IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日置電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図1
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図2
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図3
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図4
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図5
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図6
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図7
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図8
  • 特開-抵抗測定装置及び抵抗測定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058357
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】抵抗測定装置及び抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G01R27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165660
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 秀行
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BC01
2G028CG02
2G028DH13
2G028FK07
2G028HN11
2G028HN13
(57)【要約】
【課題】抵抗温度係数が不明であっても基準温度での接合部の抵抗値を取得可能とする。
【解決手段】抵抗測定装置10は、対象物16の基準となる基準品において予め取得した組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示す情報(式1)並びに基準温度tの基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の基準抵抗値RB0を記憶する記憶部110を備える。抵抗測定装置10は、抵抗値取得部130で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと記憶部110に記憶された情報(式1)及び第二部材14の基準抵抗値RB0とに基づいて、対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0’を取得する基準抵抗値取得部132を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とが互いに接合された対象物において予め定められた基準温度での接合部の基準抵抗値を測定する抵抗測定装置であって、
前記第一部材及び前記第二部材にそれぞれ接触する組をなす第一接触部と、
前記第二部材における異なる箇所にそれぞれ接触する組をなす第二接触部と、
前記対象物の基準となる基準品において予め取得した前記組をなす第一接触部間の抵抗値と前記基準品において予め取得した前記組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を示す情報並びに前記基準温度の前記基準品において予め取得した前記組をなす第二接触部間における前記第二部材の基準抵抗値を記憶する記憶部と、
前記対象物において前記組をなす第一接触部間の第一抵抗値を取得するとともに前記組をなす第二接触部間の第二抵抗値を取得する抵抗値取得部と、
前記抵抗値取得部で取得した前記第一抵抗値及び前記第二抵抗値と前記記憶部に記憶された前記情報及び前記第二部材の基準抵抗値とに基づいて、前記対象物における前記接合部の基準抵抗値を取得する基準抵抗値取得部と、
を備えた抵抗測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗測定装置であって、
前記基準抵抗値取得部は、前記抵抗値取得部で取得した前記第一抵抗値及び前記第二抵抗値と前記記憶部に記憶された前記情報及び前記第二部材の基準抵抗値とに基づき、前記接合部の基準抵抗値を演算する為の演算式を用いて前記対象物における前記接合部の基準抵抗値を取得する、
抵抗測定装置。
【請求項3】
第一部材と第二部材とが互いに接合された対象物において予め定められた基準温度での接合部の基準抵抗値を測定する抵抗測定方法であり、
前記第一部材及び前記第二部材にそれぞれ接触する組をなす第一接触部と、
前記第二部材における異なる箇所にそれぞれ接触する組をなす第二接触部と、
前記対象物の基準となる基準品において予め取得した前記組をなす第一接触部間の抵抗値と前記基準品において予め取得した前記組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を示す情報並びに前記基準温度の前記基準品において予め取得した前記組をなす第二接触部間における前記第二部材の基準抵抗値を記憶する記憶部と、
を備えた抵抗測定装置が実行する抵抗測定方法であって、
前記対象物において前記組をなす第一接触部間の第一抵抗値を取得するとともに前記組をなす第二接触部間の第二抵抗値を取得する抵抗値取得工程と、
前記抵抗値取得工程で取得した前記第一抵抗値及び前記第二抵抗値と前記記憶部に記憶された前記情報及び前記第二部材の基準抵抗値とに基づいて、前記対象物における前記接合部の基準抵抗値を取得する基準抵抗値取得工程と、
を備えた抵抗測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の抵抗測定方法であって、
前記基準温度の前記基準品において前記第二部材の基準抵抗値を取得する第二部材基準抵抗値取得工程と、
前記基準品の温度を変化させ、前記組をなす第一接触部間の抵抗値及び前記組をなす第二接触部間の抵抗値を異なる温度で複数取得する複数取得工程と、
前記複数取得工程で取得した取得結果に基づいて前記情報を取得する情報取得工程と、
前記第二部材基準抵抗値取得工程で取得した前記第二部材の基準抵抗値、及び前記情報取得工程で取得した前記情報を前記記憶部に記憶する記憶工程と、
を備える抵抗測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の抵抗測定装置であって、
前記情報は、予め取得した前記組をなす第一接触部間の抵抗値と予め取得した前記組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を示す関係式である、
抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗測定装置及び抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、抵抗測定装置が開示されている。この抵抗測定装置は、タブ群の第1測定対象部と、タブ群に溶接部を介して接合された導電部材の第2測定対象部との間の抵抗値を算出用抵抗値として測定する。また、抵抗測定装置は、導電部材の第2測定対象部と第3測定対象部との間の抵抗値を温度取得用抵抗値として測定し、温度取得用抵抗値から第2測定対象部の温度を取得する。
【0003】
そして、抵抗測定装置は、取得した第2測定対象部の温度に基づいて算出用抵抗値を補正し、補正された算出用抵抗値を溶接部の抵抗値として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-060769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような抵抗測定装置にあっては、温度取得用抵抗値から取得した第2測定対象部の温度に基づいて算出用抵抗値を補正するため、温度取得用抵抗値と第2測定対象部の温度との関係を予め準備する必要がある。
【0006】
温度取得用抵抗値と第2測定対象部の温度との関係を求めるためには、導電部材の抵抗温度係数が必要となるが、導電部材の材質によっては、正確な抵抗温度係数を得ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、抵抗温度係数が不明であっても基準温度での接合部の抵抗値を取得可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様の抵抗測定装置は、第一部材と第二部材とが互いに接合された対象物において予め定められた基準温度での接合部の基準抵抗値を測定する抵抗測定装置であって、前記第一部材及び前記第二部材にそれぞれ接触する組をなす第一接触部と、前記第二部材における異なる箇所にそれぞれ接触する組をなす第二接触部と、前記対象物の基準となる基準品において予め取得した前記組をなす第一接触部間の抵抗値と前記基準品において予め取得した前記組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を示す情報並びに前記基準温度の前記基準品において予め取得した前記組をなす第二接触部間における前記第二部材の基準抵抗値を記憶する記憶部と、前記対象物において前記組をなす第一接触部間の第一抵抗値を取得するとともに前記組をなす第二接触部間の第二抵抗値を取得する抵抗値取得部と、前記抵抗値取得部で取得した前記第一抵抗値及び前記第二抵抗値と前記記憶部に記憶された前記情報及び前記第二部材の基準抵抗値とに基づいて、前記対象物における前記接合部の基準抵抗値を取得する基準抵抗値取得部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様において、記憶部に記憶された情報は、基準品で取得した組をなす第一接触部間の抵抗値と組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を示す。また、記憶部に記憶された組をなす第二接触部間の基準抵抗値は、基準温度の基準品において取得した第二部材の基準抵抗値を示す。
【0010】
このため、基準品において、組をなす第二接触部間の抵抗値が基準温度で第二部材の基準抵抗値となるとともに、組をなす第一接触部間の抵抗値と組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を得ることできる。この関係としては、例えば組をなす第一接触部間の抵抗値と組をなす第二接触部間の抵抗値との関係を示すグラフ、データ群、データテーブル、又は関係式などが挙げられる。
【0011】
ここで、この関係は、対象物の状態に応じて変化することが知られている。このため、基準品と対象物とでは、前述した関係にずれが生ずることがあり得る。
【0012】
そこで、基準品で得た関係と、対象物で取得した組をなす第一接触部間の第一抵抗値及び組をなす第二接触部間の第二抵抗値とに基づいて、基準品と対象物との間で生じた関係のずれを修正することで、当該対象物における接合部の基準抵抗値の取得が可能となる。
【0013】
このように、基準品で取得した情報及び第二部材の基準抵抗値を予め準備して記憶部に記憶しておくことで、対象物から取得した第一抵抗値及び第二抵抗値に基づいて接合部の基準抵抗値を取得することができる。
【0014】
このため、第二部材の抵抗値から取得した温度に基づいて接合部の抵抗値を補正して基準抵抗値を取得する場合と比較して、第二部材の抵抗値と温度との関係を求めるために必要であった第二部材の抵抗温度係数が不要となる。
【0015】
したがって、抵抗温度係数が不明であっても基準温度での接合部の基準抵抗値が取得可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る抵抗測定装置を示す模式図である。
図2図2は、抵抗測定装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、抵抗測定装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、抵抗測定装置の事前処理の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に続く動作を示すフローチャートである。
図6図6は、第一抵抗値と第二抵抗値との関係を示す線図である。
図7図7は、関係式を用いて第二部材の基準抵抗値から接合部の基準抵抗値を求める様子を示す説明図である。
図8図8は、抵抗測定装置の測定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、接合部の基準抵抗値を求める様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る抵抗測定装置10を示す模式図である。図2は、抵抗測定装置10のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、抵抗測定装置10は、第一部材12と第二部材14とが互いに接合された対象物16において予め定められた基準温度tでの接合部18の基準抵抗値RA0を測定する装置である。
【0020】
(対象物)
第一部材12及び第二部材14は、金属製の部材であり、第一部材12及び第二部材14を構成する金属としては、例えば銅又はアルミニウム等(アルミニウムを主成分とする金属)が挙げられる。第一部材12及び第二部材14は、同種の金属であっても、異なる金属であってもよい。
【0021】
第一部材12と第二部材14とは、互いに重ねられた箇所が溶接によって接合され、第一部材12と第二部材14とを接合する接合部18は、溶接部で構成される。接合部18の抵抗値は、接合部18の状態を示すことが知られており、基準温度tでの接合部18の抵抗値を知ることで、第一部材12と第二部材14との接合状態を知ることができる。
【0022】
(接続構造部)
抵抗測定装置10は、対象物16に電気的に接続される接続構造部20を備えている。接続構造部20は、第一部材12及び第二部材14にそれぞれ接触する組をなす第一接触部22、24と、第二部材14における異なる箇所にそれぞれ接触する組をなす第二接触部26、28とを含んで構成される構造を有する。
【0023】
なお、組をなす第一接触部22、24は、一組の第一接触部22、24と言い換えることができる。また、組をなす第二接触部26、28は、一組の第二接触部26、28と言い換えることができる。
【0024】
組をなす第一接触部22、24のうちの一方の第一接触部22は、第一正極通電プローブ30と第一正極測定プローブ32とを含む。組をなす第一接触部22、24のうちの他方の第一接触部24は、第一負極通電プローブ34と第一負極測定プローブ36とを含む。
【0025】
組をなす第二接触部26、28のうちの一方の第二接触部26は、第二正極通電プローブ40と第二正極測定プローブ42とを含む。組をなす第二接触部26、28のうちの他方の第二接触部28は、第二負極通電プローブ44と第二負極測定プローブ46とを含む。
【0026】
第一正極通電プローブ30は、第一部材12に接触され、第一部材12と電気的に接続される。第一正極測定プローブ32は、第一正極通電プローブ30よりも接合部18に近い位置において第一部材12に接触され、第一部材12と電気的に接続される。
【0027】
第一負極通電プローブ34は、第一部材12に接触され、第一部材12と電気的に接続される。第一負極測定プローブ36は、第一負極通電プローブ34よりも接合部18に近い位置において第一部材12に接触され、第一部材12と電気的に接続される。
【0028】
これにより、第一正極通電プローブ30と第一負極通電プローブ34との間に、第一正極測定プローブ32及び第一負極測定プローブ36が所定の間隔をおいて配置される。
【0029】
第二正極通電プローブ40は、第二部材14に接触され、第二部材14と電気的に接続される。第二正極測定プローブ42は、第二正極通電プローブ40よりも接合部18から離れた位置において第二部材14に接触され、第二部材14と電気的に接続される。
【0030】
第二負極通電プローブ44は、第二部材14に接触され、第二部材14と電気的に接続される。第二負極測定プローブ46は、第二負極通電プローブ44よりも接合部18に近い位置において第二部材14に接触され、第二部材14と電気的に接続される。
【0031】
これにより、第二正極通電プローブ40と第二負極通電プローブ44との間に、第二正極測定プローブ42及び第二負極測定プローブ46が所定の間隔をおいて配置される。
【0032】
(測定部)
抵抗測定装置10は、組をなす第一接触部22、24間の抵抗値を測定するための第一測定部50と、組をなす第二接触部26、28間の抵抗値を測定するための第二測定部52を備える。
【0033】
各測定部50、52は、対象物16の測定箇所の抵抗値を測定するための構成を備える。抵抗値の測定方法としては、二端子法と四端子法とがあり、本実施形態の各測定部50、52は、四端子法によって抵抗値を測定する。
【0034】
第一測定部50は、対象物16に流す電流を供給する第一供給源60と、対象物16の所定の箇所の電圧値を測定する第一電圧測定部62とを備える。第一供給源60は、一定の電流を流す定電流源で構成される。例えば、第一供給源60は、電流供給回路により実現される。
【0035】
第一供給源60の正極端子60aは、第一正極通電プローブ30に接続されている。第一供給源60の負極端子60bは、第一負極通電プローブ34に接続されている。第一電圧測定部62の正極端子62aは、第一正極測定プローブ32に接続されている。第一電圧測定部62の負極端子62bは、第一負極測定プローブ36に接続されている。
【0036】
第一測定部50の第一供給源60は、第一正極通電プローブ30の接触位置と第一負極通電プローブ34の接触位置との間に定電流を流す。第一電圧測定部62は、第一供給源60からの電流が流れる箇所に接した第一正極測定プローブ32と第一負極測定プローブ36との間の電圧を測定する。
【0037】
第一電圧測定部62で測定した電圧値と第一供給源60から流れる電流の電流値とに基づいて、第一正極測定プローブ32の接触位置と第一負極測定プローブ36の接触位置との間の抵抗値を取得することができる。これにより、第一測定部50は、組をなす第一接触部22、24間の抵抗値を測定可能とする測定回路を構成する。
【0038】
ここで、第一正極測定プローブ32の接触位置と第一負極測定プローブ36の接触位置との間においては、接合部18の抵抗値が支配的となる。このため、組をなす第一接触部22、24間で取得される抵抗値は、接合部18の抵抗値を示すといえる。
【0039】
第二測定部52は、対象物16に流す電流を供給する第二供給源64と、対象物16の所定の箇所の電圧値を測定する第二電圧測定部66とを備える。第二供給源64は、一定の電流を流す定電流源で構成される。例えば、第二供給源64、電流供給回路により実現される。
【0040】
第二供給源64の正極端子64aは、第二正極通電プローブ40に接続されている。第二供給源64の負極端子64bは、第二負極通電プローブ44に接続されている。第二電圧測定部66の正極端子66aは、第二正極測定プローブ42に接続されている。第二電圧測定部66の負極端子66bは、第二負極測定プローブ46に接続されている。
【0041】
第二測定部52の第二供給源64は、第二正極通電プローブ40の接触位置と第二負極通電プローブ44の接触位置との間に定電流を流す。第二電圧測定部66は、第二供給源64からの電流が流れる箇所に接した第二正極測定プローブ42と第二負極測定プローブ46との間の電圧を測定する。
【0042】
第二電圧測定部66で測定した電圧値と第二供給源64から流れる電流の電流値とに基づいて、第二正極測定プローブ42の接触位置と第二負極測定プローブ46の接触位置との間の抵抗値を取得することができる。これにより、第二測定部52は、組をなす第二接触部26、28間の抵抗値を測定可能とする測定回路を構成する。
【0043】
なお、本実施形態では、各供給源60、64を定電流源で構成する場合について説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、各供給源60、64を、電流を供給する電流源と、電流源から流れる電流を測定する電流測定部とで構成してもよい。
【0044】
(ハードウエア構成)
図2に示すように、抵抗測定装置10は、処理部100を中心に構成されている。処理部100には、前述した第一測定部50と第二測定部52とが接続されている。
【0045】
処理部100は、第一測定部50の第一電圧測定部62で測定した電圧値を入力するとともに、入力した電圧値と第一供給源60から印加される電流の電流値とに基づいて抵抗値を算出する。これにより、処理部100は、第一正極測定プローブ32の接触位置と第一負極測定プローブ36の接触位置との間の抵抗値を取得する。
【0046】
また、処理部100は、第二測定部52の第二電圧測定部66で測定した電圧値を入力するとともに、入力した電圧値と第二供給源64から印加される電流の電流値とに基づいて抵抗値を算出する。これにより、処理部100は、第二正極測定プローブ42の接触位置と第二負極測定プローブ46の接触位置との間の抵抗値を取得する。
【0047】
この処理部100には、記憶部110と、入力部112と、表示部114と、報知部116と、時計部118と、通信部120とが接続されている。
【0048】
記憶部110は、処理部100によってデータを読み出し可能に記憶する。記憶部110には、抵抗測定装置10の動作を制御する処理プログラムが格納される。記憶部110は、抵抗測定装置10の機能を実現する処理プログラムを格納する記憶媒体として機能する。
【0049】
記憶部110は、不揮発性メモリ(ROM:Read Only Memory)、及び揮発性メモリ(RAM:Random Access Memory)などにより構成される。また、記憶部110は、処理プログラムで使用するデータが読み出し可能に記憶される。
【0050】
記憶部110には、処理プログラムで使用するデータとして、対象物16の基準となる基準品において予め取得された情報と第二部材14の基準抵抗値RB0とが記憶される。
【0051】
基準品は、図1に示した対象物16と同じ構造で構成され、第一部材12と第二部材14との接合部18の溶接状態が標準的なものである。標準品は、量産品である対象物16の接合部18の状態を検査する際に、対象物16と比較するために用いられる所謂マスターである。
【0052】
情報は、基準品において予め取得した組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示す情報である。組をなす第一接触部22、24間の抵抗値、及び組をなす第二接触部26、28間の抵抗値は、量産品である対象物16と同位置で測定される値である。
【0053】
この情報としては、組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示すグラフ、データ群、データテーブル、又は関係式が挙げられる。本実施形態では、情報の一例として関係式(後述する(式1)参照)が記憶部110に記憶される。
【0054】
第二部材14の基準抵抗値RB0は、基準温度tに保たれた基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の抵抗値を示す。組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の抵抗値は、量産品である対象物16と同位置で測定される値である。
【0055】
入力部112は、利用者が入力したデータを処理部100に送る。入力部112は、利用者の入力操作を受け付ける入力インターフェースとして機能する。入力部112は、例えば、複数の操作ボタン及び数字ボタン、又はタッチパネルで構成される。
【0056】
表示部114は、処理部100からのデータに従って表示を行う。表示部114は、例えば、測定結果等を表示する。表示部114を構成する装置としては、発光ダイオード又はLCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネルが挙げられる。本実施形態の表示部114は、例えば、液晶パネルで構成される。
【0057】
報知部116は、処理部100からのデータに従って報知を行う。報知部116は、案内又は警告等を利用者に音で報知可能とする。音で報知する装置としては、圧電ブザー又はスピーカなどが挙げられる。本実施形態の報知部116は、例えば、スピーカで構成される。
【0058】
時計部118は、現在の年月日及び時刻を示すととともに時間を測定する。時計部118は、現在の年月日及び時刻を処理部100に出力する。時計部118が示す年月日及び時刻は、例えば、測定部50によって抵抗値を測定した際に、各測定値を測定した時刻として各測定値に関連付けて記憶部110に記憶することができる。また、時計部118は、時刻ではなく経過時間を測定するように構成してもよい。
【0059】
通信部120は、処理部100と外部装置との間でデータの送受信を可能とする。通信部120は、例えば、測定結果等を外部装置へ出力可能とする。通信部120は、データを送受信するためのインターフェースを構成する。通信部120は、USB(Universal Serial Bus)、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどを用いて通信を行うハードウエアで構成される。
【0060】
処理部100は、例えば、プロセッサにより構成される。プロセッサとしては、例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)が挙げられる。処理部100は、記憶部110に格納された処理プログラムを読み出すとともに、読み出した処理プログラムに従って動作する。これにより、処理部100は、抵抗測定装置10の各部を制御して抵抗測定方法を実施する。
【0061】
また、処理部100は、測定結果等を表示部114で表示したり、報知部116から報知したり、通信部120を介して外部装置へ送信したりすることができる。
【0062】
(機能ブロック)
図3は、抵抗測定装置10の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0063】
図3に示すように、抵抗測定装置10は、抵抗値取得部130と、基準抵抗値取得部132とを備える。抵抗測定装置10における各部130、132の機能は、処理部100が記憶部110から処理プログラムとして読み出したソフトウエアプログラムを実行することで実現される。
【0064】
(抵抗値取得部)
抵抗値取得部130は、対象物16において組をなす第一接触部22、24間の第一抵抗値Rを取得するとともに組をなす第二接触部26、28間の第二抵抗値Rを取得する。
【0065】
具体的に説明すると、処理部100は、第一測定部50の第一電圧測定部62で測定した電圧値を入力するとともに、入力した電圧値と第一供給源60から印加される電流の電流値とに基づいて抵抗値を算出する。これにより、処理部100は、第一正極測定プローブ32の接触位置と第一負極測定プローブ36の接触位置との間の第一抵抗値Rを取得する。
【0066】
また、処理部100は、第二測定部52の第二電圧測定部66で測定した電圧値を入力するとともに、入力した電圧値と第二供給源64から印加される電流の電流値とに基づいて抵抗値を算出する。これにより、処理部100は、第二正極測定プローブ42の接触位置と第二負極測定プローブ46の接触位置との間の第二抵抗値Rを取得する。
【0067】
ここで、第一抵抗値Rの測定と第二抵抗値Rの測定とは、同時に行うことが望ましい。しかし、第一供給源60からの電流と第二供給源64からの電流との干渉を防止するために、第一抵抗値Rの測定と第二抵抗値Rの測定とをずらして行ってもよい。
【0068】
この場合、例えば、第一抵抗値Rの測定の前後に第二抵抗値Rを測定し、第一抵抗値Rの前後に測定した第二抵抗値Rの平均値を、取得した第二抵抗値Rとすることができる。
【0069】
(基準抵抗値取得部)
基準抵抗値取得部132は、抵抗値取得部130で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと、記憶部110に記憶された情報及び第二部材14の基準抵抗値RB0とに基づいて、対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0を取得する。
【0070】
この際、基準抵抗値取得部132は、抵抗値取得部130で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと、記憶部110に記憶された情報及び第二部材14の基準抵抗値RB0とを用いて、接合部18の基準抵抗値RA0を演算する為の演算式を作成する。そして、基準抵抗値取得部132は、作成した演算式を用いて対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0を取得する。
【0071】
具体的に説明すると、処理部100は、記憶部110から情報である関係式(後述する(式1)参照)と第二部材14の基準抵抗値RB0を読み出す。また、処理部100は、記憶部110から読み出した関係式(後述する(式1)参照)を利用するとともに取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと記憶部110から読み出した基準抵抗値RB0とを用いて、接合部18の基準抵抗値RA0を演算する為の演算式を作成する。
【0072】
そして、処理部100は、この演算式を用いることよって、対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0を取得する。この演算式については、動作説明において詳細に説明する。
【0073】
(動作説明)
次に、抵抗測定装置10の動作を処理部100が実行する処理手順に従って説明する。
【0074】
この抵抗測定装置10は、測定を開始する前段階において、前述した情報及び第二部材14の基準抵抗値RB0等を基準品で取得するための事前処理を行う。この事前処理について、図4から図7を用いて説明する。
【0075】
(事前処理)
図4は、抵抗測定装置10の事前処理の動作の一例を示すフローチャートである。図5は、図4に続く動作を示すフローチャートである。図6は、第一抵抗値Rと第二抵抗値Rとの関係を示す線図である。図7は、関係式(後述する(式1)参照)を用いて第二部材14の基準抵抗値RB0から接合部18の基準抵抗値RA0を求める様子を示す説明図である。
【0076】
図4に示すように、処理部100は、記憶部110に記憶された処理プログラムに従ってメインルーチンを実行するとともにメインルーチンから呼び出された事前処理を実行すると、測定準備案内処理を行う(ステップS10)。この測定準備案内処理において、処理部100は、測定準備を行うための案内を表示部114に表示する。
【0077】
具体的に説明すると、処理部100は、対象物16の基準となる基準品を準備するように案内する。そして、処理部100は、準備した基準品において、第一正極通電プローブ30を第一部材12に接触させ、第一正極測定プローブ32を、第一正極通電プローブ30よりも接合部18に近い位置において第一部材12に接触させるように案内する。また、処理部100は、第一負極通電プローブ34を第二部材14に接触させ、第一負極測定プローブ36を、第一負極通電プローブ34よりも接合部18に近い位置において第二部材14に接触させるように案内する。
【0078】
これにより、処理部100は、第一正極通電プローブ30と第一負極通電プローブ34との間に、第一正極測定プローブ32及び第一負極測定プローブ36を所定の間隔をおいて配置するように利用者に対して指示する。
【0079】
また、処理部100は、第二正極通電プローブ40を第二部材14に接触させ、第二正極測定プローブ42を、第二正極通電プローブ40よりも接合部18から離れた位置において第二部材14に接触させるように案内する。さらに、処理部100は、第二負極通電プローブ44を、第二部材14に接触させ、第二負極測定プローブ46を、第二負極通電プローブ44よりも接合部18側であって、第二正極測定プローブ42よりも接合部18から離れた位置で第二部材14に接触させるように案内する。
【0080】
これにより、処理部100は、第二正極通電プローブ40と第二負極通電プローブ44との間に、第二正極測定プローブ42及び第二負極測定プローブ46を所定の間隔をおいて配置するように利用者に対して指示する。
【0081】
また、処理部100は、この基準品を室温が基準温度tに保たれた室内において所定時間放置するように案内する。この所定時間は、室内に放置された基準品が基準温度tになるまでに要する時間が設定される。また、基準温度tは、接合部18の基準抵抗値RA0を取得するときの温度を示し、基準温度tは、例えば、20℃である。
【0082】
そして、処理部100は、基準品を基準温度tの室内に放置してから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12において、所定時間経過したと判断した場合、処理部100は、基準品の温度が基準温度tになったと判断する。
【0083】
ここで、基準品及び対象物16を構成する第一部材12及び第二部材14は、銅又はアルミニウム等の熱伝導率の高い金属で構成されている。このため、基準品及び対象物16の温度と、第一部材12の温度と、第二部材14の温度と、第一部材12及び第二部材14を接合する接合部18の温度とは、略同じ温度を示すものとする。
【0084】
基準温度tに設定された基準品において、処理部100は、第二測定部52の第二電圧測定部66で測定した電圧値を入力するとともに、入力した電圧値と第二供給源64から印加される電流の電流値とに基づいて抵抗値を算出する。そして、処理部100は、算出した抵抗値を、組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の基準抵抗値RB0として取得するとともに(ステップS14)、取得した第二部材14の基準抵抗値RB0を記憶部110に記憶する(ステップS16)。
【0085】
そして、処理部100は、基準品の温度を変化させる旨の案内を表示部114に表示する(ステップS18)。この表示に従って利用者は、基準品の温度を変化させる。基準品の温度を変化させる際には、低温から高温に変化させてもよいし、高温から低温に変化させてもよい。本実施形態では、加熱した基準品を自然空冷することで、基準品を高温から低温に変化させる場合を例に挙げて説明する。
【0086】
処理部100は、記憶部110に予め確保された記憶領域nに数値「5」を入力する(ステップS18)。
【0087】
そして、第一電圧測定部62で測定した電圧値と第一供給源60から流れる電流の電流値とに基づいて第一抵抗値RA(n)を取得し、取得した第一抵抗値RA(n)を記憶部110に記憶する(ステップS22)。また、第二電圧測定部66で測定した電圧値と第二供給源64から流れる電流の電流値とに基づいて第二抵抗値RB(n)を取得し、取得した第二抵抗値RB(n)を記憶部110に記憶する(ステップS24)。
【0088】
ここで、RA(n)の「(n)」には、記憶部110の記憶領域nに記憶された数値が入る。また、RB(n)の「(n)」には、記憶部110の記憶領域nに記憶された数値が入る。
【0089】
そして、処理部100は、記憶領域nに記憶された数値から「1」を減算し(ステップS26)、記憶領域nに記憶された数値が「2」になったか否かに基づいて所定回数の測定が終了したか否かを判断する(ステップS28)。
【0090】
ステップS28において、記憶領域nに記憶された数値が「2」でない場合、処理部100は、ステップS22に分岐して、測定回数(例えば4回)の測定が完了するまで、各ステップを実施する。
【0091】
これにより、処理部100は、第一抵抗値RA2~第一抵抗値RA5及び第二抵抗値RB2~第二抵抗値RB5を取得して記憶部110に記憶する。
【0092】
ステップS28で記憶領域nの数値が「2」であると判断した場合、処理部100は、ステップS30を実行する。
【0093】
図5に示すように、ステップS30では、取得した取得結果である第一抵抗値RA2~第一抵抗値RA5及び第二抵抗値RB2~第二抵抗値RB5に基づいて前述した情報を取得する。本実施形態において、取得する情報は、予め取得した組をなす第一接触部22、24間の第一抵抗値RA2~第一抵抗値RA5と、予め取得した組をなす第二接触部26、28間の第二抵抗値RB2~第二抵抗値RB5との関係を示す関係式(後述する(式1)参照)である。
【0094】
関係式を求め処理について具体的に説明する。
【0095】
図6に示すように、取得した第一抵抗値RA2~第一抵抗値RA5及び第二抵抗値RB2~第二抵抗値RB5に基づいて、第一抵抗値Rと第二抵抗値Rとの関係を示す一次の回帰直線200を形成することができる。また、この回帰直線200から傾きC及び切片Cを得ることができる。
【0096】
この回帰直線200を示す関係式を次の(式1)に示す。
【0097】
=C×R+C ・・・ (式1)
【0098】
は、組をなす第一接触部22、24間の抵抗値である接合部18の抵抗値を示す。
は、回帰直線200の傾きを示す。
は、組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の抵抗値を示す。
は、回帰直線200の切片を示す。
【0099】
図5に示すように、処理部100は、(式1)で示される関係式を記憶部110に記憶する(ステップS32)。
【0100】
図7に示すように、処理部100は、(式1)に示す関係式を用いることで、記憶部110に記憶された第二部材14の基準抵抗値RB0に基づいて、当該基準抵抗値RB0のときの接合部18の基準抵抗値RA0を求める。そして、処理部100は、求めた接合部18の基準抵抗値RA0を記憶部110に記憶して(ステップS34)、メインルーチンへ戻る。なお、接合部18の基準抵抗値RA0は、基準温度tにおける接合部18の抵抗値を示す。
【0101】
(測定処理)
次に、対象物16において接合部18の基準抵抗値RA0’を測定する測定処理について説明する。
【0102】
図8は、抵抗測定装置10の測定処理の動作の一例を示すフローチャートである。図9は、接合部18の基準抵抗値RA0‘を求める様子を示す説明図である。
【0103】
図8に示すように、対象物16の測定を行う際にメインルーチンから測定処理が呼び出されると、処理部100は、測定準備を行うための案内を表示部114に表示する(ステップSB10)。
【0104】
具体的に説明すると、処理部100は、対象物16において、第一正極通電プローブ30を第一部材12に接触させ、第一正極測定プローブ32を、第一正極通電プローブ30よりも接合部18に近い位置において第一部材12に接触させるように案内する。また、処理部100は、第一負極通電プローブ34を第二部材14に接触させ、第一負極測定プローブ36を、第一負極通電プローブ34よりも接合部18に近い位置において第二部材14に接触させるように案内する。
【0105】
これにより、処理部100は、第一正極通電プローブ30と第一負極通電プローブ34との間に、第一正極測定プローブ32及び第一負極測定プローブ36を所定の間隔をおいて配置するように利用者に対して指示する。
【0106】
また、処理部100は、第二正極通電プローブ40を第二部材14に接触させ、第二正極測定プローブ42を、第二正極通電プローブ40よりも接合部18から離れた位置において第二部材14に接触させるように案内する。さらに、処理部100は、第二負極通電プローブ44を、第二部材14に接触させ、第二負極測定プローブ46を、第二負極通電プローブ44よりも接合部18側であって、第二正極測定プローブ42よりも接合部18から離れた位置で第二部材14に接触させるように案内する。
【0107】
これにより、処理部100は、第二正極通電プローブ40と第二負極通電プローブ44との間に、第二正極測定プローブ42及び第二負極測定プローブ46を所定の間隔をおいて配置するように利用者に対して指示する。
【0108】
そして、処理部100は、対象物16において組をなす第一接触部22、24間の第一抵抗値RA6’を取得するとともに、組をなす第二接触部26、28間の第二抵抗値RB6を取得する。
【0109】
具体的に説明すると、処理部100は、第一電圧測定部62で測定した電圧値と第一供給源60から流れる電流の電流値とに基づいて第一抵抗値RA6’を取得し、取得した第一抵抗値RA6’を記憶部110に記憶する(ステップSB12)。
【0110】
また、処理部100は、第二電圧測定部66で測定した電圧値と第二供給源64から流れる電流の電流値とに基づいて第二抵抗値RB6を取得し、取得した第二抵抗値RB6を記憶部110に記憶する(ステップSB14)。
【0111】
ここで、第一抵抗値RA6’は、測定時における対象物16の温度において、組をなす第一接触部22、24間で得られた抵抗値を示す。第二抵抗値RB6は、測定時における対象物16の温度において、組をなす第二接触部26、28間で得られた抵抗値を示す。
【0112】
また、接合部18の第一抵抗値R及び後述する接合部18の基準抵抗値RA0は、対象物16における接合部18の状態に応じて変化し得る。このため、接合部18の第一抵抗値R及び接合部18の基準抵抗値RA0には、対象物16で測定した抵抗値であることを示すために「’」を付して説明する。
【0113】
一方、第二部材14の第二抵抗値RB6は、対象物16における接合部18の状態によって変化せず、基準品の値と対象物16の値とで大きな変化はない。このため、第二部材14の第二抵抗値Rには、「’」を付さずに説明する。
【0114】
そして、処理部100は、記憶部110から(式1)で示される関係式、及び基準品で取得した第二部材14の基準抵抗値RB0を記憶部110から読み出す(ステップSB16)。
【0115】
次に、処理部100は、取得した第一抵抗値RA6’及び第二抵抗値RB6と、記憶部110に記憶された情報が示す関係式((式1)参照)及び第二部材14の基準抵抗値RB0とを用いて、接合部18の基準抵抗値RA0’を演算する為の演算式を作成する(ステップSB18)。
【0116】
演算式の作成について説明する。
【0117】
基準品において、第二部材14の第二抵抗値Rと接合部18の第一抵抗値Rとのそれぞれは、温度の上昇に伴って大きくなる。このため、第二部材14の第二抵抗値Rと接合部18の第一抵抗値Rとの間には所定の関係があり、第二部材14の第二抵抗値Rが大きくなるに従って接合部18の第一抵抗値Rも大きくなる(図6参照)。
【0118】
この関係は、前述した回帰直線200(図6参照)によって表すことができる。この関係を示す回帰直線200の傾きCは、対象物16の個々の状態に応じて変化する。このため、基準品と対象物16とでは、前述の関係を示す回帰直線200の傾きCが異なることがある。
【0119】
図9は、接合部18の基準抵抗値RA0を求める様子を示す説明図であり、図9に示すように、本実施形態では、対象物16における第二部材14の第二抵抗値Rと接合部18の第一抵抗値Rとの間の関係を示す仮想直線210を想定する。そして、この仮想直線210を表す式を(式2)に示す。
【0120】
’=C×(C×R+C) ・・・ (式2)
【0121】
’は、対象物16で測定される接合部18の抵抗値を示す。
は、仮想直線210を示す式を、回帰直線200を示す関係式に基づいて修正するための係数を示す。
は、(式1)の関係式が示す回帰直線200の傾きを示す。
は、組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の抵抗値を示す。
は、(式1)の関係式が示す回帰直線200の切片を示す。
【0122】
この(式2)のRに、ステップSB14で取得したRB6を代入するとともに、R’にステップSB12で取得したRA6’を代入して(式3)を得る。
【0123】
A6’=C×(C×RB6+C) ・・・ (式3)
【0124】
また、(式2)のRに、ステップSB16で取得したRB0を代入するとともに、R’を、対象物16における接合部18の基準抵抗値を示すRA0’とした(式4)を得る。
A0’=C×(C×RB0+C) ・・・ (式4)
そして、(式3)から(式5)を得る。
【0125】
=RA6’/(C×RB6+C) ・・・ (式5)
【0126】
また、(式4)から(式6)を得る。
【0127】
=RA0’/(C×RB0+C) ・・・ (式6)
【0128】
次に、(式5)と(式6)とから接合部18の基準抵抗値RA0’を演算する為の演算式(式7)を得る。
【0129】
【数1】
【0130】
(式3)から(式7)において、
’は、対象物16で測定される接合部18の抵抗値を示す。
は、仮想直線210を示す式を、回帰直線200を示す関係式に基づいて修正するための係数を示す。
は、(式1)の関係式が示す回帰直線200の傾きを示す。
は、組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の抵抗値を示す。
は、(式1)の関係式が示す回帰直線200の切片を示す。
B6は、ステップSB14で取得した第二抵抗値である。
A6’は、ステップSB12で取得した第一抵抗値である。
B0は、記憶部110から読み出した第二部材14の基準抵抗値である。
【0131】
そして、処理部100は、取得した第一抵抗値RA6’及び第二抵抗値RB6と、記憶部110に記憶された基準抵抗値RB0とを用いるとともに、演算式(式7)に基づいて基準抵抗値RA0’を取得する(ステップSB20)。
【0132】
また、処理部100は、取得した接合部18の基準抵抗値RA0’を、表示部114に表示したり、報知部116から報知したり、通信部120を介して外部装置へ送信したりすることで、測定結果を出力し(ステップSB22)、メインルーチンへ戻る。
【0133】
(作用及び効果)
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0134】
本実施形態に係る抵抗測定装置10は、第一部材12と第二部材14とが互いに接合された対象物16において予め定められた基準温度tでの接合部18の基準抵抗値RA0’を測定する抵抗測定装置10である。抵抗測定装置10は、第一部材12及び第二部材14にそれぞれ接触する組をなす第一接触部22、24と、第二部材14における異なる箇所にそれぞれ接触する組をなす第二接触部26、28とを備える。抵抗測定装置10は、対象物16の基準となる基準品において予め取得した組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示す情報((式1)参照)並びに基準温度tの基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の基準抵抗値RB0を記憶する記憶部110を備える。
【0135】
また、抵抗測定装置10は、対象物16において組をなす第一接触部22、24間の第一抵抗値Rを取得するとともに組をなす第二接触部26、28間の第二抵抗値Rを取得する抵抗値取得部130を備える。抵抗測定装置10は、抵抗値取得部130で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと記憶部110に記憶された情報((式1)参照)及び第二部材14の基準抵抗値RB0とに基づいて、対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0’を取得する基準抵抗値取得部132を備える。
【0136】
本実施形態に係る抵抗測定方法は、第一部材12と第二部材14とが互いに接合された対象物16において予め定められた基準温度tでの接合部18の基準抵抗値RA0’を測定する抵抗測定方法である。抵抗測定方法は、第一部材12及び第二部材14にそれぞれ接触する組をなす第一接触部22、24と、第二部材14における異なる箇所にそれぞれ接触する組をなす第二接触部26、28と、対象物16の基準となる基準品において予め取得した組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示す情報((式1)参照)並びに基準温度tの基準品において予め取得した組をなす第二接触部26、28間における第二部材14の基準抵抗値RB0を記憶する記憶部110と、を備えた抵抗測定装置10が実行する抵抗測定方法である。
【0137】
また、抵抗測定方法は、対象物16において組をなす第一接触部22、24間の第一抵抗値Rを取得するとともに組をなす第二接触部26、28間の第二抵抗値Rを取得する抵抗値取得工程(ステップSB12、SB14)を備える。抵抗測定方法は、抵抗値取得工程(ステップSB12、SB14)で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと記憶部110に記憶された情報((式1)参照)及び第二部材14の基準抵抗値RB0とに基づいて、対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0を取得する基準抵抗値取得工程(ステップSB18、SB20)を備える。
【0138】
これらの構成において、記憶部110に記憶された情報((式1)参照)は、基準品で取得した組をなす第一接触部22、24間の第一抵抗値Rと、組をなす第二接触部26、28間の第二抵抗値Rとの関係を示す。また、記憶部110に記憶された組をなす第二接触部26、28間の基準抵抗値RB0は、基準温度tの基準品において取得した第二部材14の基準抵抗値RA0’を示す。
【0139】
このため、基準品において、第二抵抗値Rが基準温度tで第二部材14の基準抵抗値RB0となるとともに、組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を得ることできる。この関係としては、例えば組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示すグラフ、データ群、データテーブル、又は関係式などが挙げられる。
【0140】
本実施形態において、前述した関係は、第一抵抗値Rと第二抵抗値Rとの関係を示す回帰直線200の関係式((式1)参照)で構成される。
【0141】
ここで、この関係は、対象物16の接合部18の状態に応じて変化することが知られている。このため、基準品と対象物16とでは、前述した関係にずれが生ずることがあり得る。
【0142】
そこで、基準品で得た関係と、対象物16で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rの関係とに基づいて、基準品と対象物16との間で生じた関係のずれを修正することで、当該対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0’の取得が可能となる。
【0143】
本実施形態では、基準品の第一抵抗値Rと第二抵抗値Rとの関係を示す回帰直線200の関係式((式1)参照)と、対象物16における第二部材14の第二抵抗値Rと接合部18の第一抵抗値Rとの間の関係を示す仮想直線210の式と、を用いて、基準品と対象物16との間で生じた関係の相違が取り除かれた演算式(式7)を作成する。
【0144】
そして、本実施形態では、基準品で取得した情報((式1)参照)及び第二部材14の基準抵抗値RB0を予め準備して記憶部110に記憶しておく。これにより、対象物16から取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rに基づいて接合部18の基準抵抗値RA0’を取得することができる。
【0145】
このため、第二部材14の抵抗値から取得した温度に基づいて接合部18の抵抗値を補正して基準抵抗値RA0を取得する場合と比較して、第二部材14の抵抗値と温度との関係を求めるために必要であった第二部材14の抵抗温度係数が不要となる。
【0146】
したがって、抵抗温度係数が不明であっても基準温度tでの接合部18の基準抵抗値RA0’が取得可能となる。
【0147】
特に、第二部材14が、アルミニウムを主成分とする例えばアルミニウム合金で構成された場合、抵抗温度係数の特定が困難となる。これに対して、本実施形態によれば、第二部材14がアルミニウム合金で構成され、抵抗温度係数の特定が困難な場合であっても、基準温度tでの接合部18の基準抵抗値RA0’が取得可能となる。これにより、対象物16の各部材12、14を構成する材料の選択肢が広がるので、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0148】
また、本実施形態の抵抗測定装置10において、基準抵抗値取得部132は、抵抗値取得部130で取得した第一抵抗値R及び第二抵抗値Rと、記憶部110に記憶された情報((式1)参照)及び第二部材14の基準抵抗値RB0とに基づき、接合部18の基準抵抗値RA0’を演算する為の演算式(式7)を用いて対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0’を取得する。
【0149】
この構成にあっては、演算式(式7)を用いた演算によって対象物16における接合部18の基準抵抗値RA0’を取得することができる。
【0150】
このため、グラフ、データ群、又はデータテーブルを用いて接合部18の基準抵抗値RA0を取得する場合と比較して、記憶部110で使用する記憶容量を抑えることが可能となる。
【0151】
そして、本実施形態の抵抗測定方法は、基準温度tの基準品において第二部材14の基準抵抗値RB0を取得する第二部材基準抵抗値取得工程(ステップS14)を備える。抵抗測定方法は、基準品の温度を変化させ、組をなす第一接触部22、24間の抵抗値及び組をなす第二接触部26、28間の抵抗値を異なる温度で複数取得する複数取得工程(ステップS18~S28)を備える。抵抗測定方法は、複数取得工程(ステップS18~S28)で取得した取得結果に基づいて情報((式1)参照)を取得する情報取得工程(ステップS30)を備える。抵抗測定方法は、第二部材基準抵抗値取得工程(ステップS14)で取得した第二部材14の基準抵抗値RB0、及び情報取得工程(ステップS30)で取得した情報((式1)参照)を記憶部110に記憶する記憶工程(ステップS16、S32)を備える。
【0152】
この構成にあっては、当該抵抗測定装置10において、記憶部110に記憶される基準品における第二部材14の基準抵抗値RB0及び情報((式1)参照)を予め取得することができる。このため、基準品における第二部材14の基準抵抗値RB0及び情報((式1)参照)を他の装置で取得する場合と比較して、装置間で生じ得る測定誤差に起因した影響を抑制することができる。
【0153】
また、本実施形態の抵抗測定方法は、前述した情報((式1)参照)は、予め取得した組をなす第一接触部22、24間の抵抗値と予め取得した組をなす第二接触部26、28間の抵抗値との関係を示す関係式(式1)である。
【0154】
この構成にあっては、前述した情報が、グラフ、データ群、又はデータテーブルで構成される場合と比較して、記憶部110で使用する記憶容量を抑えることが可能となる。
【0155】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0156】
A0’ 基準抵抗値
第二抵抗値
B0 基準抵抗値
10 抵抗測定装置
12 第一部材
14 第二部材
16 対象物
18 接合部
22、24 第一接触部
26、28 第二接触部
50 第一測定部
52 第二測定部
100 処理部
110 記憶部
130 抵抗値取得部
132 基準抵抗値取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9