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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058347
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電流検出器
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240418BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01R15/20 A
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165643
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000204882
【氏名又は名称】株式会社ダイナックス
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小川 将司
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA04
2G025AB02
2G025AC01
2G035AB01
2G035AC02
2G035AD66
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な構成で、耐振動性及び電流の検出精度が高いコアレス式の電流検出器を提供する。
【解決手段】電流検出器100は、板状で孔部を具えた導体20を具え、基板10は、その平面が一部延出した凸部と、凸部上に取付けられ、一対のホールセンサを有する電流検出部30を具え、導体20の平面が基板10の平面に対して直交する状態で凸部及び電流検出部30が孔部に嵌入され、孔部を挟む導体20の2つの平面が一対のホールセンサの間の中央に位置するように配設され、導体20には、一対のホールセンサの間上を電流が流れ、磁気検出方向が基板面と直交するように構成されているから、電流が流されたときに導体20に発生する一方向の磁束と他方向の磁束を一対のホールセンサでそれぞれ検出し、磁束の差動を用いて導体20の電流を検出することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に接続され、板状で孔部を具えた導体を具え、
前記基板は、その平面が一部延出した凸部と、該凸部上に取付けられ、一対のホールセンサを有する電流検出部を具え、
前記導体の平面が前記基板の平面に対して直交する状態で前記凸部及び電流検出部が前記孔部に嵌入され、前記孔部を挟む前記導体の2つの平面が前記一対のホールセンサの間の中央に位置するように配設され、
前記導体には、前記一対のホールセンサの間上を電流が流れるように構成され、
前記一対のホールセンサが前記導体に発生する一方向の磁束と他方向の磁束をそれぞれ検出することを特徴とする、
電流検出器。
【請求項2】
前記電流検出部が、集積回路をさらに具えた単体の差動ホール集積回路である、請求項1の電流検出器。
【請求項3】
前記基板に鉤部がさらに設けられ、
前記導体が前記鉤部に掛止されるように構成されている、請求項1又は2の電流検出器。
【請求項4】
前記孔部が前記凸部より幅広に形成され、
前記孔部に前記凸部及び電流検出部を嵌入し、前記導体をスライドさせることにより、前記導体が前記鉤部に掛止されるように構成されている、請求項3の電流検出器。
【請求項5】
前記基板が、前記鉤部と同じ側に位置する突起と、前記鉤部の内側に切欠部を具え、
前記導体の端面を前記切欠部に当接させてから前記導体を回転させることで、該導体が前記突起と前記鉤部に挟まれ掛止されるように構成されている、請求項3の電流検出器。
【請求項6】
前記基板に重なるように配設された第二基板をさらに具え、
前記導体が前記第二基板とも接続されている、請求項1又は2の電流検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータの出力電流を検出する器具(以下、単に「電流検出器」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータが具える電流検出器として、磁性体コアを用いた、いわゆる磁性体コア式のものが主流である。磁性体コア式の電流検出器は、例えば、バスバーなどの導体を囲うように磁性体コアを配置し、磁性体コアのギャップ部分に磁気センサを設け、磁気センサが検出した磁束から、電流を検出する。
【0003】
磁性体コア式の電流検出器は、磁性体コアと磁気センサの距離が近いため、磁気を正確に検出し易い。しかし、大電流を検出するには、大型の磁性体コアを要するため、全体的に大型化し、製造コストも高額になる傾向がある。また、導体を囲繞する磁性体コアを設ける必要があるため、基板や回路の構成に制約が生じ易い。そこで、近年、磁性体コアを用いない、いわゆるコアレス式のものが開発されている。
【0004】
コアレス式の電流検出器は、例えば、導体の近傍に配置した磁気検出器によって、空気中の磁束から電流を検出する。コアレス式の電流検出器は、磁性体コアを用いない分、全体的に小型化し易く、製造コストも抑え易い。一方、磁性体コア式の電流検出器と比べて磁束検出の精度が劣るので、電流を正確に検出し難いという問題点がある。そこで、電流の検出の正確性を向上させたコアレス式の電流検出器として、例えば、以下に挙げるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-102116号公報
【特許文献2】国際公開2006-090769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されているコアレス式の電流検出器は、磁気検出器が取り付けられた突出部を有する基板と、二つの平行部と連結部から成るコ字状の凹部を有する導体(バスバー)を具え、突出部及び磁気検出器が一の導体の凹部に嵌め込まれるように配設されている。コ字状の三面から発生する磁束が磁気検出器によって検出されるため、磁束検出の精度を高めることができるから、磁性体コアを用いなくても、電流を正確に検出し易いとされている。
【0007】
特許文献2で開示されている電流検出器は、電流が流れる方向に平行に配置された平板状の導体(バスバー)と、導体の平面を挟むように構成された基板上に、導体に流れる電流の磁束を検出する一対の磁気センサと信号処理集積回路を具えている。なお、磁気センサは、基板を介して、電流の向きに対して直交する方向に位置している。本構成によれば、基板に流れる電流と、導体に流れる電流から生じる磁場が平行になるため、多相電流の影響と、被測定電流による誘導起電力の生成を抑え、電流を正確に検出し易いとされている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の電流検出器は、複数の導体を並列させているため、隣接する導体から発生した磁束によって誤検出が発生する可能性がある。また、導体と磁気検出器の相対位置を固定するために専用の部品が必要になるため、製造コストが高くなる傾向にある。
【0009】
また、特許文献2の電流検出器は、一対の磁器センサを用い、その差動値で電流を検出する方式であるが、二つの磁気センサが基板と垂直に実装される必要があり、機械的振動による磁気センサ位置の変動による検出誤差発生の懸念がある。
【0010】
そこで、本発明は、新規な構成で、耐振動性及び電流の検出精度が高いコアレス式の電流検出器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板と、該基板に接続され、板状で孔部を具えた導体を具え、
前記基板は、その平面が一部延出した凸部と、該凸部上に取付けられ、一対のホールセンサを有する電流検出部を具え、
前記導体の平面が前記基板の平面に対して直交する状態で前記凸部及び電流検出部が前記孔部に嵌入され、前記孔部を挟む前記導体の2つの平面が前記一対のホールセンサの間の中央に位置するように配設され、
前記導体には、前記一対のホールセンサの間上を電流が流れるように構成され、
前記一対のホールセンサが前記導体に発生する一方向の磁束と他方向の磁束をそれぞれ検出することを特徴とする電流検出器によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁気検出方向が基板面と直交する方向に位置しており、導体に電流が流されたときに導体に発生する一方向の磁束と他方向の磁束を一対のホールセンサでそれぞれ検出することができる。また、一対のホールセンサの磁束検出方向が基板面と直交するため、ホールセンサの位置決めが容易で、耐振動性が向上し、一対のホールセンサで検知した磁束の差動を用いて導体の電流を検出することができ、外的要因による検出誤差を生じ難い新規な構成で、電流検出の精度が高いコアレス式の電流検出器とすることができる。
【0013】
また、電流検出部を、集積回路をさらに具えた単体の差動ホール集積回路とすれば、部品点数を削減でき、シンプルな構成で製造コストの削減ができる。
【0014】
また、基板に鉤部を設け、導体が鉤部に掛止されるように構成すれば、導体と一対のホールセンサの相対的な位置決めをし易く、より耐振動性が高い電流検出器とすることができる。
【0015】
ここで、孔部を凸部より幅広に形成し、孔部に凸部及び電流検出部を嵌入し、導体をスライドさせることにより、導体が鉤部に掛止されるように構成すれば、導体を基板に簡便に組付けることができる。
【0016】
一方、基板が、鉤部と同じ側に位置する突起と、鉤部の内側に切欠部を具え、導体の端面を切欠部に当接させてから導体を回転させることで、導体が突起と鉤部に挟まれ掛止されるように構成すれば、導体が鉤部と突起によって固定されるので、導体を基板に簡便に組付けることができるとともに、耐振動性をより高めることができる。また、導体の孔部の大きさを最小限にすることができるため、導体の抵抗値増大を抑えることができる。
【0017】
また、基板に重なるように配設された第二基板をさらに具え、導体が第二基板とも接続されている構成とすれば、導体を通じて第二基板にも大電流を導通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態の電流検出器の斜視図。
図2図1の基板の斜視図。
図3図1の導体の斜視図。
図4図1の要部縦断面図。
図5】本発明の第一実施形態の電流検出器を併設した場合の斜視図。
図6】本発明の第二実施形態の電流検出器の斜視図。
図7】本発明の第三実施形態の導体の斜視図。
図8図7の導体の組付時の説明図。
図9】本発明の第四実施形態の電流検出器の組付時の説明図。
図10図9の組付後の平面図。
図11】本発明の第五実施形態の電流検出器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図1~11を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、本発明の第一実施形態の電流検出器100は、基板10と導体20を具える。導体20は、例えば、バスバーである。導体20には、電源やインバータ(図示省略)から電流が流され、基板10にその電流を導通させる。
【0021】
基板10は、図2に示すように、その平面の一部が平面と平行な方向に延出し、凸部12を形成している。凸部12上には、電流検出部30が接続されている。また、基板10の平面上には、端子台14が設けられている。基板10の凸部12以外の形状は、適宜変更してもよい。
【0022】
導体20は、図3に示すように、板状で、その平面には孔部22が設けられている。また、端子24が接続されており、端子24は、基板10の端子台14と接続される。かくして、図1に示すように、導体20は端子24と端子台14を介して基板10に接続される。
【0023】
端子24を含む導体20の形状は、端子24が端子台14と接続されるとき、導体20の平面が基板10の平面に対して直交し、凸部12及び電流検出器30が孔部22に嵌入し、且つ、孔部22を挟む導体20の2つの平面が後述する一対のホールセンサ32,34の間の中央に位置するように決定する(図4も参照。)。このとき、導体20の平面が基板10と密着するように構成することもできる。また、導体20には、図1で示すように、矢印Xの向きで電流が流れるように、導体20の形状や端子24の配設位置を決定する。
【0024】
電流検出部30は、図4に示すように、少なくとも一対のホールセンサ32,34を具える。図示しているように、集積回路36をさらに具えた単体の差動ホール集積回路とすれば、部品点数を削減でき、シンプルな構成で製造コストの削減ができる。
【0025】
導体20には、矢印X(図1参照。)の向きで電流が流れるため、一対のホールセンサ32,34の間上を電流が流れることになる。このため、導体20の周りには、矢印Yで示す向きの磁束が発生する。よって、磁気検出方向が基板面と直交する方向に位置するので、一対のホールセンサ32,34は、導体20に発生する一方向の磁束と他方向の磁束をそれぞれ検出することができる。このようにして、一対のホールセンサの磁束検出方向が基板面と直交するため、ホールセンサの位置決めが容易で、耐振動性が向上し、一対のホールセンサ32,34で検知した磁束の差動を用いて導体20に流れる電流を検出することができ、外的要因による検出誤差を生じ難い新規な構成で、電流検出の精度が高いコアレス式の電流検出器100とすることができる。
【0026】
また、図5で示すように、電流検出器100を同じ向きで複数併設させた構成としてもよい。このように電流検出器100を併設させると、導体20同士が同一面上に位置することになるため、互いの磁束の影響を受け難い。よって、インバータなどの複数の相の電流を同時に検出することに適した構成とすることができる。
【0027】
図6は、本発明の第二実施形態の電流検出器100aを示している。電流検出器100aは、上記に説明した電流検出器100と基本的に同じ構成を有するが、基板10aに鉤部16aが設けられている点で異なる。鉤部16aは、導体20を上述した基板10aとの相対的な位置関係で掛止するように構成されている。本構成とすることにより、導体20と一対のホールセンサ32,34(図4参照)の相対的な位置決めをし易く、耐振動性がより高い電流検出器100aとすることができる。
【0028】
図7は、本発明の第三実施形態の導体20bを示している。導体20bは、孔部22bが幅広に形成されている。図8に示すように、導体20bと上述した基板10aを組合せた電流検出器100bとすることにより、孔部22bに凸部12a及び電流検出部30を嵌入させ、導体20bを矢印Z方向にスライドさせると、導体20bが鉤部16aに掛止されるので、導体20bを基板10aに簡便に組付けることができる。
【0029】
耐振動性ならびに出器100cでは、基板10cが、鉤部16cと同じ側に位置する突起17cと、鉤部16cの内側に切欠部18cをさらに具えている。本構成とすれば、導体20の端面を切欠部18cに当接させてから導体20を矢印Wの方向に回転させることで、導体20が突起17cと鉤部16cに挟まれ掛止され、図10に示すように導体20を基板10cに組付けることができる。
【0030】
本構成とすれば、導体20が鉤部16cと突起17cによって掛止されるので、導体20を基板10cに簡便に組付けることができるとともに、耐振動性をより高めることができる。また、導体20の孔部22の大きさを最小限にすることができるため、導体20の抵抗値増大を抑えることができる。
【0031】
図11では、本発明の第五実施形態の電流検出器100dを示している。電流検出器100dでは、基板10dに重なるように配設された第二基板10eをさらに具える。導体20dは、基板10dと第二基板10eのいずれにも接続されている。本構成とすれば、導体20dを通じて、基板10dだけでなく、第二基板10eにも大電流を導通させることができる。
【0032】
以上に説明したように、本発明によれば、新規な構成で、耐振動性及び電流の検出精度が高いコアレス式の電流検出器100~100fを提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
10~10d 基板
10e 第二基板
12~12d 凸部
16a,16c 鉤部
17c 突起
18c 切欠部
20,20b,20d 導体
22,22b 孔部
30 電流検出部
32,34 ホールセンサ
100~100d 電流検出器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11