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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058431
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】乳製品製造装置および乳製品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20240418BHJP
   G01N 33/04 20060101ALI20240418BHJP
   A01J 11/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
G01N33/04
A01J11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165780
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】武居 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフス・アルディーノ・クルニアント・プライトノ
(72)【発明者】
【氏名】横溝 周
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AF06
2G060AF08
2G060AF11
2G060AG03
2G060AG10
2G060HC10
(57)【要約】
【課題】乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価可能な乳製品製造装置および乳製品製造方法を提供する。
【解決手段】乳製品製造装置は、脂肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌部と、攪拌部内に設けられ、攪拌中の前記原料と前記気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する第1センサと、第1センサを用いて前記第1インピーダンスを測定する測定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌部と、
前記攪拌部内に設けられ、攪拌中の前記原料と前記気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する第1センサと、
前記第1センサを用いて前記第1インピーダンスを測定する測定部と、
を備える、乳製品製造装置。
【請求項2】
前記第1インピーダンスから前記混合物の電気物性である第1電気物性を計算する、電気物性評価部と、
前記第1インピーダンスおよび前記第1電気物性のうち少なくとも一方に基づいて、前記攪拌部の攪拌条件を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記第1電気物性が、前記混合物の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上である、請求項1に記載の乳製品製造装置。
【請求項3】
脂肪成分を含有する添加前原料に、前記脂肪成分以外の材料を添加し混合することで、前記原料を製造する、材料混合部をさらに備える、請求項2に記載の乳製品製造装置。
【請求項4】
前記材料混合部内に設けられ、混合中の前記原料のインピーダンスである第2インピーダンスを測定する第2センサをさらに備え、
前記測定部は、前記第2センサを用いて前記第2インピーダンスをさらに測定し、
前記電気物性評価部は、前記第2インピーダンスから、前記原料の電気物性である第2電気物性をさらに計算し、
前記制御部は、前記第2インピーダンス及び前記第2電気物性のうち少なくとも一方に基づいて、前記材料混合部の混合条件を制御し、
前記第2電気物性が、前記原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上である、請求項3に記載の乳製品製造装置。
【請求項5】
乳を遠心分離することで、前記乳中の脂肪成分の含有量を調整した前記添加前原料を製造する、遠心分離部をさらに備える、請求項3に記載の乳製品製造装置。
【請求項6】
前記遠心分離部内に設けられ、遠心分離中の前記添加前原料のインピーダンスである第3インピーダンスを測定する第3センサをさらに備え、
前記測定部は、前記第3センサを用いて前記第3インピーダンスをさらに測定し、
前記電気物性評価部は、前記第3インピーダンスから、前記添加前原料の電気物性である第3電気物性をさらに計算し、
前記制御部は、前記第3インピーダンスおよび前記第3電気物性のうち、少なくとも一方に基づいて、前記遠心分離部の遠心分離条件を制御し、
前記第3電気物性が前記添加前原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上である、請求項5に記載の乳製品製造装置。
【請求項7】
乳製品の評価パラメータ、前記原料の成分組成、前記原料と前記気体とを攪拌する攪拌条件、前記第1電気物性を用いて、前記評価パラメータが入力されたときに、前記第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させる、モデル学習部をさらに備える、請求項2に記載の乳製品製造装置。
【請求項8】
前記評価パラメータを入力可能な入力部と、
前記モデル学習部で学習した学習済みモデルを用い、前記入力部に入力された前記評価パラメータに基づいて、前記第1電気物性を出力する、パラメータ設定部と、
をさらに備える、請求項7に記載の乳製品製造装置。
【請求項9】
前記第1センサが、
内側電極と、
前記内側電極の周囲に配置される外側電極と、
前記内側電極と、前記外側電極との間に配置され、前記内側電極と外側電極とを絶縁する絶縁体と、
を備える、請求項1に記載の乳製品製造装置。
【請求項10】
脂肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌する攪拌工程を含み、
前記攪拌工程において、前記原料と前記気体との混合物のインピーダンスを測定し、得られた前記インピーダンスに基づいて前記混合物の電気物性である第1電気物性を計算し、
前記第1電気物性が、前記混合物の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上である、乳製品製造方法。
【請求項11】
前記攪拌工程において、前記混合物の前記第1電気物性が設定された第1目標値になるように、攪拌条件を制御する、請求項10に記載の乳製品製造方法。
【請求項12】
前記攪拌工程の前に、脂肪成分を含有する添加前原料に、前記脂肪成分以外の材料を添加し、混合することで、前記原料を製造する、材料混合工程をさらに含む、請求項10に記載の乳製品製造方法。
【請求項13】
前記材料混合工程において、前記原料のインピーダンスである第2インピーダンスを測定し、前記第2インピーダンスから前記原料の電気物性である第2電気物性を計算し、
前記第2電気物性が、前記原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上である、請求項12に記載の乳製品製造方法。
【請求項14】
前記材料混合工程において、前記第2電気物性が設定された第2目標値になるように、混合条件を制御する、請求項13に記載の乳製品製造方法。
【請求項15】
前記材料混合工程の前に、乳を遠心分離することで、前記乳中の脂肪成分の含有量を調整した前記添加前原料を製造する、遠心分離工程をさらに含む、請求項13に記載の乳製品製造方法。
【請求項16】
前記遠心分離工程において、前記添加前原料のインピーダンスである第3インピーダンスを測定し、前記第3インピーダンスから、前記添加前原料の電気物性である第3電気物性をさらに計算し、
前記第3電気物性が、前記添加前原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上である、請求項15に記載の乳製品製造方法。
【請求項17】
前記遠心分離工程において、前記第3電気物性が設定された第3目標値になるように、遠心分離条件を制御する、請求項16に記載の乳製品製造方法。
【請求項18】
乳製品の評価パラメータ、前記原料の成分組成、前記原料と前記気体とを攪拌する攪拌条件、前記第1電気物性を用いて、前記評価パラメータが入力されたときに、前記原料の成分組成および前記第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させる、モデル学習工程をさらに備える請求項10に記載の乳製品製造方法。
【請求項19】
前記評価パラメータを入力する入力工程と、
前記モデル学習工程で学習した学習済みモデルを用い、前記入力工程で入力された前記評価パラメータに基づいて、前記第1電気物性を出力し、出力された前記第1電気物性を目標値に設定するパラメータ設定工程と、
をさらに備える、請求項18に記載の乳製品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳製品製造装置および乳製品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者それぞれの嗜好と合致するように調製されたパーソナライズド食品が注目されている。消費者の嗜好性が強い食品としては、例えば、乳製品などが挙げられる。しかし、消費者の嗜好に合わせて乳製品を製造することが様々な要因で困難である。
【0003】
例えば、乳製品の製造において、攪拌は重要な工程であるが、生乳の複雑な構造、産地や季節による生乳の成分の変動に起因して、工学的なパラメータの最適な制御方法は未だ確立していない。
【0004】
現在、乳製品であるソフトクリームは、特許文献1に記載のようにソフトクリームミックスと空気とを所定の割合(オーバーランOR)で攪拌し、混合して製造している。なお、オーバーランORは下記(1)式で表される。(1)式において、mは攪拌前の質量、mは攪拌後の質量である。mとmは同一容積の質量である。
【0005】
【数1】
【0006】
攪拌状態を評価する技術として、特許文献2には、食品生地収納容器とその内部において回転駆動される撹拌子並びに上記食品生地収納容器の加熱源を備えた竪型ミキサーにより、その食品生地収納容器に収納されたメレンゲや全卵、生クリーム、スポンジ生地などの各種ホイップ食品生地を泡立て作用するに当り、その泡立て作用中に変化する上記ホイップ食品生地の導電率を、上記食品生地収納容器の内部を撹拌子と一緒に公転運動する無線式の導電率検知センサーによって、リアルタイムに測定検知し、その導電率検知センサーが予じめ設定された最終の仕上がり目標測定値に到達したことを検知した出力信号に基いて、上記撹拌子の回転駆動のみか又はその回転駆動と上記加熱源による加熱とを停止させるべく自動制御することを特徴とするホイップ食品生地を対象とするミキサーの運転方法が開示されている。
【0007】
攪拌状態を評価する技術として、特許文献3には、温度検知センサーが洋菓子の生地の目標加熱温度を検知した出力信号、導電率検知センサーが上記生地の目標導電率を検知した出力信号又は/及びタイマーが目標運転時間のタイムアップしたことを検知した出力信号に基づいて、フードミキサーの周辺部に設置されている複数の材料投入機から、上記生地作りに必要な追加混合材料をフードミキサーの材料収納容器へ、目標の投入量だけ正しく投入すべく自動制御するフードミキサーの運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-132912号公報
【特許文献2】特開2015-53861号公報
【特許文献3】特開2022-016462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、水溶性エマルジョンであるソフトクリームの液体原料は、複雑な組成等に起因して、単にオーバーランを用いた評価だけでは、最終的なソフトクリームの味や柔らかさ、滑らかさ等の特性を一元的に評価することが困難である。加えて、攪拌容器内部全体が均一な状態とはならず、全体の状態を評価するオーバーランでは、乳製品の局所的な微細構造の違いについてリアルタイムに評価することができず、攪拌条件を最適に制御することが困難である。また、特許文献2および3の方法では、導電率のみで評価しており、また、センサの数が1つしかないので、攪拌状態を正確に評価することが困難であった。
【0010】
本発明は上記事情を鑑みなされた発明であり、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価可能な乳製品製造装置および乳製品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の乳製品製造装置は、
脂肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌部と、
前記攪拌部内に設けられ、攪拌中の前記原料と前記気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する第1センサと、
前記第1センサを用いて前記第1インピーダンスを測定する測定部と、
を備える。
(2)本発明の態様2は、態様1の乳製品製造装置において、
前記第1インピーダンスから前記混合物の電気物性である第1電気物性を計算する、電気物性評価部と、
前記第1インピーダンスおよび前記第1電気物性のうち少なくとも一方に基づいて、前記攪拌部の攪拌条件を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記第1電気物性が、前記混合物の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であってもよい。
(3)本発明の態様3は、態様2の乳製品製造装置において、
脂肪成分を含有する添加前原料に、前記脂肪成分以外の材料を添加し混合することで、前記原料を製造する、材料混合部をさらに備えてもよい。
(4)本発明の態様4は、態様3の乳製品製造装置において、
前記材料混合部内に設けられ、混合中の前記原料のインピーダンスである第2インピーダンスを測定する第2センサをさらに備え、
前記測定部は、前記第2センサを用いて前記第2インピーダンスをさらに測定し、
前記電気物性評価部は、前記第2インピーダンスから、前記原料の電気物性である第2電気物性をさらに計算し、
前記制御部は、前記第2インピーダンス及び前記第2電気物性のうち少なくとも一方に基づいて、前記材料混合部の混合条件を制御し、
前記第2電気物性が、前記原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であってもよい。
(5)本発明の態様5は、態様3の乳製品製造装置において、
乳を遠心分離することで、前記乳中の脂肪成分の含有量を調整した前記添加前原料を製造する、遠心分離部をさらに備えてもよい。
(6)本発明の態様6は、態様5の乳製品製造装置において、
前記遠心分離部内に設けられ、遠心分離中の前記添加前原料のインピーダンスである第3インピーダンスを測定する第3センサをさらに備え、
前記測定部は、前記第3センサを用いて前記第3インピーダンスをさらに測定し、
前記電気物性評価部は、前記第3インピーダンスから、前記添加前原料の電気物性である第3電気物性をさらに計算し、
前記制御部は、前記第3インピーダンスおよび前記第3電気物性のうち、少なくとも一方に基づいて、前記遠心分離部の遠心分離条件を制御し、
前記第3電気物性が前記添加前原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であってもよい。
(7)本発明の態様7は、態様2の乳製品製造装置において、
乳製品の評価パラメータ、前記原料の成分組成、前記原料と前記気体とを攪拌する攪拌条件、前記第1電気物性を用いて、前記評価パラメータが入力されたときに、前記第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させる、モデル学習部をさらに備えてもよい。
(8)本発明の態様8は、態様7の乳製品製造装置において、
前記評価パラメータを入力可能な入力部と、
前記モデル学習部で学習した学習済みモデルを用い、前記入力部に入力された前記評価パラメータに基づいて、前記第1電気物性を出力する、パラメータ設定部と、
をさらに備えてもよい。
(9)本発明の態様9は、態様1の乳製品製造装置において、
前記第1センサが、
内側電極と、
前記内側電極の周囲に配置される外側電極と、
前記内側電極と、前記外側電極との間に配置され、前記内側電極と外側電極とを絶縁する絶縁体と、を備えてもよい。
(10)本発明の態様10の乳製品製造方法は、
脂肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌する攪拌工程を含み、
前記攪拌工程において、前記原料と前記気体との混合物のインピーダンスを測定し、得られた前記インピーダンスに基づいて前記混合物の電気物性である第1電気物性を計算し、
前記第1電気物性が、前記混合物の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であってもよい。
(11)本発明の態様11は、態様10の乳製品製造方法において、
前記攪拌工程において、前記混合物の前記第1電気物性が設定された第1目標値になるように、攪拌条件を制御してもよい。
(12)本発明の態様12は、態様10の乳製品製造方法において、
前記攪拌工程の前に、脂肪成分を含有する添加前原料に、前記脂肪成分以外の材料を添加し、混合することで、前記原料を製造する、材料混合工程をさらに含んでもよい。
(13)本発明の態様13は、態様12の乳製品製造方法において、
前記材料混合工程において、前記原料のインピーダンスである第2インピーダンスを測定し、前記第2インピーダンスから前記原料の電気物性である第2電気物性を計算し、
前記第2電気物性が、前記原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であってもよい。
(14)本発明の態様14は、態様13の乳製品製造方法において、
前記材料混合工程において、前記第2電気物性が設定された第2目標値になるように、混合条件を制御してもよい。
(15)本発明の態様15は、態様13の乳製品製造方法において、
前記材料混合工程の前に、乳を遠心分離することで、前記乳中の脂肪成分の含有量を調整した前記添加前原料を製造する、遠心分離工程をさらに含んでもよい。
(16)本発明の態様16は、態様15に記載の乳製品製造方法において、
前記遠心分離工程において、前記添加前原料のインピーダンスである第3インピーダンスを測定し、前記第3インピーダンスから、前記添加前原料の電気物性である第3電気物性をさらに計算し、
前記第3電気物性が、前記添加前原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であってもよい。
(17)本発明の態様17は、態様16の乳製品製造方法において、
前記遠心分離工程において、前記第3電気物性が設定された第3目標値になるように、遠心分離条件を制御してもよい。
(18)本発明の態様18は、態様10の乳製品製造方法において、
乳製品の評価パラメータ、前記原料の成分組成、前記原料と前記気体とを攪拌する攪拌条件、前記第1電気物性を用いて、前記評価パラメータが入力されたときに、前記原料の成分組成および前記第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させる、モデル学習工程をさらに備えてもよい。
(19)本発明の態様19は、態様18の乳製品製造方法において、
前記評価パラメータを入力する入力工程と、
前記モデル学習工程で学習した学習済みモデルを用い、前記入力工程で入力された前記評価パラメータに基づいて、前記第1電気物性を出力し、出力された前記第1電気物性を目標値に設定するパラメータ設定工程と、
をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価可能な乳製品製造装置および乳製品製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。
図2図1の乳製品製造装置のA-A線に沿った端面図である。
図3図1に示す乳製品製造装置が備えるセンサの側面図である。
図4図1に示す乳製品製造装置が備えるセンサの平面図である。
図5】第1実施形態に係る乳製品製造方法のフローチャートである。
図6図5の攪拌工程のフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。
図8】第2実施形態に係る乳製品製造方法のフローチャートである。
図9図8の遠心分離工程のフローチャートである。
図10図8の材料混合工程のフローチャートである。
図11】第3実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。
図12図11の入力部のインターフェ―スの一例である。
図13】第3実施形態に係る乳製品製造方法の一例を表すフローチャートである。
図14】第3実施形態に係る乳製品製造方法の別の例を表すフローチャートである。
図15】第4実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。
図16】第5実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。
図17図16の乳製品製造装置のB-B線に沿った部分断面図である。
図18】第6実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。
図19図18の乳製品製造装置のC-C線に沿った部分断面図である。
図20】ホイップクリームの攪拌過程におけるオーバーランOR(%)、形態構造変化、電気計測応答との関係を示す図である。
図21】ホイップクリームの攪拌工程の各形態構造段階における、電気的損失係数tanδと粘弾性的損失係数tanδの関係を示す図である。
図22】アイスA,アイスB、およびアイスCの周波数と電気的損失係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る乳製品製造装置100を説明する。図1は、第1実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。図2は、図1の乳製品製造装置のA-A線に沿った端面図である。図1に示すように、乳製品製造装置100は、センサユニット10、貯蔵部20、攪拌部30、測定部50、および処理装置90を備える。処理装置90は、電気物性評価部60および制御部70を備える。
【0015】
乳製品製造装置100の処理装置90は、例えば、Central Processing Unit(CPU),Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)及びHard Disk Drive(HDD)/Solid State Drive(SSD)を備える。電気物性評価部60および制御部70は、CPUにおいて、所定のプログラムを実行することで実現される。プログラムは、記録媒体経由で取得してもよく、ネットワーク経由で取得してもよい。また、乳製品製造装置100の構成を実現するための専用のハードウェア構成を用いてもよい。以下、各部について説明する。
【0016】
(貯蔵部20)
貯蔵部20は、脂肪成分を含有する原料を貯蔵する。貯蔵部20に貯蔵された原料は流路L1を介し攪拌部30に送られる。貯蔵部20は、ソフトクリームなどの冷菓を製造する場合は、冷却部40で冷却されていることが好ましい。
【0017】
(攪拌部30)
攪拌部30は、貯蔵部20から送られた原料と気体とを攪拌することで原料と気体との混合物である乳製品を製造する。攪拌部30は、駆動部31、攪拌翼32、攪拌容器33および送出口34を備える。攪拌容器33は、原料と気体とを攪拌することができれば特に限定されないが、円筒状であることが好ましい。制御部70の制御に従って、駆動部31が攪拌翼32を回転させることで、原料と気体とを攪拌する。駆動部31は、制御部70と電気的に接続される。ソフトクリームなどの冷菓を製造する場合は、攪拌部30は、冷却部40で冷却されていることが好ましい。また、その場合図示しない温度センサを用い温度を測定することが好ましい。
【0018】
(原料)
原料としては、通常、食用に用いられる脂肪成分を含有する原料を用いることができる。例えば、ソフトクリームミックスなど生乳を加工した原料を用いることができる。また、ホイップクリームなどの植物性油脂を用いた原料を用いてもよい。
【0019】
気体は特に限定されないが、亜酸化窒素、空気、二酸化炭素などが挙げられる。気体としては、空気が好ましい。気体の導入方法は、特に限定されない。各気体を貯蔵した図示しない貯蔵タンクから、攪拌部30に導入してもよい。
【0020】
(冷却部40)
冷却部40は、貯蔵部20と攪拌部30とを冷却する。冷却方法は特に限定されない。例えば、貯蔵部20および攪拌容器33の周囲を冷却用の管を巻回させ、その管の中に冷媒を循環させることで冷却してもよい。
【0021】
(センサユニット10)
センサユニット10は、攪拌部30内に設けられる。具体的には、センサユニット10は、攪拌容器33内に設けられる。センサユニット10は、支持体11と第1センサ12とを備える。攪拌部30は、センサユニット10を1つ以上備え、複数のセンサユニット10を備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。センサユニット10の数は2以上であることが好ましい。センサユニット10の数の上限は特に限定されないが、例えば、10である。同様に、センサユニット10は1つ以上の第1センサ12を備え、複数の第1センサ12を備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。1つのセンサユニット10中の第1センサ12の数は2以上であることが好ましい。1つのセンサユニット10中の第1センサ12の数の上限は特に限定されないが、例えば、8である。
【0022】
(第1センサ12)
第1センサ12は、電気的に測定部50と接続される。第1センサ12は、攪拌部30(ここでは、攪拌容器33)内に設けられ、攪拌中の原料と気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する。第1センサ12が第1インピーダンスを測定するタイミングは、特に限定されず、攪拌翼32の回転数などに応じて適宜設定することができる。図3は、第1センサ12の側面図である。図4は、第1センサ12の平面図である。図3および図4に示す通り、第1センサ12は、複数の電極からなる第1センサ12を用いて局所的なインピーダンスを計測してもよい。複数の電極からなる第1センサ12は、内側電極1と、内側電極1の周囲に配置される外側電極2と、内側電極1と、外側電極2との間に配置され、内側電極1と外側電極2とを絶縁する絶縁体3と、を備える。原料と気体との混合物のインピーダンスを測定することができれば、内側電極1および外側電極2の材質や形状は特に限定されない。内側電極1および外側電極2の材質は、例えば、導電性樹脂、導電性ゴム、導電性セラミックス、ステンレス、Au、Ag、Cuなどの金属が挙げられる。第1センサ12と攪拌容器33の内壁との間には段差がないことが好ましい。
【0023】
第1センサ12の配置位置は、特に限定されない。センサユニット10において、第1センサ12は、攪拌容器33が円筒状である場合は、攪拌容器33の周方向に、均等の角度間隔をあけて配置してもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。ここで周方向とは、攪拌容器33の回転軸線O周りに周回する方向を言う。さらに、センサユニット10は、回転軸線Oの周方向、および/または、長手方向にも配置することができる。
【0024】
第1センサ12と測定部50とは、電気的に接続される。第1センサ12と測定部50との電気的な接続方法は、特に限定されず、公知の電気的接続方法を用いることができる。本実施形態では、各第1センサ12と測定部50とは図示しない導線で接続される。
【0025】
(支持体11)
支持体11は、図1に示す通り、第1センサ12を保持する機能を備え、支持体11の材質は誘電体が好ましく、第1センサ12の電極(例えば、内側電極1、外側電極2)と攪拌容器33の内壁が段差なく位置し、電極と攪拌容器33内の混合物とが接触し、インピーダンスを計測する。このとき、その電極からの電気的シグナルが支持体11や攪拌容器33に逃げない構造とすることが好ましい。
以下、第1センサ12の電極と攪拌容器内の混合物とが接触した構造で、インピーダンスを計測する場合について説明する。
【0026】
(測定部50)
測定部50は、第1センサ12を用いて、原料と気体との混合物のインピーダンス(第1インピーダンス)を測定する。測定部50は、例えば、内側電極1と外側電極2との間に電流または電圧を印加し、電圧測定(または電流測定)と位相測定を行うインピーダンスアナライザなどを備える。インピーダンスアナライザとは、印加周波数と振幅を変化させて、インピーダンス、すなわち、測定電位差(印加電位差)と印加電流(測定電流)の比、および、その位相とを計測する部品である。複数のセンサがある場合は、センサ(例えば、第1センサ12)の切り替えを行うためのマルチプレクサをさらに備えていてもよい。
【0027】
測定部50は、例えば、CPUにおいて、所定のプログラムを実行し、インピーダンスアナライザを制御することで、インピーダンス測定(電位差と電流の比、およびその位相の測定)を行う。マルチプレクサがある場合は、CPUにおいて、インピーダンスアナライザに加えて、マルチプレクサも制御する。
【0028】
測定部50は、電気的インライン計測方法により、対象のインピーダンスを測定することが好ましい。ここで、電気的インライン計測法とは、分離工程、混合工程、および攪拌工程などの各製造工程において、並行的にインピーダンスを計測することである。電気的インライン計測法の具体例な手段として、多周波数計測手段として電気インピーダンススペクトロスコピー(EIS: Electrical Impedance Spectroscopy)手段、多点計測手段としての多点電気インピーダンススペクトロスコピー(mp-EIS: Multiple point Electrical Impedance Spectroscopy)手段、多段面計測手段としての多層電気インピーダンススペクトロスコピー(ml-EIS: Multiple layer Electrical Impedance Spectroscopy)手段、多時間計測手段としての連続的電気インピーダンススペクトロスコピー(c-EIS: Continuous Electrical Impedance Spectroscopy)手段が挙げられる。
【0029】
インピーダンス測定の結果は、電気物性評価部60および制御部70に送られる。電気物性評価部60および制御部70への情報の伝達方法は特に限定されない。測定部50から有線で、電気物性評価部60および制御部70に送ってもよいし、電気物性評価部60および制御部70に送ってもよい。
【0030】
(電気物性評価部60)
電気物性評価部60は、測定部50で測定された第1インピーダンスに基づいて、混合物の電気物性である第1電気物性を計算する。計算される第1電気物性は原料と気体との混合物の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であることが好ましい。
【0031】
以下に、インピーダンスから損失係数(電気的損失係数と称する場合がある)を計算する方法について説明する。まず、センサの物理的形状の要素を除去するために、下記(2)式で表されるセル定数Cおよび下記(3)式で表される浮遊容量Cを計算する。下記(2)式中のCは、空気の静電容量である。下記(2)および(3)式中のCは、水の静電容量である。下記(2)式中のεは、空気の誘電率でここでは1とする。下記(2)式および(3)式中のεwは、水の誘電率であり、ここでは78.3とする。
【0032】
セル定数Cおよび浮遊容量Cを用いて、誘電損失ε’’と比誘電率εとの比である損失係数tanδを表すと、下記(4)式で表される。下記(4)式中において、σは測定した対象の導電率σであり、下記(5)式で表される。Cpは測定対象の静電容量であり、下記(6)式で表される。σlは周波数f=0のときの導電率である。第1インピーダンスの場合、σは原料と気体との混合物の導電率であり、Cpは、原料と気体との混合物の静電容量となる。式(5)中のRe[ε0/C]は、ε0/Cの実部であることを意味する。下記(5)式および(6)式中において、εは、真空の誘電率(8.854×10-12F/m)を表し、ωは角周波数を表し、Zは、測定部50で測定される複素インピーダンスである。インピーダンス測定が第1センサ12を用いて行われる場合は、Zは、混合物の第1インピーダンスとなる。なお、上記の計算では、気体を空気とした場合で説明しているが、気体に空気以外の気体を用いた場合は、その気体の誘電率などを用いる。なお、Zが後述する第2インピーダンスである場合、上述の計算方法において、「原料と気体との混合物」を「添加前原料とその他原料との混合物」に置き換える。同様に、後述するZが第3インピーダンスである場合は、上述の計算方法において、「原料と気体との混合物」を「乳」に置き換える。
【0033】
【数2】
【0034】
第1電気物性として損失係数を用いる場合、損失係数tanδのピーク値とその時のピーク周波数を用いることが好ましい。クリームの形態構造は、攪拌により生じた気泡とそれを繋ぐ脂肪球ネットワークに影響される。そのため、気泡の誘電特性が静電容量に反映される。また、クリームの静電容量は、誘電体(気泡)の伝導電子と双極子緩和による損失を表す理想静電容量とその等価抵抗の系列として定義することができる。ここで、クリームの抵抗はインピーダンスの実部より求めることができる。双極子緩和は局所粘性で決まる電界中での双極子緩和の所要時間に大きく関係する。ここで、測定対象の物性としての局所粘性は、クリーム中の脂肪球ネットワークに関係する。したがって、クリームの形態的な構造段階を検出するためには、損失係数(損失正接)を利用することが好ましい。
【0035】
(制御部70)
制御部70は、測定部50で測定されたインピーダンスおよび電気物性評価部60で計算された第1電気特性のうち、少なくとも一方に基づいて、駆動部31の攪拌条件を制御する。原料と気体との混合物の第1電気物性が設定された目標値(第1目標値)になるように、制御部70は、攪拌条件を制御することが好ましい。このように制御することで、乳製品製造装置100の使用者の嗜好に合わせた乳製品を製造することができる。
【0036】
<乳製品製造方法>
次に、乳製品製造装置100を用いた乳製品製造方法について説明する。図5は、第1実施形態に係る乳製品製造方法のフローチャートである。第1実施形態に係る乳製品製造方法は、肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌する攪拌工程S100を含む。以下、攪拌工程について説明する。
【0037】
図6は、図5の攪拌工程S100のフローチャートである。原料を貯蔵部20から投入した後(S1)、攪拌を開始する(S2)。攪拌を開始後、第1センサ12を用いて、原料と気体との混合物のインピーダンスを測定する(S3)。次に、測定したインピーダンスに基づき、原料と気体との混合物の電気物性を計算する(S4)。計算される混合物の電気物性(第1電気物性)としては、例えば、損失係数である。次に、混合物の電気物性が目標値(第1目標値)に達しているか判定する(S5)。目標値に達していない場合(S5No)、撹拌速度、撹拌時間、撹拌温度、気体流量(空気流量)、および圧力pなどの攪拌条件を再設定し(S6)、攪拌を継続し、インピーダンス測定(S3)に戻る。目標値に達している場合(S5YES)、攪拌を終了する。これらの攪拌工程によって、乳製品を得ることができる。
【0038】
以上、第1実施形態の乳製品製造装置100および乳製品製造方法について説明した。第1実施形態の乳製品製造装置100によれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価ができる。そのため、製造条件を微細構造に応じて適切に制御することができる。これによって、使用者の嗜好に合わせた食品を、その場で製造することができる。
【0039】
第1実施形態では、第1センサ12は、支持体11に設けられていたが、直接攪拌容器33に設けてもよい。直接攪拌容器33に設ける場合は、支持体11は不要である。なお、センサユニット10は、既存の攪拌容器33に別途取り付けてもよいし、攪拌容器33の一部を構成するように、設けられてもよい。
【0040】
第1実施形態では、センサユニット10の数は1つであったが、複数あってもよい。センサユニット10が複数あることで、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより詳細に把握することができる。
【0041】
第1実施形態では、乳製品製造装置100は冷却部40を備えていたが、バターなど室温(5~30℃)で製造可能な乳製品を対象とする場合は、冷却部40は無くてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の乳製品製造装置100Aを、図7を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0043】
図7に示すように、乳製品製造装置100Aは、センサユニット10、第2センサユニット13、第3センサユニット16、材料混合部25、攪拌部30、測定部50A、処理装置90A、および遠心分離部80を備える。処理装置90Aは、電気物性評価部60A、制御部70Aを備える。以下、各部について説明する。
【0044】
乳製品製造装置100Aの処理装置90Aは、例えば、Central Processing Unit(CPU),Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)及びHard Disk Drive(HDD)/Solid State Drive(SSD)を備える。電気物性評価部60Aおよび制御部70Aは、CPUにおいて、所定のプログラムを実行することで実現される。プログラムは、記録媒体経由で取得してもよく、ネットワーク経由で取得してもよい。また、乳製品製造装置100Aの構成を実現するための専用のハードウェア構成を用いてもよい。
【0045】
(材料混合部25)
材料混合部25は、脂肪成分を含有する添加前原料に、脂肪成分以外の材料(その他原料)を添加し混合することで、原料を製造する。材料混合部25で製造された原料は流路L1Aを介し攪拌部30に送られる。材料混合部25は、ソフトクリームなどの冷菓を製造する場合は、冷却部40で冷却されていることが好ましい。
【0046】
材料混合部25は、第2攪拌翼26、第2駆動部27、材料投入部28、および混合容器29を備える。材料投入部28は、制御部70Aの制御に従い、混合容器29内に適切な量(使用者の嗜好に合わせた量)のその他原料を投入する。混合容器29は、添加前原料とその他原料とを混合できれば特に限定されない。混合容器29の形状は例えば円筒状である。
第2駆動部27は、制御部70Aの制御に従い、第2攪拌翼26を回転させる。これによって、添加前原料とその他原料とを混合させる。第2駆動部27および材料投入部28は、制御部70Aと電気的に接続される。
【0047】
(添加前原料)
添加前原料としては、食用に用いられる脂肪成分を含有し、原料を用いることができる。添加前原料にその他原料を添加し、混合することで、上述の原料となる。添加前原料としては、生乳を遠心分離して成分を調整した調整後乳などが挙げられる。添加前原料中の脂肪成分の含有量などは、使用者の嗜好に合わせて適宜その場で調整される。
【0048】
(その他原料)
その他原料としては、糖質、塩、安定剤、乳化剤、pH調整剤、チョコレート、果汁、抹茶等が挙げられる。
【0049】
糖質
糖質としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、ラフィノース、セロトリオース、デキストリン、デンプン等が挙げられる。
【0050】
安定剤
安定剤としては、例えば、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム、寒天などが挙げられる。
【0051】
乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪
酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、有機
酸モノグリセリド、脂肪酸モノグリセリドが挙げられる。
【0052】
(第2センサユニット13)
第2センサユニット13は、材料混合部25内に設けられる。第2センサユニット13は、第2支持体14と第2センサ15とを備える。材料混合部25は、第2センサユニット13を1以上備え、複数の第2センサユニット13を備えることで、材料混合時の空間的な非一様性を検出することができ、材料混合部25内の脂肪成分を含有する添加前原料と、脂肪成分以外の材料(以下、その他原料と称する場合がある)との混合状態をより正確に把握することができる。第2センサユニット13の数は2以上であることが好ましい。第2センサユニット13の数の上限は特に限定されないが、例えば、10である。同様に、1つの第2センサユニット13は、1以上の第2センサ15を備え、複数の第2センサ15を備えることで、材料混合部25内の脂肪成分を含有する添加前原料と、その他原料との混合状態をより正確に把握することができる。1つの第2センサユニット13中の第2センサ15の数は2以上であることが好ましい。1つの第2センサユニット13中の第2センサ15の数の上限は特に限定されないが、例えば、8である。第2センサユニット13は、回転軸線O2の周方向、および/または、長手方向にも配置することができる。
【0053】
(第2センサ15)
第2センサ15は、電気的に測定部50Aと接続される。第2センサ15は、材料混合部25内に設けられ、混合中の原料のインピーダンス(添加前原料と、その他原料との混合物のインピーダンス)である第2インピーダンスを測定する。第2センサユニット13が第2インピーダンスを測定するタイミングは、特に限定されず、第2攪拌翼26の回転数などに応じて適宜設定することができる。第2センサ15の構成は混合中の原料のインピーダンスを測定できれば特に限定されない。第2センサ15の構成は、第1センサ12の構成と同じであってもよい。第2センサ15と混合容器29の内壁との間には段差がないことが好ましい。
【0054】
第2センサ15の配置位置は、特に限定されない。第2センサユニット13において、第2センサ15は、混合容器29が円筒状である場合は、混合容器29の周方向に、均等の角度間隔をあけて配置されてもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。ここで混合容器29の周方向とは材料混合部25の回転軸線O2周りに周回する方向を言う。また、第2センサ15は、回転軸線O2に沿って、混合容器29の内壁に、均等に間隔をあけて配置してもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。
【0055】
第2センサ15と測定部50Aとは、電気的に接続される。第2センサ15と測定部50Aとの電気的な接続方法は、特に限定されず、公知の電気的接続方法を用いることができる。本実施形態では、各第2センサ15と測定部50Aとは導線で接続される。
【0056】
(第2支持体14)
第2支持体14は、図7に示すように第2センサ15を保持する機能を備える。第2支持体14の材質は誘電体が好ましい。第2センサ15の電極と混合容器29の内壁が段差なく位置し、第2センサ15の電極と、混合容器29内の添加前原料およびその他原料の混合物と、が接触し、インピーダンスを計測する。このとき、第2センサ15の電極からの電気的シグナルが第2支持体14や混合容器29に逃げない構造(流れない構造)とすることが好ましい。
【0057】
(冷却部40A)
冷却部40Aは、材料混合部25と攪拌部30とを冷却する。冷却方法は特に限定されない。例えば、混合容器29および攪拌容器33の周囲を冷却用の管を巻回させ、その管の中に冷媒を循環させることで冷却してもよい。
【0058】
(遠心分離部80)
遠心分離部80は、乳中の脂肪成分の含有量を調整した前記添加前原料を製造する。遠心分離部80は、回転体81、第3駆動部82、投入口83、および分離容器84を備える。投入口83から投入された乳は、供給管L3によって、回転体81内に導入される。回転体81は、複数の分離板86を備える。回転体81内に供給された乳は、分離板86間の流路に入る。分離板86によって隔てられた各流路に入った乳は、遠心力を受ける。乳の中で比重が軽い部分は、回転軸線O3側に移動する。乳の中で比重が重い部分は、回転体81の外周方向に移動し、流路L2を通って、材料混合部25に移動する。この材料混合部25に移動した比重が重い部分が、乳中の脂肪成分の含有量を調整した添加前原料となる。
【0059】
制御部70Aの制御に従って、第3駆動部82が回転体81を回転させる。遠心分離の条件は、使用者の嗜好によって、適宜その場で調整することができる。
【0060】
(乳)
乳は、例えば、生乳、牛乳、生やぎ乳等の動物乳が挙げられる。乳の組成を変化させない前処理を施してもよい。例えば、乳を投入口83に供給する前に加熱をしてもよい。乳の加熱温度は例えば、40~65℃である。
【0061】
(第3センサユニット16)
第3センサユニット16は、遠心分離部80内(ここでは、分離容器84内)に設けられる。第3センサユニット16は、第3支持体17と第3センサ18とを備える。遠心分離部80は、第3センサユニット16を1以上備え、複数の第3センサユニット16を備えることで、遠心分離時の空間的な非一様性を検出することができ、添加前原料の状態をより正確に把握することができる。第3センサユニット16の数は2以上であることが好ましい。第3センサユニット16の数の上限は特に限定されないが例えば、10である。同様に、1つの第3センサユニット16は、1以上の第3センサ18を備え、複数の第3センサ18を備えることで、遠心分離時の空間的な非一様性を検出することができ、遠心分離部80内の脂肪成分の含有量を調整した添加前原料の状態をより正確に把握することができる。1つの第3センサユニット16中の第3センサ18の数は2以上であることが好ましい。1つの第3センサユニット16中の第3センサ18の数の上限は特に限定されないが、例えば、8である。第3センサユニット16は、回転軸線O3の周方向、および/または、長手方向にも配置することができる。
【0062】
(第3センサ18)
第3センサ18は、電気的に測定部50Aと接続される。第3センサ18は、遠心分離部80内(ここでは、分離容器84内)に設けられ、遠心分離中の添加前原料(遠心分離中の乳)のインピーダンスである第3インピーダンスを測定する。第3センサ18が第3インピーダンスを測定するタイミングは、特に限定されず、回転体81の回転数などに応じて適宜設定することができる。第3センサ18の構成は遠心分離中の乳のインピーダンスを測定できれば特に限定されない。第3センサ18の構成は、第1センサ12の構成と同じであってもよい。第3センサ18と分離容器84の内壁との間には段差がないことが好ましい。
【0063】
第3センサ18の配置位置は、特に限定されない。第3センサユニット16において、第3センサ18は、分離容器84が円筒状である場合は、分離容器84の周方向に、均等の角度間隔をあけて配置されてもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。ここで分離容器84の周方向とは回転体81の回転軸線O3周りに周回する方向を言う。また、第3センサ18は、回転軸線O3に沿って、分離容器84の内壁に、均等に間隔をあけて配置してもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。
【0064】
第3センサ18と測定部50Aとは、電気的に接続される。第3センサ18と測定部50Aとの電気的な接続方法は、特に限定されず、公知の電気的接続方法を用いることができる。本実施形態では、各第3センサ18と測定部50Aとは導線で接続される。
【0065】
(第3支持体17)
第3支持体17は、図7に示すように、第3センサ18を保持する機能を備える。第3支持体17の材質は誘電体が好ましい。第3センサ18の電極と分離容器84の内壁が段差なく位置し、第3センサ18の電極と分離容器84内の乳とが接触し、インピーダンスを計測する。このとき、第3センサ18の電極からの電気的シグナルが第3支持体17や分離容器84に逃げない構造とすることが好ましい。
【0066】
(測定部50A)
測定部50Aは、第1センサ12を用いて、原料と気体との混合物のインピーダンス(第1インピーダンス)を測定する。測定部50Aは、第2センサ15を用いて、添加前原料とその他原料との混合物(原料)のインピーダンス(第2インピーダンス)を測定する。測定部50Aは、第3センサ18を用いて、遠心分離中の添加前原料のインピーダンス(第3インピーダンス)を測定する。測定部50Aは、例えば、内側電極1と外側電極2との間に電流または電圧を印加し、電圧測定(または電流測定)と位相測定を行うインピーダンスアナライザなどを備える。インピーダンスアナライザとは、印加周波数と振幅を変化させて、インピーダンス、すなわち、測定電位差(印加電位差)と印加電流(測定電流)の比、および、その位相とを計測する部品である。複数のセンサがある場合は、センサ(例えば、第1センサ12)の切り替えを行うためのマルチプレクサをさらに備えていてもよい。
【0067】
測定部50Aは、例えば、CPUにおいて、所定のプログラムを実行し、インピーダンスアナライザを制御することで、インピーダンス測定(電位差と電流の比、およびその位相の測定)を行う。マルチプレクサがある場合は、CPUにおいて、インピーダンスアナライザに加えて、マルチプレクサも制御する。
【0068】
測定部50Aは、電気的インライン計測方法により、対象のインピーダンスを測定することが好ましい。
【0069】
インピーダンス測定の結果は、電気物性評価部60Aおよび制御部70Aに送られる。電気物性評価部60Aおよび制御部70Aへの情報の伝達方法は特に限定されない。測定部50から有線で、電気物性評価部60Aおよび制御部70Aに送ってもよいし、電気物性評価部60Aおよび制御部70Aに送ってもよい。
【0070】
(電気物性評価部60A)
電気物性評価部60Aは、測定部50Aで測定された第1インピーダンスに基づいて、原料と気体との混合物の電気物性である第1電気物性を計算する。電気物性評価部60Aは、測定部50Aで測定された第2インピーダンスに基づいて、原料の電気物性である第2電気物性を計算する。電気物性評価部60Aは、測定部50Aで測定された第3インピーダンスに基づいて、添加前原料の電気物性である第3電気物性を計算する。計算される第1電気物性は原料と気体との混合物の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であることが好ましい。計算される第2電気物性は原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であることが好ましい。計算される第3電気物性は添加前原料の導電率、誘電率、位相、損失係数のうち1つ以上であることが好ましい。インピーダンスからの損失係数などの電気物性を計算する方法は上述と同じ方法を用いることができる。
【0071】
損失係数tanδのピーク値は脂肪の含有量と相関がある。また、損失係数tanδのピークが現れる周波数は、脂肪成分(油脂)の種類によって、変動する。そのため、添加
第2電気物性および第3電気物性としては、損失係数tanδのピーク値とその時のピーク周波数を用いることが好ましい。
【0072】
(制御部70A)
制御部70Aは、測定部50Aで測定された第1インピーダンスおよび電気物性評価部60Aで計算された第1電気特性のうち、少なくとも一方に基づいて、攪拌部30の攪拌条件を制御する。原料と気体との混合物の第1電気物性が設定された目標値(第1目標値)になるように、制御部70Aは、攪拌条件を制御することが好ましい。
制御部70Aは、測定部50Aで測定された第2インピーダンスおよび電気物性評価部60Aで計算された第2電気特性のうち、少なくとも一方に基づいて、材料混合部25の混合条件を制御する。添加前原料とその他原料との混合物(原料)の第2電気物性が設定された目標値(第2目標値)になるように、制御部70Aは、混合条件を制御することが好ましい。
制御部70Aは、測定部50Aで測定された第3インピーダンスおよび電気物性評価部60Aで計算された第3電気特性のうち、少なくとも一方に基づいて、遠心分離部80の遠心分離条件を制御する。添加前原料の第3電気物性が設定された目標値(第3目標値)になるように、制御部70Aは、遠心分離条件を制御することが好ましい。このように制御することで、使用者の嗜好に合わせた乳製品を製造することができる。
【0073】
<乳製品製造方法>
次に、乳製品製造装置100Aを用いた乳製品製造方法について説明する。図8は、第2実施形態に係る乳製品製造方法のフローチャートである。第2実施形態に係る乳製品製造方法は材料混合工程S102の前に、乳を遠心分離することで、乳中の脂肪成分の含有量を調整した添加前原料を製造する、遠心分離工程S101と、攪拌工程S100の前に、脂肪成分を含有する添加前原料に、脂肪成分以外の材料を添加し、混合することで原料を製造する、材料混合工程S102と、肪成分を含有する原料と、気体と、を攪拌する攪拌する攪拌工程S100と、を含む。以下、遠心分離工程S101および材料混合工程S102について説明する。
【0074】
図9は、図8の遠心分離工程S101のフローチャートである。乳を投入口83から投入した後(S11)、遠心分離を開始する(S12)。遠心分離を開始後、第3センサ18を用いて、遠心分離中の乳のインピーダンス(第3インピーダンス)を測定する(S13)。次に、測定した第3インピーダンスに基づき、遠心分離中の添加前原料の電気物性(第3電気物性)を計算する(S14)。計算される添加前原料の電気物性(第3電気物性)としては、例えば損失係数である。次に、添加前原料の電気物性が目標値(第3目標値)に達しているか判定する(S15)。目標値に達していない場合(S15No)、回転体の回転速度、遠心分離の時間、遠心分離の温度などの遠心分離条件を再設定し(S16)、遠心分離を継続し、インピーダンス測定(S13)に戻る。目標値に達している場合(S15YES)、材料混合部25に添加前原料を送出する(S17)。次に、添加前原料が目標量に達しているか判定する(S18)。目標量に達していない場合、S17に戻り、材料混合部25に添加前原料を送出する。目標量に達している場合(S18 YES),遠心分離を終了する。
【0075】
図10は、図8の材料混合工程S102のフローチャートである。所定量の添加前原料を攪拌部30から投入し、所定量のその他原料を材料投入部28から投入した後(S21)、混合を開始する(S22)。混合を開始後、第2センサ15を用いて、混合中の添加前原料とその他原料との混合物(原料)のインピーダンス(第2インピーダンス)を測定する(S23)。次に、測定した第2インピーダンスに基づき、混合中の原料の電気物性を計算する(S24)。計算される原料の電気物性(第2電気物性)としては、例えば、損失係数である。次に、原料の電気物性が目標値(第2目標値)に達しているか判定する(S25)。目標値に達していない場合(S25No)、撹拌速度、撹拌時間、撹拌温度などの混合条件を再設定し(S26)、攪拌を継続し、インピーダンス測定(S23)に戻る。目標値に達している場合(S25YES)、材料混合工程を終了する。
【0076】
以上、第2実施形態の乳製品製造装置100Aおよび乳製品製造方法について説明した。第2実施形態の乳製品製造装置100Aによれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価可能ができる。そのため、製造条件を微細構造に応じて適切に制御することができる。また、乳製品製造装置100Aによれば、遠心分離部80で脂肪量などを調整することができる。また、材料混合部25で、甘味料などその他成分を使用者の嗜好に合わせて添加することができる。これによって、使用者の嗜好により合わせた乳製品を製造することができる。
【0077】
第2実施形態では、第2センサユニット13および第3センサユニット16を備えていたが、第2センサユニット13および第3センサユニット16は無くてもよい。
【0078】
第2実施形態では、第2センサ15は、第2支持体14に設けられていたが、直接混合容器29に設けてもよい。直接混合容器29に設ける場合は、第2支持体14は不要である。
【0079】
第2実施形態では、第3センサ18は、第3支持体17に設けられていたが、直接分離容器84に設けてもよい。直接分離容器84に設ける場合は、第3支持体17は不要である。
【0080】
第2実施形態では、乳製品製造装置100Aは冷却部40Aを備えていたが、室温(5~30℃)で製造可能な乳製品を対象とする場合は、冷却部40Aは無くてもよい。
【0081】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の乳製品製造装置100Bを、図11を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態および第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0082】
図11に示すように、乳製品製造装置100Bは、センサユニット10、第2センサユニット13、第3センサユニット16、材料混合部25、攪拌部30、測定部50A、遠心分離部80、処理装置90Bおよび入力部200を備える。処理装置90Bは、電気物性評価部60A、制御部70A、モデル学習部210、パラメータ設定部220、記憶部230を備える。以下、各部について説明する。
【0083】
乳製品製造装置100Bの処理装置90Bは、例えば、Central Processing Unit(CPU),Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)及びHard Disk Drive(HDD)/Solid State Drive(SSD)を備える。電気物性評価部60A、制御部70A、モデル学習部210、パラメータ設定部220は、CPUにおいて、所定のプログラムを実行することで実現される。プログラムは、記録媒体経由で取得してもよく、ネットワーク経由で取得してもよい。また、乳製品製造装置100Bの構成を実現するための専用のハードウェア構成を用いてもよい。
【0084】
(入力部200)
入力部200は、使用者が乳製品の評価パラメータを入力可能なデバイスである。入力部200は、使用者が乳製品の評価パラメータを入力できれば特に限定されない。入力部200から入力された乳製品の評価パラメータは、モデル学習部210およびパラメータ設定部220に送られる。図12は、入力部のインターフェースの例である。この例では、柔らかさ、なめらかさ、濃厚さ、爽やかさ、ふわふわ感、甘さを乳製品の評価パラメータとして入力する。
【0085】
モデル学習部210は、乳製品の評価パラメータ、第1電気物性、第2電気物性、第3電気物性、原料の成分組成、原料と気体とを攪拌する攪拌条件、添加前原料とその他原料とを混合する混合条件、乳を遠心分離する遠心分離条件を用いて、評価パラメータが入力されたときに、少なくとも第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させる。モデル学習部210は、さらに原料の成分組成を出力するようにモデルのパラメータを学習してもよい。モデル学習部210は、乳製品の評価パラメータ、原料の成分組成、原料と気体とを攪拌する攪拌条件、第1電気物性を用いて、評価パラメータが入力されたときに、第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させてもよい。例えば、モデル学習部210は、記憶部230に記憶されている、乳製品の評価パラメータ、第1電気物性、第2電気物性、第3電気物性、原料の成分組成、攪拌条件、混合条件、遠心分離条件などの情報を用いて学習する。モデル学習部210は、学習により生成した学習済みモデルを記憶部230に保存する。モデルの学習は機械学習が好ましい。機械学習としては、入力情報と出力情報とを紐づけたデータを用意し、そのデータをニューラルネットワークに基づいた計算モデルに入力して学習してもよい。乳製品の評価パラメータを入力部200から入力して、データを用意してもよいし、学習用のデータを別途用意してもよい。ニューラルネットワークとしては、畳み込み層、プーリング層、全結合層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、長短期記憶ニューラルネットワーク(LSTM)、またはCNNおよびLSTMを組み合わせたものなどを用いてもよい。
【0086】
パラメータ設定部220は、モデル学習部で学習した学習済みモデルを用い、入力部に入力された評価パラメータに基づいて、推定パラメータを出力する。具体的には、パラメータ設定部220は、記憶部230から学習済みモデルを呼び出し、入力部200から入力された評価パラメータに基づいて、推定パラメータを出力する。推定パラメータは、例えば、第1電気物性、第2電気物性、第3電気物性、原料の成分組成である。パラメータ設定部220は、例えば、記憶部230に少なくとも第1電気物性を出力する。また、出力された第1電気物性、第2電気物性、第3電気物性を目標値として制御部70Aに送る。
【0087】
<乳製品製造方法>
図13に乳製品製造装置100Bを用いた学習時のフローチャートを示す。乳製品製造方法は、遠心分離工程S101、材料混合工程S102、攪拌工程S100,評価工程S103、モデル学習工程S104を含む。
【0088】
(評価工程)
評価工程S103において、攪拌工程S100で得られた乳製品の評価を行い、その乳製品の評価パラメータを入力部200から入力し、第1電気物性、第2電気物性、第3電気物性、原料と気体とを攪拌する攪拌条件、添加前原料とその他原料とを混合する混合条件、乳を遠心分離する遠心分離条件、および原料の成分組成と紐づけて記憶部230に記憶する。原料の成分組成は記憶しなくてもよい。
【0089】
モデル学習工程S104では、乳製品の評価パラメータ、原料の成分組成、原料と気体とを攪拌する攪拌条件、添加前原料とその他原料とを混合する混合条件、乳を遠心分離する遠心分離条件、第1電気物性、第2電気物性、および第3電気物性を用いて、評価パラメータが入力されたときに、少なくとも第1電気物性を出力するように、モデルのパラメータを学習させる。このとき、第2電気物性および第3電気物性も出力するように学習させることが好ましい。また、原料の成分組成を出力するようにモデルのパラメータを学習させてもよい。学習した学習済みモデルは記憶部230に保存される。
【0090】
図14に乳製品製造装置100Bを用いた乳製品製造方法のフローチャートを示す。乳製品製造方法は、入力工程S105,パラメータ設定工程S106,遠心分離工程S101、材料混合工程S102、攪拌工程S100を含む。
【0091】
(入力工程)
入力工程S105において、使用者は嗜好に合わせて製造する乳製品の評価パラメータを入力部200から入力する。
【0092】
パラメータ設定工程S106では、モデル学習工程S104で学習した学習済みモデルを用い、入力工程S105で入力された評価パラメータに基づいて、少なくとも第1電気物性を出力する。より好ましくは、第1電気物性、第2電気物性、第3電気物性を目標値として設定する。
【0093】
以上、第3実施形態の乳製品製造装置100Bおよび乳製品製造方法について説明した。第3実施形態の乳製品製造装置100Bによれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価可能ができる。そのため、製造条件を微細構造に応じて適切に制御することができる。また、乳製品製造装置100Bによれば、モデル学習部210およびパラメータ設定部220を備えるので、使用者の嗜好に合わせた条件を学習し、より使用者の嗜好に合わせた乳製品を製造することができる。
【0094】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の乳製品製造装置100Dを、図15を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0095】
図15は、第4実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。図15に示すように、乳製品製造装置100Dは、センサユニット10D、貯蔵部20、攪拌部30、測定部50、および処理装置90を備える。処理装置90は、電気物性評価部60および制御部70を備える。
【0096】
(センサユニット10D)
センサユニット10Dは、攪拌部30内に設けられる。具体的には、センサユニット10Dは、攪拌容器33内に設けられる。センサユニット10Dは、支持体11Dと第1センサ12Dとを備える。攪拌部30は、センサユニット10Dを1つ以上備え、複数のセンサユニット10Dを備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。センサユニット10の数は2以上であることが好ましい。センサユニット10Dの数の上限は特に限定されないが、例えば、10である。同様に、センサユニット10Dは1つ以上の第1センサ12Dを備え、複数の第1センサ12Dを備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。1つのセンサユニット10D中の第1センサ12Dの数は2以上であることが好ましい。1つのセンサユニット10D中の第1センサ12の数の上限は特に限定されないが、例えば、8である。
【0097】
(第1センサ12D)
第1センサ12Dは、電気的に測定部50と接続される。第1センサ12Dは、攪拌部30(ここでは、攪拌容器33)内に設けられ、攪拌中の原料と気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する。第1センサ12Dが第1インピーダンスを測定するタイミングは、特に限定されず、攪拌翼32の回転数などに応じて適宜設定することができる。第1センサ12Dの構成は、第1センサ12の構成と同じであってもよい。第1センサ12Dと攪拌容器33の内壁との間には段差がないことが好ましい。
【0098】
第1センサ12の配置位置は、特に限定されない。センサユニット10Dにおいて、第1センサ12は、攪拌容器33が円筒状である場合は、攪拌容器33の長手方向に、均等の間隔をあけて配置してもよいし、不均等の間隔をあけて配置してもよい。ここで、攪拌容器33の長手方向とは、攪拌容器33の回転軸線Oと平行な方向を言う。
【0099】
第1センサ12Dと測定部50とは、電気的に接続される。第1センサ12Dと測定部50との電気的な接続方法は、特に限定されず、公知の電気的接続方法を用いることができる。本実施形態では、各第1センサ12Dと測定部50とは導線で接続される。
【0100】
(支持体11)
支持体11Dは、図15に示す通り、第1センサ12Dを保持する機能を備える。支持体11Dの材質は誘電体が好ましく、第1センサ12Dの電極(例えば、内側電極1、外側電極2)と攪拌容器33の内壁が段差なく位置し、電極と攪拌容器33内の混合物とが接触し、インピーダンスを計測する。このとき、その電極からの電気的シグナルが支持体11や攪拌容器33に逃げない構造とすることが好ましい。
【0101】
以上、第4実施形態の乳製品製造装置100Dについて説明した。第4実施形態の乳製品製造装置100Dによれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価できる。そのため、製造条件を微細構造に応じて適切に制御することができる。これによって、使用者の嗜好に合わせた食品を、その場で製造することができる。
【0102】
第4実施形態では、長手方向に配置したセンサユニット10Dのみを設置していたが、長手方向に配置すると同時に周方向にセンサユニットを配置してもよい。
【0103】
第2実施形態の第2センサユニット13についても、第4実施形態と同様に、混合容器29の長手方向に配置してもよい。また、第3センサユニット16についても、第4実施形態と同様に、分離容器84の長手方向に配置してもよい。
【0104】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態の乳製品製造装置100Eを、図16および図17を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、および第4実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0105】
図16は、第5実施形態に係る乳製品製造装置の模式図である。図17は、図16の乳製品製造装置100EのB-B線に沿った部分断面図である。図17は、センサユニット10E付近の攪拌容器33の内側を見た図である。図17において、説明のために、攪拌翼32を省略している。図16および図17に示すように、乳製品製造装置100Eは、センサユニット10E、貯蔵部20、攪拌部30、測定部50、および処理装置90を備える。処理装置90は、電気物性評価部60および制御部70を備える。
【0106】
(センサユニット10E)
センサユニット10Eは、攪拌部30内に設けられる。具体的には、センサユニット10Eは、攪拌容器33内に設けられる。センサユニット10Eは、支持体11Eと第1センサ12Eとを備える。攪拌部30は、センサユニット10Eを1つ以上備え、複数のセンサユニット10Eを備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。センサユニット10Eの数は2以上であることが好ましい。センサユニット10Eの数の上限は特に限定されないが、例えば、10である。同様に、センサユニット10Eは1つ以上の第1センサ12Eを備え、複数の第1センサ12Eを備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。1つのセンサユニット10E中の第1センサ12Eの数は2以上であることが好ましい。1つのセンサユニット10E中の第1センサ12Eの数の上限は特に限定されないが、例えば、8である。
【0107】
(第1センサ12E)
第1センサ12Eは、電気的に測定部50と接続される。第1センサ12Eは、攪拌部30(ここでは、攪拌容器33)内に設けられ、攪拌中の原料と気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する。第1センサ12Eが第1インピーダンスを測定するタイミングは、特に限定されず、攪拌翼32の回転数などに応じて適宜設定することができる。図17に示す通り、第1センサ12Eは、1つの電極からなる第1センサ12を2以上配置することでインピーダンスを計測してもよい。1つの電極からなる第1センサ12Eは、電極1Eと、電極1Eと、他の電極1E、攪拌容器33とを絶縁する絶縁体3Eと、を備える。原料と気体との混合物のインピーダンスを測定することができれば、電極1Eの材質や形状は特に限定されない。電極1Eの材質は、例えば、導電性樹脂、導電性ゴム、導電性セラミックス、ステンレス、Au、Ag、Cuなどの金属が挙げられる。第1センサ12Eと攪拌容器33の内壁との間には段差がないことが好ましい。
【0108】
第1センサ12Eは攪拌容器33の壁の内側に2以上配置される。第1センサ12Eの配置位置は、特に限定されない。2次元的に配置してもよいし、3次元的に配置してもよい。センサユニット10Eにおいて、第1センサ12Eは、攪拌容器33が円筒状である場合は、攪拌容器33の周方向に、均等の角度間隔をあけて配置してもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。さらに、センサユニット10Eは、回転軸線Oの周方向、および/または、長手方向にも配置することができる。
【0109】
第1センサ12Eと測定部50とは、電気的に接続される。第1センサ12Eと測定部50との電気的な接続方法は、特に限定されず、公知の電気的接続方法を用いることができる。本実施形態では、各第1センサ12と測定部50とは図示しない導線で接続される。
【0110】
(支持体11E)
支持体11Eは、図16および図17に示す通り、第1センサ12Eを保持する機能を備える。支持体11Eの材質は誘電体が好ましい。第1センサ12Eの電極1Eと攪拌容器33の内壁が段差なく位置し、電極1Eと攪拌容器33内の混合物とが接触し、インピーダンスを計測する。このとき、その電極1Eからの電気的シグナルが支持体11Eや攪拌容器33に逃げない構造とすることが好ましい。
【0111】
以上、第5実施形態の乳製品製造装置100Eについて説明した。第5実施形態の乳製品製造装置100Eによれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価できる。そのため、製造条件を微細構造に応じて適切に制御することができる。これによって、使用者の嗜好に合わせた食品を、その場で製造することができる。
【0112】
第2実施形態の第2センサユニット13をセンサユニット10Eと同じ構成としてもよい。また、第3センサユニット16についても、センサユニット10Eと同じ構成としてもよい。
【0113】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る第6実施形態の乳製品製造装置100Fを、図18および図19を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、および第5実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0114】
図18は、第6実施形態に係る乳製品製造装置100Fの模式図である。図19は、図18の乳製品製造装置100FのC-C線に沿った部分断面図である。図19は、センサユニット10F付近の攪拌容器33Fの内側を見た図である。図19において、説明のために、攪拌翼32を省略している。図18および図19に示すように、乳製品製造装置100Fは、センサユニット10F、貯蔵部20、攪拌部30、測定部50、および処理装置90を備える。処理装置90は、電気物性評価部60および制御部70を備える。本実施形態において、攪拌容器33Fは、例えば、誘電体から構成される。
【0115】
(センサユニット10F)
センサユニット10Fは、攪拌部30内に設けられる。具体的には、センサユニット10Fは、攪拌容器33F内に設けられる。センサユニット10Fは、支持体11Fと第1センサ12Fとを備える。攪拌部30は、センサユニット10Fを1つ以上備え、複数のセンサユニット10Fを備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33F内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。センサユニット10Fの数は2以上であることが好ましい。センサユニット10Fの数の上限は特に限定されないが、例えば、10である。同様に、センサユニット10Fは1つ以上の第1センサ12Fを備え、複数の第1センサ12Fを備えることで、乳製品撹拌時の空間的な非一様性を検出することができ、攪拌容器33F内の原料と気体との攪拌状態をより正確に把握することができる。1つのセンサユニット10F中の第1センサ12Fの数は2以上であることが好ましい。1つのセンサユニット10F中の第1センサ12Fの数の上限は特に限定されないが、例えば、8である。
【0116】
(第1センサ12F)
第1センサ12Fは、電気的に測定部50と接続される。第1センサ12Fは、攪拌部30(ここでは、攪拌容器33F)内に設けられ、攪拌中の原料と気体との混合物のインピーダンスである第1インピーダンスを測定する。第1センサ12Fが第1インピーダンスを測定するタイミングは、特に限定されず、攪拌翼32の回転数などに応じて適宜設定することができる。図19に示す通り、第1センサ12Fは、1つの電極からなる第1センサ12を2以上配置することでインピーダンスを計測してもよい。1つの電極からなる第1センサ12Fは、電極1Fと、電極1Fと、他の電極1F、攪拌容器33Fとを絶縁する絶縁体3Fと、を備える。原料と気体との混合物のインピーダンスを測定することができれば、電極1Fの材質や形状は特に限定されない。電極1Fの材質は、例えば、導電性樹脂、導電性ゴム、導電性セラミックス、ステンレス、Au、Ag、Cuなどの金属が挙げられる。第1センサ12Fと攪拌容器33Fの内壁との間には段差がないことが好ましい。
【0117】
第1センサ12Fは攪拌容器33Fの壁の内側に2以上配置される。第1センサ12Fの配置位置は、特に限定されない。2次元的に配置してもよいし、3次元的に配置してもよい。センサユニット10Fにおいて、第1センサ12Fは、攪拌容器33Fが円筒状である場合は、攪拌容器33Fの周方向に、均等の角度間隔をあけて配置してもよいし、不均等の角度間隔をあけて配置してもよい。さらに、センサユニット10Fは、回転軸線Oの周方向、および/または、長手方向にも配置することができる。
【0118】
第1センサ12Fと測定部50とは、電気的に接続される。第1センサ12Fと測定部50との電気的な接続方法は、特に限定されず、公知の電気的接続方法を用いることができる。本実施形態では、各第1センサ12と測定部50とは図示しない導線で接続される。
【0119】
(支持体11F)
支持体11Fは、図18および図19に示す通り、第1センサ12Fを保持する機能を備える。支持体11Fの材質は誘電体が好ましい。攪拌容器33Fの内壁が誘電体であれば、第1センサ12Fの電極1Fと攪拌容器33F内の混合物とは接触しなくてもよい。このとき電極1Fは攪拌容器33Fの壁の外側に配置し、インピーダンスではなく、容量リアクタンス、または、キャパシタンス(電気容量)を測定する。
【0120】
以上、第6実施形態の乳製品製造装置100Fについて説明した。第6実施形態の乳製品製造装置100Fによれば、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価できる。そのため、製造条件を微細構造に応じて適切に制御することができる。これによって、使用者の嗜好に合わせた食品を、その場で製造することができる。
【0121】
第6実施形態の乳製品製造装置100Fにおいて、1つの電極1Fを有する第1センサ12Fを用いたが、第1センサ12Fの代わりに、複数の電極を有するセンサを用いてもよい。例えば、第1センサ12Fの代わりに、第1実施形態の第1センサ12と同じ構成のセンサを用いてもよい。即ち、第1センサ12Fの代わりに、内側電極1および外側電極2を有するセンサを用いてもよい。このようにすることで、より詳細に、乳製品の局所的な微細構造の違いについて評価できる。なお、第1センサ12Fの代わりに、複数の電極を有するセンサを用いる場合は、センサユニット10F中のセンサの数は1以上であってもよい。
【0122】
なお、第2実施形態の第2センサユニット13についても、第6実施形態のセンサユニット10Fと同様の構成にしてもよい。また、第3センサユニット16についても、第6実施形態のセンサユニット10Fと同様の構成にしてもよい。
【0123】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0124】
本開示の乳製品製造装置は、ホイップクリーム、ソフトクリーム、生クリーム、チーズなどの乳製品の製造に用いることができる。
【0125】
(実施例)
次に、本開示の乳製品製造装置の有効性を検証するために実験した例について説明する。
【0126】
攪拌中のホイップクリーム(メグミルク社製ホイップ、植物性脂肪分:40.0%、無脂乳:3.5%)からサンプリングした試料を電気インピーダンススペクトロスコピー(EIS: Electrical Impedance Spectroscopy)により測定し、オーバーランと比較した。ホイップクリームは愛工舎製KPL9000Sを用い、660rpmで攪拌することで作製した。インピーダンス測定は、攪拌時間ごとにホイップクリームを採取して、インピーダンス測定用センサーに採取したホイップクリームを入れ、その後、パーソナルコンピュータ(PC)に接続されたインピーダンスアナライザ―(HIOKI社製IM7581)を用いて行った。
オーバーランは、電子天秤(A&D社製 GH-120)で30mLの体積のホイップクリームを攪拌時間ごとに計量し、上記(1)式を用い算出した。
また、デジタルスコープ(キーエンス社製VH-5500)を用い、攪拌時間ごとのホイップクリームの形態構造を観察した。
得られた結果を図20に示す。図20は、ホイップクリームの攪拌過程におけるオーバーランOR(%)、形態構造変化、電気計測応答との関係を示す。ここでは、左縦軸はオーバーランORを示し、右縦軸に緩和周波数でのtanδを示し、横軸は攪拌時間(min)を示す。オーバーランとtanδの相関係数Rは約0.93と高かった。EIS測定は良い精度でホイップクリームの形態構造変化を反映していた。EIS測定は、攪拌中にも行うことができることから、EIS測定を行うことで、リアルタイムでホイップクリームの形態構造を検出できることが確認された。
【0127】
次に、ホイップクリームの粘弾性測定で得られる粘弾性的損失係数tanδとインピーダンス測定で得られる電気的損失係数tanδとの関係を調べた。粘弾性的損失係数tanδは、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の比G’’/G’であり、ホイップクリームの食感に影響するパラメータである。粘弾性評価はレオメータ(MCR302、Anton Paar社製MCR302)を用いて、攪拌時間後のホイップクリームの粘弾性測定を行った。測定条件はパラレルプレートを用い、プレート間のギャップは1mm、せん断ひずみ0.04%~400%の範囲で評価した。粘弾性的損失係数tanδはせん断ひずみ0.04%の時の値を用いた。得られた結果を図21に示す。図21は、ホイップクリームの攪拌工程の各形態構造段階における、電気的損失係数tanδと粘弾性的損失係数tanδの関係を示したものである。図21の横軸は電気的損失係数を示し、縦軸は粘弾性的損失係数を示す。tanδとtanδの相関係数Rは約0.98であり、EIS計測により粘弾性挙動の検出を高精度で行うことができることが確認された。以上の結果より、インピーダンスを測定することによって、リアルタイムに食感を確認することができることが確認された。EIS測定を行うことで、使用者の嗜好に合わせて攪拌条件などの製造条件を適切に制御することができる。
【0128】
(実施例2)
複数の含有脂肪量の異なる市販品のアイスクリームのEIS測定を行った。各アイスの無脂乳固形分、乳脂肪分、卵脂肪分、植物性油脂の比率を表1に示す。得られた結果を図22に示す。図22は、アイスA,アイスB、およびアイスCの周波数と電気的損失係数との関係を示す図である。図22の横軸は周波数を示し、縦軸は電気的損失係数tanδを示す。z含有脂肪分の多いアイスクリームほど、電気的損失係数tanδのピーク値が増大した。また、その含有油脂の種類によって電気的損失係数tanδがピーク値を示す周波数帯が異なることが分かった。ミルク感は、乳脂肪分が高いほど増え、脂肪量が多いと濃厚さが増す傾向にある。また、口当たりは、脂肪量が多いほど滑らかな舌触りになり、脂肪量が多いほど硬くなる。そのため、脂肪量の比率、形態変化に応じて、変動する電気的損失係数tanδなどの電気物性値を製造中に測定して適宜製造条件を変更することで、使用者の嗜好に合わせた乳製品を製造することが可能となる。
【0129】
【表1】
【符号の説明】
【0130】
1 内側電極、2 外側電極、3 絶縁体、10 センサユニット、11 支持体、12 第1センサ 20 貯蔵部、25 材料混合部、 30 攪拌部、50 測定部、60 電気物性評価部、70 制御部、100 乳製品製造装置
図1
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