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  • 特開-重荷重用空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058350
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B60C15/06 N
B60C15/06 C
B60C15/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165648
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】無藤 佑介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA39
3D131BA03
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC55
3D131HA14
3D131HA33
3D131HA37
3D131HA38
3D131HA45
(57)【要約】
【課題】 ビード部の耐久性を向上し得る重荷重用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 カーカス6を有する重荷重用空気入りタイヤ1である。カーカス6は、少なくとも1枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカスプライ6Aは、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。ビード部4には、本体部6aのタイヤ軸方向の内側に位置する第1端9aから折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に位置する第2端9bまで延びる第1補強層9と、少なくとも一部が第2端9bのタイヤ軸方向の外側に位置する第2補強層10とが設けられている。第1補強層9は、スチールコードを有する少なくとも1枚のスチールプライ9Aを含んでいる。第2補強層10は、有機繊維コードを有する少なくとも1枚の有機繊維プライ10A、10Bを含んでいる。第1端9aは、第2端9bよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスを有する重荷重用空気入りタイヤであって、
前記カーカスは、一対のビード部の間を延びる少なくとも1枚のカーカスプライを含み、
前記カーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て前記ビード部のビードコアに至る本体部と、前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返す折返し部とを含み、
前記ビード部には、前記本体部のタイヤ軸方向の内側に位置する第1端から前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に位置する第2端まで延びる第1補強層と、少なくとも一部が前記第2端のタイヤ軸方向の外側に位置する第2補強層とが設けられ、
前記第1補強層は、スチールコードを有する少なくとも1枚のスチールプライを含み、
前記第2補強層は、有機繊維コードを有する少なくとも1枚の有機繊維プライを含み、
前記第1端は、前記第2端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、
重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビード部には、少なくとも一部が前記第2補強層のタイヤ軸方向の外側に位置しかつ前記ビード部の外面を規定するチェーファーゴムが設けられ、
前記チェーファーゴムは、タイヤ軸方向の外側の前記外面が部分的にタイヤ軸方向の内側に凹む凹部を有する、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部を有する位置での前記チェーファーゴムの厚さは、5mm以上である、請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2補強層は、2枚の前記有機繊維プライを含み、
前記チェーファーゴムのタイヤ半径方向の外端は、2枚の前記有機繊維プライの少なくとも一方のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、請求項2又は3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記チェーファーゴムのタイヤ半径方向の外端は、2枚の前記有機繊維プライの両方のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、請求項4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
2枚の前記有機繊維プライは、前記有機繊維コードが互いに交差している、請求項4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
ビードベースラインから前記第1端までの高さは、前記ビードベースラインから前記第2端までの高さの1.2~2.2倍である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ビード部には、前記ビードコアからタイヤ半径方向の外側に向けて先細状に延びるビードエーペックスゴムが設けられ、
前記ビードエーペックスゴムは、複素弾性率が50MPa以上である第1エーペックスを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ビードエーペックスゴムのタイヤ半径方向の外端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置し、
前記折返し部の外端の位置における前記ビードエーペックスゴムの厚さは、前記ビードコアの最大幅の0.6~0.9倍である、請求項8に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記有機繊維コードは、ナイロンコードである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスを有する重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビード部の耐久性を向上させた重荷重用空気入りタイヤが種々提案されている。例えば、下記特許文献1は、スチールコードの層からなる第1補強層と、有機繊維コードの層からなる第2補強層とが設けられた重荷重用空気入りタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-019452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、重荷重用空気入りタイヤに求められる使用条件は、年々シビアになる傾向にあり、特許文献1の重荷重用空気入りタイヤにおいても、よりシビアな条件におけるビード部の高い耐久性が期待されている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ビード部の耐久性を向上し得る重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カーカスを有する重荷重用空気入りタイヤであって、前記カーカスは、一対のビード部の間を延びる少なくとも1枚のカーカスプライを含み、前記カーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て前記ビード部のビードコアに至る本体部と、前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返す折返し部とを含み、前記ビード部には、前記本体部のタイヤ軸方向の内側に位置する第1端から前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に位置する第2端まで延びる第1補強層と、少なくとも一部が前記第2端のタイヤ軸方向の外側に位置する第2補強層とが設けられ、前記第1補強層は、スチールコードを有する少なくとも1枚のスチールプライを含み、前記第2補強層は、有機繊維コードを有する少なくとも1枚の有機繊維プライを含み、前記第1端は、前記第2端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、重荷重用空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、上述の構成を備えることにより、ビード部の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の重荷重用空気入りタイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2】ビード部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ1」ということがある。)を示す正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、「正規状態」とは、タイヤ1が正規リムRにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0010】
「正規リムR」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。「正規リムR」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、リム組み可能であって、エア漏れを生じさせないリムのうち、最もリム径が小さく、その中で最もリム幅が小さいリムである。
【0011】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定める空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める空気圧である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、一対のトレッド端Te間に延びる接地面2aを有するトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ軸方向両側からタイヤ半径方向内側に延びるサイドウォール部3とを備えている。タイヤ1は、更にサイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に位置するビード部4を備えるのが望ましい。本実施形態のビード部4は、環状に延びるビードコア5を有している。ビードコア5は、例えば、スチールワイヤから形成されている。
【0013】
ここで、トレッド端Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷され、キャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。なお、タイヤ赤道Cは、タイヤ軸方向両側のトレッド端Teの中央位置である。
【0014】
「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める荷重である。
【0015】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2から一対のサイドウォール部3を経て一対のビード部4に至るカーカス6と、トレッド部2におけるカーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたベルト層7とを有している。ベルト層7は、少なくとも1枚、例えば、4枚のベルトプライ7A~7Dを含んでいる。
【0016】
カーカス6は、一対のビード部4の間を延びる少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。本実施形態のカーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5の回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返す折返し部6bとを含んでいる。
【0017】
図2は、ビード部4の拡大断面図である。図2に示されるように、ビード部4には、ビードコア5からタイヤ半径方向の外側に向けて先細状に延びるビードエーペックスゴム8が設けられるのが望ましい。本実施形態のビード部4には、更にビードコア5の回りをカーカスプライ6Aに隣接して配される第1補強層9と、少なくとも一部が第1補強層9のタイヤ軸方向の外側に位置する第2補強層10とが設けられている。このようなビード部4は、剛性が高く、ビードコア5を支点としたタイヤ軸方向の外側への変形を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0018】
第1補強層9は、スチールコードを有する少なくとも1枚、本実施形態では1枚のスチールプライ9Aを含んでいる。第2補強層10は、有機繊維コードを有する少なくとも1枚、本実施形態では2枚の有機繊維プライ10A、10Bを含んでいる。このようなビード部4は、第1補強層9による高い剛性と、第2補強層10によるタイヤ軸方向の外側への変形抑制効果とにより、耐久性を向上させることに役立つ。
【0019】
本実施形態の第1補強層9は、カーカスプライ6Aの本体部6aのタイヤ軸方向の内側に位置する第1端9aから折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に位置する第2端9bまで延びている。第2補強層10は、少なくとも一部が第1補強層9の第2端9bのタイヤ軸方向の外側に位置するのが望ましい。このようなビード部4は、第1補強層9で応力が集中し易い第2端9bを第2補強層10で補強することができ、耐久性を向上させることができる。
【0020】
本実施形態の第1補強層9の第1端9aは、第2端9bよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このような第1補強層9は、ビードコア5を支点としたタイヤ軸方向の外側への変形をより効果的に抑制することができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、ビード部4の耐久性を向上することができる。
【0021】
より好ましい態様として、ビードベースラインBLから第1端9aまでの高さh1は、ビードベースラインBLから第2端9bまでの高さh2の1.2~2.2倍である。高さh1が高さh2の1.2倍以上であることで、ビードコア5を支点としたタイヤ軸方向の外側への変形を確実に抑制することができる。高さh1が高さh2の2.2倍以下であることで、第1補強層9が過度に大きくなることを抑制し、重量の増加を抑制しつつ、剛性を高めることができる。
【0022】
本実施形態のビード部4には、ビード部4の外面4aを規定するチェーファーゴム11が設けられている。本実施形態のチェーファーゴム11は、少なくとも一部が第2補強層10のタイヤ軸方向の外側に位置している。このようなビード部4は、チェーファーゴム11の緩衝機能により第2補強層10に作用する外力を低減することができ、その結果、第2補強層10の変形、損傷を抑制することで、耐久性を向上させることができる。
【0023】
チェーファーゴム11は、タイヤ軸方向の外側の外面4aが部分的にタイヤ軸方向の内側に凹む凹部11aを有するのが望ましい。このような凹部11aは、荷重負荷時のビード部4のタイヤ軸方向の外側への変形量を低減することができ、ビード部4の耐久性を向上させることができる。
【0024】
凹部11aを有する位置でのチェーファーゴム11の厚さt1は、好ましくは、5mm以上である。ここで、凹部11aを有する位置とは、凹部11aの中で最も凹みの大きい位置である。なお、最も凹みの大きい位置が一定の長さを有する場合、その長さの中央位置である。また、凹部11aを有する位置でのチェーファーゴム11の厚さt1は、凹部11aを有する位置の外面4aと第2補強層10の外側面との最短距離である。厚さt1が5mm以上であることで、チェーファーゴム11の緩衝機能を確実に発揮することができる。
【0025】
チェーファーゴム11のタイヤ半径方向の外端11bは、2枚の有機繊維プライ10A、10Bの少なくとも一方のタイヤ半径方向の外端10a、10bよりもタイヤ半径方向の外側に位置するのが望ましい。このようなチェーファーゴム11は、2枚の有機繊維プライ10A、10Bの少なくとも一方の外端10a、10bを起点とする損傷を抑制することができ、ビード部4の耐久性を向上させることができる。
【0026】
本実施形態のチェーファーゴム11のタイヤ半径方向の外端11bは、2枚の有機繊維プライ10A、10Bの両方のタイヤ半径方向の外端10a、10bよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このようなチェーファーゴム11は、2枚の有機繊維プライ10A、10Bのそれぞれの外端10a、10bを起点とする損傷を抑制することができ、ビード部4の耐久性をより確実に向上させることができる。
【0027】
本実施形態の第2補強層10の2枚の有機繊維プライ10A、10Bは、有機繊維コードが互いに交差している。このような第2補強層10は、高い剛性により変形を抑制し、歪みを低減できるので、ビード部4の耐久性を向上させることができる。
【0028】
有機繊維コードは、例えば、ナイロンコードである。このような有機繊維コードは、コストパフォーマンスに優れており、ビード部4の優れた耐久性を低価格で実現することに役立つ。なお、有機繊維コードは、このようなナイロンコードに限定されるものではなく、例えば、ポリエステルコード、アラミドコード、ビニロンコード等、種々のコードが適宜採用され得る。
【0029】
本実施形態のビードエーペックスゴム8のタイヤ半径方向の外端8aは、カーカスプライ6Aの折返し部6bのタイヤ半径方向の外端6cよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このようなビードエーペックスゴム8は、ビード部4の剛性を向上させることができ、ビード部4の耐久性を向上させることに役立つ。
【0030】
折返し部6bの外端6cの位置におけるビードエーペックスゴム8の厚さt2は、好ましくは、ビードコア5の最大幅w1の0.6~0.9倍である。ここで、折返し部6bの外端6cの位置におけるビードエーペックスゴム8の厚さt2は、折返し部6bの外端6cから本体部6aに垂線を引いたときの垂線上に言いするビードエーペックスゴム8の長さに相当する。
【0031】
厚さt2が最大幅w1の0.6倍以上であることで、折返し部6bの外端6c付近の剛性を向上させることができる。厚さt2が最大幅w1の0.9倍以下であることで、カーカス6の本体部6aと折返し部6bとが過度に離間することを抑制し、ビード部4の高い剛性を維持することに役立つ。
【0032】
ビードエーペックスゴム8は、例えば、ビードコア5から延びる第1エーペックス8Aと、第1エーペックス8Aのタイヤ半径方向の外側に配された第2エーペックス8Bとを含んでいる。このようなビードエーペックスゴム8は、異なる種類のゴムによりビード部4を補強することができ、ビード部4の耐久性を向上させることに役立つ。
【0033】
第1エーペックス8Aの複素弾性率は、好ましくは、50MPa以上である。ここで、複素弾性率は、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、動的粘弾性測定装置を用いて測定された値である。
初期歪:10%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0034】
第1エーペックス8Aの複素弾性率が50MPa以上であることで、ビード部4の剛性を向上させ、タイヤ軸方向の外側への変形を抑制することができ、ビード部4の耐久性を向上させることができる。
【0035】
第2エーペックス8Bの複素弾性率は、第1エーペックス8Aの複素弾性率よりも小さいのが望ましい。このようなビードエーペックスゴム8は、低弾性の第2エーペックス8Bによりカーカスプライ6Aの折返し部6bに作用するせん断応力を緩和し、ビード部4の損傷を効果的に抑制することができる。
【0036】
本実施形態のビードエーペックスゴム8は、第1エーペックス8Aの外端8bが、カーカスプライ6Aの折返し部6bのタイヤ半径方向の外端6cよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このようなビードエーペックスゴム8は、折返し部6bの外端6c付近の剛性をより向上させることができ、ビード部4の耐久性を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0038】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0039】
[本発明1]
カーカスを有する重荷重用空気入りタイヤであって、
前記カーカスは、一対のビード部の間を延びる少なくとも1枚のカーカスプライを含み、
前記カーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て前記ビード部のビードコアに至る本体部と、前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返す折返し部とを含み、
前記ビード部には、前記本体部のタイヤ軸方向の内側に位置する第1端から前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に位置する第2端まで延びる第1補強層と、少なくとも一部が前記第2端のタイヤ軸方向の外側に位置する第2補強層とが設けられ、
前記第1補強層は、スチールコードを有する少なくとも1枚のスチールプライを含み、
前記第2補強層は、有機繊維コードを有する少なくとも1枚の有機繊維プライを含み、
前記第1端は、前記第2端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、
重荷重用空気入りタイヤ。
【0040】
[本発明2]
前記ビード部には、少なくとも一部が前記第2補強層のタイヤ軸方向の外側に位置しかつ前記ビード部の外面を規定するチェーファーゴムが設けられ、
前記チェーファーゴムは、タイヤ軸方向の外側の前記外面が部分的にタイヤ軸方向の内側に凹む凹部を有する、本発明1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0041】
[本発明3]
前記凹部を有する位置での前記チェーファーゴムの厚さは、5mm以上である、本発明2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0042】
[本発明4]
前記第2補強層は、2枚の前記有機繊維プライを含み、
前記チェーファーゴムのタイヤ半径方向の外端は、2枚の前記有機繊維プライの少なくとも一方のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、本発明2又は3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0043】
[本発明5]
前記チェーファーゴムのタイヤ半径方向の外端は、2枚の前記有機繊維プライの両方のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、本発明4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0044】
[本発明6]
2枚の前記有機繊維プライは、前記有機繊維コードが互いに交差している、本発明4又は5に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0045】
[本発明7]
ビードベースラインから前記第1端までの高さは、前記ビードベースラインから前記第2端までの高さの1.2~2.2倍である、本発明1ないし6のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0046】
[本発明8]
前記ビード部には、前記ビードコアからタイヤ半径方向の外側に向けて先細状に延びるビードエーペックスゴムが設けられ、
前記ビードエーペックスゴムは、複素弾性率が50MPa以上である第1エーペックスを含む、本発明1ないし7のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0047】
[本発明9]
前記ビードエーペックスゴムのタイヤ半径方向の外端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置し、
前記折返し部の外端の位置における前記ビードエーペックスゴムの厚さは、前記ビードコアの最大幅の0.6~0.9倍である、本発明8に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0048】
[本発明10]
前記有機繊維コードは、ナイロンコードである、本発明1ないし9のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0049】
1 重荷重用空気入りタイヤ
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a 本体部
6b 折返し部
9 第1補強層
9A スチールプライ
9a 第1端
9b 第2端
10 第2補強層
10A 有機繊維プライ
10B 有機繊維プライ
図1
図2