(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058468
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ピラーアレーン複合体
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20240418BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20240418BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20240418BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240418BHJP
C07C 39/15 20060101ALI20240418BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20240418BHJP
C07C 50/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/04
C08L71/00 Z
C08L65/00
C07C39/15
C07C43/205 C
C07C50/08
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165864
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】小森 政二
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】生越 友樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 克知
(72)【発明者】
【氏名】大谷 俊介
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB48
4H006AB99
4H006FC52
4H006FE13
4H006GP03
4J002BD131
4J002BD141
4J002BD151
4J002BD161
4J002BE041
4J002CH011
4J002ED056
4J002EE056
4J002EJ016
4J002FD066
4J002FD206
4J002GT00
4J002HA01
4J002HA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、耐熱性および/または疎水性に優れ、かつ官能基の導入が容易な複合体の提供を目的とする。
【解決手段】本開示の複合体は、含フッ素ポリマーと、前記含フッ素ポリマーを包接する、1個またはそれ以上の環状化合物とを含み、前記環状化合物は、以下の式(I):
[式(I)中、Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む2価のC
4-50有機基を表し、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい有機基または水素原子を表し、nは、4~20の整数を表す。]
で表される化合物を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ポリマーと、前記含フッ素ポリマーを包接する、1個またはそれ以上の環状化合物とを含み、
前記環状化合物は、以下の式(I):
【化1】
[式(I)中、
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む2価のC
4-50有機基を表し、
Rは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい有機基または水素原子を表し、
nは、4~20の整数を表す。]
で表される化合物を含む、複合体。
【請求項2】
前記環状化合物は、以下の式(1)~(3):
【化2】
[式(1)中、
R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
4は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n1は、4~20の整数である。]
【化3】
[式(2)中、
R
5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
6は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n2は、4~20の整数である。]
【化4】
[式(3)中、
R
7は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
8は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
9は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
10は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3)中において任意である。]
のいずれかで表される化合物を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記式(1)において、R1~R4から選ばれる1つまたはそれ以上は、含フッ素有機基である、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記式(1)において、R3およびR4から選ばれる1つまたはそれ以上は、水素原子である、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
前記環状化合物は、下記式(1-A)、(2-A)および(3-A):
【化5】
[式(1-A)中、
R
1aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
2aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
3aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
n1は、4~20の整数である。]
【化6】
[式(2-A)中、
R
5aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
6aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
n2は、4~20の整数である。]
【化7】
[式(3-A)中、
R
7aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
8aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
9aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
10aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
11aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
12aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
ただし、n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3-A)中において任意である。]
のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記含フッ素ポリマーは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい直鎖状含フッ素ポリマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記含フッ素ポリマーは、含フッ素オレフィン系ポリマーを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、以下の式:
CRf20Rf21=CRf22Rf23
[式中、
Rf20は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf21は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf22は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf23は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf20~Rf23の1つまたはそれ以上は、フッ素原子である。]
で表される含フッ素オレフィン化合物から形成される繰り返し単位を有する、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記含フッ素オレフィン化合物は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテルおよびパーフルオロプロピルビニルエーテルから選ばれる1種またはそれ以上である請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびポリ1,2-ジフルオロエチレンから選ばれる1種またはそれ以上を含む、請求項7に記載の複合体。
【請求項11】
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンを含む、請求項7に記載の複合体。
【請求項12】
前記含フッ素ポリマーは、含フッ素ポリエーテルを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
前記含フッ素ポリエーテルは、
以下の式:
Y1-Rf1-RF-Oq-Rf2-Y2
[式中:
RFは、2価のフルオロポリエーテル基を表し、
Y1は、ハロゲン原子、水素原子、-COORf3、-ORf3、-NRf3
2、-NRf3-CO-Rf3、-CO-NRf3
2、-NO2、-CN、-CORf4、-SO3Rf4および-O-CORf4から選ばれる1種を表し、
Y2は、ハロゲン原子、水素原子、-COORf3、-ORf3、-NRf3
2、-NRf3-CO-Rf3、-CO-NRf3
2、-NO2、-CN、-CORf4、-SO3Rf4および-O-CORf4から選ばれる1種を表し、
Rf1は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表し、
Rf2は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表し、
Rf3は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基または水素原子を表し、
Rf4は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基、水素原子またはハロゲン原子を表し、
qは0または1である。]
で表される、請求項12に記載の複合体。
【請求項14】
RFは、以下の式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3RFa
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中、
RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
1個またはそれ以上のRFaが、水素原子である、請求項13に記載の複合体。
【請求項16】
RFは、下記式(f7):
-(CF2CF2CH2O)d- (f7)
[式中、dは、1~200の整数を表す。]
で表される、請求項13に記載の複合体。
【請求項17】
前記環状化合物の割合は、前記含フッ素ポリマーと前記環状化合物との合計100質量部中、0.01質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の複合体。
【請求項18】
前記含フッ素ポリマーは、50℃以上に、ガラス転移温度および融点から選ばれる少なくとも1つを有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項19】
熱分解温度が、170℃以上である、請求項1に記載の複合体
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の複合体の製造方法であって、
前記含フッ素ポリマーと、前記式(I)で表される環状化合物とを、無溶媒下で接触して、前記複合体を得ることを含む、製造方法。
【請求項21】
前記接触は、前記含フッ素ポリマーのガラス転移温度および融点の少なくとも1つよりも高い温度で実施される、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか1項に記載の複合体を含む、組成物。
【請求項23】
粉体状である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
液状である、請求項22に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピラーアレーン複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
環状化合物とポリマーとが複合した複合体として、ロタキサンや擬ロタキサンが知られている。ロタキサンは、環状化合物と、該環状化合物の環を貫通するポリマーと、該ポリマーの末端に配置された封鎖部位とを有する構造体である。擬ロタキサンは、環状化合物と、該環状化合物の環を貫通するポリマーとを有し、ポリマー末端の封鎖部位を有しない構造体である。
【0003】
かかる複合体として、特許文献1には、シクロデキストリンに、ゲスト化合物としてフルオロポリエーテル分子が包接された包接化合物が記載されている。
特許文献2には、ポリエチレングリコールと、該ポリエチレングリコールを串刺し状に包接するピラーアレーンと、上記ポリエチレングリコールの両末端にアダマンタン基類が配置されたポリロタキサンが記載されている。
非特許文献3には、ピラーアレーンと、ピラーアレーンに包接されたポリエチレンまたはポリプロピレンを含むロタキサンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/058247号
【特許文献2】特開2021-138635号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tomoki Ogoshi et al., "Extension of polyethylene chains by formation of polypseudorotaxane structures with perpentylated piller[5]arenes", Polymer Journal (2014) 46, 77-81.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られている複合体では、耐熱性や疎水性が十分に満足できるものではなく、また、環状化合物へ導入され得る官能基が制限されている。
【0007】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性および/または疎水性に優れ、かつ官能基の導入が容易な複合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
[1]
含フッ素ポリマーと、前記含フッ素ポリマーを包接する、1個またはそれ以上の環状化合物とを含み、
前記環状化合物は、以下の式(I):
【化1】
[式(I)中、
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む2価のC
4-50有機基を表し、
Rは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい有機基または水素原子を表し、
nは、4~20の整数を表す。]
で表される化合物を含む、複合体。
[2]
前記環状化合物は、以下の式(1)~(3):
【化2】
[式(1)中、
R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
4は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n1は、4~20の整数である。]
【化3】
[式(2)中、
R
5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
6は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n2は、4~20の整数である。]
【化4】
[式(3)中、
R
7は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
8は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
9は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
10は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3)中において任意である。]
のいずれかで表される化合物を含む、[1]に記載の複合体。
[3]
前記式(1)において、R
1~R
4から選ばれる1つまたはそれ以上は、含フッ素有機基である、[2]に記載の複合体。
[4]
前記式(1)において、R
3およびR
4から選ばれる1つまたはそれ以上は、水素原子である、[2]または[3]に記載の複合体。
[5]
前記環状化合物は、下記式(1-A)、(2-A)および(3-A):
【化5】
[式(1-A)中、
R
1aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
2aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
3aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
n1は、4~20の整数である。]
【化6】
[式(2-A)中、
R
5aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
6aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
n2は、4~20の整数である。]
【化7】
[式(3-A)中、
R
7aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
8aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
9aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
10aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
11aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
R
12aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-30アルキル基または水素原子を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
ただし、n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3-A)中において任意である。]
のいずれかで表される化合物である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の複合体。
[6]
前記含フッ素ポリマーは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい直鎖状含フッ素ポリマーである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の複合体。
[7]
前記含フッ素ポリマーは、含フッ素オレフィン系ポリマーを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の複合体。
[8]
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、以下の式:
CR
f20R
f21=CR
f22R
f23
[式中、
R
f20は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C
1-5フルオロアルキル基およびC
1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
R
f21は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C
1-5フルオロアルキル基およびC
1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
R
f22は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C
1-5フルオロアルキル基およびC
1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
R
f23は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C
1-5フルオロアルキル基およびC
1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
R
f20~R
f23の1つまたはそれ以上は、フッ素原子である。]
で表される含フッ素オレフィン化合物から形成される繰り返し単位を有する、[7]に記載の複合体。
[9]
前記含フッ素オレフィン化合物は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテルおよびパーフルオロプロピルビニルエーテルから選ばれる1種またはそれ以上である[8]に記載の複合体。
[10]
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびポリ1,2-ジフルオロエチレンから選ばれる1種またはそれ以上を含む、[7]~[9]のいずれか1つに記載の複合体。
[11]
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンを含む、[7]~[10]のいずれか1つに記載の複合体。
[12]
前記含フッ素ポリマーは、含フッ素ポリエーテルを含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載の複合体。
[13]
前記含フッ素ポリエーテルは、
以下の式:
Y
1-R
f1-R
F-O
q-R
f2-Y
2
[式中:
R
Fは、2価のフルオロポリエーテル基を表し、
Y
1は、ハロゲン原子、水素原子、-COOR
f3、-OR
f3、-NR
f3
2、-NR
f3-CO-R
f3、-CO-NR
f3
2、-NO
2、-CN、-COR
f4、-SO
3R
f4および-O-COR
f4から選ばれる1種を表し、
Y
2は、ハロゲン原子、水素原子、-COOR
f3、-OR
f3、-NR
f3
2、-NR
f3-CO-R
f3、-CO-NR
f3
2、-NO
2、-CN、-COR
f4、-SO
3R
f4および-O-COR
f4から選ばれる1種を表し、
R
f1は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表し、
R
f2は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表し、
R
f3は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-16アルキル基または水素原子を表し、
R
f4は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC
1-16アルキル基、水素原子またはハロゲン原子を表し、
qは0または1である。]
で表される、[12]に記載の複合体。
[14]
R
Fは、以下の式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのR
Faが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される、[13]に記載の複合体。
[15]
1個またはそれ以上のR
Faが、水素原子である、[13]または[14]に記載の複合体。
[16]
R
Fは、下記式(f7):
-(CF
2CF
2CH
2O)
d- (f7)
[式中、dは、1~200の整数を表す。]
で表される、[13]~[15]のいずれか1つに記載の複合体。
[17]
前記環状化合物の割合は、前記含フッ素ポリマーと前記環状化合物との合計100質量部中、0.01質量%以上99質量%以下である、[1]~[16]のいずれか1つに記載の複合体。
[18]
前記含フッ素ポリマーは、50℃以上に、ガラス転移温度および融点から選ばれる少なくとも1つを有する、[1]~[17]のいずれか1つに記載の複合体。
[19]
熱分解温度が、170℃以上である、[1]~[18]のいずれか1つに記載の複合体
[20]
[1]~[19]のいずれか1つに記載の複合体の製造方法であって、
前記含フッ素ポリマーと、前記式(I)で表される環状化合物とを、無溶媒下で接触して、前記複合体を得ることを含む、製造方法。
[21]
前記接触は、前記含フッ素ポリマーのガラス転移温度および融点の少なくとも1つよりも高い温度で実施される、[20]に記載の製造方法。
[22]
[1]~[19]のいずれか1つに記載の複合体を含む、組成物。
[23]
粉体状である、[22]に記載の組成物。
[24]
液状である、[22]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本開示の複合体は、耐熱性および/または疎水性に優れ、かつ官能基の導入が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた複合体のNMRチャートを示す。
【
図2】
図2は、比較例1で得られた精製体のNMRチャートを示す。
【
図3】
図3は、実施例2で得られた各複合体のDSCチャートを示す。
【
図4】
図4は、実施例3で得られた各複合体のDSCチャートを示す。
【
図5】
図5は、実施例4で得られた各複合体のDSCチャートを示す。
【
図6】
図6は、実施例2で得られた各複合体のX線回折チャートを示す。
【
図7】
図7は、実施例3で得られた各複合体のX線回折チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<複合体>
本開示の複合体は、
含フッ素ポリマーと、前記含フッ素ポリマーを包接する、1個またはそれ以上の環状化合物とを含み、
前記環状化合物は、以下の式(I):
【0012】
【化8】
[式(I)中、
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む2価のC
4-50有機基を表し、
Rは、各出現に置いてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい有機基または水素原子を表し、
nは、4~20の整数を表す。]
で表される化合物を含む。
【0013】
本開示の複合体は、含フッ素ポリマーと、上記環状化合物とを含むため、耐熱性および/または疎水性が良好であり、かつ、官能基の導入が容易である。本開示の複合体は、含フッ素ポリマーの耐熱性、疎水性の性質を維持しつつ、例えば、含フッ素ポリマー単体では混合できないような多様な樹脂等との混合も容易であることが期待される。さらに、本開示の複合体において、環状化合物は、含フッ素ポリマーに固定されていないため、例えば樹脂と混合された場合においても可動であり、衝撃吸収性等の特性を発揮できることが期待される。
【0014】
本開示において、包接は、環状化合物の環の内部に含フッ素ポリマーの少なくとも一部が存在することを意味する。一態様において、含フッ素ポリマーは、環状化合物の環を貫通していてもよい。また、1つの含フッ素ポリマーを包接する環状化合物は、1個またはそれ以上であり得、一態様において、好ましくは1個であり、別の態様において、好ましくは2個以上である。上限としてはポリマーの繰り返し単位あたり、平均して5個以下、あるいは3個以下、好ましくは1個以下である。例えば、ポリマーの繰り返し単位の数をjとした場合、1つの複合体に含まれる環状化合物の個数は、好ましくは5×j個以下、より好ましくは3×j個以下、さらに好ましくはj個以下である。
【0015】
式(I)中、Aは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のC4-50有機基を表し、-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む。
上記C4-50有機基は、好ましくはC4-20有機基、より好ましくはC4-10有機基であり得る。
【0016】
本開示において、1価または2価の「有機基」は、炭素を含有する1価または2価の基を意味する。1価または2価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。なお、単に「有機基」という場合、1価の有機基を意味する。
【0017】
また、本開示において、「炭化水素基」は、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、C1-20炭化水素基、例えば、C1-20脂肪族炭化水素基、C6-20芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよい。
【0018】
本開示において、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0019】
上記Aで表される、-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む2価の有機基における「2価のC4-50有機基」は、好ましくは、2価のC6-20芳香族炭化水素基または2価のC3-20脂環式炭化水素基であり得る。
上記2価のC6-20芳香族炭化水素基は、好ましくは、2価のC6-10芳香族炭化水素基、より好ましくは、2価のC6-8芳香族炭化水素基、特に好ましくはフェニレン基であり得る。
上記2価のC3-20脂環式炭化水素基は、飽和脂環式炭化水素基および不飽和脂環式炭化水素基のいずれであってもよい。上記2価のC3-20脂環式炭化水素基は、好ましくは2価のC6-10不飽和脂環式炭化水素基、より好ましくは、2価のC6-8不飽和炭化水素基、特に好ましくはシクロヘキサジエニル基であり得る。
【0020】
上記Aで表される-ORおよび-CO-から選ばれる1種またはそれ以上を含む2価のC4-50有機基は、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくは、置換基として-ORを有する2価のC6-20芳香族炭化水素基、C3-20脂環式炭化水素基において、環を構成する炭素原子に結合する水素原子が-ORに置換されている基、および、C3-20脂環式炭化水素基において、環を構成する-CH2-が-CO-に置き換わっている基から選ばれる1種であり得、より好ましくは、置換基として-ORを有する2価のC6-10芳香族炭化水素基、および、C6-10脂環式炭化水素基において、環を構成する-CH2-が-CO-に置き換わっている基から選ばれる1種であり得る。
【0021】
Aに含まれる-ORおよび-CO-の個数の合計は、1以上4以下であり、好ましくは2である。
【0022】
Rは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい有機基または水素原子を表す。
【0023】
Rで表される有機基としては、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルエーテル基、トシル基、トリフラート基またはフェニル基等が挙げられ、これらの基は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい。
【0024】
Rで表される有機基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、エポキシ基、アセチル基等の反応性官能基;アルキル基、ビニル基、エチニル基等の脂肪族炭化水素基;ハロゲン原子が挙げられる。かかるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり得る。
【0025】
Rにおけるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0026】
Rにおけるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり得る。
【0027】
上記Rにおけるアルキルオキシ基は、典型的には、-O-R21(式中、R21は、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基である。)で表される基である。
【0028】
R21におけるアルキル基は、上記した置換基により置換されていてもよく、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよい。上記アルキル基は、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよいC1-30アルキル基である。上記アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基であり得る。
【0029】
R21は、好ましくは-R22-R23(式中、R22は、非置換のC1-30アルキレン基、好ましくはC1-20アルキレン基、より好ましくはC1-10アルキレン基であり、R23は、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基である。)で表される基である。
【0030】
上記Rにおけるアルキルエーテル基は、上記アルキル基の分子鎖中に1つ以上のエーテル性酸素原子を有する化合物である。かかるアルキルエーテル基は、典型的には、-R26-R27-(O-R28)m-R29で表される基である。式中、R26は、単結合または酸素原子である。R27は、単結合またはC1-10アルキレン基である。R28は、C1-10アルキレン基である。R29は、水素原子またはC1-10アルキル基である。mは、1~20の整数を表し、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3であり得る。
【0031】
一の態様において、上記有機基は、末端が反応性官能基により置換されたアルキル基、アルキルオキシ基、またはアルキルエーテル基であり得る。なお、かかる基は、さらに別の置換基により置換されていてもよい。
【0032】
上記反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アセチレン基、ニトリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0033】
一の態様において、好ましくは、Rは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0034】
nは、4~20であり、好ましくは4~10、より好ましくは4~7、さらに好ましくは5~6である。一の態様において、nは5である。また、別の態様において、nは6である。
【0035】
上記環状化合物は、好ましくは、以下の式(1)~(3):
【0036】
【0037】
[式(1)中、
R1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R4は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n1は、4~20の整数であり、
好ましい態様において、R1~R4から選ばれる1つまたはそれ以上は、含フッ素有機基であることが好ましく、C2-6フルオロアルキル基を含む有機基であることがより好ましく、
別の好ましい態様において、R3およびR4から選ばれる1つまたはそれ以上は、は水素原子であり、より好ましくはR3およびR4が水素原子であり得る。]
【0038】
【0039】
[式(2)中、
R5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R6は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n2は、4~20の整数である。]
【0040】
【0041】
[式(3)中、
R7は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R8は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R9は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R10は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3)中において任意である。]
のいずれかで表される化合物を含むことが好ましい。
【0042】
上記環状化合物が、上記式(1)~(3)のいずれかで表される化合物であることで、耐熱性および/または疎水性がより良好であり、かつ、官能基の導入がより容易であるとともに、より効率よく複合体を製造することができる。
【0043】
一の態様において、上記環状化合物は、以下の式(1):
【0044】
【0045】
[式(1)中、
R1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R4は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n1は、4~20の整数である。]
で表される化合物を含むことが好ましい。
【0046】
式(1)中、R1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R4は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表す。
【0047】
R1、R2、R3またはR4で表される有機基としては、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルエーテル基、トシル基、トリフラート基、フェニル基または含フッ素有機基等が挙げられ、これらの基は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい。
【0048】
R1、R2、R3またはR4で表される有機基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、エポキシ基、アセチル基等の反応性官能基;アルキル基、ビニル基、エチニル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0049】
R1、R2、R3またはR4におけるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0050】
R1、R2、R3またはR4におけるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0051】
上記R1、R2、R3またはR4におけるアルキルオキシ基は、典型的には、-O-R21(式中、R21は、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基である。)で表される基である。
【0052】
R21におけるアルキル基は、上記した置換基により置換されていてもよく、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよい。かかるアルキル基は、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよいC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基であり得る。
【0053】
上記R1、R2、R3またはR4におけるアルキルエーテル基は、上記アルキル基の分子鎖中に1つ以上のエーテル性酸素原子を有する化合物である。かかるアルキルエーテル基は、典型的には、-R26-R27-(O-R28)m-R29で表される基である。式中、R26は、単結合または酸素原子である。R27は、単結合またはC1-10アルキレン基である。R28は、C1-10アルキレン基である。R29は、水素原子またはC1-10アルキル基である。mは、1~20の整数を表し、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3であり得る。
【0054】
上記R1、R2、R3またはR4における含フッ素有機基は、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であることが好ましく、より好ましくはフルオロアルキル基またはフルオロ(ポリ)エーテル基であり得る。上記フルオロアルキル基は、好ましくはC1-10フルオロアルキル基、より好ましくはC2-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。上記フルオロ(ポリ)エーテル基は、フルオロエーテル基および/またはフルオロポリエーテル基を表す。
【0055】
一の態様において、上記含フッ素有機基は、下記式:
-(Op1-R20
q1)-Rfa
[式中:
R20は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表す。
Rfaは、C1-10フルオロアルキル基を表す。
p1は、0~2の整数である。
q1は、0~3の整数である。
(Op1-R20
q1)中、OおよびR11aの存在順序は限定されない。]
で表される基である。
【0056】
R20におけるC1-10アルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC2-6アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。
【0057】
RfaにおけるC1-10フルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0058】
p1は、0~2の整数、好ましくは1または2である。一の態様において、p1は1である。別の態様において、p1は2である。
【0059】
q1は、0~3の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1または2である。一の態様において、q1は1である。別の態様において、q1は2である。
【0060】
好ましい態様において、上記フルオロ(ポリ)エーテル基は、
-O-R20-(O-R20)r1-Rfa
[式中:
R20は、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表す。
Rfaは、C1-10フルオロアルキル基を表す。
r1は、0または1である。]
で表される基である。
【0061】
より好ましい態様において、上記フルオロ(ポリ)エーテル基は、
-O-R20-(O-R20)r1-Rfa
[式中:
R20は、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表す。
Rfaは、C1-10パーフルオロアルキル基を表す。
r1は、0または1である。]
で表される基である。
【0062】
n1は、4~20の整数であり、好ましくは4~6の整数であり、より好ましくは5または6である。
【0063】
特に好ましい態様において、
R13およびR16は、-O-R20-(O-R20)r1-Rfaであり、R14およびR15は、水素原子であるか、あるいは
R14およびR15は、-O-R20-(O-R20)r1-Rfaであり、R13およびR16は、水素原子であり、
R20は、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、
Rfaは、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基であり、
r1は、0または1であり、
n1は、4~6の整数、好ましくは5または6である。
【0064】
一の態様において、上記有機基は、末端が反応性官能基により置換されたアルキル基、アルキルオキシ基、またはアルキルエーテル基であり得る。なお、かかる基は、さらに別の置換基により置換されていてもよい。
【0065】
上記反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アセチレン基、ニトリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0066】
一の態様において、好ましくは、R1は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R2は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R3は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R4は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0067】
好ましい態様において、R1~R4から選ばれる1つまたはそれ以上は、含フッ素有機基であることが好ましく、C2-6フルオロアルキル基を含む有機基であることがより好ましい。
【0068】
別の好ましい態様において、R3およびR4から選ばれる1つまたはそれ以上は、は水素原子であり、より好ましくはR3およびR4が水素原子であり得る。
【0069】
n1は、好ましくは4~20であり、より好ましくは4~10、さらに好ましくは4~7、いっそう好ましくは5~6である。一の態様において、n1は5である。また、別の態様において、n1は6である。
【0070】
上記式(1)は、好ましくは、以下の式(1-A):
【0071】
【0072】
[式(1-A)中、
R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R2aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R4aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
n1は、4~20の整数である。]
で表される。
【0073】
式(1-A)中、R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R2aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R4aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0074】
R1a、R2a、R3aまたはR4aで表されるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0075】
R1a、R2a、R3aまたはR4aで表されるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0076】
別の態様において、上記式(1)は、以下の式(1-A’):
【0077】
【0078】
[式(1-A’)中、
R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R16は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n5は、4~20の整数であり、
ただし、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つは、含フッ素有機基であり、
R14およびR15の少なくとも1つは、水素原子である。]
で表され得る。
【0079】
上記式(1-A’)中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または有機基であり、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または有機基であり、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または有機基であり、R16は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または有機基であり、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つは、含フッ素有機基である。
【0080】
上記R13、R14、R15またはR16で表される有機基としては、置換基により置換されていてもよい、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルエーテル基、トシル基、トリフラート基またはフェニル基等が挙げられる。
【0081】
上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基、および5~10員のヘテロアリール基、ならびに反応性官能基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0082】
上記反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アセチレン基、ニトリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0083】
上記R13、R14、R15またはR16におけるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0084】
R13、R14、R15またはR16におけるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0085】
上記R13、R14、R15またはR16におけるアルキルオキシ基は、典型的には、-O-R21(式中、R21は、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基である。)で表される基である。
【0086】
R21におけるアルキル基は、上記した置換基により置換されていてもよく、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよい。かかるアルキル基は、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよいC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基であり得る。
【0087】
R21は、好ましくは-R22-R23(式中、R22は、非置換のC1-30アルキレン基、好ましくはC1-20アルキレン基、より好ましくはC1-10アルキレン基であり、R23は、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基である。)で表される基である。
【0088】
上記アルキルエーテル基は、上記アルキル基の分子鎖中に1つ以上のエーテル性酸素原子を有する化合物である。かかるアルキルエーテル基は、典型的には、-R26f-R27f-(O-R28f)m1-R29fで表される基である。式中、R26fは、単結合または酸素原子である。R27fは、単結合またはC1-10アルキレン基である。R28fは、C1-10アルキレン基である。R29fは、フッ素原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基または水素原子である。m1は、1~20の整数を表し、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3であり得る。
【0089】
一の態様において、上記有機基は、末端が反応性官能基により置換されたアルキル基、アルキルオキシ基、またはアルキルエーテル基であり得る。なお、かかる基は、さらに別の置換基により置換されていてもよい。
【0090】
一の態様において、R13およびR16は、それぞれ独立して、有機基であり、R13およびR16の少なくとも1つは、含フッ素有機基であるか、あるいは、R14およびR15は、それぞれ独立して、有機基であり、R14およびR15の少なくとも1つは、含フッ素有機基である。
【0091】
R14およびR15の少なくとも1つは、水素原子であり、好ましくは、R14およびR15は、水素原子であり得る。R14およびR15の少なくとも1つが水素原子である場合、式(1-A’)で表される化合物は、プロトン供与性基として、-OHを有する。そのため、-CO-、窒素原子およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上を含むポリマーと組み合わせられ得る。
【0092】
一の態様において、R13、R14、R15およびR16の少なくとも2つは、含フッ素有機基であり、好ましくは、R13、R14、R15およびR16のうちの2つは、含フッ素有機基であり、より好ましくは、R13およびR16は、含フッ素有機基であり得る。
【0093】
一の態様において、R14およびR15は、水素原子であるか、あるいは、R13およびR16は、水素原子である。
【0094】
好ましい態様において、R13およびR16は、それぞれ独立して、含フッ素有機基であり、R14およびR15は、水素原子である。
【0095】
上記含フッ素有機基は、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であることが好ましく、より好ましくはフルオロアルキル基またはフルオロ(ポリ)エーテル基であり得る。上記フルオロアルキル基は、好ましくはC1-10フルオロアルキル基、より好ましくはC2-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。上記フルオロ(ポリ)エーテル基は、フルオロエーテル基および/またはフルオロポリエーテル基を表す。
【0096】
一の態様において、上記含フッ素有機基は、下記式:
-(Op1-R20
q1)-Rfa
[式中:
R20は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表す。
Rfaは、C1-10フルオロアルキル基を表す。
p1は、0~2の整数である。
q1は、0~3の整数である。
(Op1-R20
q1)中、OおよびR11aの存在順序は限定されない。]
で表される基である。
【0097】
R20におけるC1-10アルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC2-6アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。
【0098】
RfaにおけるC1-10フルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0099】
p1は、0~2の整数、好ましくは1または2である。一の態様において、p1は1である。別の態様において、p1は2である。
【0100】
q1は、0~3の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1または2である。一の態様において、q1は1である。別の態様において、q1は2である。
【0101】
好ましい態様において、上記フルオロ(ポリ)エーテル基は、
-O-R20-(O-R20)r1-Rfa
[式中:
R20は、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表す。
Rfaは、C1-10フルオロアルキル基を表す。
r1は、0または1である。]
で表される基である。
【0102】
より好ましい態様において、上記フルオロ(ポリ)エーテル基は、
-O-R20-(O-R20)r1-Rfa
[式中:
R20は、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表す。
Rfaは、C1-10パーフルオロアルキル基を表す。
r1は、0または1である。]
で表される基である。
【0103】
n1は、4~20の整数であり、好ましくは4~6の整数であり、より好ましくは5または6である。
【0104】
特に好ましい態様において、
R13およびR16は、-O-R20-(O-R20)r1-Rfaであり、R14およびR15は、水素原子であるか、あるいは
R14およびR15は、-O-R20-(O-R20)r1-Rfaであり、R13およびR16は、水素原子であり、
R20は、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、
Rfaは、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基であり、
r1は、0または1であり、
n1は、4~6の整数、好ましくは5または6である。
【0105】
式(1-A’)で表される化合物は、は、ピラー[n]アレーンの置換基を、含フッ素有機基に変換することにより得ることができる。典型的には、式(1-A’)で表される化合物は、ピラー[n]アレーンの所定の位置にヒドロキシル基を導入し、該ヒドロキシル基と、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基のトシル化物、ハロゲン化物等とを反応させることにより得ることができる。
【0106】
一の態様において、好ましくは、R1aおよびR2aは、水素原子であり、R3aおよびR4aは、水素原子またはメチル基である。
【0107】
別の態様において、上記環状化合物は、以下の式(2):
【0108】
【化15】
[式(2)中、
R
5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
6は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n2は、4~20の整数である。]
で表される化合物を含むことが好ましい。
【0109】
式(2)中、R5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R6は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表す。
【0110】
R5またはR6で表される有機基としては、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルエーテル基、トシル基、トリフラート基またはフェニル基等が挙げられ、これらの基は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい。
【0111】
R5またはR6で表される有機基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、エポキシ基、アセチル基等の反応性官能基;アルキル基、ビニル基、エチニル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0112】
R5またはR6におけるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0113】
R5またはR6におけるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0114】
上記R5またはR6におけるアルキルオキシ基は、典型的には、-O-R21(式中、R21は、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基である。)で表される基である。
【0115】
R21におけるアルキル基は、上記した置換基により置換されていてもよく、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよい。かかるアルキル基は、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよいC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基であり得る。
【0116】
上記R5またはR6におけるアルキルエーテル基は、上記アルキル基の分子鎖中に1つ以上のエーテル性酸素原子を有する化合物である。かかるアルキルエーテル基は、典型的には、-R26-R27-(O-R28)m-R29で表される基である。式中、R26は、単結合または酸素原子である。R27は、単結合またはC1-10アルキレン基である。R28は、C1-10アルキレン基である。R29は、水素原子またはC1-10アルキル基である。mは、1~20の整数を表し、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3であり得る。
【0117】
一の態様において、上記有機基は、末端が反応性官能基により置換されたアルキル基、アルキルオキシ基、またはアルキルエーテル基であり得る。なお、かかる基は、さらに別の置換基により置換されていてもよい。
【0118】
上記反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アセチレン基、ニトリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0119】
一の態様において、好ましくは、R5は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R6は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0120】
n2は、好ましくは4~20であり、より好ましくは4~10、さらに好ましくは4~7、いっそう好ましくは5~6である。一の態様において、n2は5である。また、別の態様において、n2は6である。
【0121】
上記式(2)は、好ましくは、以下の式(2-A):
【0122】
【0123】
[式(2-A)中、
R5aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R6aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
n2は、4~20の整数を表す。]
で表される。
【0124】
式(2-A)中、R5aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R6aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0125】
R5aまたはR6aで表されるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0126】
R5aまたはR6aで表されるアルキル基における置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0127】
一の態様において、好ましくは、R5aおよびR6aは、水素原子である。
【0128】
さらに別の態様において、上記環状化合物は、以下の式(3):
【0129】
【化17】
[式(3)中、
R
7は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
8は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
9は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
10は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3)中において任意である。]
で表される化合物を含むことが好ましい。
【0130】
式(3)中、R7は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R8は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R9は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R10は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表す。
【0131】
R7、R8、R9、R10、R11またはR12で表される有機基としては、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルエーテル基、トシル基、トリフラート基またはフェニル基等が挙げられ、これらの基は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい。
【0132】
R7、R8、R9、R10、R11またはR12で表される有機基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、エポキシ基、アセチル基等の反応性官能基;アルキル基、ビニル基、エチニル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0133】
R7、R8、R9、R10、R11またはR12でおけるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0134】
R7、R8、R9、R10、R11またはR12におけるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0135】
上記R7、R8、R9、R10、R11またはR12におけるアルキルオキシ基は、典型的には、-O-R21(式中、R21は、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基である。)で表される基である。
【0136】
R21におけるアルキル基は、上記した置換基により置換されていてもよく、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよい。かかるアルキル基は、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよいC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基であり得る。
【0137】
上記R7、R8、R9、R10、R11またはR12におけるアルキルエーテル基は、上記アルキル基の分子鎖中に1つ以上のエーテル性酸素原子を有する化合物である。かかるアルキルエーテル基は、典型的には、-R26-R27-(O-R28)m-R29で表される基である。式中、R26は、単結合または酸素原子である。R27は、単結合またはC1-10アルキレン基である。R28は、C1-10アルキレン基である。R29は、水素原子またはC1-10アルキル基である。mは、1~20の整数を表し、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3であり得る。
【0138】
一の態様において、上記R7、R8、R9、R10、R11またはR12表される有機基は、末端が反応性官能基により置換されたアルキル基、アルキルオキシ基、またはアルキルエーテル基であり得る。なお、かかる基は、さらに別の置換基により置換されていてもよい。
【0139】
上記反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アセチレン基、ニトリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0140】
一の態様において、好ましくは、R7は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R8は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R9は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R10は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R11は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R12は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0141】
n3は、好ましくは1~19であり、より好ましくは1~9、さらに好ましくは1~6、いっそう好ましくは1~5である。n4は、好ましくは1~19であり、より好ましくは1~9、さらに好ましくは1~6、いっそう好ましくは1~5である。n3+n4は、好ましくは4~20であり、より好ましくは4~10、さらに好ましくは4~7、いっそう好ましくは5~6である。
【0142】
上記式(3)は、好ましくは、以下の式(3-A):
【0143】
【0144】
[式(3-A)中、
R7aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R8aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R9aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R10aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R11aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
R12aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、
n3は、1~19の整数であり、
n4は、1~19の整数であり、
n3とn4の合計は、4~20であり、
ただし、n3またはn4を付して括弧で括られた単位の存在順序は式(3-A)中において任意である。]
で表される。
【0145】
式(3-A)中、R7aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R8aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R9aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R10aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R11aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表し、R12aは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基または水素原子を表す。
【0146】
R7a、R8a、R9a、R10a、R11aまたはR12aで表されるアルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0147】
R7a、R8a、R9a、R10a、R11aまたはR12aで表されるアルキル基における置換基としては、ハロゲン原子;1個また2個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0148】
一の態様において、R7a、R8a、R9a、R10a、R11aおよびR12aは、好ましくは、水素原子である。
【0149】
上記環状化合物は、好ましくは、式(1)、(2)および(3)から選ばれる1種または2種以上で表される化合物であり、より好ましくは、式(1-A)、(2-A)および(3-A)から選ばれる1種または2種以上で表される化合物であり得る。
【0150】
上記複合体に2個以上の環状化合物が含まれる場合、該2個以上の環状化合物は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0151】
上記環状化合物の割合は、後述する含フッ素ポリマーと環状化合物の合計100質量部中、好ましくは0.01質量%以上99質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上90質量%以下であり得る。環状化合物の割合が前記範囲にあることで、複合体の耐熱性および/または疎水性が良好である。
【0152】
上記含フッ素ポリマーは、フッ素原子を含むポリマーであればよく、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい。上記含フッ素ポリマーは、好ましくは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい直鎖状含フッ素ポリマーであり得る。上記含フッ素ポリマーが直鎖状であることで、環状化合物の環の内部に含フッ素ポリマーが貫通しやすくなり、複合体の形成が容易になり得る。
【0153】
上記ポリマーは、好ましくは、直鎖状ポリマーであり得る。上記ポリマーが直鎖状であることで、環状化合物の環の内部にポリマーが貫通しやすくなり、複合体の形成が容易になり得る。
【0154】
本開示において、上記ポリマーは、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよい。上記含フッ素ポリマーに含まれ得る置換基としては、-COORf13、-ORf13、-NRf13
2、-NRf13-CO-Rf13、-CO-NRf13
2、-NO2、-CN、-COR14、-SO2Rf14、-O-CORf14、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-5アルキル基およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上が挙げられる。かかる置換基の炭素原子数は、好ましくは1以上5以下、より好ましくは1以上3以下であり得る。
【0155】
Rf13は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-4アルキル基または水素原子を表す。
Rf13で表される1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-4アルキル基における「C1-4アルキル基」は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキル基である。
【0156】
上記Rf13で表されるC1-4アルキル基を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0157】
一の態様において、Rf13で表される上記1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-4アルキル基は、好ましくは、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されているC1-4アルキル基であり、さらに好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-4アルキル基であり、いっそう好ましくはC1-4パーフルオロアルキル基である。
【0158】
上記Rf13におけるC1-4パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的にはCF3-、CF3CF2-またはCF3CF2CF2-である。
【0159】
Rf14は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-4アルキル基、水素原子またはハロゲン原子を表す。
【0160】
Rf14で表される1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-4アルキル基における「C1-4アルキル基」は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキル基である。
【0161】
上記Rf14で表されるC1-4アルキル基を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
一の態様において、上記Rf14で表される1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-4アルキル基は、好ましくは、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されているC1-4アルキル基であり、さらに好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-4アルキル基であり、いっそう好ましくはC1-4パーフルオロアルキル基である。
【0162】
上記Rf14におけるC1-4パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF3、-CF2CF3または-CF2CF2CF3である。
【0163】
上記置換基としての1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-5アルキル基における「C1-5アルキル基」は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキル基である。
【0164】
上記置換基としてのC1-5アルキル基を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子または塩素原子が好ましい。一の態様において、上記1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-5アルキル基は、好ましくは、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されているC1-5アルキル基であり、さらに好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-5アルキル基であり、いっそう好ましくはC1-4パーフルオロアルキル基である。
【0165】
上記C1-4パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的にはCF3-、CF3CF2-またはCF3CF2CF2-である。
【0166】
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子および臭素原子が挙げられれ、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0167】
上記含フッ素ポリマーとしては、含フッ素オレフィン系ポリマー、フルオロポリエーテルおよび含フッ素アクリル系ポリマー等が挙げられる。上記含フッ素ポリマーは、好ましくは、含フッ素オレフィン系ポリマーおよびフルオロポリエーテルから選ばれる1種または2種以上を含み得る。
【0168】
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、含フッ素オレフィン化合物の重合体であり得、含フッ素オレフィン化合物から形成される1種または2種以上の繰り返し単位を有する。
【0169】
上記含フッ素オレフィン化合物は、好ましくは、以下の式:
CRf20Rf21=CRf22Rf23
[式中、
Rf20は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf21は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf22は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf23は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、
Rf20~Rf23の1つまたはそれ以上は、フッ素原子である。]
で表される。
【0170】
上記式中、Rf20は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、Rf21は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、Rf22は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表し、Rf23は、水素原子フッ素原子塩素原子、C1-5フルオロアルキル基およびC1-5パーフルオロアルコキシ基から選ばれる1種を表す。
【0171】
Rf20、Rf21、Rf22またはRf23で表されるC1-5フルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-5フルオロアルキル基、特にC1-3フルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3フルオロアルキル基であり得る。一の態様において、Rf20、Rf21、Rf22またはRf23で表されるC1-5フルオロアルキル基は、C1-5パーフルオロアルキル基であることが好ましい。上記C1-5パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-5パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基であり得る。Rf20、Rf21、Rf22またはRf23で表されるC1-5フルオロアルキル基としては、具体的には-CF3、-CF2CF3または-CF2CF2CF3が挙げられる。
【0172】
Rf20、Rf21、Rf22またはRf23で表されるC1-5パーフルオロアルコキシ基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-5パーフルオロアルコキシ基、特にC1-3パーフルオロアルコキシ基であり、より好ましくは直鎖のパーフルオロアルコキシ基、具体的には-O-CF3、-O-CF2CF3または-O-CF2CF2CF3である。
【0173】
一の態様において、好ましくは、Rf20はフッ素原子または水素原子、Rf21はフッ素原子または水素原子、Rf22はフッ素原子または水素原子、Rf23はフッ素原子または水素原子であり得る。別の態様において、好ましくは、Rf20はフッ素原子または水素原子、Rf21はフッ素原子または水素原子、Rf22はフッ素原子または水素原子、Rf23はC1-5パーフルオロアルキル基またはC1-5パーフルオロアルコキシ基であり得る。
【0174】
上記含フッ素オレフィン化合物は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテルおよびパーフルオロプロピルビニルエーテルから選ばれる1種またはそれ以上を含むことが好ましい。
【0175】
一の態様において、上記含フッ素オレフィン化合物は、好ましくはフッ化ビニリデンであり得る。
【0176】
上記含フッ素オレフィン系ポリマーとしては、含フッ素オレフィン系ポリマーは、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびポリ1,2-ジフルオロエチレンから選ばれる1種またはそれ以上が挙げられる。一の態様において、上記含フッ素オレフィン系ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびポリ1,2-ジフルオロエチレンから選ばれる1種またはそれ以上を含む。
【0177】
上記含フッ素オレフィン系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは1,000以上1,000,000以下、より好ましくは2,000以上500,000以下、さらに好ましくは3,000以上300,000以下であり得る。
本開示において、含フッ素オレフィン系ポリマーの数平均分子量は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィ法により測定することができ、ポリスチレンを標準試料とした換算値として測定され得る。
【0178】
上記フルオロポリエーテルは、オキシフルオロアルキレン単位を有するポリマーであり得る。上記フルオロポリエーテルは、好ましくは、以下の式:
Y1-Rf1-RF-Oq-Rf2-Y2
[式中:
RFは、2価のフルオロポリエーテル基を表し、
Y1は、ハロゲン原子、水素原子、-COORf3、-ORf3、-NRf3
2、-NRf3-CO-Rf3、-CO-NRf3
2、-NO2、-CN、-CORf4、-SO2Rf4および-O-CORf4から選ばれる1種を表し、
Y2は、ハロゲン原子、水素原子、-COORf3、-ORf3、-NRf3
2、-NRf3-CO-Rf3、-CO-NRf3
2、-NO2、-CN、-CORf4、-SO2Rf4および-O-CORf4から選ばれる1種を表し、
Rf1は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表し、
Rf2は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表し、
Rf3は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基または水素原子を表し、
Rf4は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基、水素原子またはハロゲン原子を表し、
qは0または1である。]
で表される。
【0179】
RFは、好ましくは、式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3RFa
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中:
RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0180】
RFaは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0181】
a、b、c、d、e及びfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0182】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0183】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでいてもよい。例えば、-(OC6F12)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC5F10)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-及び-(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよい。-(OC3F6)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-及び-(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよい。-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-及び-(OCF(CF3))-のいずれであってもよい。
【0184】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【0185】
【0186】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0187】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【0188】
【0189】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩耗耐久性等を向上させることができる。
【0190】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0191】
一の態様において、RFは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f7)のいずれかで表される基であり、好ましくは下記式(f7)で表される基である。
【0192】
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1である。];
【0193】
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
【0194】
-(R36-R37)g- (f3)
[式中、R36は、OCF2又はOC2F4であり、
R37は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
【0195】
-(R36-R37)g-Rr-(R37’-R36’)g’- (f4)
[式中、R36は、OCF2又はOC2F4であり、
R37は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
R36’は、OCF2又はOC2F4であり、
R37’は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
Rrは、
【0196】
【化21】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
【0197】
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0198】
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。];
【0199】
-(CF2CF2CH2O)d- (f7)
[式中、dは、1~200の整数を表す。]
【0200】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)におけるOC3F6は、好ましくは、(OCF2CF2CF2)、(OCF(CF3)CF2)または(OCF2CF(CF3))であり、より好ましくは、(OCF2CF2CF2)である。上記式(f1)における(OC2F4)は、好ましくは、(OCF2CF2)または(OCF(CF3))であり、より好ましくは、(OCF2CF2)である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。
【0201】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2CF2)c-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-(OCF2)f-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であってもよい。
【0202】
上記式(f3)において、R36は、好ましくは、OC2F4である。上記(f3)において、R37は、好ましくは、OC2F4、OC3F6及びOC4F8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC3F6及びOC4F8から選択される基である。OC2F4、OC3F6及びOC4F8から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC4F8-、-OC3F6OC2F4-、-OC3F6OC3F6-、-OC3F6OC4F8-、-OC4F8OC4F8-、-OC4F8OC3F6-、-OC4F8OC2F4-、-OC2F4OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC2F4OC4F8-、-OC2F4OC3F6OC2F4-、-OC2F4OC3F6OC3F6-、-OC2F4OC4F8OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC3F6-、-OC3F6OC3F6OC2F4-、及び-OC4F8OC2F4OC2F4-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC2F4-OC3F6)g-又は-(OC2F4-OC4F8)g-である。
【0203】
上記式(f4)において、R36、R37及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R36’、R37’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR36、R37及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rrは、好ましくは、
【0204】
【化22】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【0205】
【化23】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0206】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0207】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0208】
上記式(f7)において、dは、好ましくは1以上100以下、より好ましくは5以上100以下、さらに好ましくは10以上100以下の整数である。
【0209】
一の態様において、上記RFは、上記式(f1)で表される基である。
【0210】
一の態様において、上記RFは、上記式(f2)で表される基である。
【0211】
一の態様において、上記RFは、上記式(f3)で表される基である。
【0212】
一の態様において、上記RFは、上記式(f4)で表される基である。
【0213】
一の態様において、上記RFは、上記式(f5)で表される基である。
【0214】
一の態様において、上記RFは、上記式(f6)で表される基である。
【0215】
一の態様において、上記RFは、上記式(f7)で表される基である。
【0216】
上記RFにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩耗耐久性及び耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性及び摩耗耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0217】
上記RFで表される部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RFで表される部分の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0218】
別の態様において、RFで表される部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0219】
さらに別の態様において、RFで表される部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0220】
Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表す。
【0221】
上記1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい炭化水素基における「炭化水素基」は、好ましくは2価のC1-20炭化水素基であり、より好ましくは2価のC1-20脂肪族炭化水素基、さらに好ましくはC1-16アルキレン基であり得る。
【0222】
上記1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい炭化水素基は、好ましくは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキレン基である。1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキレン基における「C1-16アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-10アルキレン基、より好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキレン基、さらに好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、いっそう好ましくは、直鎖のC1-6アルキレン基、特に直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0223】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、-COORf13、-ORf13、-NRf13
2、-NRf13-CO-Rf13、-CO-NRf13
2、-NO2、-CN、-COR14、-SO3Rf14、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上が挙げられる。Rf13およびRf14は、上記と同意義である。
【0224】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基は、好ましくは、-COOH、-OH、-NH2、-CONRf13、-NO2、-CN、-COH、-COCl、-SO3H、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上であり、より好ましくは、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはフッ素原子または塩素原子であり得る。
【0225】
一の態様において、上記Rf1で表される1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい炭化水素基は、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキレン基である。
【0226】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキレン基における「C1-16アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキレン基、特にC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキレン基、特にC1-3アルキレン基である。
【0227】
上記Rf1は、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキレン基であり、より好ましくはC1-16パーフルオロアルキレン基である。
【0228】
上記C1-16パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキレン基、特にC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキレン基、特にC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF2-、-CF2CF2-又は-CF2CF2CF2-である。
【0229】
上記式において、Rf2は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基または単結合を表す。
【0230】
上記1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい炭化水素基における「炭化水素基」は、好ましくはC1-20炭化水素基であり、より好ましくはC1-20脂肪族炭化水素基、さらに好ましくはC1-16アルキル基であり得る。
【0231】
上記1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい炭化水素基は、好ましくは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基である。1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-10アルキル基、より好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、さらに好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキル基であり、いっそう好ましくは、直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0232】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、-COORf13、-ORf13、-NRf13
2、-NRf13-CO-Rf13、-CO-NRf13
2、-NO2、-CN、-COR14、-SO2Rf14、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上が挙げられる。Rf13およびRf14は、上記と同意義である。
【0233】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基は、好ましくは、-COOH、-OH、-NH2、-CONRf13、-NO2、-CN、-COH、-COCl、-SO3H、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上であり、より好ましくは、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはフッ素原子または塩素原子であり得る。
【0234】
一の態様において、Rf2で表される1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい炭化水素基は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0235】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0236】
上記Rf2は、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0237】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF3、-CF2CF3又は-CF2CF2CF3である。
【0238】
上記式中、Y1は、ハロゲン原子、水素原子、-COORf3、-ORf3、-NRf3
2、-NRf3-CO-Rf3、-CO-NRf3
2、-NO2、-CN、-CORf4、-SO2Rf4および-O-CORf4から選ばれる1種を表す。
また、上記式中、Y2は、ハロゲン原子、水素原子、-COORf3、-ORf3、-NRf3
2、-NRf3-CO-Rf3、-CO-NRf3
2、-NO2、-CN、-CORf4、-SO2Rf4および-O-CORf4から選ばれる1種を表す。
【0239】
Rf3は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基または水素原子を表す。
【0240】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキレン基における「C1-16アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキレン基、特にC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキレン基、特にC1-3アルキレン基である。
【0241】
上記Rf3で表されるC1-16アルキレン基が有していてもよい置換基としては、-COORf13、-ORf13、-NRf13
2、-NRf13-CO-Rf13、-CO-NRf13
2、-NO2、-CN、-COR14、-SO3Rf14、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上が挙げられる。Rf13およびRf14は、上記と同意義である。
【0242】
上記Rf3で表されるC1-16アルキレン基が有していてもよい置換基は、好ましくは、-COOH、-OH、-NH2、-CONRf13、-NO2、-CN、-COH、-COCl、-SO3H、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上であり、より好ましくは、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはフッ素原子または塩素原子であり得る。
【0243】
一の態様において、上記Rf3で表される1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキレン基は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキレン基であり得る。
【0244】
上記Rf3で表される1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキレン基は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキレン基であり、より好ましくはC1-16パーフルオロアルキレン基である。
【0245】
上記Rf3におけるC1-16パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキレン基、特にC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキレン基、特にC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF2-、-CF2CF2-または-CF2CF2CF2-である。
【0246】
Rf4は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基、水素原子またはハロゲン原子を表す。
【0247】
上記1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-5アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0248】
上記Rf4で表されるC1-16アルキル基が有していてもよい置換基としては、-COORf13、-ORf13、-NRf13
2、-NRf13-CO-Rf13、-CO-NRf13
2、-NO2、-CN、-COR14、-SO2Rf14、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上が挙げられる。Rf13およびRf14は、上記と同意義である。
【0249】
上記Rf4で表されるC1-16アルキル基が有していてもよい置換基は、好ましくは、-COOH、-OH、-NH2、-CONRf13、-NO2、-CN、-COH、-COCl、-SO3H、-O-CORf14およびハロゲン原子から選ばれる1種またはそれ以上であり、より好ましくは、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはフッ素原子または塩素原子であり得る。
【0250】
一の態様において、上記Rf4で表される1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC1-16アルキル基は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり得る。
【0251】
上記Rf4で表される1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0252】
上記Rf4におけるC1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF3、-CF2CF3又は-CF2CF2CF3である。
【0253】
上記Y1またはY2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0254】
Y1は、好ましくは、-COOH、-OH、-NH2、-CONRf3、-NO2、-CN、-COH、-COCl、-SO3H、-O-CORf4およびハロゲン原子から選ばれる1種であり得る。
Y2は、好ましくは、-COOH、-OH、-NH2、-CONRf3、-NO2、-CN、-COH、-COCl、-SO3H、-O-CORf4およびハロゲン原子から選ばれる1種であり得る。
【0255】
上記式において、qは、0または1である。一の態様において、qは0であり、別の態様において、qは1である。
【0256】
上記フルオロポリエーテルの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、フルオロポリエーテルの数平均分子量は、19F-NMRにより測定できる。
【0257】
別の態様において、フルオロポリエーテルの数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0258】
さらに別の態様において、フルオロポリエーテルの数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0259】
上記含フッ素ポリマーは、結晶性であっても非晶性であってもよい。一の態様において、含フッ素ポリマーの示差走査熱分析において、結晶化温度が観察された場合、結晶性ポリマーと判断してよく、結晶化温度が観察されない場合、非晶性ポリマーと判断してよい。一の態様において、上記含フッ素ポリマーは、結晶性である。別の態様において、上記含フッ素ポリマーは、非晶性である。
【0260】
上記含フッ素ポリマーは、好ましくは、50℃以上に、ガラス転移温度および融点の少なくとも1つを有する。換言すると、上記含フッ素ポリマーのガラス転移温度が50℃以上であるか、または、上記含フッ素ポリマーの融点が50℃以上であることが好ましい。詳細には、上記含フッ素ポリマーが結晶性ポリマーの場合、ガラス転移温度および融点の両方を有するため、ガラス転移温度および融点の少なくとも1つが50℃以上であればよく、上記含フッ素ポリマーが非晶性ポリマーの場合、ガラス転移温度のみを有するため、ガラス転移温度が50℃以上であればよい。上記含フッ素ポリマーが、50℃以上にガラス転移温度および融点の少なくとも1つを有することで、得られる複合体の耐熱性が良好である。上記含フッ素ポリマーは、例えば、70℃以上400℃以下にガラス転移温度および融点の少なくとも1つを有していてもよく、さらに、150℃以上300℃以下にガラス転移温度および融点の少なくとも1つを有していてもよい。
【0261】
上記含フッ素ポリマーは、末端に封鎖部位を有していてもよく、封鎖部位を有していなくともよい。封鎖部位は、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-30芳香族炭化水素基、または、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-30脂環式炭化水素基であり得る。上記封鎖部位としては、例えば、ジニトロフェニル基;シクロデキストリン;アダマンチル基;トリチル基;フルオレセイン;ピレン;アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホニル基、カルボキシ基、アミノ基およびフェニル基から選ばれる1種またはそれ以上を置換基として有するフェニル基;ステロイド等が挙げられ、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセインおよびピレンから選ばれる1種またはそれ以上が好ましく、アダマンチル基およびトリチル基から選ばれる1種またはそれ以上がより好ましい。上記含フッ素ポリマーに含まれる封鎖部位の個数は、1個以上2個以下であり得る。
【0262】
上記含フッ素ポリマーの数平均分子量は、例えば、500~1,000,000、好ましくは1,000~700,000、より好ましくは2,000~500,000、さらにより好ましくは2,000~300,000、例えば3,000~300,000であり得る。
【0263】
一の態様において、上記環状化合物が式(1)で表される化合物を含み、上記含フッ素ポリマーが、含フッ素オレフィン系ポリマーを含むことが好ましい。
【0264】
上記複合体の熱分解温度は、好ましくは170℃以上、より好ましくは200℃以上であり、例えば400℃以下であってもよい。本開示の複合体は、耐熱性が良好であり、高耐熱性が要求される用途に好適に利用できる。
本開示において、熱分解温度は、約10mgのサンプルを200mL/minの窒素流量の窒素雰囲気下で熱重量測定を実施した場合において、測定対象の質量が、測定開始前の測定対象の質量と比較して5質量%減少した時点における温度とする。
【0265】
上記複合体の熱分解温度をtxとし、上記複合体を形成する前の環状化合物の熱分解温度および上記複合体を形成する前の含フッ素ポリマーの熱分解温度の低い方をtyとしたとき、tx-tyは、好ましくは50℃以上であり、50℃以上300℃以下であってよく、さらに55℃以上250℃以下であってよい。
【0266】
本開示の複合体では、理由は不明であるが、ポリマーに対して非常に僅かな量の環状化合物との複合化で、熱分解温度が大きく向上する。例えば、環状化合物の量が、ポリマー100質量部に対して10質量部以下の場合において、得られる複合体の熱分解温度とポリマーの熱分解温度との差が、好ましくは30℃以上であり得、より好ましくは50℃以上であり得る。
【0267】
<複合体の製造方法>
上記複合体は、含フッ素ポリマーと、上記式(I)で表される環状化合物とを、無溶媒下で接触して、複合体を得ることを含む製造方法により製造され得る。
【0268】
本開示の製造方法によれば、無溶媒下で接触するため、複合化の進行の程度に関わらず、環状化合物による含フッ素ポリマーの包接を進めることが容易である。溶媒下で接触を実施した場合、含フッ素ポリマーが環状化合物に包接されると、そこで溶媒への溶解度が変化してしまい、複合化が進行しない場合があり得る。本開示の製造方法では、溶媒を用いないため、複合化の進行に伴う溶解度の変化に影響されることなく、所望の複合体を得ることが容易である。
【0269】
前記接触方法としては、特に限定されず、例えば、ボールミル、自転・公転ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散等を用いる方法が挙げられる。
【0270】
前記接触は、前記含フッ素ポリマーのガラス転移温度および融点の少なくとも1つよりも高い温度で実施されることが好ましい。これにより、含フッ素ポリマーが自由に変形しやすくなり、より効率よく複合体を製造することができる。
【0271】
前記接触は、好ましくは、前記含フッ素ポリマーのガラス転移温度および融点の少なくとも1つよりも、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上高い温度で実施されることが好ましい。前記接触が実施される温度と、前記含フッ素ポリマーのガラス転移温度よび融点の少なくとも1つとの差は、例えば、50℃以下、さらに30℃以下であり得る。
【0272】
本開示の製造方法では、無溶媒下で含フッ素ポリマーと環状化合物とを接触しているが、これに限定されず、溶媒の存在下で接触を実施してもよい。かかる溶媒としては、例えば、水、エタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メタノール、クロロベンゼン、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、過酸化水素、メチルアミン、水酸化ナトリウム溶液、N-メチルピロリドンエーテル、アセトニトリル、塩化ベンジル、トリエチルアミン、もしくはエチレングリコール、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0273】
本開示の複合体は、上記製造方法により製造され得るが、上記製造方法により製造されたものに限定されない。また、上記製造方法は、本開示の複合体を製造し得るが、本開示の複合体を製造する態様のみに限定されない。
【0274】
<組成物>
上記複合体を含む組成物も、本開示の技術的範囲に含まれる。
かかる組成物は、上記複合体に加えて、樹脂、溶媒およびその他の添加剤から選ばれる1種またはそれ以上をさらに含んでいてもよい。
【0275】
かかる組成物において、上記複合体の含有率は、組成物の固形分100質量%中、好ましくは0.1質量%以上100質量%未満、より好ましくは1質量%以上99質量%以下であり得る。
【0276】
上記樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリスルホン樹脂等が挙げられる。
【0277】
上記溶媒としては、水、エタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メタノール、クロロベンゼン、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、過酸化水素、メチルアミン、水酸化ナトリウム溶液、N-メチルピロリドンエーテル、アセトニトリル、塩化ベンジル、トリエチルアミン、もしくはエチレングリコール、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0278】
上記添加剤としては、乳化剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、粘弾性調整剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料等が挙げられる。
【0279】
上記組成物は、粉末状であっても液状であってもよい。一の態様において、上記組成物は、粉末状であり、別の態様において、上記組成物は、液状である。
【実施例0280】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0281】
(合成例1)
2Lの1ツ口丸底フラスコに、25.0gの式(1-2)で表される化合物と、350mLのMeCNを入れ、122.9gのオキソン(2KHSO5・KHSO4・K2SO4)を350mLの水に溶解させた溶液を添加した。
【0282】
【0283】
次いで、7.5mLのヨードベンゼンを添加し、室温で48時間、激しく撹拌した。その後、反応液を水中に注ぎ、吸引ろ過した。得られた黄色の析出物を多量の水及びメタノールで洗浄し、乾燥させた。
【0284】
洗浄および乾燥させた析出物18.264gを、まず沸騰させた1,1,2,2-テトラクロロエタン350mLに溶解させ、不溶物を吸引ろ過により除去した。得られた赤色透明のろ過液を室温で6時間静置し、次いで、6~10℃で8時間静置した。析出した微細な結晶を吸引ろ過し、少量の1,1,2,2-テトラクロロエタンで3回洗浄し、さらに、少量のメタノールで3回洗浄し、乾燥させて、式(3-2)で表される化合物を得た。
【0285】
【0286】
式(3-2)で表される化合物が得られたことを、1H NMR、13C NMR、飛行時間型質量分析装置(ESI-TOF-MS)、融点測定およびIR測定により確認した。
1H NMR (500.13 MHz, TFA-d, ppm): δ= 6.93(s, 10H, CH), 3.61 (s, 10H, CH2).
13C NMR (125.72 MHz, TFA-d, ppm): δ= 190.5 (s, C=O), 146.8(s, C-CH2), 138.1 (CH), 28.0 (CH2).
HRMS (ESI-TOF-MS):
m/z [M+Na]+ calculated for C35H21O10: 601.1129; found: 601.1132
m/z [M + Na]+ calcd for C35H20O10Na: 623.0949; found: 623.0930
融点: 融点を示さず250℃超で分解
IR (Nujol mull, cm-1): 1654, 1610, 1461, 1377, 1286, 1250, 1125, 921, 722
【0287】
実施例で用いた環状化合物の構造を示す。
【0288】
【0289】
実施例および比較例で用いたポリマーを示す。
PBR:ポリブタジエンとしては市販の重量平均分子量5,000、cis-and trans-1,4 80%、ビニル基20%のものを用いた。代表的な構造式を下記に示す。
【0290】
【0291】
PVDF1:ダイキン工業社製のPVDF VP-832、融点178℃、MFR 230℃10kgf:3.15g/10min、分子量 Mw 20万(GPC)
PVDF2:アルケマ社製のPVDF Kyner HSV900、融点162℃、MFR 230℃10kgf:0.2g/10min
【0292】
FPE:下記式で表され、数平均分子量4,400から5,000で融点70℃の含フッ素ポリエーテルを用いた。
H-(CF2CF2CH2O)n-COOH
【0293】
実施例で用いた測定方法を示す。
【0294】
(1)NMR
日本電子株式会社製のNMR測定装置(JEOL JNM-ECS400)を用いて測定する。
1H-NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
【0295】
(2)DSC
DSC(示差走査熱量計:日立ハイテクソリューションズ社、DSC7020)を用いて、30℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温(ファーストラン)-降温-昇温(セカンドラン)とした。
【0296】
(3)X線回折
を全自動多目的X線回折装置(SmartLab:リガク株式会社製)を用いて、以下の条件で測定した。
・測定角度:10~30°(光源:Cu/Kα、波長:1.5418Å)
(4)熱分解温度
日立ハイテクソリューションズ社製TG/DTA分析装置(熱重量示差熱分析装置)(STA7200)を用い、10mgの試料について、200mL/minの窒素流量の窒素ガス雰囲気中、23℃から600℃までの温度範囲および10℃/分の昇温速度からなる測定条件の下で測定した。熱分解温度は、測定開始前の測定対象の質量と比較して、測定対象の質量が5%が減少した時点における温度とした。
【0297】
実施例1 (FPEとP5Qの複合体)
5mLのガラス製チューブ管の中にFPEを0.65g(5mmol)入れた後に80℃に昇温することでFPEを完全に溶融させた。その中に環状化合物としてP5Qを0.06g(0.1mmol)加え、80℃の状態で15時間静置後、室温に戻し、固体状の複合体を得た。得られた複合体をFPEの良溶媒である30mLのジエチルエーテルで合計5回洗浄して精製した。
精製後の複合体をアセトンd6に溶解させて
1H-NMRを測定したところ、FPEおよびP5Qにもとづくピークが観測された。その結果を
図1に示す。比較のためFPE単体の結果も示す。
【0298】
また、NMRの積分比により、P5QユニットとFPEの繰り返し単位ユニットとの比を求めたところ、P5Q:FPE=1:2(モル比)となった。該比は、化学シフトが約4.8ppmのFPEのaの水素の積分値(H、2個相当)と化学シフトが約6.8ppmのP5Qのbの水素の積分値(H、10個相当)の比から計算した。
【0299】
比較例1 (PBRとC2P5Aの複合体)
5mLのガラス製チューブ管の中にPBRを0.27g(5mmol)(液状ポリマー)入れた後に室温のまま、環状化合物としてC2P5Aを0.089g(0.1mmol)加え、室温の状態で15時間静置後、液状の混合物を得た。得られた混合物をPBRの良溶媒である30mLのヘキサンで合計4回洗浄した精製体を得た。
精製体をクロロホルムdに溶解させて
1H-NMRを測定したところ、PBRもとづくピークが観測されず、複合体は得られなかった。その結果を
図2に示す。比較のため、PBR単体の結果も示す。
【0300】
実施例2
ポリマーとしてPVDF1を10mgを5mLのサンプル瓶に計量し、200℃に加熱する。PVDFが溶融した状態とし、環状化合物として、C2P5Aを、表1に記載の量添加し、200℃のままでスパチュラを用いて十分に接触し、2時間、150℃で保持して、室温に戻し、各複合体を得た。配合比と種類をまとめた表を下記に示す。
また、各複合体について、熱分解温度を測定したところ、いずれの複合体も熱分解温度は170℃以上であった。
【0301】
【0302】
実施例3
ポリマーをPVDF2(HSV900)に変更し、環状化合物の量を表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、各複合体を得た。
各複合体について、熱分解温度を測定したところ、いずれの複合体も熱分解温度は170℃以上であった。
【0303】
【0304】
実施例4
環状化合物をC5P5Aに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、各複合体を得た。
【0305】
【0306】
実施例5
実施例2で得られた各複合体について、DSC測定を行った結果、および、比較データとして、C2P5AおよびPVDF1単体について、DSC測定を行った結果を
図3に示す。
この結果から、C2P5Aの添加量を増やすにつれ、PVDF1(VP832)の融点が消失していくことがわかる。これはC2P5Aが包摂されることでPVDF自体の結晶化が阻害されたためと考えられる。
また、C2P5Aの結晶化温度もPVDF1の量が増えると高温へシフトし、融点ピークも消失していくことがわかる。これはC2P5Aが包摂されることで、結晶化に要する温度が高くなり、最終的には結晶化できなくなるためと考えられる。
【0307】
実施例6
実施例3で得られた各複合体について、DSC測定を行った結果、および、比較データとして、C2P5AおよびPVDF2単体について、DSC測定を行った結果を
図4に示す。実施例3では、実施例2と比較して、ポリマーをPVDF1(VP832)から低融点タイプのPVDF2(HSV900)に変更したが、結果は実施例2と同様で、PVDF2の融点消失、C2P5Aの融点消失が観測され、包摂複合体の生成が示唆された。
【0308】
実施例7
実施例4で得られた各複合体について、DSC測定を行った結果を
図5に示す。実施例4では、実施例2と比較して、環状化合物をC2P5AからC5P5Aに変更したが、結果は同様で、PVDF1の融点消失、C5P5Aの融点消失が観測され、包摂複合体の生成が示唆された。
【0309】
実施例8
実施例2で得られた各複合体について、X線回折測定を行った結果、および、比較データとして、C2P5AおよびPVDF1単体について、X線回折測定を行った結果を
図6に示す。
DSCの結果と同様に、PVDF1(VP832)単独からC2P5Aを添加していくとPVDF1の結晶性を示す回折ピークが消失した。
また、C2P5Aの添加であらたに2θ=8°付近に新たな長期周期構造が確認できた。これをPVDF1に包摂されたC2P5Aの面間隔だと仮定して解析すると、PVDF1の繰り返し構造単位(モノマー単位)約4個に対して1個のC2P5Aが挿入されているといえる。
【0310】
実施例9
実施例3で得られた各複合体について、X線回折測定を行った結果、および、比較データとして、C2P5AおよびPCDF2単体について、X線回折測定を行った結果を
図7に示す。
DSCと同様に、ポリマーの種類をPVDF1(VP832)からPVDF2(HSV900)に変更したが、DSCの結果と同様に、PVDF2(HSV900)単独からC2P5Aを添加していくとPVDFの結晶性を示す回折ピークが消失した。
また、C2P5Aの添加であらたに2θ=8°付近に新たな長期周期構造が確認できた。これをPVDF2に包摂されたC2P5Aの面間隔だと仮定して解析すると、PVDF2の繰り返し構造単位(モノマー単位)約4個に対して1個のC2P5Aが挿入されているといえる。
前記含フッ素オレフィン化合物は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテルおよびパーフルオロプロピルビニルエーテルから選ばれる1種またはそれ以上である請求項7に記載の複合体。
前記含フッ素オレフィン系ポリマーは、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびポリ1,2-ジフルオロエチレンから選ばれる1種またはそれ以上を含む、請求項6に記載の複合体。