特開 2024-58469 筒状編地の編成方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024058469

(43)【公開日】2024-04-25

(54)【発明の名称】筒状編地の編成方法

(51)【国際特許分類】

   D04B 1/00 20060101AFI20240418BHJP

【ＦＩ】

D04B1/00 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022165865

(22)【出願日】2022-10-14

(71)【出願人】

【識別番号】000151221

【氏名又は名称】株式会社島精機製作所

(74)【代理人】

【識別番号】100100147

【弁理士】

【氏名又は名称】山野 宏

(72)【発明者】

【氏名】窪田 茉優

(72)【発明者】

【氏名】由井 学

(72)【発明者】

【氏名】島崎 宜紀

【テーマコード（参考）】

4L002

【Ｆターム（参考）】

4L002BA00

4L002EA00

4L002FA01

4L002FA02

(57)【要約】

【課題】手作業の必要なく編糸をほつれ難くできる筒状編地の編成方法を提供する。
【解決手段】第一編地部を含む筒状編地を編成する際、前記第一編地部の編成に使用されている第一フィーダーから延びる編糸をほつれ止めする。第一方向に前記第一フィーダーを移動させ、第一編目を編成する。横編機の第二針床に係止される既存編目列のうち、前記第一編目の近傍にある特定編目を前記第一針床に移動させ、前記特定編目が係止されていた特定編針を空針にする。前記特定編針に前記第一編目を移動させる。前記第一編目に割増やしを行い、前記第一編目から引き出された第二編目を編成する。前記第二編目を前記第一編目に重ねた重ね目を形成する。前記特定編目を前記特定編針に戻す。前記終端編目は、前記重ね目のウエール方向に続けて編成する。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

第一針床と、前記第一針床に向き合う第二針床とを備える横編機を用いて、第一編地部を含む筒状編地を総針状態で編成する筒状編地の編成方法において、
前記第一針床で前記第一編地部の終端編目の一つ下にある第一編目を編成する際、前記第一編目に、前記第一編地部の編成に使用された第一フィーダーから延びる編糸を固定するほつれ止め工程を有し、
前記ほつれ止め工程は、
第一方向に前記第一フィーダーを移動させ、前記第一編目を編成する工程Ａと、
前記工程Ａを実施する前の時点で前記第二針床に係止される既存編目列のうち、前記第一編目の近傍にある特定編目を前記第一針床に移動させ、前記特定編目が係止されていた特定編針を空針にする工程Ｂと、
前記特定編針に前記第一編目を移動させる工程Ｃと、
前記第一編目に割増やしを行い、前記第一編目から引き出された第二編目を前記特定編針に編成する工程Ｄと、
前記第二編目を前記第一編目に重ねた重ね目を形成する工程Ｅと、
前記特定編目を前記特定編針に戻す工程Ｆと、を備え、
前記終端編目は、前記重ね目のウエール方向に続けて編成する、
筒状編地の編成方法。

【請求項2】

前記工程Ｄの後で前記工程Ｅの前に、前記第二編目の編成方向と同じ方向に前記第一フィーダーを移動させ、前記第二編目のウエール方向に続く新たな第二編目を編成する工程Ｘを備える、請求項１に記載の筒状編地の編成方法。

【請求項3】

前記終端編目は、前記第一方向と反対方向の第二方向に前記第一フィーダーを移動させて編成する、請求項１または請求項２に記載の筒状編地の編成方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、横編機上で編糸をほつれ止めする筒状編地の編成方法に関する。

【背景技術】

【0002】

複数のフィーダーを備える横編機を用いて、例えばストライプ柄またはインターシャ柄などを有する編地を編成する際、編糸が切り替えられる。この編糸の切り替えの際、編糸がほつれないように、編糸を編地に固定する必要がある。特許文献１では、横編機上で編糸の結び目を編成することで、編糸がほつれないようにしている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１７－１８６６９４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に記載の方法では、横編機による編成の後に手作業で編糸の結び目を締める必要がある。編糸の切り替え箇所が多いと、この手作業に手間がかかってしまう。

【0005】

本発明の目的の一つは、手作業の必要なく編糸をほつれ難くできる筒状編地の編成方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

＜１＞本発明の筒状編地の編成方法は、
第一針床と、前記第一針床に向き合う第二針床とを備える横編機を用いて、第一編地部を含む筒状編地１を総針状態で編成する筒状編地の編成方法において、
前記第一針床で前記第一編地部の終端編目の一つ下にある第一編目を編成する際、前記第一編目に、前記第一編地部の編成に使用された第一フィーダーから延びる編糸を固定するほつれ止め工程を有し、
前記ほつれ止め工程は、
第一方向に前記第一フィーダーを移動させ、前記第一編目を編成する工程Ａと、
前記工程Ａを実施する前の時点で前記第二針床に係止される既存編目列のうち、前記第一編目の近傍にある特定編目を前記第一針床に移動させ、前記特定編目が係止されていた特定編針を空針にする工程Ｂと、
前記特定編針に前記第一編目を移動させる工程Ｃと、
前記第一編目に割増やしを行い、前記第一編目から引き出された第二編目を前記特定編針に編成する工程Ｄと、
前記第二編目を前記第一編目に重ねた重ね目を形成する工程Ｅと、
前記特定編目を前記特定編針に戻す工程Ｆと、を備え、
前記終端編目は、前記重ね目のウエール方向に続けて編成する。

【0007】

ここで、第一編目は終端編目を編成する土台となる編目である。すなわち、第一編目は、終端編目がウエール方向に続けて編成される編目である。本発明の筒状編地の編成方法では、第一編目を含む重ね目のウエール方向に続けて終端編目が編成される。上記工程Ａと工程Ｂとはどちらを先に行っても構わない。

【0008】

＜２＞上記＜１＞に記載の筒状編地の編成方法において、
前記工程Ｄの後で前記工程Ｅの前に、前記第二編目の編成方向と同じ方向に前記第一フィーダーを移動させ、前記第二編目のウエール方向に続く新たな第二編目を編成する工程Ｘを備えていても良い。

【0009】

＜３＞上記＜１＞または＜２＞記載の筒状編地の編成方法において、
前記終端編目は、前記第一方向と反対方向の第二方向に前記第一フィーダーを移動させて編成しても良い。

【発明の効果】

【0010】

本発明の筒状編地の編成方法では、第一編地部の終端編目の一つ下にある第一編目を編成し、次いで、割増やしによって第一編目から引き出される第二編目を編成している。その結果、第二編目と第一編目とをつなぐ編糸が、第一編目に巻き付き、第一編目が動き難くなる。また、本発明の筒状編地の編成方法では、第一編目と第二編目とを重ねた重ね目を形成し、その重ね目のウエール方向に続けて終端編目を編成することで、編糸の巻き付きによって動き難くなった第一編目を終端編目で固定している。つまり、本発明の筒状編地の編成方法では、終端編目ではなく、終端編目の一つ下の第一編目に対してほつれ止めを行っている。第一編目は十分にほつれ難いため、第一編目に対する編糸の巻き付きを手作業で締め付ける必要はない。ほつれ難い第一編目のウエール方向に続く終端編目もほつれ難くなる。

【0011】

上記＜２＞に記載の筒状編地の編成方法では、工程Ｄで編成される第二編目のウエール方向に続けて新たな第二編目を編成している。この場合、後述する実施形態に示されるように、第一編目に対して編糸が２回巻き付くので、第一編目がより一層ほつれ難くなる。また、工程Ｄにおける第二編目の編成方向と、工程Ｘにおける新たな第二編目の編成方向とが同じ方向である。この場合、後述する実施形態に示されるように、第一編目の右側部分と左側部分のそれぞれに編糸が1回ずつ巻き付くため、第一編目が歪み難く、綺麗に仕上がる。

【0012】

上記＜３＞に記載の筒状編地の編成方法では、第一編目の編成方向が第一方向であり、第一編目のウエール方向に続く終端編目の編成方向が第二方向である。第一方向に向かって編成される第一編目は第一方向に引っ張られ易く、第二方向に向かって編成される終端編目は第二方向に引っ張られ易い。第一編目に作用する張力と終端編目に作用する張力とがほぼ相殺され、第一編目と終端編目がウエール方向にまっすぐになり易い。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】図１は、実施形態に係る筒状編地の一例であるニットウェアの概略図である。

【図2】図２は、実施形態に係る筒状編地の編成方法を説明する第一の編成工程図である。

【図3】図３は、図２に続く第二の編成工程図である。

【図4】図４は、その他の実施形態に係るニットウェアの概略図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、実施形態に係る筒状編地の編成方法を図面に基づいて説明する。

【0015】

＜実施形態１＞
実施形態１では、本発明の筒状編地の編成方法によって図１に示される筒状編地１を編成する例を説明する。本例の筒状編地１は、インターシャ柄を有する身頃を備えるニットウェアである。身頃は、身頃の大部分を占めるベース編地部２と、インターシャ柄を構成する複数の第一編地部３，４とを備える。ベース編地部２の色と第一編地部３，４の色とは互いに異なる。第一編地部３の色と第一編地部４の色とは同じでも良いし、異なっていても良い。ベース編地部２を編成するためのフィーダーと、第一編地部３，４を編成するためのフィーダーとは異なる。第一編地部３を編成するためのフィーダーと第一編地部４を編成するためのフィーダーとは同じでも良いし、異なっていても良い。色が異なる第一編地部３と第一編地部４とを一つのフィーダーで編成する場合、そのフィーダーから給糸される編糸は、例えばスプライサーでつながれた第一糸と第二糸とを備える。

【0016】

本例の第一編地部３，４はダイヤ形状を備える。ダイヤ形状の下端には、第一編地部３，４の最初の編目である始端編目３Ｓ，４Ｓが配置されている。ダイヤ形状の上端には、第一編地部３，４の最後の編目である終端編目３Ｅ，４Ｅが配置されている。なお、第一編地部３，４の形状はダイヤ形状以外の形状、例えば矩形状または円形状でも良い。

【0017】

筒状編地１は、身頃の裾の位置から編成される。まず、ベース編地部２の一部が筒状に編成される。次いで、ベース編地部２の一部がＣ字状に編成されると共に、ベース編地部２の編幅方向の中央部分に第一編地部３が編成される。第一編地部３の編成が終了したら、ベース編地部２の一部が筒状に編成される。その後、ベース編地部２の一部がＣ字状に編成されると共に、ベース編地部２の編幅方向の中央部分に第一編地部４が編成される。第一編地部４は第一編地部３と同様に編成される。

【0018】

本例では、本発明の筒状編地の編成方法によって、第一編地部３の終端編目３Ｅを編成する前に第一編地部３を構成する編糸を第一編地部３に固定し、第一編地部４の終端編目４Ｅを編成する前に第一編地部４を構成する編糸を第一編地部４に固定している。以下、図２および図３に基づいて、第一編地部３の終端編目３Ｅを編成する前に、第一編地部３を構成する編糸を筒状編地１に固定する糸出し部の編成例を説明する。図２および図３に示される編成例は、糸出し部を構成する編糸９Ｙがほつれないようにするためのものである。

【0019】

本例において使用される横編機は４枚ベッド横編機である。４枚ベッド横編機は、下部第一針床と下部第二針床と上部第一針床と上部第二針床とを備える。以下、下部第一針床、下部第二針床、上部第一針床、及び上部第二針床をそれぞれ、ＦＤ、ＢＤ、ＦＵ、及びＢＵと表記する。ＦＤとＢＤは互いに対向している。ＦＤの上部に配置されるＦＵと、ＢＤの上部に配置されるＢＵとは互いに対向している。ＦＤ及びＦＵと、ＢＤ及びＢＵとは相対的にラッキング可能である。実施形態１ではＢＵは使用しない。横編機は２枚ベッド横編機でも良い。横編機に備わる編針は、フックを有する針本体と、フックを開閉するスライダとを備える複合針である。スライダは、針本体を挟み込む二枚のブレードを備える。複合針は、スライダに編目を一時的に保持させるホールディング機構を備えていても良い。

【0020】

図２および図３の左欄の『Ｓ＋数字』は編成工程の番号を示す。右欄には各編成工程における編成状態が示されている。右欄の黒点は、ＦＤ、ＢＤ、およびＦＵの編針を示す。ＢＵの編針は図示を省略する。右欄のダイヤマークは図１のベース編地部２の編目を示し、丸マークは第一編地部３の編目を示す。逆三角マークは第一フィーダー９を示す。本例では、ベース編地部２のうち、ＢＤに係止される部分を既存編目列５と呼ぶ。各編成工程の編成動作に関係する部分は太線で示される。欄外の右向き矢印および左向き矢印はそれぞれ、第一方向Ｒ１および第二方向Ｒ２である。第一方向Ｒ１および第二方向Ｒ２は、針床の長さ方向に沿った第一フィーダー９の移動方向である。

【0021】

図２のステップＳ０には、図１の第一編地部３の最後から３番目の編成コースが編成された状態が示されている。この編成コースは、ダイヤ形状の上端付近に相当する。この状態から以降の編成工程では、第一編目１１を含む最後から２番目の編成コースが編成され、さらに終端編目３Ｅを含む最後の編成コースが編成される。本例では、２番目の編成コースは第一編目１１からなり、最後の編成コースは終端編目３Ｅからなる。

【0022】

ステップＳ０では、第一編地部３の編目が、ＦＤの編針Ｅ，Ｆ，Ｇに係止されている。ベース編地部２の編目は、ＦＤの編針Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄ，Ｈ，Ｉ，Ｊ，Ｋ、およびＢＤの編針Ａから編針Ｋに係止されている。ベース編地部２はＣ字状に編成されている。ベース編地部２と第一編地部３とは総針状態で編成されている。総針状態とは、編幅方向に隣接する編目の間に空針が無い状態である。ステップＳ０では編目同士のつながりを図示しているが、ステップＳ１以降ではステップＳ０に示される編目同士のつながりを省略している。

【0023】

ステップＳ１では、第一フィーダー９を第一方向Ｒ１に移動させ、ＦＤの編針Ｄにタック目１０を編成した後、終端編目３Ｅ（図１参照）の一つ前の第一編目１１を編成する（工程Ａ）。第一編目１１は、第一編地部３の最後から２番目の編成コースの編目である。後述するように、この第一編目１１のウエール方向に終端編目３Ｅが編成される。つまり、第一編目１１は、終端編目３Ｅがウエール方向に続けて編成される編目、すなわち終端編目３Ｅの土台となる編目である。タック目１０は、ベース編地部２と第一編地部３とを編幅方向につなぐためのものである。タック目１０によって第一編目１１の編成が容易になる。タック目１０は必須ではない。

【0024】

ステップＳ２では、第一フィーダー９を第二方向Ｒ２に移動させ、第一編目１１を超える位置に第一フィーダー９を停止させる。第二方向Ｒ２は、第一方向Ｒ１の反対方向である。

【0025】

ステップＳ３では、ＢＤの編針Ｆに係止される特定編目５０をＦＵの編針Ｇに移動させ、編針Ｆを空針にする（工程Ｂ）。特定編目５０は、ステップＳ２の時点で第一編目１１の近傍にある編目である。特定編目５０は、第一編目１１に向き合う位置にある編目でも良いし、前記向き合う位置にある編目の１つから２つ隣にある編目でも良い。ＢＤの編針Ｆは、特定編目５０が係止されていた特定編針６である。ここで、編針が、ホールディング機構を備える複合針である場合、既に編目が係止されているＦＤの複合針に特定編目５０を一時的に預けても良い。

【0026】

ステップＳ３ではさらに、空針となった特定編針６に第一編目１１を移動させる（工程Ｃ）。ステップＳ２において第一フィーダー９を第二方向Ｒ２側に退避させておくことで、ステップＳ３の第一編目１１の移動時に、第一編目１１に編糸９Ｙが絡むことを抑制できる。

【0027】

ステップＳ４では、第一フィーダー９を第一方向Ｒ１に移動させ、第一編目１１を超える位置に第一フィーダー９を停止させる。ステップＳ５では、第一フィーダー９を第二方向Ｒ２に移動させ、第一編目１１に割増やしを行う（工程Ｄ）。割増やしは公知の編成方法である。本例では、ＢＤの編針Ｆ、すなわち特定編針６に係止される第一編目１１をＦＤの編針Ｆに移動させると共に、第一編目１１から編糸９Ｙを引き出して第二編目１２を形成する。第二編目１２は特定編針６に係止される。

【0028】

本例では、ステップＳ１において第一方向Ｒ１に向かって第一編目１１を編成した後、ステップＳ５において第二方向Ｒ２に向かって第二編目１２を編成している。そのため、第二編目１２と第一編目１１とをつなぐ編糸が、第一編目１１における第一方向Ｒ１側の部分に巻き付く。第一編目１１に対する一つ目の編糸９Ｙの巻き付きによって、第一編目１１が動き難くなる。

【0029】

本例とは異なり、ステップＳ３の後に、第一方向Ｒ１に第一フィーダー９を移動させ、第一編目１１に割増やしを行っても良い。この場合、第二編目１２と第一編目１１とをつなぐ編糸が、第一編目１１における第二方向Ｒ２側の部分に巻き付く。

【0030】

ステップＳ６では、第一フィーダー９を第一方向Ｒ１に移動させ、第二編目１２を超える位置に第一フィーダー９を停止させる。図３のステップＳ７では、第一フィーダー９を第二方向Ｒ２に移動させ、第二編目１２のウエール方向に続く新たな第二編目１２を編成する（工程Ｘ）。新たな第二編目１２を編成することで、割増やしによって編成されたステップＳ５の第二編目１２が針床から外れる。また、新たな第二編目１２を編成することで、ステップＳ５において編成した第二編目１２と第一編目１１とをつなぐ編糸が、第一編目１１における第二方向Ｒ２側の部分にも巻き付く。第一編目１１に対する二つ目の編糸９Ｙの巻き付きによって、第一編目１１がより一層、ほつれ難くなる。特に本例では、第一編目１１の右側部分と左側部分のそれぞれに編糸９Ｙが１回ずつ巻き付くため、第一編目１１が歪み難く、綺麗に仕上がる。第一編目１１が綺麗に仕上がっていれば、第一編目１１のウエール方向に続く終端編目３Ｅも綺麗に仕上がる。

【0031】

さらにステップＳ７では、ＦＤの編針Ｃにタック目１５を編成する。タック目１５は、ベース編地部２と第一編地部３とを編幅方向につなぐための編成である。

【0032】

ステップＳ８では、第一フィーダー９を第一方向Ｒ１に移動させ、第二編目１２を超える位置に第一フィーダー９を停止させる。ステップＳ９では、ＢＤの編針Ｆに係止される第二編目１２を、ＦＤの編針Ｆに移動させる。即ち、第二編目１２を第一編目１１に重ねた重ね目１３を形成する（工程Ｅ）。第二編目１２は、筒状編地１の筒形状の裏側に隠れ、目立ち難い。

【0033】

ステップＳ１０では、第一フィーダー９を第二方向Ｒ２に移動させ、重ね目１３を超える位置に第一フィーダー９を停止させる。ステップＳ１１では、特定編目５０を特定編針６に戻す（工程Ｆ）。ステップＳ１０において第一フィーダー９を第二方向Ｒ２側に退避させておくことで、ステップＳ１１の特定編目５０の移動時に編糸９Ｙが絡むことを抑制できる。

【0034】

ステップＳ１２では、第一フィーダー９を第一方向Ｒ１に移動させ、重ね目１３を超える位置に第一フィーダー９を停止させる。ステップＳ１３では、第一フィーダー９を第二方向Ｒ２に移動させ、ＦＤの編針Ｇにタック目１６を編成する。さらにステップＳ１３では、重ね目１３のウエール方向に続けて終端編目３Ｅを編成する。ステップＳ１２の第一フィーダー９の移動によって、終端編目３Ｅの編成方向を第二方向Ｒ２にできる。重ね目１３のウエール方向に続けて終端編目３Ｅが編成されることで、編糸９Ｙが２回巻き付くことによって動き難くなった第一編目１１が固定される。つまり、本例では、終端編目３Ｅではない編目である第一編目１１に対してほつれ止めが行われている。ほつれ難い第一編目１１のウエール方向に続く終端編目３Ｅもほつれ難くなる。

【0035】

本例では、第一編目１１が第一方向Ｒ１に向かって編成され（図２のステップＳ１参照）、終端編目３Ｅが第二方向Ｒ２に向かって編成される。第一方向Ｒ１に向かって編成される第一編目１１は第一方向Ｒ１に引っ張られ易く、第二方向Ｒ２に向かって編成される終端編目３Ｅは第二方向Ｒ２に引っ張られ易い。第一編目１１に作用する張力と終端編目３Ｅに作用する張力とが相殺され、第一編目１１と終端編目３Ｅがウエール方向にまっすぐになり易い。

【0036】

以上説明した編成工程によって、第一編地部３が編成されると共に、第一編地部３を構成する編糸９Ｙが第一編地部３の第一編目１１にほつれ止めされる。第一編地部３の編成終了後に、第一フィーダー９からの延びる編糸９Ｙをタックによってベース編地部２につないでも良い。

【0037】

その他の実施例として、図４に示されるように、矩形状の第一編地部３を備える筒状編地１の編成に、本発明の筒状編地の編成方法を適用しても良い。図４では、第一編地部３の最終コースは紙面右側に向かって編成される。この場合、終端編目３Ｅがベース編地部２の裏側に隠れるように編成する。そうすることで、筒状編地１の表側において第一編地部３の見栄えが損なわれることが無い。

【0038】

横編機は、ＦＤとＢＤのそれぞれの上部に目移し用のベッドを備える横編機でも良い。この場合、ＦＤの上部に配置される目移し用のベッドは第一針床とみなし、ＢＤの上部に配置される目移し用のベッドは第二針床とみなす。

【符号の説明】

【0039】

１ 筒状編地
１０，１５，１６ タック目
１１ 第一編目、１２ 第二編目、１３ 重ね目
２ ベース編地部
３，４ 第一編地部
３Ｅ，４Ｅ 終端編目、３Ｓ，４Ｓ 始端編目
５ 既存編目列
５０ 特定編目
６ 特定編針
９ 第一フィーダー、９Ｙ 編糸
Ｒ１ 第一方向 Ｒ２ 第二方向

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】