(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058478
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H01P 5/18 20060101AFI20240418BHJP
H04B 1/40 20150101ALI20240418BHJP
【FI】
H01P5/18 K
H04B1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165876
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 雄太
(72)【発明者】
【氏名】降谷 孝治
(72)【発明者】
【氏名】明石 直也
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA27
5K011KA04
(57)【要約】
【課題】主線路を流れる信号の損失を低減させつつ、主線路を流れる検波対象信号を検波するときに、検波対象信号と同時に主線路を流れる非検波対象信号が副線路に漏洩することを抑制できる方向性結合器を提供する。
【解決手段】方向性結合器1は、主線路2と、第1副線路31と、第2副線路32と、第1移相回路5と、第1短絡経路8と、第1短絡スイッチ14と、を備える。第1移相回路5は、第1副線路31と第2副線路32との間に接続されている。第1短絡経路8は、第1移相回路5の両端を短絡する。第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8を導通及び非導通を切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主線路と、
第1副線路と、
第2副線路と、
前記第1副線路と前記第2副線路との間に接続された第1移相回路と、
前記第1移相回路の両端を短絡する第1短絡経路と、
前記第1短絡経路の導通及び非導通を切り替える第1短絡スイッチと、を備える
方向性結合器。
【請求項2】
前記第1短絡経路のインダクタンスは、前記第1移相回路のインダクタンスよりも小さい、
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項3】
前記第1移相回路は、ローパスフィルタを含む、
請求項1又は2に記載の方向性結合器。
【請求項4】
前記第1移相回路は、特性値が可変である回路部品を含む
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項5】
前記主線路は、互いに直列に接続された第1主線路及び第2主線路を備える、
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項6】
前記第1副線路及び前記第2副線路を含む4つの副線路を備え、
前記4つの副線路のうち、少なくとも前記第1副線路及び前記第2副線路の線路長は、同じ長さである、
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項7】
前記4つの副線路は、第3副線路及び第4副線路を含み、
前記第3副線路と前記第1副線路との導通及び非導通を切り替える第1切替スイッチと、
前記第4副線路と前記第2副線路との導通及び非導通を切り替える第2切替スイッチと、を更に備える、
請求項6に記載の方向性結合器。
【請求項8】
前記第1副線路、前記第2副線路、前記第3副線路及び前記第4副線路のうちの少なくとも1つの副線路において、
前記副線路の両端を短絡する第2短絡経路と、
前記第2短絡経路の導通及び非導通を切り替える第2短絡スイッチと、
を更に備える、
請求項7に記載の方向性結合器。
【請求項9】
複数の誘電体層を有する多層基板と、
前記第1副線路及び前記第2副線路は、互いに異なる3つの周波数帯のうち、中間の周波数帯の信号を検波するのに使用可能な副線路を構成し、
前記第3副線路は、前記3つの周波数帯のうちの最も低い周波数帯の信号を検波するのに使用可能な副線路を構成し、
前記第4副線路は、前記3つの周波数帯のうちの最も高い周波数帯の信号を検波するのに使用可能な副線路を構成し、
前記主線路、前記第1副線路及び前記第2副線路、前記第3副線路、並びに前記第4副線路は、前記複数の誘電体層のうちの異なる誘電体層に配置されている、
請求項7に記載の方向性結合器。
【請求項10】
前記多層基板の厚さ方向からの平面視で、前記第4副線路は、前記第1副線路及び前記第2副線路の間に配置されている、
請求項9に記載の方向性結合器。
【請求項11】
前記多層基板の厚さ方向からの平面視で、前記主線路は、前記第1副線路及び前記第2副線路、前記第3副線路、並びに前記第4副線路のうち、前記厚さ方向に隣り合う2つの副線路の間に配置されている、
請求項9又は10に記載の方向性結合器。
【請求項12】
前記第1移相回路、前記第1短絡スイッチ、前記第1切替スイッチ及び前記第2切替スイッチを含むICチップが前記多層基板に配置されている、
請求項9又は10に記載の方向性結合器。
【請求項13】
前記ICチップは、前記多層基板の厚さ方向からの平面視において、前記主線路と重なっている、
請求項12に記載の方向性結合器。
【請求項14】
第3副線路と、
前記第2副線路と前記第3副線路との間に接続された第2移相回路と、
前記第2移相回路の両端を短絡する第2短絡経路と、
前記第2短絡経路の導通及び非導通を切り替える第2短絡スイッチと、
前記第2副線路と前記第1移相回路との間の接続及び非接続の切り替えを行う第1切替スイッチと、
前記第2副線路と前記第2移相回路との間の接続及び非接続の切り替えを行う第2切替スイッチと、を備える、
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の方向性結合器と、
アンテナ端子と、
複数のフィルタと、
前記アンテナ端子に至る信号経路と前記複数のフィルタとの接続及び非接続を切り替えるアンテナスイッチと、を備え、
前記方向性結合器の前記主線路は、前記信号経路の一部区間を構成している、
高周波モジュール。
【請求項16】
前記アンテナスイッチは、前記方向性結合器の前記第1短絡スイッチと一体である、
請求項15に記載の高周波モジュール。
【請求項17】
請求項15に記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールに接続されており、高周波信号を信号処理する信号処理回路と、を備える、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の方向性結合器は、主線路と、2つの副線路(第1及び第2副線路)と、スイッチ回路(第1切替スイッチ及び第2切替スイッチ)とを備える。この方向性結合器では、主線路を流れる高周波数帯の第1信号を副線路から取り出すときは、副線路として第1副線路又は第2副線路が用いられる。また、主線路を流れる低周波数帯の第2信号を副線路から取り出すときは、副線路として第1副線路と第2副線路とが直列接続された副線路が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方向性結合器では、主線路を第1信号及び第2信号が同時に流れる場合において、主線路を流れる第2信号(検波対象信号)を副線路から取り出すときに、主線路を流れる第1信号(非検波対象信号)の一部が副線路に漏洩する場合がある。また、方向性結合器が主線路を流れる信号の損失を低減させることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みて、主線路を流れる信号の損失を低減させつつ、主線路を流れる検波対象信号を検波するときに、検波対象信号と同時に主線路を流れる非検波対象信号が副線路に漏洩することを抑制できる方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る方向性結合器は、主線路と、第1副線路と、第2副線路と、第1移相回路と、第1短絡経路と、第1短絡スイッチと、を備える。前記第1移相回路は、前記第1副線路と前記第2副線路との間に接続されている。前記第1短絡経路は、前記第1移相回路の両端を短絡する。前記第1短絡スイッチは、前記第1短絡経路の導通及び非導通を切り替える。
【0007】
本発明の一態様に係る高周波モジュールは、前記方向性結合器と、アンテナ端子と、複数のフィルタと、アンテナスイッチと、を備える。前記アンテナスイッチは、前記アンテナ端子に至る信号経路と前記複数のフィルタとの接続及び非接続を切り替える。前記方向性結合器の前記主線路は、前記信号経路の一部区間を構成している。
【0008】
本発明の一態様に係る通信装置は、前記高周波モジュールと、信号処理回路と、を備える。前記信号処理回路は、前記高周波モジュールに接続されており、高周波信号を信号処理する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置によれば、主線路を流れる信号の損失を低減させつつ、主線路を流れる検波対象信号を検波するときに、検波対象信号と同時に主線路を流れる非検波対象信号が副線路に漏洩することを抑制できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る方向性結合器の回路図である。
【
図2】
図2は、同上の方向性結合器の第1モードを説明する回路図である。
【
図3】
図3は、同上の方向性結合器の第2モードを説明する回路図である。
【
図4】
図4は、同上の方向性結合器の第3モードを説明する回路図である。
【
図5】
図5は、同上の方向性結合器の第4モードを説明する回路図である。
【
図6】
図6は、比較例の方向性結合器の挿入損失を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る方向性結合器の挿入損失を示すグラフである。
【
図8】
図8は、同上の方向性結合器の第3モード及び第4モードの各々の反射損失を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る方向性結合器の斜視図である。
【
図11】
図11は、同上の方向性結合器の実装基板の第2層に形成された第3副線路の平面図である。
【
図12】
図12は、同上の実装基板の第3層に形成された主線路の第1部の平面図であり、かつ、同上の実装基板の第4層に形成された主線路の第2部の平面図である。
【
図13】
図13は、同上の実装基板の第5層に形成された主線路の第3部の平面図であり、かつ、同上の実装基板の第6層に形成された主線路の第4部を示す平面図である。
【
図14】
図14は、同上の実装基板の第7層に形成された第1副線路及び第2副線路を示す平面図である。
【
図15】
図15は、同上の実装基板の第8層に形成された第4副線路の平面図である。
【
図16】
図16は、同上の実装基板の第2層~第8層を重ねた状態を示す平面図である。
【
図17】
図17は、同上の方向性結合器のICチップの内部の一部を透視した平面図である。
【
図18】
図18は、実施形態3に係る方向性結合器の回路図である。
【
図19】
図19は、実施形態3の変形例1に係る方向性結合器の回路図である。
【
図20】
図20は、実施形態4に係る通信装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置について、図面を参照して説明する。なお、明細書及び図面に記載された構成要素について、明細書及び図面に記載された大きさ及び厚さ、並びにそれらの寸法関係は例示であり、これらの構成要素は、明細書及び図面に記載された例示には限定されない。
【0012】
(実施形態1)
(1)方向性結合器の構成
図1を参照して、実施形態1に係る方向性結合器1の構成について説明する。
【0013】
方向性結合器1は、例えば、通信装置の高周波モジュールに用いられる。
図1に示すように、方向性結合器1は、高周波モジュール内の信号経路の一部区間(主線路2)を流れる高周波信号の一部を、主線路2と電磁界結合している副線路3から、検波信号として取り出す装置である。検波信号をモニタすることで、主線路2を流れる高周波信号をモニタすることが可能である。実施形態1の方向性結合器1は、副線路3の線路長を複数段階(例えば3段階)に変化可能とすることで、複数の周波数帯の信号に対応可能に構成されている。そして、実施形態1の方向性結合器1は、主線路2を流れる信号の損失を低減させつつ、主線路2に流れる検波対象信号を検波するときに、検波対象信号と同時に主線路2を流れる非検波対象信号が副線路3に漏洩することを抑制可能に構成されている。以下、この方向性結合器1について詳しく説明する。
【0014】
図1に示すように、方向性結合器1は、主線路2と、副線路3と、終端回路4と、移相回路5(第1移相回路)と、第1切替スイッチ6と、第2切替スイッチ7と、第1短絡経路8と、第2短絡経路9と、第1短絡スイッチ14、第2短絡スイッチ15と、を備える。また、方向性結合器1は、第1~第3接続端子11~13と、第1~第8スイッチ21~28と、を更に備える。
【0015】
第1~第3接続端子11~13は、外部回路(図示せず)と接続可能な端子である。第1接続端子11及び第2接続端子12は、主線路2に信号を入力したり、また、主線路2から信号を出力する入出力端子として機能する。第3接続端子13は、副線路3から取り出された検波信号を出力する出力端子として機能する。
【0016】
主線路2は、検波対象の高周波信号が流れる線路である。主線路2は、主線路2の長手方向の両端である第1端2a及び第2端2bを有する。主線路2の第1端2aは、第1接続端子11に接続されている。主線路2の第2端2bは、第2接続端子12に接続されている。
【0017】
副線路3は、主線路2と電磁界結合しており、主線路2を流れる高周波信号の一部を検波信号として取り出す線路である。副線路3は、第1副線路31、第2副線路32、第3副線路33及び第4副線路34を有する。
【0018】
第1副線路31は、第1副線路31の長手方向の両端である第1端31a及び第2端31bを有する。第1副線路31の第1端31aは、第1切替スイッチ6の後述の共通端子6aに接続されている。第1副線路31の第2端31bは、移相回路5の後述の第1端5aに接続されている。第1副線路31は、主線路2と電磁界的に結合している。
【0019】
第2副線路32は、第2副線路32の長手方向の両端である第1端32a及び第2端32bを有する。第2副線路32の第1端32aは、移相回路5の後述の第2端5bに接続されている。第2副線路32の第2端32bは、第2切替スイッチ7の後述の選択端子7aに接続されている。第2副線路32は、主線路2と電磁界的に結合している。
【0020】
第3副線路33は、第3副線路33の長手方向の両端である第1端33a及び第2端33bを有する。第3副線路33の第1端33aは、第1スイッチ21の後述の第1端子21aと第2スイッチ22の後述の第1端子22aとに接続されている。第3副線路33の第2端33bは、第1切替スイッチ6の後述の選択端子6bに接続されている。第3副線路33は、主線路2と電磁界的に結合している。
【0021】
第4副線路34は、第4副線路34の長手方向の両端である第1端34a及び第2端34bを有する。第4副線路34の第1端34aは、第2切替スイッチ7の後述の選択端子7bに接続されている。第4副線路34の第2端34bは、第7スイッチ27の後述の第1端子27aと第8スイッチ28の第1端子28aとに接続されている。第4副線路34は、主線路2と電磁界的に結合している。
【0022】
ここで、第1副線路31、第2副線路32、第3副線路33及び第4副線路34は、主線路2の長手方向に沿って並んでいる。第1副線路31の線路長M1と第2副線路32の線路長M2とは、同じ長さである。また、第3副線路33の線路長M3及び第4副線路34の線路長M4は、第1副線路31の線路長M1及び第2副線路32の線路長M2と同じであってもよいし、異なってもよい。第3副線路33の線路長M3は、第4副線路34の線路長M4よりも長い。ただし、第3副線路33の線路長M3は、第4副線路34の線路長M4よりも短くてもよいし、第4副線路34の線路長M4と同じ長さでもよい。
【0023】
方向性結合器1は、4つのモード(第1~第4モード)を有する。第1モードでは、第1副線路31、第2副線路32、第3副線路33及び第4副線路34で構成される副線路3と移相回路5とが用いられる。第2モードでは、第1副線路31及び第2副線路32で構成される副線路3と移相回路5とが用いられる。第3モード及び第4モードでは、第4副線路34で構成される副線路3が用いられる。
【0024】
終端回路4は、第1~第4モードにおいて、用いる副線路3の両端のうちの一方を終端するための回路である。より詳細には、終端回路4は、第1モードでは、上述の直列回路における第3副線路33の第1端33a及び第4副線路34の第2端34bのうちの一方を終端する。また、終端回路4は、第2モードでは、上述の直列回路における第1副線路31の第1端31a及び第2副線路32の第2端32bのうちの一方を終端する。また、終端回路4は、第3モード及び第4モードでは、第4副線路34の第1端34a及び第2端34bのうちの一方を終端する。
【0025】
移相回路5は、第1モード及び第2モードにおいて、副線路3として用いられる第1副線路31及び第2副線路32の間に接続されて、副線路3を流れることが可能な信号の周波数帯を調整するための回路である。移相回路5は、第1モード及び第2モードにおいて副線路3を流れることが可能な信号の周波数帯を調整することで、主線路2から副線路3に非検波対象の信号(例えば比較的高い周波数帯の信号)が漏洩することを抑制する。移相回路5は、第1副線路31の第1端31aと第2副線路32の第2端32bとの間の信号経路に設けられている。すなわち、移相回路5は、第1副線路31と第2副線路32との間に接続されている。より詳細には、移相回路5は、第1端5a及び第2端5bを有する。移相回路5の第1端5aは、第1副線路31の第2端31bに接続されており、移相回路5の第2端5bは、第2副線路32の第1端32aに接続されている。
【0026】
移相回路5は、例えば、インダクタ5cと、2つのキャパシタ5d,5eと、を有する。移相回路5は、インダクタ5cと2つのキャパシタ5d,5eとで構成されるローパスフィルタを有する。インダクタ5cは、移相回路5の両端間(第1端5a及び第2端5b)に接続されている。キャパシタ5dは、移相回路5の第1端5aとインダクタ5cとの接続点と、グランドとの間に接続されている。キャパシタ5eは、移相回路5の第2端5bとインダクタ5cとの接続点と、グランドとの間に接続されている。
【0027】
第1切替スイッチ6は、第1副線路31の第1端31aと第3副線路33の第2端33bとの間に設けられており、第1~第4モードに応じて、第1副線路31の第1端31aと第3副線路33の第2端33bとの接続及び非接続を切り替える。より詳細には、第1切替スイッチ6は、第1~第4モードに応じて、第1副線路31の第1端31aを、第3副線路33の第2端33bと、第3スイッチ23の第1端子23a及び第4スイッチ24の第1端子24aとのうちの一方に接続する。
【0028】
第1切替スイッチ6は、共通端子6aと、複数(図示例では2つ)の選択端子6b,6cと、を有する。共通端子6aは、第1副線路31の第1端31aに接続されている。選択端子6bは、第3副線路33の第2端33bに接続されている。選択端子6cは、第3スイッチ23を介して第3接続端子13に接続され、かつ第4スイッチ24を介して終端回路4に接続されている。
【0029】
第2切替スイッチ7は、第2副線路32の第2端32bと第4副線路34の第1端34aとの間に設けられており、第1~第4モードに応じて、第2副線路32の第2端32bと第4副線路34の第1端34aとの接続及び非接続を切り替える。より詳細には、第2切替スイッチ7は、第1~第4モードに応じて、第2副線路32の第2端32bと、第4副線路34の第1端34aと、第5スイッチ25の第1端子25a及び第6スイッチ26の第1端子26aとのうちのいずれか2つを選択的に接続する。すなわち、第2切替スイッチ7は、第2副線路32の第2端32bと第4副線路34の第1端34aとを接続するか、第2副線路32の第2端32bと第5スイッチ25の第1端子25a及び第6スイッチ26の第1端子26aとを接続するか、又は、第4副線路34の第1端34aと第5スイッチ25の第1端子25a及び第6スイッチ26の第1端子26aとを接続する。
【0030】
第2切替スイッチ7は、3つの選択端子7a,7b,7cを有する。3つの選択端子7a,7b,7cは、これらの中のいずれか2つが選択的に接続される。選択端子7aは、第2副線路32の第2端32bに接続されている。選択端子7bは、第4副線路34の第1端34aに接続されている。選択端子7cは、第5スイッチ25の第1端子25a及び第6スイッチ26の第1端子26aに接続されている。なお、第2切替スイッチ7は、共通端子と切替端子を1個ずつ備えるSPST(Single-Pole single- Throw)スイッチを組み合わせて構成しても構わない。
【0031】
第1短絡経路8は、移相回路5の両端(第1端5a及び第2端5b)の間を短絡する配線経路である。第1短絡経路8のインダクタンスは、例えば、移相回路5のインダクタンスよりも小さい。第1短絡経路8のインダクタンスは、例えば、第1副線路31のインダクタンス及び第2副線路32のインダクタンスよりも小さい。第1短絡経路8の線路長M15は、例えば、第1副線路31の線路長M1及び第2副線路32の線路長M2よりも短い。
【0032】
第1短絡スイッチ14は、第1~第4モードに応じて、第1短絡経路8を導通及び非導通にする。第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8を非導通にすることで、第1短絡経路8を無効にする。また、第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8を導通にすることで、移相回路5のインダクタに第1短絡経路8のインダクタ成分を並列に接続させる。これにより、移相回路5及び第1短絡経路8を並列に接続した並列回路のインダクタは、移相回路5単独のインダクタよりも小さくなる。方向性結合器1では、主線路2と副線路3との間の寄生容量と上記の並列回路のインダクタとによって、共振回路が構成される。上述のように、上記並列回路のインダクタが移相回路5単独のインダクタよりも小さくなることで、上記共振回路の共振周波数は、方向性結合器1で検波する信号の周波数帯よりも高くなる。この結果、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号の周波数帯よりも高くなり、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0033】
第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8の両端の間に設けられている。ただし、第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8の一端に設けられてもよいし、第1短絡経路8の両端に1つずつ計2個設けられてもよい。
【0034】
第2短絡経路9は、第3副線路33の両端(第1端33a及び第2端33b)の間を短絡する配線経路である。
【0035】
第2短絡スイッチ15は、第1~第4モードに応じて、第2短絡経路9を導通及び非導通にする。第2短絡スイッチ15は、第2短絡経路9を非導通にすることで、第2短絡経路9によって第3副線路33の両端を短絡させなくする。また、第2短絡スイッチ15は、第2短絡経路9を導通にすることで、第2短絡経路9によって第3副線路33の両端を短絡させる。実施形態1では、後述のように、第4モードにおいて、第2短絡スイッチ15を導通にして第3副線路33の両端を短絡させる。これにより、第4モードで用いる副線路3(第4副線路34単体)の反射損失の特性がより高い周波数帯で有利となるように微調整される。これにより、後述のように、第4副線路34単体で構成される副線路3を、未使用の第3副線路33の両端の短絡の有無で、異なる周波数帯に対応する2つのモード(第3モードと第4モード)で使い分けることができる。
【0036】
第1~第8スイッチ21~28は、各モード(第1~第4モード)で用いる副線路3の両端のうち、一方を第1接続端子11に接続し、他方を終端回路4に接続するためのスイッチである。より詳細には、第1~第8スイッチ21~28は、各モードで用いる副線路3において、主線路2において検波対象信号が流れる方向と同じ方向の一端を終端回路4に接続し、かつ、主線路2において検波対象信号が流れる方向と逆方向の一端を第3接続端子13に接続するように、接続及び非接続を切り替える。
【0037】
第1~第8スイッチ21~28はそれぞれ、互いに接続及び非接続の切り替えが可能な2つの端子(第1端子及び第2端子)を有する。第1スイッチ21及び第2スイッチの各々の第1端子21a,22aは、第3副線路33の第1端33aに接続されている。第3スイッチ23及び第4スイッチの各々の第1端子23a,24aは、第1切替スイッチ6の選択端子6cに接続されている。第5スイッチ25及び第6スイッチ26の各々の第1端子25a,26aは、第2切替スイッチ7の選択端子7cに接続されている。第7スイッチ27及び第8スイッチ28の各々の第1端子27a,28aは、第4副線路34の第2端34bに接続されている。第1スイッチ21、第3スイッチ23、第5スイッチ25及び第7スイッチ27の各々の第2端子21b,23b,25b,27bは、第3接続端子13に接続されている。第2スイッチ22、第4スイッチ24、第6スイッチ26及び第8スイッチ28の各々の第2端子22b,24b,26b,28bは、終端回路4に接続されている。
【0038】
方向性結合器1は、上述の通り、第1モードと、第2モードと、第3モードと、第4モードとを有する。第1モードは、主線路2を流れる高周波信号のうち第1周波数帯の信号を検波するモードである。第2モードは、主線路2を流れる高周波信号のうち第2周波数帯の信号を検波するモードである。第3モードは、主線路2を流れる高周波信号のうち第3周波数帯の信号を検波するモードである。第4モードは、主線路2を流れる高周波信号のうち第4周波数帯の信号を検波するモードである。
【0039】
第1周波数帯は、例えば617MHz~960MHzの周波数帯(すなわちLB(ローバンド))に対応する。以後、第1モードをLBモードと記載する場合がある。第2周波数帯は、例えば1.427GHz~2.69GHzの周波数帯(すなわちMB(ミドルバンド)~HB(ハイバンド))に対応する。以後、第2モードをMB-HBモードと記載する場合がある。第3周波数帯は、例えば3.3GHz~4.2GHzの周波数帯(すなわちUHB(ウルトラハイバンド))に対応する。以後、第3モードをUHB1モードと記載する場合がある。第4周波数帯は、例えば4.4GHz~5.0GHzの周波数帯(すなわちUHB(ウルトラハイバンド))に対応する。以後、第4モードをUHB2モードと記載する場合がある。
【0040】
(2)動作
(2.1)第1モード
図2を参照して、第1モードについて説明する。第1モードでは、方向性結合器1は、第1副線路31、第2副線路32、第3副線路33及び第4副線路34で構成される副線路3と、移相回路5とを用いる。このため、第1切替スイッチ6において共通端子6aと選択端子6bとを接続し、第2切替スイッチ7において選択端子7aと選択端子7bとを接続し、第1短絡スイッチ14及び第2短絡スイッチ15を共に非導通にする。
【0041】
第1モードで用いる副線路3は、第1~第4モードで用いる副線路3のうちで、一番長い線路長を有する。これにより、第1モードで用いる副線路3は、比較的低い周波帯(例えば第1周波数帯)の信号を検波可能である。第1モードで用いる副線路3では、移相回路5によって副線路3を流れることが可能な信号の周波数帯を調整することで、比較的高い周波数帯の信号を流れ難くしている。
【0042】
第1モードにおいて、主線路2を流れる順方向信号S1(第1接続端子11から第2接続端子12に流れる信号)を検波する場合(
図2参照)は、第1スイッチ21を導通にして第3副線路33の第1端33aを第3接続端子13に接続し、第8スイッチ28を導通にして第4副線路34の第2端34bを終端回路4に接続する。残りのスイッチ(第2~第7スイッチ22~27)は、非導通にする。
【0043】
また、第1モードにおいて、主線路2を流れる逆方向信号(第2接続端子12から第1接続端子11に流れる信号)を検波する場合(図示省略)は、第2スイッチ22を導通にして第3副線路33の第1端33aを終端回路4に接続し、第7スイッチ27を導通にして第4副線路34の第2端34bを第3接続端子13に接続する。残りのスイッチ(第1、第3~第6、第8スイッチ21,23~26,28)は、非導通にする。
【0044】
第1モードでは、方向性結合器1は、主線路2を流れる高周波信号のうちの第1周波数帯の信号(検波対象信号)の一部を副線路3から検波信号として取り出し、その検波信号を、第3接続端子13から外部装置(例えば、検波器)に出力する。第1モードでは、移相回路5によって、用いる副線路3を流れることが可能な信号の周波数帯が調整されている。これにより、副線路3には、第1周波数帯よりも高い周波数帯(第3周波数帯及び第4周波数帯)の信号(非検波対象信号)が流れることが抑制される。これにより、主線路2を流れる高周波信号のうち、検波対象信号以外の非検波対象信号(第3周波数帯及び第4周波数帯の信号)が副線路3に漏洩することが抑制される。
【0045】
(2.2)第2モード
図3を参照して、第2モードについて説明する。第2モードでは、方向性結合器1は、第1副線路31及び第2副線路32で構成される副線路3と、移相回路5とを用いる。このため、第1切替スイッチ6において共通端子6aと選択端子6cとを接続し、第2切替スイッチ7において選択端子7aと選択端子7cとを接続し、第1短絡スイッチ14及び第2短絡スイッチ15を共に非導通する。
【0046】
第2モードで用いる副線路3は、第1~第4モードで用いる副線路3のうち、中間の長さの線路長を有する。これにより、第2モードで用いる副線路3は、第1~第4モードで検波する周波数帯のうちの中間の周波帯(例えば第2周波数帯)の信号を検波可能である。第2モードで用いる副線路3では、移相回路5によって副線路3を流れることを可能な信号の周波数帯を調整することで、比較的高い周波数帯の信号を流れ難くしている。第2モードで用いる副線路3の線路長は中間の長さであるため、比較的低い周波数帯(例えば第1周波数帯)の信号は流れない。
【0047】
第2モードにおいて、主線路2を流れる順方向信号S1を検波する場合(
図3参照)は、第3スイッチ23を導通にして第1副線路31の第1端31aを第3接続端子13に接続し、第6スイッチ26を導通にして第2副線路32の第2端32bを終端回路4に接続する。残りのスイッチ(第1、第2、第4、第5、第7、第8スイッチ21,22,24,25,27,28)は、非導通にする。
【0048】
また、第2モードにおいて、主線路2を流れる逆方向信号を検波する場合(図示省略)は、第4スイッチ24を導通にして第1副線路31の第1端31aを終端回路4に接続し、第5スイッチ25を導通にして第2副線路32の第2端32bを第3接続端子13に接続する。残りのスイッチ(第1~第3、第6~第8スイッチ21~23,26~28)は、非導通にする。
【0049】
第2モードでは、方向性結合器1は、主線路2を流れる高周波信号のうちの第2周波数帯の信号(検波対象信号)の一部を副線路3から検波信号として取り出し、その検波信号を、第3接続端子13から外部装置(例えば、検波器)に出力する。第2モードでは、移相回路5によって、副線路3を流れることが可能な信号の周波数帯が調整されている。これにより、副線路3には、第2周波数帯よりも高い周波数帯(第3周波数帯及び第4周波数帯)の信号(非検波対象信号)が流れることが抑制される。これにより、主線路2を流れる高周波信号のうち、検波対象信号以外の非検波対象信号(第3周波数帯及び第4周波数帯の信号)が副線路3に漏洩することが抑制される。
【0050】
(2.3)第3モード
図4を参照して、第3モードについて説明する。第3モードでは、方向性結合器1は、第4副線路34で構成される副線路3を用いる。このため、第2切替スイッチ7において選択端子7bと選択端子7cとを接続する。また、第1切替スイッチ6において、例えば、共通端子6aを選択端子6cと接続する。なお、第1切替スイッチ6において、共通端子6aを選択端子6b,6cの両方と接続しないようにしてもよい。また、第3モードでは、第1短絡スイッチ14を導通にする。また、第2短絡スイッチ15を非導通にする。
【0051】
第3モードで用いる副線路3は、第1~第4モードで用いる副線路3のうちで、一番短い線路長を有する。これにより、第3モードで用いる副線路3は、比較的高い周波帯域(例えば第3周波数帯及び第4周波数帯)の信号を検波可能である。第3モードで用いる副線路3では、比較的低い周波数帯の信号は検波されない。
【0052】
上述のように、第2短絡スイッチ15を非導通にして、第2短絡経路9による第3副線路33の短絡を無効にすることで、用いる副線路3を流れることが可能な信号の周波数帯が調整される。これにより、第3モードで用いる副線路3は、第3周波数帯及び第4周波数帯のうち、第3周波数帯の信号のみを検波可能になる。
【0053】
また、上述のように、第1短絡スイッチ14を導通にすることで、第1短絡経路8を移相回路に並列接続させる。これにより、移相回路5のインダクタ5cに第1短絡経路8のインダクタ成分が並列に接続される。このため、移相回路5及び第1短絡経路8からなる並列回路のインダクタンスは、移相回路5のインダクタンスよりも小さくなる。方向性結合器1では、主線路2と副線路3との間の寄生容量と上記の並列回路のインダクタとによって、共振回路が構成される。上述のように、上記の並列回路のインダクタンスが移相回路5のインダクタンスよりも小さくなることで、上記共振回路の共振周波数は、主線路2を流れる信号の周波数帯よりも高くなる。この結果、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0054】
第3モードにおいて、順方向信号S1を検波する場合(
図4参照)は、用いる副線路3において、第5スイッチ25を導通にして第4副線路34の第1端34aを第3接続端子13に接続し、第8スイッチ28を導通にして第4副線路34の第2端34bを終端回路4に接続する。残りのスイッチ(第1~第4、第6、第7スイッチ21~24,26,27)は、非導通にする。
【0055】
また、第3モードにおいて、逆方向信号を検波する場合(図示省略)は、用いる副線路3において、第6スイッチ26を導通にして第4副線路34の第1端34aを終端回路4に接続し、第7スイッチ27を導通にして第4副線路34の第2端34bを第3接続端子13に接続する。残りのスイッチ(第1~第5、第8スイッチ21~25,28)は、非導通にする。
【0056】
第3モードでは、方向性結合器1は、主線路2を流れる高周波信号のうちの第3周波数帯の信号(検波対象信号)の一部を副線路3から検波信号として取り出し、その検波信号を、第3接続端子13から外部装置(例えば、検波器)に出力する。その際、上述のように、第1短絡経路8のインダクタ成分を移相回路5のインダクタに並列接続することで、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0057】
(2.4)第4モード
図5を参照して、第4モードについて説明する。第4モードは、第3モードにおいて、第2短絡スイッチ15を導通にすることで、第2短絡経路9によって未使用の第3副線路33の両端を短絡したモードである。これにより、第4モードでは、第3周波数帯及び第4周波数帯のうち、周波数帯がより高い方の第4周波数帯の信号のみを検波可能になる。
【0058】
より詳細には、第4モードでは、方向性結合器1は、第3モードの場合と同様に、第4副線路34で構成される副線路3を用いる。このため、第2切替スイッチ7において選択端子7bと選択端子7cとを接続する。また、第1切替スイッチ6において、共通端子6aを選択端子6cと接続する。なお、第1切替スイッチ6において、共通端子6aを選択端子6b,6cの両方と接続しないようにしてもよい。また、第1短絡スイッチ14は導通にする。第2短絡スイッチ15は、上述の通り非導通にする。
【0059】
第4モードで用いる副線路3は、第3モードの場合と同様に、第1~第4モードで用いる各副線路3のうちで、一番短い線路長を有する。また、第4モードでは、上述の通り、第2短絡スイッチ15を導通にして、第2短絡経路9による未使用の第3副線路33の短絡を有効にする。これにより、第4モードで用いる副線路3は、第3モードで検波する周波数帯(第3周波数帯)よりも高い周波帯域である第4周波数帯の信号を検波可能になる。
【0060】
また、第4モードでは、第3モードの場合と同様に、第1短絡スイッチ14を導通にして第1短絡経路8を移相回路に並列接続させる。これにより、第4モードでは、第3モードの場合と同様に、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0061】
第4モードにおいて、順方向信号S1を検波する場合(
図5参照)は、第3モードの場合と同様に、用いる副線路3において、第5スイッチ25を導通にして第4副線路34の第1端34aを第3接続端子13に接続し、第8スイッチ28を導通にして第4副線路34の第2端34bを終端回路4に接続する。残りのスイッチ(第1~第4、第6、第7スイッチ21~24,26,27)は、非導通にする。
【0062】
また、第4モードにおいて、逆方向信号を検波する場合(図示省略)は、第3モードの場合と同様に、用いる副線路3において、第6スイッチ26を導通にして第4副線路34の第1端34aを終端回路4に接続し、第7スイッチ27を導通にして第4副線路34の第2端34bを第3接続端子13に接続する。残りのスイッチ(第1~第5、第8スイッチ21~25,28)は、非導通にする。
【0063】
第4モードでは、方向性結合器1は、主線路2を流れる高周波信号のうちの第4周波数帯の信号(検波対象信号)の一部を副線路3から検波信号として取り出し、その検波信号を、第3接続端子13から外部装置(例えば、検波器)に出力する。第4モードでは、上述のように、第1短絡経路8の短絡を有効にして第1短絡経路8を移相回路5に並列接続することで、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。すなわち、方向性結合器1が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0064】
(3)方向性結合器の方向性(Directivity)の特性について
図1に示すように、実施形態1では、4つの副線路(第1~第4副線路31~34)のうちの中央の2つの副線路(第1副線路31及び第2副線路32)の間に、移相回路5が接続される。第1副線路31及び第2副線路32の線路長M1,M2は、互いに同じ長さである。そして、第1副線路31及び第2副線路32を第2モードの副線路3として用い、第4副線路34を第3モード及び第4モードの副線路3として用いる。
【0065】
つまり、第1副線路31及び第2副線路32のうち、一方が第3モード及び第4モード(比較的高い周波数の信号を検波するモード)の副線路3として用いられ、他方が第2モード(中間の周波数帯の信号を検波するモード)の副線路3として用いられるということがない。このため、第2モードの副線路3の適合度を調整するために第1副線路31及び第2副線路32の各線路長M1,M2を調整するとき、第3モード及び第4モードと独立して、調整可能である。このため、第1副線路31及び第2副線路32の各線路長M1,M2を互いに同じ長さに調整できる。
【0066】
実施形態1では、4つの副線路(第1~第4副線路31~34)のうちの中央の2つの副線路(第1副線路31及び第2副線路32)の間に移相回路5が接続される。これにより、主線路2を順方向に流れる信号(順方向信号)から見たときと、主線路2を逆方向に流れる信号(逆方向信号)から見たときとで、4つの副線路(第1~第4副線路31~34)の中の移相回路5の配置が同じになる。これにより、方向性結合器1が双方向性の場合において、順方向信号を検波するときと、逆方向信号を検波するときとで、方向性(Directivity)の特性のバラつきを抑制できる。
【0067】
さらに、第1副線路31及び第2副線路32の線路長M1,M2は、互いに同じ長さである。このため、方向性結合器1が双方向性の場合において、順方向信号を検波するときと、逆方向信号を検波するときとで、方向性の特性のバラつきを更に抑制できる。
【0068】
(4)未使用の移相回路の短絡による効果
実施形態1では、上述の通り、第3モード及び第4モードにおいて、未使用の移相回路5は、第1短絡経路8によって短絡される。これにより、方向性結合器1が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0069】
図6は、比較例の方向性結合器の挿入損失(主線路2に流れる信号の挿入損失:Insertion Loss)を示す。比較例は、実施形態1の方向性結合器1において、第3モード及び第4モードにおいて未使用の移相回路5を短絡しない場合である。
図7は、実施形態1の方向性結合器1の挿入損失(主線路2に流れる信号の挿入損失)を示す。実施形態1の方向性結合器1では、上述の通り、第3モード及び第4モードにおいて未使用の移相回路5を第1短絡経路8によって短絡する。
図6及び
図7では、ともに、横軸が周波数[GHz]であり、縦軸が挿入損失[dB]である。
【0070】
図6から、比較例では、高周波側でノッチN1が発生して、挿入損失はノッチN1の低周波側で急速に絶対値が大きくなっていることが分かる。また、
図7から、実施形態1の方向性結合器1では、高周波側でノッチが発生しないため、高周波側では、挿入損失は、比較例と比べて緩やかに絶対値が大きくなっていることが分かる。これらから、実施形態1の方向性結合器1では、挿入損失を改善することが可能であることが分かる。これにより、実施形態1の方向性結合器1では、主線路2を流れる信号の損失を低減できることが分かる。
【0071】
(5)未使用の第3副線路の短絡による効果
実施形態1では、上述の通り、第3モードでは、未使用の第3副線路33は、第2短絡経路9によって短絡されず、第4モードでは、未使用の第3副線路33は、第2短絡経路9によって短絡される。これにより、第4モードで検波される周波数帯(第4周波数帯)は、第3モードで検波される周波数帯(第3周波数帯)よりも高い周波数帯になっている。
【0072】
図8において、グラフG1は、第3モードでの反射損失(Return Loss)を示し、グラフG2は、第4モードでの反射損失を示す。
図8において、符号f1は、第3モードでの反射損失が極小値を取る第1周波数であり、符号f2は、第4モードでの反射損失の極小値を取る第2周波数である。
【0073】
図8から、グラフG1,G2は、互いに同じように、低周波側から高周波側に向かって上昇して減少した後に極小値を取り、さらに高周波側に行くほど上昇することが分かる。また、
図8から、第2周波数f2は、第1周波数f1よりも高周波側に位置することで、第2周波数f2よりも高周波側では、グラフG2は、グラフG1よりも小さくなる(すなわち、第2周波数f2よりも高周波側では、第4モードの反射損失は、第3モードの反射損失よりも小さくなる)ことが分かる。すなわち、第4モードでは、第3モードと比べて、より高い周波数帯で検波しても損失が少ないことが分かる。この事から、第4モードは、第3モードよりも高周波側の周波数帯を検波するのに適していることが分かる。これにより、第4モードで検波される周波数帯(第4周波数帯)は、第3モードで検波される周波数帯(第3周波数帯)よりも高い周波数帯になっている。
【0074】
(6)効果
実施形態1に係る方向性結合器1は、主線路2と、第1副線路31と、第2副線路32と、移相回路5(第1移相回路)と、第1短絡経路8と、第1短絡スイッチ14と、を備える。第1移相回路5は、第1副線路31と第2副線路32との間に接続されている。第1短絡経路8は、移相回路5の両端5a,5bを短絡する。第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8の導通及び非導通を切り替える。
【0075】
この構成によれば、第1副線路31と第2副線路32との間に移相回路5が接続される。このため、第1副線路31及び第2副線路32で構成される副線路3と移相回路5とを用いて、主線路2を同時に流れる互いに異なる周波数帯の第1信号及び第2信号のうちの第2信号を検波するときに、第1移相回路5によって、副線路3に非検波対象信号である第1信号が漏洩することを抑制できる。
【0076】
また、移相回路5を用いないとき、移相回路5のインダクタ5cと副線路3と主線路2との間の寄生容量とで形成される共振回路の共振周波数によって、主線路2を流れる信号に損失が発生する場合がある。ところが、実施形態1では、移相回路5を用いないときは、第1短絡スイッチ14を導通に切り替えることで、移相回路5のインダクタ5cに第1短絡経路8のインダクタ成分を並列接続できる。これにより、上記共振回路の全体のインダクタのインダクタンスを低減できる。これにより、上記共振回路の共振周波数を、主線路2を流れる信号の周波数帯よりも高くできる。これにより、移相回路5を用いないときは、第1短絡経路8を導通にすることで、上記共振回路の共振周波数が主線路2を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0077】
以上より、主線路2に流れる信号の損失を低減させつつ、主線路2に流れる検波対象信号を検波するときに、検波対象信号と同時に主線路2を流れる非検波対象信号が副線路3に漏洩することを抑制できる。
【0078】
(7)変形例
実施形態1の変形例を説明する。
【0079】
(7-1)変形例1
実施形態1の移相回路5は、特性値が固定された回路部品(インダクタ5c及びキャパシタ5d,5e)で構成される。なお、「回路部品の特性値」とは、回路部品の機能に関する特性を規定する値であり、回路部品が可変抵抗器である場合は抵抗値であり、回路部品がキャパシタである場合は容量値であり、回路部品がインダクタである場合はインダクタンスである。これに対し、本変形例の移相回路5は、特性値が可変である回路部品(可変キャパシタ)で構成される。すなわち、本変形例の移相回路5は、実施形態1の移相回路5の回路部品(インダクタ5c及びキャパシタ5d,5e)を、特性値が可変である回路部品(可変キャパシタ)に置換した回路である。
【0080】
本変形例によれば、移相回路5を構成する回路部品の特性値を調整できる。このため、各モードで用いる各副線路3と主線路2との結合度の周波数特性を微調整できる。これにより、主線路2を同時に流れる第1信号及び第2信号のうちの第2信号の一部を副線路3から取り出すときに、主線路2を流れる第1信号に損失が発生することを更に抑制できる。また、第1モード及び第2モードで用いる副線路3のインピーダンス等の変化によって上記結合度の周波数特性が変化しても、上記結合度の周波数特性を容易に調整できる。
【0081】
(7-2)変形例2
実施形態1では、4つの副線路(第1~第4副線路31~34)のうち第3副線路33のみに短絡経路(第2短絡経路9)及び短絡スイッチ(第2短絡スイッチ15)が設けられる。ただし、短絡経路及び短絡スイッチは、4つの副線路のうちの少なくとも1つの副線路に設けられてもよい。
【0082】
(7-3)変形例3
実施形態1では、4つの副線路(第1~第4副線路31~34)のうち、第1副線路31及び第2副線路32の線路長M1,M2が互いに同じ長さである。ただし、4つの副線路のうち、少なくとも第1副線路31及び第2副線路32の線路長が互いに同じ長さであればいい。これにより、主線路2を順方向に流れる信号(順方向信号)から見たときと、主線路2を逆方向に流れる信号(逆方向信号)から見たときとで、方向性結合器1の方向性の特性のバラつきをより一層抑制できる。
【0083】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1で説明した方向性結合器1の構造の一例について説明する。以下の説明では、実施形態1と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0084】
(1)方向性結合器の構造の一例
図9及び
図10に示すように、実施形態2に係る方向性結合器1は、実装基板40と、IC(Integrated Circuit)チップ41とを備える。
【0085】
ICチップ41は、
図1に示す第1切替スイッチ6、第2切替スイッチ7、第1短絡スイッチ14、第2短絡スイッチ15、第1短絡経路8、第2短絡経路9、第1~第8スイッチ21~28、制御回路、終端回路4及び移相回路5を含む半導体ICである。上記制御回路は、外部からの制御信号に応じて第1切替スイッチ6、第2切替スイッチ7、第1短絡スイッチ14、第2短絡スイッチ15及び第1~第8スイッチ21~28を制御する。すなわち、ICチップ41は、第1切替スイッチ6、第2切替スイッチ7、第1短絡スイッチ14、第2短絡スイッチ15、第1~第8スイッチ21~28、上記制御回路、終端回路4及び移相回路5と一体に構成されている。
【0086】
また、ICチップ41の裏面(実装基板40側の主面)には、複数の外部端子41a及び複数の外部端子41bが設けられている(
図10参照)。複数の外部端子41aは、後述の実装基板40の複数の端子44aと半田などで一対一に接続される。複数の外部端子41bは、後述の実装基板40の複数の端子44bと半田などで一対一に接続される。
【0087】
実装基板40は、例えば、複数(図示例では9つ)の誘電体層(第1~第9層401~409)を有する多層基板である。第1~第9層はそれぞれ、第1面及び第2面を有する。第1面は、ICチップ41側の主面であり、第2面は、ICチップ41側とは反対側の主面である。
【0088】
主線路2は、第1端2a側の半分である第1半部分(第1部2s及び第2部2t)と、第2端2b側の半分である第2半部分(第3部2u及び第4部2v)とに分割されている。さらに、主線路2の上記第1半部分は、下層側の第1部2sと上層側の第2部2tとの2層構造によって構成されている。主線路2の上記第2半部分(第3部2u及び第4部2v)は、下層側の第3部2uと上層側の第4部2vとの2層構造によって構成されている。
【0089】
第1層401の第2面には、方向性結合器1の第1、第2及び第3接続端子11,12,13が配置されている。第2層402の第1面には、第3副線路33が形成されている。第3層403の第1面には、主線路2の第1部2sが形成され、第4層404の第1面には、主線路2の第2部2tが形成されている。第1部2sと第2部2tとは、複数のビア導体によって接続されている。第5層405の第1面には、主線路2の第3部2uが形成され、第6層406の第1面には、主線路2の第4部2vが形成されている。第3部2uと第4部2vとは、複数のビア導体によって接続されている。主線路2の第2部2tの一端(第1端2a側とは反対側の端)2pと第3部の一端(第2端2b側とは反対側の端)2qとは、ビア導体(図示省略)によって接続されている。第7層407の第1面には、第1副線路31及び第2副線路32が形成されている。第8層408の第1面には、第4副線路34が形成されている。
【0090】
第9層409には、複数(例えば11つ)の端子が形成されている。この複数の端子は、8つの端子44aと、3つの端子44bとを含む、8つの端子44aは、ビア導体及び配線層を介して、第1~第4副線路31~34の各々の第1端31a,32a,33a,34a及び第2端31b,32b,33b,34bと一対一に接続される。3つの端子44bは、ビア導体及び配線層を介して、第1層401の第1~第3接続端子11~13と一対一で接続される。また、8つの端子44aは、ICチップ41の外部端子41aと一対一に対応する位置に配置されており、対応する外部端子41aと半田などで接続される。また、3つの端子44bは、ICチップ41の外部端子41bと一対一に対応する位置に配置されており、対応する外部端子41bと半田などで接続される。
【0091】
実装基板40では、
図10に示すように、下側から、第1層401、第2層402、第3層403、第4層404、第5層405、第6層406、第7層407、第8層408及び第9層409の順に積層されている。これにより、主線路2、第1~第4副線路31~34は、実装基板(多層基板)40の内部に設けられている。また、実装基板40の第1主面40a(すなわち第9層409の第1面)には、ICチップ41が配置される。実装基板40の第1主面は、実装基板40における厚さ方向D1の一方の主面である。実装基板40の第1主面には、ICチップ41を覆うように樹脂層(図示省略)が配置されている。また、ICチップ41の大きさは、実装基板40の第1主面よりも小さくてもよく、その場合はICチップ41を覆う樹脂層の一部が実装基板40の第1主面を覆うように配置される。
【0092】
実施形態2では、第1副線路31の第2端31bは、ビア導体及び配線層を介して端子44cに接続されている。端子44cとICチップ41の外部端子41cとが半田付けされることで、第1副線路31の第2端32bは、外部端子41cに接続される。第2副線路32の第1端32aは、ビア導体及び配線層を介して端子44dに接続されている。端子44dとICチップ41の外部端子41dとが半田付けされることで、第2副線路32の第1端31aは、外部端子41dに接続される。なお、端子44c,44dは、複数の端子44aのうちの所定の2つの端子である。外部端子41c,41dは、複数の外部端子41aのうちの所定の2つの外部端子である。
【0093】
方向性結合器1では、実装基板40の厚さ方向D1(
図10参照)からの平面視において、主線路2(すなわち第1~第4部2s,2t,2u,2v)、第1~第4副線路31~34とICチップ41とが重なっている。これにより、ICチップ41と方向性結合器1との接続距離を短くすることが可能となる。この結果、ICチップ41と方向性結合器1とを接続する配線に、不要なインダクタが発生することを抑制することが可能となる。なお、ICチップ41は、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視において、主線路2、第1~第4副線路31~34の少なくとも1つと重なっていればよい。
【0094】
また、方向性結合器1では、上述のように、移相回路5はICチップ41と一体であるため、移相回路5を、実装基板40の内部に配置された主線路2から物理的に離すことができる。このため、移相回路5と主線路2との不要な結合を避けることができる。また、ICチップ41は、移相回路5、第1短絡スイッチ14、第1切替スイッチ6及び第2切替スイッチ7と一体であるため、移相回路5は、第1短絡スイッチ14,第1切替スイッチ6及び第2切替スイッチ7と近接して配置される。このため、移相回路5と、第1短絡スイッチ14,第1切替スイッチ6及び第2切替スイッチ7との接続距離を短くできる。
【0095】
(2)実装基板の各層での主線路及び第1~第4副線路の形状
(2-1)第2層での第3副線路の形状
図11に示すように、第3副線路33は、第2層402の第1面402aにパターン形成されている。ここで、第1面402aにおいて、互いに直交する第1方向A1及び第2方向A2を
図11等のように規定する。また、一例として、
図11等の第1方向A1の右側と第1側と規定し、第1方向A1の左側を第2と規定する。また、一例として、第2方向A2の上側を第3側と規定し、第2方向A2の下側を第4側と規定する。
【0096】
第3副線路33は、開環部33cと、第1延在部33dと、第2延在部33eとを有する。開環部33cは、ほぼ一周して一部が開いた環状(すなわち略C形状)であって、第1方向A1の第2側の一部が開いている。開環部33cは、その開いた部分の両端である第1端及び第2端を有する。第1延在部33dは、開環部33cの第1端から、第1方向A1の第2側に向かって直線状に延在している。第2延在部33eはは、開環部33cの第2端から、第1方向A1の第2側に向かって直線状に延在している。第3副線路33の第1端33aは、第1延在部33dにおける第1方向A1の第2側の端である。第3副線路33の第2端33bは、第2延在部33eにおける第1方向A1の第2側の端である。
【0097】
第3副線路33の第1端33a及び第2端33bはそれぞれ、ビア導体B1等の配線路を介して、第9層409における決められた端子44aに接続されている。
【0098】
(2-2)第3層での主線路の第1部の形状
図12に示すように、主線路2の第1部2sは、第3層403の第1面403aにパターン形成されている。第1面403aにおいて、互いに直交する第1方向A1及び第2方向A2を
図12のように規定する。
【0099】
主線路2の第1部2sは、開環部2fと、延在部2eとを有する。開環部2fは、略4分の3周して一部が開いた環状(すなわち略C形状)であって、第2方向A2の第3側かつ第1方向A1の第1側の一部が開いている。開環部2fは、その開いた部分の両端である第1端及び第2端2gを有する。延在部2eは、開環部2fの上記第1端から、第1方向A1の第1側に向かって直線状に延在している。延在部2eにおける第1方向A1の第1側の端は、開環部2fの第2端2gよりも第1方向A1の第1側に配置されており、主線路2の第1端2aを構成する。
【0100】
主線路2の第1部2sには、主線路2の第2部2tと接続するための複数のビア導体B1が接続されている。複数のビア導体B1は、第1部2sに沿って間隔を空けて配置されている。
【0101】
(2-3)第4層での主線路の第2部の形状
図12に示すように、主線路2の第2部2tは、第4層404の第1面404aにパターン形成されている。主線路2の第2部2tは、主線路2の第1部2sと同形同大である。主線路2の第1部2sの形状は、実装基板40の厚さ方向D1から見た平面視で、第3層403に設けられた第1部2sの形状と一致する。したがって、主線路2の第2部2tは、主線路2の第1部2sと同様に、延在部2jと開環部2kとを有する。第2部2tの延在部2j及び開環部2kの形状は、第1部2sの延在部2e及び開環部2fの形状と同じであるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0102】
延在部2iにおける第1方向A1の第1側の端は、主線路2の第1端2aを構成する。また、開環部2kの第2端2pは、
図10に示す第2部2tの一端2pである。
【0103】
主線路2の第2部2tは、上述の通り、複数のビア導体B1によって主線路2の第1部2sと接続されている。
【0104】
(2-4)第5層での主線路の第3部の形状
図13に示すように、主線路2の第3部2uは、第5層405の第1面405aにパターン形成されている。主線路2の第3部2uは、主線路2の第1部2sにおいて、第2方向A2の第3側と第4側とを入れ替えた形状である。したがって、主線路2の第3部2uは、第1部2sと同様に、開環部2rと延在部2nとを有する。第3部2uの開環部2r及び延在部2nの形状は、第1部2sの開環部2f及び延在部2eの形状を、第2方向A2の第3側と第4側とを入れ替えた場合の形状と同じである。
【0105】
より詳細には、開環部2rは、略4分の3周して一部が開いた環状(すなわち略C形状)であって、第2方向A2の第4側かつ第1方向A1の第1側の一部が開いている。開環部2rは、その開いた部分の両端である第1端及び第2端2qを有する。延在部2nは、開環部2rの上記第1端から、第1方向A1の第1側に向かって直線状に延在している。延在部2nにおける第1方向A1の第1側の端2mは、開環部2rの第2端2qよりも第1方向A1の第1側に配置されており、主線路2の第2端2bを構成する。
【0106】
主線路2の第3部2uには、主線路2の第4部2vと接続するための複数のビア導体B1が接続されている。複数のビア導体B1は、第3部2uに沿って間隔を空けて配置されている。また、主線路2の開環部2rの第2端2qは、ビア導体を介して、主線路2の第2部2tの開環部2kの第2端2pと接続されている。
【0107】
(2-5)第6層での主線路の第4部の形状)
図13に示すように、主線路2の第4部2vは、第6層406の第1面406aにパターン形成されている。主線路2の第4部2vは、主線路2の第3部2uと同形同大である。主線路2の第4部2vの形状は、実装基板40の厚さ方向D1から見た平面視で、第5層405に設けられた第3部2uの形状と一致する。したがって、主線路2の第4部2vは、主線路2の第3部2uと同様に、開環部2yと延在部2xとを有する。延在部2xにおける第1方向A1の第1側の端2wは、主線路2の第2端2bを構成する。第4部2vの開環部2y及び延在部2x形状は、主線路2の第3部2uの開環部2r及び延在部2nの形状と同じであるため、それらの詳細の説明は省略する。
【0108】
主線路2の第4部2vは、上述の通り、複数のビア導体B1によって主線路2の第3部2uと接続されている。
【0109】
(2-6)第7層での第1副線路及び第2副線路の形状
図14に示すように、第1副線路31及び第2副線路32は、第7層407の第1面407aにパターン形成されている。
【0110】
第1副線路31及び第2副線路32は、第2方向A2において、互いに間隔を空けて互いに対向して配置されている。第1副線路31及び第2副線路32はそれぞれ、第1方向A1に延在している。第1副線路31の第1端31aは、第1副線路31における第1方向A1の第2側の端である。第1副線路31の第2端31bは、第1副線路31における第1方向A1の第1側の端である。第1副線路31における第1方向A1の両端(第1端31a及び第2端31b)の側は、第2副線路32側に傾斜するように曲がっている。
【0111】
第2副線路32の第1端32aは、第2副線路32における第1方向A1の第1側の端である。第2副線路32の第2端32bは、第2副線路32における第1方向A1の第2側の端である。第2副線路32における第1方向A1の両端(第1端32a及び第2端32b)の側は、第1副線路31側に傾斜するように曲がっている。
【0112】
第1副線路31の第1端31a及び第2端31b、並びに、第2副線路32の第1端32a及び第2端32bはそれぞれ、第9層409において、ビア導体B1等の配線路を介して、決められた端子44aに接続されている。
【0113】
(2-7)第8層での第4副線路の形状
図15に示すように、第4副線路34は、第8層408の第1面408aにパターン形成されている。
【0114】
第4副線路34は、第1線路部34dと、第2線路部34eと、第3線路部34fとを有する。第1線路部34dは、第2方向A2に沿って直線状に延在している。第2線路部34eは、第1線路部34dにおける第2方向A2の第3側の端から、第1方向A1の第2側に直線状に延在している。第3線路部34fは、第1線路部34dにおける第2方向A2の第4側の端から、第1方向A1の第2側に向かって直線状に延在している。第4副線路34の第1端34aは、第2線路部34eにおける第2方向A2の第4側の端である。第4副線路34の第2端34bは、第3線路部34fにおける第2方向A2の第4側の端である。
【0115】
第4副線路34の第1端34a及び第2端34bはそれぞれ、第9層409において、ビア導体B1等の配線路を介して、決められた端子44a,44aに接続されている。
【0116】
(3)主線路及び第1~第4副線路の配置関係
実施形態2では、主線路2は、コイル46と、第1腕部47と、第2腕部48とを備える。コイル46は、第1~第4部2s,2t,2u,2vの各開環部2f,2k,2r,2yによって形成された部分である。第1腕部47は、第1部2sの延在部2eと第2部2tの延在部2jとで構成された部分である。第2腕部48は、第3部2uの延在部2nと第4部2vの延在部2xとで構成された部分である。
【0117】
第4副線路34は、主線路2におけるICチップ41側に配置されている(
図10参照)。そして、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第4副線路34は、主線路2と部分的に重なっている(
図16参照)。より詳細には、第4副線路34の第1線路部34dは、主線路2のコイル46における第1方向A1の第1側の部分と重なっている。この重なりによって、第4副線路34と主線路2とは、互いに電磁界的に結合している。
【0118】
第1副線路31及び第2副線路32は、主線路2におけるICチップ41側に配置されている(
図10参照)。そして、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第1副線路31は、主線路2と部分的に重なっている(
図16参照)。より詳細には、第1副線路31は、主線路2のコイル46における第1方向A1の第1側の部分と、第1腕部47とに重なっている。この重なりによって、第1副線路31及び第2副線路32と主線路2とは、互いに電磁界的に結合している。
【0119】
実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第4副線路34は、第1副線路31及び第2副線路32の間に配置されている。これにより、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第4副線路34は、第1副線路31及び第2副線路32と重ならない。これにより、第4副線路34と第1副線路31及び第2副線路32との間の電磁界結合が抑制されている。また、上述のように、第4副線路34が第1副線路31及び第2副線路32の間に配置されていることで、方向性結合器1は小型化されている。
【0120】
第3副線路33は、主線路2におけるICチップ41側とは反対側に配置されている(
図10参照)。そして、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第3副線路33は、主線路2のコイル46と重なっている。この重なりによって、第3副線路33と主線路2とは、互いに電磁界的に結合している。
【0121】
主線路2(すなわち第1~第4部2s,2t,2u,2v)は、第1副線路31及び第2副線路32と、第3副線路33との間に配置されている。すなわち、主線路2が形成された層(第3~第6層403~406)は、第1副線路31及び第2副線路32が形成された第7層407と、第3副線路33が形成された第2層402との間に配置されている。これにより、副線路3によって、第1副線路31及び第2副線路32と、第3副線路との間の電磁界結合が抑制される。
【0122】
なお、主線路2は、第1副線路31及び第2副線路32と、第3副線路33と、第4副線路34とのうち、厚さ方向D1において隣り合う2つの副線路の間に配置されてもよい。すなわち、主線路2が形成された層(第3~第6層403~406)は、第1~第4副線路31~34が形成された各層(第2層402、第7層407及び第8第408)のうちの隣り合う2つの層の間に配置されてもよい。これにより、主線路2によって、上記の厚さ方向D1において隣り合う2つの副線路の間の電磁界結合を抑制できる。
【0123】
実施形態2では、主線路2及び第1~第4副線路31~34は、実装基板40の複数の層401~409のうちの互いに異なる層に配置される。その際、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第1~第4副線路31~34同士は重ならず、主線路2と第1~第4副線路31~34とは重なるように、主線路2及び第1~第4副線路31~34は配置される。その際、実装基板40の厚さ方向D1からの平面視で、第1副線路31及び第2副線路32と第3副線路33とは、主線路2を介して重なることで、互いに直接に電磁界結合することが抑制されている。
【0124】
(4)ICチップ内での第1短絡経路及び第1短絡スイッチの配置の一例
図17に示すように、ICチップ41の裏面には、外部端子41c,41dが配置されている。また、ICチップ41内には、移相回路5と、第1短絡経路8と、第1短絡スイッチ14とが設けられている。
【0125】
移相回路5は、インダクタ5cと、2つのキャパシタ5d,5eとを備える。2つのキャパシタ5d,5eは、例えば、インダクタ5cにおける第2方向A2の両側に配置されている。キャパシタ5dの一端は、配線路H1を介して外部端子41cに接続され、キャパシタ5eの一端は、配線路H2を介して外部端子41dに接続されている。外部端子41cは、半田付けで実装基板40の端子44cに接続されている。端子44cは、実装基板40内のビア導体等を介して第1副線路31の第2端31bに接続されている。外部端子41dは、半田付けで実装基板40の端子44dに接続されている。端子44dは、実装基板40内のビア導体等によって第2副線路32の第1端32aに接続されている。よって、移相回路5は、第1副線路31の第2端31bと第2副線路32の第1端32aとの間に接続されている。
【0126】
第1短絡経路8の両端はそれぞれ、外部端子41c,41dに接続されている。これにより、第1短絡経路8は、移相回路5を短絡するように設けられている。第1短絡スイッチ14は、第1短絡経路8の導通及び非導通を切替可能に、第1短絡経路8に設けられている。第1短絡スイッチ14の導通によって第1短絡経路8の短絡が有効になる。これにより、実施形態1で説明した通り、移相回路5のインダクタ5cに第1短絡経路8のインダクタ成分が並列に接続される。また、第1短絡スイッチ14の非導通によって第1短絡経路8の短絡が無効になる。これにより、移相回路5のインダクタ5cに第1短絡経路8のインダクタ成分が並列に接続されなくなる。
【0127】
(5)変形例
実施形態2の変形例を説明する。
【0128】
(5-1)変形例1
実施形態2では、方向性結合器1が、主線路2及び第1~第4副線路31~34の組を1つ備える場合を例示するが、方向性結合器1は、主線路2及び第1~第4副線路31~34の組を複数(例えば2つ)備えてもよい。
【0129】
(実施形態3)
図18を参照して、実施形態3に係る方向性結合器1について説明する。
【0130】
実施形態1では、方向性結合器1が4つの副線路(第1~第4副線路31~34)を備える場合を例示するが、実施形態3では、方向性結合器1が3つの副線路(第1~第3副線路531~533)を備える場合を例示する。
【0131】
(1)構成
図18に示すように、実施形態3に係る方向性結合器1は、主線路502と、副線路503と、終端回路504と、第1移相回路505と、第2移相回路506と、第1~第4切替スイッチ511~514と、第1短絡経路515と、第2短絡経路516と、第1短絡スイッチ517と、第2短絡スイッチ518と、を備える。また、方向性結合器1は、第1~第3接続端子521~523と、第1~第8スイッチ541~548とを更に備える。
【0132】
第1~第3接続端子521~523は、実施形態1の第1~第3接続端子11~13と同じであるため、それらの詳細な説明は省略する。主線路502は、実施形態1の主線路502と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0133】
副線路503は、第1副線路531、第2副線路532及び第3副線路533を有する。
【0134】
第1副線路531は、第1副線路531の長手方向の両端である第1端531a及び第2端31bを有する。第1副線路531の第1端531aは、第1スイッチ541の後述の第1端子541aに接続されている。第1副線路531の第2端531bは、第3切替スイッチ513の後述の端子513aに接続されている。第1副線路531は、主線路502と電磁界的に結合している。
【0135】
第2副線路532は、第2副線路532の長手方向の両端である第1端532a及び第2端532bを有する。第2副線路532の第1端532aは、第1切替スイッチ511の後述の端子511bに接続されている。第2副線路532の第2端532bは、第2切替スイッチ512の後述の端子512aに接続されている。第2副線路532は、主線路502と電磁界的に結合している。
【0136】
第3副線路533は、第3副線路533の長手方向の両端である第1端533a及び第2端533bを有する。第3副線路533の第1端533aは、第4切替スイッチ514の後述の端子514bに接続されている。第3副線路533の第2端533bは、第8スイッチ548の後述の第1端子548aに接続されている。第3副線路533は、主線路502と電磁界的に結合している。
【0137】
実施形態3に係る方向性結合器1は、3つのモード(第1~第3モード)を有する。第1モードでは、第1副線路531、第1移相回路505、第2副線路532、第2移相回路506及び第3副線路533をこの配列で直列接続した直列回路が、副線路503として用いられる。第2モードでは、第1副線路531、第1移相回路505及び第2副線路532をこの配列で直列接続した直列回路が、副線路503として用いられる。第3モードでは、第2副線路532が副線路503として用いられる。
【0138】
終端回路504は、3つのモードの各々において、用いる副線路503の両端のうちの一方を終端するための回路である。
【0139】
第1移相回路505は、第1端505a及び第2端505bを有する。第1移相回路505の第1端505aは、第3切替スイッチ513の後述の端子513bに接続されている。第1移相回路505の第2端505bは、第1切替スイッチ511の後述の端子511aに接続されている。第1移相回路505は、例えば、実施形態1の移相回路5と同じ構成であり、インダクタ505cと、2つのキャパシタ505d,505eと、を有する。インダクタ505cは、第1移相回路505の両端間(第1端505a及び第2端505b)に接続されている。キャパシタ505dは、第1移相回路505の第1端505aとインダクタ505cとの接続点と、グランドとの間に接続されている。キャパシタ505eは、第1移相回路505の第2端505bとインダクタ505cとの接続点と、グランドとの間に接続されている。
【0140】
第2移相回路506は、第1端506a及び第2端506bを有する。第2移相回路506の第1端506aは、第2切替スイッチ512の後述の端子512bに接続されている。第2移相回路506の第2端506bは、第4切替スイッチ514の後述の端子514aに接続されている。第2移相回路506は、例えば、実施形態1の移相回路5と同じ構成であり、インダクタ506cと、2つのキャパシタ506d,506eと、を有する。インダクタ506cは、第2移相回路506の両端間(第1端506a及び第2端506b)に接続されている。キャパシタ506dは、第2移相回路506の第1端506aとインダクタ506cとの接続点と、グランドとの間に接続されている。キャパシタ506eは、第2移相回路506の第2端506bとインダクタ506cとの接続点と、グランドとの間に接続されている。
【0141】
第1切替スイッチ511は、第1移相回路505の第2端505bと第2副線路532の第1端532aとの間に設けられており、第1移相回路505の第2端505bと第2副線路532の第1端532aとの接続及び非接続を切り替える。第1切替スイッチ511は、2つの端子511a,511bを有する。2つの端子511a,511bは、互いに接続及び非接続との切り替えが可能である。第1切替スイッチの511の端子511aは、第1移相回路505の第2端505bに接続されている。第1切替スイッチ511の端子511bは、第2副線路532の第1端532aに接続されている。
【0142】
第2切替スイッチ512は、第2副線路532の第2端532bと第2移相回路506の第1端506aとの間に設けられており、第2副線路532の第2端532bと第2移相回路506の第1端506aとの接続及び非接続を切り替える。第2切替スイッチ512は、2つの端子512a,512bを有する。2つの端子512a,512bは、互いに接続及び非接続との切り替えが可能である。第2切替スイッチの512の端子512aは、第2副線路532の第2端532bに接続されている。第2切替スイッチ512の端子512bは、第2移相回路506の第1端506aに接続されている。
【0143】
第3切替スイッチ513は、第1副線路531の第1端31aと第1移相回路505の第1端505aとの間に設けられており、第1副線路531の第1端531aと第1移相回路505の第1端505aとの接続及び非接続を切り替える。第3切替スイッチ513は、2つの端子513a,513bを有する。2つの端子513a,513bは、互いに接続及び非接続との切り替えが可能である。第3切替スイッチ513の端子513aは、第1副線路531の第2端531bに接続されている。第3切替スイッチ513の端子513bは、第1移相回路505の第1端505aに接続されている。
【0144】
第4切替スイッチ514は、第2移相回路506の第2端506bと第3副線路533の第1端533aとの間に設けられており、第2移相回路506の第2端506bと第3副線路533の第1端533aとの接続及び非接続を切り替える。第4切替スイッチ514は、2つの端子514a,514bを有する。2つの端子514a,514bは、互いに接続及び非接続との切り替えが可能である。第4切替スイッチの514の端子514aは、第2移相回路506の第2端506bに接続されている。第4切替スイッチ514の端子514bは、第3副線路533の第1端533aに接続されている。
【0145】
第1短絡経路515は、第1移相回路505の両端(第1端505a及び第2端505b)の間を短絡する配線経路である。
【0146】
第2短絡経路516は、第2移相回路506の両端(第1端506a及び第2端506b)の間を短絡する配線経路である。
【0147】
第1短絡スイッチ517は、第1短絡経路515を導通及び非導通にする。第1短絡スイッチ517は、第1短絡経路515を非導通にすることで、第1短絡経路515を無効にする。また、第1短絡スイッチ517は、第1短絡経路515を導通にすることで、第1短絡経路515のインダクタ成分を第1移相回路505のインダクタ505cに並列接続させる。これにより、実施形態1の場合と同様に、方向性結合器1の共振回路(第1移相回路505のインダクタ505cと、主線路502と第1及び第2副線路531,532との間に形成された寄生容量とで構成された共振回路)の共振周波数が主線路502を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0148】
第2短絡スイッチ518は、第2短絡経路516を導通及び非導通にする。第2短絡スイッチ518は、第2短絡経路516を非導通にすることで、第2短絡経路516を無効にする。また、第2短絡スイッチ518は、第2短絡経路516を導通にすることで、第2短絡経路516のインダクタ成分を第2移相回路506のインダクタ506cに並列接続させる。これにより、実施形態1の場合と同様に、方向性結合器1の共振回路(第2移相回路506のインダクタ506cと、主線路502と第2及び第3副線路532,533との間に形成された寄生容量とで構成された共振回路)の共振周波数が主線路502を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0149】
第1~第8スイッチ541~548は、3つのモードの各々で用いる副線路503の両端のうち、一方を第1接続端子521に接続し、他方を終端回路504に接続するためのスイッチである。
【0150】
第1~第8スイッチ541~548はそれぞれ、互いに接続及び非接続の切り替えが可能な2つの端子(第1端子及び第2端子)を有する。第1スイッチ541及び第2スイッチ542の各々の第1端子541a,542aは、第1副線路531の第1端31aに接続されている。第3スイッチ543及び第4スイッチ544の各々の第1端子543a,544aは、第2副線路532の第1端532aに接続されている。第5スイッチ545及び第6スイッチ546の各々の第1端子545a,546aは、第2副線路532の第2端532bに接続されている。第7スイッチ547及び第8スイッチ548の各々の第1端子547a,548aは、第3副線路533の第2端533bに接続されている。第1スイッチ541、第3スイッチ543、第6スイッチ546及び第8スイッチ548の各々の第2端子541b,543b,546b,548bは、第3接続端子523に接続されている。第2スイッチ542、第4スイッチ544、第5スイッチ545及び第7スイッチ547の各々の第2端子542b,544b,545b,547bは、終端回路504に接続されている。
【0151】
実施形態3に係る方向性結合器1は、上述の通り、第1モードと、第2モードと、第3モードとを有する。第1モードは、主線路502を流れる高周波信号のうち第1周波数帯の信号を検波するモードである。第2モードは、主線路502を流れる高周波信号のうち第2周波数帯の信号を検波するモードである。第3モードは、主線路502を流れる高周波信号のうち第3周波数帯の信号を検波するモードである。
【0152】
第1周波数帯は、例えば617MHz~960MHzの周波数帯(すなわちLB(ローバンド))に対応する。第2周波数帯は、例えば1.427GHz~2.69GHzの周波数帯(すなわちMB(ミドルバンド)~HB(ハイバンド))に対応する。第3周波数帯は、例えば3.3GHz~4.2GHzの周波数帯(すなわちUHB(ウルトラハイバンド))に対応する。
【0153】
(2)動作
(2-1)第1モード
第1モードでは、方向性結合器1は、第1副線路531、第2副線路532及び第3副線路533で構成される副線路503と、第1移相回路505及び第2移相回路506とを用いる。このため、第1~第4切替スイッチ511~514を導通にして、第1短絡スイッチ517及び第2短絡スイッチ518を非導通にする。
【0154】
第1移相回路505及び第2移相回路506が用いられることで、用いる副線路503の移相が調整される。これにより、主線路502において検波対象信号と同時に流れる非検波対象信号が副線路503に漏洩することを抑制できる。
【0155】
第1モードにおいて、主線路2を流れる順方向信号(第1接続端子521から第2接続端子522に流れる信号)を検波する場合は、用いる副線路503において、第1スイッチ541を導通にして第1副線路531の第1端531aを第3接続端子523に接続し、かつ、第7スイッチ547を導通にして第3副線路533の第2端533bを終端回路504に接続する。残りのスイッチ(第2~第6、第8スイッチ542~546,548)は、非導通にする。
【0156】
また、第1モードにおいて、主線路2を流れる逆方向信号(第2接続端子522から第1接続端子521に流れる信号)を検波する場合は、用いる副線路503において、第2スイッチ542を導通にして第1副線路531の第1端531aを終端回路504に接続し、第8スイッチ548を導通にして第3副線路533の第2端533bを第3接続端子523に接続する。残りのスイッチ(第1、第3~第7スイッチ21,23~27)は、非導通にする。
【0157】
(2-2)第2モード
第2モードでは、方向性結合器1は、第1副線路531及び第2副線路532で構成される副線路503と、第1移相回路505とを用いる。このため、第1切替スイッチ511及び第3切替スイッチ513を導通にし、かつ、第1短絡スイッチ517を非導通にする。また、第2切替スイッチ512及び第4切替スイッチ514を非導通にし、かつ、第2短絡スイッチ518を導通にする。
【0158】
第1移相回路505が用いられることで、用いる副線路503の移相が調整される。これにより、主線路502において検波対象信号と同時に流れる非検波対象信号が副線路503に漏洩することを抑制できる。
【0159】
また、上述のように、第2短絡スイッチ518を導通にすることで、未使用の第2移相回路506のインダクタ506cに第2短絡経路516のインダクタ成分が並列接続される。これにより、実施形態1の場合と同様に、方向性結合器1の共振回路の共振周波数が、主線路502を流れる信号の周波数帯よりも高くなり、上記共振回路の共振周波数が主線路502を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。なお、上記共振回路は、並列接続された第2移相回路506及び第2短絡経路516の合成インダクタと、主線路502と第3副線路533との間に形成される寄生容量とで構成されている。
【0160】
第2モードにおいて、主線路502を流れる順方向信号(第1接続端子521から第2接続端子522に流れる信号)を検波する場合は、用いる副線路503において、第1スイッチ541を導通にして第1副線路531の第1端531aを第3接続端子523に接続し、かつ、第5スイッチ545を導通にして第2副線路532の第2端532bを終端回路504に接続する。残りのスイッチ(第2~第4、第6~第8スイッチ542~544,546~548)は、非導通にする。
【0161】
また、第2モードにおいて、主線路502を流れる逆方向信号(第2接続端子522から第1接続端子521に流れる信号)を検波する場合は、用いる副線路503において、第2スイッチ542を導通にして第1副線路531の第1端531aを終端回路504に接続し、かつ、第6スイッチ546を導通にして第2副線路532の第2端532bを第3接続端子523に接続する。残りのスイッチ(第1、第3~第5、第7、第8スイッチ541,543~545,547,548)は、非導通にする。
【0162】
なお、第2モードにおいて、方向性結合器1は、第1副線路531、第1移相回路505及び第2副線路532をこの配列で直列接続した直列回路を副線路3として用いる。ただし、第2モードにおいて、方向性結合器1は、上記直列回路の代わりに、第2副線路532、第2移相回路506及び第3副線路533をこの配列で直列接続した直列回路を、副線路503として用いてもよい。この場合は、第1短絡スイッチ517を導通にして、第1短絡経路515のインダクタ成分を、未使用の第1移相回路505のインダクタ505cに並列接続する。
【0163】
(2-3)第3モード
第3モードでは、方向性結合器1は、第2副線路532で構成される副線路503を用いる。このため、第1~第4切替スイッチ511~514を非導通にして、第1短絡スイッチ517及び第2短絡スイッチ518を導通にする。
【0164】
第1短絡スイッチ517及び第2短絡スイッチ518を導通にすることで、未使用の第1移相回路505のインダクタ505cに第1短絡経路515のインダクタ成分が並列接続され、かつ、未使用の第2移相回路506のインダクタ506cに第2短絡経路516のインダクタ成分が並列接続される。これにより、実施形態1の場合と同様に、方向性結合器1の共振回路の共振周波数が、主線路502を流れる信号の周波数帯よりも高くなり、上記の共振回路の共振周波数が主線路502を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。なお、上記共振回路は、主線路502と第1副線路531及び第3副線路533との間の寄生容量と、並列接続された第1移相回路505及び第1短絡経路515の合成インダクタと、並列接続された第2移相回路506及び第2短絡経路516の合成インダクタとから構成されている。
【0165】
第3モードにおいて、主線路502を流れる順方向信号(第1接続端子521から第2接続端子522に流れる信号)を検波する場合は、用いる副線路503において、第3スイッチ543を導通にして第2副線路532の第1端532aを第3接続端子523に接続し、かつ、第5スイッチ545を導通にして第2副線路532の第2端532bを終端回路504に接続する。残りのスイッチ(第1、第2、第4、第6~第8スイッチ541,542,544,546~548)は、非導通にする。
【0166】
また、第3モードにおいて、主線路502を流れる逆方向信号(第2接続端子522から第1接続端子521に流れる信号)を検波する場合は、用いる副線路503において、第4スイッチ544を導通にして第2副線路532の第1端532aを終端回路504に接続し、かつ、第6スイッチ546を導通にして第2副線路532の第2端532bを第3接続端子523に接続する。残りのスイッチ(第1~第3、第5、第7、第8スイッチ541~543,545,547,548)は、非導通にする。
【0167】
(3)変形例
図19を参照して、実施形態3の変形例を説明する。
【0168】
(3-1)変形例1
図19に示すように、実施形態3の変形例1では、主線路502は、第1主線路502Aと、第2主線路502Bとを備える。
【0169】
第1主線路502A及び第2主線路502Bは、直列に接続されている。より詳細には、第1主線路502Aは、第1端502c及び第2端502dを有する。第2主線路502Bは、第1端502e及び第2端502fを有する。第1主線路502Aの第1端502cは、第1接続端子521に接続されている。第1主線路502Aの第2端502dは、配線路を介して、第2主線路502Bの第1端502eに接続されている。第2主線路502Bの第2端502fは、第2接続端子522に接続されている。第1副線路531及び第2副線路532は、例えば、第1主線路502Aと電磁界結合している。第3副線路533は、例えば、配置されて第2主線路502Bと電磁界結合している。
【0170】
この変形例1によれば、主線路2と第1~第3副線路33~33との間の結合度の調整の自由度を向上できる。
【0171】
(3-2)変形例2
実施形態3において、第3切替スイッチ513を省略してよい。この場合は、第1移相回路505の第1端505aは、第1副線路531の第2端531bに接続される。また、第4切替スイッチ514を省略してよい。この場合は、第2移相回路506の第2端506bは、第3副線路533の第1端533aに接続される。
【0172】
(実施形態4)
図20を参照して、実施形態4に係る高周波モジュール100及び通信装置200について説明する。実施形態4に係る高周波モジュール100は、実施形態1の方向性結合器1を備える高周波モジュールの一例である。実施形態4に係る通信装置200は、高周波モジュール100を備える通信装置200の一例である。
【0173】
(1)通信装置の構成
通信装置200は、例えば、携帯端末(例えばスマートフォン)又はウェアラブル端末(例えばスマートウォッチ)である。通信装置200は、高周波モジュール100と、信号処理回路210と、アンテナ220とを備える。
【0174】
高周波モジュール100は、アンテナ220で受信された受信信号の中から所定の周波数帯の受信信号を取り出して増幅して信号処理回路210に出力するように構成されている。また、高周波モジュール100は、信号処理回路210から出力された送信信号を増幅して所定の周波数帯の送信信号に変換してアンテナ220から出力するように構成されている。
【0175】
信号処理回路210は、高周波モジュール100に接続されており、高周波信号を信号処理するように構成されている。より詳細には、信号処理回路210は、高周波モジュール100から出力された受信信号を信号処理し、また、高周波モジュール100に出力する送信信号を信号処理する。信号処理回路210は、RF信号処理回路211とベースバンド信号処理回路212とを含む。RF信号処理回路211は、例えばRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)である。ベースバンド信号処理回路212は、例えばBBIC(Baseband Integrated Circuit)である。
【0176】
(2)高周波モジュールの構成
高周波モジュール100は、複数の外部接続端子110と、パワーアンプ151,152と、ローノイズアンプ161,162と、送信フィルタ61T~64Tと、受信フィルタ61R~64Rと、出力整合回路131,132と、整合回路141,142と、整合回路71~74と、スイッチ51~55と、ダイプレクサ60と、方向性結合器1(カプラ)と、を備える。なお、送信フィルタと受信フィルタとが一体となったデュプレクサとして構成されてもよく、送信フィルタや受信フィルタとしては、SAW(Surface Acoustic Wave)やBAW(Bulk Acoustic Wave)などの弾性波フィルタを用いても構わない。
【0177】
複数の外部接続端子110は、アンテナ端子130と、2つの信号入力端子111,112と、2つの信号出力端子121,122と、カプラ出力端子181とを含む。カプラ出力端子181は、方向性結合器1で取り出された検波信号を外部(例えば信号処理回路210)に出力する端子である。
【0178】
ダイプレクサ60は、第1フィルタ60L及び第2フィルタ60Hを有し、L(インダクタ)C(コンデンサ)などの受動素子を用いて構成されてもよい。
【0179】
方向性結合器1は、実施形態1の方向性結合器1と同様に構成されている。方向性結合器1は、アンテナ端子130とダイプレクサ60の第1入出力部との間の信号経路の一部区間(主線路2)を流れる高周波信号(受信信号又は送信信号)の一部を、主線路2と電磁界結合している副線路3から検波信号として取り出す。そして、方向性結合器1は、取り出した検波信号を、カプラ出力端子181を介して高周波モジュール100の外部(例えば信号処理回路210)に出力する。
【0180】
本実施形態の方向性結合器1は、実施形態1の方向性結合器1と同様に、主線路2と、第1~第4副線路31~34と、終端回路4と、移相回路5と、第1切替スイッチ6と、第2切替スイッチ7と、第1短絡スイッチ14と、第2短絡スイッチ15と、第1~第8スイッチ21~28と、第1~第3接続端子11~13と、を備える。
【0181】
第1切替スイッチ6、第2切替スイッチ7、第1短絡スイッチ14、第2短絡スイッチ15、第1~第8スイッチ21~28は、スイッチ55内に設けられてスイッチ55と一体的に構成されている。第1接続端子11は、アンテナ端子130に接続され、第2接続端子12は、ダイプレクサ60の第1入出力部に接続されている。すなわち、方向性結合器1の主線路2は、アンテナ端子130とダイプレクサ60との間の信号経路の一部区間を構成する。第3接続端子13は、カプラ出力端子181に接続されている。
【0182】
本実施形態によれば、方向性結合器1の第1切替スイッチ6、第2切替スイッチ7、第1短絡スイッチ14、第2短絡スイッチ15、及び第1~第8スイッチ21~28がスイッチ55(アンテナスイッチ)と一体であるため、高周波モジュール100を小型化できる。
【0183】
なお、上記の実施形態1~4及びそれらの変形例は、組み合わせて実施されてもよい。
【0184】
(態様)
以上説明した実施形態及び変形例より以下の態様が開示されている。
【0185】
第1の態様に係る方向性結合器(1)は、主線路(2;502)と、第1副線路(31;531)と、第2副線路(32;531)と、第1移相回路(5;505)と、第1短絡経路(8;515)と、第1短絡スイッチ(14;517)と、を備える。第1移相回路(5;505)は、第1副線路(31;531)と第2副線路(32;532)との間に接続されている。第1短絡経路(8;515)は、第1移相回路(5;505)の両端を短絡する。第1短絡スイッチ(14;517)は、第1短絡経路(8;515)を導通及び非導通を切り替える。
【0186】
この構成によれば、第1副線路(31;531)と第2副線路(32;532)との間に第1移相回路(5;505)が接続される。このため、第1短絡スイッチ(14;517)を非導通にして、第1副線路(31;531)及び第2副線路(32;532)で構成される副線路(3;503)と第1移相回路(5;505)とを用いて、主線路(2;502)を同時に流れる互いに異なる周波数帯の第1信号及び第2信号のうちの第2信号を検波するとき、第1移相回路(5;505)によって、副線路(3;503)に非検波対象信号である第1信号が漏洩することを抑制できる。
【0187】
また、第1移相回路(5;505)を用いないとき、第1移相回路(5;505)のインダクタと副線路(3;505)と主線路(2;502)との間の寄生容量とによって形成される共振回路の共振周波数によって、主線路(2;502)を流れる信号に損失が発生する場合がある。ところが、本願発明では、第1移相回路(5;505)を用いないときは、第1短絡スイッチ(14;517)を導通に切り替えることで、第1移相回路(5;505)のインダクタに第1短絡経路(8)のインダクタ成分を並列接続できる。これにより、上記共振回路の全体のインダクタのインダクタンスを低減できる。これにより、上記共振回路の共振周波数を、主線路(2)を流れる信号の周波数帯よりも高くできる。これにより、第1移相回路(5;505)を用いないときは、第1短絡経路(8;515)を導通にすることで、上記共振回路の共振周波数が主線路(2;502)を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0188】
以上より、主線路(2;502)に流れる信号の損失を低減させつつ、主線路(2;502)に流れる信号(検波対象信号)を検波するときに、検波対象信号と同時に主線路(2;503)を流れる非検波対象信号が副線路(3;503)に漏洩することを抑制できる。
【0189】
第2の態様の方向性結合器(1)では、第1の態様において、第1短絡経路(8)のインダクタンスは、第1移相回路(5)のインダクタンスよりも小さい。
【0190】
これにより、第1短絡スイッチ(14)を導通にしたときに、並列接続された第1移相回路(5)と第1短絡経路(8)との合成インダクのインダクタタンスをより一層小さくできる。これにより、上述の共振回路の全体のインダクタンスをより一層低減できる。
【0191】
第3の態様の方向性結合器(1)では、第1又は第2の態様において、第1移相回路(5;505)は、ローパスフィルタを含む。
【0192】
この構成によれば、用いる副線路(3;503)に比較的高い周波数帯の非検波対象信号が漏洩することを抑制できる。
【0193】
第4の態様の方向性結合器(1)では、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、第1移相回路(5;505)は、特性値が可変である回路部品を含む。
【0194】
この構成によれば、上記回路部品の特性値を調整することで、副線路(3;503)と主線路(2;502)との結合度の周波数特性を微調整できる。
【0195】
第5の態様の方向性結合器(1)では、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、主線路(502)は、互いに直列に接続された第1主線路(502A)及び第2主線路(502B)を備える。
【0196】
この構成によれば、主線路(502)と第1副線路(531)及び第2副線路(532)との間の結合度の調整の自由度を向上できる。
【0197】
第6の態様の方向性結合器(1)は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、第1副線路(31)及び第2副線路(32)を含む4つの副線路を備える。4つの副線路のうち、少なくとも第1副線路(31)及び第2副線路(32)の線路長(M1,M2)は、同じ長さである。
【0198】
この構成によれば、方向性結合器(1)が4つの副線路(31~34)を備える場合において、第1移相回路(5)の両端の2つの副線路(第1副線路(31)及び第2副線路(32))の線路長(M1,M2)を互いに同じ長さにできる。これにより、主線路(2)を順方向に流れる信号(順方向信号)から見たときと、主線路(2)を逆方向に流れる信号(逆方向信号)から見たときとで、方向性結合器(1)の方向性の特性のバラつきを抑制できる。
【0199】
第7の態様の方向性結合器(1)では、第6の態様において、4つの副線路(31~34)は、第3副線路(33)及び第4副線路(34)を含む。方向性結合器(1)は、第1切替スイッチ(6)と、第2切替スイッチ(7)と、を備える。第1切替スイッチ(6)は、第3副線路(33)と第1副線路(31)との導通及び非導通を切り替える。第2切替スイッチ(7)は、第4副線路(34)と第2副線路(32)との導通及び非導通を切り替える。
【0200】
この構成によれば、4つの副線路(31~34)を備える場合において、中央の2つの副線路(第1副線路(31)及び第2副線路(32))の間に第1移相回路(5)が接続される。これにより、主線路(2)を順方向に流れる信号(順方向信号)から見たときと、主線路(2)を逆方向に流れる信号(逆方向信号)から見たときとで、4つの副線路の中の第1移相回路(5)の配置を同じにできる。これにより、方向性結合器(1)が双方向性の場合において、順方向信号を検波するときと、逆方向信号を検波するときとで、方向性の特性のバラつきをより一層抑制できる。
【0201】
第8の態様の方向性結合器(1)では、第7の態様において、第1副線路(31)、第2副線路(32)、第3副線路(33)及び第4副線路(34)のうちの少なくとも1つの副線路において、第2短絡経路(9)と、第2短絡スイッチ(15)と、を備える。第2短絡経路(9)は、上記少なくとも1つの副線路の両端を短絡する。第2短絡スイッチ(15)は、第2短絡経路(9)の導通及び非導通を切り替える。
【0202】
この構成によれば、上記の少なくともの1つの副線路のうち、検波時に用いられない副線路の両端を第2短絡スイッチ(15)によって短絡できる。この短絡によって、検波時に用いる副線路(3)において、検波可能な信号の周波数特性を微調整できる。これにより、用いない副線路の短絡の有無で、同じ線路長の副線路を、異なる周波数帯の信号の検波に使える。
【0203】
第9の態様の方向性結合器(1)は、第7又は第8の態様において、複数の誘電体層(401~409)を有する多層基板(40)を備える。第1副線路(31)及び第2副線路(32)は、互いに異なる3つの周波数帯のうち、中間の周波数帯の信号を検波するのに使用可能な副線路(3)を構成する。第3副線路(33)は、3つの周波数帯のうちの最も低い周波数帯の信号を検波するのに使用可能な副線路(3)を構成する。第4副線路(34)は、3つの周波数帯のうちの最も高い周波数帯の信号を検波するのに使用可能な副線路(3)を構成する。主線路(2)、第1副線路(31)及び第2副線路(32)、第3副線路(33)、並びに第4副線路(34)は、複数の誘電体層(401~409)のうちの異なる誘電体層に配置されている。
【0204】
この構成によれば、主線路(2)、第1副線路(31)及び第2副線路(32)、第3副線路(33)、並びに第4副線路(34)は、複数の誘電体層(401~409)のうちの異なる誘電体層に配置されているため、方向性結合器(1)を小型化できる。
【0205】
第10の態様の方向性結合器(1)では、第9の態様において、多層基板(40)の厚さ方向(D1)からの平面視で、第4副線路(34)は、第1副線路(31)及び第2副線路(32)の間に配置されている。
【0206】
この構成によれば、方向性結合器(1)を更に小型化できる。また、第4副線路(34)と、第1副線路(31)及び第2副線路(32)とは、厚さ方向(D1)に重ならないため、第4副線路(34)と、第1副線路(31)及び第2副線路(32)との間の磁界結合を抑制できる。
【0207】
第11の態様の方向性結合器(1)では、第9又は第10の態様において、多層基板(40)の厚さ方向(D1)からの平面視で、主線路(2)は、第1副線路(31)及び第2副線路(32)、第3副線路(33)、並びに第4副線路(34)のうち、厚さ方向(D1)に隣り合う2つの副線路の間に配置されている。
【0208】
この構成によれば、主線路(2)によって、上記の厚さ方向(D1)に隣り合う2つ副線路の間の電磁界結合を抑制できる。
【0209】
第12の態様の方向性結合器(1)では、第9~第11の態様のいずれか1つにおいて、第1移相回路(5)、第1短絡スイッチ(14)、第1切替スイッチ(6)及び第2切替スイッチ(7)を含むICチップ(41)が多層基板(40)に配置されている。
【0210】
この構成によれば、第1移相回路(5)、第1短絡スイッチ(14)、第1切替スイッチ及び第2切替スイッチがICチップに含まれるため、主線路(2)及び第1~第4副線路を、第1移相回路(5)、第1短絡スイッチ(14)、第1切替スイッチ及び第2切替スイッチから物理的に離すことができる。これにより、主線路(2)及び第1~第4副線路と、第1移相回路(5)、第1短絡スイッチ(14)、第1切替スイッチ(6)及び第2切替スイッチ(7)との間の不要な電磁界的な結合を抑制できる。
【0211】
第13の態様の方向性結合器(1)では、第12の態様において、ICチップ(41)は、多層基板(40)の厚さ方向(D1)からの平面視において、主線路(2)と重なっている。
【0212】
この構成によれば、ICチップ(41)と主線路(2)とを接続する配線経路を短くでき、ICチップ(41)と主線路(2)とを接続する配線に不要なインダクタが発生することを抑制できる。
【0213】
第14の態様の方向性結合器(1)は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、第3副線路(533)と、第2移相回路(506)と、第2短絡経路(516)と、第2短絡スイッチ(518)と、第1切替スイッチ(511)と、第2切替スイッチ(512)と、を備える。第2移相回路(506)は、第2副線路(532)と第3副線路(533)との間に接続されている。第2短絡経路(516)は、第2移相回路(506)の両端を短絡する。第2短絡スイッチ(518)は、第2短絡経路(516)の導通及び非導通を切り替える。第1切替スイッチ(511)は、第2副線路(32)と第1移相回路(5)との間の接続及び非接続の切り替えを行う。第2切替スイッチ(512)は、第2副線路(32)と第2移相回路(506)との間の接続及び非接続の切り替えを行う。
【0214】
この構成によれば、方向性結合器(1)が3つの副線路(第1~第3副線路(531~533))を備える場合において、第1切替スイッチ(511)及び第2切替スイッチ(512)の切り替えによって、第1~第3副線路(531~533)で構成される副線路(503)と第1移相回路(505)及び第2移相回路(506)とを用いたり、第1副線路(531)及び第2副線路(532)で構成される副線路(503)と第1移相回路(505)とを用いたり、第2副線路(532)で構成される副線路(503)を用いたりできる。このとき、未使用の移相回路(第1移相回路(505)又は第2移相回路(506))の両端を短絡する短絡経路(515,516)を短絡スイッチ(517,518)で導通にすることで、未使用の移相回路のインダクタに短絡経路のインダクタ成分を並列接続できる。これにより、第1の態様の効果で説明した通り、上述の共振回路が主線路(502)を流れる信号に損失を発生させることを抑制できる。
【0215】
第15の態様の高周波モジュール(100)は、第1~第14の態様のいずれか1つの方向性結合器(1)と、アンテナ端子(130)と、複数のフィルタ(61T~64T,61R~64R)と、アンテナスイッチ(55)と、を備える。アンテナスイッチ(55)は、アンテナ端子に(130)至る信号経路と複数のフィルタ(61T~64T,61R~64R)との接続及び非接続を切り替える。方向性結合器(1)の主線路(2)は、信号経路の一部区間を構成している。
【0216】
この構成によれば、本発明の方向性結合器(1)を備える高周波モジュール(100)を提供できる。
【0217】
第16の態様の高周波モジュール(100)では、第15の態様において、アンテナスイッチ(55)は、方向性結合器(1)の第1短絡スイッチ(14)と一体である。
【0218】
この構成によれば、高周波モジュール(100)を小型化できる。
【0219】
第17の態様の通信装置(200)は、第15又は第16の態様の高周波モジュール(100)と、信号処理回路(210)と、を備える。信号処理回路(210)は、高周波モジュール(100)に接続されており、高周波信号を信号処理する。
【0220】
この構成によれば、上記の作用効果を有する高周波モジュール(100)を備える通信装置(200)を提供できる。
【符号の説明】
【0221】
1 方向性結合器
2 主線路
2a 第1端
2b 第2端
2e,2i,2j,2n,2x 延在部
2f,2k,2r,2y 開環部
2g,2p,2q 第2端
2s 第1部
2t 第2部
2u 第3部
2v 第4部
3 副線路
4 終端回路
5 移相回路(第1移相回路)
5a 第1端
5b 第2端
5c インダクタ
5d キャパシタ
5e キャパシタ
6 第1切替スイッチ
6a 共通端子
6b,6c 選択端子
7 第2切替スイッチ
7a~7c 選択端子
8 第1短絡経路
9 第2短絡経路
11 第1接続端子
12 第2接続端子
13 第3接続端子
14 第1短絡スイッチ
15 第2短絡スイッチ
21 第1スイッチ
21a~28a 第1端子
21b~28b 第2端子
22 第2スイッチ
23 第3スイッチ
24 第4スイッチ
25 第5スイッチ
26 第6スイッチ
27 第7スイッチ
28 第8スイッチ
31 第1副線路
31a~34a 第1端
31b~34b 第2端
32 第2副線路
33 第3副線路
33c 開環部
33d 第1延在部
33e 第2延在部
34 第4副線路
34d 第1線路部
34e 第2線路部
34f 第3線路部
40 実装基板(多層基板)
41 ICチップ
41a,41b,41c,41d 外部端子
44a,44b,44c,44d 端子
46 コイル
47 第1腕部
48 第2腕部
51~55 スイッチ
60 ダイプレクサ
61~64 デュプレクサ
60H 第2フィルタ
60L 第1フィルタ
61R~64R 受信フィルタ
61T~64T 送信フィルタ
71~74 整合回路
100 高周波モジュール
110 外部接続端子
111,112 信号入力端子
121,122 信号出力端子
130 アンテナ端子
131,132 出力整合回路
141,142 整合回路
151,152 パワーアンプ
161,162 ローノイズアンプ
181 カプラ出力端子
200 通信装置
210 信号処理回路
211 RF信号処理回路
212 ベースバンド信号処理回路
220 アンテナ
401 第1層
402 第2層
402a~409a 第1面
403 第3層
404 第4層
405 第5層
406 第6層
407 第7層
408 第8層
409 第9層
502 主線路
502A 第1主線路
502B 第2主線路
503 副線路
504 終端回路
505 第1移相回路
505c,506c インダクタ
505d,506d キャパシタ
505e,506e キャパシタ
506 第2移相回路
511 第1切替スイッチ
512 第2切替スイッチ
513 第3切替スイッチ
514 第4切替スイッチ
515 第1短絡経路
516 第2短絡経路
517 第1短絡スイッチ
518 第2短絡スイッチ
531 第1副線路
532 第2副線路
533 第3副線路
541 第1スイッチ
641a~548a 第1端子
641b~548b 第2端子
542 第2スイッチ
543 第3スイッチ
544 第4スイッチ
545 第5スイッチ
546 第6スイッチ
547 第7スイッチ
548 第8スイッチ
A1 第1方向
A2 第2方向
B1 ビア導体
D1 厚さ方向
f1 第1周波数
f2 第2周波数
G1,G1 グラフ
H1,H2 配線路
M1~M4 線路長
N1 ノッチ
S1 順方向信号