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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058441
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 23/04 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B62K23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165799
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 健生
【テーマコード(参考)】
3D013
【Fターム(参考)】
3D013CH01
(57)【要約】
【課題】センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができるスロットルグリップ装置を提供する。
【解決手段】スロットルグリップGに連動して回転し得る連動部材2と、連動部材2を回転自在に保持するケース1と、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段3と、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢する第2付勢手段4と、スロットルグリップGの回転角度を検出し得る磁気センサ9とを具備したスロットルグリップ装置であって、スロットルグリップGが正回転aするとき、第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達されるものである。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による回転操作が可能とされ、初期位置から所定方向に正回転及び当該所定方向とは逆方向の逆回転が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材を回転自在に保持するケースと、
前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段と、
前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第2付勢手段と、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備し、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされるとともに、前記スロットルグリップが逆回転したとき、車両の所定の機能を作動又は非作動とし得るスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップが正回転するとき、前記第2付勢手段を介して前記スロットルグリップの回転操作が前記連動部材に伝達されることを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記第2付勢手段が取り付けられ、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材と共に回転しつつ前記第2付勢手段を介して前記スロットルグリップの回転操作を前記連動部材に伝達させるとともに、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材の回転を許容しつつ前記ケースに形成されたストッパ部に当接することにより停止して前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与し得る付勢力選択手段を具備したことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記第2付勢手段は、前記付勢力選択手段に形成されたスプリング受け部に一端が当接して取り付けられたコイルスプリングから成るとともに、前記スロットルグリップが正回転するとき、前記係合部が前記スプリング受け部を押圧して前記第2付勢手段の付勢力を生じさせることを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記連動部材の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段を具備したことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両の駆動源が制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、二輪車においては、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいて二輪車の駆動源(例えばエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉)が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップに形成された係合部を連動部材に形成された被係合部に係合することにより、スロットルグリップと連動部材とを連結させ、連動部材の回転角度をセンサにて検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-90065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、スロットルグリップの回転操作をセンサにて検出するので、レスポンスが運転者の想定より著しく高くなってしまい、操作性に違和感が生じてしまうという不具合があった。すなわち、ワイヤを介してスロットルグリップの回転操作をエンジンに伝達して制御する場合、操作時にワイヤの付勢力(張力)による伝達ロスが生じるのに対し、センサにてスロットルグリップの回転操作を検出してエンジンを制御する場合、伝達ロスがほとんど生じず、却って操作性が悪化してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、運転者による回転操作が可能とされ、初期位置から所定方向に正回転及び当該所定方向とは逆方向の逆回転が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材を回転自在に保持するケースと、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段と、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第2付勢手段と、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備し、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされるとともに、前記スロットルグリップが逆回転したとき、車両の所定の機能を作動又は非作動とし得るスロットルグリップ装置であって、前記スロットルグリップが正回転するとき、前記第2付勢手段を介して前記スロットルグリップの回転操作が前記連動部材に伝達されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記第2付勢手段が取り付けられ、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材と共に回転しつつ前記第2付勢手段を介して前記スロットルグリップの回転操作を前記連動部材に伝達させるとともに、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材の回転を許容しつつ前記ケースに形成されたストッパ部に当接することにより停止して前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与し得る付勢力選択手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記第2付勢手段は、前記付勢力選択手段に形成されたスプリング受け部に一端が当接して取り付けられたコイルスプリングから成るとともに、前記スロットルグリップが正回転するとき、前記係合部が前記スプリング受け部を押圧して前記第2付勢手段の付勢力を生じさせることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、スロットルグリップが正回転するとき、第2付勢手段を介してスロットルグリップの回転操作が連動部材に伝達されるので、スロットルグリップの正回転時に第2付勢手段の付勢力を付与することができ、センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができる。
【0012】
また、スロットルグリップが正回転するとき、第2付勢手段を介してスロットルグリップの回転操作が連動部材に伝達されるので、スロットルグリップが逆回転したときに付勢手段として作用する第2付勢手段を流用してスロットルグリップの正回転時に付勢力を付与することができ、部品点数の増大を抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、第2付勢手段が取り付けられ、スロットルグリップが正回転したとき、連動部材と共に回転しつつ第2付勢手段を介してスロットルグリップの回転操作を連動部材に伝達させるとともに、スロットルグリップが逆回転したとき、連動部材の回転を許容しつつケースに形成されたストッパ部に当接することにより停止して第2付勢手段の付勢力を連動部材に付与し得る付勢力選択手段を具備したので、スロットルグリップの正回転時と逆回転時とで第2付勢手段の作用を円滑に切り替えることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、第2付勢手段は、付勢力選択手段に形成されたスプリング受け部に一端が当接して取り付けられたコイルスプリングから成るとともに、スロットルグリップが正回転するとき、係合部がスプリング受け部を押圧して第2付勢手段の付勢力を生じさせるので、第2付勢手段を利用してスロットルグリップの正回転時に付勢力を付与することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、連動部材の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段を具備したので、スロットルグリップの正回転時、抵抗力付与手段の摺動抵抗と併せて第2付勢手段の付勢力を付与することができ、操作性について微妙な調整を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す全体斜視図
図2】同スロットルグリップ装置を示す正面図及び平面図
図3図2におけるIII-III線断面図
図4図2におけるIV-IV線断面図
図5】同スロットルグリップ装置の主要部品を示す分解斜視図
図6】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す斜視図
図7】同スロットルグリップ装置の主要部品のユニットを示す斜視図
図8】同スロットルグリップ装置の主要部品のユニットを示す2面図
図9図8におけるIX-IX線断面図
図10図8におけるX-X線断面図
図11】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す3面図
図12】同スロットルグリップ装置の付勢力選択手段を示す3面図
図13】同スロットルグリップ装置のケースを示す2面図
図14】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置及び従来の他のスロットルグリップ装置における操作回転角度とトルクとの関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1、2に示すように、二輪車のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信して駆動源(エンジン)を制御するためのもので、図3~10に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、第1付勢手段3と、第2付勢手段4と、回転部材5と、磁気センサ9(回転角度検出手段)と、抵抗力付与手段7とを有して構成されている。
【0018】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたスイッチケースS内(図1、2参照)に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2及び回転部材5等を回転自在に保持するものである。かかるケース1は、図13に示すように、連動部材2を回転自在に収容する第1収容部1aと、回転部材5を回転自在に収容する第2収容部1bと、抵抗力付与手段7を収容する第3収容部1cと、付勢力選択手段6の突出部6bが当接可能なストッパ部1dと、第1付勢手段3の一端部を係止可能な係止部1eとが形成された成形部品から成る。なお、符号11は、ケース1の開口側を塞ぐための板状の蓋部材を示している。
【0019】
スロットルグリップGは、スイッチケースSから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、図1、2に示すように、初期位置から軸回りに所定方向の正回転a及び当該所定方向とは逆方向の逆回転bが可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端側には、突出形状から成る係合部Ga(図6参照)が形成されており、この係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(図5、7、11等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0020】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る凹形状から成る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの正回転a及び逆回転bに連動して回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、図11に示すように、被係合部2aと、一対の収容部2bと、フランジ2cと、ギア2dとを有した円環状部材から成る。なお、本実施形態に連動部材2には、抵抗力付与手段7を摺動させる摺動面nが形成されている。
【0021】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凹形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、連動部材2は、スロットルグリップGの回転に伴って連動部材2も回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、図7に示すように、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、他方の面には、収容部2bが形成されている。
【0022】
ここで、本実施形態に係る連動部材2の被係合部2aは、図5、11に示すように、連動部材2の回転方向に対して開口面2aaと壁面2abとを有しており、これら開口面2aaと壁面2abとの間の位置に係合部Gaが嵌合し得るようになっている。開口面2aaには、図7に示すように、付勢力選択手段6に形成されたスプリング受け部6aの背面6abが被係合部2aの内側に臨むよう組付けられている。
【0023】
そして、係合部Gaは、スロットルグリップGを正回転aさせると、開口面2aaから臨ませたスプリング受け部6aを押圧し、第2付勢手段4を圧縮しつつ連動部材2を正回転aの方向に回転させる。また、係合部Gaは、スロットルグリップGを逆回転bさせると、壁面2abを押圧して連動部材2を逆回転bの方向に回転させ得るようになっている。なお、付勢力選択手段6は、後述するように、スロットルグリップGの正回転時、連動部材2と共に回転するとともに、スロットルグリップGの逆回転時、連動部材2の回転を許容しつつ停止した状態とされる。
【0024】
収容部2bは、被係合部2aの間の位置に弧状に形成された一対の溝形状から成り、その内部には、第2付勢手段4がそれぞれ収容可能とされている。また、連動部材2には、周方向に亘ってフランジ2cが形成されるとともに、所定範囲に亘ってギア2dが形成されている。このギア2dは、図3、4、10に示すように、回転部材5の外周に形成されたギアと噛み合う状態で組み付けられており、連動部材2の回転に伴って回転部材5が回転するようになっている。
【0025】
第1付勢手段3は、ねじりコイルバネから成り、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのリターンスプリングである。具体的には、第1付勢手段3は、その一端がケース1の係止部1eに係止されるとともに、他端が連動部材2に係止されて組み付けられており、スロットルグリップGを正回転aさせた際、その付勢力をスロットルグリップGに伝達することにより、スロットルグリップGを初期位置に戻す力を作用させるのである。
【0026】
第2付勢手段4は、付勢力選択手段6に形成されたスプリング受け部6a(図6、10、12参照)に一端が当接して取り付けられた一対のコイルスプリングから成り、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのものである。具体的には、第2付勢手段4は、スロットルグリップGを逆回転bさせた際、その付勢力をスロットルグリップGに伝達することにより、スロットルグリップGを初期位置に戻す力を作用させるのである。
【0027】
回転部材5は、連動部材2と連動して回転し得るもので、ケース1の第2収容部1b(図13参照)に収容されるとともに、軸L(図3~5、9参照)を中心として回転自在とされている。そして、回転部材5は、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて軸Lを中心として回転するようになっている。かかる回転部材5は、図9に示すように、軸Lにより磁石Mと連結されており、回転部材5と共に磁石Mが軸Lを中心に回転するよう構成されている。
【0028】
磁気センサ9(回転角度検出手段)は、図9に示すように、軸Lの延長線上の位置に配設されたセンサから成り、磁石Mから生じる磁気の変化(磁界の方向の変化)を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ9は、磁石Mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石Mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ9は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板8に形成されるとともに、非磁性体材料から成る収容部材10にて覆われている。
【0029】
そして、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが正回転aするのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材5も連動してギア比(連動部材2及び回転部材5のギア比)に応じて回転し、当該回転部材5に連結された磁石Mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、回転部材5の回転角度によって磁石Mの磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、スロットルグリップGの回転角度に応じて車両の駆動源(例えばエンジン)が制御され得るようになっている。
【0030】
一方、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが逆回転bするのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材5も連動してギア比(連動部材2及び回転部材5のギア比)に応じて回転し、当該回転部材5に取り付けられた磁石Mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、回転部材5の回転角度によって磁石Mの磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、スロットルグリップGの逆回転bを検出することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGの逆回転bが検出されると、二輪車が具備する所定の機能を作動又は非作動とすることができるようになっている。本実施形態においては、走行速度を一定に保持する定車速保持装置(オートクルーズ装置)を備えた二輪車に適用されており、スロットルグリップGを逆回転b(初期位置からスロットルを全開させる正回転aの方向とは逆方向の回転操作)させると、当該定車速の保持制御を停止(キャンセル)させ得るよう構成されている。
【0032】
抵抗力付与手段7は、スロットルグリップGの回転時に摺動抵抗(摺動による摩擦抵抗)を生じさせて回転負荷を生じさせ得るもので、連動部材2の周方向に亘って形成された摺動面nに対して当接状態にて組み付けられた摩擦部材から成る。かかる抵抗力付与手段7は、ケース1の第3収容部1cに収容されるとともに、スプリングの付勢力により連動部材2の摺動面nに対して押圧されて組み付けられており、連動部材2が回転すると、摺動面nに対して摺動して摩擦力を生じさせ、所望の回転負荷を生じさせるようになっている。
【0033】
付勢力選択手段6は、図5、12に示すように、一対のスプリング受け部6aと、側方に突出形成された突出部6bとを有する円環状板材から成るもので、一対のスプリング受け部6aにそれぞれ第2付勢手段4が組付けられている。スプリング受け部6aは、一方の面が第2付勢手段4の一端を受ける受け面6aaとされるとともに、他方の面が連動部材2における被係合部2aの開口面2aaから臨ませる背面6abとされている。
【0034】
そして、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGの係合部Gaを連動部材2の被係合部2aに嵌合させると、図8、10に示すように、被係合部2aとスプリング受け部6aの背面6abとが対峙する。これにより本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGを正回転aさせたとき、被係合部2aがスプリング受け部6aの背面6abを押圧して第2付勢手段4の付勢力を生じさせることとなり、第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達されるようになっている。
【0035】
このように、付勢力選択手段6は、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2と共に回転しつつ第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作を連動部材2に伝達させるよう構成されている。したがって、スロットルグリップGを正回転aするとき、係合部Gaから連動部材2に伝達される操作力を第2付勢手段4の付勢力(反発力)にて鈍らせることができ、連動部材2の追従性を低減させてスロットルグリップ装置のレスポンス(応答特性)を低下させることができる。一方、付勢力選択手段6は、スロットルグリップGが逆回転したとき、連動部材2の回転を許容しつつケース1に形成されたストッパ部1d(図13参照)に当接することにより停止して第2付勢手段4の付勢力を連動部材2に付与し得るようになっている。
【0036】
本実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップGが正回転aするとき、第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作(操作力)が連動部材2に伝達される。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGの回転操作をワイヤを介して伝達するものに比べて、特に回転初期のトルクを近時させることができた。
【0037】
すなわち、本実施形態に係るスロットルグリップ装置(実施例)と、スロットルグリップGの回転操作をワイヤを介して伝達するスロットルグリップ装置(比較例1)と、スロットルグリップGの回転操作をセンサで検出し、且つ、正回転時に第2付勢手段4などによる付勢力を付与しないスロットルグリップ装置(比較例2)とを用意し、それぞれの回転操作角度とトルクとの関係を測定したところ、図14に示すように、実施例がγ、比較例1がα及び比較例2がβのような結果となった。
【0038】
したがって、本実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップGの回転操作をワイヤを介して伝達する比較例1に対して、特に回転初期のトルクを近時させることができるので、比較例2のものに比べて操作時の違和感を低減させることができることが分かる。なお、回転中盤及び終盤においては、例えば抵抗力付与手段7の摺動抵抗を任意変更することにより、比較例1のトルク傾向に近似させることができる。
【0039】
本実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップGが正回転するとき、第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達されるので、スロットルグリップGの正回転時に第2付勢手段4の付勢力を付与することができる。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、センサによる回転操作の検出を行わせつつスロットルグリップGの回転操作時の伝達ロスを再現することができ、操作時の違和感を低減させて操作性を向上させることができる。
【0040】
特に、本実施形態に係るスロットルグリップ装置においては、スロットルグリップGが正回転aするとき、第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作が連動部材2に伝達される。すなわち、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが逆回転bしたときに付勢手段として作用する第2付勢手段4を流用してスロットルグリップGの正回転時に付勢力を付与することができ、部品点数の増大を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、第2付勢手段4が取り付けられ、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2と共に回転しつつ第2付勢手段4を介してスロットルグリップGの回転操作を連動部材2に伝達させるとともに、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2の回転を許容しつつケース1に形成されたストッパ部1dに当接することにより停止して第2付勢手段4の付勢力を連動部材2に付与し得る付勢力選択手段6を具備した。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGの正回転時と逆回転時とで第2付勢手段4の作用を円滑に切り替えることができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る第2付勢手段4は、付勢力選択手段6に形成されたスプリング受け部6aに一端が当接して取り付けられたコイルスプリングから成るとともに、スロットルグリップGが正回転aするとき、係合部Gaがスプリング受け部6aを押圧して第2付勢手段4の付勢力を生じさせる。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、第2付勢手段4を利用してスロットルグリップGの正回転時に付勢力を付与することができる。
【0043】
またさらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、連動部材2の回転時に摺動抵抗を生じさせる抵抗力付与手段7を具備したので、スロットルグリップGの正回転時、抵抗力付与手段7の摺動抵抗と併せて第2付勢手段4の付勢力を付与することができ、操作性について微妙な調整を可能とすることができる。なお、本実施形態に係る抵抗力付与手段7は、連動部材2のフランジ2cに形成された摺動面nを摺動するものとされているが、連動部材2の他の部位を摺動するものとしてもよい。
【0044】
以上、本実施形態に係るスロットルグリップ装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば本実施形態に係るスロットルグリップ装置においては、スプリング受け部6aを当接して第2付勢手段4を圧縮して付勢力を生じさせているが、係合部Gaが第2付勢手段4の一端を直接が押圧するもの、或いは第2付勢手段4がコイルスプリングとは異なる弾性体から成るもの等であってもよい。さらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、磁気センサ9に代えてスロットルグリップGの回転角度を検出し得る他のセンサ(磁気を使用しないセンサ等)としてもよい。
【0045】
またさらに、本実施形態に係るスロットグリップ装置においては、スロットルグリップGを逆回転させると、定車速保持装置(オートクルーズ装置)の定車速の保持制御を停止(キャンセル)させるよう構成されているが、スロットルグリップGの逆方向の回転を検知すると、車両が具備する所定の機能を作動又は非作動するものであれば足りる。例えば、スロットルグリップGの逆方向の回転により、イモビライザシステムやスマートエントリシステムにおける認証開始、エンジンを始動させるスタータの作動、ハザード等の緊急時点灯手段の作動等を行わせるものとしてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。また、本実施形態が適用される車両は、駆動源がエンジンに限定されるものではなく、例えば電気モータを駆動源とする車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
スロットルグリップが正回転するとき、第2付勢手段を介してスロットルグリップの回転操作が連動部材に伝達されるスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース
1d ストッパ部
1e 係止部
2 連動部材
2a 被係合部
2aa 開口面
2ab 壁面
2b 収容部
2c フランジ
2d ギア
3 第1付勢手段(ねじりコイルバネ)
4 第2付勢手段(コイルスプリング)
5 回転部材
6 付勢力選択手段
6a スプリング受け部
6aa 受け面
6ab 背面
6b 突出部
7 抵抗力付与手段
8 プリント基板
9 磁気センサ(回転角度検出手段)
10 収容部材
11 蓋部材
G スロットルグリップ
Ga 係合部
M 磁石
n 摺動面
図1
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