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特開2024-58366車両用電池ケースおよび車両用電池ケースのアッパケース
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  • 特開-車両用電池ケースおよび車両用電池ケースのアッパケース 図1
  • 特開-車両用電池ケースおよび車両用電池ケースのアッパケース 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058366
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】車両用電池ケースおよび車両用電池ケースのアッパケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20240418BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20240418BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240418BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240418BHJP
   H01M 50/276 20210101ALI20240418BHJP
   H01M 50/278 20210101ALI20240418BHJP
   H01M 50/282 20210101ALI20240418BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240418BHJP
   H01G 2/22 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M50/249
H01M50/233
H01M10/625
H01M10/658
H01M50/276
H01M50/278
H01M50/282
H01G11/78
H01G2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165678
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慶
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋明
【テーマコード(参考)】
5E078
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AA13
5E078AB01
5E078HA05
5E078HA12
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE04
5H040AA27
5H040AA31
5H040AA35
5H040AS07
5H040AY05
5H040AY08
5H040LL01
5H040LL06
5H040LL10
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】軽量であり、かつ、電磁波シールド性能と遮蔽性能とが付与された車両用電池ケース1を提供すること。
【解決手段】
内部に動力用電池セル100を収容する電池ケースであって、
前記動力用電池セル100を上方から覆うアッパケース2と、前記動力用電池セル100を下方から覆うロアケース3と、を具備し、
前記アッパケース2は、樹脂製の基体20と、前記基体20の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層21と、を有する車両用電池ケース1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に動力用電池セルを収容する電池ケースであって、
前記動力用電池セルを上方から覆うアッパケースと、前記動力用電池セルを下方から覆うロアケースと、を具備し、
前記アッパケースは、樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する車両用電池ケース。
【請求項2】
内部に動力用電池セルを収容する車両用電池ケースの一部を構成し、前記動力用電池セルを上方から覆うアッパケースであって、
樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する車両用電池ケースのアッパケース。
【請求項3】
前記金属めっき層の厚さは10~60μmの範囲内である請求項2に記載の車両用電池ケースのアッパケース。
【請求項4】
前記金属めっき層は、前記基体の表面に形成された銅めっき層と、前記銅めっき層の表面に形成されたニッケルめっき層と、前記ニッケルめっき層の表面に形成されたクロムめっき層と、を有する請求項2に記載の車両用電池ケースのアッパケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される動力用電池セルを収容するための車両用電池ケース、および、当該車両用電池ケースの一部を構成するアッパケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車の動力源として、高容量、かつ、大電流での充放電が可能な動力用電池セルが用いられている。
【0003】
このうち、リチウムイオン二次電池に代表されるエネルギ密度の高い動力用電池セルは、軽量化が可能であり、燃費向上を目指す車両用の動力用電池セルとして好適とされている。
この種の動力用電池セルは一般に、安全のために、車両用電池ケースに収容される。
【0004】
動力用電池セルは、一般に、強い電磁波を放射する。当該電磁波は車両に搭載されるその他の電子機器に悪影響を及ぼし、ノイズや誤動作の原因となり得る。
このため車両用電池ケースには、電磁波シールド性能、すなわち、動力用電池セルが発する電磁波を遮断する性能が要求されている。
【0005】
またエネルギ密度の高い動力用電池セルは、異常発熱する場合があることが知られており、当該異常発熱に因る不具合を回避するために、車両用電池ケースには、遮蔽性能、すなわち、動力用電池セルを外界から遮蔽する性能も要求されている。
【0006】
従来、上記した電磁波シールド性能と遮蔽性能とを車両用電池ケースに付与する目的で、車両用電池ケースの材料として鉄やアルミニウム等の金属が選択されている。
【0007】
しかし金属の比重は比較的大きいため、金属製の車両用電池ケースの質量は大きい。したがって、この種の金属製の車両用電池ケースは、軽量化および低燃費化が要求される車両用電池ケースとしては好ましくない。
【0008】
特開2008-269954号公報には、特に低周波の電磁波低減のため、樹脂本体の内側表面を金属層で被覆された導電性編地で覆った車両用電池ケースが提案されている。
当該車両用電池ケースは、その一部が樹脂製であるために金属製の車両用電池ケースに比べて軽量化され、かつ、導電性編地に因る電磁波シールド性が付与されたものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-269954
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記した特開2008-269954号公報に紹介されている車両用電池ケースは、編地が金属層で覆われたものであり、当該編地の隙間には金属層が形成されていない。このため当該車両用電池ケースは、動力用電池セルを外界から遮蔽する機能に乏しく、上記した動力用電池セルの過剰な温度上昇には十分に対応できない虞がある。
【0011】
このため、依然として、電磁波シールド性能と遮蔽性能とを有する車両用電池ケースが望まれている事情がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量であり、かつ、電磁波シールド性能と遮蔽性能とが付与された車両用電池ケースを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の車両用電池ケースは、
内部に動力用電池セルを収容する電池ケースであって、
前記動力用電池セルを上方から覆うアッパケースと、前記動力用電池セルを下方から覆うロアケースと、を具備し、
前記アッパケースは、樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する車両用電池ケースである。
【0014】
また、上記課題を解決する本発明のアッパケースは、
内部に動力用電池セルを収容する車両用電池ケースの一部を構成し、前記動力用電池セルを上方から覆うアッパケースであって、
樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する車両用電池ケースのアッパケースである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用電池ケースおよびアッパケースは、軽量であり、かつ、電磁波シールド性能と遮蔽性能とが付与されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】動力用電池セルを収容している実施例1の車両用電池ケースおよび実施例1のアッパケースを模式的に表す説明図である。
図2】実施例1のアッパケースを厚さ方向に切断した様子を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両用電池ケースは、
内部に電池セルを収容する電池ケースであって、
前記電池セルを上方から覆うアッパケースと、前記電池セルを下方から覆うロアケースと、具備し、
前記アッパケースは、樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する車両用電池ケースである。
また、本発明の車両用電池ケースのアッパケースは、
内部に電池セルを収容する車両用電池ケースの一部を構成し、前記電池セルを上方から覆うアッパケースであって、
樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する電池ケースのアッパケースである。
【0018】
以下、必要に応じて、本発明の車両用電池ケースのアッパケースを、単に、本発明のアッパケース、実施例のアッパケース等と称する場合がある。
【0019】
本発明の電池ケースは、そのアッパケースの一部が樹脂製の基体で構成されていることにより、金属製の樹脂ケースに比べて軽量化されたものといい得る。
同様に、本発明のアッパケースは、その一部が樹脂製の基体で構成されていることにより、金属製のアッパケースに比べて軽量化されたものといい得る。
【0020】
本発明の車両用電池ケースにおけるアッパケースは、基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層により、電磁波を遮断する。これにより本発明の車両用電池ケースにはアッパケースに由来する電磁波シールド性能が付与される。
同様に、本発明のアッパケースは、基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層により、電磁波を遮断する。これにより本発明のアッパケースには電磁波シールド性能が付与される。
【0021】
さらに、本発明の車両用電池ケースにおけるアッパケースは、基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層を有する。当該金属めっき層の存在により、本発明の車両用電池ケースにおけるアッパケースは、車両用電池ケースに収容された動力用電池セルを外界から遮蔽する。したがって、本発明の車両用電池ケースは遮蔽性能の付与されたものといい得る。
同様に、本発明のアッパケースによると、基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層により、本発明のアッパケースを含む車両用電池ケースに収容された動力用電池セルを外界から遮蔽する。したがって、本発明のアッパケースは遮蔽性能の付与されたものといい得る。
【0022】
以上のように、本発明の車両用電池ケースおよび本発明の車両用電池ケースのアッパケースは、軽量であり、かつ、電磁波シールド性能と遮蔽性能とが付与されたものといい得る。
【0023】
以下、本発明の車両用電池ケースおよび本発明のアッパケースを、その構成要素毎に説明する。以下、本発明の車両用電池ケースにおけるアッパケースに関する説明については、適宜、本発明のアッパケースに関する説明と読み替えることができる。
【0024】
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施形態中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0025】
本発明の車両用電池ケースは、内部に動力用電池セルを収容する。
本発明の車両用電池ケースに収容される動力用電池セルは、リチウムイオン二次電池に代表されるエネルギ密度の高いものであるのが好適であるが、ニッケル水素二次電池や固体電解質二次電池に代表される異常発熱し難いとされている二次電池や、キャパシタ等を収容することも可能である。
【0026】
本発明の車両用電池ケースは、アッパケースとロアケースとを具備する。このうちアッパケースは、車両用電池ケースのうち、上記した動力用電池セルを上方から覆う部分である。ロアケースは、車両用電池ケースのうち、上記した動力用電池セルを下方から覆う部分である。
【0027】
アッパケースおよびロアケースは、互いに組み合わされて内部に動力用電池セルを収容するための収容空間を形成するものであれば良い。
【0028】
例えばロアケースは、上方に開口する箱状をなしても良い。この場合アッパケースは、ロアケースの開口を閉じ得る形状であれば良く、例えば、下方に開口する箱状をなしても良いし、蓋状をなしても良い。
また、例えばアッパケースが下方に開口する箱状をなす場合、ロアケースはアッパケースの開口を閉じる蓋状をなしても良い。
【0029】
本発明の車両用電池ケースにおいて、アッパケースは、樹脂製の基体と、前記基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う金属めっき層と、を有する。
【0030】
基体の材料は、金属めっき可能であり、かつ、車両用電池ケースに要求される各種特性を満足し得る樹脂材料を適宜適切に選択すれば良い。車両用電池ケースに要求される各種特性とは、具体的には、剛性、電磁波透過性、耐熱性、動力用電池セルの電解質に含まれる溶媒に対する耐性等である。
【0031】
動力用電池セルがリチウムイオン二次電池である場合、具体的な樹脂材料として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PPとポリフェニレンエーテル(PPE)のアロイ、ポリアミド(PA)とPPEのアロイ等を例示できる。また、基体用の樹脂材料として、各種の樹脂材料にグラスファイバーやカーボンファイバーが配合された繊維強化樹脂(GFRP、CFRP)を用いても良い。
【0032】
基体の厚さは、車両用電池ケースに要求される剛性等に応じて適宜設定すれば良く、特に限定しないが、その表面に金属めっき層を形成する都合上、当該金属めっき層よりも厚いことを必須とする。
基体の厚さは、1mm以上であるのが好ましく、2mm以上であるのがより好ましく、3mm以上であるのが特に好ましい。
【0033】
金属めっき層は、基体の外表面と内表面との少なくとも一方を覆う。当該金属層を基体の外表面および/または内表面に形成する方法としては、既知の無電解めっき法を用いれば良い。
【0034】
金属めっき層に使用可能な金属としては、銅、ニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、チタン、銀等を例示できるが、これに限定されない。
金属めっき層は、一種の金属層で構成される単層構造をなしても良いし、複数の金属層で構成される積層構造をなしても良い。
【0035】
金属めっき層は、基体の外表面すなわち基体のうち動力用電池セルとは逆側の面に形成されても良いし、基体の内表面すなわち基体のうち動力用電池セル側の面に形成されても良いし、当該外表面と内表面との両方に形成されても良い。勿論、金属めっき層は、基体の表面全面に形成されても良い。
【0036】
金属めっき層の厚さは特に限定しないが、金属めっき層が薄過ぎると電磁波シールド性能や遮蔽性能が不足する虞があり、一方、金属めっき層が厚過ぎるとコストが嵩む。このため金属めっき層の厚さにも好ましい範囲が存在する。
具体的には、金属めっき層の厚さは、5μm~100μmの範囲内であるのが好ましく、10μm~60μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0037】
本発明の車両用電池ケースは、アッパケースおよびロアケースを具備する。本発明の車両用電池ケースは、アッパケースに金属めっき層を有する都合上、ロアケースは、動力用電池セルの高さ方向において当該動力用電池セルの大部分を収容することが好ましい。そして、当該ロアケースは、動力用電池セルと電気的な接続をしない材料で構成されるのが好ましく、樹脂製であるのが望ましい。
【0038】
ロアケースに使用可能な樹脂材料は、上記したアッパケースにおける基体に使用可能な樹脂材料と同様である。
また、ロアケースの好適な厚さは、アッパケースにおける基体の好適な厚さと同様である。
【0039】
本発明の車両用電池ケースにおけるアッパケースとロアケースとを互いに固定する方法としては如何なる方法を用いても良い。
【0040】
例えばアッパケースとロアケースとに相補的な嵌合構造を設け、アッパケースとロアケースとを互いに嵌合させることにより、動力用電池セルを収容したアッパケースとロアケースとを互いに固定しても良い。
【0041】
また例えば、アッパケースの開口周縁部とロアケースの開口周縁部とに各々フランジ部を設けて、当該フランジ部をボルト等の締結用部材によって締結することにより、動力用電池セルを収容したアッパケースとロアケースとを互いに固定しても良い。
【0042】
更には、アッパケースとロアケースとを互いに近づく方向に挟み込む締結用部材、例えば金属バンド等を用いて、動力用電池セルを収容したアッパケースとロアケースとを互いに固定しても良い。
【0043】
上記した各場合において、アッパケースとロアケースとの間にシリコンゴム等のシール材を介在させるのも好適である。
【0044】
以下、具体例を挙げて本発明の車両用電池ケースおよび本発明のアッパケースを説明する。
【0045】
(実施例1)
実施例1の車両用電池ケースは、EVに搭載されるものであり、その内部にEV用の動力用電池セルとしてのリチウムイオン二次電池を収容保持する。
図1は動力用電池セルを収容している実施例1の車両用電池ケースおよび実施例1のアッパケースを模式的に表す説明図である。図2は実施例1のアッパケースを厚さ方向に切断した様子を表す説明図である。
以下、上、下とは鉛直方向における上、下を指す。
【0046】
実施例1の車両用電池ケース1は、図略の車両フロアパネルを挟んで車両室内の下方に配置されるものである。
【0047】
図1に示すように、実施例1の車両用電池ケース1は、アッパケース2およびロアケース3を具備する。また、当該車両用電池ケース1は、さらに、アッパケース2とロアケース3との間に介在するシール材(図略)と、動力用電池セル100を収容したアッパケース2とロアケース3とを互いに固定する締結用部材(図略)と、を有する。
【0048】
ロアケース3は、ABS樹脂製であり、上方に開口する箱状をなす。ロアケース3における開口周縁部には、その全周に亘って、開口の径方向外方に向けて突起するフランジ部35が設けられている。
【0049】
アッパケース2は下方に開口する箱状をなす。アッパケース2における開口周縁部には、その全周に亘って、開口の径方向外方に向けて突起するフランジ部25が設けられている。当該アッパケース2は本発明のアッパケースである。
【0050】
アッパケース2は、基体20と、当該基体20の表面全面を覆う金属めっき層21と、を有する。基体20はABS樹脂製である。
【0051】
図2に示すように、金属めっき層21は、無電解めっきにより基体20の表面に形成されている。図2に示すように、金属めっき層21は、基体20の表面に形成された銅めっき層と、当該銅めっき層の表面に形成された3層のニッケルめっき層と、当該ニッケルめっき層の表面に形成されたクロムめっき層と、からなる多層構造をなす。
クロムめっき層は金属めっき層21のうち最外面を構成する層といえ、銅めっき層は金属めっき層21の最内面を構成する層といえる。
【0052】
実施例1の車両用電池ケース1のアッパケース2において、基体20の厚さは3mmであり、金属めっき層21の厚さは60μm程度であった。
金属めっき層21のうち銅めっき層の厚さは30μm程度であり、ニッケルめっき層の厚さは30μm程度であり、クロムめっき層の厚さは1μm程度であった。なお、ここでいうニッケルめっき層の厚さとは3層のニッケルめっき層の厚さの合計である。
【0053】
図1に示すように、実施例1の車両用電池ケース1におけるロアケース3は、動力用電池セル100における缶の大部分を、その底部100b側から収容する。アッパケース2は、主として、当該動力用電池セル100における端子部分と缶の一部とをその頂部100t側から収容する。
より具体的には、上下方向におけるアッパケース2の深さは、同じく上下方向におけるロアケース3の深さに比べて低い。
【0054】
実施例1の車両用電池ケース1において、アッパケース2とロアケース3とは、フランジ部25、35を対面させつつ、重ねられ、図略の締結用部材により一体化されている。
動力用電池セル100は、アッパケース2の内部とロアケース3の内部とにより区画形成された内部空間10に収容される。動力用電池セル100には図略のリード部が接続され、当該リード部は外部に延出している。
【0055】
参考までに、図示しないが、動力用電池セル100における缶108の内部には、正極、負極、セパレータおよび電解液等の電池構成要素が収容されている。これら電池構成要素は缶108の内部に密閉されている。
【0056】
実施例1の車両用電池ケース1は、ロアケース3の全体と、アッパケース2の一部である基体20とが樹脂製であるために軽量である。
また、実施例1の車両用電池ケース1におけるアッパケース2は、基体20の表面を覆う金属めっき層21を有する。これによりアッパケース2は、動力用電池セル100の上側、すなわち、動力用電池セル100の車両室内側から、当該動力用電池セル100が発する電磁波を遮断する。つまり実施例1の車両用電池ケース1にはアッパケース2に由来する電磁波シールド性能が付与される。
これにより、実施例1の車両用電池ケース1によると、動力用電池セル100が発する電磁波に起因し車両室内に搭載されている各種電子機器に生じる悪影響が、抑制または軽減される。
【0057】
さらに、実施例1の車両用電池ケース1におけるアッパケース2は、基体20の表面を覆う金属めっき層21を有する。実施例1の車両用電池ケース1は、当該金属めっき層21によって、その内部と外界とを区画し、その内部に収容された動力用電池セル100を外界から遮蔽する。
上記したように、アッパケース2は車両用電池ケース1よりも上側すなわち車両室内側にある。このため、実施例の車両用電池ケース1はその内部空間10に収容された動力用電池セル100を車両室内から遮蔽するともいい得る。
【0058】
これにより、動力用電池セル100が異常発熱した場合にも、当該動力用電池セル100が車両室内から遮蔽され、当該異常発熱に因る不具合を回避することができる。つまり、実施例1の車両用電池ケース1は遮蔽性能を有するといい得る。
【0059】
以上のように、実施例1の車両用電池ケース1および実施例1の車両用電池ケース1のアッパケース2は、軽量であり、かつ、電磁波シールド性能と遮蔽性能とが付与されたものといい得る。
【0060】
(比較例)
比較例のアッパケースとして、実施例1のアッパケース2における基体20と同じものを準備した。つまり比較例のアッパケースは、金属めっき層21を有さず基体20のみからなること以外は実施例1のアッパケース2と同じものといい得る。
【0061】
〔耐火試験〕
実施例1のアッパケース2および比較例のアッパケースを、燃焼機に入れ、大気下でバーナーを用いて同条件で炙った。
その結果、比較例のアッパケースは変形して穴が開いたが、実施例1のアッパケース2には変形は認められなかった。
【0062】
この結果から、実施例1のアッパケース2は、耐火性を有し、実施例1の車両用電池ケース1の内部空間10に収容された動力用電池セル100を外界から遮蔽し得ることがわかる。
【0063】
上記したように、実施例1のアッパケース2は耐火試験によっても変形しなかった。その理由は定かではないが、実施例のアッパケース2では、基体20の燃焼が抑制されたのではないかと推測される。
つまり、実施例1のアッパケース2における基体20は金属めっき層21で覆われているために、当該基体20には大気中の酸素が十分に供給されない。これにより、基体20の燃焼が抑制され、アッパケース2全体としての変形が抑制されたと考えられる。
【0064】
この結果から、実施例1のアッパケース2によると、例え動力用電池セル100が激しく異常発熱し発火するような場合にも、アッパケース2自体は延焼し難く、ひいては、動力用電池セル100自体から車両室内を保護することが可能であると考えられる。
【0065】
上記の耐火試験の結果をふまえると、金属めっき層21は基体20の外表面と内表面との両方を覆うのが好適であり、基体20全面を覆うのがより好適といい得る。
【0066】
ところで、実施例1の車両用電池ケース1におけるロアケース3は金属めっき層21を有しない。これは、金属めっき層21が動力用電池セル100に対する導体として機能することを回避または抑制するためである。
【0067】
この視点から、本発明のアッパケース2における金属めっき層21は、基体20の外表面を覆い内表面は覆わないのが好適ともいい得る。
【0068】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係で示される技術思想に止まらず、各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0069】
1:車両用電池ケース
2:アッパケース
3:ロアケース
20:基体
21:金属めっき層
100:動力用電池セル
図1
図2