(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058527
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】サプライチェーンプラットフォームシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240418BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20240418BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185619
(22)【出願日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2022165351
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 豊
(72)【発明者】
【氏名】彭 飛
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA07
5L049AA07
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】異なるサプライチェーンに跨って企業間が繋がるプラットフォームを提供する。
【解決手段】実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムは、利用者登録処理を行い、複数の各参加企業の企業情報を登録する。参加企業には取引先管理グループが割り当てられ、参加企業別の取引先管理情報が生成される。参加企業に自社の取引先管理グループへの加入要請する招待機能と、加入要請に対する加入承認を受け付ける承認機能を提供する。招待元企業として招待情報を送信したことに対する招待先企業からの加入承認に基づいて取引先管理情報に招待先企業を繋がり企業として登録するとともに、招待先企業として招待情報を他の参加企業から受け取ったことに対する招待元企業への加入承認に基づいて、取引先管理情報に招待元企業を繋がり企業として登録し、繋がり企業に基づくサプライチェーンネットワークを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンに参加する企業の各端末と通信可能なサプライチェーンプラットフォームシステムであって、
前記端末を通じたサプライチェーンプラットフォームシステムの利用者登録処理を行い、複数の各参加企業の企業情報を登録するポータル管理部と、
参加企業毎に取引先管理グループを割り当て、参加企業別の取引先管理情報を生成する取引先管理部と、
前記企業情報に登録された参加企業を招待先企業として、招待元企業の取引先管理グループへの加入要請を含む招待情報を生成し、前記企業情報に基づく宛先に前記招待情報を送信する招待部と、
招待先企業の前記端末から前記招待情報に対する加入承認を受け付ける承認制御部と、を有し、
前記取引先管理部は、招待元企業として前記招待情報を送信したことに対する招待先企業からの加入承認に基づいて、前記取引先管理情報に招待先企業を繋がり企業として登録するとともに、招待先企業として前記招待情報を他の参加企業から受け取ったことに対する招待元企業への加入承認に基づいて、前記取引先管理情報に招待元企業を前記繋がり企業として登録し、前記繋がり企業に基づくサプライチェーンネットワークを生成することを特徴とするサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項2】
前記取引先管理部は、自社の前記取引先管理情報に登録された繋がり企業の取引先管理情報を参照し、前記繋がり企業の取引先管理情報に登録された繋がり企業を、2次繋がり企業として自社の前記取引先管理情報に登録し、自社を中心として前記招待情報に基づいた招待関係を有する前記繋がり企業と、自社とは独立して前記繋がり企業によって構築された前記招待情報に基づいた招待関係を有する2次繋がり企業と、を含む前記サプライチェーンネットワークを生成することを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項3】
前記2次繋がり企業として、他社の前記取引先管理情報に登録されることを許容するか否かを設定する自社公開設定処理を行う公開設定制御部をさらに有し、
前記公開設定制御部は、公開、匿名公開、非公開の選択肢を含む自社公開設定画面を前記端末に提供し、
前記取引先管理部は、招待元企業の前記取引先管理情報において登録された招待先企業と紐付けて自社公開設定情報を記憶し、
前記取引先管理部は、前記自社公開設定情報が非公開である招待先企業が前記2次繋がり企業として他社の取引先管理情報に登録されないように制御することを特徴とする請求項2に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項4】
招待元企業が招待先企業を前記2次繋がり企業として、他社の前記取引先管理情報に登録されることを許容するか否か設定する招待企業公開設定処理を行う公開設定制御部をさらに有し、
前記公開設定制御部は、公開、非公開の選択肢を含む招待企業公開設定画面を前記端末に提供し、
前記取引先管理部は、招待元企業の前記取引先管理情報において登録された招待先企業と紐付けて招待企業公開設定情報を記憶し、
前記取引先管理部は、前記招待企業公開設定情報が非公開である招待先企業が、前記2次繋がり企業として他社の取引先管理情報に登録されないように制御することを特徴とする請求項2又は3に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項5】
前記端末を通じた、前記2次繋がり企業として前記取引先管理情報に登録されることを許容するホワイトリスト登録処理、又は前記2次繋がり企業として前記取引先管理情報に登録されることを許容しない非公開企業リスト登録処理を行うリスト登録部をさらに有し、
前記取引先管理部は、招待先企業がホワイトリストに登録した企業に対してのみ、自社を前記2次繋がり企業として他社の取引先管理情報に登録可能に制御し、又は招待先企業が非公開企業リストに登録した企業に対してのみ、自社を前記2次繋がり企業として他社の取引先管理情報に登録しないように制御することを特徴とする請求項2に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項6】
前記取引先管理情報に基づいて、自社の第1表示オブジェクト、自社の前記繋がり企業である第2表示オブジェクト、及び前記第1表示オブジェクト及び前記第2表示オブジェクトを結ぶ線分を生成し、サプライチェーンネットワーク図を生成する表示制御部、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項7】
前記取引先管理情報に基づいて、自社の第1表示オブジェクト、自社の前記繋がり企業である第2表示オブジェクト、及び前記第1表示オブジェクト及び前記第2表示オブジェクトを結ぶ線分を生成するとともに、前記2次繋がり企業である第3表示オブジェクト及び前記第2表示オブジェクトと前記第3表示オブジェクトとを結ぶ線分を生成し、前記第1表示オブジェクトの周囲に前記第2表示オブジェクトを配置し、さらに前記第2表示オブジェクトの外側に前記第3表示オブジェクトを配置したサプライチェーンネットワーク図を生成する表示制御部、をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記企業情報に含まれる住所情報に基づいて、前記各表示オブジェクトを地図上に配置した地図表示型サプライチェーンネットワーク図を生成することを特徴とする請求項6又は7に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項9】
前記取引先管理部は、前記端末に取引先管理画面を提供し、前記取引先管理画面に入力された検索条件に基づいた前記企業情報の検索機能を備え、
前記取引先管理部は、検索機能を通じて検索された企業を追加予定取引先として、前記取引先管理情報に追加し、
前記招待部は、前記端末から前記取引先管理画面における前記追加予定取引先に対する招待操作に基づいて前記招待情報を生成し、前記企業情報に基づく宛先に前記招待情報を送信することを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項10】
前記取引先管理部は、前記検索条件に該当する企業が検索されなかった場合、企業仮登録画面を前記端末に提供し、前記企業仮登録画面を通じて入力された企業情報に基づいて、前記取引先管理情報に仮登録し、
前記招待部は、前記端末から前記取引先管理画面における前記仮登録された企業に対する招待操作に基づいて前記招待情報を生成し、前記仮登録された企業情報に基づく宛先に前記招待情報を送信し、
前記ポータル管理部は、前記招待情報に基づく加入承認に際して、仮登録された招待先企業に対する前記利用者登録処理を遂行し、仮登録された招待先企業の企業情報をサプライチェーンプラットフォームシステムに登録することを特徴とする請求項9に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項11】
前記端末から他の各企業へ提供する情報を受け付け、前記取引先管理情報に登録された企業の前記端末に前記受け付けた情報を提供する情報管理部、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項12】
企業活動における二酸化炭素排出量を企業別に提供する外部システムから、各参加企業の二酸化炭素排出量を取得する情報取得部と、
参加企業の売上情報及び前記売上情報を構成する各取引先企業の取引実績を記憶する記憶部と、
前記取引先管理情報に基づいて、前記取引実績に関連する前記繋がり企業を抽出し、抽出された前記繋がり企業毎に前記売上情報に対する前記取引実績の割合を算出し、前記二酸化炭素排出量に前記各繋がり企業の前記割合を乗じた繋がり企業別二酸化炭素排出量を算出する二酸化炭素排出量算出部と、
自社と取引実績にある前記繋がり企業として登録された各企業の前記端末に、該当の前記企業別二酸化炭素排出量を提供する情報管理部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項13】
サプライチェーンに参加する企業の各端末と通信可能なコンピュータに、
前記端末を通じた利用者登録処理を行い、複数の各参加企業の企業情報を登録する第1機能と、
参加企業毎に取引先管理グループを割り当て、参加企業別の取引先管理情報を生成する第2機能と、
前記企業情報に登録された参加企業を招待先企業として、招待元企業の取引先管理グループへの加入要請を含む招待情報を生成し、前記企業情報に基づく宛先に前記招待情報を送信する第3機能と、
招待先企業の前記端末から前記招待情報に対する加入承認を受け付ける第4機能と、を実現させ、
前記第2機能は、招待元企業として前記招待情報を送信したことに対する招待先企業からの加入承認に基づいて、前記取引先管理情報に招待先企業を繋がり企業として登録するとともに、招待先企業として前記招待情報を他の参加企業から受け取ったことに対する招待元企業への加入承認に基づいて、前記取引先管理情報に招待元企業を前記繋がり企業として登録し、前記繋がり企業に基づくサプライチェーンネットワークを生成することを特徴とするプログラム。
【請求項14】
前記取引先管理部は、各参加企業が前記端末を通じて、自社が属する1つ又は複数のサプライチェーン毎に、前記取引先管理情報に登録された企業に対するサプライチェーン関係情報を登録可能に制御し、
前記取引先管理情報及び前記サプライチェーン関係情報に基づいて、サプライチェーンネットワーク図を生成する表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、自社及び前記取引先管理情報に登録された各企業を表す表示オブジェクトをそれぞれ生成するとともに、複数の前記サプライチェーンに跨って前記各サプライチェーン関係情報に応じた前記表示オブジェクト間を結ぶ線分をそれぞれ生成し、前記表示オブジェクト及び前記線分を含む前記サプライチェーンネットワーク図を生成することを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項15】
前記表示制御部は、自社及び前記取引先管理情報に登録された各企業を表す表示オブジェクトをそれぞれ生成するとともに、前記サプライチェーン毎に、矢印の向きで前記サプライチェーン関係情報を表す前記表示オブジェクト間を結ぶ線分をそれぞれ生成し、前記表示オブジェクト及び前記線分を含む前記サプライチェーンネットワーク図を生成することを特徴とする請求項14に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項16】
前記サプライチェーン関係情報は、バイヤー及びサプライヤーを含み、
前記線分は、バイヤー企業からサプライヤー企業に向かう矢印を有する線分であり、
前記表示制御部は、前記サプライチェーン毎に、前記表示オブジェクトに対し、バイヤー企業の位置付けとして当該表示オブジェクトから他の前記表示オブジェクトに向かう矢印の前記線分と、サプライヤー企業の位置付けとして他の前記表示オブジェクトから当該表示オブジェクトに向かう矢印の前記線分とを生成し、前記表示オブジェクト間を前記各線分で結んだ前記サプライチェーンネットワーク図を生成することを特徴とする請求項15に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項17】
前記企業情報は、保険加入状況を含み、
前記表示制御部は、前記サプライチェーンネットワーク図において、該当の前記表示オブジェクトに前記保険加入状況を表示することを特徴とする請求項14から16のいずれか1つに記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項18】
前記取引先管理部は、各参加企業が前記端末を通じて、自社が属する1つ又は複数のサプライチェーン毎に、前記取引先管理情報に登録された企業に対するサプライチェーン関係情報を登録可能に制御し、
前記取引先管理情報に登録された企業の前記各取引先管理情報を参照し、前記サプライチェーン関係情報に基づいて、リスク評価処理を行うリスク管理部をさらに備え、
前記サプライチェーン関係情報は、バイヤー及びサプライヤーを含み、
前記リスク管理部は、前記取引先管理情報に登録された企業別に、複数のサプライチェーンに跨ってサプライヤー企業として登録されている数をカウントし、前記サプライヤー企業として登録されている数に基づいて前記リスク評価処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項19】
前記企業情報は、保険加入状況を含み、
前記リスク管理部は、前記サプライヤー企業として登録されている数及び前記保険加入状況に基づいて前記リスク評価処理を行うことを特徴とする請求項18に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【請求項20】
前記企業情報は、保険加入状況を含み、
自社及び前記取引先管理情報に登録された各企業を表す表示オブジェクトをそれぞれ生成するとともに、前記表示オブジェクト間を結ぶ線分を生成し、前記各表示オブジェクト及び前記線分を含むサプライチェーンネットワーク図を生成する表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記サプライチェーンネットワーク図において、前記表示オブジェクトの前記保険加入状況が可視化されるように制御することを特徴とする請求項1に記載のサプライチェーンプラットフォームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の異なるサプライチェーンに跨って企業間が繋がる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サプライチェーンマネジメント(SCM)システムやサプライヤリレーションシップマネジメント(SRM)システムは、原材料の調達から製造、販売に至るまで、製品の一元管理を行うと共に、多岐に連なる1次サプライヤー、2次サプライヤーといったサプライヤリレーションシップの管理を行うことができる。
【0003】
これら従来のサプライチェーンは、取引実績に基づく「繋がり」で管理され、その連なりは、特許文献1に記載のようにツリー構造となる。サプライチェーンツリー構造は、源流であるバイヤーを起点に、ツリー状に多数のサプライヤーが連なっており、ものを作る(ものを売るまでを含んでもよい)といった一連の流れを表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の異なるサプライチェーンに跨った企業間の繋がりを構築することができるサプライチェーンプラットフォームシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のコンピュータシステムは、サプライチェーンに参加する企業の各端末と通信可能なサプライチェーンプラットフォームシステムであり、前記端末を通じたサプライチェーンプラットフォームシステムの利用者登録処理を行い、複数の各参加企業の企業情報を登録するポータル管理部と、参加企業毎に取引先管理グループを割り当て、参加企業別の取引先管理情報を生成する取引先管理部と、前記企業情報に登録された参加企業を招待先企業として、招待元企業の取引先管理グループへの加入要請を含む招待情報を生成し、前記企業情報に基づく宛先に前記招待情報を送信する招待部と、招待先企業の前記端末から前記招待情報に対する加入承認を受け付ける承認制御部と、を有する。前記取引先管理部は、招待元企業として前記招待情報を送信したことに対する招待先企業からの加入承認に基づいて、前記取引先管理情報に招待先企業を繋がり企業として登録するとともに、招待先企業として前記招待情報を他の参加企業から受け取ったことに対する招待元企業への加入承認に基づいて、前記取引先管理情報に招待元企業を前記繋がり企業として登録し、前記繋がり企業に基づくサプライチェーンネットワークを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムのネットワーク構成図である。
【
図2】第1実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムの機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態のプラットフォームの利用者登録、招待及び承認に関する処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態のサプライチェーンプラットフォームの取引先管理画面の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態の外部の企業情報データベースを利用した取引先企業の仮登録の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態の企業招待申請画面、及び招待先企業が承認を行う申請詳細画面の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態のサプライチェーンネットワーク図を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態の地図表示型サプライチェーンネットワーク図の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態のサプライチェーンネットワークの広がりを説明するための図である。
【
図10】第1実施形態の自社公開設定画面、及び招待企業公開設定画面の一例を示す図である。
【
図11】第1実施形態のホワイトリスト登録画面の一例を示す図である。
【
図12】第1実施形態のサプライチェーンプラットフォームを利用した情報発信の説明図である。
【
図13】第1実施形態のサプライチェーンプラットフォームを利用した、二酸化炭素排出量に関する情報提供を説明するための図である。
【
図14】第2実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムの機能ブロック図である。
【
図15】第2実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムの第1リスク管理機能の説明図である。
【
図16】第2実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムの第2リスク管理機能の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0009】
バイヤーは、サプライチェーンを構成する各サプライヤーとの繋がりを構築し、サプライチェーン管理を行っているが、サプライチェーンを構成する企業間の繋がりは、1つのサプライチェーン管理内で閉じているのが現状である。
【0010】
一方、バイヤー及びサプライヤーは、1つのサプライチェーンの枠組みに捕らわれることなく、バイヤーは他のサプライチェーンの別のサプライヤーと取引したり、サプライヤーも、他のサプライチェーンのバイヤーと取引したりし、「企業間の繋がり」を独自に有している。つまり、1つ1つのサプライチェーンの枠組みでは、チェーン状又はツリー状の繋がりしか見えないが、無数にあるサプライチェーンは、複数の企業間の繋がりが凝集された大きなネットワークとなっている。
【0011】
そこで、本実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステムは、サプライチェーンの枠組みを超えて参加することができるプラットフォームを提供する。当該プラットフォームの提供により、自社を中心として複数の異なるサプライチェーンに跨るサプライチェーンネットワークを構築できるとともに、当該サプライチェーンネットワークに基づく情報発信や情報共有が可能なプラットフォームが形成される。
【0012】
なお、サプライチェーンにおいて、バイヤーとサプライヤーは、資材や部品、製品など(以下、製品等という)の購入元と購入先の関係である。したがって、バイヤーを起点(上流)に、1次サプライヤー、2次サプライヤーと順に下流に繋がるサプライチェーンにおいて、1次サプライヤーが、2次サプライヤーから製品等を購入していれば、1次サプライヤーは、2次サプライヤーのバイヤーの位置付けとなり、各企業はバイヤー及びサプライヤーの双方の立ち位置を有する場合がある。2次サプライヤーに紐付く3次サプライヤー、3次サプライヤーに紐付く4次サプライヤーなども同様である。
【0013】
(第1実施形態)
図1から
図13は、第1実施形態を説明するための図である。
図1は、本実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステム100のネットワーク構成図である。
【0014】
サプライチェーンプラットフォームシステム100(以下、プラットフォームシステム100という)は、サプライチェーンに参加する各企業が自己の端末200を利用し、ネットワークを介して接続する。各企業は、自己の端末200からブラウザを介して表示される画面を通じ、プラットフォームシステム100が提供する各種機能を、利用することができる。
【0015】
なお、端末200は、デスクトップ型コンピュータや持ち運び可能なタブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータであり、IP(Internet protocol)網又は移動通信回線網(Mobile communication network)を通じたデータ通信機能(無線通信/有線通信)、演算機能(CPU等)及び記憶装置(メモリ、補助記憶装置等)を備えている。また、端末200はブラウザなどの表示制御アプリケーションを備え、プラットフォームシステム100が提供する画面の表示制御を行うことができる。その他に、ディスプレイ装置(又はタッチパネル方式の表示装置)及びキーボード等の入力手段などを適宜備える。
【0016】
図2は、本実施形態のプラットフォームシステム100の機能ブロック図である。プラットフォームシステム100は、通信装置110、制御装置120及び記憶装置130を備えるコンピュータシステムである。プラットフォームシステム100は、1つ又は複数のサーバ装置で構成することができる。
【0017】
通信装置110は、各企業の端末200とのデータ通信を制御すると共に、外部システム(外部サーバ)とのデータ通信を制御する。制御装置120は、制御部1210、情報管理部1220、及び表示制御部1230を含んで構成され、記憶装置130は、各種情報を記憶する。表示制御部1230は、各企業の端末200に画面情報を提供し、端末200における画面の表示制御や端末200からの画面操作に応じた表示制御を行う。
【0018】
プラットフォームシステム100は、主に、以下の5つの機能を提供する。
1)自社の取引先管理機能
2)自社の取引先管理グループへの招待機能(招待先企業の加入承認を含む)
3)公開設定機能
4)サプライチェーンネットワークの可視化機能
5)情報発信・情報共有機能(二酸化炭素排出量の情報提供機能を含む)
【0019】
制御部1210は、主に、上記1)~3)の機能を提供する機能部であり、ポータル管理部1211、取引先管理部1212,招待部1213、承認制御部1214、公開設定制御部1215、及びリスト登録部1216を含む。
【0020】
図3は、本実施形態のプラットフォームへの利用者登録、招待及び承認に関する処理フローを示すフローチャートである。まず、プラットフォームシステム100に参加する全ての企業は、利用者登録を行う。利用者登録された各企業の企業基本情報が企業情報131に蓄積される。ポータル管理部1211は、各企業の端末200に不図示の利用者登録画面やログイン認証画面を提供し、各画面を通じて利用者登録処理及びログイン認証処理を行う(S101,S102,S201,S103,S202)。
【0021】
利用者登録処理は、企業基本情報として、法人番号、企業名(漢字、ひらがな、カタカナ、英語表記等の他の言語標記)、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス等)、国、地域などの入力を許容し、ポータル管理部1211は、入力された情報を企業情報131として記憶装置130に記憶する。このとき、ログイン認証用のユニークな企業IDを割り当てたり、認証用パスワードの受け付け(登録)や発行をしたりすることもできる。ログイン認証に関する情報は、該当企業の企業情報131と紐付けて記憶することができる。
【0022】
取引先管理部1212は、利用者登録された企業をプラットフォーム参加企業として、企業別に各取引先管理領域を割り当て、取引先管理機能を提供する。取引先管理機能は、プラットフォーム企業(企業情報131に登録されている企業)のうち、自社の取引先管理グループに属する企業を管理し、取引先管理情報132を生成する機能である。なお、後述するように、本実施形態の招待機能は、企業情報131に登録されていない企業を招待することができる。この場合、プラットフォームシステム100に参加していない状態(企業情報131に正式に登録されていない状態)の企業(招待先企業)を、取引先管理グループ内で管理することができる。
【0023】
図4は、取引先管理画面の一例を示す図であり、端末200に表示される。取引先管理画面は、検索画面である検索条件入力欄や取引先管理情報132の表示領域を含んで構成されている。この検索画面は、企業情報131に登録されているプラットフォームシステム100の参加企業の全てを対象にした検索機能を提供することができる。
【0024】
プラットフォーム参加企業は、自社の取引先管理グループに属して欲しい取引先企業を招待する。まず、端末200に表示される取引先管理画面で、企業情報131に登録されている企業を検索することができ、検索でヒットした企業を招待することができる。検索条件は、法人番号や企業名、住所など複数の検索条件の入力を許容することができる。取引先管理部1212は、端末200から入力された検索条件を受け付け、当該検索条件で企業情報131を検索して該当の企業を抽出する(S203,S104)。
【0025】
検索でヒットした企業は、
図4の右側に例示するように、企業仮登録画面に企業基本情報が表示される。企業仮登録画面は、仮登録ボタン、キャンセルボタンを含み、取引先管理部1212は、仮登録ボダンが押下された場合に、自社の取引先管理情報(取引先管理グループ)132に、当該企業を追加予定取引先として仮登録する(S204,S105)。
図4に示すように、自社の取引先管理情報132に、仮登録された企業が表示される。
【0026】
企業情報131に対する検索で、該当の企業がヒットしない場合、プラットフォーム参加企業は、仮登録したい企業の企業情報(企業基本情報)を直接、本プラットフォームシステム100に一時的に登録することができる。
図5は、企業一時登録画面及び企業仮登録画面の一例を示す図である。
【0027】
取引先管理部1212は、外部の企業情報データベース(例えば、国税庁法人番号公表サイトhttps://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)と連携し、企業一時登録画面において法人番号が入力され、企業公開情報引用ボタンが選択された場合、外部の企業情報データベースに対して、入力された法人番号に紐付く企業情報の照会処理を行い、該当の企業情報を外部の企業情報データベースから取得する。
【0028】
取得した企業情報は、
図4と同様の企業仮登録画面を通じて端末200に表示させる(S205,S106)。取引先管理部1212は、仮登録ボダンが押下された場合に、当該プラットフォーム参加企業の取引先管理情報(取引先管理グループ)132に、当該企業を仮登録する(S206,S107)。企業一時登録処理を経て仮登録された企業も、当該プラットフォーム参加企業の取引先管理情報132に仮登録され、
図4の例のように取引先管理画面に表示することができる。
【0029】
なお、外部の企業情報データベースを利用した企業情報の照会は、法人番号以外にも、外部の企業情報データベースの仕様に応じ、企業名や住所などをキーに照会できるように構成することもできる。また、外部の企業情報データベースを利用した企業一時登録処理を一例に説明したが、プラットフォーム参加企業が法人番号、企業名、住所、連絡先などを直接入力して一時登録し、自社の取引先管理情報132に仮登録するように構成してもよい。
【0030】
また、取引先管理部1212は、企業一時登録処理を通じた仮登録処理については、当該仮登録された企業が自ら本プラットフォームシステム100に利用者登録していないため、この時点では企業情報131への登録はしないように制御する。
【0031】
次に、プラットフォーム参加企業は、仮登録した企業に対して自社の取引先管理グループへの招待を行う。例えば、招待元企業は、端末200に表示されている取引先管理画面において、取引先管理情報132に登録されている「仮登録」状態の企業を選択し、招待操作を行うことができる。この招待操作に対し、招待部1213は、
図6の企業招待申画面を端末200に提供する。企業招待申請画面は、法人番号や企業名などの企業基本情報と共に、送信先(連絡先)、件名、本文などの項目が含まれている。件名や本文は、招待元のプラットフォーム参加企業が入力、編集を行うことができる(S207)。また、送信先は、企業情報131に登録されているメールアドレスをデフォルトで表示させるように制御したり、招待元企業が直接入力したりすることもできる。また、件名、本文の項目も、予め用意された定型文をデフォルトで表示させるように構成することもできる。
【0032】
企業招待申請画面は、招待申請ボタン、キャンセルボタンが含まれており、招待部1213は、招待申請ボタンが選択された場合に、当該企業招待申請画面の各項目の内容を用いた招待情報を生成する。招待情報は、企業招待申請画面の各項目の内容と共に、プラットフォームシステム100への接続リンク情報(接続URL)を含むように構成することができる。招待部1213は、生成した招待情報を送信先に送信する(S108)。取引先管理部1212は、招待情報の送信に伴って取引先管理情報132における招待先企業を「仮登録」の状態から「未承認」の状態に更新する(S109)。
【0033】
招待先企業は、端末200において招待情報を受け取る。招待先企業は、招待情報のプラットフォームシステム100への接続リンク情報を選択し、プラットフォームシステム100に接続する。取引先管理部1212は、招待先企業が上述した企業一時登録処理の対象であるか否かを判別し、企業一時登録処理の対象企業である場合は、ポータル管理部1211に、利用者登録処理を実行するように指示し、ポータル管理部1211が利用者登録画面を提供し、端末200を通じた利用者登録処理を行う(S101等)。また、取引先管理部1212は、招待先企業が上述した企業一時登録処理の対象でないと判別された場合、ポータル管理部1211によるログイン認証処理が行われる(S2001,S1110)。
【0034】
利用者登録処理が完了した後、又はログイン認証処理後、承認制御部1214は、
図6に示す申請詳細画面を、招待先企業の端末200に提供する。申請詳細画面は、招待情報の各項目の内容が表示されると共に、承認、却下、キャンセルの各ボタンを備えている。承認制御部1214は、承認ボタンが押下された場合、招待元企業の取引先管理情報132への加入承認処理を行い、招待先企業の「未承認」状態を「取引先(繋がり企業)」の状態に更新する(S111,S2001)。
【0035】
なお、申請詳細画面において、キャンセルボタンが選択された場合は、ステップS111において、招待元企業の取引先管理情報132における当該招待先企業の「未承認」状態を維持するように制御し、却下ボタンが選択された場合は、ステップS111において、招待元企業の取引先管理情報132における当該招待先企業を「承認却下」状態に更新する。「承認却下」の場合は、所定の時間が経過した後、招待先企業を招待元企業の取引先管理情報132から除外する(取引先管理グループの仮登録を抹消する)ように制御することができる。また、加入承認を却下した企業として個別に管理できるように構成してもよい。
【0036】
以上、招待する側にフォーカスを当て、招待される側が自社の取引先管理グループに加入する態様について説明したが、本実施形態のプラットフォームシステム100は、自社も招待される側となり、招待を受けた際は、招待元企業を自社(招待先)の取引先管理グループに加入させるように制御する。
【0037】
具体的には、
図3のステップS112において、取引先管理部1212は、招待情報に対する招待先企業の加入承認に基づき、招待元企業を取引先(繋がり企業)として、招待先企業の取引先管理情報132に追加する。このように構成することで、プラットフォームシステム100の参加企業は、招待する側及び招待される側の双方の立場で自社を中心としたサプライチェーンネットワークを構築することができる。
【0038】
このように本実施形態のプラットフォームシステム100は、プラットフォームシステム100の複数の各参加企業に対して取引先管理領域をそれぞれ割り当る。そして、プラットフォームシステム100に参加する複数の参加企業は、企業情報131に登録されているため、自社の取引先管理グループに招待する機会と共に、自社が招待先企業として別の企業から当該別の企業の取引先管理グループへの招待(加入要請)を受ける機会も提供することができる。
【0039】
すなわち、取引先管理部1212は、招待元企業として招待情報を送信したことに対する招待先企業からの加入承認に基づいて、取引先管理情報132に招待先企業を繋がり企業として登録するとともに、招待先企業として招待情報を他の参加企業から受け取ったことに対する招待元企業への加入承認に基づいて、取引先管理情報132に招待元企業を繋がり企業として登録し、これらの繋がり企業に基づくサプライチェーンネットワークを生成する。このため、プラットフォームシステム100に参加すると、直接取引実績がなくても又は複数の異なるサプライチェーンに跨って、自社を中心としたサプライチェーンネットワークが構築される。
【0040】
なお、上述のように、プラットフォームシステム100に未参加の企業を招待することができ、自社の取引先管理グループへの加入要請が、プラットフォームシステム100への参加要請なり、プラットフォームシステム100への参加機会を向上させることができる。
【0041】
また、プラットフォームシステム100の取引先管理機能は、取引先管理グループへの招待(加入要請)に対し、仮登録、未承認、取引先(繋がり企業)の各ステータス(取引先管理ステータス)を割り当てて管理する。取引先管理ステータスは、取引先管理情報132に保持される。
図4の例では、各取引先管理ステータスに応じた異なる表示態様で各企業のオブジェクト表示を行っている。例えば、オブジェクトの色、大きさ、形状などを各取引先管理ステータスに応じて変える表示制御を行うことができ、取引先管理グループへの加入状態を視覚的に把握し易くすることができる。
【0042】
図7は、本実施形態のサプライチェーンネットワークを説明するための図である。
図7に示すように、従来のサプライチェーン管理は、取引の連携がチェーン状又はツリー状で管理されており、例えば、企業Bが、3つの異なるサプライチェーン管理に属している場合、各サプライチェーン管理1,管理2、管理3が、それぞれ独立して管理されていた。しかしながら、本実施形態のプラットフォームシステム100に参加して利用することで、企業Bは、自社の取引先管理グループでこれらサプライチェーン管理1,管理2、管理3を、自社を中心とするネットワーク構造で一括して管理することができる。
【0043】
取引先管理グループ、すなわち、取引先管理情報132は、1つの側面として、招待元と招待先の直接の招待関係に基づくサプライチェーンネットワーク情報であり、自社を中心として取引先(繋がり企業)をノードとするネットワーク情報でもある。また、後述するように、取引先管理情報132は、繋がり企業に加えて、繋がり企業がさらに招待関係に基づいて繋がる別の企業が含まれるサプライチェーンネットワーク情報としての側面を有する。
【0044】
取引先管理情報132は、自社と取引先との関係情報を保持することができ、例えば、自社との招待関係(招待元、招待先)を含むように構成することができる。また、自社に対するサプライチェーン関係情報(バイヤー、1次サプライヤー、2次サプライヤーなど)を、取引先管理グループに加入した各企業に割り当て、取引先管理情報132に含まれるように構成することができる。
【0045】
図8は、地図表示型サプライチェーンネットワーク図の一例を示す図である。
図4の例において、「Map表示」のON/OFF操作を行うことができ、「Map表示」をONに操作することで、取引先管理情報132に登録された取引先(繋がり企業)を、企業情報131に含まれる住所情報に基づいて、地図上に表示することができる。
【0046】
図9は、本実施形態のサプライチェーンネットワークの広がりを説明するための図である。本実施形態のプラットフォームシステム100は、直接的な招待関係のみならず、自社が招待した招待先が招待元となって別の企業を招待したり、別の企業から招待されたりすることを許容する。このため、
図9に示すように、企業Oを中心に構築されるサプライチェーンは、直接の招待関係にない企業との関係も可視化することができる。
【0047】
図9の例では、直接的な招待関係を有する取引先は、一親等のネットワーク企業となり、一親等のネットワーク企業エリアの外側に、一親等で繋がる取引先が自社とは独立して招待した又は招待された取引先の取引先企業(取引先の取引先管理情報132に登録された一親等のネットワーク企業)が、二親等のネットワーク企業として繋がっている。さらに二親等のネットワーク企業エリアの外側に、二親等で繋がる取引先が独立して招待した又は招待された取引先の取引先企業(取引先の取引先管理情報132に登録された一親等のネットワーク企業)が、三親等のネットワーク企業として繋がる。
【0048】
このように取引先管理部1212は、自社の取引先管理情報132に登録された繋がり企業の取引先管理情報132を参照し、繋がり企業の取引先管理情報132に登録された繋がり企業を2次繋がり企業として自社の取引先管理情報132に登録し、自社を中心として招待情報に基づいた招待関係を有する繋がり企業と、自社とは独立して繋がり企業によって構築された招待情報に基づいた招待関係を有する2次繋がり企業(自社とは繋がっていないが、取引先管理情報132に登録された取引先と繋がる別の取引先)と、を含むサプライチェーンネットワークを生成することができる。
【0049】
なお、取引先管理部1212は、取引先管理情報132に、招待機能によって登録された取引先(繋がり企業)と共に、取引先と繋がる別の取引先(2次繋がり企業)が含まれるように制御するが、例えば、招待機能によって自社の取引先管理情報132に取引先が登録(追加)されたタイミングで、当該取引先の取引先管理情報132を参照し、招待機能によって登録された別の取引先を、自社の取引先管理情報132に追加(登録)するように制御することができる。なお、この繋がり連鎖は、理論上は無限の広がるため、例えば、予め二親等まで、三親等までと決めておき、自社の取引先管理情報132に追加する取引先の範囲を制御してもよい。
【0050】
表示制御部1230は、サプライチェーンネットワークの可視化機能として、
図7及び
図9に示すようなサプライチェーンネットワーク図を生成し、参加企業の端末200に提供することができる。表示制御部1230は、取引先管理情報132に基づいて、自社の第1表示オブジェクト、自社の繋がり企業である第2表示オブジェクト、及び第1表示オブジェクト及び第2表示オブジェクトを結ぶ線分を生成し、サプライチェーンネットワーク図を生成することができる。
図9の例では、企業Oが自社として第1表示オブジェクトで表示され、企業Oの繋がり企業A,B,Pが一親等の第2表示オブジェクトとして表示されている。
【0051】
また、表示制御部1230は、取引先管理情報132に基づいて、2次繋がり企業である第3表示オブジェクト及び第2表示オブジェクトと第3表示オブジェクトとを結ぶ線分を生成し、第1表示オブジェクトの周囲に第2表示オブジェクトを配置し、さらに第2表示オブジェクトの外側に第3表示オブジェクトを配置したサプライチェーンネットワーク図を生成することもできる。
図9の例では、企業Oの2次繋がり企業が、企業D,E,F,R,Qであり、これらが企業Oに属する2親等の企業として第3表示オブジェクトで表示されている。
【0052】
ここで、直接的な招待関係を有する取引先以外(一親等で繋がる企業以外)の企業に、自社を公開するか否かを設定する公開設定機能を備えるように構成することができる。
図10は、自社公開設定画面及び招待企業公開設定画面の一例を示す図である。
【0053】
本実施形態の公開設定機能は、自社公開設定機能と招待企業公開設定機能の2つの機能が含まれる。まず、自社公開設定機能は、招待先企業が自ら設定する機能であり、招待元企業以外のプラットフォームシステム100上の参加企業への公開可否を設定する。
図10に示すように、自社公開設定画面は、公開、匿名公開、非公開の各選択肢を含んで構成される。匿名公開は、企業基本情報を伏せ、繋がりとしてのネットワークノードのみ(存在のみ)を匿名で公開する態様である。公開設定制御部1215は、
図3に示すように、招待情報を受け取り、加入承認をした招待先企業の端末200に、自社公開設定画面を提供する。公開設定制御部1215は、自社公開設定画面を通じて選択された公開、匿名公開、非公開のいずれか1つの公開設定ステータスを受け付け、招待元企業の取引先管理情報132に、該当の取引先企業と紐付けて受け付けた公開設定ステータスを格納する(S2002,S113)。
【0054】
招待企業公開設定機能は、招待元企業が設定する機能であり、招待先をプラットフォームシステム100上の他の参加企業に公開しないように設定する機能である。なお、招待元企業と招待先企業とは直接の招待関係にあるので、例えば、招待企業公開設定機能は、1次取引企業(1次サプライヤ)公開設定機能と称することもできる。招待企業公開設定画面は、公開、非公開の各選択肢を含んで構成される。公開設定制御部1215は、
図3に示すように、招待元企業の端末200に、招待企業公開設定画面を提供する。公開設定制御部1215は、招待企業公開設定画面を通じて選択された公開、非公開のいずれか1つの招待企業公開設定ステータスを受け付け、招待元企業の取引先管理情報132に、該当の取引先企業と紐付けて受け付けた招待企業公開設定ステータスを格納する(S208,S114)。
【0055】
図11は、ホワイトリスト登録画面の一例を示す図である。
図10に示した自社公開設定画面及び招待企業公開設定画面の各公開設定は、プラットフォームシステム100全体に効力が及ぶが、特定の企業には公開してもよい、といった制御を行うこともできる。そこで、本実施形態の公開設定機能は、ホワイトリストによる公開設定機能を含むように構成することができる。
【0056】
例えば、
図10の自社公開設定画面の代わりに、リスト登録部1216は、
図11のホワイトリスト登録画面を招待先企業の端末200に提供することができる。リスト登録部1216は、ホワイトリスト登録画面を通じた企業情報131の検索機能を提供し、検索された企業をホワイトリスト候補表示欄に表示する。そして、リスト登録部1216は、端末200での操作に応じ、ホワイトリスト候補からホワイトリストへの追加及びホワイトリストからの削除の各制御を行う。リスト登録部1216は、ホワイトリスト登録情報を招待元の取引先管理情報132に、当該招待先企業と紐付けて格納する。
【0057】
招待企業公開設定についても同様であり、リスト登録部1216は、ホワイトリスト登録画面を招待元企業の端末200に提供してホワイトリスト登録制御を行い、ホワイトリスト登録情報を招待元の取引先管理情報132に、当該招待先企業と紐付けて格納する。
【0058】
なお、ホワイトリスト方式(特定企業公開方式)を一例に説明したが、特定企業非公開方式(特定の企業には公開しない)の公開設定機能を提供してもよい。この場合、リスト登録部1216は、
図10の自社公開設定画面の代わりに、不図示の非公開企業登録画面を招待先企業の端末200に提供することができる。リスト登録部1216は、非公開企業登録画面を通じた企業情報131の検索機能を提供し、検索された企業を非公開企業候補表示欄に表示する。そして、リスト登録部1216は、端末200の操作に応じ、非公開企業候補から非公開企業リストへの追加及び非公開企業リストからの削除の各制御を行う。リスト登録部1216は、非公開企業リスト登録情報を招待元の取引先管理情報132に、当該招待先企業と紐付けて格納する。招待企業公開設定についても同様であり、リスト登録部1216は、非公開企業登録画面を招待元企業の端末200に提供して非公開企業リスト登録制御を行い、非公開企業リスト登録情報を招待元の取引先管理情報132に、当該招待先企業と紐付けて格納する。
【0059】
そして、ホワイトリストを含む上記公開設定は、取引先管理情報132に反映することができる。上述のように、自社の取引先管理情報132には、招待機能によって登録された取引先(繋がり企業)と共に、取引先と繋がる別の取引先(2次繋がり企業)が含まれるように制御されるが、上記公開設定を適用し、非公開を選択した2次繋がり企業が、自社の取引先管理情報(取引先管理グループ)132に含まれないように、制御することができる。取引先管理部1212は、例えば、招待機能によって自社の取引先管理情報132に取引先が登録(追加)された場合、当該取引先の取引先管理情報132を参照し、招待機能によって登録された別の取引先を抽出する。抽出した別の取引先の自社公開設定を参照し、自社公開ステータスが非公開であれば、自社の取引先管理情報132に追加(登録)しないように制御することができる。招待企業公開設定についても同様である。また、ホワイトリスト方式の場合は、2次繋がり企業のホワイトリストを参照し、ホワイトリストに自社が含まれていれば、取引先管理情報132に反映し、含まれていなければ、取引先管理情報132に反映しないように制御することができる。
【0060】
以上の公開設定機能に関連した取引先管理情報132の管理態様をまとめると、以下のようになる。
【0061】
<自社公開設定>
公開設定制御部1215は、2次繋がり企業として、他社の取引先管理情報132に登録されることを許容するか否かを設定する自社公開設定処理を行う。自社公開設定ステータスは、公開、匿名公開、非公開を含む。
取引先管理部1212は、招待元企業の取引先管理情報132において登録された招待先企業と紐付けて自社公開設定情報を記憶し、自社公開設定情報が非公開である招待先企業が2次繋がり企業として他社の取引先管理情報132に登録されないように制御することができる。
【0062】
<招待企業公開設定>
公開設定制御部1215は、招待元企業が招待先企業を2次繋がり企業として、他社の取引先管理情報132に登録されることを許容するか否か設定する招待企業公開設定処理を行う。招待企業公開設定ステータスは、公開、非公開を含む。
取引先管理部1212は、招待元企業の取引先管理情報132において登録された招待先企業と紐付けて招待企業公開設定情報を記憶し、招待企業公開設定情報が非公開である招待先企業が、2次繋がり企業として他社の取引先管理情報132に登録されないように制御する。
<リスト方式の公開設定>
リスト登録部1216は、端末200を通じた、2次繋がり企業として取引先管理情報132に登録されることを許容するホワイトリスト(公開企業リスト)登録処理、又は2次繋がり企業として取引先管理情報132に登録されることを許容しない非公開企業リスト登録処理を行うことができる。
取引先管理部1212は、招待先企業がホワイトリストに登録した企業に対してのみ、自社を2次繋がり企業として他社の取引先管理情報132に登録可能に制御し、又は招待先企業が非公開企業リストに登録した企業に対してのみ、自社を2次繋がり企業として他社の取引先管理情報132に登録しないように制御することができる。
【0063】
これら公開設定及びリスト方式の公開設定の内容は、所定のタイミングで、取引先管理情報132の更新処理の実行により反映される(
図3のステップS115)。
【0064】
なお、上述のように、公開設定機能による公開可否は取引先管理情報132に反映され、表示制御部1230によるサプライチェーンネットワーク図の生成処理においても、サプライチェーンネットワーク図から取引先管理情報132内において非公開が設定された企業が除外される。リスト方式の公開設定に対するサプライチェーンネットワーク図の生成処理についても同様である。
【0065】
また、自社公開設定と招待企業公開設定は、双方を組み合わせて、取引先管理情報132(サプライチェーンネットワーク)に反映することができる。例えば、
図7の例において、招待元企業Cが招待先企業Dを「公開」に設定していても、招待先企業Dが非公開を設定している場合は、自社を2次繋がり企業として他社(企業B)の取引先管理情報132に反映されないように制御することができる。また、招待先企業Dが公開を設定していても招待元企業Cが招待先企業Dを「非公開」に設定している場合は、2次繋がり企業として他社(企業B)の取引先管理情報132に反映されないように制御することができる。
【0066】
図12は、プラットフォームシステム100を利用した情報発信の説明図である。プラットフォームシステム100の参加企業は、取引先管理情報132に基づくサプライチェーンネットワークを構築することができるため、当該ネットワークの繋がりを情報伝達ルートして活用することができる。
【0067】
図12に示すように、
図12の左図では、企業Bがプラットフォームシステム100を通じて情報発信すると、企業Bの取引先管理情報132に取引先として登録されている各企業に一括して情報を提供できる。また、
図12の右図では、企業Dが情報発信した場合、企業Dを取引先管理情報132に登録している企業Cが、企業Bの取引先として登録されていれば、当該企業Bは、企業Dの発信情報をプラットフォームシステム100を通じて直接受け取れるようになる。
【0068】
この情報発信・情報共有機能は、情報管理部1220によって遂行され、プラットフォームに参加した各企業の端末200から、プラットフォームに参加した他の各企業へ提供する情報を受け付け、取引先管理情報132に基づいて繋がり企業として登録された各企業にプラットフォームシステム100上で受け付けた情報を閲覧できるように制御したり、受け付けた情報を端末200に提供したりすることができる。
【0069】
なお、情報発信・情報共有機能の拡張機能としては、二酸化炭素排出量の情報提供機能がある。
図13は、プラットフォームシステム100を利用した、二酸化炭素排出量に関する情報提供を説明するための図である。
【0070】
図13に示すように、情報取得部1221は、企業Bの企業活動における二酸化炭素排出量を外部システムから取得し、記憶装置130に格納する。外部システムは、各企業の二酸化炭素排出量の情報を提供する外部サービスである。情報取得部1221は、企業Bの売上情報と、取引先企業別取引実績を記憶装置130に格納する。売上情報及び取引先企業別取引実績は、企業Bがプラットフォームシステム100に入力するように構成したり、企業Bが利用する取引管理システムと連携して売上情報や取引先企業別取引実績を、当該取引管理システムから取得したりしてもよい。
【0071】
二酸化炭素排出量算出部1222は、取引先企業別取引実績に関連する企業A,企業Xを抽出し、企業A,企業X毎に企業Bの売上情報に対する取引実績の割合を算出する。二酸化炭素排出量算出部1222は、企業Bの二酸化炭素排出量に、各企業A,企業Xの割合を乗じた二酸化炭素排出量を算出する。情報管理部1220は、プラットフォームシステム100上で企業A,企業Xが企業Bに対するそれぞれの二酸化炭素排出量を閲覧可能に制御したり、企業A,企業Xの各端末200に該当の二酸化炭素排出量を提供したりすることができる。
【0072】
なお、情報発信・情報共有機能は、上述の公開設定機能と連携した制御を行うことができる。つまり、2親等以降で繋がる取引先が非公開を設定している場合、その取引先からの又はその取引先への情報発信・情報共有を行わないように制御することができる。
【0073】
以上、第1実施形態について説明したが、プラットフォームシステム100上の企業情報131には、自社が招待した企業のみならず他社が招待した企業も蓄積され、さらには、招待関係に限らず、自ら利用者登録してプラットフォームシステム100に参加する企業も含まれる。つまり、プラットフォームシステム100は、自社と招待関係にない他社がプラットフォームシステム100に自ら参加し、割り当てられた取引先管理グループでサプライチェーンを一元管理することができる。このため、他社が招待した企業やプラットフォームシステム100に自ら参加した企業を自社が別途招待し、例えば、プラットフォームシステム100を通じて自社のサプライチェーン関連企業以外の企業を、自社の繋がり企業として新たに取引先管理グループに追加することができる。したがって、自社のサプライチェーン管理の枠組みを超えた企業間コンタクトの場、言い換えれば、自社のサプライチェーン管理の枠組みと他社のサプライチェーン管理の枠組みとに跨った企業間の繋がりを構築することができるプラットフォームを提供することもできる。
【0074】
つまり、別の観点において、招待機能によってプラットフォームシステム100に参加した企業も招待関係にかかわらず自らプラットフォームシステム100に参加した企業も、自社又は他社のサプライチェーン管理の枠組みに限定されずに、企業情報131に蓄積された企業を検索して新たな取引相手を探し、探した取引相手にコンタクトを取ることができる。例えば、リスクヘッジや効率化のため、製造拠点を分散したり、変更したりする際に、プラットフォームシステム100で新たな取引相手を探してオファーすることができ、また、招待される側として新たな取引相手からオファーを受けることもできる。プラットフォームシステム100を通じ、自社が属するサプライチェーンの枠組みを超えて企業間のやり取りを活性化することができる。なお、企業情報131に蓄積されていない企業に対しても、上述のようにオファーすることもできる。
【0075】
図7の例で説明すると、企業Aは、別の企業が管理するサプライチェーン管理2,3と関係性を有していない。しかしながら、本プラットフォームシステム100では、サプライチェーン管理2の企業Cを招待したり、逆に企業Cから招待されたりして、企業Aは、自社の取引先管理グループに入れることができる。また、サプライチェーン管理2の企業Cが2次繋がり企業として公開「可」である場合、企業Aの取引先管理グループに自動的に属することになる。このように、自社が属する複数の異なるサプライチェーン以外にも、プラットフォームシステム100を通じ、自社が属さないサプライチェーンの企業と繋がりも持つ機会を得ることができる。
【0076】
なお、上述の自社公開設定機能、招待企業公開設定は、自社が属するサプライチェーンの枠組み内での公開(匿名公開を含む)/非公開以外にも、自社が属さないサプライチェーンの枠組みに対しての公開(匿名公開を含む)/非公開が含まれるように構成することができる。
【0077】
また、
図9の例では、例えば、企業Aと企業Eで構成されるサプライチェーンが、企業(自社)Oと企業Aのサプライチェーンと異なる場合であっても、企業(自社)Oは、本実施形態のプラットフォームシステム100上で、企業Eを自社のサプライチェーンネットワークとして繋がりを持つことができる。本実施形態のプラットフォームシステム100を通じ、自社のサプライチェーン管理外の企業とのコミュニケーション機会を得ることができる。
【0078】
また、プラットフォームシステム100の自社の取引先管理グループへの招待機能(招待先企業の加入承認を含む)は、プラットフォームシステム100に参加しませんかという招待機能でもある。ここで、プラットフォームシステム100は、取引先管理グループへの招待機能とは別に、プラットフォームシステム100への招待機能を備えるように構成することもできる。例えば、ポータル管理部1211は、企業情報131から検索された企業に対して取引先管理グループではなくプラットフォームシステム100への参加招待情報を、端末200に送信することができる。プラットフォームシステム100への参加招待情報を受け取った企業は、端末200を通じて上述の利用者登録を行い(企業情報131に登録され)、プラットフォームシステム100が提供する各種機能を利用することができる。
【0079】
(第2実施形態)
図14から
図16は、第2実施形態を説明するための図である。本実施形態は、上記第1実施形態で説明した主要な5つの機能に加え、リスク管理機能を備えている。
図14は、本実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステム100Aの機能ブロック図である。取引先管理部1212は、リスク管理部1217を含んで構成されている。なお、その他の機能については上記第1実施形態と同様であり、同符号を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0080】
本実施形態は、2つのリスク管理機能を提供する。
図15は、第1リスク管理機能の説明図であり、
図16は、第2リスク管理機能の説明図である。
【0081】
第1リスク管理機能は、サプライチェーンプラットフォームでの繋がりに基づくリスク評価を行う。
【0082】
図15に示すように、サプライチェーン管理内の各企業は、バイヤーとサプライヤーの関係で繋がっており、従来のチェーン状又はツリー状のサプライチェーン関係図でも把握することができる。企業A視点のサプライチェーン管理において、1次サプライヤーは企業C,企業E,企業Gであり、2次サプライヤーは企業Fとなる。一方で、企業C,企業E,企業Gのぞれぞれは、企業Fが1次サプライヤーとなり、企業F視点では、企業C,企業E,企業Gの3社がバイヤーとなる。
【0083】
従来のチェーン状又はツリー状のサプライチェーン関係図でもわかるように、企業Fは、企業C以外にも企業E,企業Gのサプライヤーとして、多くの企業から頼りにされている。一方で、このように多くの企業からサプライヤーとして信頼されている企業にトラブル(被災など)が生じると、供給がストップしまうリスクがある。このため、従来からサプライチェーン管理において、連なる各企業のリスク評価を行い、安定供給のための拠点分散や代替先の確保などを検討が重要となっている。
【0084】
しかしながら、
図15の例のように、従来のサプライチェーン管理では、自社のサプライチェーンに属する企業が、他の異なるサプライチェーンの企業と取引があるのかが把握できないため、リスク評価が難しい課題があった。
【0085】
本実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステム100Aは、上述のように、複数の異なるサプライチェーンに跨った企業の繋がりをネットワーク化し、さらに可視化することができる。そこで、第1リスク管理機能は、サプライチェーンプラットフォームシステム100A上の企業間の繋がり情報を用いて、サプライチェーン管理内の各企業のリスク度を可視化したり、リスク度を数値化したりして、リスク評価を行う機能を提供する。
【0086】
上述のように、取引先管理情報132は、自社と取引先との関係情報を保持することができ、自社との招待関係(招待元、招待先)以外にも、自社に対するサプライチェーン関係情報(バイヤー、1次サプライヤー、2次サプライヤーなど)を、取引先管理グループに加入した各企業に割り当て、取引先管理情報132に含まれるように構成することができる。
【0087】
各企業は、端末200から、自社が属する1つ又は複数のサプライチェーン管理に基づいて、サプライチェーン管理別に、自社の取引先管理情報132に登録された該当の企業に対し、バイヤー、1次サプライヤー、2次サプライヤーなどのサプライチェーン関係情報を入力する。取引先管理部1212は、各参加企業が端末200を通じた、サプライチェーン関係情報の登録制御を行う。
【0088】
企業Fを例に説明すると、企業Aを中心としたサプライチェーン管理では、企業Fは、企業B及び企業Dを1次サプライヤーとして登録し、企業C,企業E,企業Gをバイヤーとして登録することができる。さらに、企業Fは、複数の異なるサプライチェーンに属している場合、サプライチェーン管理毎に、サプライチェーン関係情報を入力することができる。例えば、企業Yなどを別のサプライチェーン管理内のバイヤーとしてサプライチェーン関係情報を登録することができる。他の企業も同様に、端末200から、自社に対するサプライチェーン関係情報を、1つ又は複数の異なるサプライチェーン管理別に入力し、取引先管理情報132に登録する。
【0089】
このように各企業の取引先管理情報132において、サプライチェーン関係情報が付されることで、複数の異なるサプライチェーンに跨って、自社がサプライヤーとしていくつの企業と取引しているのか、自社がバイヤーとしていくつの企業と取引しているのか、を把握することができる。
図15の例において、企業Fは、複数の異なるサプライチェーンに跨り、6社のバイヤー企業と取引があり、2社のサプライヤー企業と取引があることが把握できる。従来のチェーン状又はツリー状のサプライチェーン関係図では、企業Fが3社の1次サプライヤーであることしか把握できないが、本実施形態のサプライチェーンプラットフォームシステム100Aでは、異なるサプライチェーンに跨って6社のバイヤー企業と取引を行っていることを把握できる。
【0090】
つまり、従来のチェーン状又はツリー状のサプライチェーン関係図で把握可能な供給リスクは、異なるサプライチェーン管理に跨ると、さらにリスク度が高くなっていることが把握でき、自社のサプライチェーン管理のみでは把握できない供給リスクを評価することができる。なお、
図15は、企業Aのサプライチェーン管理において、企業Fが3つの企業C,企業E,企業Gの1次サプライヤーである態様を例示したが、例えば、企業Fが、1つの企業Cの1次サプライヤーである場合、従来のチェーン状又はツリー状のサプライチェーン関係図では供給リスクは低くなるが、異なるサプライチェーン管理に跨ると、供給リスクが高いことが把握できる。
【0091】
そして、本実施形態の表示制御部1230は、取引先管理情報及びサプライチェーン関係情報に基づいて、サプライチェーンネットワーク図を生成する。例えば、企業A視点でサプライチェーンネットワーク図を生成する場合、表示制御部1230は、自社及び取引先管理情報132に登録されている各企業(例えば、繋がり企業及び2次繋がり企業)を表す各表示オブジェクトをそれぞれ生成するとともに、複数のサプライチェーンに跨って各サプライチェーン関係情報に応じた表示オブジェクト間を結ぶ線分をそれぞれ生成する。表示制御部1230は、これら各表示オブジェクト及び線分を含むサプライチェーンネットワーク図を生成する。
【0092】
なお、表示オブジェクト間を結ぶ線分は、サプライチェーン毎に、矢印の向きでサプライチェーン関係情報を表す線分として構成することもできる。表示制御部1230は、企業Aの取引先管理情報132に登録された各企業の取引先管理情報132を参照してサプライチェーン毎の各サプライチェーン関係情報を抽出し、表示オブジェクト間を結ぶ線分が、各サプライチェーンのサプライチェーン関係情報に応じた向きの矢印となるように制御することができる。
【0093】
例えば、サプライチェーン関係情報は、少なくともバイヤー及びサプライヤーを含み、線分は、バイヤー企業からサプライヤー企業に向かう矢印を有する。表示制御部1230は、サプライチェーン毎に、各表示オブジェクトに対し、バイヤー企業の位置付けとして当該表示オブジェクトから他の表示オブジェクトに向かう矢印の線分と、サプライヤー企業の位置付けとして他の表示オブジェクトから当該表示オブジェクトに向かう矢印の線分とを生成し、表示オブジェクト間を各線分で結んだサプライチェーンネットワーク図を生成することができる。
【0094】
図15に示すように、企業A視点のサプライチェーンネットワーク図において、企業Fは、企業Aのサプライチェーン管理とは異なる他のサプライチェーン(α、β、γ)に属しており、これら他のサプライチェーン毎に、取引先管理情報132には、各サプライチェーン関係情報が登録されている。そして、企業Fと結ばれる線分の数で取引先数を把握できると共に、矢印の向きによって企業が取引するバイヤー企業の数、サプライヤー企業の数が視覚的に把握できる。このため、企業Aは、サプライチェーンネットワーク図を通じ、可視化された各企業のリスク度を把握でき、自社のサプライチェーン管理下の各企業に対するリスク評価を行うことができる。
【0095】
また、本実施形態のサプライチェーンネットワーク図は、リスク評価と代替先案の検討を同時に行うことができる。
図15に示すように、複数のサプライチェーンに跨ったサプライチェーンネットワーク図は、企業Fの1次サプライヤーである企業Bが、異なるサプライチェーンの企業Xの1次サプライヤーでもあることが把握できる。そこで、企業A-企業C-企業X-企業Bの代替先を見付けることができ、企業Bに対する企業Fの代替先として、企業Xを選定することができる。なお、
図15の例のように、企業Aのサプライチェーン管理に属さない、言い換えれば、企業Aの取引先管理情報132に登録されているものの、サプライチェーン関係情報が登録されていない企業を結ぶ線分は、サプライチェーン関係情報が登録されている企業の線分と異なる態様で表示するように構成することができる。
【0096】
上記第1実施形態のサプライチェーンネットワーク図は、取引先管理情報132に基づき、異なるサプライチェーンに跨る「繋がり」を線分で結んでいるが、本実施形態のサプライチェーンネットワーク図は、異なるサプライチェーンに跨る「繋がり」を各企業が属するサプライチェーンのサプライチェーン関係情報の視点で可視化している。
【0097】
次に、第1リスク管理機能の他の態様について説明する。本実施形態では、サプライチェーンネットワーク(取引先管理情報132)に含まれる各企業の取引先管理情報132を参照し、バイヤーとして登録されている数(T‐in)、企業別にサプライヤーとして登録されている数(T‐out)をそれぞれカウントし、これをリスク指標として用い、リスク評価を行うことができる。
【0098】
つまり、リスク管理部1217は、取引先管理情報132に登録された繋がり企業(2次繋がり企業を含む)の各取引先管理情報132を参照し、取引先管理情報132に登録された企業別に、複数の異なるサプライチェーンに跨って(複数の異なるサプライチェーンで)サプライヤー企業として登録されている数をカウントし、リスク評価処理を行うことができる。
図15に示すように、企業Aのリスク指標として、サプライチェーン管理内の企業C,企業E,企業G,企業F,企業B,企業Dの各取引先管理情報132を参照し、T‐inとT‐outをそれぞれカウントして数値化することができる。
【0099】
T‐inの数が多い場合は、上述のように多くのバイヤー企業から頼られている企業である。ここで、リスク指標として重要なのは、T‐inである。T‐inの数が多い場合、1つの企業に集中していることを示す。したがって、T‐inの数が多い企業は、トラブル(例えば、被災など)が生じた場合の供給リスクが高い、と評価することができる。このため、リスク管理部1217は、少なくともT‐inの数をカウントする構成であればよく、T‐outの数をカウントしない構成としてもよい。
【0100】
リスク管理部1217は、例えば、予め設定された閾値を用いて、T‐inの数が閾値を超えるか否かを判定し、T‐inの数が閾値を超える企業(リスク回避候補企業)を抽出するように、リスク評価処理を行うことができる。リスク評価の結果は、表示制御部1230を通じて端末200に、提供することができる。
【0101】
例えば、表示制御部1230は、サプライチェーン関係情報に基づいて生成される線分で繋がれた各表示オブジェクトを含むサプライチェーンネットワーク図において、T‐inの数が閾値を超えた企業の表示オブジェクトに特定のエフェクトを加えて表示したり、「リスクあり」などの通知メッセージを、サプライチェーンネットワーク図の該当の表示オブジェクトに表示したりすることができる。また、T‐inの数をそのまま企業の表示オブジェクトに表示するように構成してもよい。また、別途、自社のサプライチェーン管理内の企業リストを生成し、リスト内にリスク評価の結果を表示したりすることもできる。
【0102】
次に、第2リスク管理機能について説明する。
【0103】
サプライチェーンに参加する企業は、事業停止保証保険や損害賠償責任保険などの保険に加入することがある。これは、サプライチェーンに属するため、自社又は他社に対するリスクヘッジの一環であり、取引先が保険に加入していれば、なにかあった場合の安心材料になる。また、取引先に対して保険に加入していることを安心材料として提供することができる。
【0104】
そこで、第2リスク管理機能は、保険加入の有無をサプライチェーンネットワーク図に表示し、保険の加入状況を提供してリスク管理を行えるようにする。ポータル管理部1211は、企業情報131の登録処理において、端末200から、保険加入状況(保険加入済み/保険未加入,保険の種類など)の入力を受け付けるように制御し、自社の企業情報131に保険加入情報が登録できるようにする。
【0105】
そして、表示制御部1230は、サプライチェーンネットワーク図において、取引先管理情報132に登録されている各企業の企業情報131を参照して保険加入状況を取得し、
図16に示すように、サプライチェーンネットワーク図の各企業の表示オブジェクトに、「保険加入」,「保険未加入」などの保険加入状況を表示する。
【0106】
なお、第2リスク管理機能においても、保険加入状況の表示制御は、
図16の例に限定されず、例えば、「保険加入」,「保険未加入」別に、企業の表示オブジェクトを特定のエフェクトで表示することができる。
【0107】
図16に示すように、本実施形態の第2リスク管理機能によれば、サプライチェーンネットワーク図上で、サプライチェーン管理内の企業に加え、サプライチェーン管理外の企業の保険加入状況が可視化されている。このため、企業Aは、例えば、自社のサプライチェーン管理内の企業Dが保険未加入であることから、保険に加入している自社のサプライチェーン管理外の企業Yに、取引先を変更することを検討できる。また、企業Fの観点からも同様であり、企業Fは、1次サプライヤーである企業Dが保険未加入であることから、1次サプライヤー企業を企業Yに変更することを検討できる。
【0108】
また、本実施形態の第2リスク管理機能は、別の観点において、企業Aや企業Fなどのサプライチェーン関係者が、本サプライチェーンプラットフォームシステム100Aを通じて企業Dに連絡し、保険に未加入であることを通知したり、保険に加入することを勧めたりすることができる。企業Dは、保険への加入の機会を得ることができる。
【0109】
以上、第2実施形態について説明したが、第1リスク管理機能は、第2リスク管理機能の保険加入状況を加味し、リスク評価を行うように構成してもよい。例えば、リスク管理部1217は、T‐inを用いたリスク評価において、T‐inが閾値を超えていなくても、保険加入状況が「未加入」である企業を、リスク回避候補企業として抽出することができる。
【0110】
また、第2リスク管理機能は、上記第1実施形態に適用し、サプライチェーン関係情報に関係なく、サプライチェーンネットワーク図上に保険加入状況を表示させるように構成してもよい。
【0111】
上述のサプライチェーンプラットフォームシステム100,100Aを構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0112】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0113】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
100,100A サプライチェーンプラットフォームシステム
110 通信装置
120 制御装置
1210 制御部
1211 ポータル管理部
1212 取引先管理部
1213 招待部
1214 承認制御部
1215 公開設定制御部
1216 リスト登録部
1217 リスク管理部
1220 情報管理部
1221 情報取得部
1222 二酸化炭素排出量算出部
1230 表示制御部
130 記憶装置
200 端末