最小限に抑制でき、振動の減衰と保持強度をバランスさせた、実用性の高い音叉型圧電振動片を得ることができる。また、本形態では、第一接続部B1を基部21の中央線CL上に配置している。このような構成により、容器1との接合後の振動の減衰効果を更に高めることができる。
【0049】
第3の実施形態
次に第3の実施形態について、
図14とともに説明する。第3の実施形態においては、振動減衰部の構成が異なっている。拡大テーパ部261bの端部から屈曲伸長部262が伸びているが、本実施の形態による振動減衰部265は一部が上方に屈曲する構成を採っている。なお、この屈曲構成は上方に屈曲しているが、下方に屈曲した構成であってもよいし、複数の屈曲を有する構成としてもよい。
【0050】
このような構成により、保持部における振動減衰部形成による振動の減衰効果と、保持部自体の幅寸法を減じる構成を採らないので、保持部における機械的強度の低下を最小限に抑制でき、振動の減衰と保持強度をバランスさせた、実用性の高い音叉型圧電振動片を得ることができる。
【0051】
なお、上記各実施の形態において、振動減衰部として半円弧状の切り欠き部構成を例示したが、これ以外の構成を採ってもよい。例えば、半円弧以上の円弧、例えば3/4円弧の構成を採ってもよい。このような構成であると、拡大テーパ部の端部と振動減衰部の境界に形成される角部がより鋭利(狭角)になり、振動の減衰効果が大きくなる。円弧以外に楕円弧構成であってもよいし、四角形以上の多角形構成であってもよい。
【0052】
また本実施の形態では、振動減衰部は切り欠き(貫通)構成であるが、薄肉構成であってもよい。例えば、円弧状の薄肉領域を形成することにより、振動減衰部としてもよい。
【0053】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
音叉型圧電振動片および音叉型圧電振動子の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
X 音叉型水晶振動子
1 容器
2 音叉型水晶振動片
21 基部
22,23 振動腕
24,25 幅広部
26 保持部
263,264,265 振動減衰部
E1,E2 励振電極
3 リッド