IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎エナジーシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-サーバー及び運行管理システム 図1
  • 特開-サーバー及び運行管理システム 図2
  • 特開-サーバー及び運行管理システム 図3
  • 特開-サーバー及び運行管理システム 図4
  • 特開-サーバー及び運行管理システム 図5
  • 特開-サーバー及び運行管理システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005839
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】サーバー及び運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240110BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20240110BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240110BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240110BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/01 A
G08G1/09 F
G09B29/00 F
G09B29/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106245
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛士
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC08
2C032HC17
2C032HC27
2C032HD26
5H181AA07
5H181AA14
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181MC03
5H181MC16
(57)【要約】
【課題】道路損傷箇所の検出精度を向上させることのできるサーバー及び運行管理システムを提供する。
【解決手段】サーバーは、車両に搭載された車載カメラが取得した画像情報を画像解析する解析部を備える。解析部は、画像解析により得られ、道路が損傷した領域の画像を含む道路損傷画像と、道路損傷画像が取得された箇所の位置情報とを紐付けて、地図データ上に提示する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載カメラが取得した画像情報を画像解析する解析部を備え、
前記解析部は、画像解析により得られ、道路が損傷した領域の画像を含む道路損傷画像と、前記道路損傷画像が取得された箇所の位置情報とを紐付けて、地図データ上に提示する、
サーバー。
【請求項2】
前記箇所を通過した車両の動態データから交通量を算出する算出部をさらに備え、
前記解析部は、前記交通量を、前記道路損傷画像に紐づけて、前記地図データ上に提示する、
請求項1に記載のサーバー。
【請求項3】
前記解析部は、前記道路損傷画像が得られなかった前記画像情報を破棄する、
請求項1に記載のサーバー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のサーバーと、
前記車両に搭載され、前記画像情報と前記位置情報とを前記サーバーに送信する車載器と、
を含む運行管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の運行管理システムであって、
前記車載器が、前記車両の異常発生時に得られるデータを破棄する、
運行管理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の運行管理システムであって、
前記車載器が、前記車両の固有情報に基づく補正値を考慮して振動量閾値判定を行う、
運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバー及び運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の凹凸、損傷等の道路状況情報を収集し、円滑な車両の運転、事故等の発生防止などに寄与するシステムが開発されている(特許文献1~3参照)。例えば、道路を点検する専用車両が道路情報を収集し、専用機材を用いて情報を解析する手法や、パトロール車両の乗員が、目視にて道路状況を確認し、検査する手法が実行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-205970号公報
【特許文献2】特開2018-205971号公報
【特許文献3】特開2018-205972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
専用車両、パトロール車両を用いる従来の手法は、膨大なコスト、労力を要する。また、空気圧センサ、加速度センサ等を用いて道路の損傷を検出する技術も提案されている。しかし、この技術によれば、道路とは関係ない車両のタイヤの異常(パンク等)を誤って道路損傷として検知してしまうことがある。また、橋のジョイント部を通過する際の振動や、大型車と普通車など車種ごとに異なる振動に基づいて、道路の損傷以外の情報を誤って道路損傷として検知してしまうことがある。
【0005】
本発明は、道路損傷箇所の検出精度を向上させるサーバー及び運行管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るサーバーは、下記を特徴としている。
車両に搭載された車載カメラが取得した画像情報を画像解析する解析部を備え、
前記解析部は、画像解析により得られ、道路が損傷した領域の画像を含む道路損傷画像と、前記道路損傷画像が取得された箇所の位置情報とを紐付けて、地図データ上に提示する、
サーバー。
【0007】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理システムは、下記を特徴としている。
上記サーバーと、
前記車両に搭載され、前記画像情報と前記位置情報とを前記サーバーに送信する車載器と、
を含む運行管理システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、道路損傷箇所の検出精度を向上させることができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る運行管理システムの構成例を示す図である。
図2図2は、図1に示した車載器による車両の振動検出及びデータ処理のフローチャートである。
図3図3は、サーバーによる画像解析処理のフローチャートである。
図4図4は、サーバーによる道路損傷箇所及び交通量の情報提供サービスの処理を示すフローチャートである。
図5図5は、事務所PCの表示部に表示された地図データと道路損傷箇所のマークを示す図である。
図6図6は、図5の表示に詳細情報を重ねて表示した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態における運行管理システム1の構成例を図1に示す。図1に示した運行管理システム1は、トラックやタクシー等の車両の運行を管理する事業者を顧客(ユーザ)とするサービス提供者により運用される運行管理システムである。また、道路の保守管理を行う道路管理者も、運行管理システム1によるサービス提供を受ける顧客に含まれる。
【0013】
図1に示した運行管理システム1は、車両の運行管理を行うサーバー80と、トラック等の車両に搭載した状態で使用される車載器10と、事業者側の管理者に使用される事務所PC30と、道路管理者に使用される通信端末90とを含む。車載器10は、ドライブレコーダ機能及びデジタルタコグラフ機能を有する。運行管理システム1は、サーバー80が、車載器10によって収集された、運行データや、車両に設置された車載カメラにより撮影された映像データを収集、蓄積し、顧客の要望に応じて、事務所PC30又は通信端末90に運行管理に関する解析結果等を提供するものである。本実施形態において、運行管理システム1は、サーバー80が、通信端末90から道路損傷箇所のレポート要求を受けて、解析結果のレポートを通信端末90に送信する。解析結果のレポートは、道路損傷画像と、この道路損傷画像が取得された箇所の位置情報とを紐付けて、地図データ上に提示したものである。道路損傷箇所は、道路損傷が発生している場所を意味する。
【0014】
事務所PC30は、各車両、ドライバー、作業内容等を管理するために所定の事務所に設置される。サーバー80は、車載器10から収集した車両運行情報に基づく解析を行い、解析結果を用いた各種サービスを顧客側に提供するサービス提供者(サポートセンター)側の設備である。運行管理システム1は、複数の顧客の事務所等に設置される複数の事務所PC30及び通信端末90、並びに複数の車載器10を含む。
【0015】
車載器10において、車両の運行中に、車載カメラ(カメラ23A、23B)により撮影された動画データ(映像データ)及び運行データを含む車両運行情報は、メモリカード等の記録媒体65に記録される。運行データは、一例として、車両の位置、速度、エンジン回転数、警報(車間距離警報、脇見運転警報等)・急旋回等のトリガの情報を含み、動画データが撮影された時刻を示す時刻情報に対応付けて、記録される。記録媒体65に記録された車両運行情報は、例えば一日の運行終了後に車両が事務所へ戻ったときに、事務所PC30にて読み出される。サーバー80は、複数の顧客が保有する各車両の車載器10から収集した運行データを、データベース内に蓄積する。
【0016】
事務所PC30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成される。事務所PC30は、車両の運行状況などを管理する。通信端末90は、道路管理者の事務所等に設置され、サーバー80に対して道路損傷箇所のレポートを要求し、サーバー80から送信された解析結果のレポートを受信し表示する。サーバー80は、車載器10が収集した動画データ、イベント情報等を含む車両運行情報の解析、事務所PC30及び通信端末90への情報提供などを行う。図1の例では、車載器10とサーバー80との間で行われるデータ通信は、基地局71を介して行われる。車載器10と事務所PC30との間で行われるデータ通信は、基地局71、サーバー80及びネットワーク70によって中継される。基地局71と車載器10との間の無線通信については、LTE(Long Term Evolution)/5G(5th Generation)等のモバイル通信網(携帯回線網)で行われてもよいし、無線LAN(Local Area Network)で行われてもよい。また、ネットワーク70は、インターネット等のネットワーク(パケット通信網)であり、事務所PC30又は通信端末90とサーバー80との間で行われるデータ通信を中継する。
【0017】
車載器10は、様々な信号の入力又は出力を可能にするために、様々なインタフェース(I/F)12A、12B、13、14、16、19、及び29を備えている。
速度I/F12Aは、車両側に搭載されている車速センサ51の出力する車速パルス信号を入力するための機能を有する。エンジン回転I/F12Bは、車両側から出力されるエンジン回転パルス信号を入力するための機能を有する。外部入力I/F13は様々な外部信号の入力に利用される。
【0018】
センサ入力I/F14は、様々なセンサの信号を入力するために利用される。図1の例では、Gセンサ28及びジャイロセンサ52がセンサ入力I/F14に接続されている。Gセンサ28は、この車載器10を搭載する車両に加わった様々な方向、一例として、車両の前後方向、左右方向、上下方向の各加速度の大きさ(前後G、右左G、上下G)を検知する。ジャイロセンサ52は、この車載器10を搭載する車両のピッチ軸、ヨー軸、及びロール軸の各軸周りの回転角速度を検知することにより、ピッチ角、ヨー角、及びロール角の各変化を示す信号を出力できる。ジャイロセンサ52及びGセンサ28の出力に基づいて、制御部11は車両の急旋回を検出する。
【0019】
空気圧センサ53は、タイヤ54の空気圧を検出する。空気圧センサ53は、空気圧とともに、タイヤ54の異常(パンクなど)発生時に警告を制御部11に送信する。
【0020】
アナログ入力I/F29は、様々なアナログ信号の入力に利用される。
カメラI/F16は、カメラ23A、23Bを接続するための機能を有している。すなわち、カメラI/F16は、カメラ23A、23Bが出力する映像信号をそれぞれ取り込んで、コンピュータの処理に適した所定のデジタル画像データにそれぞれ変換して、動画データを取得する機能を有している。カメラ23Aは、車両の前方に設置されたフロントカメラであり、車両の周囲を撮影する。カメラ23Aは、例えば車両の前方及び側方を撮影し、車両周辺に位置する他車両を撮影できる。カメラ23Bは、車室内の例えば運転席前方に設置された車内カメラであり、ドライバーの顔を含む車内の情景を撮影する。尚、カメラI/F16に接続されるカメラの数は3以上でもよい。
【0021】
音声I/F19は、音声による注意喚起などに利用可能な所定の音声信号を生成する機能を有している。
【0022】
車載器10における主要な機能を実現する制御部11は、マイクロコンピュータのプロセッサ(CPU)を主体とする電子回路により構成されている。このマイクロコンピュータは、不揮発メモリ26Aなどに予め保持されているプログラムを実行することにより、後述する車載器10の制御機能を実現する。
【0023】
制御部11の入力に、上述の各インタフェース12A、12B、13、14、16、及び29が接続されている。また、制御部11の出力に音声I/F19を介してスピーカ20が接続されている。スピーカ20は、車間距離警報等の警報音を出力する。
【0024】
また、記録部17、表示部27、電源部25、通信部24、不揮発メモリ26A、揮発メモリ26B、カードI/F18、RTC部21、ビーコン受信部15、及びGPS受信部9が制御部11に接続されている。
【0025】
記録部17は、例えばカメラ23A、23Bが出力する動画データなどの車両運行情報を所定の記憶領域(記録媒体65)に記録する。
表示部27は、車載器10の操作に必要な文字などの可視情報や、運転操作に関する注意喚起の情報などをドライバーが視認できるように表示するために利用できる。また、表示部27は、車間距離警報等の警報発生に係る表示を行う。
【0026】
電源部25は、車両側から供給される電源電力に基づいて安定した電源電力を生成し、生成した電源電力を、制御部11を含む車載器10内の各回路に対して供給する。
通信部24は、この車載器10と基地局71との間でデータ通信するための無線通信機能を提供する。
【0027】
不揮発メモリ26Aは、半導体メモリにより構成され、制御部11のマイクロコンピュータが実行可能なプログラムや、制御上必要になる各種定数データ、テーブルなどを予め保持している。
揮発メモリ26Bは、制御部11が処理中に生成するデータなどを一時的に保持するために利用される。
【0028】
カードI/F18には、ドライバーが所持する記録媒体65が挿抜自在に接続される。制御部11は、カードI/F18に装着された記録媒体65からデータを読み出すことができ、制御部11が生成した各種データをカードI/F18を介して記録媒体65に書き込むこともできる。
【0029】
RTC(real time clock)部21は、時計の機能を有する集積回路により構成されている。すなわち、RTC部21は、現在時刻の情報を生成したり、経過時間などを把握することができる。
【0030】
ビーコン受信部15は、所定範囲内に位置するビーコンからの電波を、アンテナ15aを介して受信する。ビーコンには、ドライバービーコンが含まれる。ドライバーに所持されるドライバービーコンからのビーコン信号がビーコン受信部15を介して車載器10に受信されると、制御部11がドライバーIDを自動認識し、ドライバーを特定する。すなわち、ドライバーが、自身のドライバーIDが記憶されたドライバービーコンを所持して運転席に乗り込むだけで、車載器10がドライバーIDを認識するため、ドライバーに特定の操作を行わせることなく、人別のデータ管理が可能となる。また、制御部11は、敷地内の所定位置に固定配置された固定ビーコンからのビーコン信号を受信することで、現在位置の情報を把握することができる。なお制御部11は、ビーコンに加えて、後述するGPS受信部9が受信した信号に基づく測位を行ってもよい。
【0031】
GPS受信部9は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を、アンテナ9aを介して受信する。GPS受信部9が受信した複数の受信信号に基づいて、車両の現在位置を表す位置情報を計算して得ることができる。また、GPS受信部9が受信した信号に基づく位置情報を用いて、車両の移動を検知することができる。さらに、GPS受信部9が受信した信号に基づいて、時刻情報を取得することができる。
【0032】
事務所PC30は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPCである。事務所PC30は、車両の運転状況や、稼働状況等を把握・管理するための管理装置として利用できる。事務所PC30は、制御部(CPU)31、通信部32、表示部33、記憶部34、カードI/F35、操作部36、外部I/F37、及び音声I/F38を有する。
【0033】
制御部31は、事務所PC30の各部を統括的に制御する。通信部32は、ネットワーク70を介してサーバー80と通信可能である。
表示部33は、各車両の稼働管理に利用可能な様々な情報を表示することができる。記憶部34は、各車両に搭載された車載器10が生成したデータを取得して管理することができる。
【0034】
カードI/F35には、記録媒体65が挿抜自在に装着される。カードI/F35は、車載器10で記録された様々なデータを記録媒体65から入力するために利用される。
操作部36は、キーボードやマウス等を有し、事務所PC30の管理者の操作を受け付ける。外部I/F37には、運行データデータベース(DB)、ハザードマップデータベース(DB)といった外部記憶装置(図示せず)等が接続可能である。音声I/F38には、マイク41及びスピーカ42が接続される。管理者は、マイク41及びスピーカ42を用いて音声通話を行うことも可能である。
【0035】
サーバー80は、制御部(CPU)81、通信部82、記憶部83、及び外部I/F84を有する。通信部82は、基地局71を介して車載器10と通信を行う。また、通信部82は、ネットワーク70を介して、事務所PC30又は通信端末90と通信を行うことができる。記憶部83は、各種データを記憶可能なメモリである。外部I/F84には、データベース(DB)85等が接続可能である。DB85は、複数の車載器10から収集した車両運行情報を記憶することができる。
【0036】
制御部81は、サーバー80の各部を統括的に制御し、車両の車載カメラ23Aが取得した画像情報を画像解析する解析部として機能する。制御部81は、車両の運行データを解析し、解析結果である稼働データをDB85に蓄積する。運行データの解析例を以下に示す。制御部81は、警報種類及び回数を解析して、同種類の警報回数が閾値を越えた場合に警報増を一覧リストや動画データに表示する。制御部81は、各ドライバー(乗務員)の運行データを分析した分析レポートから、危険挙動の発生頻度等に基づいて安全点数を算出し、ドライバーの安全教育に活用可能とする。
【0037】
通信端末90は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPCであり、道路の保守管理を担当する担当者により利用される。通信端末90は、キーボードやマウス等を有し担当者の操作を受け付ける操作部、サーバー80との通信を行う通信部、サーバー80から送信された解析結果を表示する表示部、解析結果等を記憶する記憶部、及び、各部を統括的に制御する制御部を有する。通信端末90は、道路損傷箇所のレポート要求に関する担当者の操作入力を受け付けてサーバー80にレポート要求を送信し、サーバー80から解析結果のレポートを受信し、道路損傷箇所を示すマークが重畳表示された地図や、道路損傷画像を表示する。
【0038】
上記のように構成された運行管理システム1において、サーバー80及び運行管理システム1が行う道路損傷箇所の検出に関する動作について、図2図10を参照して説明する。
【0039】
まず、図2を参照して、車載器10が行う車両の振動検出について説明する。車載器10を車両に取り付ける際、車両の固有情報が車載器10に設定される(ステップS10)。固有情報は、例えば車両のサイズ別種類(特大、大型、中型、普通など)である。固有情報は、例えば、図示せぬ操作部等を介して車載器10に入力でき、入力した固有情報は、例えば不揮発メモリ26Aに記憶される。
【0040】
車両が出庫すると(ステップS11)、Gセンサ28、すなわち加速度センサが車両に発生する振動量Gαの検出を開始する(ステップS12)。車載器10の制御部11は、GPS受信部9が受信した位置情報であるGPSデータと、車載カメラであるカメラ23Aが取得した画像データを仮記憶する(ステップS13)。カメラ23Aは、特に車両の周辺、道路を撮像可能な車外カメラであり、画像データは道路画像を含んでいる。GPSデータ及び画像データは、例えば揮発メモリ26Bに仮に記憶される。画像データは、例えば検出時刻のT秒前(任意に設定可能)~検出時刻間のドライブレコータのデータを記録する。画像データは、振動量Gαが検出された地点のGPSデータ、及び検出時刻の情報に紐づけられて、記録される。
【0041】
次に制御部11は、タイヤ54の空気圧センサ52が、警告を出した否かを判定する(ステップS14)。警告を出した場合(ステップS14でYes)、道路状況とは関係のない車両固有の問題事象が発生しているため、道路に関するGPSデータ及び画像データは必要ない。このため、制御部11は、仮記憶したGPSデータ及び画像データを破棄し(ステップS15)、ステップS12以降の処理を再開する。
【0042】
上記処理では、車載器10は、車両の異常発生時に得られるデータを破棄する。すなわち、車載器10は、道路とは関係ない車両の異常(タイヤのパンクなど)によるデータを除外するため、誤検出を抑制するとともに、サーバー80への無駄な通信を削減することができる。
【0043】
一方、空気圧センサ52が警告を出していない場合(ステップS14でNo)、制御部11は、車載器10に設定された車両の固有情報などに基づき、振動量Gαを補正し、補正振動量Gβを算出する(ステップS16)。補正は、ステップS10で設定した固有情報である車種、車両への上下の加速度、タイヤ54の空気圧、車速などのデータを用いて行われる。車種に応じた補正については、例えば大型車は1.0、中型車は1.1、普通車は1.2のような係数を用いて行われる。一般的に振動触れの大きさの関係は、大型車>中型車>普通車、となるためである。このような係数は任意に設定可能である。
【0044】
制御部11は、補正振動量Gβが予め設定された所定の閾値振動量Gthを超えているか否かを判定する(ステップS17)。補正振動量Gβが閾値振動量Gthを超えていない場合(ステップS17でNo)、車両に実際に発生している振動は問題のない程度の大きさのため、制御部11は、仮記憶したGPSデータ及び画像データを破棄し(ステップS15)、ステップS12以降の処理を再開する。
【0045】
上記処理では、車載器10は、車両の固有情報に基づく補正値を考慮して振動量閾値判定を行う。すなわち、車載器10が、車種ごとに異なる振動特性などによるデータを除外するため、誤検出を抑制するとともに、サーバー80への無駄な通信を削減することができる。
【0046】
次に制御部11は、車載器10が無線通信による通信方式を採用しているか否かを判定する(ステップS18)。無線通信による通信方式を採用している場合(ステップS18でYes)、制御部11は、仮記憶したGPSデータ及び画像データ、更には算出した補正振動量Gβ、対応する車速をサーバー80へ送信する(ステップS19)。送信が完了したら(ステップS20でYes)、制御部11は、仮記憶したGPSデータ及び画像データを破棄し(ステップS15)、ステップS12以降の処理を再開する。
【0047】
一方、ステップS18で無線通信による通信方式を採用していない場合(ステップS18でNo)、制御部11は、仮記憶したGPSデータ及び画像データを記録媒体65に保存する(ステップS21)。制御部11は、保存が完了したら(ステップS22でYes)、仮記憶したGPSデータ及び画像データを破棄し(ステップS15)、ステップS12以降の処理を再開する。車両の入庫後、制御部11は、図2の処理を終了する。記録媒体65にデータが保存されている場合、事務所PC30によって記録媒体65からデータを読出し、活用することができる。
【0048】
次に図3を参照して、サーバー80が行う画像解析処理について説明する。本処理は、図2の処理の後に行われる。サーバー80が車載器10又は事務所PC30からGPSデータ及び画像データを受信すると(ステップS30)、サーバー80の制御部81が、受信した画像データの画像解析を行う(ステップS31)。制御部81は、車両の車載カメラ23Aが取得した画像情報を画像解析する解析部として機能し、このような機能部は、例えば、記憶部83などに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0049】
解析部として機能する制御部81は、画像データに、道路が損傷した領域の画像を含む道路損傷画像が含まれているか否かを、例えばパターン認識により判定する(ステップS32)。含まれていない場合(ステップS32でNo)、制御部81は、受信したGPSデータ及び画像データを破棄する(ステップS33)。すなわち制御部81は、道路損傷画像が含まれないデータを破棄する。サーバー80は、道路損傷画像が含まれないデータを除外するため、誤検出を抑制するとともに、処理対象となるデータの量を削減し、処理負担を軽減することができる。
【0050】
一方、画像データに道路損傷画像が含まれている場合(ステップS32でYes)、制御部81は、GPSデータ及び道路損傷画像のデータを時刻情報と共に、例えば記憶部83に保存する(ステップS34)。ここで、解析部として機能する制御部81が、保存の際に、道路損傷画像と、この道路損傷画像が取得された箇所の位置情報(GPSデータ)とを紐付けて保存するが、さらにこれらのデータを、別途用意された地図データベースの地図データ上に提示することができる。
【0051】
次に図4を参照して、サーバー80が行う道路損傷箇所及び交通量の解析結果提供サービスの処理について説明する。サーバー80は、インターネット等を介して顧客の通信端末90から道路損傷箇所のレポート要求を受信する(ステップS40)。レポート要求は、X年X月X日以降等の日付、及び、対象場所範囲の指定を含む。サーバー80の制御部81は、レポート要求で指定された日付及び場所の条件に該当するデータを読み出す(ステップS41)。
【0052】
制御部81は、読み出したデータに、道路損傷画像を含むデータ、すなわち道路損傷箇所のデータがあるか否かを判定し(ステップS42)、ない場合(ステップS42でNo)、道路損傷箇所がない旨を表示部33に表示する(ステップS43)。この表示を見た担当者は、指定した条件において道路損傷箇所がないことを即座に把握できる。
【0053】
一方、読み出したデータに、図3のステップS34で保存されたGPSデータ、及び道路損傷画像が含まれる場合(ステップS42でYes)、制御部81は、道路損傷箇所を示すマークを地図データ上に表示した解析結果のレポートを生成する(ステップS44)。ステップS44において、制御部81はこのレポートを通信端末90に送信し、通信端末90の表示部において、道路損傷箇所にマークが付された地図画像が表示される。図5は、通信端末90の表示部に表示された地図データと道路損傷箇所のマークを示す。
【0054】
担当者が、通信端末90において地図データ上のマークをマウスのクリック等により選択すると、選択された道路損傷箇所についての詳細情報表示要求がサーバー80に送信される(ステップS45)。この詳細情報表示要求を受けて、制御部81は、サーバー80に収集され蓄積されている全車両の動態データのうち、マークに対応した場所を通過した全車両の動態データを読出す(ステップS46)。制御部81は、読みだした全車両の動態データから交通量を算出する算出部としても機能しており、選択された道路損傷箇所における交通量を算出する(ステップS47)。交通量は、例えば、曜日毎、時間帯毎に算出される。
【0055】
制御部81は、選択された道路損傷箇所に紐づけられた、道路損傷画像を読み出す(ステップS48)。さらに制御部81は、交通量を、道路損傷画像に紐づけて、道路損傷箇所の詳細情報として地図データ上に提示する(ステップS49)。
【0056】
図6は、図4のステップS49における表示に対応し、図5の表示に、交通量を含む詳細情報を重ねて表示した状態を示す。担当者が図5の表示において道路損傷箇所のマークを選択すると、図6に示すように選択された道路損傷箇所についての詳細情報が表示される。図6の例では、詳細情報として、道路損傷箇所で取得された道路損傷画像、道路損傷箇所の所在地(緯度・経度)、及び指定した曜日における各時間帯の交通量が示されている。
【0057】
このように、サーバー80は、交通量を、道路損傷画像に紐づけて、地図データ上に提示し、通信端末90に、表示することができる。図6に示すように、道路損傷箇所における交通量が視覚化されるため、例えば、担当者は、交通量の少ない曜日又は時間帯に道路の補修工事を設定可能となる。よって、情報提供の価値を向上させることができる。
【0058】
本実施形態のサーバー80及び運行管理システム1によれば、車両に搭載された車載カメラ23Aが取得した画像情報を画像解析し、画像解析により得られ、道路が損傷した領域の画像を含む道路損傷画像と、前記道路損傷画像が取得された箇所の位置情報とを紐付けて、地図データ上に提示する。これにより、コスト、労力などを削減するとともに、道路とは関係ない車両の異常(タイヤのパンクなど)や、車種ごとに異なる振動特性などによる誤検知を抑制し、道路損傷箇所の検出精度を向上させることができる。
【0059】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記実施形態では、通信端末90が、道路損傷箇所のレポートをサーバー80に要求し、解析結果を受信したが、事務所PC30がレポートを要求し、解析結果を受信し表示部33に表示してもよい。また、上記実施形態では、サーバー80が一連の処理の主体であったが、必要なデータを例えば送受信により取得することにより、処理の一部又は全部を事務所PC30が行ってもよい。
【0060】
ここで、上述した本発明に係るサーバー及び運行管理システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
【0061】
[1]車両に搭載された車載カメラ(23A)が取得した画像情報を画像解析する解析部(制御部81、ステップS31)を備え、
前記解析部は、画像解析により得られ、道路が損傷した領域の画像を含む道路損傷画像と、前記道路損傷画像が取得された箇所の位置情報とを紐付けて、地図データ上に提示する(ステップS49)、
サーバー(80)。
【0062】
上記[1]の構成のサーバーによれば、車載器が収集した画像情報を解析して得た道路損傷画像を、道路損傷箇所と紐付けて、地図データ上に提示する。よって、道路損傷箇所を地図上で認識可能となる。これにより、道路損傷具合の検出におけるコスト、労力などを削減できる。また、画像解析により得た道路損傷画像を用いることにより、道路損傷とは関係ない車両の異常(タイヤのパンクなど)や、車種ごとに異なる振動特性などによる誤検知を抑制して、道路損傷箇所の検出精度を向上させることができる。
【0063】
[2]前記箇所を通過した車両の動態データから交通量を算出する算出部(制御部81、ステップS47)をさらに備え、
前記解析部は、前記交通量を、前記道路損傷画像に紐づけて、前記地図データ上に提示する(ステップS49)、
上記[1]に記載のサーバー。
【0064】
上記[2]の構成のサーバーによれば、道路損傷箇所における交通量を視覚化するため、例えば交通量の少ない曜日・時間帯に道路工事を設定可能にするなど、情報提供の価値を向上させることができる。
【0065】
[3]前記解析部は、前記道路損傷画像が得られなかった前記画像情報を破棄する(ステップS32でNo、ステップS33)、
上記[1]に記載のサーバー。
【0066】
上記[3]の構成のサーバーによれば、道路損傷画像が含まれないデータを除外するため、誤検出を抑制するとともに、処理対象となるデータの量を削減し、処理負担を軽減することができる。
【0067】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のサーバーと、
前記車両に搭載され、前記画像情報と前記位置情報とを前記サーバーに送信する車載器(10)と、
を含む運行管理システム(1)。
【0068】
上記[4]の構成の運行管理システムによれば、車載器が収集した画像情報を解析して得た道路損傷画像を、道路損傷箇所と紐付けて、地図データ上に提示する。よって、道路損傷箇所を地図上で認識可能となる。これにより、道路損傷具合の検出におけるコスト、労力などを削減できる。また、画像解析により得た道路損傷画像を用いることにより、道路損傷とは関係ない車両の異常(タイヤのパンクなど)や、車種ごとに異なる振動特性などによる誤検知を抑制して、道路損傷箇所の検出精度を向上させることができる。
【0069】
[5]上記[4]に記載の運行管理システムであって、
前記車載器が、前記車両の異常発生時に得られるデータを破棄する(ステップS14、ステップS15)、
運行管理システム。
【0070】
上記[5]の構成の運行管理システムによれば、車載器が、道路とは関係ない車両の異常(タイヤのパンクなど)によるデータを除外するため、誤検出を抑制するとともに、サーバーへの無駄な通信を削減することができる。
【0071】
[6]上記[4]に記載の運行管理システムであって、
前記車載器が、前記車両の固有情報に基づく補正値を考慮して振動量閾値判定を行う(ステップS16、ステップS17)、
運行管理システム。
【0072】
上記[6]の構成の運行管理システムによれば、車載器が、車種ごとに異なる振動特性などによるデータを除外するため、誤検出を抑制するとともに、サーバーへの無駄な通信を削減することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 運行管理システム
9 GPS受信部
10 車載器
11、31、81 制御部(CPU)
15 ビーコン受信部
23A、23B 車載カメラ
24、32、82 通信部
26A 不揮発メモリ
26B 揮発メモリ
27、33 表示部
28 Gセンサ
30 事務所PC
34、83 記憶部
36 操作部
53 空気圧センサ
65 記録媒体
70 ネットワーク
71 基地局
80 サーバー
85 データベース(DB)
90 通信端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6