(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058346
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】音叉型圧電振動片および当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20240418BHJP
H03H 9/215 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H03H9/19 J
H03H9/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165640
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 倭佳
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA01
5J108BB02
5J108CC06
5J108CC11
5J108DD05
5J108EE03
5J108EE06
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG16
(57)【要約】
【課題】 音叉型圧電振動片が超小型になっても振動腕で生じさせた振動を支持部において充分に振動減衰させ、周波数等の特性変動を抑制する。
【解決手段】 音叉型圧電振動片2は、一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された基部21と、前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕22,23と、前記基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部26と、前記伸長部の側端部から横方向に伸長した第1支持部27,29と、前記第1支持部の端部から上方向に屈曲した屈曲部271,291と、前記屈曲部から前記振動腕の伸長方向に平行に伸び、前記励振電極とつながる接続電極の形成された第2支持部28,30と、前記屈曲部の内側に形成された振動減衰部C1,C2と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された基部と、
前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕と、
前記基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部と、
前記伸長部の側端部から横方向に伸長した第1支持部と、
前記第1支持部の端部から上方向に屈曲した屈曲部と、
前記屈曲部から前記振動腕の伸長方向に平行に伸び、前記励振電極とつながる接続電極の形成された第2支持部と、
前記屈曲部の内側に形成された振動減衰部と、
を有する音叉型圧電振動片。
【請求項2】
一方の端部と他方の端部を有する基部と、
前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕と、
前記基部の一方の端部であって、前記振動腕の間から前記振動腕の伸長方向に平行に伸びる第1支持部と、
前記第1支持部に続いて形成され第1支持部とは幅寸法が異なり、前記励振電極とつながる接続電極の形成された第2支持部と、
第1支持部と第2支持部の連結部の角部に形成された振動減衰部と、
を有する音叉型圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の前記音叉型圧電振動片を、導通配線が形成され、複数の搭載部を有する容器に収納し、前記搭載部に前記第2支持部を各々導電接合し、前記容器をリッドにより気密封止した音叉型圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音叉型圧電振動片と、当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
音叉型水晶振動子や音叉型水晶発振器等の圧電振動デバイスは基準クロック源として様々な電子機器に用いられている。表面実装型の音叉型圧電振動子は、音叉型圧電振動片を導通配線が形成された気密容器に収納し、リッドにより気密封止した構成である。
【0003】
音叉型圧電振動片の構成例として、基部と当該基部の一端側から同一方向に突出する一対の振動腕を備えるとともに、前記基部の他方の端部には幅狭部が形成され、その下方向に伸長した伸長部と、前記伸長部の両側端部から幅方向に伸長した第1支持部と、前記第1支持部の端部から屈曲して前記振動腕の伸長方向に平行に伸びた第2支持部を有する構成をあげることができる。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の音叉型圧電振動片は、基部の他端側においては切り欠き部が形成されることにより基部の幅が狭く構成されるとともに、第1支持部と第2支持部のつながる屈曲部においては、傾斜部が形成された構成である。このような構成により、切り欠き部が意図した形状に加工され、振動腕から基部への振動漏れが減少し、CI(クリスタルインピーダンス)のばらつきが抑制された音叉型圧電振動片を得ている。
【0006】
しかしながら、音叉型圧電振動片をさらに小型化する際においては、振動の減衰が十分には行えず、第2支持部の接続電極部分を介して振動が容器に漏れ出すことにより、音叉型圧電振動子としての周波数変動やクリスタルインピーダンス(CI)変動等の特性変動を生じさせることがあるという問題点があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、音叉型圧電振動片が超小型になっても振動腕で生じさせた振動を基部並びに第1支持部および第2支持部において充分に振動減衰させ、周波数等の特性変動の抑制された音叉型圧電振動片および当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による音叉型圧電振動片は、一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された基部と、前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕と、前記基部の他方の端部から下方向に伸長した伸長部と、前記伸長部の側端部から横方向に伸長した第1支持部と、前記第1支持部の端部から上方向に屈曲した屈曲部と、前記屈曲部から前記振動腕の伸長方向に平行に伸び、前記励振電極とつながる接続電極の形成された第2支持部と、前記屈曲部の内側に形成された振動減衰部と、を有する構成を特徴としている。
【0009】
本構成においては、基部は一方の端部と他方の端部を有し、一方の端部の幅に対して他方の端部の幅が小さく形成された構成を採っている。また第1支持部は前記伸長部の側端部から幅方向に伸長した構成であり、屈曲部は前記第1支持部の端部から上方向に屈曲した構成である。そして第2支持部は前記屈曲部から前記振動腕の伸長方向に平行に伸び、前記励振電極とつながる接続電極が形成された構成を採っている。また振動減衰部は第1支持部と第2支持部の屈曲部内側に形成された構成を採っている。
【0010】
このような構成により振動腕による音叉振動、すなわちひずみエネルギーが基部において効率的に減衰するとともに、第1支持部と第2支持部の屈曲部内側に振動減衰部が形成されたことにより、接続電極部分におけるひずみエネルギーを更に減衰させることができる。
【0011】
なお、第1支持部は前記伸長部の両方の側端部から伸長した構成であってもよいし、片方の側端部から伸長した構成であってもよい。
【0012】
前記基部において、一方の端部から他方の端部に向かって幅寸法が漸次減少する縮小テーパ部を有し、前記縮小テーパ部の端部でくびれ部を形成した構成とするとともに、前記伸長部は前記くびれ部から伸長するとともに、その幅が漸次拡大する拡大テーパ部を有し、第1支持部は前記拡大テーパ部に続いて形成されている構成としてもよい。
【0013】
このような構成により振動腕による音叉振動、すなわちひずみエネルギーが基部においてさらに効率的に減衰するとともに、前述の第1支持部と第2支持部の屈曲部内側に振動減衰部が形成された構成により、接続電極部分におけるひずみエネルギーを更に減衰させることができる。
【0014】
また別の音叉型圧電振動片の構成例として、一方の端部と他方の端部を有する基部と、前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕と、前記基部の一方の端部であって、前記振動腕の間から前記振動腕の伸長方向に平行に伸びる第1支持部と、前記第1支持部に続いて形成され第1支持部とは幅寸法が異なり、前記励振電極とつながる接続電極の形成された第2支持部と、第1支持部と第2支持部の連結部の角部に形成された振動減衰部と、を有する構成をあげることができる。
【0015】
本構成においては、第1支持部は前記基部の一方の端部であって、前記振動腕の間から前記振動腕の伸長方向に平行に伸びる構成であり、第2支持部は前記第1支持部に続いて形成され、第1支持部とは幅寸法が異なり、前記励振電極とつながる接続電極の形成された構成を採っている。第1支持部と第2支持部とは相互に幅寸法が異なることにより、両者の連結部に角部が形成される。そして振動減衰部は第1支持部と第2支持部の連結部の角部に形成された構成を採っている。
【0016】
このような構成により振動腕による音叉振動、すなわちひずみエネルギーが基部において効率的に減衰するとともに、第1支持部と第2支持部の連結部の内側に振動減衰部が形成された構成により、接続電極部分におけるひずみエネルギーを更に減衰させることができる。
【0017】
ところで、振動減衰部は、切り欠き部構成や薄肉部構成をあげることができるが、振動減衰部の構成は、第1支持部と第2支持部のいずれか一方に形成してもよいし、第1支持部と第2支持部の両方に渡って形成されている構成であってもよい。前記両方に渡って形成されている構成であると、より効率的に振動の減衰を行うことができるので好ましい。
【0018】
また、前記振動減衰部の形状例として、平面視で曲率を有する構成であったり、四角形以上の多角形構成であってもよい。円弧や多角部分が第1支持部と第2支持部の両者に形成される構成であると、より効率的に振動の減衰を行うことができるので好ましい。
【0019】
上記各構成の音叉型圧電振動片を気密容器に収納した音叉型圧電振動デバイスに適用することもできる。すなわち、音叉型圧電振動片を導通配線が形成され、複数の搭載部を有する気密性を有する容器に収納し、前記搭載部に前記第2支持部を各々導電接合し、前記容器をリッドにより気密封止した音叉型圧電振動デバイスであってもよい。容器内に音叉型圧電振動片のみを収納した音叉型圧電振動子構成や、音叉型圧電振動片に加えて、発振回路用のIC部品や他のディスクリート部品を収納した音叉型圧電振動発振器構成に適用することもできる。
【0020】
上記構成によれば、音叉型圧電振動片駆動時の振動、すなわちひずみエネルギーが、容器に漏れ出ることを抑制した音叉型圧電振動デバイスを得ることができる。このような振動漏れは圧電振動デバイス自体の周波数等の特性変動を生じさせるが、本発明により振動漏れを最大限に抑制することができるので、特性変動を抑制した音叉型圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、音叉型圧電振動片が超小型になっても振動腕で生じさせた振動を接続電極部分において充分に振動減衰させ、周波数等の特性変動の抑制された音叉型圧電振動片および当該音叉型圧電振動片を用いた音叉型圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一の実施形態を示す本発明の実施形態に係る音叉型圧電デバイスのリッド封止前の平面図である。
【
図2】
図1においてリッド封止後のA-A断面図である。
【
図3】第一の実施形態で示す音叉型圧電振動片の一方の主面の平面図である。
【
図4】第一の実施形態で示す音叉型圧電振動片の他方の主面の平面図である。
【
図5】有限要素法による解析モデルにおける基本形状並びに寸法を示す図である。
【
図6】有限要素法による解析モデルを示す図(本発明構成 円弧による第1支持部と第2支持部の切り欠き)である。
【
図7】有限要素法による解析モデルを示す図(本発明構成 円弧による第2支持部の切り欠き)である。
【
図8】有限要素法による解析モデルを示す図(本発明構成 円弧による第1支持部の切り欠き)である。
【
図9】有限要素法による解析モデルを示す図(従来例構成 振動減衰部無)である。
【
図10】有限要素法による解析結果を示すグラフである。
【
図11】有限要素法による他の解析モデルを示す図(本発明構成 四角形による第1支持部と第2支持部の切り欠き)である。
【
図12】有限要素法による他の解析モデルを示す図(本発明構成 四角形による第2支持部の切り欠き)である。
【
図13】有限要素法による他の解析モデルを示す図(本発明構成 四角形による第1支持部の切り欠き)である。
【
図14】有限要素法による他の解析結果を示すグラフである。
【
図15】第二の実施形態を示す音叉型圧電振動片の一方の主面の平面図である。
【
図16】第三の実施形態を示す音叉型圧電振動片の一方の主面の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1の実施形態
《音叉型水晶振動子の説明》
以下、本発明の実施形態として、音叉型水晶振動片(音叉型圧電振動片)を用いた音叉型水晶振動子(音叉型圧電振動子)を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。本実施形態における音叉型水晶振動子は略直方体状のパッケージ構造からなる表面実装型の水晶振動子である。本実施形態ではその平面視の外形寸法は例えば縦1.6mm、横1.0mmとなっている。なお、音叉型水晶振動子の平面視の外形寸法は当該寸法に限定されるものではないが、本発明は上記寸法以下の超小型の水晶振動子に対して好適である。
【0024】
本発明の実施形態に係る音叉型水晶振動子Xは、
図1および
図2に示すように容器1と、容器1に導電接合される音叉型水晶振動片2と、容器を気密封止するリッド3とからなる。
【0025】
容器1は平面視矩形状でセラミックの多層技術によって構成され、電極配線された気密性を有する容器である。容器1は平板状の下層体11の上方に上層枠体12が積層され、上層枠体12の上面には金属膜からなる封止部13が周状に形成された構成である。また下層体の長辺の中央部分には短辺方向に離れて厚肉の金属膜からなる搭載部14、15が形成されている。上記搭載部14,15は、図示していないが容器に形成された電極配線により、各々端子電極1A、1Bに電気的に接続されている。
【0026】
なお、前記封止部13、搭載部14,15及び前記端子電極1A、1Bは、W(タングステン)メタライズ層の表面に、Ni(ニッケル)層、Au(金)層をメッキ等の手法を用いて積層形成することによって形成されている。なお前記メタライズ層として、タングステンの代わりにモリブデンを用いてもよい。また搭載部14,15においては、下層と上層のメタライズ層を形成し、その上部にNi層およびAu層をメッキ形成している。
【0027】
このような構成により、容器1は断面で見て凹形の収納部10を有した構成となり、前記収納部10内の搭載部に音叉型水晶振動片2が導電接合される。
【0028】
音叉型水晶振動片2について、
図3と
図4を参照して説明する。音叉型水晶振動片2は水晶板のX-Y軸からなる平板から形成され、基部21と、前記基部21のY軸方向の一方の端部からY軸方向に沿って平行に伸びるとともに、励振電極E1,E2が形成された一対の振動腕22,23と、前記振動腕22,23の先端部に続いて振動腕より幅広く形成された幅広部24,25と、前記基部21のY軸方向の他方の端部からY軸方向に伸びる伸長部26と、前記伸長部26の両側端部から幅方向に伸長した第1支持部27,29と、前記第1支持部27,29の端部から屈曲して前記振動腕の伸長方向に平行に伸び、前記励振電極E1,E2とつながる接続電極28a,30aの形成された第2支持部28,30と、前記第1支持部と第2支持部の屈曲部271,291の内側に形成された振動減衰部C1,C2と、からなる。
【0029】
前記基部21は前記一方の端部から他方の端部に向かって、漸次その幅が小さくなる構成で、外周には縮小テーパ部21c、21dを有している。本実施の形態において、縮小テーパ部21c、21dは曲率の変わる湾曲構成を採っている。そして基部21の下端において伸長部26が形成されることにより、基部21と伸長部26との連結部分において、幅寸法が小さく形成されたくびれ部21e,21fが形成されている。
【0030】
振動腕22,23の表裏両主面には、それぞれ一条の溝221,222,231,232が設けられた構成であり、これら各溝は前記基部近くから前記幅広部近くまで伸長して形成されている。なお、溝221,222と溝231,232はそれぞれ表裏対向して形成されている。
【0031】
また、基部に近い領域では、振動腕の幅が漸次広くなるように形成され、基部21と振動腕22,23との素体強度を向上させている。
【0032】
振動腕22,23には一対の励振電極E1、E2が形成され、振動腕が音叉振動を行うよう電極配置される。振動腕22,23各々に設けられた溝にも励振電極E1、E2が形成され、例えば振動腕22の両主面(前記溝を含む表裏)には一方の励振電極E1が形成され、振動腕22の両側面には他方の励振電極E2が形成される。また、振動腕23の両主面(前記溝を含む表裏)には他方の励振電極E2が形成され、振動腕22の両側面には一方の励振電極E1が形成される。このような電極構成において各励振電極に交流電界を印加すると、圧電現象に基づく音叉振動が励振される。
【0033】
これら励振電極は、基部21に形成された電極配線並びに伸長部26に形成された電極配線を介して、後述する接続電極28a,30aに電気的につながっている。
【0034】
幅広部24,25には前記励振電極E1、E2と同様の極構成による金属膜が形成されており、振動腕22の両側面に形成された励振電極(金属膜)が振動腕22の幅広部24の両主面および両側面に形成され、振動腕23の両側面に形成された励振電極が振動腕23の幅広部25の両主面および両側面に形成されている。そして、
図3に示すように、一方の主面における幅広部には上記金属膜の上部に特性調整用金属膜24a,25aが形成されている。
【0035】
伸長部26は、基部下端すなわちくびれ部21e、21fから下方に伸びた構成で、前記くびれ部21e、21fから漸次その幅が広くなる構成の拡大テーパ部261a,261bを有している。なお、拡大テーパ部261a,261bは左右対称のシンメトリー構成となっている。
【0036】
前記伸長部26の両側端部には、幅方向(
図3の横方向)に伸びる第1支持部27,29が設けられている。そして前記第1支持部27,29の端部からは、第2支持部28,30がほぼ直角に上方に屈曲して前記振動腕の伸長方向に平行に伸びている。第2支持部28,30の最先端領域には接続電極28a,30aが形成されている。
【0037】
第1支持部と第2支持部の連結部分には屈曲部271,291が形成されている。前記屈曲部271,291の内側には振動減衰部C1,C2が各々設けられている。本実施の形態において、振動減衰部は円弧状構成からなる切り欠き部の構成を採っている。より詳細に説明をすると、屈曲部内側の屈曲点を中心として3/4円弧の振動減衰部(切り欠き部)を形成している。このような構成により、振動減衰部C1,C2は第1支持部と第2支持部の両者を切り欠く構成となっている。このように第1支持部と第2支持部の両者に振動減衰部を設ける構成により、振動の減衰効果を大きくすることができる。
【0038】
なお、前記励振電極および基部や伸長部に形成された電極配線、そして第2支持部の接続電極で用いられる金属材料の例としては、水晶片に接して下地金属膜としてCrまたはTiが用いられ、前記下地金属膜の上層に上層金属膜としてAuが用いられている。なお、これら金属材料以外の構成であってもよい。これら金属膜形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD(PHYSICAL VAPOR DEPOSITION)法により形成される。
【0039】
リッド3はコバール(kovar)を基体とする平面視矩形状の金属性の平板体であり、リッドの封止面、すなわち容器の封止部13と接合される面には、銀ろう(銀、銅、亜鉛の三元素合金)が圧延等の手法により形成されたクラッド材構成となっている。このクラッド材構成の板材の表裏面にニッケル層を形成している。このリッド3の構成は容器との封止接合をシーム溶接によることを予定した構成であるが、ろう材接合を行う場合は、例えば金錫ろうをコバール等の基体に形成し、加熱によりろう材接合を行ってもよい。
【0040】
容器1内に電極形成された音叉型水晶振動片2を収納し、容器1の搭載部14,15と接続電極28a,30aとを導電性樹脂接合材Sにより接合する。導電性樹脂接合材Sは樹脂製の接合材に銀フィラー等の導電材料を分散させた構成である。なお、導電性樹脂接合材に代えて、厚膜のAu等からなる金属バンプを形成し、超音波によるフリップチップボンディングにより導電接合してもよい。そして音叉型水晶振動片2を容器1に導電接合した後、リッド3にて容器の開口部を接合して気密封止を行う。
【0041】
《音叉型水晶振動子のシミュレーション》
次に、有限要素法により音叉型水晶振動片の形状に基づくひずみエネルギー密度比について解析を行った。このひずみエネルギー密度比は、音叉型水晶振動片全体のひずみエネルギー密度と、接続電極形成領域のひずみエネルギー密度の比率を確認したものであり、接続部(前記接続電極領域)が音叉型水晶振動片全体に対してどれぐらい動いているかを確認する指標となる。ひずみエネルギー密度比は小さいほど振動漏れが小さいと考えられ、音叉型圧電振動デバイスとしての特性変動に影響するものである。
【0042】
図5は解析モデルの基本的形状並びに寸法を示している。
図6乃至
図9は解析に用いた振動減衰部の形状を変化させた解析モデルを示している。
図6乃至
図8に示す構成はいずれも本発明に示すモデルである。
図6は振動減衰部が3/4円弧の切り欠き部からなる構成で、第1支持部と第2支持部に切り欠きが及んでいる構成のモデルである。
【0043】
図7、
図8は、第1支持部または第2支持部のいずれかを部分円弧で切り欠いた構成でのモデルである。
図7は振動減衰部が略1/4円弧で切り欠いた構成で、第2支持部にのみ振動減衰部が形成された構成である。また
図8は振動減衰部が略1/4円弧で切り欠いた構成で、第1支持部にのみ振動減衰部が形成された構成である。
【0044】
図9は振動減衰部を有さない従来品を示す構成で、第1支持部と第2支持部間すなわち屈曲部には微小な丸め構成を有する構成である。これら各モデルについて、有限要素法に基づくひずみエネルギー密度のシミュレーション解析を行った。
【0045】
図10はこれら各モデルについて、音叉型水晶振動片全体のひずみエネルギー密度と、接続電極形成領域のひずみエネルギー密度の比率を算出したものであり、各モデルにおいて振動減衰部のサイズ、すなわち円弧サイズ(Hollow Size 半径 単位μm)を漸次異ならせた場合のひずみエネルギー密度比を算出したものをプロットしている。
【0046】
図10のグラフにおいて、従来品としてあげた
図9モデルのひずみエネルギー密度比率は、グラフの基準ラインで示した値になる。これに対して
図7、
図8に示すモデルはいずれかの支持部に部分円弧の切り欠きを設けた構成で、この切り欠きを漸次大きくしている。振動減衰部を大きくとるにつれてひずみエネルギー密度比が低下していることが理解できる。
【0047】
そして、第1支持部と第2支持部の両者に切り欠きが及んでいる円弧構成(
図6に示す構成)においては、充分にひずみエネルギー密度比は低下しており、より効率的な振動の減衰効果が得られていることが理解できる。
【0048】
図11乃至
図13は振動減衰部の形状を異ならせた他の解析モデルを示しており、これら各構成はいずれも本発明に示すモデルである。
図11は振動減衰部が3/4四角形の切り欠き部からなる構成で、第1支持部と第2支持部に切り欠きが及んでいる構成のモデルである。
図12、
図13は、第1支持部または第2支持部のいずれかを部分四角形で切り欠いた構成のモデルである。これら各モデルについて、有限要素法に基づくひずみエネルギー密度のシミュレーション解析を行った。
【0049】
図14はこれら各モデルについて、音叉型水晶振動片全体のひずみエネルギー密度と、接続電極形成領域のひずみエネルギー密度の比率を算出したものであり、各モデルにおいて振動減衰部のサイズ、すなわち円弧サイズ(Hollow Size 半径 単位μm)を漸次異ならせた場合のひずみエネルギー密度比を算出したものをプロットしている。
【0050】
図14のグラフにおいて、従来品としてあげた
図9モデルのひずみエネルギー密度比率は、グラフの基準ラインで示した値になる。これに対して
図12、
図13に示すモデルはいずれかの支持部に部分四角形の切り欠きを設けた構成で、この切り欠きを漸次大きくしている。振動減衰部を大きくとるにつれてひずみエネルギー密度比が低下していることが理解できる。
【0051】
そして、
図11に示すモデルは、第1支持部と第2支持部の両者に四角形の切り欠きが及んでいる構成であり、
図14に示すように充分にひずみエネルギー密度比は低下しており、より効率的な振動の減衰効果が得られていることが理解できる。
【0052】
第2の実施形態
次に第2の実施形態について、
図15とともに説明する。第2の実施形態においては、第1支持部と第2支持部が音叉振動腕の片側にのみ形成された構成である。伸長部26には拡大テーパ部261a,261bが形成されているが、拡大テーパ部261b側にのみ第1支持部29および第2支持部30が形成されている。第1支持部と第2支持部の連結部分である屈曲部291の内側の角部には振動減衰部C3が形成されている。第1支持部29および第2支持部30には、図示しないが一対の励振電極と各々つながる配線電極が形成され、第2支持部の先端領域には複数の接続電極が配線されている。これら配線電極は各々導電性接合材B3、B4により、各々電気的に独立して容器の搭載部と導電接合される。
【0053】
このような構成により、音叉型圧電振動片の幅寸法を小さくできるので、小型化しても第1支持部と第2支持部間に設けた振動減衰部形成による実用的な振動の減衰効果を得ることができる。また幅寸法に余裕ができるので、前記各支持部の幅を拡げる等、音叉型圧電振動片および音叉型圧電振動デバイスの機械的強度を向上させることができる。
【0054】
第3の実施形態
次に第3の実施形態について、
図16とともに説明する。第3の実施形態においては、全体的な支持構成がこれまでの実施形態と異なっており、これに伴い、振動腕構成、基部構成、支持部構成が異なっている。
【0055】
すなわち、一方の端部と他方の端部を有する基部21と、前記一方の端部から上方向に平行に伸長するとともに、励振電極が形成された一対の振動腕22,23と、前記基部の一方の端部であって、前記振動腕の間から前記振動腕の伸長方向に平行に伸びる第1支持部31と、前記第1支持部31に続いて第1支持部よりも幅広に形成され、前記励振電極とつながる接続電極の形成された第2支持部32と、第1支持部31と第2支持部32の連結部の角部に形成された振動減衰部C4,C5を有する音叉型圧電振動片の構成である。
【0056】
基部21は平面視略長方形形状であり、一対の励振電極からつながる一対の配線電極が形成されており、これら配線電極は図示しないが、第1支持部31と第2支持部32に形成された配線電極につながっており、最終的には第2支持部32に形成された各接続電極につながっている。これら接続電極は各々導電性接合材B5、B6により、各々電気的に独立して容器の搭載部と導電接合される。
【0057】
振動減衰部C4,C5は第1支持部と第2支持部の連結部に形成された切り欠き部であり、これにより第1支持部と第2支持部の両者に対して切り欠き部が形成された構成となっている。
【0058】
上記構成において、第2支持部の幅寸法を第1支持部の幅寸法より小さくする構成であってもよい。この場合も両者の連結部に角部が形成され、前記角部に振動減衰部を設けることにより、第2支持部の接続電極部分のひずみエネルギー密度を小さくすることができる。
【0059】
このような構成により、第1支持部と第2支持部の連結部の機械的強度の低下を最小限に抑制でき、振動の減衰と保持強度をバランスさせた、実用性の高い音叉型圧電振動片を得ることができる。
【0060】
なお、上記各実施の形態において、振動減衰部として半円弧状の切り欠き部構成を例示したが、これ以外の構成を採ってもよい。例えば、半円弧以上の円弧、例えば3/4円弧の構成を採ってもよい。このような構成であると、拡大テーパ部の端部と振動減衰部の境界に形成される角部がより鋭利(狭角)になり、振動の減衰効果が大きくなる。円弧以外に楕円弧構成であってもよいし、四角形以上の多角形構成であってもよい。
【0061】
また本実施の形態では、振動減衰部は切り欠き(貫通)構成であるが、薄肉構成であってもよい。例えば、円弧状の薄肉領域を形成することにより、振動減衰部としてもよい。
【0062】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
音叉型圧電振動片および音叉型圧電振動子の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
X 音叉型水晶振動子
1 容器
2 音叉型水晶振動片
21 基部
22,23 振動腕
24,25 幅広部
26 伸長部
C1、C2、C3 振動減衰部
E1,E2 励振電極
3 リッド