(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058406
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240418BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165748
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】冨永 隆一朗
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070BA12
5E070CB13
5E070CB17
(57)【要約】
【課題】インダクタ部品において、ビア配線と内部配線とのシェア強度を高める。
【解決手段】インダクタ部品は、第1内部配線と、第2内部配線と、前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビアを有する層間絶縁層と、前記ビアに挿通され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と、を備え、前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、前記ビア配線は、前記中心軸に平行な方向において前記層間絶縁層と前記第1内部配線とに挟まれた、くさび部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内部配線と、
第2内部配線と、
前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビアを有する層間絶縁層と、
前記ビアに挿通され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と、を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記中心軸に平行な方向において前記層間絶縁層と前記第1内部配線とに挟まれた、くさび部を有する、インダクタ部品。
【請求項2】
前記第1断面において、
前記ビアは、平坦な内面を有し
前記内面は、前記第1内部配線側の第1開口端と、前記第2内部配線側の第2開口端とを含み、
前記第1開口端を含み、前記中心軸に平行な直線を第1基準線として、
前記くさび部は、前記第1基準線に対して前記中心軸の反対側に位置し、
前記第1内部配線と前記層間絶縁層との交点から前記第1開口端まで間の、前記中心軸に直交する方向における距離は、3μm以上10μm以下である、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1断面において、
前記第1主面は、前記第1内部配線と接触する第1部分を含み、
前記第1部分を含む直線を第2基準線として、
前記第1内部配線は、前記第2基準線より凹んだ凹部を有し、
前記ビア配線は、前記凹部に入り込む凸部を有する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記第1断面において、
前記ビアは、平坦な内面を有し
前記内面は、前記第1内部配線側の第1開口端と、前記第2内部配線側の第2開口端とを含み、
前記第1主面は、前記第1内部配線と接触する第1部分を含み、
前記層間絶縁層は、前記内面の前記第1開口端と前記第1部分の前記第1開口端側の端部との間に接続部を有し、
前記接続部は、凸曲面を含む、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
さらに、素体を備え、
前記第1内部配線および前記第2内部配線は、前記素体内に設けられ、
前記第1内部配線および前記第2内部配線の少なくとも一方は、インダクタ配線である、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記第1内部配線および前記第2内部配線はいずれも、インダクタ配線である、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記素体は、磁性層を含む、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記素体は、非磁性の絶縁層を含む、請求項5に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品としては、特開2019-212692号公報(特許文献1)に記載されたものがある。従来の電子部品は、例えば、2つの内部配線と、これらの間に配置され、ビアを有する層間絶縁層と、ビアに挿通するビア配線と、を有する。ビア配線は、2つの内部配線を電気に接続している。ビアは、深さ方向に径が縮小するテーパー形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電子部品では、ビア配線と内部配線とのシェア強度が十分ではなく、接続信頼性が低下する場合がある。
【0005】
本開示の目的は、ビア配線と内部配線とのシェア強度に優れるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
第1内部配線と、
第2内部配線と、
前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビアを有する層間絶縁層と、
前記ビアに挿通され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と、を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記中心軸に平行な方向において前記層間絶縁層と前記第1内部配線とに挟まれた、くさび部を有する。
【0007】
前記態様によれば、ビア配線と内部配線とのシェア強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、ビア配線と内部配線とのシェア強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
【
図4A】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4B】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4C】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4D】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4E】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4F】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4G】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4H】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4I】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4J】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4K】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5】インダクタ部品の第2実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】インダクタ部品の第3実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】インダクタ部品の第4実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0011】
[第1実施形態]
(構成)
図1は、インダクタ部品の一実施形態を示す透視平面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2は、ビア配線の中心軸AXを含むXZ断面を示す。XZ断面は、中心軸AXを含む第1断面の一例である。
図2では便宜上、後述するビア配線のくびれ部および凸部、第1パッド部の凹部、シード層を省略している。これらは、
図3以降の図面にて示す。
【0012】
図中、インダクタ部品1の厚み方向をZ方向とする。インダクタ部品1のZ方向に直交する平面において、インダクタ部品1の長手方向であり、第1外部端子51および第2外部端子52が並ぶ方向である方向をX方向とする。長手方向に直交する方向をY方向とする。XZ断面図は、インダクタ部品1を、X方向に延びる直線とZ方向に延びる直線とで形成され、かつビア配線の中心軸AXを含む面で切断されることにより得られる。
【0013】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0014】
図1と
図2に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、インダクタ配線100と、絶縁層30と、第1垂直配線21および第2垂直配線22と、第1外部端子51および第2外部端子52とを有する。なお、
図1では、便宜上、外部端子を二点鎖線で描いている。また、
図1では、素体10および被覆膜60は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。
【0015】
素体10は、絶縁基板90と、絶縁基板90上に配置された絶縁層30と、絶縁層30上に配置された被覆膜60とを有する。絶縁基板90と絶縁層30と被覆膜60とは、インダクタ配線100を挟むように、中心軸AX方向に沿って積層されている。つまり、インダクタ配線100は、素体10内に設けられている。絶縁基板90と絶縁層30との間には、後述する基板70が配置されていてもよい。
【0016】
以下、上方向とは、中心軸AX方向(あるいはZ方向)において、絶縁基板90から被覆膜60に向かう方向をいう。要素の上面とは、要素の上方向の面をいう。下方向とは、中心軸AX方向において、被覆膜60から絶縁基板90に向かう方向をいう。要素の下面とは、要素の下方向の面をいう。
【0017】
幅方向とは、中心軸AX方向に直交する方向であり、X方向ともいう。要素の幅とは、幅方向の要素の長さをいう。高さ方向とは、中心軸AX方向に平行な方向であり、上記の通り、Z方向ともいう。要素の高さとは、高さ方向の要素の長さをいう。
【0018】
インダクタ配線とは、平面上で延伸する曲線(2次元曲線)を意味し、ターン数が1周を超える曲線であってもよく、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0019】
インダクタ配線100は、絶縁基板90の上面に設けられており、絶縁基板90の上面と平行な方向に沿って延在する。インダクタ配線100は、絶縁基板90の上面において、インダクタ配線100の軸を中心としてスパイラル状に巻き回されている。インダクタ配線100は、ターン数が1周を超えるスパイラル形状である。インダクタ配線100は、上側からみて、外周端から内周端に向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。なお、インダクタ配線100は、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0020】
インダクタ配線100の厚さは、例えば、40μm以上120μm以下である。インダクタ配線100は、具体的には、厚さが45μm、配線幅が50μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは3μm以上20μm以下であってよい。
【0021】
インダクタ配線100は、スパイラル部120と、第1パッド部111と、第2パッド部112とを有する。第1パッド部111は、第1垂直配線21に接続され、第2パッド部112は、第2垂直配線22に接続される。スパイラル部120は、第1パッド部111を外周端とし、第2パッド部112を内周端として、第1パッド部111および第2パッド部112から絶縁基板90の上面と平行な方向に沿って延在し、渦巻状に巻回されている。
【0022】
絶縁基板90は、インダクタ配線100を支持している。絶縁基板90は、磁性体を含まない絶縁性材料からなり、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、アクリル系、ビニルエーテル系の何れかの樹脂を含む。
【0023】
被覆膜60は、インダクタ配線100を保護している。被覆膜60もまた、磁性体を含まない上記の絶縁性材料からなる。被覆膜60は、例えば、ソルダーレジストにより形成される。
【0024】
絶縁層30は、インダクタ配線100の少なくとも一部を覆う。絶縁層30は、層間絶縁層31と樹脂壁32と下地絶縁層33とを有する。層間絶縁層31は、インダクタ配線100の上面を覆い、樹脂壁32は、インダクタ配線100の側面を覆い、下地絶縁層33は、インダクタ配線100の下面を覆う。具体的に述べると、樹脂壁32は、インダクタ配線100と同一面に設けられ、インダクタ配線100のターン間や、インダクタ配線100の外径側および内径側に設けられている。層間絶縁層31は、インダクタ配線100の上面を覆い、インダクタ配線100の第1,第2パッド部111,112に対応した位置にビアを有する。絶縁層30は、2つの層間絶縁層31と樹脂壁32と下地絶縁層33とから構成されるが、1つ、2つまたは4つ以上の絶縁層から構成されていてもよい。
【0025】
絶縁層30は、感光性の永久フォトレジストにより形成される。感光性の永久フォトレジストとは、加工処理をした後、取り除かないフォトレジストである。具体的には、絶縁層30磁性体を含まない上記の絶縁性材料からなる。これにより、絶縁信頼性が向上する。下地絶縁層33は、シリカなどの非磁性体のフィラーを含んでいてもよい。下地絶縁層33の厚さは、例えば、10μm以下である。
【0026】
第1垂直配線21および第2垂直配線22は、インダクタ配線100から中心軸AX方向に延在し、素体10を貫通している。第1垂直配線21は、インダクタ配線100の第1パッド部111の上面から上側に延在し、層間絶縁層31の内部を貫通する第1ビア配線212と、第1ビア配線212から上側に延在し、被覆膜60の内部を貫通する第1柱状配線211とを有する。第2垂直配線22は、インダクタ配線100の第2パッド部112の上面から上側に延在し、層間絶縁層31を貫通する第2ビア配線222と、第2ビア配線222から上側に延在し、被覆膜60の内部を貫通する第2柱状配線221とを含む。
【0027】
インダクタ配線100および第1柱状配線211の一方は、特許請求の範囲に記載の「第1内部配線」の一例に相当する。インダクタ配線100および第1柱状配線211の他方は、特許請求の範囲に記載の「第2内部配線」の一例に相当する。この場合、第1ビア配線212は、特許請求の範囲に記載の「ビア配線」の一例に相当する。
【0028】
インダクタ配線100および第2柱状配線221の一方は、特許請求の範囲に記載の「第1内部配線」の一例に相当する。インダクタ配線100および第2柱状配線221の他方は、特許請求の範囲に記載の「第2内部配線」の一例に相当する。この場合、第2ビア配線222は、特許請求の範囲に記載の「ビア配線」の一例に相当する。
【0029】
インダクタ配線100は、導電性材料からなり、例えばAu、Pt、Pd、Ag、Cu、Al、Co、Cr、Zn、Ni、Ti、W、Fe、Sn、Inもしくはこれらを含む合金などの低電気抵抗な金属材料からなる。これにより、インダクタ部品1の直流抵抗を下げることができる。第1垂直配線21および第2垂直配線22は、インダクタ配線100と同様の導電性材料からなる。特に、Cu、Ag、Au、Feもしくはこれらを含む合金であってよい。
【0030】
第1外部端子51は、被覆膜60の上面に設けられ、該上面から露出する第1柱状配線211の端面を覆っている。これにより、第1外部端子51は、インダクタ配線100の第1パッド部111に電気的に接続される。第2外部端子52は、被覆膜60の上面に設けられ、該上面から露出する第2柱状配線221の端面を覆っている。これにより、第2外部端子52は、インダクタ配線100の第2パッド部112に電気的に接続される。
【0031】
第1外部端子51および第2外部端子52は、導電性材料からなる。第1外部端子51および第2外部端子52は、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuからなる金属層が内側から外側に向かってこの順に積層された3層構造である。
【0032】
図3は、
図2のA部の拡大図である。
図3は、中心軸AXを含む第1断面の一部を示す。
図3に示すように、第1ビア配線212は、中心軸AXに平行な方向において層間絶縁層31と第1パッド部111とに挟まれた、くさび部212aを有する。ビア31Zの第1開口端31Zaを含み、中心軸AXに平行な直線を第1基準線S1とした場合、くさび部212aは、第1基準線S1に対して中心軸AXの反対側に位置している。これにより、くさび部212aの層間絶縁層31および第1パッド部111に対するアンカー効果が生じて、第1ビア配線212と第1パッド部111とのシェア強度が向上し、接続信頼性が高まる。
【0033】
層間絶縁層31は、第1パッド部111側の第1主面31Xと、第1柱状配線211側の第2主面31Yと、第1主面31Xと第2主面31Yとの間を貫通するビア31Zと、を有する。第1主面31Xは、第1パッド部111と接触する第1部分31Xaを含む。ビア31Zは、平坦な内面を有している。ここで平坦な内面とは、第1断面におけるビア31Zの内面の直線状の部分を指す。ビア31Zは、第1パッド部111側の第1開口端31Zaと、第1柱状配線211側の第2開口端31Zbとを含む。ビア31Zの平坦な内面は、第1開口端31Zaと第2開口端31Zbとを繋ぐ領域である。言いかえると、第1開口端31Zaは平坦な内面の第1パッド部111側の端にあり、第2開口端31Zbは平坦な内面の第1柱状配線211側の端にある。ビア31Zの内面は、中心軸AXに沿う方向に延在している。
【0034】
第1主面31Xは、さらに、第1開口端31Zaと第1部分31Xaの第1開口端31Za側の端部(第1パッド部111と層間絶縁層31との交点。以下、交点Pと称する。)との間に、接続部31Xbを有する。交点Pは、特許請求の範囲(請求項2)に記載の「第1内部配線と層間絶縁層との交点」の一例に相当する。接続部31Xbは、第1主面31Xの第1パッド部111に接触しない部分ともいえる。接続部31Xbは、第1主面31Xのビア31Z側の端部に位置する。くさび部212aは、より具体的には、接続部31Xbと第1パッド部111との間に配置されている。
【0035】
第1部分31Xaを含む直線を第2基準線S2とする。
図3において、第1基準線S1および第2基準線S2は点線で示されている。
【0036】
従来のように第1ビア配線212がくさび部212aを有さない場合、インダクタ部品1に幅方向の外力が加わると、その応力は、第1ビア配線212と第1パッド部111との境界部分(典型的には、第2基準線S2上)に集中し易い。第1パッド部111と第1ビア配線212とは通常、別の工程で形成されるため、両者は、境界部分において構造的に剥離し易い。元来剥離し易いこの境界部分に応力が集中すると、容易に断線してしまう。くさび部212aを、中心軸AXに平行な方向において層間絶縁層31と第1パッド部111とに挟まれるように配置することにより、上記の境界部分の面積が大きくなるため、応力の集中が緩和される。よって、断線が生じ難くなって、インダクタ部品1の接続信頼性はさらに向上する。
【0037】
接続部31Xbと第1基準線S1との間の距離は、中心軸AXに向かうにしたがって、大きくなっている。これにより、第1ビア配線212をめっき法により形成する際、めっき液が接続部31Xbと第1パッド部111との間に入り込み易くなるため、くさび部212aにおいてボイドの発生が抑制される。ボイドは、めっき被膜、ここでは第1ビア配線212の破断の原因になり得る。
【0038】
第1パッド部111と層間絶縁層31との交点Pから第1開口端31Zaまで間の、中心軸AXに直交する方向における距離(以下、くさび部212aの幅Wと称する。)は、3μm以上10μm以下であってよい。くさび部212aの幅Wが3μm以上であると、上記のアンカー効果が得られ易い。くさび部212aの幅Wが10μm以下であると、隣接する他の配線との間の短絡が生じ難い。さらに、くさび部212aをめっき法により形成する際、第1パッド部111と層間絶縁層31との間の隙間40にシード層82が形成され易くなって(
図4F参照)、くさび部212aにボイドが発生するなどの不具合が抑制され易い。
【0039】
(凹部、凸部)
図3に示すように、第1パッド部111は、第2基準線S2より凹んだ凹部111aを有している。第1ビア配線212は、凹部111aに入り込む凸部212bを有する。これにより、第1パッド部111と第1ビア配線212との接触面積がより大きくなるため、シェア強度がさらに向上する。
【0040】
さらに、凹部111aによって、第1ビア配線212と第1パッド部111との境界部分が、第2基準線S2より下方向にずれる。つまり、幅方向の外力による応力の集中点と、上記境界部分とが一致しなくなるため、境界部分における断線も生じ難くなる。
【0041】
図2では、中心軸AXを含む断面において、2つのビア配線の断面が表れているが、2つのうちの少なくとも1つのビア配線において、
図3に示す上述した種々の構成を満たしていればよい。中心軸AXを含む他の断面において、
図3に示す上述した種々の構成を満たしていてもよいし、満たしていなくてもよい。インダクタ部品1に含まれる複数のビア配線の少なくとも1つが、
図3に示す上述した種々の構成を満たしていればよい。
【0042】
(製造方法)
次に、
図4Aから
図4Kを用いてインダクタ部品1の製造方法について説明する。
図4Aから
図4Kは、
図2のインダクタ配線100の第1パッド部111および第1垂直配線21に対応した図である。
【0043】
図4Aに示すように、基板70上に磁性体を含有しない下地絶縁層33を形成する。基板70は、例えば、焼結フェライトからなり、平板状である。
【0044】
基板70は、平板状であり、インダクタ部品1の製造プロセス上の土台となる部分である。基板70は、例えば、NiZn系やMnZn系などのフェライトからなる磁性体基板や、アルミナ、ガラスからなる非磁性体基板などの焼結体からなる。基板70の厚さは、例えば、5μm以上100μm以下である。
【0045】
下地絶縁層33は、例えば、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂や無機材料などからなる。下地絶縁層33は、基板70上にポリイミド系樹脂を印刷、塗布などによってコーティングするか、あるいは、基板70上への蒸着、スパッタリング、CVDなどのドライプロセスによって形成される。
【0046】
図4Bに示すように、下地絶縁層33上にシード層81およびレジスト膜310を形成する。具体的に述べると、シード層81の材料をスパッタにより下地絶縁層33の上面に付着させる。次いで、シード層81上にレジスト膜310を形成する。シード層81は、インダクタ配線100の材料として挙げたのと同様の、低電気抵抗な金属材料からなる。レジスト膜310は、感光性のフォトレジストにより形成される。
【0047】
図4Cに示すように、レジスト膜310の一部を除去する。具体的には、フォトリソグラフィ法が用いられる。すなわち、第1パッド部111およびスパイラル部120以外の部分に対応する開口を有するフォトマスクを使用して、露光する。これにより、第1パッド部111およびスパイラル部120に対応する部分のレジスト膜310は露光されずに未硬化のままとなる。続いて、現像することにより、未硬化部分が除去される。現像には、例えば、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートペグミア)などの有機溶剤とTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などのアルカリ系現像液が用いられる。
【0048】
図4Dに示すように、シード層81に第1パッド部111およびスパイラル部120を形成する。具体的に述べると、シード層81に電解めっきによりめっきを成長させる。これにより、レジスト膜310の残部の間に第1パッド部111およびスパイラル部120が形成される。
【0049】
図4Eに示すように、レジスト膜310とその下面に位置しているシード層81を除去する。これらは、例えば、エッチング処理により除去される。
【0050】
図4Fに示すように、スパイラル部120を覆い、第1パッド部111の上面を露出させるビア31Zを有する層間絶縁層31と、インダクタ配線100の側面を覆う樹脂壁32と、を配置する。ビア31Zからは、第1パッド部111の一部が露出する。ビア31Zの形成方法は特に限定されず、レーザ照射であってよく、フォトリソグラフィ法であってよい。
【0051】
図4Gは、層間絶縁層31に形成されたビア31Zの周囲を示す拡大図である。
図4Gに示すように、第1パッド部111に隙間40を形成する。隙間40にめっきが入り込むことによって、くさび部212aが形成される。このとき、等方的にエッチングすることにより、隙間40とともに、第1パッド部111の層間絶縁層31から露出した部分に凹部111aが形成される。
【0052】
エッチング方法は、等方的なエッチングが可能である限り特に限定されず、酸を用いたウェットエッチングであってよく、ドライエッチングであってよい。第1パッド部111のエッチング量によって、くさび部212aの幅Wが制御される。エッチング処理の時間や温度を適宜調整することにより、エッチング量を調節することができる。5%濃度のH2O2および10%濃度のH3PO4を含む処理剤を用いて、25℃下でウェットエッチングする場合、処理時間30秒で幅Wが3μm程度のくさび部212aを形成することができ、240秒で幅Wが10μm程度のくさび部212aを形成することができる。処理剤における酸の濃度を高めるほど、あるいは、処理時間を長くするほど、くさび部212aの幅Wを大きくすることができる。
【0053】
従来、層間絶縁層31を形成した後に行われるエッチング処理は、残渣や酸化膜等を除去することを目的としており、第1パッド部111のエッチングを目的としていない。そのため、通常、隙間40は形成されない。本実施形態では、敢えて隙間40を形成することにより、くさび部212aの形成を可能にして、第1パッド部111と第1ビア配線212とのシェア強度を向上させている。
【0054】
図4Hに示すように、ビア31Zの内面、第1パッド部111の上面の露出部、層間絶縁層31および樹脂壁32の上面に、シード層82をスパッタにより形成する。シード層82も、インダクタ配線100の材料として挙げたのと同様の、低電気抵抗な金属材料からなる。
【0055】
シード層82の厚さは、電荷の共有が可能であり、電解めっきのシード層として機能できる範囲であれば特に限定されず、例えば、2μm以下であってよい。層間絶縁層31とシード層82との密着性を向上させるために、層間絶縁層31とシード層82との間に密着層を形成してもよい。密着層の材料は、インダクタ配線の形成に影響を与えない限り特に限定されず、例えば、Tiであってよい。
【0056】
図4Iに示すように、第1パッド部111の上面の露出部に対応する部分に第1ビア配線212および第1柱状配線211を形成する。具体的には、シード層82上にレジスト膜320を形成し、レジスト膜320の第1ビア配線212に対応する位置に開口部を設ける。シード層82に電解めっきによりめっきを成長させて、上記の開口部にめっき層を形成する。これにより、開口部に第1ビア配線212および第1柱状配線211を形成する。第1ビア配線212および第1柱状配線211は、無電解めっき法、スパッタリング法、蒸着法、塗布法によって形成してもよい。
【0057】
図4Jに示すように、レジスト膜320を剥離し、露出したシード層82を除去する。次いで、層間絶縁層31上に被覆膜60を形成し、第1柱状配線211の上面に第1外部端子51を形成する。
【0058】
図4Kに示すように、基板70を除去して、下地絶縁層33の下面に絶縁基板90を配置する。その後、ダイサー等により個片化して、インダクタ部品1を製造する。
【0059】
[第2実施形態]
(構成)
図5は、インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。
図5は、
図3に対応する断面である。第2実施形態は、第1実施形態とは、層間絶縁層31の端部の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図5に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、層間絶縁層31の接続部31Xbが、凸曲面である。言い換えれば、くさび部212aの接続部31Xbとの接触部分が凹曲面である。インダクタ部品1Aに幅方向の外力が加わったときの応力は、特に第1ビア配線212と第1パッド部111との境界部分の端部に集中し易い。境界部分の端部が、稜線ではなく曲面であることにより、応力の集中が緩和されて、断線はさらに抑制され易くなる。接続部31Xbの一部のみが凸曲面であってもよい。
【0061】
(製造方法)
インダクタ部品1Aは、第1実施形態の
図4Aから
図4Kに示す製造方法と同じ方法で製造することができる。ただし、
図4Fおよび
図4Gに示す工程において、ビア31Zの形成をフォトマスクを使用したリソグラフィ法により実施し、加えて、露光の際、ビア31Zの周囲に対応する部分への照射強度を弱くする。これにより、ビア31Zの周囲に対応する部分において、感光性絶縁フィルムの厚さ方向における硬化の程度が小さくなる。その後、現像を行うことにより、層間絶縁層31にはビア31Zが形成されるとともに、層間絶縁層31のビア31Z側の端部の下面側の一部が除去されて、層間絶縁層31の接続部31Xbが凸曲面になる。
【0062】
[第3実施形態]
(構成)
図6は、インダクタ部品の第3実施形態を示す断面図である。
図6は、
図2に対応する断面である。第3実施形態は、第1実施形態とは、インダクタ配線の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図6に示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、2層のインダクタ配線100A,100BがZ方向に積層されている。第1インダクタ配線100Aは、第2インダクタ配線100Bの上側に配置されている。第1、第2インダクタ配線100A,100Bは、直列接続されている。
【0064】
インダクタ部品1Bでは、第1インダクタ配線100Aと第2インダクタ配線100Bとが直列に接続されているので、ターン数を増やすことでインダクタンスを向上できる。また、第1,第2インダクタ配線100A,100Bはそれぞれ法線方向に積層されているので、ターン数に対して、Z方向からみたインダクタ部品1Bの面積、すなわち実装面積を低減でき、インダクタ部品1Bの小型化が実現できる。
【0065】
第1,第2インダクタ配線100A,100Bは、絶縁基板90の上面に設けられており、絶縁基板90の上面と平行な方向に沿って延在する。第1,第2インダクタ配線100A,100Bは、絶縁基板90の上面において、各インダクタ配線の軸を中心として、それぞれスパイラル状に巻き回されている。第1,第2インダクタ配線100A,100Bは、ターン数が1周を超えるスパイラル形状である。第1,第2インダクタ配線100A,100Bは、第1実施形態におけるインダクタ配線100と同様の構成である。第1,第2インダクタ配線100A,100Bは、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0066】
第1インダクタ配線100Aの外周端である第1パッド部111は、第1垂直配線21を介して第1外部端子51に接続される。第1インダクタ配線100Aの内周端である第2パッド部112および第2インダクタ配線100Bの内周端である第2パッド部112は、第1層間ビア配線251を介して接続される。第2インダクタ配線100Bの外周端である第1パッド部111は、第2層間ビア配線252、引出配線241および第2垂直配線22を介して第2外部端子52に接続される。以上の構成により、第1インダクタ配線100Aおよび第2インダクタ配線100Bは、直列に接続されて、第1外部端子51および第2外部端子52と電気的に接続される。
【0067】
引出配線241は、第1インダクタ配線100Aと同一層に設けられている。引出配線241は、第1インダクタ配線100Aと直接的には接続していない。引出配線241は、第1パッド部111を第2垂直配線22まで引き出す配線である。XZ断面において、引出配線241の幅を、第2垂直配線22(第2柱状配線221および第2ビア配線222)の幅よりも大きくすることで、素体10の強度を確保することができる。
【0068】
第1インダクタ配線100Aおよび第1柱状配線211の一方は、特許請求の範囲に記載の「第1内部配線」の一例に相当する。第1インダクタ配線100Aおよび第1柱状配線211の他方は、特許請求の範囲に記載の「第2内部配線」の一例に相当する。この場合、第1ビア配線212は、特許請求の範囲に記載の「ビア配線」の一例に相当する。
【0069】
引出配線241および第2柱状配線221の一方は、特許請求の範囲に記載の「第1内部配線」の一例に相当する。引出配線241および第2柱状配線221の他方は、特許請求の範囲に記載の「第2内部配線」の一例に相当する。この場合、第2ビア配線222は、特許請求の範囲に記載の「ビア配線」の一例に相当する。
【0070】
第1インダクタ配線100Aおよび第2インダクタ配線100Bの一方は、特許請求の範囲に記載の「第1内部配線」の一例に相当する。第1インダクタ配線100Aおよび第2インダクタ配線100Bの他方は、特許請求の範囲に記載の「第2内部配線」の一例に相当する。この場合、第1層間ビア配線251は、特許請求の範囲に記載の「ビア配線」の一例に相当する。
【0071】
図6では、中心軸AXを含む断面において、4つのビア配線の断面が表れているが、4つのうちの少なくとも1つのビア配線において、
図3に示す上述した種々の構成を満たしている。インダクタ部品1Bの中心軸AXを含む他の断面において、
図3に示す上述した種々の構成を満たしていてもよいし、満たしていなくてもよい。インダクタ部品1Bに含まれる複数のビア配線の少なくとも1つが、
図3に示す上述した種々の構成を満たしていればよい。
【0072】
[第4実施形態]
(構成)
図7は、インダクタ部品の第4実施形態を示す模式断面図である。
図7は、
図2に対応する断面である。第4実施形態は、第1実施形態とは、素体の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図7に示すように、素体10は、第1磁性層11と、第1磁性層11上に配置された第2磁性層12とを有する。第1磁性層11と第2磁性層12は、インダクタ配線100および絶縁層30を挟むように、中心軸AX方向に沿って積層されている。素体10は、第1磁性層11および第2磁性層12の2層構造であるが、第1磁性層11と基板と第2磁性層12との3層構造であってもよい。
【0074】
第1磁性層11および第2磁性層12は、樹脂と、樹脂内に含まれる磁性体としての金属磁性粉とを有する。したがって、フェライトからなる磁性層と比較して、金属磁性粉により直流重畳特性を向上でき、樹脂により金属磁性粉間が絶縁されるので、高周波でのロス(鉄損)が低減される。
【0075】
樹脂は、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、ビニルエーテル系の何れかの樹脂を含む。これにより、絶縁信頼性が向上する。より具体的には、樹脂は、エポキシもしくはエポキシとアクリルとの混合体、あるいはエポキシとアクリルとその他との混合体である。これにより、金属磁性粉間の絶縁性が担保されて、高周波でのロス(鉄損)を小さくできる。
【0076】
金属磁性粉の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下である。インダクタ部品1の製造段階においては、金属磁性粉の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径として算出することができる。金属磁性粉は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金である。金属磁性粉の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して、20vol%以上70vol%以下である。金属磁性粉の平均粒径が5μm以下である場合、直流重畳特性がより向上し、微粉によって高周波での鉄損を低減できる。金属磁性粉の平均粒径が0,1μm以上である場合、樹脂への均一な分散が容易となり、第1磁性層11および第2磁性層12の製造効率が向上する。なお、金属磁性粉に代えて又は金属磁性粉に加えて、NiZn系やMnZn系などのフェライトの磁性粉を用いてもよい。
【実施例0077】
[実施例1]
図4Aから
図4Kに示す製造方法にしたがって、第2実施形態の構成を有するインダクタ部品1Aを30個作製した。
図4Fおよび
図4Gに示す工程において、ビア31Zをリソグラフィ法により形成した。ビア31Zの第2主面31Y側の幅は100μm、ビア31Zの中心軸AX方向における距離(高さ、あるいは層間絶縁層31の厚み)は15μmであった。
図4Fに示す工程において、5%濃度のH
2O
2および10%濃度のH
3PO
4を含む処理剤を用いて、25℃下でウェットエッチングを行った。エッチング処理時間を調整して、くさび部212aの幅Wを2.0μmにした。
【0078】
[実施例2]
くさび部212aの幅Wが2.5μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0079】
[実施例3]
くさび部212aの幅Wが3.0μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0080】
[実施例4]
くさび部212aの幅Wが4.0μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0081】
[実施例5]
くさび部212aの幅Wが9.0μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0082】
[実施例6]
くさび部212aの幅Wが10.0μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0083】
[実施例7]
くさび部212aの幅Wが10.5μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0084】
[実施例8]
くさび部212aの幅Wが11.0μmになるようにエッチング処理時間を調整したこと以外、実施例1と同様にして、インダクタ部品1Aを30個作製した。
【0085】
[評価]
得られたインダクタ部品1Aに対し、JIS C60062-2-58に準じて接続信頼性を評価した。抵抗値変化率が20%以内のインダクタ部品1Aを合格品、抵抗値変化率が20%超であり、かつ、ビア配線にクラックが発生していたインダクタ部品1Aを不合格品とした。クラック以外の原因により抵抗値変化率が20%を超えたものを除外するため、抵抗値変化率が20%超であり、かつ、ビア配線にクラックが発生してなかったインダクタ部品1Aを、合否判定の対象外とした。合格品および不合格品の合計が30個になるまで、合否判定を行った。表1には、全判定数(30個)に対する合格品の個数を示した。
【0086】
【0087】
くさび部212aを設けたインダクタ部品1Aはいずれも、接続信頼性に優れていることがわかる。くさび部212aの幅Wが3μm以上10μm以下である実施例3から6については、特に、接続信頼性に優れていた。
【0088】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【0089】
前記実施形態では、第1断面において、第1ビア配線212は中心軸AXに対して対称形であるが、第1ビア配線212は中心軸AXに対して非対称形であってよい。第1ビア配線212は、中心軸AXに対して両側にくさび部212aを有しているが、くさび部212aはいずれか一方の側にのみあってよい。
【0090】
前記実施形態では、インダクタ部品の透視平面図において、第1ビア配線212が長方形であるが、これに限定されない。第1ビア配線212は、平面図において、円形であってよく、楕円形であってよく、多角形であってよい。
【0091】
前記実施形態では、インダクタ部品の透視平面図において、第2ビア配線222が円形であるが、これに限定されない。第2ビア配線222は、平面図において、四角形であってよく、楕円形であってよく、多角形であってよい。
【0092】
前記実施形態では、くさび部212aは、第1パッド部111がエッチングされることにより形成されているが、層間絶縁層31のビア31Z側の端部のうち、第1パッド部111側がエッチングされることにより形成されてもよい。
【0093】
前記実施形態では、第1ビア配線212は凸部212bを有しているが、第1ビア配線212は凸部212bを有していなくてもよい。
【0094】
前記実施形態では、第1パッド部111は凹部111aを有しているが、第1パッド部111は凹部111aを有していなくてもよい。
【0095】
前記実施形態では、ビア31Zの内面は、中心軸AXに沿う方向に延在しているが、第1パッド部111から第1柱状配線211に向かって、ビア31Zの幅が大きくなるように傾斜していてよく、ビア31Zの幅が小さくなるように傾斜していてもよい。ビア31Zの平坦な内面もまた、第1断面において直線状に示されている限り、上記のように中心軸AXに対して傾斜していてもよい。
【0096】
前記実施形態では、層間絶縁層31と樹脂壁32とは一体的に形成されているが、これに限定されない。層間絶縁層31と樹脂壁32とは別体であってよく、異なる工程において形成されてよい。
【0097】
第3実施形態では、2層のインダクタ配線100A、100Bが中心軸AX方向に積層されているが、3層以上のインダクタ配線を中心軸AX方向に積層してもよい。また、複数のインダクタ配線を中心軸AX方向と直交する方向に配置してもよい。
【0098】
本開示は、下記の態様を含む。
<1>
第1内部配線と、
第2内部配線と、
前記第1内部配線と前記第2内部配線との間に配置され、前記第1内部配線側の第1主面、前記第2内部配線側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通するビアを有する層間絶縁層と、
前記ビアに挿通され、前記第1内部配線と前記第2内部配線とを電気的に接続するビア配線と、を備え、
前記ビア配線の中心軸を含む第1断面において、
前記ビア配線は、前記中心軸に平行な方向において前記層間絶縁層と前記第1内部配線とに挟まれた、くさび部を有する、インダクタ部品。
<2>
前記第1断面において、
前記ビアは、平坦な内面を有し
前記内面は、前記第1内部配線側の第1開口端と、前記第2内部配線側の第2開口端とを含み、
前記第1開口端を含み、前記中心軸に平行な直線を第1基準線として、
前記くさび部は、前記第1基準線に対して前記中心軸の反対側に位置し、
前記第1内部配線と前記層間絶縁層との交点から前記第1開口端まで間の、前記中心軸に直交する方向における距離は、3μm以上10μm以下である、<1>に記載のインダクタ部品。
<3>
前記第1断面において、
前記第1主面は、前記第1内部配線と接触する第1部分を含み、
前記第1部分を含む直線を第2基準線として、
前記第1内部配線は、前記第2基準線より凹んだ凹部を有し、
前記ビア配線は、前記凹部に入り込む凸部を有する、<1>または<2>に記載のインダクタ部品。
<4>
前記第1断面において、
前記ビアは、平坦な内面を有し
前記内面は、前記第1内部配線側の第1開口端と、前記第2内部配線側の第2開口端とを含み、
前記第1主面は、前記第1内部配線と接触する第1部分を含み、
前記層間絶縁層は、前記内面の前記第1開口端と前記第1部分の前記第1開口端側の端部との間に接続部を有し、
前記接続部は、凸曲面を含む、<1>から<3>のいずれか一つに記載のインダクタ部品。
<5>
さらに、素体を備え、
前記第1内部配線および前記第2内部配線は、前記素体内に設けられ、
前記第1内部配線および前記第2内部配線の少なくとも一方は、インダクタ配線である、<1>から<4>のいずれか一つに記載のインダクタ部品。
<6>
前記第1内部配線および前記第2内部配線はいずれも、インダクタ配線である、<5>に記載のインダクタ部品。
<7>
前記素体は、磁性層を含む、<5>または<6>に記載のインダクタ部品。
<8>
前記素体は、非磁性の絶縁層を含む、<5>または<6>に記載のインダクタ部品。