(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058455
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電圧整合タンデム太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H10K 30/57 20230101AFI20240418BHJP
H10K 39/12 20230101ALI20240418BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K39/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165822
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 康彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 健一
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA10
5F151AA11
5F151AA20
5F151DA15
5F151FA02
5F151FA03
5F151GA02
5F151GA03
5F251AA10
5F251AA11
5F251AA20
5F251DA15
5F251FA02
5F251FA03
5F251GA02
5F251GA03
(57)【要約】
【課題】二端子モジュール及び四端子モジュールと同等の変換効率が得られる電圧整合タンデム太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】複数のトップセルを集積させたトップモジュール200と、複数のボトムセルを集積させたボトムモジュール202とを積層し、トップモジュール200とボトムモジュール202とを並列に接続し、トップモジュール200に用いられる光電変換層のバンドギャップEg
(t)は1.5eV以上1.8eV以下であり、ボトムモジュール202に用いられる光電変換層のバンドギャップEg
(b)は1.0eV以上1.2eV以下であり、トップモジュール200を構成するトップセルの直列接続数n
tと、ボトムモジュール202を構成するボトムセルの直列接続数n
bが、(n
b/n
t)/(0.88×(Eg
(t)-0.68eV)/(Eg
(b)-0.60eV))が0.6以上2.0以下であることを満たすものとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトップセルを集積させたトップモジュールと、複数のボトムセルを集積させたボトムモジュールと、を積層し、前記トップモジュールと前記ボトムモジュールとを並列に接続した電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールに用いられる光電変換層のバンドギャップEg(t)は1.5eV以上1.8eV以下であり、
前記ボトムモジュールに用いられる光電変換層のバンドギャップEg(b)は1.0eV以上1.2eV以下であり、
前記トップモジュールを構成する前記トップセルの直列接続数ntと、前記ボトムモジュールを構成する前記ボトムセルの直列接続数nbが、(nb/nt)/(0.88×(Eg(t)-0.68eV)/(Eg(b)-0.60eV))が0.6以上2.0以下であることを満たすことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
(nb/nt)/(0.88×(Eg(t)-0.68eV)/(Eg(b)-0.60eV))が0.8以上1.4以下であることを満たすことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
光入射側からみて前記トップモジュールと前記ボトムモジュールの大きさが同一であることを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールは、2枚の基板の各々に形成された直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを2個並列に接続した構成であり、
前記ボトムモジュールは、2枚の基板の各々に形成された直列接続数nb/2の前記ボトムセルを有するボトムサブモジュールを直列に接続した構成である、
ことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールは、直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを1枚の基板に2個形成し、2個の前記トップサブモジュールを並列に接続した構成であり、
前記ボトムモジュールは、直列接続数nbの前記ボトムセルを1枚の基板に形成した構成である、
ことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールは、直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを基板に形成した構成であり、
前記ボトムモジュールは、直列接続数nb/2の前記ボトムセルを有するボトムサブモジュールを基板に2個形成し、2個の前記ボトムサブモジュールを直列に接続した構成である、
ことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップセルは、有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池であることを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記ボトムセルは、Cu(In,Ga)Se2太陽電池又は有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池であることを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧整合タンデム太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光エネルギーの利用は、カーボンニュートラルを実現するために必須の技術である。現在は、結晶シリコン太陽電池が広く普及しているが、さらに高い変換効率を得るために2種類のバンドギャップが異なる太陽電池を積層したタンデム太陽電池の開発が行われている。
【0003】
トップセルとボトムセルを積層したタンデム太陽電池には、二端子モジュール、四端子モジュール、電圧整合(VM)モジュールの3種類がある(非特許文献1)。タンデム太陽電池に用いられるトップセルの材料には、バンドギャップの観点から有機無機ハイブリッドペロブスカイト(PVK)が好適である。ボトムセルの材料には、結晶シリコン、PVK、Cu(In,Ga)Se2(CIGS)が好適である。
【0004】
これらの材料のうち、PVK及びCIGSは薄膜材料であるので集積型太陽電池モジュールに用いることができる(特許文献1)。集積型太陽電池モジュールは、1枚の基板上に複数のセルが直列接続されたパターンが形成された太陽電池モジュールである。集積型太陽電池モジュールは、結晶シリコン太陽電池モジュールに比べて、軽量、フレキシブル、低製造コスト等の特長を備える。
【0005】
また、PVK材料は、その組成の調整によりバンドギャップを調整することができる。実際、PVK材料を用いて1.1eV~1.8eVの範囲で高い変換効率をもつ太陽電池が実現されている。CIGS材料についても組成の調整によりバンドギャップを1.0eV~1.2eVの範囲で調整することができ、CIGS材料を用いて高い変換効率をもつ太陽電池が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Liu, et al., Cell Rep. Phys. Sci. 1, 100037 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二端子モジュールで高い変換効率を得るためには、トップモジュールとボトムモジュールの電流整合が必要である。したがって、トップモジュールとボトムモジュールの材料のバンドギャップの組み合わせが制限される。また、二端子モジュールの太陽電池を日射スペクトルが変動する環境下で使用すると、トップモジュールとボトムモジュールの電流整合が破れるので変換効率が低下する。
【0009】
四端子モジュールの場合、トップモジュールとボトムモジュールから電力が個別に出力されるので、電流整合の制約がない。したがって、二端子モジュールよりも高い変換効率となり得る。しかしながら、電圧の異なる2系統の電力が出力されるため、パワーコンディショナーが2系統必要になり、かつ配線が複雑になる。また、モジュールの重量増や高コストにつながる。
【0010】
電圧整合モジュールでは、トップモジュール内及びボトムモジュール内のそれぞれの複数のセルの直列接続数を調節して、トップモジュールの電圧とボトムモジュールの電圧をおおよそ一致させる電圧整合を行い、両者を並列接続して電力を出力させる。そのため、出力は1系統(2端子)でありながら、四端子モジュールと比べて遜色ない高い変換効率となり得る。
【0011】
しかしながら、これまでに検討された電圧整合モジュールは、多くの場合はシリコンウェハサイズである結晶シリコン太陽電池と、これに近いサイズのGaInP、PVKなどの太陽電池を組み合わせたものであった(非特許文献1)。電圧整合モジュールの普及のためには、集積型太陽電池モジュールの利用が求められるが、電圧整合のために必要な材料の組み合わせ、バンドギャップに応じた適切な集積直列接続数等の設計指針が明らかではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様は、複数のトップセルを集積させたトップモジュールと、複数のボトムセルを集積させたボトムモジュールと、を積層し、前記トップモジュールと前記ボトムモジュールとを並列に接続した電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、前記トップモジュールに用いられる光電変換層のバンドギャップEg(t)は1.5eV以上1.8eV以下であり、前記ボトムモジュールに用いられる光電変換層のバンドギャップEg(b)は1.0eV以上1.2eV以下であり、前記トップモジュールを構成する前記トップセルの直列接続数ntと、前記ボトムモジュールを構成する前記ボトムセルの直列接続数nbが、(nb/nt)/(0.88×(Eg(t)-0.68eV)/(Eg(b)-0.60eV))が0.6以上2.0以下であることを満たすことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュールである。
【0013】
ここで、(nb/nt)/(0.88×(Eg(t)-0.68eV)/(Eg(b)-0.60eV))が0.8以上1.4以下であることを満たすことが好適である。
【0014】
また、光入射側からみて前記トップモジュールと前記ボトムモジュールの大きさが同一であることが好適である。
【0015】
また、前記トップモジュールは、2枚の基板の各々に形成された直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを2個並列に接続した構成であり、前記ボトムモジュールは、2枚の基板の各々に形成された直列接続数nb/2の前記ボトムセルを有するボトムサブモジュールを直列に接続した構成である、ことが好適である。
【0016】
また、前記トップモジュールは、直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを1枚の基板に2個形成し、2個の前記トップサブモジュールを並列に接続した構成であり、前記ボトムモジュールは、直列接続数nbの前記ボトムセルを1枚の基板に形成した構成である、ことが好適である。
【0017】
また、前記トップモジュールは、直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを基板に形成した構成であり、前記ボトムモジュールは、直列接続数nb/2の前記ボトムセルを有するボトムサブモジュールを基板に2個形成し、2個の前記ボトムサブモジュールを直列に接続した構成である、ことが好適である。
【0018】
また、前記トップセルは、有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池であることが好適である。また、前記ボトムセルは、Cu(In,Ga)Se2太陽電池又は有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池であることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二端子モジュールのように電流整合を必要とせず、また2系統のパワーコンディショナーを必要とする四端子モジュールとは異なり1系統のパワーコンディショナーで動作し、二端子モジュール及び四端子モジュールと同等の変換効率が得られる電圧整合タンデム太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールの構成を示す平面図である。
【
図2】第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【
図3】第2の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【
図4】第2の実施の形態におけるトップモジュールの電気接続の構成を示す図である。
【
図5】第2の実施の形態におけるボトムモジュールの電気接続の構成を示す図である。
【
図6】第3の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【
図7】第3の実施の形態におけるトップモジュールの電気接続の構成を示す図である。
【
図8】第3の実施の形態におけるトップモジュールの電気接続の構成を示す図である。
【
図9】第4の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【
図10】第4の実施の形態におけるトップモジュールの電気接続の構成を示す図である。
【
図11】第4の実施の形態におけるトップモジュールの電気接続の構成を示す図である。
【
図12】電圧整合タンデム太陽電池モジュールのモデルの構成を示す図である。
【
図13】比較例の四端子モジュールの構成を示す図である。
【
図14】比較例の二端子モジュールの構成を示す図である。
【
図15】電圧整合タンデム太陽電池モジュール、二端子モジュール及び四端子モジュールの変換効率の計算結果を示す図である。
【
図16】四端子モジュールの変換効率に対する電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率の比を示す図である。
【
図17】四端子モジュールの変換効率に対する電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率の規格化された比を示す図である。
【
図18】第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールと第2~第4の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール100は、
図1及び
図2に示すように、光入射側からトップモジュール200及びボトムモジュール202を積層して構成される。
図1は、電圧整合タンデム太陽電池モジュール100の平面図である。
図2は、
図1のラインA-Aに沿った電圧整合タンデム太陽電池モジュール100の断面図である。
【0022】
なお、トップモジュール200及びボトムモジュール202は、直接積層してもよいし、他の部材を挟んで間接的に積層してもよい。他の部材を挟んで間接的に積層する場合、当該部材はボトムモジュール202において吸収される波長領域の光を透過する材料から構成することが好適である。
【0023】
トップモジュール200は、複数のトップセル(太陽電池セル)を複数直列に接続して構成される。トップモジュール200は、基板10、第1導電層12、光電変換層14及び第2導電層16を含んで構成される。基板10、第1導電層12、光電変換層14及び第2導電層16は、光入射側から順に積層されてトップモジュール200を構成し、入射された光を電気エネルギーに変換する機能を発揮する。
【0024】
基板10は、トップモジュール200を構造的に支持する部材である。基板10は、トップモジュール200及びボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する材料で構成される。基板10は、例えば、ガラス、プラスチック等で構成することができる。
【0025】
第1導電層12は、基板10上に形成される。第1導電層12は、トップモジュール200及びボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する導電性の材料で構成される。第1導電層12は、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、または酸化チタンなどの金属酸化物を少なくとも1つとすることができる。また、これらの金属酸化物に、錫、亜鉛、タングステン、アンチモン、チタン、セリウム、ガリウムなどのドーパントがドープされていてもよい。第1導電層12は、蒸着法、CVD法、スパッタリング法等の薄膜形成方法により形成することができる。第1導電層12は、トップモジュール200を構成するトップセル毎に間隙18aによって分離されている。
【0026】
光電変換層14は、光を吸収して電気エネルギーに変換する層である。光電変換層14は、第1導電層12上に形成される。光電変換層14は、後述するボトムモジュール202の光電変換層24よりバンドギャップが広い材料から構成される。すなわち、光電変換層14は、ボトムモジュール202の光電変換層24より短波長の光を吸収する材料から構成される。光電変換層14は、バンドギャップEg(t)が1.5eV以上1.8eV以下の材料から構成することが好適である。当該バンドギャップEg(t)の条件を満たす材料は、例えば、有機無機ハイブリッドペロブスカイト(PVK)が挙げられる。PVKの組成を調整することによって当該バンドギャップEg(t)の条件を満たす材料とすることができる。
【0027】
第2導電層16は、ボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する導電性の材料で構成される。第2導電層16は、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、または酸化チタンなどの金属酸化物を少なくとも1つとすることができる。また、これらの金属酸化物に、錫、亜鉛、タングステン、アンチモン、チタン、セリウム、ガリウムなどのドーパントがドープされていてもよい。第2導電層16は、蒸着法、CVD法、スパッタリング法等の薄膜形成方法により形成することができる。
【0028】
第2導電層16は、光電変換層14を形成後、光電変換層14に間隙18bを形成した後に形成される。これによって、間隙18bを介して、第2導電層16は隣のセルの第1導電層12と電気的に接続される。また、光電変換層14及び第2導電層16は、トップモジュール200を構成するトップセル毎に間隙18cによって分離されている。これによって、トップモジュール200を構成する各トップセルは互いに直列接続された構成とされる。
【0029】
なお、トップモジュール200は、光入射側から、第2導電層16、光電変換層14、第1導電層12及び基板10の順に配置した構成としてもよい。この場合、第2導電層16は、トップモジュール200及びボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する材料で構成することが好適である。また、第1導電層12及び基板10は、ボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する材料で構成することが好適である。
【0030】
ボトムモジュール202は、複数のボトムセル(太陽電池セル)を複数直列に接続して構成される。ボトムモジュール202は、基板20、第3導電層22、光電変換層24及び第4導電層26を含んで構成される。基板20、第3導電層22、光電変換層24及び第4導電層26は、光入射側の反対側から順に積層されてボトムモジュール202を構成し、入射された光を電気エネルギーに変換する機能を発揮する。
【0031】
基板20は、ボトムモジュール202を構造的に支持する部材である。基板20の材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、プラスチック、セラミックス、金属等で構成することができる。
【0032】
第3導電層22は、基板20上に形成される。第3導電層22は、導電性の材料で構成される。第3導電層22は、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、または酸化チタンなどの金属酸化物を少なくとも1つとすることができる。また、これらの金属酸化物に、錫、亜鉛、タングステン、アンチモン、チタン、セリウム、ガリウムなどのドーパントがドープされていてもよい。第3導電層22は、モリブデンなどの金属としてもよい。第3導電層22は、蒸着法、CVD法、スパッタリング法等の薄膜形成方法により形成することができる。第3導電層22は、ボトムモジュール202を構成するボトムセル毎に間隙28aによって分離されている。
【0033】
光電変換層24は、光を吸収して電気エネルギーに変換する層である。光電変換層24は、第3導電層22上に形成される。光電変換層24は、トップモジュール200の光電変換層14よりバンドギャップが狭い材料から構成される。すなわち、光電変換層24は、トップモジュール200の光電変換層14より長波長の光を吸収する材料から構成される。光電変換層24は、バンドギャップEg(b)が1.0eV以上1.2eV以下の材料から構成することが好適である。当該バンドギャップEg(b)の条件を満たす材料は、例えば、Cu(IN,Ga)Se2、有機無機ハイブリッドペロブスカイト(PVK)が挙げられる。Cu(IN,Ga)Se2やPVKの組成を調整することによって当該バンドギャップEg(b)の条件を満たす材料とすることができる。
【0034】
第4導電層26は、ボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する導電性の材料で構成される。第4導電層26は、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、または酸化チタンなどの金属酸化物を少なくとも1つとすることができる。また、これらの金属酸化物に、錫、亜鉛、タングステン、アンチモン、チタン、セリウム、ガリウムなどのドーパントがドープされていてもよい。第4導電層26は、蒸着法、CVD法、スパッタリング法等の薄膜形成方法により形成することができる。
【0035】
第4導電層26は、光電変換層24を形成後、光電変換層24に間隙28bを形成した後に形成される。これによって、間隙28bを介して、第4導電層26は隣のセルの第3導電層22と電気的に接続される。また、光電変換層24及び第4導電層26は、ボトムモジュール202を構成するボトムセル毎に間隙28cによって分離されている。これによって、ボトムモジュール202を構成する各ボトムセルは互いに直列接続された構成とされる。
【0036】
なお、ボトムモジュール202は、光入射側から、基板20、第3導電層22、光電変換層24及び第4導電層26の順に配置した構成としてもよい。この場合、基板20及び第3導電層22は、ボトムモジュール202において光電変換に利用される波長領域の光を透過する材料で構成される。また、第4導電層26は、透光性は必要とされない。
【0037】
トップモジュール200とボトムモジュール202は光入射面側からみて互いに重なり合うように配置される。ここで、光入射面側からみたトップモジュール200とボトムモジュール202の大きさは同一とすることが好適である。また、光入射面側からみたトップモジュール200の基板10とボトムモジュール202の基板20の大きさを同一にすることが好適である。また、光入射面側からみたトップモジュール200の光電変換層14を形成した面積とボトムモジュール202の光電変換層24を形成した面積とを同一にすることが好適である。ここで、同一とは、完全に等しいのみならず、ほぼ等しいことも意味する。具体的には、同一であることが好適であるとは、互いに±10%以内で等しいことが好適であることを意味する。
【0038】
電圧整合タンデム太陽電池モジュール100では、トップセルが互いに直列接続されたトップモジュール200と、ボトムセルが互いに直列接続されたボトムモジュール202と、が並列に外部正極端子(+)及び外部負極端子(-)に接続される。
【0039】
第2の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール102は、
図3に示すように、2つのトップサブモジュール200a,200bを含むトップモジュール200及び2つのボトムサブモジュール202a,202bを含むボトムモジュール202から構成される。
【0040】
図4は、電圧整合タンデム太陽電池モジュール102におけるトップサブモジュール200a及びトップサブモジュール200bの配置及び接続を示す。
図4に示すように、トップサブモジュール200aとトップサブモジュール200bは、同一面内に並べて配置され、互いに電気的に並列に接続される。
図5は、電圧整合タンデム太陽電池モジュール102におけるボトムサブモジュール202a及びボトムサブモジュール202bの配置及び接続を示す。
図5に示すように、ボトムサブモジュール202aとボトムサブモジュール202bは、同一面内に並べて配置され、互いに電気的に直列に接続される。
【0041】
このような配置及び接続で構成されるトップモジュール200及びボトムモジュール202を光入射側からみて重なり合うように配置することで電圧整合タンデム太陽電池モジュール102が構成される。
【0042】
第3の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール104は、
図6に示すように、2つのトップサブモジュール200a,200bを含むトップモジュール200及び2つのボトムサブモジュール202a,202bを含むボトムモジュール202から構成される。電圧整合タンデム太陽電池モジュール102では、2つのトップサブモジュール200a,200bは異なる基板上に形成され、2つのボトムサブモジュール202a,202bも異なる基板上に形成されている。これに対して、電圧整合タンデム太陽電池モジュール104では、2つのトップサブモジュール200a,200bは同一の基板に形成され、2つのボトムサブモジュール202a,202bも同一の基板上に形成されている点で異なっている。
【0043】
図7は、電圧整合タンデム太陽電池モジュール104におけるトップサブモジュール200a及びトップサブモジュール200bの配置及び接続を示す。
図7に示すように、トップサブモジュール200aとトップサブモジュール200bは、互いに電気的に並列に接続される。
図8は、電圧整合タンデム太陽電池モジュール104におけるボトムサブモジュール202a及びボトムサブモジュール202bの配置及び接続を示す。
図8に示すように、ボトムサブモジュール202aとボトムサブモジュール202bは、互いに電気的に直列に接続される。
【0044】
このような配置及び接続で構成されるトップモジュール200及びボトムモジュール202を光入射側からみて重なり合うように配置することで電圧整合タンデム太陽電池モジュール104が構成される。
【0045】
電圧整合タンデム太陽電池モジュール102,104において、光入射面側からみたトップモジュール200及びボトムモジュール202の大きさは同一とすることが好適である。すなわち、光入射面側からみたトップサブモジュール200a,200bの合計の大きさとボトムサブモジュール202a,202bの合計の大きさは同一とすることが好適である。また、光入射面側からみたトップサブモジュール200a,200bを構成する基板10の合計の大きさとボトムサブモジュール202a,202bを構成する基板20の合計の大きさを同一にすることが好適である。また、光入射面側からみたトップサブモジュール200a,200bを構成する光電変換層14を形成した面積とボトムサブモジュール202a,202bを構成する光電変換層24を形成した面積とを同一にすることが好適である。
【0046】
第4の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール106は、
図9、
図10及び
図11に示すように、1つのトップサブモジュール200aを含むトップモジュール200及び2つのボトムサブモジュール202a,202bを含むボトムモジュール202から構成される。電圧整合タンデム太陽電池モジュール106では、2つのボトムサブモジュール202a,202bは同一基板上に形成され、互いに電気的に直列に接続される。そして、トップサブモジュール200aと2つのボトムサブモジュール202a,202bとが光入射側からみて重なり合うように配置することで電圧整合タンデム太陽電池モジュール106が構成される。
【0047】
電圧整合タンデム太陽電池モジュール106では、1つのトップサブモジュール200aと2つのボトムサブモジュール202a,202bの大きさを同一とすることが好適である。互いに直列接続された2つのボトムサブモジュール202a,202bと1つのトップサブモジュール200aの大きさを同一とすることで、トップサブモジュール200aは実質的にボトムサブモジュール202a,202bと同じ大きさの2つのトップサブモジュールを並列に接続したのと同じ構成と見做すことができる。
【0048】
電圧整合タンデム太陽電池モジュールの光電変換動作をモデル化し、電流密度-電圧(J-V)特性を導出した。これと、1年間にわたって実測された日射スペクトルと気温の変動のデータを用いて、年間平均の変換効率(積算日射量に対する積算発電量の比)を求めた。
【0049】
図12は、電圧整合タンデム太陽電池モジュールのモデルの構成を示す。モデルでは、光入射側の導電層をTCO(transparent conductive oxide)膜とし、反対側の導電層をMo膜とした。また、セルを直列接続した方向をX方向(X座標)とした。X方向に沿って、1つのセルの長さをv
0、発電に有効なセルの幅w、セル間の接続領域の幅dとした。また、以下の説明において、トップモジュールに関する値については下付文字tで示し、ボトムモジュールに関する値については下付文字bで示す。
【0050】
単セルの電流密度j(v)は、定電流源、ダイオード、直列及び並列抵抗の組み合わせからなる等価回路により数式(1)にように表される(J. Nelson, Physics of Solar Cells (Imperial College Press, London, 2003))。
【数1】
【0051】
ここで、j
phは光電流密度、j
0とn
IDはそれぞれダイオードの逆飽和電流密度と理想因子、r
sとr
shはそれぞれ直列抵抗と並列抵抗である。q,k
B,Tはそれぞれ電荷素量、Boltzmann定数、セル温度である。j
phは、セルの外部量子効率η
EOE(hバーω)(ただし、hバーはプランク定数hを2πで除した値)と太陽光の光子数スペクトルn
sun(hバーω)によって数式(2)で表される。
【数2】
【0052】
ダイオードの逆飽和電流密度j
0のセル温度Tに対する依存性は、経験的には数式(3)のように表される(D. C. Nguyen, F. Murata, K. Sato, M. Hamada, and Y. Ishikawa, Energy Sci. Eng. 10, 1373 (2022))。ここで、Egはバンドギャップである。n
0,c
0はそれぞれフィッティングパラメーターである。
【数3】
【0053】
ボトムモジュールにCIGSを用いる場合、集積化モジュールの特性には、最表面の透明導電膜のシート抵抗rTCOと、透明導電膜/金属膜の接触抵抗rcが影響する。ここでは、金属膜としてMo膜を適用した。一方、Mo膜のシート抵抗は透明導電膜のシート抵抗rTCOの1/10以下であるから(S. Nishiwaki, A. Burn, S. Buecheler, M. Muralt, S. Pilz, V. Romano, R. Witte, L. Krainer, G. J. Spuhler, and A. N. Tiwari, Prog. Photovolt.: Res. Appl. 23, 1908 (2015))、その影響は無視できるほど小さい。
【0054】
単セルの電圧v
bのとき、位置xにおけるMo膜とTCO膜の間の電位差v(x)は、電位差v(x)に依存する電流密度分布j(v(x))と数式(4)で示す関係にある(M. Burgelman and A. Niemegeers, Solar Energy Mater. Solar Cells 51, 129 (1998))。ここで、w
bはボトムモジュールのセルの発電領域の幅である。
【数4】
【0055】
数式(1)と数式(4)からなる連立方程式を解くことにより電流密度分布j(v(x))が求められ、更にこれから単セルの単位長さあたりの電流j
b(v
b)(〔電流〕/〔長さ〕)を数式(5)のように求めることができる。
【数5】
【0056】
ボトムモジュールにPVKを用いる場合には、基板側にも透明導電膜が用いられるので、その影響を考慮する。トップモジュールについても類似の考え方により単セルの単位長さあたりの電流jt(vt)を求めることができる。
【0057】
同一のサイズの基板に、トップセル及びトップセルがそれぞれn
t,n
b個集積化及び直列接続されたトップモジュール及びボトムモジュールを形成し、トップモジュール及びボトムモジュールを光入射方向に積層及び並列接続した電圧整合タンデム太陽電池モジュールについて考察する。当該電圧整合タンデム太陽電池モジュールの電流密度Jは、セル間の接続領域の幅d
t,d
bは発電に寄与しないことを考慮して、数式(6)のように表される。
【数6】
【0058】
変換効率ηは、電圧Vの関数としての出力P(V)=J(V)・Vの最大値と、入射光強度P
inの比である。電圧Vをn
tv
VMに置き換えても出力Pの値は変わらないので、改めて数式(7)を定義する。
【数7】
【0059】
ここで、v
VMは1つのトップセル当たりの電圧であり、n
b/n
tは1つのトップセル当たりのボトムセル数である。これを用いて数式(8)が得られる。
【数8】
【0060】
図13は、比較例である四端子モジュールの構成を示す。四端子モジュールの場合、トップモジュール200及びボトムモジュール202はそれぞれ独立に機能する。したがって、変換効率ηは、トップセルの数n
t及びボトムセルの数n
bには影響されず、数式(9)で表される。
【数9】
【0061】
図14は、比較例である二端子モジュールの構成を示す。二端子モジュールは、トップセルを構成する光電変換層14とボトムセルを構成する光電変換層24とを導電層30を挟んで直接積層して1つのモジュールとした構成を有する。二端子モジュールについては、トップセル及びボトムセルの2接合(2j)単セルの電流密度j
2j(v
2j)を数式(10)の連立方程式を解くことにより求め、これを用いて他と同様の手順により変換効率ηを求めることができる。
【数10】
【0062】
トップセルとしてPVK(25℃におけるバンドギャップEg=1.68eV)、ボトムセルとしてCIGS(25℃におけるバンドギャップEg=1.08eV)を用いることを想定し、それぞれの単セルの電流密度j(v)を以下のようにして定めた。
【0063】
25℃における外部量子効率ηEOE(hバーω)にはPVK/CIGS積層の二端子モジュールについての実測値を用いた(M. Jost, E. Kohnen, A. Al-Ashouri, T. Bertram, S. Tomsic, A. Magomedov, E. Kasparavicius, T. Kodalle, B. Lipovsek, V. Getautis, R. Schlatmann, C. A. Kaufmann, S. Albrecht, and M. Topic, ACS Energy Lett. 7, 1298 (2022))。また、PVKのバンドギャップEgの温度係数dEg/dT=0.3meV/K(O. Dupre, B. Niesen, S. De Wolf, and C. Ballif, Phys. Chem. Lett. 9, 446 (2018),E. Aydin, T. G. Allen, M. De Bastiani, L. Xu, J. Avila, M. Salvador, E. Van Kerschaver, and S. De Wolf, Nat. Energy 5, 851 (2020))、CIGSのバンドギャップEgの温度係数dEg/dT=-1meV/K(M. Troviano and K. Taretto, Solar Energy Mater. Solar Cells 95, 3081 (2011))を考慮して外部量子効率ηEOE(hバーω)の温度Tへの依存性を求めた。そのうえで、数式(1)により表される電流密度j(v)が実測値に近い値となるように、ダイオードの理想因子nID,直列抵抗rs,並列抵抗rsh及びフィッティングパラメーターn0,c0を決めた結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
この際、25℃における光電流密度jphについては、数式(2)により求められるAM1.5Gスペクトル光照射時の値が実測値(PVK:19.0mA/cm2,CIGS:20.0mA/cm2)に一致した。
【0066】
変換効率ηの温度係数は、実測値がPVK:dη/dT=-0.23%/K,CIGSdη/dT=-0.38%/Kであったのに対し、計算結果はPVK:dη/dT=-0.26%/K,CIGS:dη/dT=-0.40%/Kとなった。すなわち、変換効率ηの温度係数について実測値と計算結果はおおよそ一致した。また、開放端電圧VocとバンドギャップEgの差が一定値(PVK:Eg-Voc=0.51eV,CIGS:Eg-Voc=0.46eV)となるようにc0の値をバンドギャップEg毎に定めた。
【0067】
集積化モジュールの電流密度J(V)を求める際には、PVK,CIGSの何れについても、TCOのシート抵抗rTCO=20Ω/sq(S. Nishiwaki, A. Burn, S. Buecheler, M. Muralt, S. Pilz, V. Romano, R. Witte, L. Krainer, G. J. Spuhler, and A. N. Tiwari, Prog. Photovolt.: Res. Appl. 23, 1908 (2015)),接触抵抗rC=1Ωcmを用い(J.-H. Yoon, J.-K. Park, W. M. Kim, J. W. Lee, H. Pak, and J. Jeong, Sci. Rep. 5, 7690 (2015),B. Turan, A. Huuskonen, I. Kuhn, T. Kirchartz, and S. Haas, Solar PRL 1, 1700003 (2017),S.-W. Cho, A.-H. Kim, G.-A. Lee, and C.-W. Jeon, Electron. Mater. Lett. 17, 421 (2021))、d=400μmに設定した(G. Heise, A. Borner, M. Dickmann, M. Englmaier, A. Heiss, M. Kemnitzer, J. Konrad, R. Moser, J. Palm, H. Vogt, and H. P. Huber, Prog. Photovolt.: Res. Appl. 23, 1291 (2015),R. K. Kothandaraman, H. Lai, A. Aribia, S. Nishiwaki, S. Siegrist, M. Krause, Y. Zwirner, G. T. Sevilla, K. Artuk, C. M. Wolff, R. Carron, A. N. Tiwari, and F. Fu, Solar PRL 2022, 2200392 (2022))。
【0068】
二端子モジュールについての計算の際には、先に求めた外部量子効率ηEOE(hバーω)をそのまま用いた。一方、四端子モジュール及び電圧整合タンデム太陽電池モジュールの場合は、トップモジュールとボトムモジュールの間に透明導電層が1層加わるので、これの近赤外光吸収の影響を考慮した。なお、近年、透光性太陽電池の変換効率の向上のために、In2O3:Snに替わる透明導電材料の研究が進められた結果、In2O3:Zr,In2O3:Ceなどにより、高い導電性を確保しながら近赤外光吸収が低減された(E. Aydin, M. De Bastiani, X. Yang, M. Sajjad, F. Aljamaan, Y. Smirnov, M. N. Hedhili, W. Liu, T. G. Allen, L. Xu, E. Van Kerschaver, M. Morales-Masis, U. Schwingenschlogl, and S. De Wolf, Adv. Func. Mater. 29, 1901741 (2019),P.-H. Lee, T.-T. Wu, C.-F. Li, D. Glowienka, Y.-X. Huang, S.-H. Huang, Y.-C. Huang, and W.-F. Su, Solar PRL 2022, 2100891(2022))。そこで、CIGSボトムセルについては、外部量子効率ηEOE(hバーω)に替えて、外部量子効率ηEOE(hバーω)にIn2O3:Ce薄膜の透過スペクトル(バンドギャップ1.2eVにおいて97.8%)を掛けた値を用いた(P.-H. Lee, T.-T. Wu, C.-F. Li, D. Glowienka, Y.-X. Huang, S.-H. Huang, Y.-C. Huang, and W.-F. Su, Solar PRL 2022, 2100891(2022))。
【0069】
標準条件であるAM1.5G光照射、25℃の条件にて(Reference Air Mass 1.5 Spectra, https://www.nrel.gov/grid/solar-resource/spectra-am1.5.html)、トップセル数とボトムセル数の比n
t/n
bについて発電に有効なトップセル及びボトムセルの幅w
t,w
bの最適値を求めた。これらの値と、2015年につくば市にて、南向き、傾斜角32°の斜面で実測された日射スペクトルと気温のデータを用いて(Solar Radiation Database, New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO))、年間平均の変換効率(積算日射量に対する積算発電量の比)を計算した。ここで、セルの温度(T)は、気温(T
a)及び日射強度(P
in)との間の経験的な関係式である数式(11)を用いて求めた(M. Jost, B. Lipovsek, B. Glazar, A. Al-Ashouri, K. Brecl, G. Matic, A. Magomedov, V. Getautis, M. Topic, and S. Albrecht, Adv. Energy Mater. 10, 2000454 (2020))。
【数11】
【0070】
図15は、電圧整合タンデム太陽電池モジュールについて、1年間平均の変換効率(発電量/日射量)をボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tの関数として計算した結果を示す。また、
図15では、比較例として二端子モジュール(2T)及び四端子モジュール(4T)に対する結果も併せて示した。
図15では、縦軸が変換効率、横軸がボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tを示す。また、
図15において、第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール100に対する結果をVM-Iとして示した。配線の電気抵抗、セルの長手方向の端の影響を無視した計算モデルでは、第2~第4の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール102,104,106の変換効率は等しい。そこで、
図15において、電圧整合タンデム太陽電池モジュール102,104,106に対する結果をVM-IIとして示した。
【0071】
トップセル及びボトムセルのバンドギャップEgの組み合わせについていずれの場合も、ボトムセル数とトップセル数の比nb/ntが最適値のときに電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率は四端子モジュールにおける変換効率の値にほぼ一致した。また、ボトムセル数とトップセル数の比nb/ntが最適値からずれると電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率は低下するものの、ボトムセル数とトップセル数の比nb/ntの広い範囲で四端子モジュールにおける変換効率に近い値となった。
【0072】
一方、トップセルとボトムセルの電流整合条件に最も近いEg(t)=1.68eV及びEg(b)=1.08eVの組み合わせの場合、二端子モジュールの変換効率は電圧整合タンデム太陽電池モジュールの最大値及び四端子モジュールの値よりも高くなった。しかしながら、それ以外の場合には、電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率の最大値及び四端子モジュールの値の方が二端子モジュールの変換効率より高くなった。
【0073】
また、電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率が最大となるボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tのバンドギャップEg
(t),Eg
(b)に対する依存性を調べた。
図16は、トップセル及びボトムセルのバンドギャップEg
(t),Eg
(b)について、四端子モジュールの変換効率に対する電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率の比を示す。
図16では、縦軸が変換効率(相対値)、横軸がボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tを示す。
図16に示されるように、トップセルのバンドギャップEg
(t)が大きく、ボトムセルのバンドギャップEg
(b)が小さくなるにつれてボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tの最適値は大きくなる傾向を示した。
【0074】
そこで、
図17において、ボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tをトップセルのバンドギャップEg
(t)とボトムセルのバンドギャップEg
(b)を含む関数値0.88×(Eg
(t)-0.68eV)/(Eg
(b)-0.60eV)により規格化した。これより、何れのバンドギャップEg
(t),Eg
(b)の場合であっても、(n
b/n
t)/(0.88×(Eg
(t)-0.68eV)/(Eg
(b)-0.60eV))がおおよそ1のときに電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率が最大となり四端子モジュールの値にほぼ一致した。また、(n
b/n
t)/(0.88×(Eg
(t)-0.68eV)/(Eg
(b)-0.60eV))が0.6以上2.0以下の範囲では、電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率は四端子モジュールの変換効率の80%以上となった。すなわち、電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率は、四端子モジュールの変換効率に近い値を示した。さらに、(n
b/n
t)/(0.88×(Eg
(t)-0.68eV)/(Eg
(b)-0.60eV))が0.8以上1.4以下の範囲では、電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率は四端子モジュールの変換効率の90%以上となった。すなわち、電圧整合タンデム太陽電池モジュールの変換効率は、四端子モジュールの変換効率にさらに近い値を示した。
【0075】
図18は、第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール(VM-I)と第2~第4の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール(VM-II)の変換効率を比較した結果を示す。
図18では、各バンドギャップEgについてボトムセル数とトップセル数の比n
b/n
tを最適化したときの変換効率を比較した。
図18では、縦軸が変換効率、横軸がバンドギャップEgを示す。何れの場合においても、第2~第4の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール(VM-II)の変換効率は第1の実施の形態における電圧整合タンデム太陽電池モジュール(VM-I)の変換効率より高い値となった。
【0076】
[本発明の構成]
[構成1]
複数のトップセルを集積させたトップモジュールと、複数のボトムセルを集積させたボトムモジュールと、を積層し、前記トップモジュールと前記ボトムモジュールとを並列に接続した電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールに用いられる光電変換層のバンドギャップEg(t)は1.5eV以上1.8eV以下であり、
前記ボトムモジュールに用いられる光電変換層のバンドギャップEg(b)は1.0eV以上1.2eV以下であり、
前記トップモジュールを構成する前記トップセルの直列接続数ntと、前記ボトムモジュールを構成する前記ボトムセルの直列接続数nbが、
(nb/nt)/(0.88×(Eg(t)-0.68eV)/(Eg(b)-0.60eV))が0.6以上2.0以下であることを満たすことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
[構成2]
構成1に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
(nb/nt)/(0.88×(Eg(t)-0.68eV)/(Eg(b)-0.60eV))が0.8以上1.4以下であることを満たすことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
[構成3]
構成1又は2に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
光入射側からみて前記トップモジュールと前記ボトムモジュールの大きさが同一であることを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
[構成4]
構成1~3のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールは、2枚の基板の各々に形成された直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを2個並列に接続した構成であり、
前記ボトムモジュールは、2枚の基板の各々に形成された直列接続数nb/2の前記ボトムセルを有するボトムサブモジュールを直列に接続した構成である、
ことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
[構成5]
構成1~3のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールは、直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを1枚の基板に2個形成し、2個の前記トップサブモジュールを並列に接続した構成であり、
前記ボトムモジュールは、直列接続数nbの前記ボトムセルを1枚の基板に形成した構成である、
ことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
[構成6]
構成1~3のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップモジュールは、直列接続数ntの前記トップセルを有するトップサブモジュールを基板に形成した構成であり、
前記ボトムモジュールは、直列接続数nb/2の前記ボトムセルを有するボトムサブモジュールを基板に2個形成し、2個の前記ボトムサブモジュールを直列に接続した構成である、
ことを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
[構成7]
構成1~6のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記トップセルは、有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池であることを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュールである。
[構成8]
構成1~7のいずれか1項に記載の電圧整合タンデム太陽電池モジュールであって、
前記ボトムセルは、Cu(In,Ga)Se2太陽電池又は有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池であることを特徴とする電圧整合タンデム太陽電池モジュール。
【符号の説明】
【0077】
10 基板、12、第1導電層、14 光電変換層、16 第2導電層、18(18a,18b,18c) 間隙、20 基板、22、第3導電層、24 光電変換層、26 第4導電層、28(28a,28b,28c) 間隙、30 導電層、200 トップモジュール、200a,200b トップサブモジュール、202 ボトムモジュール、202a,202b ボトムサブモジュール。