(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058401
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165741
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】國森 敬介
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB13
5E070CB17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビア配線と内部配線との接続強度を向上させるインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品1は、素体と、素体内に設けられた第1内部配線(インダクタ配線)100及び第2内部配線(第2柱状配線)221と、素体内に設けられ第1内部配線と第2内部配線との間に配置され、第1内部配線側の第1主面31a、第2内部配線側の第2主面31b及び第1主面と第2主面との間を貫通するビア孔31hを有する層間絶縁層31と、ビア孔に挿入され、第1内部配線と第2内部配線とを電気的に接続する第2ビア配線222とを備える。ビア配線の中心軸AXを含む第1断面において、第2ビア配線は、第1内部配線に接触する第1部分P1と、第2内部配線に接触する第2部分P2と、を有する。第1部分の幅は、第1内部配線から第2内部配線に向かって狭くなり、第2部分の幅は、第1内部配線から第2内部配線に向かって広くなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられた第1内部配線および第2内部配線と、
前記素体内に設けられ前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビア孔を有する層間絶縁層と、
前記ビア孔に挿入され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と
を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記第1内部配線に接触する第1部分と、前記第2内部配線に接触する第2部分とを有し、前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなる、インダクタ部品。
【請求項2】
前記ビア配線の中心軸を含み、前記第1断面に直交する第2断面において、
前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなる、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1部分と前記第2部分は、接触し、
前記第1部分は、前記第1内部配線に接する第1端面と、前記第2部分に接する第2端面とを含み、前記第2部分は、前記第2内部配線に接する第1端面と、前記第1部分に接する第2端面とを含み、
前記第1断面において、
前記第1部分の前記第2端面の幅と前記第2部分の前記第2端面の幅は、同じであり、
前記第1部分の前記第1端面の幅および前記第2部分の前記第1端面の幅は、前記第1部分の前記第2端面の幅および前記第2部分の前記第2端面の幅よりも大きい、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記第1断面において、
前記第1部分の前記第2端面の幅は、前記第1部分の前記第1端面の幅の0.8倍よりも大きい、請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
素体と、
前記素体内に設けられた第1内部配線および第2内部配線と、
前記素体内に設けられ前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビア孔を有する層間絶縁層と、
前記ビア孔に挿入され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と
を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記第1内部配線に接触する第1部分と、前記第2内部配線に接触する第2部分とを有し、前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなる、インダクタ部品。
【請求項6】
前記ビア配線の中心軸を含み、前記第1断面に直交する第2断面において、
前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなる、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
さらに、前記素体の前記第1内部配線よりも前記第2内部配線に近い側に設けられ、前記第2内部配線に電気的に接続された外部端子を備え、
前記第1部分は、前記第1内部配線に接する第1端面を含み、前記第2部分は、前記第2内部配線に接する第1端面を含み、
前記第1断面において、
前記第2部分の前記第1端面の幅は、前記第1部分の前記第1端面の幅よりも大きい、請求項1から6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記ビア孔の内面の表面粗さの平均値は、1μm以下である、請求項1から6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としては、特開2020-107877号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この電子部品は、2つの内部配線と、2つの内部配線の間に配置され、ビア孔を有する絶縁層と、ビア孔に挿通するビア配線とを有する。ビア配線は、2つの内部配線を電気に接続している。ビア孔は、深さ方向に径が縮小するテーパー形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような電子部品では、ビア配線が絶縁層から抜け出るおそれがあり、ビア配線と内部配線との接続強度が十分ではなく、ビア配線と内部配線との接続信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、ビア配線と内部配線との接続強度を向上できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられた第1内部配線および第2内部配線と、
前記素体内に設けられ前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビア孔を有する層間絶縁層と、
前記ビア孔に挿入され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と
を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記第1内部配線に接触する第1部分と、前記第2内部配線に接触する第2部分とを有し、前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなる。
【0007】
ここで、「中心軸」とは、ビア配線の重心を通り、第1主面に垂直な線をいう。「幅」とは、中心軸に直交する方向の大きさをいう。「第1断面」とは、好ましくは、ビア配線の幅が最大となる断面である。第1部分または第2部分が「接触する」とは、第1部分または第2部分の一部(例えば端面)が接触していることを指す。
【0008】
前記態様によれば、第1部分の幅は、第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなり、第2部分の幅は、第1内部配線から第2内部配線に向かって広くなるので、層間絶縁層がビア配線に食い込み、ビア配線の層間絶縁層からの抜けを抑制することができる。これにより、ビア配線と第1内部配線および第2内部配線との接続強度を向上することができる。
【0009】
また、第1部分の第1内部配線側の幅は、広くなるので、第1部分の第1内部配線との接触面積を大きくできる。第2部分の第2内部配線側の幅は、広くなるので、第2部分の第2内部配線との接触面積を大きくできる。これにより、ビア配線と第1内部配線および第2内部配線との接続強度を向上することができる。
【0010】
本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられた第1内部配線および第2内部配線と、
前記素体内に設けられ前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビア孔を有する層間絶縁層と、
前記ビア孔に挿入され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と
を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記第1内部配線に接触する第1部分と、前記第2内部配線に接触する第2部分とを有し、前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなる。
【0011】
前記態様によれば、第1部分の幅は、第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなり、第2部分の幅は、第1内部配線から第2内部配線に向かって狭くなるので、ビア配線が層間絶縁層に食い込み、ビア配線の層間絶縁層からの抜けを抑制することができる。これにより、ビア配線と第1内部配線および第2内部配線との接続強度を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、ビア配線と内部配線との接続強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
【
図5A】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5B】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5C】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5D】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5E】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5F】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5G】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5H】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5I】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5J】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5K】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5L】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5M】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図6】インダクタ部品の第2実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】インダクタ部品の第3実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0015】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、インダクタ部品の一実施形態を示す透視平面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2は、ビア配線の中心軸AXを含むXZ断面を示す。XZ断面は、中心軸AXを含む第1断面の一例である。
図2では便宜上、シード層を省略している。
【0016】
図中、インダクタ部品1の厚み方向をZ方向とする。インダクタ部品1のZ方向に直交する平面において、インダクタ部品1の長手方向であり、第1外部端子51および第2外部端子52が並ぶ方向である長さ方向をX方向とする。長さ方向に直交する方向であるインダクタ部品1の幅方向をY方向とする。XZ断面図は、インダクタ部品1を、X方向に延びる直線とZ方向に延びる直線とで形成され、ビア配線の中心軸AXを含む面で切断されることにより得られる。
【0017】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0018】
図1と
図2に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、インダクタ配線100と、絶縁層30と、第1垂直配線21および第2垂直配線22と、第1外部端子51および第2外部端子52と、被覆膜60とを有する。なお、
図1では、便宜上、外部端子を二点鎖線で描いている。また、
図1では、素体10、被覆膜60、絶縁層30の層間絶縁層31は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。
【0019】
素体10は、第1磁性層11と、第1磁性層11上に配置された基板70と、基板70上に配置された第2磁性層12とを有する。基板70と第2磁性層12は、インダクタ配線100および絶縁層30を挟むように積層されている。つまり、インダクタ配線100および絶縁層30は、素体10内に設けられている。素体10は、第1磁性層11と基板70と第2磁性層12との3層構造であるが、第1磁性層11および第2磁性層12の2層構造であってもよい。
【0020】
以下、上方向とは、基板70の第2磁性層12側の主面(上面)に直交する方向(あるいはZ方向)において、第1磁性層11から第2磁性層12に向かう方向をいう。要素の上面とは、要素の上方向の面をいう。下方向とは、基板70の第2磁性層12側の主面に直交する方向において、第2磁性層12から第1磁性層11に向かう方向をいう。要素の下面とは、要素の下方向の面をいう。第2ビア配線222の中心軸AX方向は、基板70の第2磁性層12側の主面に直交する方向に一致する。
【0021】
インダクタ配線とは、平面上で延伸する曲線(2次元曲線)を意味し、ターン数が1周を超える曲線であってもよく、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0022】
第1磁性層11および第2磁性層12は、樹脂と、樹脂内に含まれる磁性体としての金属磁性粉とを有する。したがって、フェライトからなる磁性層と比較して、金属磁性粉により直流重畳特性を向上でき、樹脂により金属磁性粉間が絶縁されるので、高周波でのロス(鉄損)が低減される。
【0023】
樹脂は、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、ビニルエーテル系の何れかの樹脂を含む。これにより、絶縁信頼性が向上する。より具体的には、樹脂は、エポキシもしくはエポキシとアクリルの混合体もしくはエポキシ、アクリルとその他の混合体である。これにより、金属磁性粉間の絶縁性を担保することで、高周波でのロス(鉄損)を小さくできる。
【0024】
金属磁性粉の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下である。インダクタ部品1の製造段階においては、金属磁性粉の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径として算出することができる。金属磁性粉は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金である。金属磁性粉の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して、20vol%以上70vol%以下である。金属磁性粉の平均粒径が5μm以下である場合、直流重畳特性がより向上し、微粉によって高周波での鉄損を低減できる。金属磁性粉の平均粒径が0.1μm以上である場合、樹脂への均一な分散が容易となり、第1磁性層11および第2磁性層12の製造効率が向上する。なお、金属磁性粉に代えて又は金属磁性粉に加えて、NiZn系やMnZn系などのフェライトの磁性粉を用いてもよい。
【0025】
基板70は、第1磁性層11上に積層されている。基板70は、平板状であり、インダクタ部品1の製造プロセス上の土台となる部分である。基板70は、例えば、NiZn系やMnZn系などのフェライトからなる磁性体基板や、アルミナ、ガラスからなる非磁性体基板などの焼結体からなる。基板70の厚さは、例えば、300μm以上1000μm以下である。
【0026】
インダクタ配線100は、基板70の上面に設けられており、基板70の上面と平行な方向に沿って延在する。インダクタ配線100は、基板70の上面において、インダクタ配線100の軸を中心としてスパイラル状に巻き回されている。インダクタ配線100は、ターン数が1周を超えるスパイラル形状である。インダクタ配線100は、上側からみて、外周端から内周端に向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。なお、インダクタ配線100は、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0027】
インダクタ配線100の厚さは、例えば、40μm以上120μm以下である。インダクタ配線100は、具体的には、厚さが45μm、配線幅が50μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは3μm以上20μm以下であってよい。
【0028】
インダクタ配線100は、スパイラル部120と、第1パッド部111と、第2パッド部112とを有する。第1パッド部111は、第1垂直配線21に接続され、第2パッド部112は、第2垂直配線22に接続される。スパイラル部120は、第1パッド部111を外周端、第2パッド部112を内周端として、第1パッド部111および第2パッド部112から基板70の上面と平行な方向に沿って延在し、渦巻状に巻回されている。
【0029】
第1垂直配線21および第2垂直配線22は、インダクタ配線100から中心軸AX方向に延在し、素体10を貫通している。第1垂直配線21は、インダクタ配線100の第1パッド部111の上面から上側に延在し、層間絶縁層31の内部を貫通する第1ビア配線212と、第1ビア配線212から上側に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する第1柱状配線211とを有する。第2垂直配線22は、インダクタ配線100の第2パッド部112の上面から上側に延在し、層間絶縁層31を貫通する第2ビア配線222と、第2ビア配線222から上側に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する第2柱状配線221とを含む。
【0030】
インダクタ配線100は、特許請求の範囲に記載の「第1内部配線」の一例に相当する。第1柱状配線211および第2柱状配線221は、特許請求の範囲に記載の「第2内部配線」の一例に相当する。
【0031】
インダクタ配線100は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag,Au、Feもしくはこれらを含む合金などの低電気抵抗な金属材料からなる。これにより、インダクタ部品1の直流抵抗を下げることができる。第1垂直配線21および第2垂直配線22は、インダクタ配線100と同様の導電性材料からなる。
【0032】
絶縁層30は、インダクタ配線100の少なくとも一部を覆う。絶縁層30は、層間絶縁層31と樹脂壁32と下地絶縁層33とを有する。層間絶縁層31は、インダクタ配線100の上面を覆い、樹脂壁32は、インダクタ配線100の側面を覆い、下地絶縁層33は、インダクタ配線100の下面を覆う。具体的に述べると、樹脂壁32は、インダクタ配線100と同一面上に設けられ、インダクタ配線100のターン間や、インダクタ配線100の外径側および内径側に設けられている。層間絶縁層31は、インダクタ配線100の上面を覆い、インダクタ配線100の第1,第2パッド部111,112に対応した位置にビア孔を有する。層間絶縁層31は、隣り合う樹脂壁32の上端の間を埋めるように設けられている。
【0033】
層間絶縁層31、樹脂壁32および下地絶縁層33は、磁性体を含まない絶縁性材料からなり、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、ビニルエーテル系の何れかの樹脂を含む。これにより、絶縁信頼性が向上する。下地絶縁層33は、シリカなどの非磁性体のフィラーを含んでいてもよい。下地絶縁層33の厚さは、例えば、10μm以下である。
【0034】
第1外部端子51は、第2磁性層12の上面に設けられ、該上面から露出する第1柱状配線211の端面を覆っている。これにより、第1外部端子51は、インダクタ配線100の第1パッド部111に電気的に接続される。第2外部端子52は、第2磁性層12の上面に設けられ、該上面から露出する第2柱状配線221の端面を覆っている。これにより、第2外部端子52は、インダクタ配線100の第2パッド部112に電気的に接続される。
【0035】
第1外部端子51および第2外部端子52は、導電性材料からなる。第1外部端子51および第2外部端子52は、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuからなる金属層が内側から外側に向かってこの順に積層された3層構造である。
【0036】
被覆膜60は、絶縁性材料からなり、第2磁性層12の上面を覆い、柱状配線211,221および外部端子51,52の端面を露出させている。被覆膜60によって、インダクタ部品1の表面の絶縁性を確保することができる。なお、被覆膜60が第1磁性層11の下面側に形成されていてもよい。
【0037】
図3は、
図2のA部の拡大図である。
図3は、第2ビア配線222の中心軸AXを含む第1断面の一部を示す。
【0038】
図3に示すように、層間絶縁層31は、インダクタ配線100(第1内部配線)と第2柱状配線221(第2内部配線)との間に配置されている。層間絶縁層31は、インダクタ配線100側の第1主面31aと、第2柱状配線221側の第2主面31bと、第1主面31aと第2主面31bとの間を貫通するビア孔31hと、を有する。第2ビア配線222は、ビア孔31hに挿入され、インダクタ配線100と第2柱状配線221とを電気的に接続している。
【0039】
第2ビア配線222は、インダクタ配線100に接触する第1部分P1と、第2柱状配線221に接触する第2部分P2とを有する。第1部分P1の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなり、第2部分P2の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなる。
【0040】
ここで、
図3に示す断面において、第1部分P1の幅とは、中心軸AXに直交する方向(X方向)の大きさをいう。同様に、
図3に示す断面において、第2部分P2の幅とは、中心軸AXに直交する方向(X方向)の大きさをいう。
【0041】
図3では、便宜上第1部分P1と第2部分P2との境界、および、第2部分P2と第2柱状配線221との境界を二点鎖線で示した。なお、第2部分P2の上面の幅が、第2柱状配線221の下面の幅と同一の場合、第2部分P2と第2柱状配線221との境界は、層間絶縁層31の第2主面31bを含む平面とすればよい。
【0042】
具体的に述べると、第1部分P1の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって連続的に狭くなる。より具体的に述べると、
図3に示す断面において、第1部分P1の両側面の各々は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かうに従って中心軸AXに近づくように傾斜している。要するに、
図3に示す断面において、第1部分P1は、台形状である。
【0043】
また、第2部分P2の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって連続的に広くなる。より具体的に述べると、
図3に示す断面において、第2部分P2の両側面の各々は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かうに従って中心軸AXから離隔するように傾斜している。要するに、
図3に示す断面において、第2部分P2は、逆台形状である。
【0044】
この実施形態では、第1部分P1と第2部分P2は、接触している。言い換えると、第1部分P1と第2部分P2は、Z方向に連続して設けられている。第1部分P1と第2部分P2は、一体に形成されている。これにより、第2ビア配線222は、くびれ形状を有している。
【0045】
なお、第1部分P1の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなるのであれば、第1部分P1の形状は、特に限定されない。例えば、
図3に示す断面において、第1部分P1の一方側の側面がZ方向に平行に配置されていてもよい。また、例えば、第1部分P1の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって段階的に狭くなっていてもよい。
【0046】
同様に、第2部分P2の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなるのであれば、第2部分P2の形状は、特に限定されない。例えば、
図3に示す断面において、第2部分P2の一方側の側面がZ方向に平行に配置されていてもよい。また、例えば、第2部分P2の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって段階的に広くなっていてもよい。
【0047】
また、この実施形態では、
図2に示すように、第1ビア配線212においても第2ビア配線222と同様の構成を有している。すなわち、第1ビア配線212は、インダクタ配線100に接触する第1部分と、第1柱状配線211に接触する第2部分とを有する。第1部分の幅は、インダクタ配線100から第1柱状配線211に向かって狭くなり、第2部分の幅は、インダクタ配線100から第1柱状配線211に向かって広くなる。第1ビア配線212は、くびれ形状を有している。
【0048】
インダクタ部品1によれば、第2ビア配線222の第1部分P1の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなるため、第2ビア配線222が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かう方向に層間絶縁層31から抜けることを抑制できる。これにより、第1部分P1とインダクタ配線100との接続強度を向上することができる。また、第2ビア配線222の第2部分P2の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなるため、第2ビア配線222が、第2柱状配線221からインダクタ配線100に向かう方向に層間絶縁層31から抜けることを抑制できる。これにより、第2部分P2と第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。以上により、第2ビア配線222とインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。
【0049】
言い換えると、第1部分P1の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなり、第2部分P2の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなるので、層間絶縁層31が第2ビア配線222に食い込み、第2ビア配線222の層間絶縁層31からの抜けを抑制することができる。これにより、第2ビア配線222とインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。
【0050】
また、第1部分P1のインダクタ配線100側の幅は、広くなるので、第1部分P1のインダクタ配線100との接触面積を大きくできる。第2部分P2の第2柱状配線221側の幅は、広くなるので、第2部分P2の第2柱状配線221との接触面積を大きくできる。これにより、第2ビア配線222とインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。
【0051】
また、インダクタ部品1によれば、第1ビア配線212においても、第1部分の幅がインダクタ配線100から第1柱状配線212に向かって狭くなり、第2部分の幅がインダクタ配線100から第1柱状配線212に向かって広くなるので、第2ビア配線222と同様の上記作用効果を奏する。すなわち、第1ビア配線212とインダクタ配線100および第1柱状配線211との接続強度を向上することができる。
【0052】
好ましくは、第2ビア配線222の中心軸AXを含み第1断面(XZ断面)に直交する第2断面(YZ断面)において、第1部分P1の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなり、第2部分P2の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなる。これにより、第2ビア配線222とインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度をより向上することができる。好ましくは、第1ビア配線212においても同様の構成である。
【0053】
好ましくは、
図3に示すように、第1部分P1と第2部分P2は、接触する。第1部分P1は、インダクタ配線100に接する第1端面P1e1と、第2部分P2に接する第2端面P1e2とを含む。第2部分P2は、第2柱状配線221に接する第1端面P2e1と、第1部分P1に接する第2端面P2e2とを含む。第1断面において、第1部分P1の第2端面P1e2の幅W1と第2部分P2の第2端面P2e2の幅W4は、同じである。第1部分P1の第1端面P1e1の幅W2および第2部分P2の第1端面P2e1の幅W3は、第1部分P1の第2端面P1e2の幅W1および第2部分P2の第2端面P2e2の幅W4よりも大きい。
【0054】
ここで、第1断面とは、第2ビア配線222の幅が最大となる断面(すなわち、
図3に示す断面)である。上記構成によれば、第1部分P1の第1端面P1e1のインダクタ配線100との接触面積を大きくでき、第2ビア配線222とインダクタ配線100の接続強度を向上できる。第2部分P2の第1端面P2e1の第2柱状配線221との接触面積を大きくでき、第2ビア配線222と第2柱状配線221の接続強度を向上できる。
【0055】
なお、第1ビア配線212においても上記と同様の構成であってもよい。すなわち、第1ビア配線212においても、第1断面において、第1部分の第2端面の幅と第2部分の第2端面の幅は、同じであり、第1部分の第1端面の幅および第2部分の第1端面の幅は、第1部分の第2端面の幅および第2部分の第2端面の幅よりも大きくてもよい。ここで、第1断面とは、第1ビア配線212の幅が最大となる断面である。具体的に述べると、第1断面は、Z方向から見て第1ビア配線212の対角を通る断面である。この構成によれば、第2ビア配線222の場合と同様の作用効果を奏する。
【0056】
好ましくは、第1断面(すなわち、
図3に示す断面)において、第2ビア配線222の第1部分P1の第2端面P1e2の幅W1は、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W2の0.8倍よりも大きい。
【0057】
上記構成によれば、第1部分P1の第2端面P1e2の幅W1が、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W2の0.8倍よりも大きいので、第1部分P1の第2端面P1e2側の断面積を確保でき、第2ビア配線222の強度を確保でき、また、第2ビア配線222の電気抵抗を低減できる。なお、第1ビア配線212においても同様の構成であってもよい。
【0058】
好ましくは、
図2に示すように、素体10のインダクタ配線100よりも第2柱状配線221に近い側に設けられ、第2柱状配線221に電気的に接続された第2外部端子52を備える。
図3に示すように、第2ビア配線222の第1部分P1は、インダクタ配線100に接する第1端面P1e1を含み、第2部分P2は、第2柱状配線221に接する第1端面P2e1を含む。第1断面において、第2部分P2の第1端面P2e1の幅W3は、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W2よりも大きい。
【0059】
ここで、第1断面とは、第2ビア配線222の幅が最大となる断面(すなわち、
図3に示す断面)である。上記構成によれば、第2外部端子52は、素体10のインダクタ配線100よりも第2柱状配線221に近い側に設けられているので、インダクタ部品1の実装時の応力が、インダクタ配線100側よりも第2柱状配線221側にかかりやすくなる。このとき、第2ビア配線222の第2部分P2の第1端面P2e1の幅W3が、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W2よりも大きいので、第2部分P2の第1端面P2e1の第2柱状配線221との接触面積を第1部分P1の第1端面P1e1のインダクタ配線100との接触面積よりも大きくでき、実装時の応力による第2ビア配線222と第2柱状配線221の剥がれを効果的に抑制できる。
【0060】
同様に、好ましくは、
図2に示すように、素体10のインダクタ配線100よりも第1柱状配線211に近い側に設けられ、第1柱状配線211に電気的に接続された第1外部端子51を備える。第1ビア配線212の第1部分は、インダクタ配線100に接する第1端面を含み、第2部分は、第1柱状配線211に接する第1端面を含む。第1断面において、第2部分の第1端面の幅は、第1部分の第1端面の幅よりも大きい。
【0061】
ここで、第1断面とは、第1ビア配線212の幅が最大となる断面である。具体的に述べると、第1断面は、Z方向から見て第1ビア配線212の対角を通る断面である。上記構成によれば、第1外部端子51は、素体10のインダクタ配線100よりも第1柱状配線211に近い側に設けられているので、インダクタ部品1の実装時の応力が、インダクタ配線100側よりも第1柱状配線211側にかかりやすくなる。このとき、第1ビア配線212の第2部分の第1端面の幅が、第1部分の第1端面の幅よりも大きいので、第2部分の第1端面の第1柱状配線211との接触面積を第1部分の第1端面のインダクタ配線100との接触面積よりも大きくでき、実装時の応力による第1ビア配線212と第1柱状配線211の剥がれを効果的に抑制できる。
【0062】
好ましくは、層間絶縁層31のビア孔31hの内面の表面粗さの平均値は、1μm以下である。ここで、上記表面粗さの測定方法について説明する。
図4は、
図3のA部の拡大図である。ビア孔31hの内面の一部をSEM(Scanning Electron Microscope)等で2000倍程度に拡大して観察(視野広さ:1辺5μm程度)したとき、
図4の模式図に示すような断面写真が得られる。ビア配線の側面に沿って存在する凸部Pと凹部Cに基づいて最小二乗法などを用いてビア配線の側面に沿って引かれる基準線L0を算出する。基準線L0からの垂直距離が最大となる凹部Cおよび凸部Pに基づいて表面粗さを求める。凸部Pの頂部を通るように基準線L0と平行な第1直線L1を引き、最大となる凹部Cの底部を通るように基準線L0と平行な第2直線L2を引く。この2つの直線L1、L2の垂直距離dを測定する。そして、ビア孔31hの内面のうち、第1部分P1に対応する部分で2か所、および、第2部分P2に対応する部分で2か所の合計4か所で垂直距離dを測定し、平均値を表面粗さとする。上記構成によれば、表皮効果における顕著な高周波での抵抗損失を抑制できる。
【0063】
(製造方法)
次に、
図5Aから
図5Mを用いてインダクタ部品1の製造方法について説明する。
図5Aから
図5Mは、
図2のインダクタ配線100の第2パッド部112および第2垂直配線22に対応した図である。なお、第1パッド部111および第1垂直配線21についても同様であり、その説明を省略する。
【0064】
図5Aに示すように、基板70上に磁性体を含有しない下地絶縁層33を形成する。基板70は、例えば、焼結フェライトからなり、平板状である。
【0065】
下地絶縁層33は、例えば、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂や無機材料などからなる。基板70上に、ポリイミド系樹脂を印刷、塗布などによってコーティングした後、フォトリソグラフィ法を用いたパターニングにより、インダクタ配線100を形成する領域のポリイミド系樹脂を残す。これにより、下地絶縁層33が形成される。無機材料からなる絶縁膜は、例えば、基板70上に、蒸着、スパッタリング、CVDなどのドライプロセスによって形成される。
【0066】
図5Bに示すように、下地絶縁層33上にシード層81を形成する。具体的に述べると、シード層81の材料(例えば、チタン/銅合金)をスパッタにより下地絶縁層33の上面に付着させ、サブトラクティブ法によってパターニングして、シード層81を形成する。
【0067】
図5Cに示すように、下地絶縁層33上に樹脂壁32を形成する。樹脂壁32は、例えば、感光性の永久フォトレジストにより形成される。感光性の永久フォトレジストとは、加工処理をした後、取り除かないフォトレジストである。具体的に述べると、樹脂壁32の材料を基板70上に印刷し露光する。その後、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートペグミア)などの有機溶剤とTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などのアルカリ系現像液を使用して現像を行う。これにより、露光されなかった部分の材料が除去されて、樹脂壁32が形成される。
【0068】
図5Dに示すように、シード層81に第2パッド部112およびスパイラル部120を形成する。具体的に述べると、シード層81に電解めっきによりめっきを成長させる。これにより、樹脂壁32の間に第2パッド部112およびスパイラル部120が形成される。
【0069】
図5Eから
図5Hは、第2ビア配線を設ける位置の拡大図である。
図5Eに示すように、第2パッド部112の上面、および図示しないスパイラル部120の上面を覆うように、感光性絶縁層310を配置する。具体的には、第2パッド部112の上面およびスパイラル部120の上面を覆うように、感光性絶縁フィルムをラミネートする。感光性絶縁フィルムもまた、感光性の永久フォトレジスト製である。感光性絶縁フィルムは、ネガ型フィルムを用いることが好ましい。なお、以下では、感光性絶縁フィルムはネガ型フィルムを用いたものとして説明する。
【0070】
図5Fに示すように、感光性絶縁層310上にフォトマスクMを配置し、フォトマスクM上から例えば紫外線Lを感光性絶縁層310に照射し、感光性絶縁層310を露光する。この際、露光機の焦点が感光性絶縁層310の上面よりも上に位置するようにして、感光性絶縁層310の露光量を低下させる。これにより、感光性絶縁層310の上部に硬化部311が形成され、感光性絶縁層310が半硬化状態となる。露光機は、焦点調整可能な投影型の露光機を用いることが好ましい。なお、
図5Fに示していないが、硬化部311と第2パッド部112の間の部分においても、露光時に発生する熱により感光性絶縁層310はやや硬化している。この熱は、硬化部311から第2パッド部112に向かうに従って徐々に低減する。そのため、この熱によりやや硬化している部分は、硬化部311から第2パッド部112に向かうに従って、その幅が狭くなるように形成されている。
【0071】
図5Gに示すように、露光後ベーク(PEB;Post Exposure Bake)を行い、
図5Fに示した硬化部311と第2パッド部112の間の部分において、感光性絶縁層310を硬化させる。この際、上述したやや硬化している部分の硬化が促進される。そのため、露光後ベーク後では、硬化部311の側面が、第2ビア配線のくびれ形状に対応した形状となる。PEBの条件としては、例えば、通常のビア形成の場合と比較して、温度は+10~20℃とし、時間は2~3倍とする。
【0072】
図5Hに示すように、現像し、硬化部311以外の部分を除去する。これにより、くびれ形状を有したビア孔31hが形成される。なお、ビア孔31hのくびれ位置は、露光時の焦点位置を変更することにより制御できる。
【0073】
図5Iに示すように、ビア孔31hの内面、第2パッド部112の上面の露出部、層間絶縁層31および樹脂壁32の上面に、シード層82をスパッタにより形成する。
【0074】
図5Jに示すように、第2パッド部112の上面の露出部に対応する部分に第2ビア配線222および第2柱状配線221を形成する。具体的には、シード層82上にレジスト膜320を形成し、レジスト膜320の第2ビア配線222に対応する位置に開口部を設ける。シード層82に電解めっきによりめっきを成長させて、上記の開口部にめっき層を形成する。これにより、開口部に第2ビア配線222および第2柱状配線221を形成する。
【0075】
このとき、好ましくは、ビア孔31hの内面のうちの最も狭い幅(つまり、第1部分P1の第2端面P1e2の幅W1に相当)は、ビア孔31hの内面のうちの第2パッド部112側の幅(つまり、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W2に相当)の0.8倍よりも大きい。上記構成によれば、めっき液がビア孔31hの第2パッド部112側に入り込み難くなることを回避でき、めっき時に第1部分P1の幅方向外側において第1部分P1と第2パッド部112と層間絶縁層31とに囲まれる領域に、ボイドの発生を回避できる。
【0076】
図5Kに示すように、レジスト膜320を剥離し、露出したシード層82を除去して、層間絶縁層31上に第2磁性層12を形成する。さらに、基板70の下面に第1磁性層11を形成する。第1磁性層11および第2磁性層12は、層間絶縁層31上あるいは基板70の下面に、磁性層がプレスされることにより形成される。第2磁性層12をプレスする前に、基板70の一部を研削して厚みを調整する。基板70を除去してもよい。
【0077】
図5Lに示すように、第2磁性層12を研削して、第2柱状配線221の上面を露出させる。
【0078】
図5Mに示すように、第2柱状配線221の上面に第2外部端子52を形成し、他の部分の第2磁性層12を覆う被覆膜60を形成する。被覆膜60は、例えば、ソルダーレジストにより形成される。その後、ダイサー等により個片化して、インダクタ部品1を製造する。
【0079】
<第2実施形態>
図6は、インダクタ部品の第2実施形態を示す模式断面図である。
図6は、
図3に対応する。第2実施形態は、第1実施形態とは、ビア配線の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図6に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、第2ビア配線222Aの中心軸AXを含む第1断面において、第2ビア配線222Aは、インダクタ配線100(第2パッド部112)に接触する第1部分P1と、第2柱状配線221に接触する第2部分P2とを有する。第1部分P1の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなり、第2部分P2の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなる。
【0081】
具体的に述べると、第1部分P1の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって連続的に広くなる。より具体的に述べると、
図6に示す断面において、第1部分P1の両側面の各々は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かうに従って中心軸AXから離隔するように傾斜している。要するに、
図6に示す断面において、第1部分P1は、逆台形状である。
【0082】
また、第2部分P2の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって連続的に狭くなる。より具体的に述べると、
図6に示す断面において、第2部分P2の両側面の各々は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かうに従って中心軸AXに接近するように傾斜している。要するに、
図6に示す断面において、第2部分P2は、台形状である。
【0083】
この実施形態では、第1部分P1と第2部分P2は、接触している。言い換えると、第1部分P1と第2部分P2は、Z方向に連続して設けられている。第1部分P1と第2部分P2は、一体に形成されている。
【0084】
なお、第1部分P1の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなるのであれば、第1部分P1の形状は、特に限定されない。例えば、
図6に示す断面において、第1部分P1の一方側の側面がZ方向に平行に配置されていてもよい。また、例えば、第1部分P1の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって段階的に広くなっていてもよい。
【0085】
同様に、第2部分P2の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなるのであれば、第2部分P2の形状は、特に限定されない。例えば、
図6に示す断面において、第2部分P2の一方側の側面がZ方向に平行に配置されていてもよい。また、例えば、第2部分P2の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって段階的に狭くなっていてもよい。
【0086】
また、この実施形態では、第1ビア配線においても第2ビア配線222Aと同様の構成を有している。すなわち、第1ビア配線は、インダクタ配線100に接触する第1部分と、第1柱状配線211に接触する第2部分とを有する。第1部分の幅は、インダクタ配線100から第1柱状配線211に向かって広くなり、第2部分の幅は、インダクタ配線100から第1柱状配線211に向かって狭くなる。
【0087】
インダクタ部品1Aによれば、第2ビア配線222Aの第1部分P1の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなるため、第2ビア配線222Aが、第2柱状配線221からインダクタ配線100に向かう方向に層間絶縁層31から抜けることを抑制できる。これにより、第1部分P1とインダクタ配線100との接続強度を向上することができる。また、第2ビア配線222Aの第2部分P2の幅が、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなるため、第2ビア配線222Aが、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かう方向に層間絶縁層31から抜けることを抑制できる。これにより、第2部分P2と第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。以上により、第2ビア配線222Aとインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。
【0088】
言い換えると、第1部分P1の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなり、第2部分P2の幅がインダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなるので、第2ビア配線222Aが層間絶縁層31に食い込み、第2ビア配線222Aの層間絶縁層31からの抜けを抑制することができる。これにより、第2ビア配線222Aとインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度を向上することができる。
【0089】
好ましくは、第2ビア配線222Aの中心軸AXを含み第1断面(XZ断面)に直交する第2断面(YZ断面)において、第1部分P1の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって広くなり、第2部分P2の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって狭くなる。これにより、第2ビア配線222Aとインダクタ配線100および第2柱状配線221との接続強度をより向上することができる。好ましくは、第1ビア配線においても同様の構成である。
【0090】
好ましくは、
図6に示すように、第1部分P1と第2部分P2は、接触する。第1部分P1は、インダクタ配線100に接する第1端面P1e1と、第2部分P2に接する第2端面P1e2とを含む。第2部分P2は、第2柱状配線221に接する第1端面P2e1と、第1部分P1に接する第2端面P2e2とを含む。第1断面において、第1部分P1の第2端面P1e2の幅W5と第2部分P2の第2端面P2e2の幅W8は、同じである。第1部分P1の第1端面P1e1の幅W6および第2部分P2の第1端面P2e1の幅W7は、第1部分P1の第2端面P1e2の幅W5および第2部分P2の第2端面P2e2の幅W8よりも小さい。ここで、第1断面とは、第2ビア配線222Aの幅が最大となる断面(すなわち、
図6に示す断面)である。
【0091】
なお、第1ビア配線においても上記と同様の構成であってもよい。すなわち、第1ビア配線においても、第1断面において、第1部分の第2端面の幅と第2部分の第2端面の幅は、同じであり、第1部分の第1端面の幅および第2部分の第1端面の幅は、第1部分の第2端面の幅および第2部分の第2端面の幅よりも小さくてもよい。ここで、第1断面とは、第1ビア配線の幅が最大となる断面である。具体的に述べると、第1断面は、Z方向から見て第1ビア配線の対角を通る断面である。この構成によれば、第2ビア配線222Aの場合と同様の作用効果を奏する。
【0092】
好ましくは、
図6に示すように、第1断面において、第2部分P2の第1端面P2e1の幅W7は、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W6よりも大きい。ここで、第1断面とは、第2ビア配線222Aの幅が最大となる断面(すなわち、
図6に示す断面)である。上記構成によれば、第2外部端子52は、素体10のインダクタ配線100よりも第2柱状配線221に近い側に設けられているので、インダクタ部品1の実装時の応力が、インダクタ配線100側よりも第2柱状配線221側にかかりやすくなる。このとき、第2ビア配線222Aの第2部分P2の第1端面P2e1の幅W7が、第1部分P1の第1端面P1e1の幅W6よりも大きいので、第2部分P2の第1端面P2e1の第2柱状配線221との接触面積を第1部分P1の第1端面P1e1のインダクタ配線100との接触面積よりも大きくでき、実装時の応力による第2ビア配線222Aと第2柱状配線221の剥がれを効果的に抑制できる。
【0093】
同様に、好ましくは、第1ビア配線の第1部分は、インダクタ配線100に接する第1端面を含み、第2部分は、第1柱状配線211に接する第1端面を含む。第1断面において、第2部分の第1端面の幅は、第1部分の第1端面の幅よりも大きい。ここで、第1断面とは、第1ビア配線の幅が最大となる断面である。具体的に述べると、第1断面は、Z方向から見て第1ビア配線の対角を通る断面である。上記構成によれば、第1外部端子51は、素体10のインダクタ配線100よりも第1柱状配線211に近い側に設けられているので、インダクタ部品1の実装時の応力が、インダクタ配線100側よりも第1柱状配線211側にかかりやすくなる。このとき、第1ビア配線の第2部分の第1端面の幅が、第1部分の第1端面の幅よりも大きいので、第2部分の第1端面の第1柱状配線211との接触面積を第1部分の第1端面のインダクタ配線100との接触面積よりも大きくでき、実装時の応力による第1ビア配線と第1柱状配線211の剥がれを効果的に抑制できる。
【0094】
第2実施形態のインダクタ部品1Aの製造方法について説明する。
図5Aから
図5Mに示す第1実施形態のインダクタ部品1の製造方法と同様であるが、
図5Fの工程において、露光機の焦点を第2パッド部112の表面より下に位置するよう調整して露光すればよい。
【0095】
<第3実施形態>
図7は、インダクタ部品の第3実施形態を示す模式断面図である。
図7は、
図3に対応する。第3実施形態は、第1実施形態とは、ビア配線の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
図7に示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、第2ビア配線222Bは、第1部分P1と、第2部分P2と、第1部分P1と第2部分P2との間に位置する第3部分P3とを有する。第1部分P1は、第1実施形態に記載の第1部分P1と同様の構成であり、第2部分P2は、第1実施形態に記載の第2部分P2と同様の構成である。
【0097】
第3部分P3の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって、一定である。なお、第3部分P3の幅は、インダクタ配線100から第2柱状配線221に向かって、狭くなっていてもよく、または、広くなっていてもよい。上記構成によれば、第3部分P3を有するので、第2ビア配線222Bの中心軸AX方向の長さを長くすることができ、設計自由度が広がる。
【0098】
第3実施形態のインダクタ部品1Bの製造方法について説明する。
図5Aから
図5Mに示す第1実施形態のインダクタ部品1の製造方法と同様であるが、
図5Hの工程において、現像後に、レーザを上部から照射するなどして、第1部分P1と第2部分P2の境界に位置する突起部分を除去すればよい。
【0099】
なお、第1ビア配線においても第2ビア配線222Bと同様の構成を有していてもよい。また、第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3に加えて、他の部分を複数有していてもよい。
【0100】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0101】
前記実施形態では、インダクタ配線が第1内部配線に相当し、柱状配線が第2内部配線に相当したが、第1内部配線および第2内部配線は、これらに限定されない。例えば、インダクタ部品が、Z方向に並んで配置された第1インダクタ配線と第2インダクタ配線とを含み、第1内部配線が第1インダクタ配線であり、第2内部配線が第2インダクタ配線であってもよい。
【0102】
本開示は、下記の態様を含む。
<1>
素体と、
前記素体内に設けられた第1内部配線および第2内部配線と、
前記素体内に設けられ前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビア孔を有する層間絶縁層と、
前記ビア孔に挿入され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と
を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記第1内部配線に接触する第1部分と、前記第2内部配線に接触する第2部分とを有し、前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなる、インダクタ部品。
<2>
前記ビア配線の中心軸を含み、前記第1断面に直交する第2断面において、
前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなる、<1>に記載のインダクタ部品。
<3>
前記第1部分と前記第2部分は、接触し、
前記第1部分は、前記第1内部配線に接する第1端面と、前記第2部分に接する第2端面とを含み、前記第2部分は、前記第2内部配線に接する第1端面と、前記第1部分に接する第2端面とを含み、
前記第1断面において、
前記第1部分の前記第2端面の幅と前記第2部分の前記第2端面の幅は、同じであり、
前記第1部分の前記第1端面の幅および前記第2部分の前記第1端面の幅は、前記第1部分の前記第2端面の幅および前記第2部分の前記第2端面の幅よりも大きい、<1>または<2>に記載のインダクタ部品。
<4>
前記第1断面において、
前記第1部分の前記第2端面の幅は、前記第1部分の前記第1端面の幅の0.8倍よりも大きい、<3>に記載のインダクタ部品。
<5>
素体と、
前記素体内に設けられた第1内部配線および第2内部配線と、
前記素体内に設けられ前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビア孔を有する層間絶縁層と、
前記ビア孔に挿入され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と
を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記第1内部配線に接触する第1部分と、前記第2内部配線に接触する第2部分とを有し、前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなる、インダクタ部品。
<6>
前記ビア配線の中心軸を含み、前記第1断面に直交する第2断面において、
前記第1部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって広くなり、前記第2部分の幅は、前記第1内部配線から前記第2内部配線に向かって狭くなる、<5>に記載のインダクタ部品。
<7>
さらに、前記素体の前記第1内部配線よりも前記第2内部配線に近い側に設けられ、前記第2内部配線に電気的に接続された外部端子を備え、
前記第1部分は、前記第1内部配線に接する第1端面を含み、前記第2部分は、前記第2内部配線に接する第1端面を含み、
前記第1断面において、
前記第2部分の前記第1端面の幅は、前記第1部分の前記第1端面の幅よりも大きい、<1>から<6>の何れか一つに記載のインダクタ部品。
<8>
前記ビア孔の内面の表面粗さの平均値は、1μm以下である、<1>から<7>の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【符号の説明】
【0103】
1、1A、1B インダクタ部品
10 素体
11 第1磁性層
12 第2磁性層
21 第1垂直配線
211 第1柱状配線
212 第1ビア配線
22 第2垂直配線
221 第2柱状配線
222、222A、222B 第2ビア配線
30 絶縁層
31 層間絶縁層
31a 第1主面
31b 第2主面
31h ビア孔
32 樹脂壁
33 下地絶縁層
51 第1外部端子
52 第2外部端子
60 被覆膜
70 基板
81,82 シード層
100 インダクタ配線
111 第1パッド部
112 第2パッド部
120 スパイラル部
310 感光性絶縁層
320 レジスト膜
C 凹部
P 凸部
d 距離
W1~W8 幅
AX 中心軸
P1 第1部分
P2 第2部分
P3 第3部分
P1e1 第1部分の第1端面
P1e2 第1部分の第2端面
P2e1 第2部分の第1端面
P2e2 第2部分の第2端面