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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058456
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】パルプモールド容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20240418BHJP
   B65D 43/04 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B65D1/00 111
B65D43/04 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165823
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 智之
【テーマコード(参考)】
3E033
3E084
【Fターム(参考)】
3E033AA09
3E033BA10
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA04
3E033DD03
3E033EA02
3E033FA01
3E033GA03
3E084AA05
3E084AA14
3E084AA24
3E084AA26
3E084AA34
3E084AA37
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA03
3E084CC03
3E084CC07
3E084CC08
3E084DA03
3E084DB13
3E084DC03
3E084DC05
3E084DC07
3E084DC08
3E084FC04
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA20
3E084KB10
3E084LA17
(57)【要約】
【課題】内嵌合のパルプモールド容器であって、逆テーパ形状を採用しない場合でも、嵌合強度を維持できるようにする。
【解決手段】有底筐体の容器本体と、容器本体に嵌合する蓋体と、を備えるパルプモールド容器であって、容器本体及び蓋体は、互いに係合する本体側側壁部及び蓋体側側壁部をそれぞれ有し、本体側側壁部は、その係合面を形成する第1樹脂フィルム層を含み、蓋体側側壁部は、その係合面を形成する第2樹脂フィルム層を含み、蓋体側側壁部の係合面は、容器本体の本体側側壁部の係合面に密着し、かつ、着脱可能に内嵌合するように構成され、第1樹脂フィルム層及び第2樹脂フィルム層の硬さは、一方が他方よりも大きくなっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筐体の容器本体と、
前記容器本体に嵌合する蓋体と、を備え、
前記容器本体及び前記蓋体は、互いに係合する本体側側壁部及び蓋体側側壁部をそれぞれ有し、
前記本体側側壁部は、その係合面を形成する第1樹脂フィルム層を含み、
前記蓋体側側壁部は、その係合面を形成する第2樹脂フィルム層を含み、
前記蓋体側側壁部の係合面は、前記容器本体の前記本体側側壁部の係合面に密着し、かつ、着脱可能に内嵌合するように構成され、
前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層の硬さは、一方が他方よりも大きくなっている、パルプモールド容器。
【請求項2】
前記第1樹脂フィルム層は、前記第2樹脂フィルム層の硬さよりも大きくなっている、請求項1に記載のパルプモールド容器。
【請求項3】
前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、または無延伸ポリプロピレンから選択される、請求項1に記載のパルプモールド容器。
【請求項4】
前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層の一方がポリエチレンテレフタレート、他方がポリプロピレンである、請求項3に記載のパルプモールド容器。
【請求項5】
前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリ乳酸のいずれかである、請求項3に記載のパルプモールド容器。
【請求項6】
前記第1樹脂フィルム層及び前記第2樹脂フィルム層は30~50μmの厚みを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のパルプモールド容器。
【請求項7】
前記本体側側壁部はその係合面に網目形状の凹凸を有する、請求項1に記載のパルプモールド容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の収容等に用いられるパルプモールド容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の収容等に用いられる食品用容器では、内容物の液漏れを防ぐ効果が高い嵌合形態として、容器本体の上部開口の側壁部内面に蓋体の嵌合部を密着させる蓋付きの樹脂製内嵌合容器が知られている。
【0003】
蓋付の樹脂製内嵌合容器は、一般的に、容器本体の上部開口部の側壁部内面の嵌合部が逆テーパ形状に形成されると共に、蓋体の嵌合部が容器本体の逆テーパ形状の側壁部の内面に対応するテーパ状に形成される(例えば、特許文献1)。蓋付きの樹脂製内嵌合容器の場合、蓋体の嵌合部が容器本体の側壁部内面に密着し、かつ、深く嵌まり込むため、蓋体が容器本体に外嵌合する外嵌合容器よりも、内容物の液漏れがしにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-127301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、食品用容器においても、環境保護の観点からパルプモールド容器をはじめとする生分解性素材を用いて製造される容器の需要が高まっている。パルプモールド容器は、水に溶解したパルプ線維を、容器と同形に形成された所定の型を用いて成形及び脱水し、その後、乾燥させることにより製造される。この製造の工程において、成形した容器は、乾燥させる前に、該型から取り外す必要がある。しかしながら、容器本体の上部開口の側壁部を逆テーパ形状とした場合には、成形した容器を型から取り外すのが困難である。すなわち、内嵌合のパルプモールド容器は、製造することが難しい。
【0006】
そこで、容器本体の側壁部に逆テーパ形状を採用せずに、例えば、容器本体の側壁部を容器本体の底壁に対して垂直にすることで、成形した容器を型から抜けやすくする必要がある。その一方で、容器本体の側壁部に逆テーパ形状を採用しない場合には、容器本体の側壁部内面の嵌合部に密着させた蓋体の嵌合部の嵌まり込みが弱くなり、容器本体と蓋体との嵌合強度が低下する恐れがある。
【0007】
以上の背景を鑑み、本発明は、内嵌合のパルプモールド容器であって、逆テーパ形状を採用しない場合でも、嵌合強度を維持することができる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施形態によるパルプモールド容器(1)は、有底筐体の容器本体(2)と、前記容器本体(2)に嵌合する蓋体(3)と、を備え、前記容器本体(2)及び前記蓋体(3)は、互いに係合する本体側側壁部(第2側壁部)(7)及び蓋体側側壁部(第4側壁部)(12)をそれぞれ有し、前記本体側側壁部(7)は、その係合面を形成する第1樹脂フィルム層(15)を含み、前記蓋体側側壁部(12)は、その係合面を形成する第2樹脂フィルム層(15)を含み、前記蓋体側側壁部(12)の係合面は、前記容器本体(2)の前記本体側側壁部(7)の係合面に密着し、かつ、着脱可能に内嵌合するように構成され、前記第1樹脂フィルム層(15)及び前記第2樹脂フィルム層(16)の硬さは、一方が他方よりも大きくなっている。
【0009】
この構成によれば、内嵌合のパルプモールド容器(1)において、容器本体(2)と蓋体(3)の係合面に硬さの異なる樹脂フィルムの層を設けたため、密着性を高め、嵌合強度を維持することができる。
【0010】
上記パルプモールド容器(1)において、前記第1樹脂フィルム層(15)は、前記第2樹脂フィルム層(16)の硬さよりも大きくなっていてもよい。
【0011】
この構成によれば、合成樹脂フィルムの硬さの差異により、容器本体(2)と蓋体(3)との嵌合強度をより高くすることができる。
【0012】
上記パルプモールド容器(1)において、前記第1樹脂フィルム層(15)及び前記第2樹脂フィルム層(16)が、PET、PP、PLA、PBS、またはCCPから選択されてもよい。
【0013】
この構成によれば、適切な材料を用いて第1樹脂フィルム層(15)及び第2樹脂フィルム層(16)を製造することができる。
【0014】
上記パルプモールド容器(1)において、前記第1樹脂フィルム層(15)及び前記第2樹脂フィルム層(16)の一方がPET、他方がPPであってもよい。
【0015】
この構成によれば、PETとPPの硬さの差異により、容器本体(2)と蓋体(3)との嵌合強度をより高くすることができる。
【0016】
上記パルプモールド容器(1)において、前記第1樹脂フィルム層(15)及び前記第2樹脂フィルム層(16)が、PETまたはPLAのいずれかであってもよい。
【0017】
この構成によれば、PETまたはPLAの硬さ及び伸縮性により、容器本体(2)及び蓋体(3)の内面の形状が複雑な場合にも、第1樹脂フィルム層(15)及び第2樹脂フィルム層(16)を貼り付けることができる。
【0018】
上記パルプモールド容器(1)において、前記第1樹脂フィルム層(15)及び前記第2樹脂フィルム層(16)は30~50μmの厚みを有していてもよい。
【0019】
この構成によれば、容器本体(2)と蓋体(3)との係合面の形状の変化に応じて、嵌合強度をより高くすることができる。
【0020】
上記のパルプモールド容器(1)において、前記本体側側壁部(7)は係合面に網目形状の凹凸を有していてもよい。
【0021】
この構成によれば、容器本体(2)に形成された網目形状の凹凸により、摩擦力が高まり、嵌合時において、容器本体(2)及び蓋体(3)の嵌合強度がより高くなる。
【発明の効果】
【0022】
この構成によれば、内嵌合のパルプモールド容器(1)において、嵌合強度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係るパルプモールド容器の分解斜視図
図2】本発明の第1実施形態に係る容器本体の断面図
図3】本発明の第1実施形態に係る蓋体の断面図
図4】本発明の第1実施形態に係るパルプモールド容器の断面図
図5】本発明の第1実施形態に係る容器本体の製造工程を示す図
図6】本発明の第1実施形態に係る容器本体の製造工程を示す図
図7】本発明の第2実施形態に係るパルプモールド容器の分解斜視図
図8】本発明の第2実施形態に係る容器本体の断面図
図9】本発明の第2実施形態に係る蓋体の断面図
図10】本発明の第2実施形態に係るパルプモールド容器の断面図
図11】本発明の第2実施形態に係るパルプモールド容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るパルプモールド容器1について、図1図6を参照して説明する。
【0025】
<<第1実施形態>>
本発明のパルプモールド容器1は、米飯、惣菜等の食品を収容するための密閉容器であり、図1に示すように、容器本体2と、容器本体2に内嵌合する蓋体3とを有する。なお、本明細書において、「上方」とは、パルプモールド容器1を水平面上に載置した際の、容器本体2側を指し、「下方」とは蓋体3側を指す。また、以下、内面とは、おおむね容器本体2の内側を向く面を指す。
【0026】
図2に示すように、容器本体2は、有底筐体に形成されており、略長方形の底壁4と、底壁4の周縁部から上方に向けて延びる環状の第1側壁部5と、第1側壁部5の上端部から外方に向けて延びる環状の第1フランジ部6と、第1フランジ部6の外周縁部から上方に向けて延びる環状の第2側壁部(本体側側壁部)7と、第2側壁部7から外方に向けて延び、容器本体2の上方開口を画定する環状の第2フランジ部8とを有する。
【0027】
上述したように、第2フランジ部8は第1フランジ部6よりも上方に位置している。また、第1フランジ部6の外縁と第2フランジ部8内縁との間には第2側壁部7が設けられている。これにより、第1フランジ部6と第2フランジ部8の間には段差が形成されている。
【0028】
図2に示すように、第2側壁部7は、その上端側が上下方向に対して外方に向けて広がるように、約0.5度~1度程度のテーパ角θを有するとよい。本実施形態において、第2側壁部は0.5度のテーパ角θを有する。
【0029】
図3に示すように、蓋体3は、平面視において略長方形の上壁9と、上壁9の周縁部から下方に向けて延びる環状の第3側壁部10と、第3側壁部10の下端部から外方に向けて延びる環状の第3フランジ部11と、第3フランジ部11の外周縁部から上方に向けて延びる環状の第4側壁部(蓋体側側壁部)12と、第4側壁部12の上端部から外方に向けて延びる環状の第4フランジ部13とを有する。
【0030】
上述したように、第3フランジ部11の外縁と第4フランジ部13の内縁との間に第4側壁部12が設けられている。これにより、第3フランジ部11と第4フランジ部13の間には段差が形成されている。
【0031】
第4側壁部12は、その上端側が上下方向に対して外方に向けて広がるように、約0.5度~1度程度のテーパ角θ´を有するとよい。本実施形態において、第4側壁部12は1度のテーパ角θ´を有する。
【0032】
図4に示すように、容器本体2と蓋体3との嵌合構造は、内嵌合構造となっている。この内嵌合構造は、容器本体2の第2側壁部7の係合面と蓋体3の第4側壁部12の係合面との密着、容器本体2の第1フランジ部6の係合面と蓋体3の第3フランジ部11の係合面との密着、及び、容器本体2の第2フランジ部8の係合面と蓋体3の第4フランジ部13の係合面との密着により達成される。容器本体2と蓋体3とが嵌合した状態では、容器本体2の第2側壁部7の係合面と蓋体3の第4側壁部12の係合面とが密着する。これに加えて、第1フランジ部6の係合面が第3フランジ部11の係合面と密着した状態となり、また、第2フランジ部8の係合面が第4フランジ部13の係合面と密着した状態となる。これにより、容器本体2に対する蓋体3の嵌合方向への移動が規制され、それらの嵌合状態が安定して維持される。
【0033】
本発明のパルプモールド容器1の内嵌合構造では、容器本体2の第1フランジ部6と蓋体3の第3フランジ部11の一方または両方がそれぞれ省略されてもよい。第1フランジ部6が省略される場合、容器本体2は、略長方形の底壁4と、底壁4の周縁部から上方に向けて延びる環状の第1側壁部5と、第1側壁部5の上端部から平面状に上方に向けて延びる環状の第2側壁部7と、第2側壁部7から外方に向けて延び、容器本体2の上方開口を画定する環状の第2フランジ部8とを有する。第3フランジ部が省略される場合、蓋体3は、平面視において略長方形の上壁9と、上壁9の周縁部から下方に向けて延びる環状の第3側壁部10と、第3側壁部10の下端部から上方に向けて延びる環状の第4側壁部12と、第4側壁部12の上端部から外方に向けて延びる環状の第4フランジ部13とを有する。第1フランジ部6と第3フランジ部11の一方または両方を有しない場合には、第2側壁部7の係合面と第4側壁部12の係合面との密着、及び、第2フランジ部8の係合面と第4フランジ部13の係合面との密着により内嵌合構造が達成される。
【0034】
同様に、容器本体2の第2フランジ部8と蓋体3の第4フランジ部13の一方または両方がそれぞれ省略されてもよい。第2フランジ部8が省略される場合、容器本体2は、略長方形の底壁4と、底壁4の周縁部から上方に向けて延びる環状の第1側壁部5と、第1側壁部5の上端部から外方に向けて延びる環状の第1フランジ部6と、第1フランジ部6の外周縁部から上方に向けて延びる環状の第2側壁部7とを有する。第4フランジ部13が省略される場合、蓋体3は、略長方形の上壁9と、上壁9の周縁部から下方に向けて延びる環状の第3側壁部10と、第3側壁部10の下端部から外方に向けて延びる環状の第3フランジ部11と、第3フランジ部11の外周縁部から上方に向けて延びる環状の第4側壁部12とを有する。容器本体2の第2フランジ部8と蓋体3の第4フランジ部13の一方または両方を有しない場合には、第2側壁部7の係合面と第4側壁部12の係合面との密着、及び、第1フランジ部6の係合面と第3フランジ部11の係合面との密着により、内嵌合構造が達成される。
【0035】
第2側壁部7と第4側壁部12とは同じ高さ(上下方向幅)を有しているか、第2側壁部7の上縁が第4側壁部12の上縁よりもやや高い位置まで延在しているとよい。その場合、例えば、第2側壁部7の上下方向幅は約6.5mm~7mm、第4側壁部12の上下方向幅は約6~7mmであるとよい。第2側壁部7が第4側壁部12と同じ高さか、第4側壁部12よりもやや高い位置まで延在することにより、蓋体3が容器本体2に嵌合したときに、第1フランジ部6の係合面と第3フランジ部11との係合面との密着、及び第2フランジ部8の係合面と第4フランジ部13の係合面との密着が確実に行われるため、嵌合状態が安定して維持される。
【0036】
蓋体3の第4フランジ部13の外縁には、蓋体3の開蓋操作を容易にするための少なくとも1つの舌片14が設けられている。舌片14は、平面視において略矩形の外形を有する蓋体3の少なくとも1つの角部に設けられる。舌片14は、第4フランジ部13の周縁部から外方に向けて延びている。舌片14は、容器本体2と蓋体3とが嵌合されているとき、平面視において容器本体2の第2フランジ部8の外周縁を超えて外方に延びている。使用者は、容器本体2と蓋体3とが嵌合されているとき、舌片14を2本の指で掴んで蓋体3を上方に持ち上げることで、容器本体2から蓋体3を容易に取り外すことができる。
【0037】
容器本体2の内面には、細かい網目形状の凹凸26が形成されている。この網目形状の凹凸26は、図6に示すように、パルプモールド容器1を抄造する時に、パルプモールド容器1を形成するベース部材24が、後述する所定の型17に取り付けられた金網18に押し付けられることにより、金網18に接触しているベース部材24の一方の面に形成されるものである。
【0038】
本発明のパルプモールド容器1は、容器本体2の内面に網目形状の凹凸26を有する一方で、蓋体3の内面には網目形状の凹凸26を有しない。すなわち、容器本体2の第2側壁部7の係合面、第1フランジ部6の係合面、及び第2フランジ部8の係合面には網目形状の凹凸26が形成されているが、蓋体3の第4側壁部12の係合面、第3フランジ部11の係合面、及び第4フランジ部13の係合面には網目形状の凹凸26が形成されていない。容器本体2と蓋体3とが嵌合された状態において、容器本体2の係合面に形成された網目形状の凹凸26が、蓋体3の網目形状の凹凸26が形成されていない係合面に密着することによって摩擦力が高まり、容器本体2及び蓋体3の嵌合強度をより高くすることができる。
【0039】
容器本体2の内面は第1樹脂フィルム層15を有し、蓋体3の内面は、第2樹脂フィルム層16を有する。第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16は、パルプモールド容器1を形成するパルプ線維により構成されるベース部材24の上に合成樹脂フィルムを貼り付けられている。第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16は、シート状に形成された合成樹脂フィルムである。合成樹脂フィルムの材質は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PLA(ポリ乳酸)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、またはCCP(無延伸ポリプロピレン)から選択されるとよい。本発明で用いる合成樹脂フィルムの材質はこれらに限定されず、パルプ線維により構成される部材に貼り付け可能なシート状の合成樹脂フィルムであればよい。
【0040】
ベース部材24の上から第1樹脂フィルム層15を貼り付けたとき、ベース部材24に形成された網目模様の形状の凹凸26が、第1樹脂フィルム層15にも反映されるようになっている。したがって、第1樹脂フィルム層15を有する容器本体2の内面は、網目模様の形状の凹凸26を有する。
【0041】
第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16の厚みは約30μm~50μmであるとよい。第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16の厚みを容器本体2の内面及び蓋体3の内面の形状の変化に応じて適宜変更することより、容器本体2及び蓋体3の嵌合強度をより高くすることができる。本発明のパルプモールド容器1においては、第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16は、それぞれ50μmの厚みを有する。
【0042】
容器本体2のベース部材24の内面及び蓋体3のベース部材24の内面の形状が複雑である場合には、第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16の材質は、PETまたはPLAであるとよりよい。PETまたはPLAは、柔らかすぎず、伸縮性に優れている。そのため、容器本体2の内面及び蓋体3の内面の形状が複雑な場合であっても、合成樹脂フィルムの貼り付け時に余計なしわなどの形成を防止することができる。その結果、PETまたはPLAを用いることにより、第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16をベース部材24の上から均質に貼り付けることができる。
【0043】
第1樹脂フィルム層15と第2樹脂フィルム層16とで同じ材料が用いられてもよいが、硬さの異なる材料がそれぞれの層に用いられてもよい。例えば、第1樹脂フィルム層15と第2樹脂フィルム層16の一方の層の硬さが、他方の層の硬さよりも大きくてもよい。このように、容器本体2の第1樹脂フィルム層15と蓋体3の第2樹脂フィルム層16に硬さの差を設けることにより、容器本体2と蓋体3との嵌合強度をより高くすることができる。
【0044】
本発明のパルプモールド容器1においては、第1樹脂フィルム層15の硬さは第2樹脂フィルム層16の硬さよりも大きくなっている。ここでいう「硬さ」とは、JIS Z2255に規定される超微小硬さを指す。この超微小硬さは、三角錐型のダイヤモンド圧子を用いて、目的の荷重に付加したときの試験荷重と圧子の押し込み深さから硬さを算出するものである。具体的には、第1樹脂フィルム層15はPET、第2樹脂フィルム層16はPETよりも軟質な素材であるPPの合成樹脂フィルムが用いられている。上述したように、容器本体2の内面には網目形状の凹凸26が形成されている。そのため、容器本体2と蓋体3が嵌合するときには、PETからなる第1樹脂フィルム層15を有する容器本体2の内面の網目形状の凹凸26に、PETよりも軟質なPPからなる第2樹脂フィルム層16を有する蓋体3の内面が嵌まり込むように密着する。このように、容器本体2または蓋体3の内面のいずれか一方の内面に網目形状の凹凸26が形成されている場合には、他方の内面により軟質な合成樹脂フィルムを貼り付けることによって嵌合時の密着性が高まるため、容器本体2と蓋体3との嵌合強度をさらに高くすることができる。
【0045】
本発明の容器本体2及び蓋体3は、ベース部材24を溶解したパルプスラリを所定の型17を用いて抄き取った後、脱水、乾燥及び成形を行い、さらに、容器本体2及び蓋体3の内面に合成樹脂フィルムを貼り付けることにより製造される。以下において、その製造工程を説明する。
【0046】
型17は、上型19と下型20とから構成される。図5及び6では、容器本体2の製造に用いられる上型19及び下型20を示している。図5及び6においては、下型20は下部において固定され、上型19は上下方向に移動可能に設けられている。
【0047】
下型20は、上方に向けて開口し、容器本体2の外形と同形状の内周面21Aを含む凹部21を有する。上型19は、下方に向けて突出し、容器本体2の外形と同形状の外周面22Aを含む凸部22を有する。上型19の凸部22の外周面22Aは、下型20の凹部21の内周面21Aに上下方向に摺動可能に嵌合する。
【0048】
下型20には、凹部21の内周面21Aを貫通し、型外に至る複数の脱水路23が設けられている。脱水路23は、下型30の下方に設けられた所定の排水通路(不図示)に接続されている。上型19の上方には、加熱装置(不図示)が設けられている。上型19の凸部22の外周面22Aには、容器本体2の外形と同形状に形成された金網18が取り付けられている。
【0049】
次に、本願の容器本体2の成形方法を説明する。まず、図5に示すように、パルプスラリを上型19の金網18の外面上から吸引し、ベース部材24を金網18の上に抄き取る。次いで、図6に示すように、下型20の凹部21に向けて上型19の凸部22を上方から下降させ、上型19の凸部22と下型20の凹部21とが抄き取られたベース部材24を挟み込む。上型19の凸部22の外周面22Aと下型20の凹部21の内周面21Aとが係合することにより、抄き取られたベース部材24に対する加圧を行う。また、同時に加熱装置により、加熱を行う。これにより、金網18上に抄き取られたベース部材24の脱水及び乾燥を行う。金網18上に抄き取られたベース部材24から除去された水は、脱水路23を通じて型外の排水路(不図示)へ排出される。また、この工程において、上型19及び下型20の押圧でベース部材24のプレス成形を行うことにより、容器本体2が成形される。なお、本実施形態においては、下型20のみに脱水路23を設けているが、適宜上型19に脱水路を設けてもよい。
【0050】
上述したように、金網18は、上型19の凸部22の外周面22Aに取り付けられている。金網18は、微細な金属線を所定の間隔で所定の方向に織って形成される織金網である。本実施形態の金網18は縦と横との金属線が一本ずつ相互に交わる平織により形成されている。他にも、金網18は、綾織、杉綾織、平畳織、及び綾畳織などにより形成されていてもよい。上型19及び下型20の押圧によるプレス成形を行う工程において、抄き取られたベース部材24の金網18側の面、すなわち容器本体2の内面に、上述した織金網の網目形状の凹凸26が転写される。
【0051】
蓋体3についても、蓋体3の外形と同形状に形成された凸部22を有する上型及び凹部21を有する下型を用いることにより、容器本体2と同様の工程で成形される。なお、本願のパルプモールド容器1では、蓋体3の外面が上下いずれか一方の型に取り付けられた金網18側の面を向くようにして成形される。そのため、蓋体3の外面に金網18の網目形状の凹凸26が転写される一方で、成形された蓋体3の内面には、金網18の網目形状の凹凸26が転写されないようになっている。
【0052】
容器本体2が成形された後、容器本体2を形成するベース部材24に合成樹脂フィルムが貼り付けられている第1樹脂フィルム層15が形成される。以下に、第1樹脂フィルム層15が形成される工程を簡単に説明する。
【0053】
まず、容器本体2と同形に形成された上型及び下型の間に、シート状に形成された合成樹脂フィルムを配置する。次いで、合成樹脂フィルムの下面に、接着剤を塗布する。接着剤は公知のものであってよい。次いで、加熱した合成樹脂フィルムの下方に容器本体2を、容器本体2の開口部が上方を向くように配置する。次いで、下型に向けて上型を上方から下降させ、上型と下型とで容器本体2及び合成樹脂フィルムを挟み込むことによって、合成樹脂フィルムと容器本体2とを圧接する。これにより、容器本体2の開口部側の面にベース部材24の上から合成樹脂フィルムが貼り付けられる。最後に、裁断機(不図示)により、容器本体2からはみ出した余分な合成樹脂フィルムを裁断する。これにより、容器本体2の内面に第1樹脂フィルム層15が形成される。
【0054】
蓋体3についても、蓋体3の外形と同形状に形成された上型及び下型を用いて、容器本体2と同様の工程によって、蓋体3の内面に第2樹脂フィルム層16が形成される。なお、上述したように、第1樹脂フィルム層15及び第2樹脂フィルム層16には、異なる材質の合成樹脂フィルムが用いられてもよい。
【0055】
上述した容器本体2の成形に用いる型17と、第1樹脂フィルム層15を形成するために用いる型は、同じものであってもよい。同様に、蓋体3の成形に用いる型と、第2樹脂フィルム層16を形成するために用いる型は、同じものであってもよい。このように、容器本体2の成形と第1樹脂フィルム層15の形成、及び、蓋体3の成形と第2樹脂フィルム層16の形成にそれぞれ同じ型を用いることにより、本願の容器本体2及び蓋体3の製造コストを低減することができる。
【0056】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るパルプモールド容器101は、第1実施形態のパルプモールド容器1と比べて、容器本体2及び蓋体3の形状が異なる。以下の説明では、相違する構成についてのみ説明し、第1実施形態に係るパルプモールド容器1と同様の構成については、同一の符号を付し、上記の記載を援用して説明を省略する。
【0057】
図7に示すように、容器本体102は、第1実施形態に係るパルプモールド容器1と同様に、有底筐体に形成されており、平面視において略長方形の底壁104と、底壁104の周縁部から上方に向けて開口して延びる環状の第1側壁部105と、第1側壁部105の上端部から外方に向けて延びる環状の第1フランジ部106と、第1フランジ部106の外周縁部から上方に向けて延びる環状の第2側壁部107と、第2側壁部107から外方に向けて延び、容器本体102の上方開口を画定する環状の第2フランジ部108とを有する。容器本体102の内面には、細かい網目形状の凹凸126が形成されている。
【0058】
第2実施形態に係る容器本体102は、底壁104に、容器本体102の内部を複数の区画に仕切る仕切り部131を有する。仕切り部131は、容器本体102の底壁104の一部が上方に向けて隆起することで形成されている。仕切り部131は、底壁104に対して垂直かつ上方に延び、第1側壁部105に対して平行または垂直な面を有する複数の仕切り側壁部132と、複数の仕切り側壁部132の上端部を面で接続する仕切り天面部133を有する。本実施形態の容器本体102では、5つの仕切り側壁部132と、1つの仕切り天面部133を有する。これにより、容器本体102の内部が計5つの区画に仕切られている。容器本体102の内部が複数の区画に仕切られていることにより、複数種類の食材を、互いに混ざり合うことなく、容器本体102に収容することができる。
【0059】
図8に示すように、仕切り側壁部132は、容器本体102の上方開口を画定する周縁部に位置する部分よりも、容器本体102の中心部に位置する部分の方がやや高くなっている。具体的には、容器本体2の上方開口を画定する周縁部において、仕切り側壁部132は第1フランジ部106と同じ高さに形成されているが、容器本体102の中心部に向かうにつれて、仕切り側壁部132の上端部の高さは第1フランジ部106よりも高くなっている。本実施形態の容器本体102では、容器本体102の中心部において、仕切り側壁部132の上端部、すなわち、仕切り天面部133は、第2フランジ部108よりも高くなっている。仕切り側壁部132の上端部が第2フランジ部108よりも高くなっていることで、蓋体103が上方から押圧されて変形してしまった場合にも、蓋体103の容器内部方向への移動が規制される。これにより、パルプモールド容器101内の内容物が潰れることを防止することができる。
【0060】
容器本体102は、第2フランジ部108から外方に向かって延びる複数の舌片134を有する。舌片134は、平面視において略矩形の外形を有する容器本体102の少なくとも1つの角部に設けられる。舌片134は、第2フランジ部108の外周縁部から外方に向かって延びている。本実施形態において容器本体102の舌片134は、第2フランジ部108の外周縁部からそれぞれ容器本体102の長辺に沿って外方に向けて延び、外周縁部が円弧状に形成されている。
【0061】
図9及び10に示すように、蓋体103は、第1実施形態と同様に、平面視において略長方形の上壁109と、上壁109の周縁部から下方に向けて延びる環状の第3側壁部110と、第3側壁部110の下端部から外方に向けて延びる環状の第3フランジ部111と、第3フランジ部111の外周縁部から上方に向けて延びる環状の第4側壁部112と、第4側壁部112の上端部から外方に向けて延びる環状の第4フランジ部113とを有する。
【0062】
蓋体103は、第4フランジ部113から外方に向かって延びる複数の舌片114を有する。舌片114は、平面視において略矩形の外形を有する蓋体103の少なくとも1つの角部に設けられる。舌片114は、第4フランジ部113の外周縁部から外方に向かって延びている。本実施形態において蓋体103の舌片114は、第4フランジ部113の外周縁部からそれぞれ蓋体103の短辺に沿って外方に向けて延び、外周縁部が円弧状に形成されている。
【0063】
上述したように、容器本体102の舌片134が容器本体102の長辺に沿って延び、蓋体103の舌片114が蓋体103の短辺に沿って延びている。そのため、図11に示すように、容器本体102と蓋体103とを嵌合させたときに、平面視において容器本体102の舌片134と蓋体103の舌片114とは互いに重ならず、ずれて配置される。これにより、使用者は、嵌合された容器本体102の舌片134を一方の手の指で掴み、蓋体103の舌片114を他方の手の指で掴むことが容易となる。使用者は、このようにして掴んだ蓋体103の舌片114を上方に持ち上げることにより、容器本体102から蓋体103を容易に取り外すことができる。
【0064】
また、実施形態2に係る容器本体102及び蓋体103の製造方法は、第1実施形態と同様である。
【0065】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :パルプモールド容器
2 :容器本体
3 :蓋体
4 :底壁
5 :第1側壁部
6 :第1フランジ部
7 :第2側壁部(本体側側壁部)
8 :第2フランジ部
9 :上壁
10:第3側壁部
11:第3フランジ部
12:第4側壁部(蓋体側側壁部)
13:第4フランジ部
15:第1樹脂フィルム層
16:第2樹脂フィルム層
26:凹凸
図1
図2
図3
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図5
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図11