(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058369
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電池温度調整装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/24 20190101AFI20240418BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240418BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20240418BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240418BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240418BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240418BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240418BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240418BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240418BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L50/60
B60L58/18
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/633
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165682
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
【テーマコード(参考)】
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125BC28
5H125CA08
5H125EE49
(57)【要約】
【課題】電池を効率よく温度調整する。
【解決手段】電池温度調整装置は、車両のモータに電力を供給する温度特性が異なる複数の電池と、複数の電池の中から特定の条件に応じて決定される電池を温度調整する制御部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のモータに電力を供給する温度特性が異なる複数の電池と、
複数の前記電池の中から特定の条件に応じて決定される電池を温度調整する制御部と、
を備える電池温度調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両の走行モードに応じて決定される電池を温度調整する
請求項1に記載の電池温度調整装置。
【請求項3】
前記走行モードには、第1距離未満を走行する低距離モード、前記第1距離以上で第2距離未満を走行する中距離モードが含まれる
請求項2に記載の電池温度調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記低距離モードにおいて動作温度範囲が低い電池を温度調整し、前記中距離モードにおいて動作温度範囲が高い電池を温度調整する
請求項3に記載の電池温度調整装置。
【請求項5】
複数の前記電池は、異なる前記モータにそれぞれ電力を供給する
請求項1又は請求項2に記載の電池温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電池を温度調整する電池温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電池の中から優先して温度調整すべき電池を決定し、決定された電池を他の電池よりも優先して温度調整する電池温度調整装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の中には、温度特性が異なる電池を備えることがある。このような車両において、電池を効率よく温度調整することが望まれている。
【0005】
そこで本発明では、電池を効率よく温度調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る電池温度調整装置は、車両のモータに電力を供給する温度特性が異なる複数の電池と、複数の電池の中から特定の条件に応じて決定される電池を温度調整する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池を効率よく温度調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、電池温度調整装置の構成を説明する図である。
【
図3】
図3は、温度調整制御処理のフローチャートである。
【
図4】
図4は、低距離モード時の流路を説明する図である。
【
図5】
図5は、中距離モード時の流路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.車両1の構成>
図1は、車両1の構成を示した図である。
図1に示すように、車両1は、第1モータ2、第2モータ3、第1二次電池4、第2二次電池5、第1インバータ6、第2インバータ7、前輪8、後輪9及び電池温度調整装置10を備える電気自動車である。
【0010】
第1モータ2及び第2モータ3は、車両1を走行させる動力源であり、例えば、三相交流モータである。
第1モータ2は、第1二次電池4から第1インバータ6を介して供給される電力によって駆動力を発生させ、その駆動力を前輪8に伝達する。
第2モータ3は、第2二次電池5から第2インバータ7を介して供給される電力によって駆動力を発生させ、その駆動力を後輪9に伝達する。
車両1は、第1モータ2から伝達された駆動力によって前輪8が回転し、また、第2モータ3から伝達された駆動力によって後輪9が回転することで走行する。
【0011】
第1モータ2及び第2モータ3は、回生運転を行うことによって電気(電力)を生成することが可能である。
第1モータ2の回生運転によって生成された電気は、第1インバータ6を介して第1二次電池4に供給される。これにより、第1二次電池4が充電される。
第2モータ3の回生運転によって生成された電気は、第2インバータ7を介して第2二次電池5に供給される。これにより、第2二次電池5が充電される。
【0012】
第1二次電池4は、例えば正極と負極との間に電解液が配置されるリチウムイオン二次電池である。
第2二次電池5は、例えば正極と負極との間に固体電解質層が配置された全固体二次電池である。
第1二次電池4及び第2二次電池5は、それぞれ複数のセルによって構成されている。
【0013】
第1二次電池4及び第2二次電池5は、互いに温度特性が異なる。ここで「温度特性」とは、温度に対する電池の電圧、内部抵抗等の物理的な特性を示すものである。従って、温度特性が異なる第1二次電池4及び第2二次電池5では、内部抵抗が少なく好適に使用することができる動作温度範囲も異なる。二次電池では、電池の種類によって温度特性が異なることが知られている。
【0014】
第1二次電池4は、例えば-10℃~60℃のように第2二次電池5と比べて動作温度範囲が低い範囲である。
一方、第2二次電池5は、例えば0℃~100℃のように第1二次電池4と比べて動作温度範囲が高い範囲である。
従って、第1二次電池4は、第2二次電池5と比べて低い温度で使用可能となる一方、第2二次電池5と比べて高い温度で使用不可又は使用困難となる。換言すると、第2二次電池5は、第1二次電池4と比べて低い温度範囲で使用不可又は使用困難となる一方、第1二次電池4と比べて高い温度範囲で使用可能となる。
【0015】
また、第2二次電池5は、第1二次電池4に比べて、大容量及び高出力を可能にしている。これに伴い、第2モータ3は、第1モータ2と比べて高出力モータであってもよい。
【0016】
第1インバータ6は、第1二次電池4から供給される直流電流を三相の交流電流に変換して第1モータ2に供給する。また、第1モータ2が回生運転を行う場合、第1インバータ6は、第1モータ2から供給される交流電流を直流電流に変換して第1二次電池4に供給する。
【0017】
第2インバータ7は、第2二次電池5から供給される直流電流を三相の交流電流に変換して第2モータ3に供給する。また、第2モータ3が回生運転を行う場合、第2インバータ7は、第2モータ3から供給される交流電流を直流電流に変換して第2二次電池5に供給する。
【0018】
また、第1二次電池4及び第2二次電池5は、不図示の外部装置からの電力供給によっても充電が可能であってもよい。
【0019】
電池温度調整装置10は、第1二次電池4及び第2二次電池5の温度調整を行う。なお、以下では、電池温度調整装置10について詳しく説明する。
【0020】
<2.電池温度調整装置の構成>
図2は、電池温度調整装置10の構成を説明する図である。なお、
図2において破線は、信号の流れを示すものである。
図2に示すように、電池温度調整装置10は、熱媒体流路11、四方向弁12、第1三方向弁13、第2三方向弁14、ポンプ15、ラジエータ16、第1熱交換器17、第2熱交換器18、ヒータ19、熱媒体温度計20、制御部21を備える。また、電池温度調整装置10は、第1二次電池4の各セルの温度をそれぞれ測定する温度計4a、及び、第2二次電池5の各セルの温度をそれぞれ測定する温度計5aを含む。
【0021】
熱媒体流路11は、熱媒体である冷却水が流通する流路であり、熱媒体流路11a~熱媒体流路11kを含む。なお、熱媒体流路11a~熱媒体流路11kについて、詳しくは後述する。
【0022】
四方向弁12は、Aポート、Bポート、Cポート及びDポートの4個のポートを有し、制御部21の制御に基づいて連通させるポートを切り替える電子制御弁である。具体的には、四方向弁12は、AポートとBポートとを連通させるとともに、CポートとDポートとを連通させることが可能である。また、四方向弁12は、AポートとDポートとを連通させるとともに、BポートとCポートとを連通させることが可能である。
【0023】
第1三方向弁13は、Eポート、Fポート及びGポートの3個のポートを有し、制御部21の制御に基づいて連通させるポートを切り替える電子制御弁である。具体的には、第1三方向弁13は、EポートとGポートとを連通させるとともに、Fポートを遮断することが可能である。また、第1三方向弁13は、FポートとGポートとを連通させるとともに、Eポートを遮断することが可能である。
【0024】
第2三方向弁14は、Hポート、Iポート及びJポートの3個のポートを有し、制御部21の制御に基づいて連通させるポートを切り替える電子制御弁である。具体的には、第2三方向弁14は、HポートとJポートとを連通させるとともに、Iポートを遮断することが可能である。また、第2三方向弁14は、IポートとJポートとを連通させるとともに、Hポートを遮断することが可能である。
【0025】
ポンプ15は、制御部21に駆動制御される電動ポンプである。ポンプ15は、駆動することにより熱媒体流路11内で熱媒体を循環させる。
【0026】
ラジエータ16は、熱媒体流路11を流れる熱媒体と外気との間で熱交換を行わせる熱交換器である。ラジエータ16は、熱媒体流路11を流れる熱媒体の熱を外気に伝達させることで熱媒体を冷却する。
【0027】
第1熱交換器17は、第1二次電池4に当接するように配置されており、第1二次電池4と熱媒体流路11を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。すなわち、第1熱交換器17は、熱媒体流路11を流れる熱媒体を用いて第1二次電池4を冷却及び加熱する。
【0028】
第2熱交換器18は、第2二次電池5に当接するように配置されており、第2二次電池5と熱媒体流路11を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。すなわち、第2熱交換器18は、熱媒体流路11を流れる熱媒体を用いて第2二次電池5を冷却及び加熱する。
【0029】
ヒータ19は、制御部21に駆動制御される。ヒータ19は、第1二次電池4から供給される電力により熱媒体流路11を流れる熱媒体を加熱する。
【0030】
制御部21は、ECU(Electronic Control Unit)等のコンピュータを備える。制御部21は、温度計4a、温度計5a及び熱媒体温度計20で測定される温度を取得する。また、制御部21は、四方向弁12、第1三方向弁13及び第2三方向弁14の切り替えを制御したり、ポンプ15の駆動制御、ヒータ19の駆動制御等、電池温度調整装置10を統括制御する。
【0031】
電池温度調整装置10では、ポンプ15の下流側(吐出側)に熱媒体流路11aの一端が接続されている。熱媒体流路11aの他端はラジエータ16の上流端に接続されている。従って、熱媒体流路11aは、ポンプ15とラジエータ16とを接続する。
【0032】
熱媒体流路11aの途中には熱媒体流路11bの一端が接続されており、熱媒体流路11bの他端は第2三方向弁14のHポートに接続されている。従って、熱媒体流路11bは、ポンプ15と第2三方向弁14のHポートとを接続する。
【0033】
ラジエータ16の下流端には熱媒体流路11cの一端が接続されており、熱媒体流路11cの他端は第2三方向弁14のIポートに接続されている。従って、熱媒体流路11cは、ラジエータ16と第2三方向弁14のIポートとを接続する。
【0034】
第2三方向弁14のJポートには熱媒体流路11dの一端が接続されており、熱媒体流路11dの他端には熱媒体流路11e及び熱媒体流路11fの一端が接続されている。従って、熱媒体流路11dは下流側で熱媒体流路11e及び熱媒体流路11fに分岐している。
【0035】
熱媒体流路11dの途中には、上流側から熱媒体温度計20及びヒータ19が順に設けられている。ヒータ19は、熱媒体流路11dを流通する熱媒体を加熱する。熱媒体温度計20は、熱媒体流路11dを流れヒータ19で加熱される前の熱媒体の温度を測定する。
【0036】
熱媒体流路11eの他端には第2熱交換器18の上流端が接続されている。従って、熱媒体流路11eは、熱媒体流路11dを介して第2三方向弁14のJポートと第2熱交換器18とを接続する。
【0037】
熱媒体流路11fの他端は四方向弁12のAポートに接続されている。従って、熱媒体流路11fは、熱媒体流路11dを介して第2三方向弁14のJポートと四方向弁12のAポートとを接続する。
【0038】
第2熱交換器18の下流端には熱媒体流路11gの一端が接続されている。熱媒体流路11gの他端は四方向弁12のCポートに接続されている。従って、熱媒体流路11gは、第2熱交換器18と四方向弁12のCポートとを接続する。
【0039】
四方向弁12のBポートには、熱媒体流路11hの一端が接続されている。熱媒体流路11hの他端には第1熱交換器17の上流端が接続されている。従って、熱媒体流路11hは、四方向弁12のBポートと第1熱交換器17とを接続する。
【0040】
第1熱交換器17の下流端には熱媒体流路11iの一端が接続されている。熱媒体流路11iの他端は第1三方向弁13のEポートに接続されている。従って、熱媒体流路11iは、第1熱交換器17と第1三方向弁13のEポートとを接続する。
【0041】
四方向弁12のDポートには、熱媒体流路11jの一端が接続されている。熱媒体流路11jの他端は第1三方向弁13のFポートに接続されている。従って、熱媒体流路11jは、四方向弁12のDポートと第1三方向弁13のFポートとを接続する。
【0042】
第1三方向弁13のGポートには熱媒体流路11kの一端が接続されている。熱媒体流路11kの他端はポンプ15の上流端(吸込端)に接続されている。従って、熱媒体流路11kは、第1三方向弁13のGポートとポンプ15とを接続する。
このようにして電池温度調整装置10では、熱媒体が流通する流路が形成されている。
【0043】
<3.温度調整制御>
図3は、温度調整制御処理のフローチャートである。
図4は、低距離モード時の流路を説明する図である。
図5は、中距離モード時の流路を説明する図である。
図6は、通常時の流路を説明する図である。
図7は、冷却時の流路を説明する図である。なお、
図4~
図7において、熱媒体が流れる流路を黒塗りで示している。
【0044】
次に、制御部21が実行する温度調整制御処理について説明する。
図3に示すように、制御部21は、温度調整制御処理を実行すると、温度計4aで測定された第1二次電池4の各セルの温度を取得するとともに、温度計5aで測定された第2二次電池5の各セルの温度を取得する。そして、制御部21は、第1二次電池4及び第2二次電池5の各セルの温度のうち最も低い温度を電池最低温度とし、電池最低温度が第1閾値以下であるかを判定する(ステップS1)。
ここで、第1閾値は、第1二次電池4及び第2二次電池5を冷却するか加熱するかを切り替えるための温度であり、例えば10℃に設定されている。
【0045】
そして、制御部21は、電池最低温度が第1閾値以下である場合(ステップS1でYes)、すなわち、第1閾値より温度が低いセルが存在している場合、第1二次電池4及び第2二次電池5の少なくとも一方を加熱する必要があると判定する。
また、制御部21は、電池最低温度が第1閾値より高い場合(ステップS1でNo)、すなわち、全てのセルの温度が第1閾値より高い場合、第1二次電池4及び第2二次電池5の少なくとも一方を冷却する必要があると判定する。
【0046】
電池最低温度が第1閾値以下である場合(ステップS1でYes)、制御部21は、第1二次電池4及び第2二次電池5の加熱を実行するためのスイッチがオンであるかを判定する(ステップS2)。ここで、上記したようにヒータ19は第1二次電池4の電力により加熱を行うため、第1二次電池4の電力を極力消費させたくないユーザがいると考えられる。そこで、車両1では、第1二次電池4及び第2二次電池5の加熱の要否を例えば所定のスイッチに対するユーザ操作で切替可能となっている。
【0047】
スイッチがオンでない場合(ステップS2でNo)、制御部21は温度調整制御処理を終了する。
一方、スイッチがオンである場合(ステップS2でYes)、制御部21は、第2三方向弁14のHポートとJポートとを連通させる(ステップS3)。これにより、第2三方向弁14のIポートが遮断されることになり、ラジエータ16に熱媒体が流通しなくなる。
【0048】
続いて、制御部21は、ポンプ15を駆動させるとともに、ヒータ19を加熱させる(ステップS4)。これにより、熱媒体流路11における所定の流路で熱媒体が循環するようになるとともに、ヒータ19の熱によって熱媒体流路11を流通する熱媒体が加熱される。
【0049】
ここで、本実施形態では、走行モードとして短距離モード及び中距離モードが設けられている。
短距離モードは、車両1が短距離(例えば20km以下)しか走行しないモードである。短距離モードでは、走行時間も短く十分に電池を加熱する時間がないため、動作温度範囲が低い第1二次電池4のみを加熱する。
中距離モードは、車両1が中距離(例えば20km以上100km以下)に亘って走行するモードである。中距離モードでは、走行時間が短距離モードよりも長く電池を加熱する時間がある程度あり、かつ、発熱による電池の温度上昇も見込めることから、動作温度範囲が高い第2二次電池5のみを加熱する。
【0050】
車両1では、例えば走行開始前に所定のスイッチをユーザが操作することにより走行距離を入力させる。そして、制御部21は、入力された走行距離に応じてモードを決定する。
また、制御部21は、例えばカーナビゲーション装置に入力された目的地までの距離に基づいて走行距離を算出し、算出した走行距離に応じてモードを決定するようにしてもよい。
また、制御部21は、車両1の使用状況を学習し、その学習結果に基づいてモードを決定するようにしてもよい。
【0051】
そして、短距離モードが決定された場合(ステップS5でYes)、制御部21は、四方向弁12のAポートとBポートとを連通させるとともに、CポートとDポートとを連通させる。また、制御部21は、第1三方向弁13のEポートとGポートとを連通させる(ステップS6)。
【0052】
これにより、
図4に示すように、電池温度調整装置10では、ポンプ15から吐出された熱媒体が熱媒体流路11b、第2三方向弁14、熱媒体流路11dを通ってヒータ19がある位置まで導かれる。そして、ヒータ19で熱媒体が加熱される。加熱された熱媒体は熱媒体流路11f、四方向弁12、熱媒体流路11hを通って第1熱交換器17に導かれる。第1熱交換器17に導かれた熱媒体は第1二次電池4を加熱する。第1二次電池4を加熱した熱媒体は熱媒体流路11i、第1三方向弁13、熱媒体流路11kを通ってポンプ15に戻される。
【0053】
このように、短距離モードでは、ラジエータ16に熱媒体が流通しないため熱媒体が冷却されることがない。また、第1熱交換器17に熱媒体が流通する一方、第2熱交換器18には熱媒体が流通しない。これにより、第1二次電池4のみが加熱され、第2二次電池5は加熱されない。
【0054】
そして、車両1は、第1二次電池4から供給された電力によって第1モータ2を駆動させて走行する。このとき、車両1は、第2モータ3を駆動させない(空転させる)ことで第2二次電池5に蓄電された電力を消費しないようにしている。
【0055】
その後、制御部21は、温度計4aで測定された第1二次電池4の各セルの温度を取得する。そして、制御部21は、第1二次電池4の各セルの温度(第1二次電池温度)が第2閾値より高いかを判定する(ステップS7)。
ここで、第2閾値は、第1二次電池4が加熱され動作温度範囲内になったことで、第1二次電池4が好適に使用でき、かつ、これ以降の加熱が必要ない温度(例えば0℃)に設定されている。
【0056】
第1二次電池4の各セルの温度が第2閾値より高くなるまでステップS7を繰り返し、第1二次電池4の各セルの温度が第2閾値より高くなると(ステップS7でYes)、制御部21は、ステップS13に処理を移す。
【0057】
一方、中距離モードが選択された場合(ステップS8でYes)、制御部21は、四方向弁12のAポートとBポートとを連通させるとともに、CポートとDポートとを連通させる。また、制御部21は、第1三方向弁13のFポートとGポートとを連通させる(ステップS9)。
【0058】
これにより、
図5に示すように、電池温度調整装置10では、ポンプ15から吐出された熱媒体が熱媒体流路11b、第2三方向弁14、熱媒体流路11dを通ってヒータ19がある位置に導かれる。そして、ヒータ19で熱媒体が加熱される。加熱された熱媒体は熱媒体流路11eを通って第2熱交換器18に導かれる。第2熱交換器18に導かれた熱媒体は第2二次電池5を加熱する。第2二次電池5を加熱した熱媒体は熱媒体流路11g、四方向弁12、熱媒体流路11j、第1三方向弁13、熱媒体流路11kを通ってポンプ15に戻される。
【0059】
このように、中距離モードでは、ラジエータ16に熱媒体が流通しないため熱媒体が冷却されることがない。また、第2熱交換器18に熱媒体が流通する一方、第1熱交換器17には熱媒体が流通しない。これにより、第2二次電池5のみが加熱され、第1二次電池4は加熱されない。
【0060】
そして、車両1は、第2二次電池5から供給される電力によって第2モータ3を駆動させて走行する。このとき、車両1は、第1モータ2のみを駆動させている場合よりも高出力で走行が可能である。また、車両1は、第2二次電池5の動作温度範囲が第1二次電池4よりも高いため、第2二次電池5が高温になっても動作温度範囲から外れにくくすることができる。なお、車両1は、第1モータ2を駆動させない(空転させる)ことで第1二次電池4に蓄電された電力を消費しないようにしている。
【0061】
その後、制御部21は、温度計5aで測定された第2二次電池5の各セルの温度を取得する。そして、制御部21は、第2二次電池5の各セルの温度(第2二次電池温度)が第3閾値より高いかを判定する(ステップS10)。
ここで、第3閾値は、第2二次電池5が加熱され動作温度範囲内になったことで、第2二次電池5が好適に使用でき、かつ、これ以降の加熱が必要ない温度(例えば10℃)に設定されている。
【0062】
第2二次電池5の各セルの温度が第3閾値より高くなるまでステップS10を繰り返し、第2二次電池5の各セルの温度が第3閾値より高くなると(ステップS10でYes)、制御部21は、ステップS13に処理を移す。
【0063】
一方、短距離モードが決定されておらず(ステップS5でNo)、かつ、中距離モードが決定されていない場合(ステップS8でNo)、すなわち、走行距離が中距離モードより長いか不明である場合、制御部21はステップS11に処理を移す。
【0064】
ステップS11で制御部21は、四方向弁12のAポートとDポートとを連通させるとともに、BポートとCポートとを連通させる。また、制御部21は、第1三方向弁13のEポートとGポートとを連通させる(ステップS11)。
【0065】
これにより、
図6に示すように、電池温度調整装置10では、ポンプ15から吐出された熱媒体が熱媒体流路11b、第2三方向弁14、熱媒体流路11dを通ってヒータ19がある位置に導かれる。そして、ヒータ19で熱媒体が加熱される。加熱された熱媒体は熱媒体流路11eを通って第2熱交換器18に導かれる。第2熱交換器18に導かれた熱媒体は第2二次電池5を加熱する。第2二次電池5を加熱した熱媒体は熱媒体流路11g、四方向弁12、熱媒体流路11hを通って第1熱交換器17に導かれる。第1熱交換器17に導かれた熱媒体は第1二次電池4を加熱する。第1二次電池4を加熱した熱媒体は熱媒体流路11i、第1三方向弁13、熱媒体流路11kを通ってポンプ15に戻される。
【0066】
このように、走行距離が中距離モードより長いか不明である場合には、ラジエータ16に熱媒体が流通しないため熱媒体が冷却されることがない。また、第1熱交換器17及び第2熱交換器18に熱媒体が流通する。これにより、第1二次電池4及び第2二次電池5の双方が加熱される。
【0067】
そして、車両1は、第1二次電池4から供給される電力によって第1モータ2を駆動させ、第2二次電池5から供給される電力によって第2モータ3を駆動させて走行する。これにより、車両1は、第1モータ2及び第2モータ3によって走行することが可能となる。
【0068】
その後、制御部21は、温度計4aで測定された第1二次電池4の各セルの温度を取得するとともに、温度計5aで測定された第2二次電池5の各セルの温度を取得する。そして、制御部21は、電池最低温度が第4閾値より高いかを判定する(ステップS12)。
ここで、第4閾値は、第1二次電池4及び第2二次電池5が加熱され動作温度範囲内になったことで、これ以降の加熱が必要ない温度(例えば10℃)に設定されている。
【0069】
電池最低温度が第4閾値より高くなるまでステップS12を繰り返し、電池最低温度が第4閾値より高くなると(ステップS12でYes)、制御部21は、ステップS13に処理を移す。
【0070】
ステップS13で制御部21は、ポンプ15を停止するとともにヒータ19を停止させ、第1二次電池4及び第2二次電池5の加熱を終了する。
【0071】
電池最低温度が第1閾値より高い場合(ステップS1でNo)、制御部21は、四方向弁12のAポートとDポートとを連通させるとともに、BポートとCポートとを連通させる。また、制御部21は、第1三方向弁13のEポートとGポートとを連通させる。さらに、制御部21は、第2三方向弁14のIポートとJポートとを連通させる(ステップS14)。
【0072】
また、制御部21は、ポンプ15を駆動させる(ステップS15)。なお、制御部21は、ヒータ19を停止したまま維持させる。
【0073】
これにより、
図7に示すように、電池温度調整装置10では、ポンプ15から吐出された熱媒体が熱媒体流路11aを通ってラジエータ16に導かれる。ラジエータ16に導かれた熱媒体は、ラジエータ16で冷却される。
冷却された熱媒体は、熱媒体流路11c、第2三方向弁14、熱媒体流路11dを通ってヒータ19がある位置に導かれる。しかしながら、ヒータ19は停止しているため熱媒体が加熱されることはない。
ヒータ19を通った熱媒体は熱媒体流路11eを通って第2熱交換器18に導かれる。第2熱交換器18に導かれた熱媒体は第2二次電池5を冷却する。第2二次電池5を冷却した熱媒体は熱媒体流路11g、四方向弁12、熱媒体流路11hを通って第1熱交換器17に導かれる。第1熱交換器17に導かれた熱媒体は第1二次電池4を冷却する。第1二次電池4を冷却した熱媒体は熱媒体流路11i、第1三方向弁13、熱媒体流路11kを通ってポンプ15に戻される。
【0074】
このように、冷却時には、ラジエータ16に熱媒体が流通するため熱媒体が冷却される。また、第1熱交換器17及び第2熱交換器18に熱媒体が流通する。これにより、第1二次電池4及び第2二次電池5の双方が冷却される。
【0075】
そして、車両1は、第1二次電池4から供給される電力によって第1モータ2を駆動させ、第2二次電池5から供給される電力によって第2モータ3を駆動させて走行する。これにより、車両1は、第1モータ2及び第2モータ3によって走行することが可能となる。
【0076】
その後、制御部21は、温度計4aで測定された第1二次電池4の各セルの温度を取得するとともに、温度計5aで測定された第2二次電池5の各セルの温度を取得する。そして、制御部21は、第1二次電池4及び第2二次電池5の各セルの温度のうち最も高い温度を電池最高温度とし、電池最高温度が第5閾値より高いかを判定する(ステップS16)。
ここで、第5閾値は、第1二次電池4及び第2二次電池5が冷却され動作温度範囲内になったことで、これ以降の冷却が必要ない温度(例えば40℃)に設定されている。
【0077】
電池最高温度が第5閾値以下になるまでステップS16を繰り返し、電池最高温度が第5閾値以下になると(ステップS16でNo)、制御部21は、ポンプ15を停止させ(ステップS17)、温度調整制御処理を終了する。
【0078】
<4.変形例>
なお、以上の実施形態は本発明を実施する一例で有り、本発明の実施は以上の例に限定されず、各種の変形例が考えられる。
【0079】
例えば、上記した実施形態では、走行モードに応じて決定された第1二次電池4及び第2二次電池5の一方又は双方を温度調整するようにした。しかしながら、制御部21は、走行モードを含む特定の条件に応じて第1二次電池4及び第2二次電池5の一方又は双方を温度調整するようにしてもよい。
【0080】
また、上記した実施形態では、
図2に示した熱媒体流路11を熱媒体が流通するようにした。しかしながら、熱媒体の流路は一例に過ぎず、他の構成の流路であってもよい。
【0081】
また、上記した実施形態では、異なる温度特性を有する第1二次電池4及び第2二次電池5として、リチウムイオン二次電池及び全固体二次電池を例に挙げて説明した。しかしながら、車両1は、異なる温度特性を有する電池を有しているのであれば、どのような組み合わせの二次電池であってもよく、また、その数は問わない。
【0082】
また、上記した実施形態では、第1二次電池4の電力により第1モータ2が駆動し、第2二次電池5の電力により第2モータ3が駆動するようにした。しかしながら、車両1では、1個のモータのみを有し、第1二次電池4及び第2二次電池5の電力によりモータを駆動させるようにしてもよい。
【0083】
また、上記した実施形態では、中距離モードにおいて第2二次電池5の各セルの温度が第3閾値より高い場合には加熱を終了するようにした(ステップS10でYes)。しかしながら、第2二次電池5の各セルの温度が第3閾値より高い場合(ステップS10でYes)、制御部21は、ステップS11に進んで、第1二次電池4及び第2二次電池5を加熱するようにしてもよい。このようにすることで、第2二次電池5の排熱によって第1二次電池4を加熱させて動作温度範囲に昇温させることが可能となる。
【0084】
また、上記した実施形態では、第1二次電池4及び第2二次電池5を加熱する際にヒータ19を駆動させるようにした。しかしながら、制御部21は、熱媒体温度計20で測定される熱媒体の温度に応じてヒータ19を適宜停止させるようにしてもよい。
【0085】
<4.まとめ>
上記のように実施形態の電池温度調整装置10は、車両1のモータ(第1モータ2、第2モータ3)に電力を供給する温度特性が異なる複数の電池(第1二次電池4、第2二次電池5)と、複数の電池の中から特定の条件に応じて決定される電池を温度調整する制御部21と、を備える。
これにより、電池温度調整装置10は、特定の条件に応じて、動作温度範囲内の温度になりやすい電池や、動作温度範囲内を維持しやすい電池を温度調整することが可能となる。このとき、電池温度調整装置10は、1個の電池のみを温度調整することで、その電池の温度を早期に動作温度範囲内にすることができる。すなわち、電池温度調整装置10は、電池を効率よく温度調整することができる。
また、電池温度調整装置10は、動作温度範囲外で電池が使用されることによる劣化を抑制することができる。
【0086】
また、制御部21は、車両1の走行モードに応じて決定される電池(第1二次電池4、第2二次電池5)を温度調整する。
これにより、電池温度調整装置10は、走行モードに応じて最適な電池を温度調整することができる。
【0087】
走行モードには、第1距離未満を走行する低距離モード、第1距離以上で第2距離未満を走行する中距離モードが含まれる。
これにより、電池温度調整装置10は、走行距離が短い低距離モード、及び、走行距離が比較的長い中距離モードに応じて、最適な電池を温度調整することができる。
具体的には、短距離モードでは、走行時間も短く十分に電池を加熱する時間があまりないため、動作温度範囲が低い第1二次電池4のみを温度調整する。また、中距離モードでは、走行時間が長く電池を加熱する時間がある程度あり、かつ、発熱による電池の温度上昇も見込めることから、動作温度範囲が高い第2二次電池5のみを温度調整する。
このように、走行モードに応じて最適な電池を温度調整することで、電池の温度を早期にかつ長時間に亘り動作温度範囲内に留めることができる。
【0088】
また、制御部21は、低距離モードにおいて動作温度範囲が低い電池を温度調整し、中距離モードにおいて動作温度範囲が高い電池を温度調整する。
これにより、短距離モードでは、動作温度範囲が低い第1二次電池4を効率的に温度調整することができる。また、中距離モードでは、動作温度範囲が高い第2二次電池5を効率的に温度調整することができる。
【0089】
複数の電池は、異なるモータにそれぞれ電力を供給する。
これにより、温度調整している電池から電力が供給されるモータを駆動させることができる。このとき、電池の容量や出力に合わせたモータを用いることで、車両1を効率的に走行させることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 車両
2 第1モータ
3 第2モータ
4 第1二次電池
5 第2二次電池
10 電池温度調整装置
21 制御部