(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058479
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H01P 5/18 20060101AFI20240418BHJP
H04B 1/40 20150101ALI20240418BHJP
【FI】
H01P5/18 J
H04B1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165877
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 雄太
(72)【発明者】
【氏名】清水 克也
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA27
5K011EA02
5K011EA06
(57)【要約】
【課題】検波時と非検波時とで、主線路の挿入損失の変化及び信号の位相の変化を低減することが可能な方向性結合器を提供する。
【解決手段】方向性結合器8は、主線路81と、副線路82と、出力端子873と、第1終端回路84と、終端スイッチ89と、を備える。副線路82は、第1端821と第2端822とを備える。出力端子873は、第1端821及び第2端822の一方の端に接続される。第1終端回路84は、上記一方の端と出力端子873とを接続する第1出力経路88をグランドへ接続する。終端スイッチ89は、第1出力経路88と第1終端回路84との接続及び非接続を切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主線路と、
第1端と第2端とを備えた副線路と、
前記第1端及び前記第2端のうちの一方の端に接続される出力端子と、
前記一方の端と前記出力端子とを接続する第1出力経路をグランドへ接続する第1終端回路と、
前記第1出力経路と前記第1終端回路との接続及び非接続を切り替える終端スイッチと、を備える、
方向性結合器。
【請求項2】
前記第1終端回路は、前記終端スイッチに直列に接続されている抵抗を含む、
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項3】
前記第1終端回路は、インダクタ及びキャパシタの少なくとも一方を更に含む、
請求項2に記載の方向性結合器。
【請求項4】
前記第1終端回路は、前記抵抗、前記インダクタ及び前記キャパシタを含み、
前記抵抗、前記インダクタ及び前記キャパシタは、互いに並列に接続されている、
請求項3に記載の方向性結合器。
【請求項5】
前記第1終端回路は、前記抵抗、前記インダクタ及び前記キャパシタを含み、
前記抵抗及び前記キャパシタは、互いに並列に接続され、
前記インダクタは、前記抵抗及び前記キャパシタと直列に接続されている、
請求項3に記載の方向性結合器。
【請求項6】
前記第1端及び前記第2端のうちのうちの他方の端をグランドへ接続する第2終端回路と、
前記第1端と前記第2終端回路との接続及び非接続を切り替える第1切替スイッチと、
前記第1端と前記出力端子との接続及び非接続を切り替える第2切替スイッチと、
前記第2端と前記出力端子との接続及び非接続を切り替える第3切替スイッチと、
前記第2端と前記第2終端回路との接続及び非接続を切り替える第4切替スイッチと、を備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方向性結合器。
【請求項7】
非検波時において、
前記第1切替スイッチ及び前記第2切替スイッチは、前記第1端を、前記出力端子及び前記第2終端回路のうちの一方と接続し、
前記第3切替スイッチ及び前記第4切替スイッチは、前記第2端を、前記出力端子及び前記第2終端回路のうちの他方と接続し、
前記終端スイッチは、前記第1終端回路と前記第1出力経路とを接続する、
請求項6に記載の方向性結合器。
【請求項8】
前記副線路である第1副線路と直列に接続される第2副線路を更に備え、
前記第1終端回路は、前記第1副線路及び前記第2副線路の直列回路の両端の一方と前記出力端子とを接続する第2出力経路をグランドに接続しており、
前記終端スイッチは、前記第2出力経路と前記第1終端回路との接続及び非接続を切り替える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方向性結合器。
【請求項9】
前記第1副線路の一端と前記第2副線路の一端との間に接続されている移相回路を更に備える、
請求項8に記載の方向性結合器。
【請求項10】
複数の誘電体層を有する多層基板を更に備え、
前記主線路は、前記多層基板の内部に設けられており、
前記第1終端回路、前記第1端及び前記第2端のうちの他方の端をグランドへ接続する第2終端回路、及び前記終端スイッチを含むICチップが前記多層基板に配置されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方向性結合器。
【請求項11】
前記ICチップは、前記多層基板の厚さ方向からの平面視において、前記主線路と重なっている、
請求項10に記載の方向性結合器。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方向性結合器と、
アンテナ端子と、
複数のフィルタと、
前記アンテナ端子に至る信号経路と前記複数のフィルタとの接続及び非接続を切り替えるアンテナスイッチと、を備え、
前記方向性結合器の前記主線路は、前記信号経路の一部区間を構成している、
高周波モジュール。
【請求項13】
前記アンテナスイッチは、前記方向性結合器の前記終端スイッチと一体である、
請求項12に記載の高周波モジュール。
【請求項14】
請求項12に記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールに接続されており、高周波信号を信号処理する信号処理回路と、を備える、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置に関し、より詳細には、主線路及び副線路を備える方向性結合器、方向性結合器を備える高周波モジュール、及び高周波モジュールを備える通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主線路と、副線路と、第1抵抗器及び第2抵抗器と、第1スイッチ及び第2スイッチとを備える双方向性結合器が開示されている。第1スイッチは、副線路の一端を検波ポート又は第1抵抗器に接続する。第2スイッチは、副線路の他端を検波ポート又は第2抵抗器に接続する。第1抵抗器は、一端がグランドに接続され、他端が第1スイッチに接続されている。第2抵抗器は、一端がグランドに接続され、他端が第2スイッチに接続されている。この双方向性結合器では、主線路の入力ポートから供給された信号を検波する場合に、第2スイッチが検波ポート側に切り替えられ、第1スイッチが第1抵抗器側に切り替えられる。一方、この双方向性結合器では、主線路の出力ポートから供給された信号を検波する場合に、第1スイッチが検波ポート側に切り替えられ、第2スイッチが第2抵抗器側に切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の双方向性結合器では、副線路と検波ポートとを接続しない場合は、第1スイッチは検波ポート及び第1抵抗器の両方と接続されず、第2スイッチも検波ポート及び第2抵抗器の両方と接続されない。このため、副線路は、いずれの回路にも接続されない開放(オープン)状態になる。副線路が開放状態であっても、主線路を伝送する信号の一部が主線路から開放状態の副線路に漏洩し、信号の損失が発生する場合がある。このとき、副線路が開放状態である場合(非検波時)と、副線路が検波ポートに接続されている場合(検波時)とで、主線路側から見たときの副線路側のインピーダンスが異なる。したがって、副線路が開放状態である場合と、副線路が検波ポートに接続されている場合とで、主線路の挿入損失及び信号の位相が異なる場合がある。
【0005】
本発明の課題は、検波時と非検波時とで、主線路の挿入損失の変化及び信号の位相の変化を低減することが可能な方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る方向性結合器は、主線路と、副線路と、出力端子と、第1終端回路と、終端スイッチと、を備える。前記副線路は、第1端と第2端とを備える。前記出力端子は、前記第1端及び前記第2端のうちの一方の端に接続される。前記第1終端回路は、前記一方の端と前記出力端子とを接続する第1出力経路をグランドへ接続する。前記終端スイッチは、前記第1出力経路と前記第1終端回路との接続及び非接続を切り替える。
【0007】
本発明の一態様に係る高周波モジュールは、前記方向性結合器と、アンテナ端子と、複数のフィルタと、アンテナスイッチと、を備える。前記アンテナスイッチは、前記アンテナ端子に至る信号経路と前記複数のフィルタとの接続及び非接続を切り替える。
【0008】
本発明の一態様に係る通信装置は、前記高周波モジュールと、信号処理回路と、を備える。前記信号処理回路は、前記高周波モジュールに接続されており、高周波信号を信号処理する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る方向性結合器、高周波モジュール及び通信装置によれば、検波時と非検波時とで、主線路の挿入損失の変化及び信号の位相の変化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る方向性結合器の第1モードを示す回路図である。
【
図2】
図2は、同上の方向性結合器の第2モードを示す回路図である。
【
図3】
図3は、同上の方向性結合器の第3モードを示す回路図である。
【
図4】
図4は、同上の方向性結合器と比較例1の方向性結合器との振幅不連続性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、同上の方向性結合器と比較例1の方向性結合器との位相不連続性を示すグラフである。
【
図6】
図6は、同上の方向性結合器に用いられる第1終端回路の変形例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、同上の方向性結合器に用いられる第1終端回路の他の変形例を示す回路図である。
【
図8】
図8は、同上の方向性結合器に用いられる第1終端回路のさらに他の変形例を示す回路図である。
【
図9】
図9は、同上の方向性結合器に用いられる第1終端回路のさらに他の変形例を示す回路図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る方向性結合器を示す回路図である。
【
図11】
図11は、実施形態3に係る方向性結合器を示す回路図である。
【
図12】
図12は、同上の方向性結合器に用いられる移相回路を示す回路図である。
【
図13】
図13は、同上の方向性結合器に用いられる移相回路の変形例を示す回路図である。
【
図14】
図14は、同上の方向性結合器に用いられる移相回路の他の変形例を示す回路図である。
【
図15】
図15は、実施形態4に係る高周波モジュール及び通信装置の回路図である。
【
図17】
図17は、同上の高周波モジュールに関し、主線路、第1副線路及び第2副線路とICチップとの位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態等において参照する
図16及び
図17は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(実施形態1)
(1)方向性結合器の構成
実施形態1に係る方向性結合器8の構成について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0013】
実施形態1に係る方向性結合器8は、例えば、通信装置の高周波モジュールに用いられる。方向性結合器8は、
図1に示すように、高周波モジュール内の信号経路の一部区間(主線路81)を伝送する高周波信号の一部を、副線路82から、検波信号として取り出す装置である。検波信号をモニタすることで、主線路81を伝送する高周波信号をモニタすることができる。実施形態1に係る方向性結合器8は、副線路82の第1端から検波信号を取り出すことで、高周波信号(順方向信号)を検波可能とし、副線路82の第2端から検波信号を取り出すことで、反射信号(逆方向信号)を検波可能に構成されている双方向性結合器である。
【0014】
方向性結合器8は、主線路81と、副線路82と、第1終端回路84(終端回路)と、第2終端回路83と、第1切替スイッチ85aと、第2切替スイッチ85bと、第3切替スイッチ86aと、第4切替スイッチ86bと、終端スイッチ89と、を備える。また、方向性結合器8は、複数(図示例では3つ)の接続端子87を更に備える。複数の接続端子87は、第1接続端子871と、第2接続端子872と、第3接続端子873と、を含む。
【0015】
(1.1)接続端子
第1接続端子871及び第2接続端子872は、主線路81を伝送する高周波信号を入出力するための入出力端子である。第1接続端子871は、主線路81の第1端811に接続されている。第2接続端子872は、主線路81の第2端812に接続されている。第3接続端子873は、副線路82によって検波された検波信号を出力するための出力端子である。第3接続端子873は、副線路82の第1端821及び第2端822のいずれか一方と選択的に接続される。
【0016】
(1.2)主線路
主線路81は、主線路81の長手方向の両端である第1端811及び第2端812を有する。主線路81の第1端811は、第1接続端子871を介して、例えば、高周波モジュールのアンテナ端子に接続されている。主線路81の第2端812は、第2接続端子872を介して、例えば、高周波モジュールの送信回路、受信回路、又は送受信回路に接続されている。
【0017】
(1.3)副線路
副線路82は、副線路82の長手方向の両端である第1端821及び第2端822を有する。副線路82の第1端821は、第1切替スイッチ85a及び第2切替スイッチ85bに接続されている。より詳細には、副線路82の第1端821は、第1切替スイッチ85aの後述の端子851及び第2切替スイッチ85bの後述の端子853に接続されている。また、副線路82の第2端822は、第3切替スイッチ86a及び第4切替スイッチ86bに接続されている。より詳細には、副線路82の第2端822は、第3切替スイッチ86aの後述の端子861及び第4切替スイッチ86bの後述の端子863に接続されている。副線路82は、例えば、主線路81と電磁界的に結合している。
【0018】
(1.4)第2終端回路
第2終端回路83は、副線路82を用いて主線路81を伝送する信号を検波する第1モード及び第2モードにおいて、副線路82の第1端821又は第2端822を終端させる回路である。第1モードは、主線路81の第1端811から第2端812へ主線路81内を伝送する信号(順方向信号)を検波する検波モードである。第2モードは、主線路81の第2端812から第1端811へ主線路81内を伝送する信号(逆方向信号)を検波する検波モードである。第2終端回路83は、第1切替スイッチ85aの後述の端子852及び第4切替スイッチ86bの後述の端子864と、グランドの間に接続されている。
【0019】
第2終端回路83は、例えば、キャパシタ831と抵抗832とが並列に接続された回路である。また、第2終端回路83は、例えば、スイッチ833と、スイッチ834と、スイッチ835とを有する。スイッチ833は、キャパシタ831とグランドとの間に接続されており、キャパシタ831とグランドとの間の接続(短絡状態)と非接続(開放状態)と、を切り替える。スイッチ834は、抵抗832とグランドとの間に接続されており、抵抗832とグランドとの間の接続と非接続と、を切り替える。スイッチ835は、第1切替スイッチ85aの後述の端子852及び第4切替スイッチ86bの後述の端子864と、グランドとの間に接続されており、第1切替スイッチ85aの端子852及び第4切替スイッチ86bの端子864と、グランドと、の間の接続と非接続とを切り替える。
【0020】
(1.5)第1切替スイッチ及び第2切替スイッチ
第1切替スイッチ85a及び第2切替スイッチ85bは、副線路82の第1端821の接続先を、第2終端回路83又は第3接続端子873に切り替えるためのスイッチである。第1切替スイッチ85aは、2つの端子851及び852を有する。端子851は、副線路82の第1端821と接続されている。端子852は、第2終端回路83と接続されている。第2切替スイッチ85bは、2つの端子853及び端子854を有する。端子853は、副線路82の第1端821と接続されている。端子854は、第3接続端子873と接続されている。
【0021】
第1切替スイッチ85a及び第2切替スイッチ85bは、副線路82の第2端822が第3接続端子873及び第2終端回路83のうちの一方に接続される場合は、副線路82の第1端821を第3接続端子873及び第2終端回路83のうちの他方に接続するように、各々の接続と非接続が切り替えられる。
【0022】
より詳細には、第1切替スイッチ85aは、端子851と端子852とを接続する第1状態と、端子851と端子852とを非接続とする第2状態と、を切り替える。第1切替スイッチ85aは、第1モード及び第3モードにおいて端子851と端子852とを接続し、第2モードにおいて端子851と端子852とを非接続とする。
【0023】
第2切替スイッチ85bは、端子853と端子854とを接続する第1状態と、端子853と端子854とを接続する第2状態と、を切り替える。第2切替スイッチ85bは、第2モードにおいて端子853と端子854とを接続し、第1モード及び第3モードにおいて端子853と端子854とを非接続とする。
【0024】
これにより、第1モード及び第3モードにおいては、副線路82の第1端821は、第2終端回路83と接続される。また、第2モードにおいては、副線路82の第1端821は、第3接続端子873と接続される。
【0025】
(1.6)第3切替スイッチ及び第4切替スイッチ
第3切替スイッチ86a及び第4切替スイッチ86bは、副線路82の第2端822の接続先を、第3接続端子873又は第2終端回路83に切り替えるためのスイッチである。第3切替スイッチ86aは、2つの端子861及び862を有する。端子861は、副線路82の第2端822と接続されている。端子862は、第3接続端子873と接続されている。第4切替スイッチ86bは、2つの端子863及び864を有する。端子863は、副線路82の第2端822と接続されている。端子864は、第2終端回路83と接続されている。
【0026】
第3切替スイッチ86a及び第4切替スイッチ86bは、副線路82の第1端821が第3接続端子873及び第2終端回路83のうちの一方に接続される場合は、副線路82の第2端822を第3接続端子873及び第2終端回路83のうちの他方に接続するように、各々の接続と非接続が切り替えられる。
【0027】
より詳細には、第3切替スイッチ86aは、端子861と端子862とを接続する第1状態と、端子861と端子862とを非接続とする第2状態と、を切り替える。第3切替スイッチ86aは、第1モード及び第3モードにおいて端子861と端子862とを接続し、第2モードにおいて端子861と端子862とを非接続とする。
【0028】
第4切替スイッチ86bは、端子863と端子864とを接続する第1状態と、端子863と端子864とを非接続とする第2状態と、を切り替える。第4切替スイッチ86bは、第2モードにおいて端子863と端子864とを接続し、第1モード及び第3モードにおいて端子863と端子864とを非接続とする。
【0029】
これにより、第1モード及び第3モードにおいては副線路82の第2端822が第3接続端子873と接続される。また、第2モードにおいては副線路82の第2端822が第2終端回路83と接続される。
【0030】
(1.7)第1終端回路
第1終端回路84は、検波を行わない第3モードにおいて、第3接続端子873を終端させる(すなわち副線路82を終端させる)回路である。より詳細には、第1終端回路84は、第3モードにおいて、主線路81側(主線路81を伝送する信号)から見た副線路82側のインピーダンスを、例えば、第1モード及び第2モードにおいて主線路81側(主線路81を伝送する信号)から見た副線路82側のインピーダンスと同じになるように調整するための疑似終端回路である。第1終端回路84は、副線路82の第1端821又は第2端822と第3接続端子873とを接続する出力経路88(第1出力経路)とグランドとの間の経路に接続されている。すなわち、第1終端回路84は、出力経路88をグランドに接続する。より詳細には、第1終端回路84は、出力経路88上の分岐点N1とグランドとの間の経路に接続されている。なお、検波を行わない状態とは、非検波時のことであり、主線路81を伝送する高周波信号を副線路82を介して検波していない状態のことである。
【0031】
第1終端回路84は、例えば抵抗R1を備える。抵抗R1は、終端スイッチ89と直列に接続されている。より詳細には、抵抗R1の一端は、終端スイッチ89の端子892に接続されており、抵抗R1の他端はグランドに接続されている。
【0032】
(1.8)出力経路
出力経路88(第1出力経路)は、副線路82の第1端821又は第2端822と第3接続端子873と接続する信号経路であって、副線路82によって検波された検波信号を副線路82の第1端821又は第2端822から第3接続端子873まで伝送する信号経路である。出力経路88上に第2切替スイッチ85b及び第3切替スイッチ86aが設けられている。
【0033】
出力経路88は、第1~4経路881~884を有する。第1経路881は、副線路82の第1端821と第2切替スイッチ85bの端子853とを接続する。第2経路882は、副線路82の第2端822と第3切替スイッチ86aの端子861とを接続する。第3経路883は、第2切替スイッチ85bの端子854と第3切替スイッチ86aの端子862とを接続する。第4経路884は、第3経路883の分岐点N2と第3接続端子873とを接続する。第4経路884に分岐点N1が設けられている。すなわち、第4経路884の分岐点N1とグランドとの間に第1終端回路84及び終端スイッチ89が直列に接続されている。
【0034】
出力経路88は、第1モードにおいては、第3切替スイッチ86aが接続状態に切り替えられ、かつ第2切替スイッチ85bが非接続状態に切り替えられることで、副線路82の第2端822を第3接続端子873に接続する。第1モードでは、終端スイッチ89が非接続状態に切り替えられることで、第1終端回路84は出力経路88から分離される。また、出力経路88は、第2モードにおいては、第2切替スイッチ85bが接続状態に切り替えられ、かつ第3切替スイッチ86aが非接続状態に切り替えられることで、副線路82の第1端821を第3接続端子873に接続する。第2モードにおいては、終端スイッチ89が非接続状態に切り替えられることで、第1終端回路84は出力経路88から分離される。また、出力経路88は、第3モードにおいては、第3切替スイッチ86aが接続状態に切り替えられ、かつ第2切替スイッチ85bが非接続状態に切り替えられ、かつ終端スイッチ89が接続状態に切り替えられることで、副線路82の第2端822を第1終端回路84に接続する。
【0035】
(1.9)終端スイッチ
終端スイッチ89は、第1終端回路84と出力経路88との接続及び非接続を切り替える。終端スイッチ89は、2つの端子891及び892を有する。端子891は、出力経路88の分岐点N1と接続されている。端子892は、第1終端回路84の抵抗R1の一端と接続されている。
【0036】
(2)動作
方向性結合器8は、上述したように、第1モード、第2モード及び第3モードを有する。第1モードは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)を検波する検波モードである。第2モードは、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)を検波する検波モードである。第3モードは、主線路81を伝送する信号に対して検波を行わない非検波モードである。
【0037】
(2.1)第1モード
方向性結合器8は、第1モードでは、
図1に示すように、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを接続し、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続する。また、方向性結合器8は、第1モードでは、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とし、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とする。また、方向性結合器8は、第1モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第1モードでは、副線路82の第1端821は、第2終端回路83と接続され、副線路82の第2端822は、出力経路88を介して第3接続端子873と接続され、第1終端回路84は、出力経路88から分離される。
【0038】
方向性結合器8は、第1モードでは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)S1を副線路82にて検波し、この検波信号S2を、第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。また、第1モードでは、副線路82の第1端821は、第2終端回路83と接続され、副線路82の第2端822は、第3接続端子873を介して上記外部装置と接続される。したがって、第1モードでは、主線路81側から見たときの副線路82側のインピーダンスは、第2終端回路83及び上記外部装置に対応するインピーダンスを含むように見える。
【0039】
(2.2)第2モード
方向性結合器8は、第2モードでは、
図2に示すように、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを接続し、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを接続する。また、方向性結合器8は、第2モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを非接続とする。また、方向性結合器8は、第2モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第2モードでは、副線路82の第1端821は、出力経路88を介して第3接続端子873と接続され、副線路82の第2端822は、第2終端回路83と接続され、第1終端回路84は、出力経路88から分離される。
【0040】
方向性結合器8は、第2モードでは、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)S3を副線路82にて検波し、この検波信号S4を、第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。また、第2モードでは、副線路82の第1端821は、第3接続端子873を介して上記外部装置と接続され、副線路82の第2端822は、第2終端回路83が接続される。したがって、第2モードでは、主線路81側から見た副線路82側のインピーダンスは、第2終端回路83及び上記外部装置に対応するインピーダンスを含むように見える。
【0041】
(2.3)第3モード
方向性結合器8は、第3モードでは、
図3に示すように、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを接続し、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続する。また、方向性結合器8は、第3モードでは、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とし、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とする。また、方向性結合器8は、第3モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続する。すなわち、第3モードは、第1モードにおいて、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続することと同じである。これにより、第3モードでは、副線路82の第1端821は、第2終端回路83によって終端され、副線路82の第2端822は、出力経路88を介して第3接続端子873と接続され、第3接続端子873は、第1終端回路84によって終端される。すなわち、副線路82の第2端822は、第1終端回路84によって終端される。
【0042】
方向性結合器8は、第3モードでは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号S1(順方向信号)の一部が副線路82に流れる。この副線路82に流れた信号S5は、副線路82の第2端822から出力経路88を伝送して、出力経路88の分岐点N1から終端スイッチ89及び第1終端回路84を介してグランドに流れる。このため、第3モードでは、主線路81から副線路82に流れた信号S5は、第3接続端子873から殆ど出力されない。
【0043】
方向性結合器8は、第3モードでは、副線路82の第1端821は、第2終端回路83によって終端され、副線路82の第2端822は、第1終端回路84によって終端される。これにより、主線路81側から見た副線路82側のインピーダンスは、第1終端回路84及び第2終端回路83に対応するインピーダンスを含む。第1終端回路84のインピーダンスは、例えば、第3接続端子873に接続された上記外部装置(例えば、検波器)のインピーダンスと同程度の大きさである。したがって、第1モード及び第2モード(検波時)と、第3モード(非検波時)とで、主線路81側から見たときの副線路82側のインピーダンスの変化を低減することができる。この結果、検波を行う場合(検波時)と検波を行なわない場合(非検波時)とで、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0044】
なお、上述の説明では、第3モードは、第1モードにおいて終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続する。ただし、第3モードは、第2モードにおいて終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続してもよい。
【0045】
(3)比較例1との比較
実施形態1の方向性結合器8の挿入損失及び位相特性について、比較例1の方向性結合器との比較で説明する。
【0046】
比較例1の方向性結合器は、実施形態1の方向性結合器8において、第1終端回路84及び終端スイッチ89を削除した構成を有する。また、比較例1の方向性結合器では、順方向信号を検波するときは、実施形態1の方向性結合器8の第1モードと同じように、第1~第4切替スイッチ85a,85b,86a,86bを切り替える。また、比較例1の方向性結合器では、逆方向信号を検波するときは、実施形態1の方向性結合器8の第2モードと同じように、第1~第4切替スイッチ85a,85b,86a,86bを切り替える。また、比較例1の方向性結合器では、検波を行わない場合は、第1~第4切替スイッチ85a,85b,86a,86bを非接続状態に切り替える。
【0047】
図4は、方向性結合器8及び比較例1の方向性結合器について、検波を行っている場合と検波を行っていない場合との主線路81の挿入損失の差を示すグラフである。この差を振幅不連続性(Amplitude Discontinuity)と記載する。
図4において、横軸は、主線路81を伝送する高周波信号の周波数である。より詳細には、
図4のデータ211は、実施形態1における、第1モードにおける主線路81の挿入損失と、第3モードにおける主線路81の挿入損失との差(振幅不連続性)を示している。一方、
図4のデータ212は、比較例1の方向性結合器において、検波を行っている場合の主線路81の挿入損失と、検波を行っていない場合の主線路81の挿入損失との差(振幅不連続性)を示している。
【0048】
図4に示されるように、実施形態1の方向性結合器8での振幅不連続性(データ211)は、比較例1の方向性結合器での振幅不連続性(データ212)よりも小さい。とくに、比較例1の方向性結合器での振幅不連続性は、高周波数側で急に上昇するのに対し、実施形態1の方向性結合器8での振幅不連続性は、高周波数側でも絶対値が小さい。以上より、
図4から、実施形態1の方向性結合器8では、主線路81の挿入損失が副線路82の使用状態(モード)に依存して変動することを抑制することができることが分かる。
【0049】
また、
図5は、方向性結合器8及び比較例1の方向性結合器について、検波を行っている場合と検波を行っていない場合での主線路81の伝送する高周波信号の位相変化を示すグラフである。この移相変化を位相不連続性(Phase Discontinuity)と記載する。
図5において、横軸は、主線路81を伝送する高周波信号の周波数である。より詳細には、
図5のデータ221は、実施形態1における、第1モードにおいて主線路81を伝送する高周波信号の位相と、第3モードにおいて主線路81を伝送する高周波信号の位相との差(位相不連続性)を示している。一方、
図5のデータ222は、比較例1の方向性結合器において、検波を行っている場合に主線路81を伝送する高周波信号の位相と、検波を行っていない場合に主線路81を伝送する高周波信号の位相との差(位相不連続性)を示している。
【0050】
図5に示されるように、実施形態1の方向性結合器8での位相不連続性(データ221)は、比較例1の方向性結合器での位相不連続性(データ222)よりも小さい。とくに、比較例1の方向性結合器での位相不連続性は、周波数が高くなるのに伴って単調に増大するのに対し、実施形態1の方向性結合器8での位相不連続性は、周波数が高くなってもほぼ一定である。以上より、
図5から、実施形態1の方向性結合器8では、主線路81を伝送する高周波信号の位相が検波の有無に依存した変動することを抑制することができることがわかる。
【0051】
(4)比較例2との比較
実施形態1の方向性結合器8における第1終端回路84の接続位置の優位性について、比較例2の方向性結合器との比較で説明する。
【0052】
比較例2の方向性結合器は、実施形態1の方向性結合器8において、第1終端回路84及び終端スイッチ89の代わりに、第1抵抗、第2抵抗、第1スイッチ及び第2スイッチを備える。第1抵抗及び第2抵抗は、疑似終端抵抗として機能する。第1抵抗は、副線路82の第1端821とグランドとの間に接続される。第2抵抗は、副線路82の第2端822とグランドとの間に接続される。第1スイッチは、副線路82の第1端821と第1抵抗との接続及び非接続を切り替える。第2終端スイッチは、副線路82の第2端822と第2抵抗との接続及び非接続を切り替える。
【0053】
比較例2の方向性結合器では、検波を行う場合は、第1スイッチ及び第2スイッチを非接続状態に切り替えて、第1抵抗及び第2抵抗を副線路82から分離する。また、副線路82の第1端821及び第2端822の一方には、第3接続端子873を介して外部装置(例えば検波器)が接続され、副線路82の第1端821及び第2端822の他方には、第2終端回路83が接続される。また、比較例2の方向性結合器では、検波を行わない場合は、第3接続端子873及び第2終端回路83を副線路82から分離した状態で、第1スイッチ及び第2スイッチを接続状態に切り替えて、第1抵抗及び第2抵抗を副線路82に接続する。これにより、比較例2の方向性結合器では、検波する場合は、副線路82に第2終端回路83及び上記外部装置が接続され、検波しない場合は、副線路82に第1抵抗及び第2抵抗が接続される。その結果、実施形態1に係る方向性結合器8の場合と同様に、主線路81の挿入損失及び主線路81を伝送する高周波信号の位相が検波の有無に依存した変動することを抑制することができる。
【0054】
比較例2の方向性結合器では、1つの副線路に対して、2つの抵抗(第1抵抗及び第2抵抗)と2つのスイッチ(第1スイッチ及び第2スイッチ)が設けられる。したがって、比較例2の方向性結合器では、複数の副線路を備える場合は、副線路の数が多いほど、設けられる上記抵抗及び上記スイッチの数が多くなる。このため、比較例2の方向性結合器の回路面積は、比較的大きくなる。
【0055】
実施形態1の方向性結合器8では、第1終端回路84は、副線路82の第1端821又は第2端822と第3接続端子873とを接続する出力経路88の分岐点N1に接続される。すなわち、第1終端回路84は、比較例2のように副線路82ごとに設けられない。したがって、実施形態1の方向性結合器8では、複数の副線路を備える場合でも、第1終端回路84は1つで済むため、比較例2の方向性結合器と比べて、方向性結合器8の回路面積が大きくなることを抑制できる。
【0056】
(5)効果
実施形態1に係る方向性結合器8は、主線路81と、副線路82と、第3接続端子(出力端子)873と、第1終端回路84(終端回路)と、終端スイッチ89と、を備える。第3接続端子873は、副線路82によって検波された検波信号S2を出力するための接続端子である。終端回路84は、副線路82と第3接続端子873とを接続する出力経路88とグランドとの間の経路に接続される。終端スイッチ89は、出力経路88と終端回路84との接続及び非接続を切り替える。
【0057】
この構成によれば、非検波時は、終端スイッチ89によって出力経路88と第1終端回路84とを接続することで、副線路82を第1終端回路84によって終端することができる。これにより、検波時と非検波時とで、主線路81を伝送する信号に対する副線路82のインピーダンスの変化を低減することができる。したがって、検波時と非検波時とで、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0058】
すなわち、実施形態1の構成によれば、検波時(第1モード及び第2モード)と、非検波時(第3モード)とで、主線路81の挿入損失の差及び主線路81を伝送する高周波信号の位相差を低減することができる。したがって、主線路81の挿入損失及び主線路81を伝送する高周波信号の位相が検波の有無に依存して変化することを抑制することができる。また、検波時(第1モード及び第2モード)において、検波によって得られた主線路81を伝送する信号の振幅と、非検波時(第3モード)において主線路81を伝送する信号の振幅との差を小さくし、検波の精度を向上することができる。
【0059】
(6)変形例
実施形態1に係る方向性結合器8について、
図6~
図9に示すように、第1終端回路84の代わりに、第1終端回路84a~84dのいずれかを備えてもよい。
【0060】
図6に示すように、第1終端回路84aは、第1端8411及び第2端8412を有する。第1端8411は、終端スイッチ89の端子892に接続され、第2端8412は、グランドに接続されている。第1終端回路84aは、例えば、抵抗8431と、キャパシタ8432とを有する。抵抗8431と、キャパシタ8432とは、並列に接続されている。より詳細には、抵抗8431とキャパシタ8432との各々は、一端が第1終端回路84aの第1端8411に接続され、他端が第1終端回路84aの第2端8412に接続されている。
【0061】
図7に示すように、第1終端回路84bは、第1端8411及び第2端8412を有する。第1端8411は、終端スイッチ89の端子892に接続され、第2端8412は、グランドに接続されている。第1終端回路84bは、例えば、抵抗8431と、キャパシタ8432と、インダクタ8433とを有する。抵抗8431とキャパシタ8432とは、互いに並列に接続されている。インダクタ8433は、抵抗8431とキャパシタ8432と直列に接続されている。より詳細には、抵抗8431と、キャパシタ8432との各々は、一端が第1終端回路84bの第1端8411に接続され、他端がインダクタ8433の一端に接続されている。インダクタ8433は、一端が抵抗8431及びキャパシタ8432の各々の他端に接続され、他端が第1終端回路84bの第2端8412に接続されている。
【0062】
図8に示すように、第1終端回路84cは、第1端8411及び第2端8412を有する。第1端8411は、終端スイッチ89の端子892に接続され、第2端8412は、グランドに接続されている。第1終端回路84cは、例えば、抵抗8431と、キャパシタ8432と、インダクタ8433とを有する。抵抗8431と、キャパシタ8432と、インダクタ8433とは、互いに並列に接続されている。より詳細には、抵抗8431と、キャパシタ8432と、インダクタ8433との各々は、一端が第1終端回路84cの第1端8411に接続され、他端が第1終端回路84cの第2端8412に接続されている。
【0063】
図9に示すように、第1終端回路84dは、第1端8411及び第2端8412を有する。第1端8411は、終端スイッチ89の端子892に接続され、第2端8412は、グランドに接続されている。第1終端回路84dは、例えば、可変抵抗8434と、可変キャパシタ8435と、可変インダクタ8436とを有する。可変抵抗8434と、可変キャパシタ8435と、可変インダクタ8436とは、互いに並列に接続されている。より詳細には、可変抵抗8434と、可変キャパシタ8435と、可変インダクタ8436との各々は、一端が第1終端回路84dの第1端8411に接続され、他端が第1終端回路84dの第2端8412に接続されている。第1終端回路84dの構成要素として可変素子(可変抵抗8434、可変キャパシタ8435、又は可変インダクタ8436)を用いることで、例えば、方向性結合器8の製造後に、第1終端回路84dのインピーダンスを調整することができる。したがって、例えば、主線路81を伝送する信号の周波数帯域に対して第1終端回路84dのインピーダンスを最適化し、第1モード及び第2モード(検波時)と、第3モード(非検波時)とで、主線路81の挿入損失の差及び高周波信号の位相差を最小化することができる。
【0064】
これらの場合においても、第1終端回路84と同様に、第3モードにおいて主線路81側(主線路81を伝送する高周波信号)から見た副線路82側のインピーダンスを調整することができる。
【0065】
なお、第1終端回路84は上述の構成に限られず、例えば、可変抵抗8434と、可変キャパシタ8435と、可変インダクタ8436とのうちいずれか1つ又は2つから構成されていてもよい。また、第1終端回路84は、例えば、1以上の可変素子(可変抵抗8434、可変キャパシタ8435、又は可変インダクタ8436)と1以上の非可変素子(抵抗8431、キャパシタ8432、又はインダクタ8433)とを有してもよい。この場合でも、例えば、方向性結合器8の製造後に、第1終端回路84のインピーダンスを調整することができる。
【0066】
(実施形態2)
実施形態2に係る方向性結合器8bについて、
図10を参照して説明する。実施形態2に係る方向性結合器8bに関し、実施形態1に係る方向性結合器8と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
実施形態2に係る方向性結合器8bは、第1副線路82a及び第2副線路82bを備えている点と、分離スイッチ97、第5切替スイッチ85c及び第6切替スイッチ85dを備えている点とで、実施形態1に係る方向性結合器8と相違する。
【0068】
(1)構成
実施形態2に係る方向性結合器8bは、
図10に示すように、主線路81と、第1副線路82aと、第2副線路82bと、複数(図示例では3つ)の接続端子87と、分離スイッチ97と、第1切替スイッチ85aと、第2切替スイッチ85bと、第3切替スイッチ86aと、第4切替スイッチ86bと、第2終端回路83と、第1終端回路84と、第5切替スイッチ85cと、第6切替スイッチ85dと、を備える。
【0069】
実施形態2に係る方向性結合器8bは、検波モードとして、第1モード及び第2モードに加えて、第4モードと第5モードとを有する。第1モードは、第1副線路82aにて、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)のうち第1周波数帯域の信号を検波する検波モードである。また、第2モードは、第1副線路82aにて、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)のうち第1周波数帯域の信号を検波する検波モードである。また、第4モードは、第1副線路82a及び第2副線路82bにて、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)のうち第2周波数帯域の信号を検波する検波モードである。また、第5モードは、第1副線路82a及び第2副線路82bにて、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)のうち第2周波数帯域の信号を検波する検波モードである。第2周波数帯域は、第1周波数帯域よりも周波数の低い帯域である。すなわち、第1モード及び第2モードは、相対的に周波数の高い信号を検波するHB(ハイバンド)モードであり、第4モード及び第5モードは、相対的に周波数の低い信号を検波するLB(ローバンド)モードである。
【0070】
また、実施形態2に係る方向性結合器8bは、非検波モードとしての第3モードと第6モードとを有する。第3モードは、検波を行うことなく、主線路81を用いて第1周波数帯域の信号を送信、受信、又は送受信するモードである。第6モードは、検波を行うことなく、主線路81を用いて第2周波数帯域の信号を送信、受信、又は送受信するモードである。
【0071】
(1.1)副線路
第1副線路82aは、第1副線路82aの長手方向の両端である第1端821a及び第2端822aを有する。第1副線路82aの第1端821aは、第1切替スイッチ85a及び第2切替スイッチ85bに接続されている。また、第1副線路82aの第1端821aは、分離スイッチ97を介して第2副線路82bの第2端822bに接続されている。第1副線路82aの第2端822aは、第3切替スイッチ86a及び第4切替スイッチ86bに接続されている。第1副線路82aは、例えば、主線路81と電磁界的に結合している。第1副線路82aは、実施形態1の副線路82に対応している。
【0072】
第2副線路82bは、第2副線路82bの長手方向の両端である第1端821b及び第2端822bを有する。第2副線路82bの第1端821bは、第5切替スイッチ85c及び第6切替スイッチ85dに接続されている。より詳細には、第2副線路82bの第1端821bは、第5切替スイッチ85cの端子855及び第6切替スイッチ85dの端子857に接続されている。第2副線路82bの第2端822bは、分離スイッチ97を介して第1副線路82aの第1端821aに接続されている。第2副線路82bは、例えば、主線路81と電磁界的に結合している。
【0073】
(1.2)分離スイッチ97、第5切替スイッチ及び第6切替スイッチ
分離スイッチ97は、第1副線路82a及び第2副線路82bのうちの第1副線路82aのみを使用する検波時及び非検波時に、使用しない第2副線路82bを第1副線路82aから分離するためのスイッチである。分離スイッチ97は、2つの端子971及び972を有する。端子971は、第1副線路82aの第1端821aと接続されるとともに、第1切替スイッチ85aの端子851及び第2切替スイッチ85bの端子853と接続されている。端子972は、第2副線路82bの第2端822bと接続されている。
【0074】
分離スイッチ97は、第1副線路82a及び第2副線路82bのうちの第1副線路82aのみを使用するモード(第1~第3モード)では、非接続に切り替えられる。また、分離スイッチ97は、第1副線路82a及び第2副線路82bを使用するモード(第4~第6モード)では、接続に切り替えられる。
【0075】
第5切替スイッチ85c及び第6切替スイッチ85dは、第2副線路82bの第1端821bの接続先を第3接続端子873又は第2終端回路83に切り替えるためのスイッチである。第5切替スイッチ85cは、2つの端子855及び856を有する。端子855は、第2副線路82bの第1端821bと接続されている。端子856は、第2終端回路83と接続されている。第6切替スイッチ85dは、2つの端子857及び858を有する。端子857は、第2副線路82bの第1端821bと接続されている。端子858は、第3接続端子873と接続されている。
【0076】
第5切替スイッチ85c及び第6切替スイッチ85dは、第4~第6モードにおいて、第1副線路82aの第2端822aが第3接続端子873及び第2終端回路83のうちの一方に接続される場合は、第2副線路82bの第1端821bを第3接続端子873及び第2終端回路83のうちの他方に接続するように、各々の接続と非接続とが切り替えられる。
【0077】
より詳細には、第5切替スイッチ85cは、端子855と端子856とを接続する第1状態と、端子855と端子856とを接続する第2状態と、を切り替える。第5切替スイッチ85cは、第4モード及び第6モードにおいて端子855と端子856とを接続し、それ以外のモード、すなわち、第1モード、第2モード、第3モード、第5モード、及び第6モードにおいて、端子855と端子856とを非接続とする。
【0078】
第6切替スイッチ85dは、端子857と端子858とを接続する第1状態と、端子857と端子858とを接続する第2状態と、を切り替える。第6切替スイッチ85dは、第5モードにおいて端子857と端子858とを接続し、それ以外のモード、すなわち、第1モード、第2モード、第3モード、第4モード、及び第6モードにおいて、端子857と端子858とを非接続とする。
【0079】
これにより、第4モード及び第6モードにおいては、第2副線路82bの第1端821bは第2終端回路83と接続される。また、第5モードにおいては、第2副線路82bの第1端821bは第3接続端子873と接続される。また、第1モード、第2モード、第3モードにおいては、第2副線路82bの第1端821bは、第2終端回路83と第3接続端子873とのいずれとも接続されない。
【0080】
(1.3)出力経路
実施形態2では、第1出力経路である出力経路88とは異なる第2出力経路である出力経路88bを更に備える。出力経路88bは、第1副線路82a及び第2副線路82bの直列回路の第1端(第2副線路82bの第1端821b)又は第2端(第1副線路82aの第2端822a)と第3接続端子873との間の信号経路であって、上記直列回路によって検波された検波信号を上記直列回路から第3接続端子873まで伝送する信号経路である。出力経路88b上に第3切替スイッチ86a及び第6切替スイッチ85dが設けられている。出力経路88bは、第2経路882、第4経路884、第5経路885及び第6経路886を有する。
【0081】
第2経路882は、実施形態1の第2経路882と同じであり、第1副線路82aの第2端822aと第3切替スイッチ86aの端子861とを接続する経路である。第4経路884は、第6経路886の分岐点N2と第3接続端子873とを接続する経路である。第4経路884には、分岐点N1が設けられている。すなわち、第4経路884の分岐点N1とグランドとの間に第1終端回路84及び終端スイッチ89が直列に接続されている。第5経路885は、第2副線路82bの第1端821bと第6切替スイッチ85dの端子857とを接続する経路である。第6経路886は、第3切替スイッチ86aの端子862と第6切替スイッチ85dの端子858とを接続する経路である。
【0082】
第2出力経路88bは、第1出力経路88と部分的に共通である。より詳細には、第2経路882、第6経路886の一部、及び、第4経路884は、第1出力経路88と第2出力経路88bとで共通である。分岐点N1は、第1出力経路88と第2出力経路88bとの共通部分(第4経路884)に設けられている。
【0083】
出力経路88bは、第4モードにおいては、第3切替スイッチ86aが接続状態に切り替えられ、かつ第6切替スイッチ85dが非接続状態に切り替えられることで、第1副線路82aの第2端822aを第3接続端子873に接続する。第4モードにおいては、終端スイッチ89が非接続状態に切り替えられることで、終端回路84は出力経路88から分離される。これにより、第1副線路82a及び第2副線路82bの直列回路で検波された信号は、第1副線路82aの第2端822aから第3接続端子873に伝送される。
【0084】
また、出力経路88bは、第5モードにおいては、第6切替スイッチ85dが接続状態に切り替えられ、かつ第3切替スイッチ86aが非接続状態に切り替えられることで、第2副線路82bの第1端821bを第3接続端子873に接続する。第5モードにおいては、終端スイッチ89が非接続状態に切り替えられることで、終端回路84は出力経路88から分離される。これにより、上記直列回路で検波された信号は、第2副線路82bの第1端821bから第3接続端子873に伝送される。
【0085】
また、出力経路88は、第6モードにおいては、第3切替スイッチ86aが接続状態に切り替えられ、かつ第6切替スイッチ85dが非接続状態に切り替えられ、かつ終端スイッチ89が接続状態に切り替えられることで、第1副線路82aの第2端822aを終端回路84に接続する。これにより、主線路81から上記直列回路に流れた信号は、終端スイッチ89及び終端回路84を介してグランドに流れる。
【0086】
出力経路88bは、第1モード、第2モード及び第3モードにおいては、第5切替スイッチ85c及び第6切替スイッチ85dが非接続状態に切り替えられる。
【0087】
(2)動作
方向性結合器8bは、上述したように、第1モード、第2モード、第3モード、第4モード、第5モード及び第6モードを有する。
【0088】
(2.1)第1モード
方向性結合器8bは、第1モードでは、分離スイッチ97を非接続とする。また、方向性結合器8bは、第1モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを接続し、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続する。また、方向性結合器8bは、第1モードでは、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とし、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第1モードでは、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第1モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第1モードでは、第1副線路82aの第1端821aが第2終端回路83によって終端され、第1副線路82aの第2端822aが第3接続端子873と接続される。また、第1モードでは、第2副線路82bの第1端821b及び第2端822bが非接続とされる。また、第1モードでは、終端回路84は出力経路88と分離される。
【0089】
方向性結合器8bは、第1モードでは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)のうち第1周波数帯域の信号を第1副線路82aにて検波し、この検波信号を、第1副線路82aの第2端822aから第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。
【0090】
(2.2)第2モード
方向性結合器8bは、第2モードでは、分離スイッチ97を非接続とする。また、方向性結合器8bは、第2モードでは、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを接続し、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを接続する。また、方向性結合器8bは、第2モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第2モードでは、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第2モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第2モードでは、第1副線路82aの第1端821aが第3接続端子873と接続され、第1副線路82aの第2端822aが第2終端回路83によって終端される。また、第2モードでは、第2副線路82bの第1端821b及び第2端822bが非接続とされる。また、第2モードでは、終端回路84は出力経路88と分離される。
【0091】
方向性結合器8bは、第2モードでは、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)のうち第1周波数帯域の信号を第1副線路82aにて検波し、この検波信号を、第1副線路82aの第1端821aから第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。
【0092】
(2.3)第3モード
方向性結合器8bは、第3モードでは、分離スイッチ97を非接続とする。方向性結合器8bは、第3モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを接続し、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続する。また、方向性結合器8bは、第3モードでは、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とし、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第3モードでは、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第3モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続する。すなわち、第3モードは、第1モードにおいて、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続することと同じである。これにより、第3モードでは、第1副線路82aの第1端821aが第2終端回路83によって終端され、第1副線路82aの第2端822aが第3接続端子873と接続され、第3接続端子873は第1終端回路84によって終端される。また、第3モードでは、第2副線路82bの第1端821b及び第2端822bが非接続とされる。
【0093】
方向性結合器8bは、第3モードでは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)のうち第2周波数帯域の信号の一部が副線路82cに流れる。この副線路82cに流れた信号は、出力経路88の分岐点N1から終端スイッチ89及び第1終端回路84を流れてグランドに流れる。このため、第3モードでは、主線路81から副線路82cに流れた信号は、第3接続端子873から外部装置(例えば、検波器)には殆ど出力されない。
【0094】
方向性結合器8bは、第3モードでは、第1副線路82aの第1端821aは、第2終端回路83によって終端され、第1副線路82aの第2端822aは、第1終端回路84によって終端される。これにより、主線路81側(主線路81を伝送する第1周波数帯域の信号)から見た第1副線路82a側のインピーダンスは、第1終端回路84及び第2終端回路83に対応したインピーダンスを含む。第1終端回路84のインピーダンスは、例えば、第3接続端子873に接続された上記外部装置(例えば、検波器)のインピーダンスと同程度の大きさである。したがって、第1モード及び第2モード(検波時)と、第3波モード(非検波時)とで、主線路81側(主線路81を伝送する第1周波数帯域の信号)から見た第1副線路82a側のインピーダンスの変化を低減することができる。この結果、検波を行う場合(検波時)と検波を行わない場合(非検波時)とで、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0095】
(2.4)第4モード
方向性結合器8bは、第4モードでは、分離スイッチ97を接続とする。また、方向性結合器8bは、第4モードでは、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続し、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを接続する。また、方向性結合器8bは、第4モードでは、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第4モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第4モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第4モードでは、第1副線路82aと第2副線路82bとが直列に接続され、第2副線路82bの第1端821bが第2終端回路83によって終端され、第1副線路82aの第2端822aが第3接続端子873と接続される。また、第4モードでは、第1終端回路84は出力経路88と分離される。
【0096】
また、第4モードでは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとが接続されている。したがって、第1副線路82aと第2副線路82bとの直列回路(以下、「副線路82c」という)が、副線路として機能する。
【0097】
方向性結合器8bは、第4モードでは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)のうち第2周波数帯域の信号を副線路82cにて検波し、この検波信号を、第1副線路82aの第2端822aから第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。
【0098】
(2.5)第5モード
方向性結合器8bは、第5モードでは、分離スイッチ97を接続とする。また、方向性結合器8bは、第5モードでは、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを接続し、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを接続する。また、方向性結合器8bは、第5モードでは、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを非接続とし、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第5モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第5モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第5モードでは、第1副線路82aと第2副線路82bとが直列に接続され、第2副線路82bの第1端821bが第3接続端子873と接続され、第1副線路82aの第2端822aが第2終端回路83によって終端される。また、第5モードでは、終端回路84は出力経路88と分離される。
【0099】
また、第5モードでは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとが接続されている。したがって、副線路82cが、副線路として機能する。
【0100】
方向性結合器8bは、第5モードでは、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)のうち第2周波数帯域の信号を副線路82cにて検波し、この検波信号を、第2副線路82bの第1端821bから第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。
【0101】
(2.6)第6モード
方向性結合器8bは、第6モードでは、分離スイッチ97を接続とする。また、方向性結合器8bは、第6モードでは、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続し、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを接続する。また、方向性結合器8bは、第6モードでは、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第6モードにおいては、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第6モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続する。すなわち、第6モードは、第4モードにおいて、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続することと同じである。これにより、第6モードでは、第1副線路82aと第2副線路82bとが直列に接続され、第1副線路82aの第2端822aが第2終端回路83によって終端され、第2副線路82bの第1端821bが第3接続端子873と接続され、第3接続端子873は第1終端回路84によって終端される。
【0102】
また、第6モードでは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとが接続されている。すなわち、第1副線路82a及び第2副線路82bの直列回路である副線路82cの第1端は、第2副線路82bの第1端821bであり、副線路82cの第2端は、第1副線路82aの第2端822aである。したがって、第6モードでは、副線路82cの第1端(第1端821b)が第2終端回路83と接続され、副線路82cの第2端(第2端822a)が第1終端回路84と接続される。
【0103】
方向性結合器8bは、第6モードでは、副線路82cの第1端(第1端821b)は、第2終端回路83によって終端され、副線路82cの第2端(第2端822a)は、第1終端回路84によって終端される。これにより、主線路81側(主線路81を伝送する第2周波数帯域の信号)から見た副線路82c側のインピーダンスは、第1終端回路84及び第2終端回路83に対応したインピーダンスを含む。第1終端回路84のインピーダンスは、例えば、第3接続端子873に接続された上記外部装置(例えば、検波器)のインピーダンスと同程度の大きさである。したがって、第4モード及び第5モード(検波時)と、第6モード(非検波時)とで、主線路81側(主線路81を伝送する第2周波数帯域の信号)から見た副線路82c側のインピーダンスの変化を低減することができる。この結果、検波を行う場合(検波時)と検波を行わない場合(非検波時)とで、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0104】
(3)効果
実施形態2に係る方向性結合器8bでは、上述したように、第3モードにおいて、第1副線路82aの第1端821aを第1終端回路84によって終端し、第1副線路82aの第2端822aを第2終端回路83によって終端する。これにより、第1モード及び第2モード(検波時)と、第3モード(非検波時)とで、主線路81側(主線路81を伝送する第1周波数帯域の信号)から見た第1副線路82a側のインピーダンスの差を小さくすることができる。したがって、第1周波数帯域の信号に対して、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化が検波の有無に依存して変動することを抑制することができる。
【0105】
また、実施形態2に係る方向性結合器8bでは、上述したように、第6モードにおいて、副線路82cの第1端(第1端821b)を第1終端回路84によって終端し、副線路82cの第2端(第2端822a)を第2終端回路83によって終端する。これにより、第4モード及び第5モード(検波時)と、第6モード(非検波時)とで、主線路81側(主線路81を伝送する第2周波数帯域の信号)から見た副線路82c側のインピーダンスの差を小さくすることができる。したがって、第2周波数帯域の信号に対して、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化が検波の有無に依存して変動することを抑制することができる。
【0106】
また、実施形態2では、使用する副線路(第1副線路82a及び第2副線路82b)の使用形態は2つ(すなわち第1副線路82a及び副線路82c)であり、使用する副線路の一端(すなわち第3接続端子873と接続された一端)を終端する第1終端回路84は1つである。すなわち、使用する副線路の使用形態の数が増えても、使用する副線路の一端(第3接続端子873と接続された一端)を終端する第1終端回路84の数が増えることを防止することができる。
【0107】
(実施形態3)
実施形態3に係る方向性結合器8cについて、
図11及び
図12を参照して説明する。実施形態3に係る方向性結合器8cに関し、実施形態2に係る方向性結合器8bと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0108】
(1)構成
実施形態3に係る方向性結合器8cは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとの間(より詳細には、分離スイッチ97と第2副線路82bの第2端822bとの間)に、移相回路90を更に備えている点で、実施形態2に係る方向性結合器8bと相違する。
【0109】
実施形態3に係る方向性結合器8cは、
図11に示すように、主線路81と、第1副線路82aと、第2副線路82bと、複数の接続端子87と、分離スイッチ97と、第1切替スイッチ85aと、第2切替スイッチ85bと、第3切替スイッチ86aと、第4切替スイッチ86bと、第2終端回路83と、第1終端回路84と、終端スイッチ89と、を備える。また、実施形態3に係る方向性結合器8cは、第5切替スイッチ85cと、第6切替スイッチ85dと、移相回路90と、を更に備える。
【0110】
(1.1)移相回路
移相回路90は、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとの間に設けられている。より詳細には、移相回路90の第1端901は、分離スイッチ97の端子972に接続されている。すなわち、移相回路90の第1端901は、分離スイッチ97を介して第1副線路82aの第1端821aに接続されている。移相回路90の第2端902は、第2副線路82bの第2端822bに接続されている。移相回路90は、
図12に示すように、例えば、インダクタ903と、2つのキャパシタ904,905と、を有する。インダクタ903は、移相回路90の両端である第1端901と第2端902とに接続されている。キャパシタ904は、移相回路90の第1端901とグランドとの間に設けられている。キャパシタ905は、移相回路90の第2端902とグランドとの間に設けられている。
【0111】
(2)動作
方向性結合器8cは、第1モード、第2モード、第3モード、第4モード、第5モード及び第6モードを有する。第1モード、第2モード、及び第3モードについては実施形態2と同一であるので、以下、第4モード、第5モード及び第6モードについて説明する。
【0112】
(2.1)第4モード
方向性結合器8cは、第4モードでは、分離スイッチ97を接続とする。また、方向性結合器8cは、第4モードでは、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続し、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを接続する。また、方向性結合器8cは、第4モードでは、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8cは、第4モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とする。また、方向性結合器8cは、第4モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第4モードでは、第1副線路82a、第2副線路82b及び移相回路90が直列に接続され、第2副線路82bの第1端821bが第2終端回路83と接続され、第1副線路82aの第2端822aが第3接続端子873と接続される。また、第4モードでは、終端回路84は出力経路88と分離される。
【0113】
また、第4モードでは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとが移相回路90を介して接続されている。したがって、第1副線路82aと第2副線路82bとの直列回路(以下、「副線路82d」という)が、副線路として機能する。
【0114】
方向性結合器8cは、第4モードでは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する信号(順方向信号)のうち第2周波数帯域の信号(検波対象信号)を副線路82dにて検波し、この検波信号を、副線路82dの第2端(第2端822a)から第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。ここで、実施形態3では、副線路82dにおいて、第1副線路82aと第2副線路82bとの間の信号経路に移相回路90が設けられている。すなわち、第1副線路82aと第2副線路82bの位相を調整することができる。なお、「第1副線路82aと第2副線路82bの位相を調整する」とは、第1副線路82aと第2副線路82bを伝送可能な信号の位相を調整することである。このように、第1副線路82aと第2副線路82bの位相を調整することで、主線路81を伝送する信号のうち非検波対象信号(例えば第2周波数帯よりも高い周波数帯の信号)が副線路82dに漏洩することを抑制することができる。したがって、第4モードにおいて第2周波数帯域の信号を送信、受信、又は送受信する場合に、非検波対象の信号が主線路81から副線路82dに漏洩することを抑制することができる。
【0115】
(2.2)第5モード
方向性結合器8cは、第5モードでは、分離スイッチ97を接続とする。また、方向性結合器8cは、第5モードでは、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを接続し、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを接続する。また、方向性結合器8cは、第5モードでは、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを非接続とし、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを非接続とする。また、方向性結合器8cは、第5モードでは、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とする。また、方向性結合器8cは、第5モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを非接続とする。これにより、第5モードでは、第1副線路82a、第2副線路82b及び移相回路90が直列に接続され、第2副線路82bの第1端821bが第3接続端子873と接続され、第1副線路82aの第2端822aが第2終端回路83と接続される。また、第5モードでは、終端回路84は出力経路88と分離される。
【0116】
また、第5モードでは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとが移相回路90を介して接続されている。したがって、副線路82dが、副線路として機能する。
【0117】
方向性結合器8cは、第5モードでは、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する信号(逆方向信号)のうち第2周波数帯域の信号(検波対象信号)を副線路82dにて検波し、この検波信号を、副線路82dの第1端(第1端821b)から第3接続端子873を介して外部装置(例えば、検波器)に出力する。ここで、実施形態3では、副線路82dにおいて、第1副線路82aと第2副線路82bとの間の信号経路に移相回路90が設けられており、第1副線路82aと第2副線路82bの位相を調整することができる。これにより、主線路81を伝送する信号のうち非検波対象信号(例えば第2周波数帯よりも高い周波数帯の信号)が副線路82dに漏洩することを抑制することができる。したがって、第5モードにおいて第2周波数帯域の信号を送信、受信、又は送受信する場合に、非検波対象の信号が主線路81から副線路82dに漏洩することを抑制することができる。
【0118】
(2.3)第6モード
方向性結合器8cは、第6モードでは、分離スイッチ97を接続とする。また、方向性結合器8cは、第6モードでは、第3切替スイッチ86aの端子861と端子862とを接続し、第5切替スイッチ85cの端子855と端子856とを接続する。また、方向性結合器8bは、第6モードでは、第4切替スイッチ86bの端子863と端子864とを非接続とし、第6切替スイッチ85dの端子857と端子858とを非接続とする。また、方向性結合器8bは、第6モードにおいては、第1切替スイッチ85aの端子851と端子852とを非接続とし、第2切替スイッチ85bの端子853と端子854とを非接続とする。また、方向性結合器8cは、第6モードでは、終端スイッチ89の端子891と端子892とを接続する。これにより、第6モードでは、第1副線路82a、第2副線路82b及び移相回路90が直列に接続され、第2副線路82bの第1端821bが第2終端回路83と接続され、第1副線路82aの第2端822aが第3接続端子873と接続され、第3接続端子873が第1終端回路84によって終端される。
【0119】
また、第6モードでは、第1副線路82aの第1端821aと第2副線路82bの第2端822bとが移相回路90を介して接続されている。すなわち、第1副線路82a及び第2副線路82bの直列回路である副線路82dの第1端は、第2副線路82bの第1端821bであり、副線路82dの第2端は、第1副線路82aの第2端822aである。したがって、第6モードでは、副線路82dの第1端(第1端821b)が第2終端回路83と接続され、副線路82dの第2端(第2端822a)が第1終端回路84と接続される。
【0120】
方向性結合器8cは、第6モードでは、副線路82dの第1端(第1端821b)が第2終端回路83によって終端され、副線路82dの第2端(第2端822a)が第1終端回路84によって終端される。これにより、主線路81側(主線路81を伝送する第2周波数帯域の信号(検波対象信号))から見た副線路82d側のインピーダンスは、第1終端回路84及び第2終端回路83に対応したインピーダンスを含む。第1終端回路84のインピーダンスは、例えば、第3接続端子873に接続された上記外部装置(すなわち検波器)のインピーダンスと同程度の大きさである。したがって、第4モード及び第5モード(検波時)と、第6モード(非検波時)とで、主線路81側(主線路81を伝送する第2周波数帯域の信号)から見た副線路82d側のインピーダンスの変化を低減することができる。その結果、第2周波数帯域の信号に対して、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化が検波の有無に依存して変動することを抑制することができる。
【0121】
また、実施形態3では、副線路82dにおいて、第1副線路82aと第2副線路82bとの間の信号経路に移相回路90が設けられており、第1副線路82aと第2副線路82bの位相を調整することができる。これにより、主線路81を伝送する信号のうち非検波対象信号(例えば第2周波数帯よりも高い周波数帯の信号)が副線路82dに漏洩することを抑制することができる。したがって、第6モードにおいて第2周波数帯域の信号を送信、受信、又は送受信する場合に、非検波対象の信号が主線路81から副線路82dに漏洩することを抑制することができる。
【0122】
(3)効果
実施形態3に係る方向性結合器8cでは、上述したように、第3モードにおいて、第1副線路82aの第1端821aが第2終端回路83によって終端され、第1副線路82aの第2端822aが第1終端回路84によって終端される。これにより、第1モード及び第2モード(検波時)と、第3モード(非検波時)とで、主線路81(主線路81を伝送する第1周波数帯域の信号)から見た第1副線路82a側のインピーダンスの差を小さくすることができる。したがって、第1周波数帯域の信号に対して、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化が検波の有無に依存して変動することを抑制することができる。
【0123】
また、実施形態3に係る方向性結合器8cでは、上述したように、第6モードにおいて、副線路82dの第1端(第1端821b)が第2終端回路83によって終端され、副線路82dの第2端(第2端822a)が第1終端回路84によって終端される。これにより、第4モード及び第5モード(検波時)と、第6モード(非検波時)とで、主線路81側(主線路81を伝送する第2周波数帯域の信号)から見た副線路82d側のインピーダンスの差を小さくすることができる。したがって、第2周波数帯域の信号に対して、主線路81の挿入損失の変化及び主線路81を伝送する信号の位相変化が検波の有無に依存して変動することを抑制することができる。
【0124】
また、実施形態3に係る方向性結合器8cでは、第1副線路82aと第2副線路82bとの間の信号経路に移相回路90が設けられており、第1副線路82aと第2副線路82bの位相を調整することができる。したがって、第2周波数帯域の信号を送信、受信、又は送受信する場合に、非検波対象信号(例えば第2周波数帯よりも高い周波数帯の信号)が主線路81から副線路に漏洩することを抑制することができる。
【0125】
(4)変形例
方向性結合器8cは、移相回路90の代わりに、移相回路90aを備えていてもよいし、移相回路90bを備えていてもよい。
【0126】
図13に示すように、移相回路90aは、例えば、複数(図示例では2つ)のインダクタ907と、複数(図示例では3つ)のキャパシタ904~906と、を有する。複数のインダクタ907は互いに直列に接続されており、移相回路90aの両端(第1端901及び第2端902)間に接続されている。キャパシタ904は、移相回路90aの第1端901とグランドとの間に接続されている。キャパシタ905は、移相回路90aの第2端902とグランドとの間に接続されている。キャパシタ906は、2つのインダクタ907の相互の接続点N3と、グランドとの間に接続されている。
【0127】
図14に示すように、移相回路90bは、例えば、インダクタ903と、2つの可変キャパシタ908,909と、を有する。インダクタ903は、移相回路90bの両端(第1端901及び第2端902)間に接続されている。可変キャパシタ908は、移相回路90bの第1端901とグランドとの間に接続されている。可変キャパシタ909は、移相回路90bの第2端902とグランドとの間に接続されている。
【0128】
これらの場合においても、移相回路90と同様、第1副線路82a及び第2副線路82bの位相を調整することが可能となり、その結果、LBモードにおいて、非検波対象信号が主線路81から副線路82dに漏洩することを抑制することができる。
【0129】
(実施形態4)
(1)高周波モジュール及び通信装置
(1.1)高周波モジュールの構成
実施形態4に係る高周波モジュール100の構成について、
図15を参照して説明する。
図15に示すように、高周波モジュール100は、例えば、通信装置300に用いられる。通信装置300は、例えば、スマートフォンのような携帯電話である。なお、通信装置300は、携帯電話であることに限られず、例えば、スマートウォッチのようなウェアラブル端末であってもよい。高周波モジュール100は、例えば、4G(第4世代移動通信)規格、5G(第5世代移動通信)規格等に対応可能なモジュールである。4G規格は、例えば、3GPP(登録商標、Third Generation Partnership Project) LTE(登録商標、Long Term Evolution)規格である。5G規格は、例えば、5G NR(New Radio)である。高周波モジュール100は、例えば、キャリアアグリケーション及びデュアルコネクティビティに対応可能なモジュールである。
【0130】
通信装置300は、複数の通信バンドの通信を行う。より詳細には、通信装置300は、複数の通信バンドの送信、及び、複数の通信バンドの受信信号の受信を行う。
【0131】
複数の通信バンドの送信信号及び受信信号の一部は、FDD(Frequency Division Duplex)の信号である。なお、複数の通信バンドの送信信号及び受信信号は、FDDの信号に限定されず、TDD(Time Division Duplex)の信号であってもよい。FDDは、無線通信における送信と受信とに異なる周波数帯域を割り当てて、送信及び受信を行う無線通信技術である。TDDは、無線通信における送信と受信とに同一の周波数帯域を割り当てて、送信と受信とを時間ごとに切り替えて行う無線通信技術である。
【0132】
図15に示すように、高周波モジュール100は、第1パワーアンプ11と、第2パワーアンプ12と、第1スイッチ51と、第2スイッチ52と、複数(図示例では5つ)のフィルタ60~64と、を備える。また、高周波モジュール100は、第1出力整合回路31と、第2出力整合回路32と、複数(図示例では4つ)の整合回路71~74と、を更に備える。また、高周波モジュール100は、第1ローノイズアンプ21と、第2ローノイズアンプ22と、第1入力整合回路41と、第2入力整合回路42と、を更に備える。また、高周波モジュール100は、第3スイッチ53と、第4スイッチ54と、第5スイッチ55と、を更に備える。また、高周波モジュール100は、方向性結合器8bを更に備える。また、高周波モジュール100は、複数の外部接続端子9を更に備える。
【0133】
なお、例えばフィルタ61は、送信フィルタ611と受信フィルタ612とを有するデュプレクサであり、SAW(Surface Acoustic Wave)やBAW(Bulk Acoustic Wave)などの弾性波フィルタを用いても構わない。また、フィルタ60は、複数のフィルタ601,602を有するダイプレクサである。複数のフィルタ601,602の各々は、例えば、L(インダクタ)C(コンデンサ)フィルタである。さらに、高周波モジュール100は、アンテナ端子91と、2つの信号入力端子92,93と、2つの信号出力端子94,95と、カップリング端子96と、複数のグランド端子を含む外部接続端子9を備える。
【0134】
カップリング端子96は、方向性結合器8bからの信号(検波信号)を外部装置(例えば、検波器)に出力するための端子である。カップリング端子96は、方向性結合器8bの第3接続端子873(
図10参照)に接続されている。
【0135】
複数のグランド端子は、通信装置300が備える外部基板(図示せず)のグランド電極と電気的に接続されてグランド電位が与えられる端子である。高周波モジュール100内において、複数のグランド端子は、実装基板10のグランド層(図示せず)に接続されている。グランド層は、高周波モジュール100の回路グランドである。
【0136】
方向性結合器8bは、上述の実施形態2にて説明されているものと同一である。方向性結合器8bは、上述の通り、第1接続端子871、第2接続端子872及び第3接続端子873を有する。第1接続端子871は、アンテナ端子91に接続されている。第2接続端子872は、フィルタ60の入出力部に接続されている。第3接続端子873は、カップリング端子96に接続されている。実施形態2では、方向性結合器8bは、アンテナ端子91とアンテナスイッチ55とを接続する信号経路の一部区間に設けられており、上記一部区間を伝送する高周波信号を検波する。
【0137】
(1.2)通信装置の構成
次に、実施形態4に係る通信装置300の構成について、
図15を参照して説明する。
【0138】
図15に示すように、通信装置300は、高周波モジュール100と、アンテナ310と、信号処理回路301と、を備える。また、通信装置300は、高周波モジュール100が実装される回路基板を更に備える。回路基板は、例えば、プリント配線板である。回路基板は、グランド電位が与えられるグランド電極を有している。
【0139】
信号処理回路301は、高周波モジュール100に接続されており、高周波信号を信号処理する。信号処理回路301は、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)であるRF信号処理回路302と、BBIC(Baseband Integrated Circuit)であるベースバンド信号処理回路303と、を含む。なお、RF信号処理回路302は、高周波モジュール100が有する第1~第5スイッチ51~55、第1及び第2パワーアンプ11,12及び第1及び第2ローノイズアンプ21,22を制御する制御部としての機能も有する。
【0140】
(2)高周波モジュールの構造
次に、高周波モジュール100の構造について、
図16~
図17を参照して説明する。
図16~
図17に示すように、高周波モジュール100は、実装基板10と、複数の電子部品と、複数の外部接続端子9と、を備える。また、高周波モジュール100は、第1樹脂層16と、金属電極層17と、を更に備える。さらに、高周波モジュール100は、携帯電話及び通信機器等の通信装置300のマザー基板に電気的に接続可能である。
【0141】
(2.1)実装基板
図16~
図17に示すように、実装基板10は、第1主面101及び第2主面102を有する。第1主面101及び第2主面102は、実装基板10の厚さ方向D1において互いに対向する。第2主面102は、高周波モジュール100が外部基板に設けられたときに、外部基板における実装基板10側の主面と対向する。実装基板10は、第1主面101及び第2主面102に複数の電子部品が実装された両面実装基板である。
【0142】
実装基板10は、複数の誘電体層が積層された多層基板である。実装基板10は、複数の導電層と、複数のビア導体(貫通電極を含む)と、を有する。複数の誘電体層は、第1層10aと、第2層10bと、第3層10cと、第4層10dと、第5層10eと、を含む。複数の導電層は、グランド電位のグランド層を含む。複数のビア導体は、第1主面101及び第2主面102のそれぞれに配置されている素子と実装基板10の導電層との電気的接続に用いられる。また、複数のビア導体は、第1主面101に配置されている素子と第2主面102に配置されている素子との電気的接続、及び、実装基板10の導電層と外部接続端子9との電気的接続に用いられる。
【0143】
第1層10aの一面(裏面)には、複数(図示例では9つ)の外部接続端子9が配置されている。第2層10bの一面(表面)には、第1副線路82aを構成する導体パターン部が形成されている。第3層10cの一面(表面)には、主線路81を構成する導体パターン部が形成されている。第4層10dの一面(表面)には、第2副線路82bを構成する導体パターン部が形成されている。第5層10eには、複数(図示例では4つ)の端子103~106が形成されている。
【0144】
端子103は、第1副線路82aの第1端821aに対応し、ビア導体(図示せず)を介して第1副線路82aの第1端821aに接続されている。端子104は、第1副線路82aの第2端822aに対応し、ビア導体(図示せず)を介して第1副線路82aの第2端822aに接続されている。端子105は、第2副線路82bの第2端822bに対応し、ビア導体(図示せず)を介して第2副線路82bの第2端822bに接続されている。端子106は、第2副線路82bの第1端821bに対応し、ビア導体(図示せず)を介して第2副線路82bの第1端821bに接続されている。
【0145】
実装基板10では、下側から、第1層10a、第2層10b、第3層10c、第4層10d、第5層10eの順に積層されている。これにより、主線路81、第1副線路82a及び第2副線路82bは、実装基板(多層基板)10の内部に設けられる。また、実装基板10の第1主面101(第5層10eの表面)には、ICチップ13が配置されている。ICチップ13は、少なくとも、第1終端回路84及び終端スイッチ89を含むICチップ(IC部品)である。上述のように、実装基板10の内部に主線路81、第1副線路82a及び第2副線路82bを設け、実装基板10の第1主面101にICチップ13を配置することにより、主線路81と第1終端回路84との電磁界結合を抑止することができる。
【0146】
また、ICチップ13が第1終端回路84及び終端スイッチ89を含むことにより、第1終端回路84と終端スイッチ89とが近接するため、第1終端回路84のインピーダンスを高精度に調整することができる。なお、ICチップ13は、第5スイッチ(アンテナスイッチ)55と、第1切替スイッチ85aと、第2切替スイッチ85bと、第3切替スイッチ86aと、第4切替スイッチ86bと、第5切替スイッチ85cと、第6切替スイッチ85dと、を更に含む。つまり、第5スイッチ55は、第1切替スイッチ85a、第2切替スイッチ85b、第3切替スイッチ86a、第4切替スイッチ86b、第5切替スイッチ85c、及び、第6切替スイッチ85dと一体である。
【0147】
(2.2)電子部品
複数の電子部品は、第1群の電子部品と、第2群の電子部品とを含む。第1群の電子部品は、実装基板10の第1主面101に配置されている。第1群の電子部品は、第1パワーアンプ11と、第2パワーアンプ12と、複数のフィルタ60~64と、第1出力整合回路31と、第2出力整合回路32と、第1入力整合回路41と、第2入力整合回路42と、ICチップ13と、を含む。第2群の電子部品は、実装基板10の第2主面102に配置されている。第2群の電子部品は第1ローノイズアンプ21と、第2ローノイズアンプ22と、を含む。
【0148】
なお、第1スイッチ51、第2スイッチ52、第3スイッチ53、第4スイッチ54、整合回路71~74、及び第2終端回路83については、
図16及び
図17のいずれにも図示されていないが、実装基板10の第1主面101及び第2主面102のいずれに配置されていてもよい。
【0149】
(2.3)外部接続端子
複数の外部接続端子9は、実装基板10と外部基板(図示せず)とを電気的に接続するための端子である。複数の外部接続端子9は、実装基板10の第2主面102に配置されている。
【0150】
(2.4)樹脂層
第1樹脂層16は、実装基板10の第1主面101に配置されている。第1樹脂層16は、実装基板10の第1主面101に配置されている第1群の電子部品を覆っている。第1樹脂層16は、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を含む。第1樹脂層16は、樹脂の他にフィラーを含んでいてもよい。
【0151】
(2.5)金属電極層
金属電極層17は、導電性を有する。金属電極層17は、高周波モジュール100の内外の電磁シールドを目的として設けられている。金属電極層17は、複数の金属層を積層した多層構造を有しているが、多層構造であることに限らず、1つの金属層であってもよい。1つの金属層は、1又は複数種の金属を含む。金属電極層17は、第1樹脂層16における実装基板10側とは反対側の主面と、第1樹脂層16の外周面と、実装基板10の外周面と、第2樹脂層の外周面と、を覆っている。金属電極層17は、実装基板10の有するグランド層(図示せず)の外周面の少なくとも一部と接触している。これにより、金属電極層17の電位をグランド層の電位と同じにすることができる。
【0152】
(3)高周波モジュールのレイアウト
次に、高周波モジュール100のレイアウトについて説明する。
【0153】
図17に示すように、高周波モジュール100では、実装基板10の厚さ方向D1(
図16参照)からの平面視において、主線路81、第1副線路82a及び第2副線路82bとICチップ13とが重なっている。これにより、ICチップ13と方向性結合器8bとの接続距離を短くすることが可能となり、その結果、不要なインダクタの発生を抑制することができる。なお、ICチップ13は、実装基板10の厚さ方向D1からの平面視において、主線路81、第1副線路82a及び第2副線路82bのいずれか1つと重なっていてもよいし、いずれか2つと重なっていてもよい。すなわち、ICチップ13は、実装基板10の厚さ方向D1からの平面視において、主線路81、第1副線路82a及び第2副線路82bの少なくとも1つと重なっていればよい。
【0154】
(4)効果
実施形態4に係る高周波モジュール100及び通信装置300は、上述したように、方向性結合器8bを備えているので、方向性結合器8bの主線路81を伝送する信号の挿入損失及び位相について、検波を行う第1モード及び第2モードと検波を行わない第3モードとの間で、及び、検波を行う第4モード及び第5モードと検波を行わない第6モードとの間で、それぞれ、差を抑制することができる。
【0155】
また、実施形態4に係る高周波モジュール100では、上述したように、第5スイッチ(アンテナスイッチ)55は、第1切替スイッチ85a、第2切替スイッチ85b、第3切替スイッチ86a、第4切替スイッチ86b、第5切替スイッチ85c、及び、第6切替スイッチ85dと共にICチップ13に含まれており、第1切替スイッチ85a、第2切替スイッチ85b、第3切替スイッチ86a、第4切替スイッチ86b、第5切替スイッチ85c、および、第6切替スイッチ85dと一体である。これにより、第5スイッチ55と第1切替スイッチ85a、第2切替スイッチ85b、第3切替スイッチ86a、第4切替スイッチ86b、第5切替スイッチ85c、及び、第6切替スイッチ85dとが別々のICチップに含まれる場合に比べて、高周波モジュール100の小型化を図ることができる。また、実装基板10の厚さ方向D1からの平面視において、主線路81、第1副線路82a及び第2副線路82bとICチップ13とが重なっている。これにより、ICチップ13と方向性結合器8bとの接続距離を短くすることが可能となり、その結果、不要なインダクタの発生を抑制することができる。
【0156】
(その他の変形例)
上述の実施形態1~4等は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態1~4等は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能であり、互いに異なる実施形態の互いに異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0157】
実施形態4に係る通信装置300及び高周波モジュール100は、方向性結合器8bの代わりに、方向性結合器8,8cのいずれかを備えてもよい。
【0158】
また、実施形態1に係る方向性結合器8では、副線路82の個数が1つであり、実施形態2~4に係る方向性結合器8b,8cでは、副線路82の個数が2つであるが、副線路82の個数は1つ及び2つに限らず、例えば、3つ以上であってもよい。
【0159】
また、実施形態1~4に係る方向性結合器8,8b,8cは、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する高周波信号と、主線路81を第2端812から第1端811へ伝送する高周波信号と、の各々を検波できる双方向性結合器であるが、主線路81を第1端811から第2端812へ伝送する高周波信号のみを検波可能な方向性結合器であってもよい。
【0160】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0161】
第1の態様に係る方向性結合器(8;8b;8c)は、主線路(81)と、副線路(82;82a)と、出力端子(873)と、第1終端回路(84)と、終端スイッチ(89)と、を備える。副線路(82;82a)は、第1端(821;821a)と第2端(822;822a)とを備える。出力端子(873)は、第1端(821;821a)及び第2端(822;822a)のうちの一方の端に接続される。第1終端回路(84)は、上記一方の端と出力端子(873)とを接続する第1出力経路(88)をグランドへ接続する。終端スイッチ(89)は、第1出力経路(88)と第1終端回路(84)との接続及び非接続を切り替える。
【0162】
この構成によれば、非検波時は、終端スイッチ(89)によって第1出力経路(88)と第1終端回路(84)とを接続することで、出力端子(873)を第1終端回路(84)によって終端することができる。すなわち、副線路(82)の一端(すなわち出力端子(873)と接続された一端)を第1終端回路(84)によって終端することができる。これにより、検波時と非検波時とで、主線路(81)を伝送する信号に対する副線路(82;82a)のインピーダンスの変化を低減することができる。したがって、検波時と非検波時とで、主線路(81)の挿入損失の変化及び主線路(81)を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0163】
第2の態様に係る方向性結合器(8)では、第1の態様において、第1終端回路(84;84a;84b;84c;84d)は、終端スイッチ(89)に直列に接続されている抵抗(R1;8431;8434)を含む。
【0164】
この構成によれば、第1終端回路(84;84b;84c;84d)の終端抵抗を所望の値に設定し易い。これにより、第1終端回路(84;84b;84c;84d)を、一般的によく使用される50Ω終端に容易に形成できる。
【0165】
第3の態様に係る方向性結合器(8)では、第2の態様において、第1終端回路(84a;84b;84c;84d)は、インダクタ(8433,8436)及びキャパシタ(8432,8435)の少なくとも一方を更に含む。
【0166】
この構成によれば、第1終端回路(84a~84d)に周波数特性を持たせることができる。これにより、一定の周波数範囲内で主線路(81)を伝送する信号の特性を改善できる。
【0167】
第4の態様に係る方向性結合器(8)では、第3の態様において、第1終端回路(84c;84d)は、抵抗(8431,8434)、インダクタ(8433,8436)及びキャパシタ(8432,8435)を含む。抵抗(8431,8434)、インダクタ(8433,8436)及びキャパシタ(8432,8435)は、互いに並列に接続されている。
【0168】
この構成によれば、第1終端回路(84c;84d)に周波数特性を持たせることができる。
【0169】
第5の態様に係る方向性結合器(8)では、第3の態様において、第1終端回路(84b)は、抵抗(8431)、インダクタ(8433)及びキャパシタ(8432)を含む。抵抗(8431)及びキャパシタ(8432)は、互いに並列に接続されている。インダクタ(8433)は、抵抗(8431)及びキャパシタ(8432)と直列に接続されている。
【0170】
この構成によれば、第1終端回路(84)に周波数特性を持たせることができる。
【0171】
第6の態様に係る方向性結合器(8,8b,8c)は、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、第2終端回路(83)と、第1切替スイッチ(85a)と、第2切替スイッチ(85b)と、第3切替スイッチ(86a)と、第4切替スイッチ(86b)と、を備える。第2終端回路(83)は、第1端(821;821a)及び第2端(822;822a)のうちの他方の端をグランドへ接続する。第1切替スイッチ(85a)は、第1端(821;821a)と第2終端回路(83)との接続及び非接続を切り替える。第2切替スイッチ(85b)は、第1端(821;821a)と出力端子(873)との接続及び非接続を切り替える。第3切替スイッチ(86a)は、第2端(822;822a)と出力端子(873)との接続及び非接続を切り替える。第4切替スイッチ(86b)は、第2端(822;822a)と第2終端回路(83)との接続及び非接続を切り替える。
【0172】
この構成によれば、主線路(81)を伝送する順方向信号(S1)及び逆方向信号(S3)に対して、検波時非検波時とで、主線路(81)の挿入損失の変化及び主線路(81)を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0173】
第7の態様に係る方向性結合器(8;8b;8c)は、第6の態様において、非検波時において、第1切替スイッチ(85a)及び第2切替スイッチ(85b)は、第1端(821;821a)を、出力端子(873)及び第2終端回路(83)のうちの一方と接続する。第3切替スイッチ(86a)及び第4切替スイッチ(86b)は、第2端(822;822a)を、出力端子(873)及び第2終端回路(83)のうちの他方と接続する。終端スイッチ(89)は、第1終端回路(84)と第1出力経路(88)とを接続する。
【0174】
この構成によれば、第6の態様の方向性結合器(8;8b;8c)の回路構成において、非検波時において、副線路(82;82a)の一端(すなわち出力端子(873)と接続された一端)を第1終端回路(84)によって終端し、かつ副線路(82;82a)の他端を第2終端回路(83)によって終端することができる。
【0175】
第8の態様に係る方向性結合器(8b;8c)は、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、副線路(82)である第1副線路(82a)と直列に接続されている第2副線路(82b)を更に備える。第1終端回路(84)は、第2出力経路(88b)をグランドに接続する。第2出力経路(88b)は、第1副線路(82a)及び第2副線路(82b)の直列回路(82c;82d)の両端の一方と出力端子(873)とを接続する。終端スイッチ(89)は、第2出力経路(88b)と第1終端回路(84)との接続及び非接続を切り替える。
【0176】
この構成によれば、第1副線路(82a)を用いる検波の対象である周波数帯域に対して検波を行わない場合は、終端スイッチ(89)によって第1出力経路(88)と第1終端回路(84)とを接続することで、第1副線路(82a)の一端(すなわち出力端子(873)と接続された一端)を第1終端回路(84)によって終端することができる。また、第1副線路(82a)と第2副線路(82b)との直列回路(82c;82d)を用いる検波の対象である周波数帯域に対して検波を行わない場合も、終端スイッチ(89)によって第2出力経路(88b)と第1終端回路(84)とを接続することで、直列回路(82c;82d)の一端(すなわち出力端子(873)と接続された一端)を終端回路(84)によって終端することができる。したがって、使用する副線路(第1副線路(82a)及び直列回路(82c;82d))の数が増えても、使用する副線路の一端(すなわち出力端子(873)と接続された一端)を終端する第1終端回路(84)の数が増えることを防止することができる。
【0177】
第9の態様に係る方向性結合器(8b;8c)は、第8の態様において、第1副線路(82a)の一端(821a)と第2副線路(82b)の一端(822b)との間に接続されている移相回路(90)を更に備える。
【0178】
この構成によれば、第1副線路(82a)と第2副線路(82b)との直列回路(82c;82d)を検波に用いる場合に、移相回路(90)によって、第1副線路(82a)を伝送する信号の位相と第2副線路(82b)を伝送する信号の位相とを調整することができる。これにより、直列回路(82c;82d)を検波に用いる場合に、主線路(81)から直列回路(82c;82d)に非検波対象信号が漏洩することを抑制することができる。
【0179】
第10の態様に係る方向性結合器(8;8b;8c)は、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、複数の誘電体層(10a~10e)を有する多層基板(10)を更に備える。主線路(81)は、多層基板(10)の内部に設けられている。第1終端回路(84)、第1端(821;821a)及び第2端(822;822a)のうちの他方の端をグランドへ接続する第2終端回路(83)、及び終端スイッチ(89)を含むICチップ(13)が多層基板(10)に配置されている。
【0180】
この構成によれば、第1終端回路(84)及び第2終端回路(83)と主線路(81)との電磁界結合を抑止することができる。また、第1終端回路(84)と終端スイッチ(89)とが近接しているため、第1終端回路(84)と終端スイッチ(89)との間の経路のインピーダンスの影響を小さくでき、第1終端回路(84)のインピーダンスを高精度に調整することができる。
【0181】
第11の態様に係る方向性結合器(8;8b;8c)では、第10の態様において、ICチップ(13)は、多層基板(10)の厚さ方向(D1)からの平面視において、主線路(81)と重なっている。
【0182】
この構成によれば、主線路(81)とICチップ(13)との接続距離を短くすることができる。したがって、不要なインダクタの発生を抑制することができる。
【0183】
第12の態様に係る高周波モジュール(100)は、第1~第11の態様のいずれか1つの方向性結合器(8;8b;8c)と、アンテナ端子(91)と、複数のフィルタ(複数の送信フィルタ(611,621,631,641)及び複数の受信フィルタ(6121,622,632,642))と、アンテナスイッチ(55)と、を備える。アンテナスイッチ(55)は、アンテナ端子(91)に至る信号経路と上記複数のフィルタとの接続及び非接続を切り替える。方向性結合器(8;8b;8c)の主線路(81)は、信号経路の一部区間を構成している。
【0184】
この構成によれば、方向性結合器(8;8b;8c)、アンテナ端子(91)、複数のフィルタ(複数の送信フィルタ(611,621,631,641)及び複数の受信フィルタ(612,622,632,642))及びアンテナスイッチ(55)を備える高周波モジュール(100)において、検波時(すなわち検波を行う場合)と非検波時(すなわち検波を行わない場合)とで、主線路(81)の挿入損失の変化及び主線路(81)を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【0185】
第13の態様に係る高周波モジュール(100)では、第12の態様において、アンテナスイッチ(55)は、方向性結合器(8;8b;8c)の終端スイッチ(89)と一体である。
【0186】
この構成によれば、高周波モジュール(100)を小型化することができる。
【0187】
第14の態様に係る通信装置(300)は、第12又は第13の態様の高周波モジュール(100)と、信号処理回路(301)と、を備える。信号処理回路(301)は、高周波モジュール(100)に接続されており、高周波信号を信号処理する。
【0188】
この構成によれば、高周波モジュール(100)及び信号処理回路(301)を備える通信装置(300)において、検波時(すなわち検波を行う場合)と非検波時(すなわち検波を行わない場合)とで、主線路(81)の挿入損失の変化及び主線路(81)を伝送する信号の位相変化を低減することができる。
【符号の説明】
【0189】
8,8b,8c 方向性結合器
9 外部接続端子
10 実装基板(多層基板)
10a 第1層(誘電体層)
10b 第2層(誘電体層)
10c 第3層(誘電体層)
10d 第4層(誘電体層)
10e 第5層(誘電体層)
11 第1パワーアンプ
12 第2パワーアンプ
13 ICチップ
16 第1樹脂層
17 金属電極層
21 第1ローノイズアンプ
22 第2ローノイズアンプ
31 第1出力整合回路
32 第2出力整合回路
41 第1入力整合回路
42 第2入力整合回路
51 第1スイッチ
52 第2スイッチ
53 第3スイッチ
54 第4スイッチ
55 第5スイッチ(アンテナスイッチ)
60~64,601,602 フィルタ
71~74 整合回路
81 主線路
82,82a 第1副線路(副線路)
82b 第2副線路
82c,82d 副線路(直列回路)
83 第2終端回路
84,84a~84d 第1終端回路(終端回路)
85a 第1切替スイッチ
85b 第2切替スイッチ
85c 第5切替スイッチ
85d 第6切替スイッチ
86a 第3切替スイッチ
86b 第4切替スイッチ
87 接続端子
88 出力経路(第1出力経路)
88b 出力経路(第2出力経路)
89 終端スイッチ
90,90a,90b 移相回路
91 アンテナ端子
92,93 信号入力端子
94,95 信号出力端子
96 カップリング端子
97 分離スイッチ
100 高周波モジュール
101 第1主面
102 第2主面
103~106 端子
300 通信装置
301 信号処理回路
302 RF信号処理回路
303 ベースバンド信号処理回路
310 アンテナ
611,621,631,641 送信フィルタ(フィルタ)
612,622,632,642 受信フィルタ(フィルタ)
811,821,821a,821b,901,8411 第1端
812,822,822a,822b,902,8412 第2端
831,904~906,8432,8435 キャパシタ
832,8431,8434,R1 抵抗
833~835 スイッチ
851~858,861~864,891,892,971,972 端子
871 第1接続端子
872 第2接続端子
873 第3接続端子(出力端子)
881 第1経路
882 第2経路
883 第3経路
884 第4経路
885 第5経路
886 第6経路
903,907,8433,8436 インダクタ
908,909,8435 可変キャパシタ
8434 可変抵抗
8436 可変インダクタ
D1 厚さ方向
N1,N2 分岐点
N3 接続点
S1 順方向信号
S2,S4 検波信号
S3 逆方向信号