(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058389
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】パレット昇降機構、立体駐車装置及びパレット昇降方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/06 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E04H6/06 C
E04H6/06 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165720
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 剛史
(57)【要約】
【課題】ワイヤロープへの負担を軽減して、ドラム及び駆動スプロケットの外径を小さくすることが可能なパレット昇降機構を提供する。
【解決手段】パレット昇降機構1は、第1及び第2ドラム38、40と、昇降横行パレット10c~10fに接続されるシーブ30a、30aと、第1及び第2ドラム38、40及び各シーブ30a、30aに巻回され、先端が昇降横行パレット10c~10fよりも上方で、昇降横行パレット10c~10fに対して上下方向に沿って相対移動不能な横行枠32に固定されるワイヤロープ26a、26b、28a、28bと、を備えている。これにより、昇降横行パレット10c~10fを昇降する際、ワイヤロープ26a、26b、28a、28bへの負担を軽減でき、第1及び第2ドラム38、40及び駆動スプロケット44の外径を小さくすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を格納するパレットを昇降するパレット昇降機構であって、
駆動源からの回転が伝達されるドラムと、
前記パレットに接続されるシーブと、
前記ドラムと前記シーブとに巻回され、先端が前記パレットよりも上方で、前記パレットに対して上下方向に沿って相対移動不能な部位に固定されるワイヤロープと、
を備えることを特徴とするパレット昇降機構。
【請求項2】
前記ワイヤロープの先端は、既設の部位に固定されることを特徴とする請求項1に記載のパレット昇降機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパレット昇降機構を含むことを特徴とする立体駐車装置。
【請求項4】
車両を格納するパレットを昇降するパレット昇降方法であって、
ワイヤロープを前記パレットに接続されたシーブに巻回すると共に、その先端を前記パレットよりも上方で、前記パレットに対して上下方向に沿って相対移動不能な部位に固定して、前記ワイヤロープを巻き取りまたは繰り出しすることで、前記シーブと共に前記パレットを昇降させることを特徴とするパレット昇降方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を格納するパレットを昇降するパレット昇降機構及びパレット昇降方法、並びに当該パレット昇降機構を備えた立体駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両を格納する複数のパレットを備える立体駐車装置は、限られたスペースに多くの車両を駐車するために利用されている。また、立体駐車装置が備える複数のパレットには、上下方向のみに移動する昇降パレット、横方向(左右方向)のみに移動する横行パレット、上下方向及び横方向の双方に移動する昇降横行パレット等、立体駐車装置の構成に合わせた様々なパレットが含まれている。これらのパレットのうち、上下方向のみに移動する昇降パレットや、上下方向及び横方向の双方に移動する昇降横行パレットは、従来、複数のチェーンによって吊り下げられていることが多く、これらのチェーンの巻き取り及び繰り出しによって上下方向の移動(昇降)を行っていた。
【0003】
しかしながら、近年では、チェーンよりも、維持管理の容易性、軽量化及び長いストロークにおけるチェーンの格納問題等から、特許文献1を参照して、チェーンに替えてワイヤロープが用いられており、パレットを吊り下げている複数のワイヤロープが、シーブ等を介して巻き取り及び繰り出しされることより、パレットの昇降が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献1に記載のワイヤロープを用いたパレット昇降機構では、ドラムの外径を使用するワイヤロープの外径の20倍に設定する必要があり、チェーンを用いたパレット昇降機構の巻上スプロケットよりもその外径が大きくなる。そのために、ワイヤロープを用いたパレット昇降機構における、モータからの回転が伝達されドラムを回転させる駆動スプロケットの外径が、チェーンを用いたパレット昇降機構の駆動スプロケットの外径よりも大きくなることから、同じ荷重のものを吊り上げるためには、より大きなトルクが必要となり、結果として、立体駐車装置の、特に、前後方向(車両の出庫方向を基準)のサイズが必然的に大きくなる。
【0006】
しかも、モータから駆動スプロケットに伝達されるトルクを上述した大きなトルクまで増加させるためには、モータと駆動スプロケットとの間に減速比を高めるべく減速機構が必要になり、パレット昇降機構が複雑で大掛かりなものとなり、これも、立体駐車装置のサイズが大きくなる原因となり、好ましくない。そこで、このような減速機構を必要とせず、さらに駆動スプロケットの外径を小さくすべく、減速機付きモータ自体の減速比を高めることで対応することが可能であるが、高コストとなり、根本的な解決には至らない。
【0007】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ワイヤロープへの負担を軽減して、ドラム及び駆動スプロケットの外径を小さくすることが可能なパレット昇降機構、及びパレット昇降機構にワイヤロープを採用しても、特に、前後方向に沿う大きさをコンパクトにすることができる立体駐車装置、及びワイヤロープへの負担を軽減して、ワイヤロープを巻き取りまたは繰り出す際のトルクを低減するパレット昇降方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載したパレット昇降機構の発明は、車両を格納するパレットを昇降するパレット昇降機構であって、駆動源からの回転が伝達されるドラムと、前記パレットに接続されるシーブと、前記ドラムと前記シーブとに巻回され、先端が前記パレットよりも上方で、前記パレットに対して上下方向に沿って相対移動不能な部位に固定されるワイヤロープと、を備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、車両を格納するパレットを昇降させる際には、駆動源を駆動させることで、ドラムが回転すると共にワイヤロープが巻き取りまたは繰り出される。そして、ワイヤロープの巻き取りまたは繰り出しにより、シーブが昇降すると共にパレットが昇降する。このように、パレットを昇降させる際、シーブが上下方向に沿って移動する(動滑車の作用)ことでパレットが昇降するので、ワイヤロープへの負担が軽減されて、その外径を従来技術(特許文献1に記載のパレット昇降機構)よりも細くすることができ、しかも、ドラムへのトルクを従来技術(特許文献1に記載のパレット昇降機構)よりも低減させることができる。その結果、ドラム、及び駆動源からの回転をドラムに伝達する駆動スプロケットの外径を従来技術(特許文献1に記載のパレット昇降機構)よりも小さくすることができる。
【0009】
請求項2に記載したパレット昇降機構の発明は、請求項1に記載した発明において、前記ワイヤロープの先端は、既設の部位に固定されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、ワイヤロープの先端は、例えば立体駐車装置を構成する、複数の支柱と複数の梁とによって構成された略矩形の構造体において既設の対応する部位に固定されるので、ワイヤロープの先端を固定する部位を新規に設ける必要はなく、構造がシンプルとなり、コスト増を抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載した立体駐車装置の発明は、請求項1または2に記載のパレット昇降機構を含むことを特徴とするものである。
請求項3の発明では、請求項1または2に記載のパレット昇降機構を含むので、ワイヤロープへの負担が軽減されて、その外径を従来技術よりも細くすることができ、しかも、ドラムへのトルクを従来技術よりも低減させることができる。その結果、ドラム、及び駆動源からの回転をドラムに伝達する駆動スプロケットの外径を従来技術よりも小さくすることができる。これにより、立体駐車装置の、特に、出庫方向を基準とした前後方向に沿う大きさをコンパクトにすることができる。
【0011】
請求項4に記載したパレット昇降方法の発明は、車両を格納するパレットを昇降するパレット昇降方法であって、ワイヤロープを前記パレットに接続されたシーブに巻回すると共に、その先端を前記パレットよりも上方で、前記パレットに対して上下方向に沿って相対移動不能な部位に固定して、前記ワイヤロープを巻き取りまたは繰り出しすることで、前記シーブと共に前記パレットを昇降させることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、パレットを昇降させる際、ワイヤロープに作用する荷重が従来技術よりも低減されるので、ワイヤロープを巻き取りまたは繰り出す際のトルクを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るパレット昇降機構では、ワイヤロープへの負担を軽減して、ドラム及び駆動スプロケットの外径を小さくすることができる。また、本発明に係る立体駐車装置では、パレット昇降機構にワイヤロープを採用しても、特に、前後方向に沿う大きさをコンパクトにすることができる。さらに、本発明に係るパレット昇降方法では、ワイヤロープへの負担を軽減して、ワイヤロープを巻き取りまたは繰り出す際のトルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構が採用された立体駐車装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1及び立体駐車装置2を
図1及び
図2に基づいて詳細に説明する。
図2には、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1を備えた立体駐車装置2を示されている。
図2を参照して、本実施形態に係る立体駐車装置2は、複数の支柱と複数の梁とによって構成された略矩形の構造体4に、複数のパレット10a~10iが移動可能に支持された構造である。各パレット10a~10i上に車両Vがそれぞれ格納される。
【0015】
図2を参照して、本実施形態に係る立体駐車装置2は、地上4段3連基(
図2中上下方向に4段、左右方向に3列)の構造であり、9基のパレット10a~10iを備え、さらに、開閉ゲート12a~12cを備えている。なお、車両Vが、パレット10a~10iから開閉ゲート12a~12cを介して出庫する方向を前後方向または縦方向と称し、当該前後方向(縦方向)と直交する方向を左右方向または横方向と称する。
【0016】
複数のパレット10a~10iのうち、2基の横行パレット10a、10bは、車両Vを入出庫する高さ位置(入出庫位置15)で横行移動のみを行い、4基の昇降横行パレット10c~10fは、立体駐車装置2の利用者による呼び出し操作に応じて、入出庫位置15(
図1においてパレット10a、10b、10gがある位置)まで、上下方向及び横方向に移動可能なものである。一方、残り3基の昇降パレット10g~10iは、昇降のみを行うものである。また、開閉ゲート12a~12cの各々は、その後面側の入出庫位置15に所望のパレット10a~10iが呼び出された後に開かれ、車両Vの入出庫が終わった後に、利用者の操作により閉じられるものである。
【0017】
図2を参照して、立体駐車装置2では、9基のパレット10a~10iのうち、パレット10gを除いた8基のパレット10a~10f、10h、10iに、車両Vが格納された状態である。さらに、3基のパレット10a、10b、10gが入出庫位置15にあり、残り6基のパレット10c~10f、10h、10iが収容位置にある状態である。また、立体駐車装置2は、詳しい説明は控えるが、上述した複数のパレット10a~10i、開閉ゲート12a~12c、及びパレット昇降機構1の他にも、多くの構成要素を含んでいる。それらの構成要素には、例えば、利用者により立体駐車装置2の各操作を行うための入力が行われる操作盤、立体駐車装置2全体の制御を担う制御部、制御部による制御に応じてパレット10a~10iの移動や開閉ゲート12a~12cの開閉動作を行うための動力を発生、伝達する駆動部、入出庫位置15にある各パレット10a~10iの周辺の物体を検知する複数の光電センサ等が含まれる。
【0018】
そして、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1は、複数のパレット10a~10iのうち、昇降を行う、昇降横行パレット10c~10f及び昇降パレット10g~10iを地上において上下移動させるものである。本実施形態に係るパレット昇降機構1は、昇降横行パレット10c~10f及び昇降パレット10g~10i毎に独立して具備されている。なお、
図1には、昇降横行パレット10c~10fのそれぞれに対応したパレット昇降機構1が示されており、
図1を参照して、当該パレット昇降機構1の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1は、モータ20と、チェーン22と、ドラム構造24と、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bと、2本の後吊ワイヤロープ28a、28bと、6つのシーブ30a、30bと、を含んでいる。ドラム構造24は、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bと2本の後吊ワイヤロープ28a、28bとを、同時に巻き取り及び繰り出しするものであり、昇降横行パレット10c~10fの後方側に回転可能に設置される。ドラム構造24は、第1ドラム38、第2ドラム40、接続軸部42、駆動スプロケット44、及び2つの軸部46、46を含んでいる。なお、
図2では、本実施形態に係るパレット昇降機構1における、モータ20及びチェーン22等の図示を省略している。
【0020】
第1ドラム38及び第2ドラム40は、前吊ワイヤロープ26a、26b及び後吊ワイヤロープ28a、28bを実質的に巻き取るものである。
図1に示す実施形態では、4本のワイヤロープ26a、26b、28a、28bのうち、昇降横行パレット10c~10fの一側方(図中右上)寄りを吊り下げている前吊ワイヤロープ26aと後吊ワイヤロープ28aとが、第1ドラム38により巻き取られる。一方、昇降横行パレット10c~10fの他側方(図中左下)寄りを吊り下げている前吊ワイヤロープ26bと後吊ワイヤロープ28bとが、第2ドラム40により巻き取られる。
【0021】
接続軸部42は、第1ドラム38と第2ドラム40とを接続する円筒状のパイプである。モータ20は、その回転力を、チェーン22を介してドラム構造24に伝達するようになっており、ドラム構造24の近傍に設置される。モータ20が駆動源に相当する。駆動スプロケット44は、モータ20からの回転がチェーン22を介して伝達されるものであり、本実施形態では、接続軸部42と第1ドラム38との間に配置されている。2つの軸部46、46は、第1ドラム38の
図1における右側、及び第2ドラム40の
図1における左側、換言すれば、ドラム構造24の両端に配置されている。上述したドラム構造24の構成要素は、全て同軸で接続されており、2つの軸部46、46が回転可能に軸支されることで、ドラム構造24全体が一体的に回転可能に支持されるようになっている。
【0022】
昇降横行パレット10c~10fの四隅には、シーブ30a、30aが回転可能にそれぞれ接続されている。昇降横行パレット10c~10fの上方には、対応する横行枠32がそれぞれ配置される。横行枠32の外形は、平面視矩形に形成される。横行枠32は、立体駐車装置2の略矩形の構造体4において、対応する位置にて横方向に沿って延びる、前後一対の横行レール6、6上を、各横行車輪34、34を介して移動自在に構成される。
【0023】
横行枠32は、本実施形態に係るパレット昇降機構1により、対応する昇降横行パレット10c~10fを昇降自在に吊り下げて支持するものである。横行枠32は、昇降横行パレット10c~10fに対して上下方向に沿って相対移動不能な部位となる。横行枠32の前方側には、一対のシーブ30b、30bが互いに横方向(左右方向)に離れた位置に回転可能にそれぞれ接続されている。昇降横行パレット10c~10fに設けられたシーブ30a、30aの外径と、横行枠32に設けられたシーブ30b、30bの外径とは同じである。ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40の外径と、各シーブ30a、30bの外径とは同じである。なお、ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40を、各シーブ30a、30bより小径にしてもよく、大径にしてもよい。
【0024】
そして、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bは、昇降横行パレット10c~10fの前方側を吊り下げるものであり、ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40から前方側へと延び、横行枠32の前方側にそれぞれ回転可能に接続された一対のシーブ30b、30bにそれぞれ巻回されて下方に方向転換された後、昇降横行パレット10c~10fの前方側にそれぞれ回転可能に接続された一対のシーブ30a、30aにそれぞれ巻回されて上方に方向転換され、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bの先端が横行枠32の前方側で各シーブ30b、30bに近接した位置にそれぞれ接続されている。
【0025】
一方、2本の後吊ワイヤロープ28a、28bは、昇降横行パレット10c~10fの後方側を吊り下げるものであり、ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40から下方へ延びて、昇降横行パレット10c~10fの後方側にそれぞれ回転可能に接続された一対のシーブ30a、30aに巻回されて上方に方向転換された後、2本の後吊ワイヤロープ28a、28bの先端が横行枠32の後方側に横方向に離れた位置にそれぞれ接続されている。
【0026】
そして、
図1を参照して、本実施形態に係るパレット昇降機構1により、昇降横行パレット10c~10fを昇降させる際には、対応するモータ20を駆動させると、その回転がチェーン22を介してドラム構造24の駆動スプロケット44に伝達される。ドラム構造24の駆動スプロケット44の回転は第1及び第2ドラム38、40に伝達される。ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40の回転に伴って、2本の前吊ワイヤロープ26a、26b、及び2本の後吊ワイヤロープ28a、28bが第1及び第2ドラム38、40に巻き取られ、または第1及び第2ドラム38、40から繰り出されることで、シーブ30a、30aと共に昇降横行パレット10c~10fが昇降する。
【0027】
このとき、昇降横行パレット10c~10fに接続された各シーブ30a、30aが動滑車の機能を果たすために、2本の前吊ワイヤロープ26a、26b、及び2本の後吊ワイヤロープ28a、28bに作用する荷重が従来技術(特許文献1に記載のパレット昇降機構)よりも低減(例えば半減)され、ひいては、第1及び第2ドラム38、40に作用するトルクも従来技術よりも低減(例えば半減)される。
【0028】
次に、
図2を参照して、昇降パレット10g~10iが具備するパレット昇降機構1を説明するが、
図1に示す、昇降横行パレット10c~10fが具備するパレット昇降機構1との相違点のみを説明する。昇降パレット10g~10iが具備するパレット昇降機構1では、
図2を参照して、本立体駐車装置2の略矩形の構造体4において、最上部に設けられ、前後方向(縦方向)に沿って延び、横方向に沿って対向する一対の縦梁部材8、8の前方側に、シーブ30b、30bがそれぞれ接続されている。要するに、昇降パレット10g~10iにそれぞれ対応する一対の縦梁部材8、8の前方側に、シーブ30b、30bがそれぞれ接続されている。
【0029】
そして、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bは、ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40から前方側へと延び、一対の縦梁部材8、8の前方側にそれぞれ回転可能に接続された一対のシーブ30b、30bにそれぞれ巻回されて下方に方向転換された後、昇降パレット10g~10iの前方側にそれぞれ回転可能に接続された一対のシーブ30a、30aにそれぞれ巻回されて上方に方向転換され、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bの先端が一対の縦梁部材8、8の前方側で各シーブ30b、30bに近接した位置にそれぞれ接続されている。
【0030】
一方、2本の後吊ワイヤロープ28a、28bは、ドラム構造24の第1及び第2ドラム38、40から下方へ延びて、昇降パレット10g~10iの後方側にそれぞれ回転可能に接続された一対のシーブ30a、30aに巻回されて上方に方向転換された後、2本の後吊ワイヤロープ28a、28bの先端が一対の縦梁部材8、8の後方側、または対応する横梁部材に横方向に沿って間隔に置いてそれぞれ接続されている。
【0031】
なお、
図2に示す、昇降パレット10g~10iが具備するパレット昇降機構1は、昇降パレット10g~10iに接続されたシーブ30a、30aを除く各構成要素の位置は不変である。これに対し、
図1に示す、昇降横行パレット10c~10fが具備するパレット昇降機構1は、各構成要素が、昇降横行パレット10c~10fの横行移動に追従し、昇降横行パレット10c~10fに接続されたシーブ30a、30aを除く各構成要素が、昇降横行パレット10c~10fの昇降に追従しないように設置されている。
【0032】
また、本実施形態に係るパレット昇降機構1が適用される立体駐車装置2は、
図2に示したような構造に限定されるものではない。すなわち、立体駐車装置2は、上下方向や横方向により多くの(又はより少ない)パレットを備えた構成であってもよく、地上だけではなく地下にパレットを備えた構成であってもよい。又、パレットが横方向には移動せずに、上下方向の列毎に連動して上下方向のみに移動するものであってもよい。さらに、上下方向や横方向だけではなく、前後方向に沿って複数列のパレットを備えた構成であってもよい。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1では、モータ20からの回転が伝達される第1及び第2ドラム38、40と、昇降パレット10g~10i及び昇降横行パレット10c~10fに接続されるシーブ30a、30aと、第1及び第2ドラム38、40及び各シーブ30a、30aに巻回され、先端が昇降パレット10g~10i及び昇降横行パレット10c~10fよりも上方で、昇降パレット10g~10i及び昇降横行パレット10c~10fに対して上下方向に沿って相対移動不能な部位(一対の縦梁部材8、8(または横梁部材)や横行枠32)に固定される2本の前吊ワイヤロープ26a、26b、及び2本の後吊ワイヤロープ28a、28bと、を備えている。
【0034】
そして、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1の、対応するモータ20からの回転により第1及び第2ドラム38、40が回転することで、シーブ30a、30aと共に昇降パレット10g~10i及び昇降横行パレット10c~10fが昇降できるので、2本の前吊ワイヤロープ26a、26b、及び2本の後吊ワイヤロープ28a、28bに作用する荷重が従来技術(特許文献1に記載のパレット昇降機構)よりも低減(例えば半減)され、しかも、第1及び第2ドラム38、40に作用するトルクが従来技術(特許文献1に記載のパレット昇降機構)よりも低減(例えば半減)される。
【0035】
これにより、前吊ワイヤロープ26a、26b、及び後吊ワイヤロープ28a、28bへの負担が軽減されることで、その外径を従来技術よりも細くすることができ、そして、第1及び第2ドラム38、40、及び駆動スプロケット44の外径を従来技術よりも小さくすることができ、結果として、本実施形態に係るパレット昇降機構1の全体構造を、特に、前後方向に沿ってコンパクトにすることができる。さらに、減速比を高めた減速機付きモータを採用する必要もないので、コスト的にも満足することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態に係るパレット昇降機構1では、2本の前吊ワイヤロープ26a、26bの先端、及び2本の後吊ワイヤロープ28a、28bの先端を、立体駐車装置2を構成する、複数の支柱と複数の梁とによって構成された略矩形の構造体4において既設の対応する部位、例えば、昇降横行パレット10c~10fであれば横行枠32、昇降パレット10g~10iであれば一対の縦梁部材8、8または対応する横梁部材に固定されるので、各前吊ワイヤロープ26a、26b、及び各後吊ワイヤロープ28a、28bの先端を固定する部位を新規に設ける必要はなく、構造がシンプルとなり、コスト増を抑制することができる。
【0037】
さらに、本発明の実施形態に係る立体駐車装置2は、本実施形態に係るパレット昇降機構1を含み、第1及び第2ドラム38、40と、シーブ30a、30bとは同径で、従来技術より小径であり、さらに、駆動スプロケット44の外径も従来技術よりも小径にすることができるので、本発明の実施形態に係る立体駐車装置2の、特に、前後方向に沿う大きさをコンパクトにすることができる。また、少なくとも、第1及び第2ドラム38、40を、シーブ30a、30bよりも小径に設定することで、本発明の実施形態に係る立体駐車装置2(パレット昇降機構1)の、特に、前後方向に沿う大きさをコンパクトにすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 パレット昇降機構,2 立体駐車装置,8 縦梁部材(既設の部位),10c~10f 昇降横行パレット,10g~10i 昇降パレット,20 モータ(駆動源),26a、26b 前吊ワイヤロープ,28a、28b 後吊ワイヤロープ,30a シーブ,32 横行枠(既設の部位),38 第1ドラム,40 第2ドラム,V 車両