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  • 特開-非焼成鉛筆芯 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058462
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】非焼成鉛筆芯
(51)【国際特許分類】
   C09D 13/00 20060101AFI20240418BHJP
   B43K 19/02 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C09D13/00
B43K19/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165836
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 広幸
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AB12
4J039AD06
4J039BA23
4J039BA30
4J039BA35
4J039BA39
4J039EA15
4J039EA17
4J039EA35
4J039GA31
(57)【要約】
【課題】耐光性と着色力とを備えつつ、時間の経過によっても描線の色調が変化しにくい非焼成鉛筆芯。
【解決手段】顔料を含む着色剤と、ワックスと、体質材と、水溶性樹脂と、を含み、前記顔料は、C.I.ピグメントイエロー74(PY-74)とC.I.ピグメントレッド254(PR-254)との両方を含み、前記顔料中に占める、前記PY-74と前記PR-254との合計の割合が50質量%以上である、非焼成鉛筆芯。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含む着色剤と、ワックスと、体質材と、水溶性樹脂と、を含み、
前記顔料は、C.I.ピグメントイエロー74(PY-74)とC.I.ピグメントレッド254(PR-254)との両方を含み、
前記顔料中に占める、前記PY-74と前記PR-254との合計の割合が50質量%以上である、非焼成鉛筆芯。
【請求項2】
前記顔料中におけるC.I.ピグメントレッド系の顔料中において、前記PR-254の占める割合が50質量%以上である、請求項1に記載の非焼成鉛筆芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非焼成鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、色鉛筆芯のような非焼成鉛筆芯では、特許文献1記載の技術のように、滑らかな書き味と優れた着色性を有しつつ、機械的強度も備えることを目標としていた。一方、非焼成鉛筆芯には着色剤として多くの場合顔料が含まれる。特許文献2には、着色組成物の保存安定性が良好な不溶性アゾ染料としての、C.I.ピグメントイエロー74が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-45043号公報
【特許文献2】WO 2013/099730 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施態様は、耐光性と着色力とを備えつつ、時間の経過によっても描線の色調が変化しにくい非焼成鉛筆芯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施態様の非焼成鉛筆芯は、顔料を含む着色剤と、ワックスと、体質材と、水溶性樹脂と、を含み、前記顔料は、C.I.ピグメントイエロー74(PY-74)とC.I.ピグメントレッド254(PR-254)との両方を含み、前記顔料中に占める、前記PY-74と前記PR-254との合計の割合が50質量%以上である。
【0006】
ここで、前記顔料中におけるC.I.ピグメントレッド系の顔料中において、前記PR-254の占める割合が50質量%以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本願の実施態様は、上記のように構成されているので、耐光性と着色力とを備えつつ、時間の経過によっても描線の色調が変化しにくい非焼成鉛筆芯を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の非焼成鉛筆芯の外観を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の実施形態の非焼成鉛筆芯は、顔料を含む着色剤と、ワックスと、体質材と、水溶性樹脂と、を含み、顔料は、C.I.ピグメントイエロー74(PY-74)とC.I.ピグメントレッド254(PR-254)との両方を含み、顔料中に占める、PY-74とPR-254との合計の割合が50質量%以上である。
【0010】
顔料としては、上述のように、PY-74及びPR-254の両方が含まれる。PY-74とPR-254との両方を着色剤として含有する非焼成鉛筆芯は、耐光性及び着色力に優れるとともに、経時的な変色を被りにくいという性質(以下、「耐変色性」と称する。)を有する。
【0011】
顔料としては、PY-74及びPR-254の両方のみが使用されていてもよいが、顔料中に占めるPY-74及びPR-254の両方の合計の割合が50質量%以上であれば、これら以外の顔料、たとえば、C.I.ピグメントイエロー1(PY-1)、C.I.ピグメントイエロー154(PY-154)、C.I.ピグメントレッド170(PR-170)、C.I.ピグメントレッド48:2(PR-48:2)、C.I.ピグメントグリーン7(PG-7)、C.I.ピグメントブルー15(PB-15)及びC.I.ピグメントレッド122(PR-122)のうちの1つ又は2以上の混合物が含有されていてもよい。
【0012】
PR-254以外のC.I.ピグメントレッド系の顔料(たとえば、PR-170、PR-48:2、PR-122)を顔料に添加する場合、耐変色性の観点から、C.I.ピグメントレッド系の顔料中において、PR-254の占める割合を50質量%以上とすることが望ましい。
【0013】
上記の顔料の他にも、PY-74及びPR-254以外の顔料として、一般に色鉛筆の着色に用いられる顔料、たとえば、黒鉛、酸化チタン、鉄黒、カーボンブラック、紺青、群青、青色1号、弁柄、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス及び雲母チタン並びにジスアゾイエローAAA及びピラゾロンオレンジ等のアゾ系有機顔料、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン等のシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド等の高級有機顔料、ファナルカラー等の染付け顔料並びに蛍光顔料等が含有されていてもよい。
【0014】
また、着色剤として、上述の顔料に加えて、青色2号、青色404号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、DPPレッド、黄色4号、黄色5号及び緑色3号等の染料等のうちの1つ又は2以上の混合物が含有されていてもよい。
【0015】
ワックスとは、非焼成鉛筆芯の構成成分のうち一般的にワックスとして分類されるものをいう。具体的には、ロジン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ウルシロウ、ミツロウ、モクロウ、モンタンワックス、硬化ヒマシ油、パーム硬化油、グリセリン脂肪酸エステル(たとえば、ステアリン酸グリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が本実施形態におけるワックスとして使用可能である。
【0016】
体質材とは、非焼成鉛筆芯の強度向上、筆記性向上に寄与する成分である。具体的には、タルク、カオリン、マイカ、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカーなどが本実施形態における体質材として使用可能である。
【0017】
水溶性樹脂は、結合剤として用いられるものであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシセルロースアンモニウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性有機高分子を用いることができる。
【0018】
上記の他にも、目的に応じて種々の添加剤を用いてもよい。たとえば、強度を向上させるために、添加剤としてセルロースファイバーを、上記の各成分とともに非焼成鉛筆芯の成分としてもよい。
【0019】
本実施形態の非焼成鉛筆芯は、たとえば、下記の製造方法により製造することができる。すなわち、着色剤と、ワックスと、体質材と、水溶性樹脂と、必要によりその他の添加剤とを混合したものに同質量の水を加え、ニーダーで混合、分散させた後、二本ロールで混練しながら水分を調製する。調製により得られた混合物をペレット化して単軸スクリュー型押出機で所望の太さの鉛筆芯の形状に押出成形する。そして、成形された芯を焼成せずに乾燥して水分を除去することで、図1に示すような、略円筒形状の芯体11を有する非焼成鉛筆芯10が得られる。
【0020】
上記のように製造される非焼成鉛筆芯によって筆記された描線は、耐光性と着色力とを備えつつ、時間の経過によっても描線の色調が変化しにくい。
【実施例0021】
(1)橙色系の非焼成鉛筆芯
(1-1)原材料組成
C.I.ピグメントイエロー系の顔料及びC.I.ピグメントレッド系の顔料のみを着色剤として含有することで、橙色系の色調を呈する非焼成鉛筆芯について、耐光性、着色力及び耐変色性を検証した。なお、以下で説明する実施例1~3及び比較例1及び2の原材料組成は、下記表1のとおりとした。
【0022】
【表1】
【0023】
なお、上記表1中の、ステアリン酸グリセリドはポエムV-200(理研ビタミン、融点61℃)を、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩はF10MC(日本製紙)を、タルクはハイミクロン(竹原化学工業)を、それぞれ使用した。また、ロジンの軟化点は76℃であった。
【0024】
(1-2)顔料組成
実施例1~3及び比較例1及び2における、上記表1中の顔料組成の詳細を、下記表2に示す。下記表2中の顔料は、いずれもDCL製である。
【0025】
【表2】
【0026】
(1-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例1~3及び比較例1及び2の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0027】
上記実施例1~3及び比較例1及び2の非焼成鉛筆芯は、いずれもC.I.ピグメントイエロー系の顔料とC.I.ピグメントレッド系の顔料とを含有しており、いずれも橙色の発色を呈した。実施例1~3については、PY-74とPR-254との比率により、実施例1は赤みの勝った橙色を呈し、実施例3は黄色みの勝った橙色を呈し、実施例2はこれらの中間的な色彩の橙色を呈した。また、実施例1~3はPY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計は100質量%と、50質量%以上であった。一方、比較例1及び2については、PY-74及びPR-254の両方とも含まないか(比較例1)、いずれか一方(具体的には、PY-74)のみを含むものであり(比較例2)、PY-74及びPR-254の両方を含む非焼成鉛筆芯ではなかった。
【0028】
(1-4)評価方法
実施例1~3及び比較例1及び2の非焼成鉛筆芯につき、耐光性及び耐変色性を評価した。その詳細は以下のとおりである。
【0029】
(1-4-1)描線
評価対象となる描線は、JIS S 6006:2020の8.9(a)記載の方法によって作製した。具体的には、図画用紙(坪量78.3g/m~205g/m、白色度75%以上)に、各非焼成鉛筆芯を手塗りで、左右方向及び上下方向に反復して、平滑なガラス面を下敷きとした紙面を均一に塗り潰すようにして作製した。
【0030】
(1-4-2)耐光性
耐光性については、以下のとおりに評価した。まず、非焼成鉛筆芯によって、上記の通り描かれた描線について、JIS L 0841:2021、7―3―c、第三露光法に準じて堅牢度を確認し、目視にて変色なしを「A」、若干変色が見られたものを「B」、大きく変色したものを「C」と評価した。
【0031】
(1-4-3)耐変色性
耐変色性については、以下のとおりに評価した。まず、製造直後の非焼成鉛筆芯によって、上記の通り描かれた描線について、カラーメーター(SC-P、スガ試験機株式会社)を用いてL*a*b*値を測定した。次いで、この描線が描かれた試験紙を温度23℃及び湿度65%の環境下で、暗所で1週間保管したのち、同様にL*a*b*値を測定した。そして、保管前後のL*a*b*値から算出されたΔE値について、4未満であれば評価A、4以上であれば評価Bとした。換言すると、この耐変色性の項目は、描線を描いた後の時間経過による変色のしにくさを評価している。
【0032】
(1-5)評価結果
実施例1~3及び比較例1及び2の非焼成鉛筆芯についての、耐光性及び耐変色性の評価結果を、下記表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
上記表3に示すように、実施例1~3については、いずれの評価項目もAと優れた結果を示した。これに対し、比較例1及び2の非焼成鉛筆芯は、いずれかの評価項目がB又はCと評価が劣ることとなった。
【0035】
以上より、橙色系の非焼成鉛筆芯においては、PY-74及びPR-254の両方を顔料として含有し、かつ、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、耐光性及び耐変色性が向上することが分かった。
【0036】
(2)燈色系以外の非焼成鉛筆芯
(2-1)原材料組成
C.I.ピグメントイエロー系の顔料及びC.I.ピグメントレッド系の顔料に加えて他の色彩系統の顔料を着色剤として含有することで、橙色系以外の色調を呈する非焼成鉛筆芯について、耐光性、着色力及び耐変色性を検証した。なお、以下で説明する実施例4~6及び比較例3の原材料組成は、前記表1のとおりとした。
【0037】
(2-2)顔料組成
実施例4~6及び比較例3における、前記表1中の顔料組成の詳細を、下記表4に示す。下記表4中の顔料は、いずれもDCL製である。
【0038】
【表4】
【0039】
(2-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例4~6及び比較例3の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0040】
上記実施例4~6及び比較例3の非焼成鉛筆芯は、いずれもC.I.ピグメントイエロー系の顔料及びC.I.ピグメントレッド系の顔料に加えて他の色彩系統の顔料を含有しており、いずれも橙色以外の発色を呈した。すなわち、実施例4及び比較例3はPG-7により緑色を呈し、実施例5はPB-15により水色を呈し、実施例6はPR-122により赤紫色を呈した。また、実施例4~6はPY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも50質量%以上であった。一方、比較例3については、PY-74のみを含むものであり、PY-74及びPR-254の両方を含む非焼成鉛筆芯ではなかった。
【0041】
(2-4)評価方法
実施例4~6及び比較例3の非焼成鉛筆芯につき、耐光性及び耐変色性を評価した。その詳細は前記(1-4)のとおりである。
【0042】
(2-5)評価結果
実施例4~6及び比較例3の非焼成鉛筆芯についての、耐光性及び耐変色性の評価結果を、下記表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
上記表5に示すように、実施例4~6については、いずれの評価項目もAと優れた結果を示した。これに対し、比較例3の非焼成鉛筆芯は、耐変色性がB又はCと評価が劣ることとなった。
【0045】
以上より、橙色系以外の非焼成鉛筆芯においても、PY-74及びPR-254の両方を顔料として含有し、かつ、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、耐光性、着色性及び耐変色性が向上することが分かった。
【0046】
(3)色が濃い場合
(3-1)原材料組成
顔料の含有量が比較的多く芯の色が濃い橙色系の非焼成鉛筆芯について、色調の変化を計測した。なお、以下で説明する実施例7~11及び比較例4~8の原材料組成は、前記表1のとおりとした。
【0047】
(3-2)顔料組成
実施例7~11及び比較例4~8における、前記表1中の顔料組成の詳細を、下記表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
(3-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例7~11及び比較例4~8の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0050】
実施例7~11はPY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも100質量%と、50質量%以上であった。一方、比較例4~8については、実施例7~11のPR-254を同じ含有量でPR-170に置換したものとした。これにより、比較例4~8は、PY-74のみを含む非焼成鉛筆芯となった。
【0051】
(3-4)色彩測定方法
実施例7~11及び比較例4~8の非焼成鉛筆芯につき、耐変色性を評価した。すなわち、製造直後の非焼成鉛筆芯によって、上記の通り描かれた描線について、カラーメーター(SC-P、スガ試験機株式会社)を用いてL*a*b*値及びL*C*H*値を測定した。次いで、この描線が描かれた試験紙を温度23℃及び湿度65%の環境下で、暗所で1週間保管したのち、同様にL*a*b*値及びL*C*H*値を測定した。そして、保管前後のL*a*b*値からΔE値を算出し、保管前後のL*C*H*値からΔH値を算出した。
【0052】
(3-5)結果
実施例7~11及び比較例4~8の非焼成鉛筆芯についての色彩測定結果を、下記表7に示す。なお、下記表中のL*値、a*値、b*値、C*値及びH*値については、保管前に測定した値のみを示す。
【0053】
【表7】
【0054】
上記表7に示すように、いずれの実施例についても、いずれの比較例よりもΔE値及びΔH値が低いという結果となった。したがって、色の濃い燈色系の非焼成鉛筆芯において、PY-74及びPY-254の両方を含有し、かつ、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、経時的な変色を被りにくくなることが分かった。
【0055】
(4)色が中等度の場合
(4-1)原材料組成
顔料の含有量を前記(3)の1/4とした、芯の色が中等度の濃さの橙色系の非焼成鉛筆芯について、色調の変化を計測した。なお、以下で説明する実施例12~16及び比較例13~17の原材料組成においては、前記表1の顔料含有量が2.5質量%となったことに伴い、タルクの含有量を7.5質量%加算された58.5質量%とした。
【0056】
(4-2)顔料組成
実施例12~16及び比較例9~13における顔料組成の詳細を、下記表8に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
(4-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例12~16及び比較例9~13の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0059】
実施例12~16はPY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも100質量%と、50質量%以上であった。一方、比較例9~13については、実施例12~16のPR-254を同じ含有量でPR-170に置換したものとした。これにより、比較例9~13は、PY-74のみを含む非焼成鉛筆芯となった。
【0060】
(4-4)色彩測定方法及び結果
実施例12~16及び比較例9~13の非焼成鉛筆芯につき、前記(3-4)と同様に耐変色性を評価した。その結果を下記表9に示す。なお、下記表中のL*値、a*値、b*値、C*値及びH*値については、保管前に測定した値のみを示す。
【0061】
【表9】
【0062】
上記表9に示すように、いずれの実施例についても、いずれの比較例よりもΔE値及びΔH値が低いという結果となった。したがって、色の濃い燈色系の非焼成鉛筆芯において、PY-74及びPY-254の両方を含有し、かつ、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、経時的な変色を被りにくくなることが分かった。
【0063】
(5)色が薄い場合
(5-1)原材料組成
顔料の含有量を前記(3)の1/20とした、芯の色が薄い橙色系の非焼成鉛筆芯について、色調の変化を計測した。なお、以下で説明する実施例17~21及び比較例18~22の原材料組成においては、前記表1の顔料含有量が0.5質量%となったことに伴い、タルクの含有量を9.5質量%加算された60.5質量%とした。
【0064】
(5-2)顔料組成
実施例17~21及び比較例14~18における顔料組成の詳細を、下記表10に示す。
【0065】
【表10】
【0066】
(5-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例17~21及び比較例14~18の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0067】
実施例17~21はPY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも100質量%と、50質量%以上であった。一方、比較例14~18については、実施例17~21のPR-254を同じ含有量でPR-170に置換したものとした。これにより、比較例14~18は、PY-74のみを含む非焼成鉛筆芯となった。
【0068】
(5-4)色彩測定方法及び結果
実施例17~21及び比較例14~18の非焼成鉛筆芯につき、前記(3-4)と同様に耐変色性を評価した。その結果を下記表11に示す。なお、下記表中のL*値、a*値、b*値、C*値及びH*値については、保管前に測定した値のみを示す。
【0069】
【表11】
【0070】
上記表11に示すように、いずれの実施例についても、いずれの比較例よりもΔE値及びΔH値が低いという結果となった。したがって、色の濃い燈色系の非焼成鉛筆芯において、PY-74及びPY-254の両方を含有し、かつ、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、経時的な変色を被りにくくなることが分かった。
【0071】
(6)明度が低い場合
(6-1)原材料組成
C.I.ピグメントイエロー系の顔料及びC.I.ピグメントレッド系の顔料に加えて、他の色彩系統の顔料を少量、着色剤として含有することで、明度を低くした橙色系の非焼成鉛筆芯について、色調の変化を計測した。なお、以下で説明する実施例22~24及び比較例23~25の原材料組成においては、前記表1の顔料含有量が4.5質量%となったことに伴い、タルクの含有量を5.5質量%加算された56.5質量%とした。
【0072】
(6-2)顔料組成
実施例22~24及び比較例19~21における顔料組成の詳細を、下記表12に示す。
【0073】
【表12】
【0074】
(6-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例22~24及び比較例19~21の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0075】
実施例22~24はPY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも88.9質量%と、50質量%以上であった。一方、比較例19~21については、実施例22~24のPR-254を同じ含有量でPR-170に置換したものとした。これにより、比較例19~21は、PY-74のみを含む非焼成鉛筆芯となった。
【0076】
(6-4)色彩測定方法及び結果
実施例22~24及び比較例19~21の非焼成鉛筆芯につき、前記(3-4)と同様に耐変色性を評価した。その結果を下記表13に示す。なお、下記表中のL*値、a*値、b*値、C*値及びH*値については、保管前に測定した値のみを示す。
【0077】
【表13】
【0078】
上記表13に示すように、いずれの実施例についても、いずれの比較例よりもΔE値及びΔH値が低いという結果となった。したがって、明度の低い燈色系の非焼成鉛筆芯において、PY-74及びPY-254の両方を含有し、かつ、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、経時的な変色を被りにくくなることが分かった。
【0079】
(7)PR-254含有量の検証
(7-1)原材料組成
C.I.ピグメントレッド系の顔料に占めるPR-254含有量の効果について、以下の通り色調の変化の計測で検証した。なお、以下で説明する実施例25~27並びに比較例22及び23の原材料組成は、前記表1のとおりとした。
【0080】
(7-2)顔料組成
実施例25~27並びに比較例22及び23における顔料組成の詳細を、下記表14に示す。
【0081】
【表14】
【0082】
(7-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例25~27並びに比較例22及び23の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0083】
実施例25~27は、赤色顔料中のPR-254の含有量はいずれも50質量%以上であった。一方、比較例22及び23は、赤色顔料中のPR-254の含有量はいずれも50質量%未満であった。
【0084】
(7-4)色彩測定方法及び結果
実施例25~27並びに比較例22及び23の非焼成鉛筆芯につき、前記(3-4)と同様に耐変色性を評価した。その結果を下記表15に示す。なお、下記表中のL*値、a*値、b*値、C*値及びH*値については、保管前に測定した値のみを示す。
【0085】
【表15】
【0086】
上記表15に示すように、いずれの実施例についても、いずれの比較例よりもΔE値及びΔH値が低いという結果となった。したがって、赤色顔料中のPR-254の含有量が50質量%以上であることにより、経時的な変色を被りにくくなることが分かった。
【0087】
(8)PY-74及びPR-254合計含有量の検証
(8-1)原材料組成
全含量に占める、PY-74及びPR-254合計含有量の効果について、以下の通り色調の変化の計測で検証した。なお、以下で説明する実施例8、28及び29並びに比較例5、24及び25の原材料組成は、前記表1のとおりとした。ここで、実施例8及び比較例5は、前記(3)で言及したものと同じである。
【0088】
(8-2)顔料組成
実施例8、28及び29並びに比較例5、24及び25における顔料組成の詳細を、下記表16に示す。
【0089】
【表16】
【0090】
(8-3)製造方法
上記の組成に基づき、実施例8、28及び29並びに比較例5、24及び25の非焼成鉛筆芯を、前記実施形態で言及した製造方法により製造した。
【0091】
実施例8、28及び29は、PY-74及びPR-254の両方を含み、かつ、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも50質量%以上であった。比較例5は、PY-74は含有するもののPR-254は含有していなかった。比較例24及び25は、PY-74及びPR-254の両方を含むものの、顔料中のPY-74及びPR-254の含有量の合計はいずれも50質量%未満であった。
【0092】
(8-4)色彩測定方法及び結果
実施例8、28及び29並びに比較例5、24及び25の非焼成鉛筆芯につき、前記(3-4)と同様に耐変色性を評価した。その結果を下記表13に示す。なお、下記表中のL*値、a*値、b*値、C*値及びH*値については、保管前に測定した値のみを示す。
【0093】
【表17】
【0094】
上記表17に示すようにいずれの実施例についても、いずれの比較例よりもΔE値及びΔH値が低いという結果となった。したがって、PY-74及びPR-254の両方を含有する場合、顔料中のPY-74及びPY-254の含有量の合計が50質量%以上であることにより、経時的な変色を被りにくくなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、非焼成の鉛筆芯として利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 非焼成鉛筆芯 11 芯体
図1