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特開2024-58432半導体発光装置、および、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058432
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】半導体発光装置、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20240418BHJP
【FI】
H01L33/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165781
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】枝村 萌々
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA52
5F142AA58
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA03
5F142CA13
5F142CD16
5F142CE04
5F142CE08
5F142CG05
5F142CG32
5F142DA02
5F142DA14
5F142DA73
5F142DB24
5F142DB30
(57)【要約】
【課題】半導体発光素子を基板の中心から偏った位置に搭載した小型な発光装置の、回路基板からの剥離を防止する。
【解決手段】基板上の中心から偏った位置に配置されている発光素子載置用配線に発光素子を搭載し、保護素子載置用配線に保護素子を搭載する。発光素子の上に、蛍光体板を配置する。保護素子の上部空間に浮遊板を支持し、発光素子および蛍光体板の周囲と、保護素子と浮遊板との間の空間に樹脂を充填して硬化させ、被覆部材を形成する。浮遊板を配置したことにより、発光素子が基板の中心から偏った位置に小型な発光装置でありながら、熱膨張係数の差による基板の湾曲を抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が矩形の基板と、前記基板の中心から偏った位置に搭載された発光素子と、前記発光素子の上に配置された上面が矩形の蛍光体板と、前記蛍光体板の側面から基板の端部まで充填する上面の外周が矩形の被覆部材とを有し、
前記蛍光体板の矩形の外周から前記被覆部材の外周までの距離は、4辺のうち3辺については予め定めた近接した第1距離であり、残りの1辺については、前記第1距離よりも大きい第2距離であり、当該第2距離離れた前記蛍光体板の外周と前記被覆部材の外周との間の前記被覆部材の上面領域には、浮遊板が埋め込まれていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記浮遊板は、前記被覆部材よりも熱膨張係数が小さい材料からなることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記基板の上面には、前記発光素子を搭載する領域に、発光素子載置用配線が備えられ、
前記浮遊板の直下の前記基板の上面には、ボンディングワイヤにより前記発光素子と接続される第1配線が備えられ、
前記基板の下面には、前記第1配線に対向する第1実装電極、および、前記発光素子載置用配線に対向する第2実装電極が備えられ、前記基板を貫通する導電ビアにより互いに接続されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記浮遊板は、セラミックまたはガラスからなることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
基板と、発光素子と、蛍光体板と、保護素子と、被覆部材とを有し、
前記基板上には、前記発光素子を搭載するための発光素子載置用配線と、前記保護素子を搭載するための保護素子載置用配線とが備えられ、
前記発光素子載置用配線は、前記保護素子載置用配線よりも大きく、前記基板の中心から偏った位置に配置され、
前記発光素子載置用配線上には、前記発光素子が搭載され、前記発光素子の上には、前記蛍光体板が配置され、
前記保護素子載置用配線上には、前記保護素子が載置され、
前記被覆部材は、前記発光素子および蛍光体板の周囲と、前記保護素子の上部の空間を充填し、
前記保護素子の上部の前記被覆部材の上面には、浮遊板が埋め込まれていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体発光装置であって、前記浮遊板は、前記被覆部材よりも熱膨張係数が小さい材料からなることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
請求項5に記載の半導体発光装置であって、前記浮遊板の直下の前記基板の上面には、ボンディングワイヤにより前記発光素子および前記保護素子と接続される第1配線がさらに備えられ、
前記基板の下面には、前記第1配線に対向する第1実装電極、および、前記発光素子載置用配線に対向する第2実装電極が備えられ、前記基板を貫通する導電ビアにより互いに接続されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
上面が矩形の基板と、前記基板の中心から偏った位置に搭載された発光素子と、前記発光素子の上に配置された上面が矩形の蛍光体板と、前記蛍光体板の側面から基板の端部まで充填する上面の外周が矩形の被覆部材とを有し、
前記蛍光体板の矩形の外周から前記被覆部材の外周までの距離は、4辺のうち3辺については予め定めた近接した第1距離であり、残りの1辺については、前記第1距離よりも大きい第2距離であり、当該第2距離離れた前記蛍光体板の外周と前記被覆部材の外周までの前記被覆部材の上面領域には、前記被覆部材の上面に、所定の深さの1以上のスリットまたは切り欠きが設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
基板と、発光素子と、蛍光体板と、保護素子と、被覆部材とを有し、
前記基板上には、前記発光素子を搭載するための発光素子載置用配線と、前記保護素子を搭載するための保護素子載置用配線とが備えられ、
前記発光素子載置用配線は、前記保護素子載置用配線よりも大きく、前記基板の中心から偏った位置に配置され、
前記発光素子載置用配線上には、前記発光素子が搭載され、前記発光素子の上には、前記蛍光体板が配置され、
前記保護素子載置用配線上には、前記保護素子が載置され、
前記被覆部材は、前記発光素子および蛍光体板の周囲と、前記保護素子の上部の空間を充填し、
前記保護素子の上部の前記被覆部材の上面には、所定の深さの1以上のスリットまたは切り欠きが設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
基板上の中心よりも偏った位置に配置されている発光素子載置用配線に発光素子を搭載し、保護素子載置用配線に保護素子を搭載する工程と、
前記発光素子の上に、蛍光体板を配置する工程と、
前記保護素子の上部空間に浮遊板を支持する工程と、
前記発光素子および蛍光体板の周囲と、前記保護素子と前記浮遊板との間の空間に樹脂を充填して硬化させ、被覆部材を形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体発光装置の製造方法であって、前記被覆部材を形成する工程は、仮硬化処理と本硬化処理の2段階硬化処理を行うことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子と、その保護回路のツェナーダイオードとを基板上に実装し、樹脂で被覆した半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性の基板上に一対の配線電極層を配置し、配線電極層の上に半導体発光素子(ベアチップ)を搭載し、半導体発光素子の周囲を樹脂で封止した発光装置が特許文献1~4に開示されている。
【0003】
特許文献1、4の発光装置では、基板としてガラスエポキシ樹脂が用いられ、発光素子の電極と配線との接続にボンディングワイヤが用いられている。発光素子の周囲の空間は、ボンディングワイヤを含めて、封止樹脂により封止され、封止樹脂の外形は直方体である。
【0004】
特許文献2、3の発光装置では、基板としてAlN等のセラミックやガラスが用いられ、発光素子の電極と配線との接続にバンプが用いられている。特許文献2の発光装置は、基板の周縁に沿って枠体を立設させ、枠体内に樹脂を充填することにより発光素子の周囲を封止している。特許文献3には、発光装置の製造工程において、発光素子の周囲で封止樹脂と基板とを切断することにより、発光装置を個片化することが開示されている。
【0005】
また、上記特許文献4は、封止樹脂部にクラックが発生するのを防ぐために、樹脂基板の表裏面に設ける表側電極と裏側電極とが、可能な限り樹脂基板の両面に存在する形状にしている。これにより、樹脂基板のみで封止樹脂部を支えている面積を少なくし、外部応力を表裏電極で受ける構成としている。これにより、封止樹脂部に加わる応力を減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-267289号公報
【特許文献2】特開2010-219324号公報
【特許文献3】国際公開第2009/069671号
【特許文献4】特開2007-59837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体発光素子の光量を増大させるために大電流が供給される発光装置や、屋外等の過酷な環境下で用いられる発光装置は、半導体発光素子の損傷を防ぐための保護回路であるツェナーダイオードを、半導体発光素子とともに基板上に搭載することが望ましい。ツェナーダイオードは半導体発光素子に電気的に接続される。
【0008】
半導体発光素子とツェナーダイオードを搭載した発光装置を小型化するためには、半導体発光素子とツェナーダイオードをできるだけ接近させて基板上に搭載し、両者を一体に封止する封止樹脂を周囲に充填し、さらに、封止樹脂と基板を、半導体発光素子とツェナーダイオードの側面に接近した位置で切断し、個片化することが望ましい。これにより、半導体発光素子とツェナーダイオードの面積の合計に近い面積の発光装置を製造することができる。
【0009】
一般的に、大光量を発する半導体発光素子の面積は、ツェナーダイオードよりも大きい。また、半導体発光素子の発する熱を効率よく伝導して基板外に放熱するため、半導体発光素子の直下の基板の両面には、半導体発光素子の面積と同等以上の面積の配線層が対向するように設けられ、両面の配線層は1以上のビアで接続される。一方、ツェナーダイオードの発熱量は小さいため、ツェナーダイオードの直下の基板の配線層は、ツェナーダイオードを搭載して電気的な接続が確保できれば足りる。
【0010】
このため、半導体発光素子の直下の基板の両面の配線層の面積は、ツェナーダイオードの直下の基板の両面の配線層の面積よりも大きくなり、半導体発光素子とツェナーダイオードの境界が、基板の主平面の中心から偏った位置になる。また、発光装置の内部の構造も、発光素子が大部分を占める領域と、ツェナーダイオードの周囲を封止樹脂が大きな部分を占める領域とで分かれる。
【0011】
このような発光装置を、回路基板上に搭載し、基板の配線層を回路基板の配線層とはんだ等により接続した場合、発光素子側とツェナーダイオード側とで、発光装置の内部の構造が異なることに起因して、非対称な応力が基板に加わり、半導体発光素子とツェナーダイオードの境界を中心に基板に湾曲が生じ得る。このため、半導体発光素子の直下の基板の配線層よりも面積が小さいツェナーダイオードの直下の基板の配線層と、回路基板の配線層とを接続するはんだ等に、応力が加わり、剥離や破断が生じ得る。
【0012】
本発明の目的は、半導体発光素子を基板の中心から偏った位置に搭載した小型な発光装置の、回路基板からの剥離を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、上面が矩形の基板と、基板の中心から偏った位置に搭載された発光素子と、発光素子の上に配置された上面が矩形の蛍光体板と、蛍光体板の側面から基板の端部まで充填する上面の外周が矩形の被覆部材とを有する。蛍光体板の矩形の外周から被覆部材の外周までの距離は、4辺のうち3辺については予め定めた近接した第1距離であり、残りの1辺については、第1距離よりも大きい第2距離である。当該第2距離離れた蛍光体板の外周と被覆部材の外周との間の被覆部材の上面領域には、浮遊板が埋め込まれている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体発光素子を基板の中心から偏った位置に搭載した小型な発光装置の、回路基板からの剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)、(b)および(c)は、実施形態1の半導体発光装置1の上面図、短辺の側面図および裏面図、(d)は、A-A断面図である。
図2】(a)および(b)は、実施形態1の半導体発光装置1から被覆部材40および浮遊板60を除いた状態の上面図およびA-A断面図。
図3】(a)および(b)は、実施形態1の半導体発光装置1の基板10の上面図およびA-A断面図。
図4】(a)実施形態1の半導体発光装置1の断面図、(b)比較例の発光装置の断面図。
図5】(a)、(b)および(c)は、比較例の発光装置の上面図、短辺の側面図および裏面図、(d)は、B-B断面図である。
図6】(a)および(b)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を説明する図。
図7】(a)、(b-1)および(b-2)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を説明する図。
図8】(a)および(b)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を説明する図。
図9】(a)実施形態2の半導体発光装置の断面図、(b)実施形態2の変形例1の半導体発光装置の断面図、(c)実施形態2の変形例2の半導体発光装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態の半導体発光装置について以下に説明する。
【0017】
<<実施形態1>>
実施形態1の半導体発光装置1の構成について図1(a)~(d)、図2(a)、(b)、および、図3(a)、(b)を用いて説明する。図1(a)~(d)は、半導体発光装置1の上面図、側面図、裏面部および断面図である。図2(a)、(b)は、半導体発光装置1から被覆部材を取り除いた状態の上面図および断面図である。図3(a)、(b)は、半導体発光装置1から被覆部材や発光素子等を取り除いた基板の上面図および断面図である。
【0018】
図1(a)~(d)および図2(a),(b)に示すように、半導体発光装置1は、基板10と、配線11,12と、実装電極13、16と、発光素子20と、蛍光体板30と、保護素子50と、被覆部材40と、浮遊板60とを備えている。
【0019】
基板10は、主平面が長方形(例えば1.3mm×2mm、厚さ100μm程度)であり、その材質は例えば、ガラス繊維強化エポキシ基板(FR-4グレード(米国電機工業会(NEMA:National Electrical Manufacturers Association)規格)であって、光反射性の白色基板である。以下において、ガラス繊維強化エポキシ基板をガラスエポキシ基板とも記載する。
【0020】
基板10の上面には、図3(a)に示すように、それぞれ所定の形状にパターニングされた第1配線11と、第2配線12が備えられている。第2配線12は、発光素子20を搭載するための矩形の領域である発光素子載置部12aと、保護素子50を搭載するための矩形の領域である保護素子載置部12bとが含まれる。ここでは、発行素子載置部12aと、保護素子載置部12bとは、連結されている。
【0021】
発光素子載置部12aは、基板10の上面の周縁部を除いた領域の、2/3程度の面積を占めているのに対し、保護素子載置部12bは、基板10の上面の素子載置部12aが配置されていない残りの1/3程度の領域の、さらに1/4程度を占めているのに過ぎない。また、第1配線11は、発光素子載置部12aおよび保護素子載置部12bが配置されていない領域に配置されている。
【0022】
基板10の下面には、図1(c)等に示すように、素子載置部12aと対向する位置に、素子載置部12aと同程度の面積の第2実装電極14が配置されている。また、第1配線11および保護素子載置部12bの両者と対向する位置に、第1実装電極13が配置されている。すなわち、第2実装電極14は、基板10の下面の2/3程度の面積を占めるのに対し、第1実装電極13は、基板10の下面の1/3弱の面積を占め、第2実装電極14と第1実装電極13との間には、両者を絶縁するために間隔があけられている。
【0023】
また、素子載置部12aと第2実装電極14とは、基板10を厚さ方向に貫通する2本の第2導電ビア16により接続されている。また、第1配線11と第1実装電極13とは、1本の導電ビア15により接続されている。
【0024】
第1配線11,第2配線12、第1実装電極13および第2実装電極14は、例えば、銅箔の上にNi層とAu層をメッキ等により被覆した構造である。
【0025】
第2配線12の発光素子載置部12bには、接合部材(例えば、AuSnはんだ(Snの割合20wt%))21によって発光素子20が搭載されている。発光素子20は、例えば青色発光ダイオード(GaN系結晶)であり、そのサイズは、発光素子載置部12bと同等の例えば1mm角であり、厚さは120μm程度である。発光素子20の側面は、基板10の側面よりも、予め定めた距離だけ内側に位置する。
【0026】
接合部材21は、発光素子20の下面全体に広がっており、発光素子20の下面電極を発光素子載置部12aに固定するとともに電気的に接続している。
【0027】
発光素子20の上面には、上面電極が備えられている。上面電極には、発光素子20の第1配線11に近い辺の縁部において、発光素子用ボンディングワイヤ22の一端が接続されている。発光素子用ボンディングワイヤ22の他端は、第1配線11の上面に接続されている。ここでは、発光素子用ボンディングワイヤ22は、2本並べて配置されている。
【0028】
発光素子20の上面には、蛍光体板30が、接着部材31により接着されている。蛍光体板30は、発光素子20が発する青色光を黄色光に変換する蛍光体(例えばYAG:Ce)を含有するアルミナを母材とするセラミックである。そのサイズは、発光素子用ボンディングワイヤ22が接続されている縁部を除いた発光素子20全体を覆うサイズである。接着部材31は、青色光および黄色光を透光するものを用いる。蛍光体板30の側面は、発光素子用ボンディングワイヤ22が配置された辺を除いて、発光素子20の側面と一致している。
【0029】
一方、保護素子載置部12bの上面には、保護素子50として例えばツェナーダイオードの下面電極がはんだにより接合されている。ツェナーダイオードの上面電極は、保護素子用ボンディングワイヤ51により、第1配線11の上面と接続されている。これにより、ツェナーダイオードは、電流が流れる向きが発光素子20の電流の向きに対して逆向きになるように、発光素子20に並列に接続されている。これにより、静電気等により大きな電圧が発光素子20に加わった場合には、ツェナーダイオードに電流がながれ、発光素子20を保護することができる。
【0030】
基板10の上面には、上述した発光素子20および蛍光体板30の周囲を覆い、かつ、保護素子50、第1配線11および発光素子用ボンディングワイヤ22および保護素子用ボンディングワイヤ51を埋没するように、被覆部材40が充填されている。被覆部材40の材質は、例えば光反射粒子として酸化チタン粒子(粒径200nm~300nm程度)が分散されたシリコーン樹脂である。被覆部材40の外形は、基板10の側面に一致した側面を有し、その高さが、蛍光体板30の上面の高さに一致した直方体形状である。
【0031】
ただし、被覆部材40には、第1配線11および保護素子載置部12bの上部において、浮遊板60が埋め込まれている。浮遊板60の上面は、直方体形状の被覆部材40の上面に一致している。
【0032】
浮遊板60の材質は、セラミック(例えばアルミナ・シリカ)またはガラスである。浮遊板60のサイズは、上面の長辺が、基板10の短辺に一致し、短辺が、基板10の長辺のうち蛍光体板30が配置されていない領域の幅LO(基板10の長辺の1/3程度)よりも小さく、幅LOの1/2以上である。また、浮遊板60の厚さは、200μm程度である。
【0033】
上述してきた本実施形態の半導体発光装置1の各部の作用について図4(a)を用いて説明する。
【0034】
半導体発光装置1は、回路基板70に搭載され、基板10の下面の第1実装電極13が、回路基板70の配線61にはんだ63により接合され、第2実装電極14が、回路基板70の配線61にはんだ64により接合される。
【0035】
回路基板70の配線61、62から、第1実装電極13および第2実装電極14に電流を供給すると、第1導電ビア15、第1配線11および発光素子用ボンディングワイヤ22、ならびに、第2導電ビア16および第2配線12を介して、発光素子20の上面電極と下面電極間に電流が供給され、発光素子20は上方に向かって青色光を出射する。青色光は、蛍光体板30を通過する。
【0036】
このとき、青色光の一部は、蛍光体板30の蛍光体に吸収され、黄色の蛍光に変換される。これにより、青色光のまま蛍光体板30から出射される光と、黄色光(蛍光)とが混合され、白色光が蛍光体板30の上面から外部に出射される。なお、青色光の全部を吸収して黄色光を出射するような蛍光体板を用いれば、黄色光が蛍光体板の上面から外部に出射される。
【0037】
発光素子20および蛍光体板30の側面は、光反射性の被覆部材40によって覆われているため、側面に到達した光は反射され、上方に向かう。
【0038】
発光素子20は、発光する際に発熱する。また、蛍光体板30は、光を吸収して蛍光放射することにより発熱する。これらの熱は、発光素子20と同等の面積の第2配線12の発光素子載置部12aに伝導し、さらに第2導電ビア16を伝導して第2実装電極14に伝導する。第2実装電極14は、発光素子載置部12aと同面積であるため、効率よく熱を回路基板に伝導して放熱することができる。
【0039】
しかしながら、熱伝導による放熱であるため、発光素子および蛍光体板30のある程度の温度上昇がある。発光素子および蛍光体板30の熱は、被覆部材40にも伝導し、被覆部材40の温度も上昇する。
【0040】
このとき、材料の熱膨張係数は、樹脂<ガラスエポキシ基板<セラミックの関係にある。具体的には、被覆部材40のシリコーン樹脂の熱膨張係数は、25-30[ppm/K]であり、基板10のガラスエポキシ基板(FR-4)の熱膨張係数は、14.0(主平面方向)[ppm/K]であり、蛍光体板30のアルミナ母材の熱膨張係数は、7.2[ppm/K]程度、および、浮遊板60(アルミナ・シリカ)の熱膨張係数:8.5[ppm/K]である。
【0041】
図4(a)に示すように、半導体発光装置1は、はんだ固定された回路基板70上に基板10、発光素子20、および、蛍光体板30が積み上げられた第1支柱部71と、基板10、被覆部材40および浮遊板60を含む第2支柱部72とを有する構造である。第1支柱部71は面積が大きいのに対し、第2支柱部72は面積が小さいため、第1支柱部71と第2支柱部72とで熱膨張係数が大きく異なると、温度上昇時および温度下降時に基板10を非対称に湾曲させる応力が生じる。
【0042】
ここで、本実施形態の半導体発光装置1では、被覆部材40よりも熱望量係数が小さい、セラミックの浮遊板60を上面に配置している。これにより、第2支柱部72においては、熱膨張係数の小さい基板10の上面と、浮遊板60の下面の間に、熱膨張係数が大きい被覆部材40が接着して挟まった構造となっている。この構造により、高温又は低温に環境温度が上下した時に、被覆部材40は、基板10と浮遊板60の間で、主に基板10の主平面に沿った方向に膨張または収縮する(若干、上下方向にも膨張または収縮する)が、浮遊板60は、熱膨張係数が小さいため、膨張または収縮は小さい。よって、第2支柱部72の基板10に膨張または収縮により応力が加わるのを抑制できる。
【0043】
一方、第1支柱部71は、いずれも熱望量係数が小さい基板10、発光素子20、および、蛍光体板30が積み上げられた構造であるため、高温又は低温に環境温度が上下した場合であっても、膨張または収縮は抑制される。
【0044】
このように、本実施形態1の発光装置は、セラミック製の浮遊板60を配置したことにより、第1支柱部71と第2支柱部72の膨張及び収縮に差が生じるのを抑制でき、基板10と回路基板70とを接合するはんだを安定した接合状態を保つことができる。すなわち、保護素子50の下面の第1実装電極13を回路基板70に接合するはんだ63に、断線が発生するのを防止できる。
【0045】
したがって、本実施形態の半導体発光装置1は、半導体発光素子20と保護素子50を搭載した小型な半導体発光装置1でありながら、その内部構造が非対称であることに起因して、高温又は低温に環境温度が上下した際に基板10に非対称な湾曲が生じるのを、防止することができる。
【0046】
比較例として、浮遊板60を備えていない発光装置を図4(b)および図5(a)~(d)に示す。比較例の発光装置は、浮遊板60を備えていない以外は、実施形態1の発光装置と同様の構成である。
【0047】
比較例の発光装置の第2支柱部72は、基板10の上面に、熱膨張係数が大きい被覆部材40が配置されている。このため、高温又は低温に環境温度が上下した際に、被覆部材40は、大きく膨張または収縮するのに対し、第1支柱部71の膨張または収縮は小さい。このため、基板10は、第1配線11と第2配線12の境界の両側で、膨張または収縮の大きさが大きく異なり、第1配線11と第2配線12の境界を支点(支線)として、第2支柱部72側の基板10は、第1支柱部71側へ倒れ込む又は離間するように湾曲または屈曲する。その結果、第1実装電極13と、回路基板70の配線61とを接合するはんだ63にクラックが発生することがある。クラックが発生すると通電不良や断線が発生する。また、第1支柱部71側へ倒れ込む又は離間する動きによりワイヤが断線することもある。
【0048】
つぎに、本実施形態の半導体発光装置1の製造方法について、図6図8を用いて説明する。
【0049】
まず、図6(a)のように、上面および下面に、予め第1および第2配線11,12、第1および第2実装電極13,14および第1および第2導電ビア15,16が、パターニングされた基板10を用意する。例えば、複数個の基板10が枠体17によって連結されたものを用意する。
【0050】
(素子接合工程)
つぎに、図6(b)のように、発光素子20と保護素子50を基板10に実装する。
【0051】
具体的には、発光素子20と保護素子50をそれぞれ実装する発光素子載置部12aおよび保護素子載置部12b上に接合部材21となるはんだペーストを塗布する。はんだペーストとしては、揮発性ソルダーペースト金錫はんだ(Au-20wt%Sn)を用いる。
【0052】
塗布したはんだペースト上に発光素子20と保護素子50を載置する。
【0053】
リフロー炉で、300℃まで加熱してはんだを溶融した後、冷却して固化させる。これにより、発光素子20及び保護素子50を基板10上の発光素子載置部12aおよび保護素子載置部12b上に接合する。
【0054】
(ワイヤボンディング工程)
図6(b)のように、接合した発光素子20及び保護素子50の上面の電極と第1配線11との間を、発光素子用ボンディングワイヤ22および保護素子用ボンディングワイヤ51でそれぞれ接続する。
【0055】
(蛍光体板接着工程)
図7(a)のように、発光素子20の上面(出光面)に接着部材31としての透光性のシリコーン樹脂を塗布する。
【0056】
蛍光体板30を発光素子20の上面形状に合わせて載置し、押圧する。150℃、10分加熱して、接着部材31を仮硬化して接着する。
(浮遊板接着工程)
図7(b-1)のように、基板10の枠体17に接着剤を塗布する。
【0057】
予め作製しておいた、複数の浮遊板60が端部において連結された浮遊板集合体65を載置する。
【0058】
図7(b-2)のように、浮遊板60の上面が蛍光体板30の上面と一致するように、浮遊板集合体65を押圧治具によって押圧して基板10の枠体17に接着する。このとき、押圧治具の押圧によって蛍光体板30の上面で治具が止まるので、必然的に浮遊板60の上面と蛍光体板30の上面が一致する。
【0059】
(被覆部材形成工程)
図8(a)のように、被覆部材40となる樹脂混合体(未硬化のシリコーン樹脂と酸化チタン粒子の混合体)を蛍光体板30と発光素子20の周囲、および、浮遊板60と基板10の間の空間に注入する。その後、第1段階の仮硬化処理として100℃で60分加熱し、第2段階の本硬化処理として第150℃で120分加熱して、樹脂混合体を硬化させて、被覆部材40を形成する。このように、2段階の硬化処理によって樹脂混合体を硬化させることで、被覆部材40の発生応力を弱くできる。
【0060】
(個片化工程)
薄刃のダイシングブレードで、個々の基板10の外周の位置で、基板10、被覆部材40および浮遊板60を切断して、半導体発光装置1を個片化する。
【0061】
以上の工程により、半導体発光装置1を製造することができる。
【0062】
本実施形態の半導体発光装置1は、蛍光体板30を囲む被覆部材40の上面の外周は長方形であり、長方形の4辺のうち3辺は、蛍光体板30の上面の3辺にそれぞれ近接しており、被覆部材40の外周から蛍光体板30の外周までの距離は所定の第1距離である。残りの1辺は、蛍光体板30の上面までの距離が他の3辺より離間しており、その距離は、第1距離よりも大きい第2距離である。この第2距離で離間している蛍光体板30の1辺と、被覆部材40の1辺との間の領域には、被覆部材40に浮遊板60が埋め込まれている。浮遊板60は、熱膨張係数が、被覆部材40より小さく、具体的には発光素子20又は蛍光体板30と略同等のセラミック製である。
【0063】
本構造により、半導体発光装置1の発光素子20を発光させた際に、温度が上昇しても、発光素子20の直下の基板10と、浮遊板60の直下の基板10とに加わる応力の差を小さくすることができ、基板10の湾曲を防ぐことができる。よって、半導体発光装置1を回路基板70にはんだ接合した後に、はんだにクラックが発生して通電不良又は不灯が発生する不具合を防止できる。
【0064】
<<実施形態2>>
実施形態2の半導体発光装置について説明する。
【0065】
実施形態2の半導体発光装置は、被覆部材40の上面の一部に所定の深さの分離スリット91を設けた構造である。分離スリット91を設ける位置は、第1配線11および保護素子載置部12bの上方の被覆部材40の上面である。分離スリット91の位置が、図9(a)のように、第1配線11と発光素子載置部12aとの境界の上方であれば、より好ましい。分離スリット91は、長手方向が基板10の短辺で平行であることが好ましく、短辺に平行に被覆部材40を横切るように設けられていることがより好ましい。分離スリット91の深さは、ボンディングワイヤ22に到達しない深さに設定する。
【0066】
これにより、第2支柱部72の上部の被覆部材40が、第1支柱部71から独立して収縮・膨張できるため、基板10の第1実装電極13を回路基板70から引き剥がす力が弱くなるか、又は、消失する。
【0067】
また、図9(b)に示すように、分離スリット91を複数本設けることも可能である。
【0068】
さらに、図9(c)に示すように、分離スリット91の幅を広げて、被覆部材40の上部に切り欠き92を設け、被覆部材40の上部を除去してもよい。
【0069】
図9(c)の構成は、切り欠き92の部分において被覆部材40そのものが消失するので、基板10の第1実装電極13を回路基板70から引き剥がす力が発生しなくなる。
【0070】
分離スリット91や切り欠き92は、被覆部材40を切削することにより形成することができる。また、実施形態1の浮遊板60の代わりに、分離スリット91や切り欠き92の形状の型を配置して被覆部材40を充填して硬化させた後、分離スリット91や切り欠き92の形状の型を被覆部材40から取り外すことにより、分離スリット91や切り欠き92を形成することも可能である。
【0071】
実施形態2の半導体発光装置の他の構成および作用は、実施形態1の半導体発光装置1と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
上述してきた本実施形態の半導体発光装置は、一般用の光源、分析機等の観測用光源等に用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 半導体発光装置
10 基板
11 第1配線
12 第2配線
12a 発光素子載置部
12b 保護素子載置部
13 第1実装電極
14 第2実装電極
15 第1導電ビア
16 第2導電ビア
17 枠体
20 発光素子
21 接合部材
22 発光素子用ボンディングワイヤ
30 蛍光体板
31 接着部材
40 被覆部材
50 保護素子
51 保護素子用ボンディングワイヤ
60 浮遊板
61 配線
63 はんだ
65 浮遊板集合体
70 回路基板
71 第1支柱部
72 第2支柱部
91 分離スリット
92 切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9