(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058440
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
B62K 23/04 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B62K23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165798
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 健生
【テーマコード(参考)】
3D013
【Fターム(参考)】
3D013CH01
(57)【要約】
【課題】センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができるスロットルグリップ装置を提供する。
【解決手段】スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転操作されたとき、磁気センサ9で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、係合部Gaと連動部材2との間に弾力を有した弾力付与部材Dを介在させるとともに、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転するとき、弾力付与部材Dを介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達されるものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材を回転自在に保持するケースと、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備し、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転操作されたとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記係合部と前記連動部材との間に弾力を有した弾力付与部材を介在させるとともに、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、前記弾力付与部材を介して前記スロットルグリップの回転操作が前記連動部材に伝達されることを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記弾力付与部材は、前記連動部材の被係合部に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記連動部材に取り付けられて当該連動部材と一体的に回転可能な別体部材を具備するとともに、前記別体部材は、前記係合部と当接可能な当接部を有し、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、前記係合部が前記当接部を押圧して前記弾力付与部材の弾力を生じさせることを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記当接部は、前記別体部材に一体形成された部位から成ることを特徴とする請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記弾力付与部材は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、前記連動部材の前記被係合部に圧入されて固定されたことを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記弾力付与部材は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、前記連動部材に形成された係合部に係合されて固定されたことを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項7】
前記連動部材に取り付けられて当該連動部材と一体的に回転可能な別体部材を具備するとともに、前記別体部材に前記弾力付与部材が取り付けられたことを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項8】
前記弾力付与部材は、前記スロットルグリップの係合部に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項9】
前記連動部材の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段を具備したことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両の駆動源が制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、二輪車においては、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいて二輪車の駆動源(例えばエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉)が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップに形成された係合部を連動部材に形成された被係合部に係合することにより、スロットルグリップと連動部材とを連結させ、連動部材の回転角度をセンサにて検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、スロットルグリップの回転操作をセンサにて検出するので、レスポンスが運転者の想定より著しく高くなってしまい、操作性に違和感が生じてしまうという不具合があった。特に、ワイヤを介してスロットルグリップの回転操作をエンジンに伝達して制御する汎用の車両の場合、操作時にワイヤの弾力による伝達ロスが生じるのに対し、センサにてスロットルグリップの回転操作を検出してエンジンを制御する場合、伝達ロスがほとんど生じず、却って操作性が悪化してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材を回転自在に保持するケースと、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備し、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転操作されたとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記係合部と前記連動部材との間に弾力を有した弾力付与部材を介在させるとともに、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、前記弾力付与部材を介して前記スロットルグリップの回転操作が前記連動部材に伝達されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記弾力付与部材は、前記連動部材の被係合部に取り付けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材に取り付けられて当該連動部材と一体的に回転可能な別体部材を具備するとともに、前記別体部材は、前記係合部と当接可能な当接部を有し、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、前記係合部が前記当接部を押圧して前記弾力付与部材の弾力を生じさせることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記当接部は、前記別体部材に一体形成された部位から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記弾力付与部材は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、前記連動部材の前記被係合部に圧入されて固定されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記弾力付与部材は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、前記連動部材に形成された係合部に係合されて固定されたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材に取り付けられて当該連動部材と一体的に回転可能な別体部材を具備するとともに、前記別体部材に前記弾力付与部材が取り付けられたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記弾力付与部材は、前記スロットルグリップの係合部に取り付けられたことを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、係合部と連動部材との間に弾力を有した弾力付与部材を介在させるとともに、スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、弾力付与部材を介してスロットルグリップの回転操作が連動部材に伝達されるので、センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、弾力付与部材は、連動部材の被係合部に取り付けられたので、連動部材における比較的広いスペースを活用して弾力付与部材を取り付けることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、連動部材に取り付けられて当該連動部材と一体的に回転可能な別体部材を具備するとともに、別体部材は、係合部と当接可能な当接部を有し、スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、係合部が当接部を押圧して弾力付与部材の弾力を生じさせるので、弾力付与部材の弾力を生じさせる際、係合部が当接部と当接して押圧することとなり、係合部が直接、弾力付与部材に当接して破損や劣化等するのを抑制することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、当接部は、別体部材に一体形成された部位から成るので、連動部材と別体部材との協働により、係合部の当接部に対する当接を行わせつつ弾力付与部材の弾力を生じさせることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、弾力付与部材は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、連動部材の被係合部に圧入されて固定されたので、ゴム材、エラストマー又は樹脂材の弾力を利用して弾力付与部材を確実に固定させることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、弾力付与部材は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、連動部材に形成された係合部に係合されて固定されたので、弾力付与部材の取り付け及び取り外しを容易に行わせることができるとともに、弾力付与部材の交換を良好に行わせることができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、連動部材に取り付けられて当該連動部材と一体的に回転可能な別体部材を具備するとともに、別体部材に弾力付与部材が取り付けられたので、連動部材と別体部材との協働により弾力付与部材による弾力を生じさせることができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、弾力付与部材は、スロットルグリップの係合部に取り付けられたので、スロットルグリップと弾力付与部材とを一体部品として取り扱うことができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、連動部材の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段を具備したので、スロットルグリップの回転操作時、抵抗力付与手段の摺動抵抗と併せて弾力付与部材の弾力を付与することができ、操作性について微妙な調整を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す全体斜視図
【
図2】同スロットルグリップ装置を示す正面図及び平面図
【
図5】同スロットルグリップ装置の主要部品を示す分解斜視図
【
図6】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す斜視図
【
図7】同スロットルグリップ装置の主要部ユニットを示す斜視図
【
図8】同スロットルグリップ装置の主要部ユニットを示す2面図
【
図10】同スロットルグリップ装置における弾性部材を組付ける前の連動部材を示す斜視図
【
図11】同スロットルグリップ装置における弾性部材を組付けた後の連動部材及び別体部材を示す斜視図
【
図12】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す3面図
【
図13】同スロットルグリップ装置の別体部材を示す3面図
【
図14】同スロットルグリップ装置の弾性部材を示す2面図
【
図15】同スロットルグリップ装置の別体部材の第1部位と弾性部材とを組み合わせた状態を示す模式図
【
図16】本発明の第2の実施形態に係るスロットルグリップ装置の主要部ユニットを示す正面図
【
図17】同スロットルグリップ装置において弾性部材を取り付ける前の連動部材を示す斜視図
【
図18】本発明の第3の実施形態に係るスロットルグリップ装置における弾性部材を取り付ける前の連動部材を示す斜視図(a)、及び弾性部材の3面図(b)
【
図19】本発明の第4の実施形態に係るスロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す正面図
【
図20】本発明の第5の実施形態に係るスロットルグリップ装置の連動部材及び弾力付与部材を示す3面図
【
図21】同スロットルグリップ装置の弾力付与部材が取り付けられた別体部材を示す3面図
【
図22】同スロットルグリップ装置の連動部材、弾力付与部材及び別体部材を示す分解斜視図
【
図23】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置及び従来の他のスロットルグリップ装置における操作回転角度とトルクとの関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図1、2に示すように、二輪車(車両)のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信して駆動源(例えばエンジン)を制御するためのもので、
図3~9に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、付勢手段3と、別体部材4と、回転部材5と、磁気センサ9(回転角度検出手段)と、抵抗力付与手段7と、弾力付与部材Dとを有して構成されている。
【0027】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたスイッチケースS内(
図1、2参照)に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2及び回転部材5等を回転自在に保持するものである。かかるケース1は、
図5に示すように、連動部材2を回転自在に収容する第1収容部1aと、回転部材5を回転自在に収容する第2収容部1bと、抵抗力付与手段7を収容する第3収容部1cとが形成された成形部品から成る。なお、符号11は、ケース1の開口側を塞ぐための板状の蓋部材を示している。
【0028】
スロットルグリップGは、スイッチケースSから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、
図1、2に示すように、初期位置から軸回りに所定方向aの回転操作が可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端側には、突出形状から成る係合部Ga(
図6参照)が形成されており、この係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(
図5、7、12等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0029】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る凹形状から成る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの回転操作に連動して回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、
図12に示すように、被係合部2aと、取付け凹部2bと、フランジ2cと、ギア2dとを有した円環状部材から成る。なお、本実施形態にかかる連動部材2には、抵抗力付与手段7を摺動させる摺動面nが形成されている。
【0030】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凹形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、連動部材2は、スロットルグリップGの回転に伴って回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、
図7に示すように、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、他方の面には、取付け凹部2bが形成されている。
【0031】
ここで、本実施形態に係る連動部材2は、その被係合部2aの底面に、
図10、12に示すように、弾力付与部材Dを設置するための設置部2eと、別体部材4の当接部4aを挿通する開口部2fとを有して構成されている。設置部2eは、
図10に示すように、設置される弾力付与部材D(
図14参照)の一部形状に合致した凹形状から成り、弾力付与部材Dを位置決めしつつ取り付け可能とされている。
【0032】
本実施形態に係る弾力付与部材Dは、ゴム材、エラストマー又は樹脂材(軟質樹脂等)をブロック状に成形して成るもので、
図14に示すように、凸部Daと、傾斜面Dbとを有して構成されている。凸部Daは、
図10、11に示すように、連動部材2の設置部2eに形成された凹部hに合致する部位から成り、凹部hに凸部Daを合致させつつ弾力付与部材Dを設置部2eに設置することにより位置決め可能とされている。
【0033】
別体部材4は、連動部材2の裏面に形成された取付け凹部2bに取り付けられて当該連動部材2と一体的に回転可能なもので、弾力付与部材Dより硬質な樹脂材から成るとともに、
図11、13に示すように、一対の凸形状から成る当接部4aが一体形成されている。かかる当接部4aは、
図11、13に示すように、一方の面に傾斜面4aaが形成されるとともに、他方の面に当接面4abがスロットルグリップGの係合部Gaと当接可能とされている。
【0034】
しかるに、別体部材4は、連動部材2に取り付けられると、連動部材2の開口部2fに当接部4aが挿通し、弾力付与部材Dと隣接した位置に当接部4aが突出形成される。このように、当接部4aは、弾力付与部材Dと隣接した位置に突出形成されると、
図15に示すように、当接部4aの傾斜面4aaが弾力付与部材Dの傾斜面Dbと合致して弾力付与部材Dの抜け止めが図られることとなる。
【0035】
そして、本実施形態は、スロットルグリップGが回転操作されると、係合部Gaが当接部4aの当接面4abに当接して押圧し、その押圧力にて弾力付与部材Dを押圧するので、弾力付与部材Dの弾力を生じさせるようになっている。このように、本実施形態においては、係合部Gaと連動部材2との間に弾力を有した弾力付与部材Dを介在させるとともに、スロットルグリップGが初期位置から所定方向に回転するとき、弾力付与部材Dを介してスロットルグリップの回転操作が連動部材2に伝達されるよう構成されている。
【0036】
したがって、本実施形態は、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaから連動部材2に伝達される操作力を弾力付与部材Dの弾力(反発力)にて鈍らせることができ、連動部材2の追従性を低減させてスロットルグリップ装置のレスポンス(応答特性)を低下させることができる。また、本実施形態においては、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaは当接部4aを介して弾力付与部材Dを押圧するので、係合部Gaが弾力付与部材Dに直接当接するのを回避することができる。なお、別体部材4は、弾力付与部材Dより硬質な樹脂材から成るので、当接部4aが弾力付与部材Dより硬質となって繰り返しの当接に耐え得るよう構成することができる。
【0037】
取付け凹部2bは、連動部材2の裏面に形成された凹形状から成り、別体部材4を嵌入可能とされている。また、連動部材2には、周方向に亘ってフランジ2cが形成されるとともに、所定範囲に亘ってギア2dが形成されている。このギア2dは、
図3、4に示すように、回転部材5の外周に形成されたギアと噛み合う状態で組み付けられており、連動部材2の回転に伴って回転部材5が回転するようになっている。
【0038】
付勢手段3は、ねじりコイルバネから成り、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのリターンスプリングである。具体的には、付勢手段3は、その一端がケース1に係止されるとともに、他端が連動部材2に係止されて組み付けられており、スロットルグリップGを所定方向に回転させると、付勢手段3の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0039】
回転部材5は、連動部材2と連動して回転し得るもので、ケース1の第2収容部1b(
図5参照)に収容されるとともに、軸L(
図4、9参照)を中心として回転自在とされている。そして、回転部材5は、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて軸Lを中心として回転するようになっている。かかる回転部材5は、
図9に示すように、軸Lにより磁石Mと連結されており、回転部材5と共に磁石Mが軸Lを中心に回転するよう構成されている。
【0040】
磁気センサ9(回転角度検出手段)は、
図9に示すように、軸Lの延長線上の位置に配設されたセンサから成り、磁石Mから生じる磁気の変化(磁界の方向の変化)を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ9は、磁石Mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石Mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ9は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板8に形成されるとともに、非磁性体材料から成る収容部材10にて覆われている。
【0041】
そして、本実施形態にかかるスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが所定方向に回転するのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材5も連動してギア比(連動部材2及び回転部材5のギア比)に応じて回転し、当該回転部材5に連結された磁石Mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、回転部材5は、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両の駆動源(エンジン)が制御され得るようになっている。
【0042】
抵抗力付与手段7は、スロットルグリップGの回転時に摺動抵抗(摺動による摩擦抵抗)を生じさせて回転負荷を生じさせ得るもので、連動部材2の周方向に亘って形成された摺動面nに対して当接状態にて組み付けられた摩擦部材から成る。かかる抵抗力付与手段7は、ケース1の第3収容部1cに収容されるとともに、スプリングの付勢力により連動部材2の摺動面nに対して押圧されて組み付けられており、連動部材2が回転すると、摺動面nに対して摺動して摩擦力を生じさせ、所望の回転負荷を生じさせるようになっている。
【0043】
上記実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップGが所定方向に回転操作されるとき、弾力付与部材Dを介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達されるので、スロットルグリップGの回転操作をワイヤを介して伝達するもの、及びスロットルグリップGの回転操作をセンサで検出し、且つ、弾力付与部材Dを具備しないものに比べて、特に回転初期のトルクを近時させることができた。
【0044】
すなわち、本実施形態に係るスロットルグリップ装置(実施例)と、スロットルグリップGの回転操作をワイヤを介して伝達するスロットルグリップ装置(比較例1)と、スロットルグリップGの回転操作をセンサで検出し、且つ、弾力付与部材Dを具備しないスロットルグリップ装置(比較例2)とを用意し、それぞれの回転操作角度とトルクとの関係を測定したところ、
図23に示すように、実施例がγ、比較例1がα及び比較例2がβのような結果となった。
【0045】
したがって、本実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップGの回転操作をワイヤを介して伝達する比較例1に対して、特に回転初期のトルクを近時させることができるので、比較例2のものに比べて操作時の違和感を低減させることができることが分かる。なお、本実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、回転中盤及び終盤においては、例えば抵抗力付与手段7の摺動抵抗を任意変更することにより、比較例1のトルク傾向に近似させることができる。
【0046】
次に、本発明の第2~5の実施形態に係るスロットルグリップ装置について説明する。
第2の実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図16、17に示すように、連動部材2の被係合部2aに弾力付与部材E1が取り付けられて構成されている。本実施形態に係る弾力付与部材E1は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材を所定形状に成形して成り、
図17に示すように、被係合部2aに形成された凸形状rに合致する凹形状E1aが形成されるとともに、連動部材2の被係合部2aに圧入されて固定されている。
【0047】
すなわち、弾力付与部材E1は、その外輪郭形状が被係合部2aの取付け部位の寸法より若干大きく設計されており、全体的に圧縮させた状態で凹形状E1aを凸形状rに合致させつつ被係合部2aに取り付けることにより、圧入固定されるようになっている。なお、弾力付与部材E1は、圧入固定の他、接着剤又は粘着剤等による固定であってもよく、連動部材2と一体成型してもよい。
【0048】
本実施形態によれば、スロットルグリップGを所定方向aに回転すると、被係合部2aが弾力付与部材E1を押圧することにより圧縮させて弾力を発生させることができる。これにより、本実施形態は、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaから連動部材2に伝達される操作力を弾力付与部材E1の弾力(反発力)にて鈍らせることができ、連動部材2の追従性を低減させてスロットルグリップ装置のレスポンス(応答特性)を低下させることができる。
【0049】
第3の実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図16、18に示すように、連動部材2の被係合部2aに弾力付与部材E2が取り付けられて構成されている。本実施形態に係る弾力付与部材E2は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材を所定形状に成形して成り、
図18に示すように、被係合部2aに形成された凸形状rに合致する凹形状E2aが形成されるとともに、被係合部2aに形成された開口u(係合部)に係合する凸形状tが一体形成されている。
【0050】
そして、弾力付与部材E2を被係合部2aに取り付ける際、凹形状E2aを凸形状rに合致させつつ凸形状tを開口uに挿通して係合することにより固定されている。なお、本実施形態においては、弾力付与部材E2に凸形状tを形成して被係合部2aに形成された開口u(係合部)に挿通して係合しているが、弾力付与部材E2に凹形状を形成し、被係合部2aに形成された凸形状(係合部)を挿通させて係合するようにしてもよい。
【0051】
本実施形態によれば、スロットルグリップGを所定方向aに回転すると、被係合部2aが弾力付与部材E2を押圧することにより圧縮させて弾力を発生させることができる。これにより、本実施形態は、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaから連動部材2に伝達される操作力を弾力付与部材E2の弾力(反発力)にて鈍らせることができ、連動部材2の追従性を低減させてスロットルグリップ装置のレスポンス(応答特性)を低下させることができる。
【0052】
第4の実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図19に示すように、スロットルグリップGの係合部Gaに弾力付与部材E3が取り付けられて構成されている。本実施形態に係る弾力付与部材E3は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材を所定形状に成形して成り、スロットルグリップGを所定方向aに回転する際、係合部Gaと被係合部2aとの間に介在する位置に接着、一体成型等の手段にて固定されている。
【0053】
本実施形態によれば、スロットルグリップGを所定方向aに回転すると、被係合部2aが弾力付与部材E3を押圧することにより圧縮させて弾力を発生させることができる。これにより、本実施形態は、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaから連動部材2に伝達される操作力を弾力付与部材E3の弾力(反発力)にて鈍らせることができ、連動部材2の追従性を低減させてスロットルグリップ装置のレスポンス(応答特性)を低下させることができる。
【0054】
第5の実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図20~22に示すように、別体部材12に組付けられた弾力付与部材Wを有して構成されている。本実施形態に係る弾力付与部材Wは、
図21、22に示すように、円弧状に延設された1対のコイルスプリングから成り、スロットルグリップGを所定方向aに回転する際、係合部Gaにて延設方向に圧縮されて弾力が生じるよう組付けられている。
【0055】
別体部材12は、連動部材2に取り付けられて当該連動部材2と一体的に回転可能な円環状部材から成り、その表面には、1対のスプリング受け部12aが突出形成されている。かかるスプリング受け部12aは、
図22に示すように、弾力付与部材Wの一端を受ける受け部12aaと、その背面である当接面12abとを有しており、別体部材12が連動部材2に組付けられると、連動部材2に形成された開口部dに挿通されて当接面12abが被係合部2aに臨むようになっている。
【0056】
本実施形態によれば、スロットルグリップGを所定方向aに回転すると、被係合部2aに係合した係合部Gaが当接面12abを押圧し、連動部材2に対して別体部材12を回転させることにより弾力付与部材Wを圧縮させて弾力を発生させることができる。これにより、本実施形態は、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaから連動部材2に伝達される操作力を弾力付与部材Wの弾力(反発力)にて鈍らせることができ、連動部材2の追従性を低減させてスロットルグリップ装置のレスポンス(応答特性)を低下させることができる。
【0057】
第1~5の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、係合部Gaと連動部材2との間に弾力を有した弾力付与部材(D、E1~E3、W)を介在させるとともに、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転するとき、弾力付与部材(D、E1~E3、W)を介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達されるので、センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップGの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができる。
【0058】
特に、第1~3の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、弾力付与部材(D、E1、E2)は、連動部材2の被係合部2aに取り付けられたので、連動部材2における比較的広いスペースを活用して弾力付与部材(D、E1、E2)を取り付けることができる。また、第4の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、弾力付与部材E3は、スロットルグリップGの係合部Gaに取り付けられたので、スロットルグリップGと弾力付与部材E3とを一体部品として取り扱うことができる。
【0059】
さらに、第1の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、係合部Gaと当接可能な当接部4aを有し、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転するとき、係合部Gaが当接部4aを押圧して弾力付与部材Dの弾力を生じさせるので、弾力付与部材Dの弾力を生じさせる際、係合部Gaが当接部4aと当接して押圧することとなり、係合部Gaが直接、弾力付与部材Dに当接して破損や劣化等するのを抑制することができる。
【0060】
またさらに、第1の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、連動部材2に取り付けられて当該連動部材2と一体的に回転可能な別体部材4を具備するとともに、当接部4aは、別体部材4に一体形成された部位から成るので、連動部材2と別体部材4との協働により、係合部Gaの当接部4aに対する当接を行わせつつ弾力付与部材Dの弾力を生じさせることができる。
【0061】
加えて、第2の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、弾力付与部材E1は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、連動部材2の被係合部2aに圧入されて固定されたので、ゴム材、エラストマー又は樹脂材の弾力を利用して弾力付与部材E1を確実に固定させることができる。また、第3の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、弾力付与部材E2は、ゴム材、エラストマー又は樹脂材から成り、連動部材2に形成された係合部(開口u)に係合されて固定されたので、弾力付与部材E2の取り付け及び取り外しを容易に行わせることができるとともに、弾力付与部材E2の交換を良好に行わせることができる。
【0062】
さらに、第5の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、連動部材2に取り付けられて当該連動部材2と一体的に回転可能な別体部材12を具備するとともに、別体部材12に弾力付与部材Wが取り付けられたので、連動部材2と別体部材12との協働により弾力付与部材Wによる弾力を生じさせることができる。
【0063】
しかるに、第1~5の実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、連動部材2の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段7を具備したので、スロットルグリップGの回転操作時、抵抗力付与手段7の摺動抵抗と併せて弾力付与部材(D、E1~E3、W)の弾力を付与することができ、操作性について微妙な調整を可能とすることができる。なお、本実施形態に係る抵抗力付与手段7は、連動部材2のフランジ2cに形成された摺動面nを摺動するものとされているが、連動部材2の他の部位を摺動するものとしてもよい。
【0064】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば弾力付与部材(D、E1~E3、W)を他の弾性部材としてもよく、磁気センサ9に代えてスロットルグリップGの回転角度を検出し得る他のセンサ(磁気を使用しないセンサ等)としてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。また、本実施形態が適用される車両は、駆動源がエンジンに限定されるものではなく、例えば電気モータを駆動源とする車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
係合部と連動部材との間に弾力を有した弾力付与部材を介在させるとともに、スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、弾力付与部材を介してスロットルグリップの回転操作が連動部材に伝達されるスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ケース
1a 第1収容部
1b 第2収容部
1c 第3収容部
2 連動部材
2a 被係合部
2b 取付け凹部
2c フランジ
2d ギア
2e 設置部
2f 開口部
3 付勢手段(ねじりコイルバネ)
4 別体部材
4a 当接部
4aa 傾斜面
4ab 当接面
5 回転部材
6 付勢力選択手段
6a スプリング受け部
6aa 受け面
6ab 背面
6b 突出部
7 抵抗力付与手段
8 プリント基板
9 磁気センサ(回転角度検出手段)
10 収容部材
11 蓋部材
12 別体部材
12a スプリング受け部
G スロットルグリップ
Ga 係合部
M 磁石
n 摺動面
D、E1、E2、E3、W 弾力付与部材
Da 凸部
Db 傾斜面