(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058524
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】人型ロボット制御システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182843
(22)【出願日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022165039
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022167928
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 正義
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS27
3C707CS08
3C707HS12
3C707HS27
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT04
3C707LW11
3C707WA13
3C707WA16
3C707WK06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物体の置かれている状況に適した物体に対する作業をさせることを可能とする人型ロボット制御システムを提供する。
【解決手段】人型ロボットは、少なくとも1つの腕部を有する上半身部と、床に置かれる脚部と、脚部に対して上半身部を回動可能に連結する連結部と、腕部と人型ロボットが作業しようとする物体との距離および角度を少なくとも表す情報を取得する情報取得部と、情報に基づいて連結部の回動を制御する制御部と、を備え、物体が置かれている周辺情報を取得する周辺情報取得部と、周辺情報に基づいて、人型ロボットの脚部のタイプを選択する選択部と、選択された脚部のタイプの人型ロボットに対して、物体に対する作業を指示する指示部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人型ロボットに対して指示を与える人型ロボット制御システムであって、
前記人型ロボットは、
少なくとも1つの腕部を有する上半身部と、
床に置かれる脚部と、
前記脚部に対して前記上半身部を回動可能に連結する連結部と、
前記腕部と前記人型ロボットが作業しようとする物体との距離および角度を少なくとも表す情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて前記連結部の回動を制御する制御部と、を備え、
前記物体が置かれている周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記周辺情報に基づいて、前記人型ロボットの前記脚部のタイプを選択する選択部と、
選択された前記脚部のタイプの前記人型ロボットに対して、前記物体に対する作業を指示する指示部と、
を備える人型ロボット制御システム。
【請求項2】
前記脚部のタイプには、
前記人型ロボットが移動可能な車輪部を備えるものと、
前記人型ロボットが歩行可能な歩行部を備えるものと、を含む
請求項1に記載の人型ロボット制御システム。
【請求項3】
前記連結部は、さらに前記脚部と前記上半身部との距離を変更可能に前記脚部と前記上半身部とを連結する請求項1に記載の人型ロボット制御システム。
【請求項4】
前記連結部は、回動動作として前記脚部に対して前記上半身部を傾動可能に構成されている請求項1に記載の人型ロボット制御システム。
【請求項5】
前記連結部は、回動動作として前記脚部に対して前記上半身部を前記床の水平方向に回転可能に構成されている請求項1に記載の人型ロボット制御システム。
【請求項6】
前記脚部は、前記人型ロボットのバランスを維持するバランス機能を有する請求項1に記載の人型ロボット制御システム。
【請求項7】
コンピュータを請求項1~6の何れか1項に記載の人型ロボット制御システムの制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人型ロボット制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインにおいては作業を自動で行うための人型ロボットが使用されている。特許文献1には、人型ロボットの姿勢制御について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物体の置かれている状況に適した人型ロボットに、物体に対する作業をさせることが好ましい。
【0005】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、物体の置かれている状況に適した人型ロボットに、物体に対する作業をさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による人型ロボット制御システムは、
人型ロボットに対して指示を与える人型ロボット制御システムであって、
前記人型ロボットは、
少なくとも1つの腕部を有する上半身部と、
床に置かれる脚部と、
前記脚部に対して前記上半身部を回動可能に連結する連結部と、
前記腕部と前記人型ロボットが作業しようとする物体との距離および角度を少なくとも表す情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて前記連結部の回動を制御する制御部と、を備え、
前記物体が置かれている周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記周辺情報に基づいて、前記人型ロボットの前記脚部のタイプを選択する選択部と、
選択された前記脚部のタイプの前記人型ロボットに対して、前記物体に対する作業を指示する指示部と、
を備える。
【0007】
なお、本開示による人型ロボット制御システムにおいては、脚部のタイプには、人型ロボットが移動可能な車輪部を備えるものと、人型ロボットが歩行可能な歩行部を備えるものと、を含んでもよい。
【0008】
また、本開示による人型ロボット制御システムにおいては、連結部は、さらに脚部と上半身部との距離を変更可能に脚部と上半身部とを連結してもよい。
【0009】
また、本開示による人型ロボット制御システムにおいては、連結部は、回動動作として脚部に対して上半身部を傾動可能に構成されていてもよい。
【0010】
また、本開示による人型ロボット制御システムにおいては、連結部は、回動動作として脚部に対して上半身部を床の水平方向に回転可能に構成されていてもよい。
【0011】
また、本開示による人型ロボット制御システムにおいては、脚部は、人型ロボットのバランスを維持するバランス機能を有するものであってもよい。
【0012】
本開示によるプログラムは、コンピュータを本開示による人型ロボット制御システムの制御部として機能させる。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る人型ロボットの正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る人型ロボットの側面図である。
【
図3】人型ロボットの機能構成の一例を概略的に示す図である。
【
図4】情報処理装置によって実行される処理ルーチンの一例を概略的に示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る人型ロボット制御システムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る人型ロボット制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係る人型ロボット制御システムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施形態に係る人型ロボットの側面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る人型ロボットの平面図である。
【
図10】情報処理装置として機能するコンピュータハードウェアの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係る人型ロボットの正面図である。第1の実施形態では、脚部のタイプが異なる複数の人型ロボットに対して指示を与える人型ロボット制御システムについて説明する。
図1及び
図5に示すように,本実施形態に係る人型ロボット1,1Aは、上半身部2、脚部3,3A、および上半身部2を脚部3に対して回動可能に連結する連結部4を備え、例えば工場の生産ライン等に配置されて、ライン上あるいは床上の物体等に対して作業を行うものである。人型ロボット1と人型ロボット1Aとは、脚部のタイプが異なる以外は同様の構成となっている。なお、脚部のタイプは、第1の実施形態の態様に限定されるものではなく、他のタイプの脚部としてもよい。
【0017】
(人型ロボット1)
図1に示すように、上半身部2は2本の腕部5,6を有する。腕部5,6は上半身部2の左右に回動自在に取り付けられている。また、腕部5,6の先端には物体を把持するための把持部(不図示)が取り付けられている。なお、腕部は2本に限定されるものではなく、1本あるいは3本以上であってもよい。
【0018】
人型ロボット1の脚部3は2つの車輪7,8がその下部に取り付けられており、人型ロボット1が配置される床の上を移動可能とされている。
【0019】
連結部4は、上半身部2と脚部3を回動可能に連結する。具体的に連結部4は、モータ又はシリンダによる傾動機構を含む。モータ及びシリンダは電動、油圧式、空気圧式の何れの方式を採用することができる。このため、上半身部2は、脚部3に対して前傾および後傾が可能となっている。
【0020】
ここで、モータによる傾動機構の場合、連結部4及び上半身部2の一方に固定されたモータが駆動することで、連結部4及び上半身部2の他方が傾動する。これにより、脚部3に対して上半身部2が相対的に傾動する。
【0021】
また、シリンダによる傾動機構の場合、連結部4及び上半身部2の一方にシリンダの一端が固定される固定点があり、連結部4及び上半身部2の他方にシリンダの他端が固定される作動点がある。そして、シリンダを作動させて固定点と作動点との距離を変えることで、脚部3に対して上半身部2が相対的に傾動する。
【0022】
このため、本実施形態に係る人型ロボット1は、
図2に示すように、脚部3に対して上半身部2を前傾させて、床Fに置かれていたり、作業中に床Fに落ちたりした物体100を拾うことが可能である。
【0023】
なお、脚部3は、上半身部2が脚部3に対して前傾または後傾したり、人型ロボット1が移動したりした際に、人型ロボット1が転倒しないようにするためのバランス機能を有する。
【0024】
また、連結部4は、
図1に示すように上半身部2と脚部3との距離を変更可能な機能を有する。具体的に連結部4は、モータ又はシリンダによる伸縮機構を含む。モータ及びシリンダは電動、油圧式、空気圧式の何れの方式を採用することができる。このため、生産ラインにおける作業台の高さに合うように、脚部3に対する上半身部2の上下方向の位置を矢印Aに示すように調整することができる。
【0025】
ここで、モータによる伸縮機構の場合、回転を直線運動に変換する機構を備えている。そして、連結部4及び上半身部2の一方に固定されたモータが駆動することで、連結部4及び上半身部2の他方が伸縮する。これにより、脚部3に対して上半身部2が相対的に伸縮する。
【0026】
また、シリンダによる伸縮機構の場合、連結部4及び上半身部2の一方に固定されたシリンダが駆動することで、連結部4及び上半身部2の他方に固定されたシリンダの他端が伸縮する。これにより、脚部3に対して上半身部2が相対的に伸縮する。なお、連結部4において、複数本のシリンダを設けて、傾動と伸縮の両方の制御を行ってもよい。
【0027】
(人型ロボット1A)
図5に示すように、人型ロボット1Aの脚部3Aは、2足歩行が可能な歩行部7A,8Aを備えている。人型ロボット1Aは、歩行部7A,8Aによる2足歩行により、段差を乗り越えることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る人型ロボット1,1Aは、人型ロボット1,1A内に実装された制御システム10によりその駆動が制御される。
【0029】
図3は、本実施形態に係る人型ロボットの制御システムの一例の概略図である。制御システム10は、人型ロボットに搭載されるセンサ12と、情報処理装置14とを備えている。
【0030】
センサ12は、人型ロボット1の周辺にある、人型ロボット1が作業する物体100と腕部5,6との距離および角度を少なくとも表す情報を逐次取得する。センサ12としては、最高性能のカメラ、ソリッドステートLiDAR、マルチカラーレーザ同軸変位計、又はその他様々なセンサ群が採用され得る。また他には、センサ12としては、振動計、サーモカメラ、硬度計、レーダー、LiDAR、高画素・望遠・超広角・360度・高性能カメラ、ビジョン認識、微細音、超音波、振動、赤外線、紫外線、電磁波、温度、湿度、スポットAI天気予報、高精度マルチチャネルGPS、低高度衛星情報、又はロングテールインシデントAI data等が挙げられる。
【0031】
なお、センサ12は、上記の情報のほかに、画像、距離、振動、熱、匂い、色、音、超音波、紫外線、又は赤外線等を検知する。他にセンサ12が検知する情報としては、人型ロボット1の重心移動、人型ロボット1が設置される床Fの材質の検知、外気温度の検知、外気湿度の検知、床Fの上下横斜め傾き角度の検知、水分量の検知等が挙げられる。
【0032】
センサ12は、これらの検知を例えばナノ秒毎に実施する。
【0033】
情報処理装置14は、情報取得部140と、制御部142と、情報蓄積部144とを備えている。
【0034】
情報取得部140は、センサ12によって検知された物体100の情報を取得する。
【0035】
制御部142は、情報取得部140が取得した情報とAI(Artificial intelligence)とを用いて、連結部4の回動動作、上下方向の移動動作および腕部5,6の動作等を制御する。
【0036】
例えば、制御部142は、以下の各処理を実行する。
(1)床Fにある物体100を拾い上げることが可能なように連結部4を駆動して、上半身部2を前傾または後傾させる。
(2)物体100をつかむことが可能なように腕部5,6および把持部を駆動する。
(3)生産ラインの作業台の高さに合うように連結部4を駆動して、上半身部2を脚部3に対して上下に伸縮させる。
(4)人型ロボット1の転倒を防ぐために、バランスを取る。
(5)人型ロボット1がカート等を押し進めることができるように、車輪7,8の駆動を制御する。
【0037】
情報処理装置14は、例えば、床Fにある物体100を拾う場合、
図4に示されているフローチャートを繰り返し実行する。
【0038】
ステップS100において、情報取得部140は、センサ12によって検知された物体100の情報を取得する。
【0039】
ステップS102において、制御部142は、ステップS100で取得された物体100の情報とAIとを用いて、連結部4および腕部5,6を制御することにより、床Fにある物体100を拾い上げる。
【0040】
ステップS104において、制御部142は、拾った物体100を所定位置へ移動する。
【0041】
(人型ロボット制御システム20)
図6に示すように、人型ロボット制御システム20は、センサ12によって検知された情報が、中央制御部50に入力され、中央制御部50で処理された処理情報が、人型ロボット1,1Aに出力されるようになっている。
【0042】
センサ12は、例えば、カメラで構成され、物体100が置かれている周辺情報を画像として撮影する。センサ12が撮影した周辺情報は、中央制御部50に入力される。なお、中央制御部50に入力される周辺情報は、人型ロボット1,1Aに搭載されたセンサ12によるものに限定されず、例えば、工場内に設けられたカメラ等とすることもできる。
【0043】
中央制御部50は、例えば、外部装置(サーバ)や、一の人型ロボット(リーダ人型ロボット)に設けられ、周辺情報取得部52と、選択部54と、指示部56と、を備えている。
【0044】
周辺情報取得部52は、センサ12から入力された周辺情報を取得する。周辺情報取得部52は、物体100が置かれている周辺情報を取得する。
【0045】
選択部54は、周辺情報取得部52が取得した周辺情報に基づいて、人型ロボット1,1Aの脚部3,3Aのタイプを選択する。選択部54は、例えば、物体100が床Fに落ちた場合であって、床Fに段差がある場合は、段差を乗り越えることができる歩行部7A,8Aを備える人型ロボット1Aを選択する。選択部54は、例えば、物体100が床Fに落ちた場合であって、床Fが平坦な場合は、移動速度の速い車輪7,8を備える人型ロボット1を選択する。
【0046】
指示部56は、選択された脚部3,3Aのタイプの人型ロボット1,1Aに対して、物体100に対する作業を指示する。
【0047】
(中央制御部50による処理)
図7に示すように、中央制御部50は、例えば、床Fにある物体100を拾う場合、
図7に示されているフローチャートを実行する。
【0048】
ステップS200において、周辺情報取得部52は、センサ12から入力された周辺情報を取得する。
【0049】
ステップS202において、選択部54は、周辺情報取得部52が取得した周辺情報に基づいて、人型ロボット1,1Aの脚部3,3Aのタイプを選択する。
【0050】
ステップS204において、指示部56は、選択された脚部3,3Aのタイプの人型ロボット1,1Aに対して、物体100に対する作業を指示する。
【0051】
本実施形態によれば、人型ロボット1は、上半身部2、脚部3および上半身部2と脚部3とを回動自在に連結する連結部4を備える。また、センサ12が取得した情報に基づいて連結部4の回動を制御するようにした。このため、人型ロボット1と物体100との距離や角度を判断することができ、これにより、床Fにある物体100を拾い上げるような動作を行うことができる。
【0052】
また、物体100が置かれている周辺情報に基づいて、選択された脚部3,3Aのタイプの人型ロボット1,1Aに対して、物体100に対する作業を指示することで、物体100が置かれている状況に適した脚部3,3Aのタイプを備える人型ロボット1,1Aが、物体100に対する作業を担当することになる。そのため、例えば、
図5に示すように、物体100が床Fに落ちた場合であって、床Fに段差がある場合は、段差を乗り越えることができる脚部3Aのタイプの人型ロボット1Aが、物体100を拾うことになる。その結果、物体100の置かれている状況に適した人型ロボット1Aに、物体100に対する作業をさせることができる。
【0053】
また、脚部3,3Aのタイプには、人型ロボット1が移動可能な車輪7,8を備えるものと、人型ロボット1Aが歩行可能な歩行部7A,8Aを備えるものと、を含む。これにより、例えば、
図5に示すように、物体100が床Fに落ちた場合であって、床Fに段差がある場合は、段差を乗り越えることができる歩行部7A,8Aを備える人型ロボット1Aが、物体100を拾うことになる。また、例えば、物体100が床Fに落ちた場合であって、床Fが平坦な場合は、移動速度の速い車輪7,8を備える人型ロボット1が、物体100を拾うことになる。その結果、物体100の置かれている状況に適した人型ロボット1,1Aに、物体100に対する作業をさせることができる。
【0054】
また、連結部4は上半身部2と脚部3との距離を変更可能であるため、生産ラインにおける作業台の高さに合うように、脚部3に対する上半身部2の上下方向の位置を調整することができる。
【0055】
また、脚部3は、上半身部2が脚部3に対して前傾または後継した際に、人型ロボット1が転倒しないようにするためのバランス機能を有する。このため、生産ラインにある物体100を押したり引いたりする作業を行った際の人型ロボット1の転倒を防止できる。したがって、転倒による人型ロボット1の故障、あるいは人型ロボット1の周囲にいる人物の怪我等を防止することができる。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の連結部4に対して、回転動作を加えたことを特徴とする。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付している。
【0057】
本実施形態の連結部4は、上半身部2と脚部3を回動可能に連結する。具体的に連結部4は、回動動作として脚部3に対して上半身部2が前傾および後傾が可能となっている(
図2参照)。また、連結部4は、上半身部2と脚部3との距離を変更可能な伸縮機能を有している(
図1参照)。
【0058】
さらに、本実施形態の連結部4は、回動動作として脚部3に対して上半身部2を床Fの面の水平方向に回転可能に構成されている。具体的に連結部4は、モータ又はシリンダによる回転機構を含む。モータ及びシリンダは電動、油圧式、空気圧式の何れの方式を採用することができる。
【0059】
ここで、モータによる回転機構の場合、連結部4の上部又は下部の一方に固定されたモータが駆動することで、連結部4の上部及び下部の他方側が回転する。これにより、脚部3に対して上半身部2が相対的に回転する。
【0060】
また、シリンダによる回転機構の場合、連結部4の上部及び下部の一方にシリンダの一端が固定される固定点があり、連結部4の上部及び下部の他方にシリンダの他端が固定される作動点がある。そして、シリンダを作動させて固定点と作動点との距離を変えることで、脚部3に対して上半身部2が相対的に回転する。
【0061】
なお、シリンダによる回転機構の場合、回転可能な角度に制約があるため、脚部3に対して上半身部2を何回転もさせる場合は、クランク機構を採用するか、モータによる回転機構を選択するとよい。
【0062】
連結部4が有する回転機構によれば、以下の動作が可能である。
図8に示すように、本実施形態の人型ロボット1は、作業台T1を向いている状態から、連結部4を駆動させて水平方向の回転動作を行うことで、作業台T1と人型ロボット1を挟んで反対側の作業台T2に向くことが可能である。
【0063】
なお、
図9に示すように、連結部4における水平方向の回動動作は、上半身部2を180度回転させるだけでなく、0~360度の範囲において回転が可能であり、かつ任意の位置で上半身部2を停止させることが可能である。
【0064】
本実施形態においても、人型ロボット1は制御システム10によりその駆動が制御される。そして、
図4に示すフローチャートに従った処理が実行される。
【0065】
例えば、本実施形態の制御部142は、以下の各処理を実行する。
(1)生産ラインの作業台T1の高さに合うように連結部4を駆動して、上半身部2を脚部3に対して上下に伸縮させる。
(2)物体100を操作することが可能なように腕部5,6および把持部を駆動する。この場合、必要に応じて連結部4を駆動して、上半身部2を前傾または後傾させる。また、必要に応じて車輪7,8を駆動して、脚部3の作業台T1に対する距離を調整する。
(3)人型ロボット1の転倒を防ぐために、バランスを取る。
(4)作業台T1にある物体100に対して組み立て、加工等の作業を行う。
(5)物体100を次の工程に移すべく、腕部5,6および把持部を駆動して物体100をつかみ上げる。
(6)連結部4を駆動して、上半身部2を水平方向に回転させる。
(7)腕部5,6および把持部を駆動して物体100を、次の工程が行われる作業台T2に下ろす。
【0066】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果に加えて、以下の作用効果を有している。
【0067】
本実施形態の連結部4は、傾動、伸縮動作に加えて、水平方向に回動可能に構成されている。そのため、人型ロボット1は連結部4の回転により物体100を回転経路上の場所に運んだり、回転経路上の複数の作業場において次々に作業を行ったりすることができる。
【0068】
なお、本実施形態の人型ロボット1は、上半身部2を前傾又は後傾させた状態で連結部4の回転動作を行ってもよい。すなわち、物体100を振り上げたり、振り下げたりする動作が可能である。
【0069】
本実施形態によれば上半身部2を水平方向に回転させた場合、各作業台の高さが異なる場合であっても、連結部4の伸縮動作により、把持部が作業に最適となる高さで作業を行うことができる。また、上半身部2を水平方向に回転させた場合、各作業台までの距離が遠い場合であっても、連結部4の傾動動作又は車輪7,8の駆動による移動に伴い、把持部が作業に最適となる位置で作業を行うことができる。
【0070】
以上のように、連結部4により上半身部2が傾動又は回転する場合、前述したバランス機能が作動して人型ロボット1が転倒しないような動作が行われる。例えば、バランス機能が上半身部2の傾き、回転角度を変えることでバランスを保つ。また例えば、バランス機能が車輪7,8を駆動させてその駆動トルクによってバランスを保つ。
【0071】
[補足]
図10は、情報処理装置14として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200を、本実施形態に係る装置の1又は複数の「部」として機能させ、又はコンピュータ1200に、本実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、および/又はコンピュータ1200に、本実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつか又は全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0072】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、およびグラフィックコントローラ1216を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、記憶装置1224、DVDドライブ、およびICカードドライブのような入出力ユニットを含み、それらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。DVDドライブは、DVD-ROMドライブおよびDVD-RAMドライブ等であってよい。記憶装置1224は、ハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブ等であってよい。コンピュータ1200はまた、ROM1230およびキーボードのような入出力ユニットを含み、それらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続されている。
【0073】
CPU1212は、ROM1230およびRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにする。
【0074】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。記憶装置1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVDドライブは、プログラム又はデータをDVD-ROM等から読み取り、記憶装置1224に提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/又はプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0075】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、および/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをUSBポート、パラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0076】
プログラムは、DVD-ROM又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもある記憶装置1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0077】
例えば、通信がコンピュータ1200および外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、記憶装置1224、DVD-ROM、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0078】
また、CPU1212は、記憶装置1224、DVDドライブ(DVD-ROM)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0079】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0080】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0081】
本実施形態におけるフローチャートおよびブロック図におけるブロックは、オペレーションが実行されるプロセスの段階又はオペレーションを実行する役割を持つ装置の「部」を表してよい。特定の段階および「部」が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、およびプログラマブルロジックアレイ(PLA)等のような、論理積、論理和、排他的論理和、否定論理積、否定論理和、および他の論理演算、フリップフロップ、レジスタ、並びにメモリエレメントを含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0082】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0083】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0084】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路が、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を生成するために当該コンピュータ可読命令を実行すべく、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路に提供されてよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0086】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0089】
1,1A 人型ロボット、2 上半身部、3,3A 脚部、4 連結部、5,6 腕部、7,8 車輪、7A,8A 歩行部、10 制御システム、12 センサ、14 情報処理装置、20 人型ロボット制御システム、50 中央制御部、52 周辺情報取得部、54 選択部、56 指示部、100 物体、1200 コンピュータ、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インタフェース、1224 記憶装置、1230 ROM、1240 入出力チップ