(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058591
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】巻回体収容箱
(51)【国際特許分類】
B65D 25/52 20060101AFI20240418BHJP
B65D 5/72 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B65D25/52 E
B65D5/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144630
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2022165409
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】関 孝幸
【テーマコード(参考)】
3E060
3E062
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB13
3E060AB18
3E060BA13
3E060BC04
3E060CE04
3E060CE07
3E060CE15
3E060CE18
3E060CE19
3E060CE22
3E060CF02
3E060CF05
3E060DA17
3E060EA08
3E060EA14
3E062AA01
3E062AB13
3E062AC05
3E062LA01
3E062LA13
3E062LA25
(57)【要約】
【課題】ラップフィルムを摘みやすく、かつ裂けにくくした巻回体収容箱を提供する。
【解決手段】ラップフィルムを仮留めするニス塗布層を有し、ラップフィルムのカット痕50Tにおけるラップフィルムの裂け強度が0.3N以下である。そして、ニス塗布層がラップフィルムに対して条件1,2を満たす。条件1:JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ、かつニス塗布層に対するラップフィルムの引きはがし角度を0°に変更して測定したときのニス塗布層と幅25mmのラップフィルムとの0°におけるずり強度が5.0N/25mm以上である。条件2:JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定したときのニス塗布層と幅25mmのラップフィルムとの90°におけるT型剥離強度が0.04N/25mm未満である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、前板、後板、および一対の脇板と、を有し、ラップフィルムがロール状に巻回された巻回体を収容する、上面が開口した容器本体と、
前記後板の上端辺に連接され、前記容器本体の上面開口部を閉鎖時に覆う蓋板と、前記蓋板に連接され、前記前板の外側に重ねて配置される蓋前板と、を有する蓋体と、
前記巻回体から繰り出され、前記前板と前記蓋前板との間から引き出された前記ラップフィルムを切断する切断刃と、
を備える巻回体収容箱であって、
前記前板の表面に、前記ラップフィルムを仮留めするニス塗布層を有し、
前記ラップフィルムが前記切断刃で切断されたときに前記ラップフィルムに形成されるカット痕における前記ラップフィルムの裂け強度が、0.3N以下であり、
前記ニス塗布層が前記ラップフィルムに対して(条件1)および(条件2)を満たす、
ことを特徴とする巻回体収容箱。
(条件1)JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ、かつ前記ニス塗布層に対する前記ラップフィルムの引きはがし角度を0°に変更して測定したときの前記ニス塗布層と幅25mmの前記ラップフィルムとの0°におけるずり強度が5.0N/25mm以上である。
(条件2)JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定したときの前記ニス塗布層と幅25mmの前記ラップフィルムとの90°におけるT型剥離強度が0.04N/25mm未満である。
【請求項2】
前記ラップフィルムの引裂強さは、前記ラップフィルムの縦方向における引裂強さと、前記ラップフィルムの横方向における引裂強さとの平均値が、26mN以下である、
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記ニス塗布層が、前記前板の前記表面のうち、前記蓋前板と重なる領域の全体にわたり塗布されている、
請求項1または2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
前記ニス塗布層が、前記前板の前記表面のうち、前記蓋前板と重なる領域の一部のみに塗布されている、
請求項1または2に記載の巻回体収容箱。
【請求項5】
前記前板は、前記前板に形成された切り線に区切られるフラップを備え、前記フラップの前面に前記ニス塗布層が配置されている、
請求項1または2に記載の巻回体収容箱。
【請求項6】
前記ニス塗布層は、塗布部を有した塗布パターンを備え、
前記塗布パターンは、前記塗布部と非塗布部とを交互に配置したパターン、前記塗布部が前記非塗布部を囲むパターン、前記塗布部が前記容器本体の長さ方向に延在するパターン、および全ての前記パターンから選択される少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである、
請求項1または2に記載の巻回体収容箱。
【請求項7】
前記ニス塗布層は、UV硬化性ニス層である、
請求項1または2に記載の巻回体収容箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体を収容した巻回体収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
芯体に巻回されたラップフィルムは、紙製の巻回体収容箱に収容されている。巻回体収容箱から引き出されたラップフィルムは、切断刃によって切断される。巻回体収容箱は、ラップフィルムを引き出す際にラップフィルムをつまみやすいように、前板に前後方向の前側に突出するフラップを備える。さらに、巻回体収容箱は、フラップの前面にラップフィルムを仮留めするためのニス塗布層を備える。ニス塗布層の構成として、例えば、ラップフィルムの巻き戻りを抑えたり、ラップフィルムの摘まみやすさを高めたりするように、(a)切断容易性の向上を目的として、ラップフィルムに対するニス塗布層のずり強度とT型剥離強度とをそれぞれ所定の範囲とすることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、ニス塗布層の構成として、(b)ラップフィルムの摘まみやすさの経時安定性の向上を目的として、T型剥離強度の経時による増加率を所定の範囲とすることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-5079号公報
【特許文献2】国際公開第2018/163592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ラップフィルムを使用するうえでしばしば起こるトラブルとして、巻回体収容箱からラップフィルムを引き出して切断した際に、ラップフィルムが縦に裂けて(縦裂け)収容箱内に巻き戻ることがある。また、ラップフィルムを切断した後に再びラップフィルムを摘まんで切断しようとした際に、摘まんだラップフィルムが縦に裂けて収容箱内に巻き戻ることもある。このような際、使用を再開するために必要な復旧が困難、あるいは不可能となる場合がある。
【0005】
切断刃によって切断されたラップフィルムの先端は、山形状と谷形状とを交互に繰り返すような、切断刃のカット痕を備える。そして、利用者は、上述したカット痕を有したフィルム先端部を指で摘まみながらラップフィルムをニス塗布層から剥がして、巻回体収容箱からラップフィルムを引き出す。この間、カット痕における切り欠きから生じる裂けが起点となって、ラップフィルムがフィルム先端から縦方向に裂けやすい。
【0006】
このように、ニス塗布層に貼り付いたラップフィルムの引き出しに際し、縦裂けを誘起しないようにすることは、ラップフィルムを引き出して切断する過程でのトラブルを防止し、快適に使用してもらううえで極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための巻回体収容箱は、底板、前板、後板、および一対の脇板と、を有し、ラップフィルムがロール状に巻回された巻回体を収容する、上面が開口した容器本体と、前記後板の上端辺に連接され、前記容器本体の上面開口部を閉鎖時に覆う蓋板と、前記蓋板に連接され、前記前板の外側に重ねて配置される蓋前板と、を有する蓋体と、前記巻回体から繰り出され、前記前板と前記蓋前板との間から引き出された前記ラップフィルムを切断する切断刃と、を備える巻回体収容箱である。巻回体収容箱は、前記前板の表面に、前記ラップフィルムを仮留めするニス塗布層を有し、前記ラップフィルムが前記切断刃で切断されたときに前記ラップフィルムに形成されるカット痕における前記ラップフィルムの裂け強度が、0.3N以下であり、前記ニス塗布層が前記ラップフィルムに対して(条件1)および(条件2)を満たす。
【0008】
(条件1)JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ、かつ前記ニス塗布層に対する前記ラップフィルムの引きはがし角度を0°に変更して測定したときの前記ニス塗布層と幅25mmの前記ラップフィルムとの0°におけるずり強度が5.0N/25mm以上である。
【0009】
(条件2)JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定したときの前記ニス塗布層と幅25mmの前記ラップフィルムとの90°におけるT型剥離強度が0.04N/25mm未満である。
【0010】
ラップフィルムの裂け強度は、ラップフィルムの引裂強さと、ラップフィルムのカット痕の形状とを加味した、巻回体収容箱におけるラップフィルムの縦裂けの生じやすさを示す指標値である。上記構成によれば、(i)ラップフィルムのカット痕におけるラップフィルムの裂け強度が0.3N以下であり、かつ(ii)ラップフィルムとニス塗布層とのずり強度が5.0N/25mm以上である。このため、ラップフィルムの裂け強度が低いために裂けやすいラップフィルムであっても、切断時のラップフィルムのずれや、切断後のラップフィルムの巻き戻りが、ニス塗布層に対するラップフィルムの密着によって抑制できる。また、(i)ラップフィルムのカット痕におけるラップフィルムの裂け強度が0.3N以下であり、かつ(iii)ラップフィルムとニス塗布層とのT型剥離強度が0.04N/25mm未満である。このため、ラップフィルムをニス塗布層から引き剥がす際に、ラップフィルムとニス塗布層との密着が強すぎることがなく、ニス塗布層からラップフィルムを引き剥がすことが容易である。よって、ラップフィルムの裂け強度が低いために裂けやすいラップフィルムであっても、カット痕に生じた微細な裂けが巻き戻りに至るような大きな縦裂けに拡大するよりも前にラップフィルムを引き剥がすことができるので、ラップフィルムの縦裂けによる巻き戻りを抑制することができる。また、ラップフィルムとニス塗布層との密着が強すぎることがないので、摘まんだときに摘まみやすい。結果として、切断時のラップフィルムのずれや、切断後のラップフィルムの巻き戻りを抑制しながらも、ラップフィルムの縦裂けを抑制することができる。
【0011】
上記巻回体収容箱において、前記ラップフィルムの引裂強さは、前記ラップフィルムの縦方向における引裂強さと、前記ラップフィルムの横方向における引裂強さとの平均値が、26mN以下でもよい。
【0012】
上記構成によれば、ラップフィルムは、ラップフィルムの引裂強さの平均値が、26mN以下である。このため、ラップフィルムの裂け強度を0.3N以下とすることが容易となり、上記の効果がさらに高まる。
【0013】
上記巻回体収容箱において、前記ニス塗布層が、前記前板の前記表面のうち、前記蓋前板と重なる領域の全体にわたり塗布されてもよい。
上記構成によれば、前板の表面のうちで蓋前板と重なる領域の全体にわたり、ニス塗布層が塗布されている。このため、切断時のラップフィルムのずれや、切断後のラップフィルムの巻き戻りの抑制効果が得られる実効性が高まる。また、ラップフィルムの次回使用時にラップフィルムの縦裂けの抑制効果が得られる実効性も高まる。そして、塗布によって形成されるニス塗布層であれば、ニス塗布層が配置される範囲に高い自由度を備えるため、蓋前板と重なる領域の全体にわたりニス塗布層を形成することも容易である。
【0014】
上記巻回体収容箱において、前記ニス塗布層が、前記前板の前記表面のうち、前記蓋前板と重なる領域の一部のみに塗布されてもよい。
上記構成によれば、前板の表面のうちで蓋前板と重なる領域の一部のみに、ニス塗布層が塗布されている。このため、蓋前板と重なる領域の全体にわたりニス塗布層が塗布される場合と比べて、ニス塗布量の形成に要する原材料の使用量を抑制できる。
【0015】
上記巻回体収容箱において、前記前板は、前記前板に形成された切り線に区切られるフラップを備え、前記フラップの前面に前記ニス塗布層が配置されてもよい。
上記構成によれば、カット痕を有したラップフィルムの先端部が、ラップフィルムの次回使用時に前板のフラップに持ち上げられる。そして、フラップに持ち上げられたラップフィルムの先端部は、ラップフィルムを摘まむときに摘まみやすい。この際、フラップの前面にニス塗布層が配置されるため、ラップフィルムはフラップの前面のニス塗布層に密着する。このため、フラップの前面に密着したラップフィルムをより容易に摘まむことができる。結果として、ラップフィルムの縦裂けを抑制することの実効性がさらに高まる。
【0016】
上記巻回体収容箱において、前記ニス塗布層は、塗布部を有した塗布パターンを備え、前記塗布パターンは、前記塗布部と非塗布部とを交互に配置したパターン、前記塗布部が前記非塗布部を囲むパターン、前記塗布部が前記容器本体の長さ方向に延在するパターン、および全ての前記パターンから選択される少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つでもよい。
【0017】
上記構成によれば、塗布部と非塗布部とを交互に配置したパターン、塗布部が非塗布部を囲むパターン、および塗布部が容器本体の長さ方向に延在するパターンをニス塗布層に採用できる。
【0018】
上記巻回体収容箱において、前記ニス塗布層は、UV硬化性ニス層でもよい。
上記構成によれば、UV照射によってニス塗布層を形成できるため、ニス塗布層の配置や形状の精度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、開封前の巻回体収容箱を正面右上から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、開封後の巻回体収容箱を正面右上から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、巻回体収容箱の前板を外側正面から見た平面図である。
【
図4】
図4は、巻回体収容箱を製造するための中間体を示す平面図である。
【
図5】
図5は、裂け強度の測定方法を説明するためのカット痕の一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図5を参照して、巻回体収容箱の一実施形態を説明する。
[巻回体50R]
図1は、開封前の巻回体収容箱10である。
図2が示すように、巻回体収容箱10は、ラップフィルム巻回体(以下、単に巻回体50Rともいう)を備える。巻回体収容箱10は、1つの方向に延びる直方体状を有する。巻回体収容箱10は、例えばコートボール紙などの1枚の厚紙からなる中間体(
図4を参照)を罫線L,LT,LT2,LRで折り曲げて接着することによって製造される。
【0021】
巻回体50Rは、芯材となる紙製の筒体50Cと、ラップフィルム50とを備える。ロール状を有するラップフィルム50は、筒体50Cに巻き付けられている。筒体50Cの軸方向Aの長さは、ラップフィルム50の幅方向の長さよりも長い。筒体50Cの軸方向Aの両端は、巻回されたラップフィルム50のフィルム端から突出している。
【0022】
ラップフィルム50は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテンからなる群から選択されるいずれか1種類を原材料とするフィルム、もしくは、これらを組み合わせた多層フィルムであるが、これに限定されるものではない。ラップフィルム50は、特に裂けやすい性質を有した塩化ビニリデン系樹脂を主成分とすることが好ましい。塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を含むものであればよい。塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするラップフィルム50であれば、ラップフィルム50の縦裂けの抑制効果が顕著である。ラップフィルム50の厚さは、9μm以下でもよいし、8μm以下でもよい。
【0023】
ラップフィルム50の引裂強さは、ラップフィルム50の裂けやすさに影響する。ラップフィルム50の引裂強さは、JIS K 7128-2:1998に準拠したエレメンドルフ測定方法によって得られたラップフィルム50の縦方向における引裂強さと、ラップフィルム50の横方向における引裂強さとの平均値である。ラップフィルム50の引裂強さは、26mN以下でもよいし、23mN以下でもよい。ラップフィルム50の縦方向における引裂強さは、ラップフィルム50のMD方向における引裂強さである。ラップフィルム50の横方向における引裂強さは、ラップフィルム50のTD方向における引裂強さである。MD方向は、製造過程におけるラップフィルム50の流れ方向であって、ラップフィルム50の引き出し方向である。TD方向は、製造過程におけるラップフィルム50の流れ方向に垂直な方向であるラップフィルム50の幅方向である。ラップフィルム50の引裂強さをラップフィルム50の縦方向と横方向における引裂強さの平均値としたことは、ラップフィルム50の縦裂けの発生に、ラップフィルム50の縦方向と横方向との複合的な要因を含むからである。したがって、ラップフィルム50の縦裂け抑制の観点からは、ラップフィルム50の縦方向と横方向における引裂強さの平均値が重要になる。そして、ラップフィルム50の引裂強さが26mN以下であると一般的にラップフィルム50は縦裂けしやすくなるが、後述するラップフィルム50に形成されるカット痕におけるラップフィルム50の裂け強度およびラップフィルム50とニス塗布層とが所定の条件を満たすことで、引裂強さが26mN以下のラップフィルム50であっても効果的に縦裂けを抑制することができる。
【0024】
ラップフィルム50の原材料がポリ塩化ビニリデンである場合、10μmの厚さを有したラップフィルム50における引裂強さは、例えば33mN以上35mN以下である。一方、ラップフィルム50の原材料がポリ塩化ビニリデンである場合、9μmの厚さを有したラップフィルム50における引裂強さは、例えば23mN以上26mN以下である。
【0025】
[巻回体収容箱10]
巻回体収容箱10は、容器本体20と蓋体30とを備える。容器本体20は、上面が開口した直方体状を有する。容器本体20は、前板21、後板22、右脇板23、左脇板24、および、底板25を備える。右脇板23と、左脇板24とは、左右で一対の脇板を構成する。前板21、後板22、右脇板23、および、左脇板24は、底板25から立設し、1つの周壁を構成する。
【0026】
容器本体20と蓋体30とを構成する材料は、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、ダンボール、または複数の厚紙が積層された積層板でもよいし、1枚の厚紙でもよい。巻回体収容箱10の製造における取り扱いが容易である点から、容器本体20と蓋体30とを構成する材料は、コートボール紙などの板紙であることが好ましい。
【0027】
容器本体20の上面開口部である開口20Tは、周壁の上辺によって区画される。巻回体50Rは、開口20Tを通じて出し入れされる。巻回体50Rの軸方向Aは、巻回体収容箱10が延在する方向とほぼ平行である。
【0028】
以下、底板25に対する開口20Tの側を上側、開口20Tに対する底板25の側を下側として説明する。また、前板21に対する後板22の側を後側、後板22に対する前板21の側を前側として説明する。また、右脇板23に対する左脇板24の側を左側、および、左脇板24に対する右脇板23の側を右側として説明する。前板21から後板22に向かう方向は、前後方向DWである。底板25から開口20Tに向かう方向は、高さ方向DHである。左脇板24から右脇板23、または右脇板23から左脇板24に向かう方向は、長さ方向DLである。
【0029】
前板21、後板22、および底板25は、それぞれ長さ方向DLに延びる矩形板状を有する。前板21と後板22とは、前後方向DWに向かい合う。底板25の前辺は、前板21の下辺であり、底板25の後辺は、後板22の下辺である。右脇板23、および左脇板24は、矩形板状を有し、長さ方向DLに向かい合う。右脇板23の下辺は、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の右辺に繋がる。左脇板24の下辺もまた、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の左辺に繋がる。
【0030】
前板21は、主前板21Bと副前板21Aとを備える。主前板21Bと副前板21Aとは、前後方向DWに重なる。主前板21Bは、前板21の前面を構成する。前板21の前面は、前板21の表面(外表面)である。副前板21Aは、前板21の裏面を構成する。前板21の裏面は、容器本体20の内表面を構成する。副前板21Aは、主前板21Bの上辺である前板端辺21Tで主前板21Bに連接する。副前板21Aは、主前板21Bに対して前板端辺21Tで容器本体20の内側に折り曲げられている。
【0031】
前板21の前面には、ラップフィルム50を仮留めするためのニス塗布層である中央留め部21Sが配置されている。前板21の前面は、左右で一対のフラップ21Fを備える。フラップ21Fは、主前板21Bのなかの高さ方向DHの中央よりも前板端辺21T寄りで、長さ方向DLにおいて中央留め部21Sを挟むように位置する。フラップ21Fは、フラップ21Fの前面を備える。フラップ21Fの前面は、フラップ21Fの外表面である。フラップ21Fの前面には、ラップフィルム50を仮留めするためのニス塗布層であるフラップ留め部28(
図3を参照)が配置されている。
【0032】
フラップ21Fは、切り線21FCによって区切られる。切り線21FCは、主前板21Bにおける前板端辺21Tの近傍に両端を有した曲線状を有する。切り線21FCは、主前板21Bの前板端辺21T近傍の一端から近傍の他端に向けて底板25側に凸となる曲線状を有する。フラップ21Fは、前板端辺21Tのなかの一部分と、切り線21FCとによって囲まれる。フラップ21Fにおける長さ方向DLの長さの一例は、主前板21Bにおける長さ方向DLの長さの1/3以上1/2以下である。フラップ21Fにおける長さ方向DLの位置は、主前板21Bの長さ方向DLにおける中心を挟んで左右に形成されている。なお、切り線21FCは、主前板21Bにおける前板端辺21Tに両端を有した曲線状であってもよい。
【0033】
主前板21Bは、副前板21Aに対し前板端辺21Tで折り曲げられることによって、前板21のなかの前板端辺21T付近に、フラップ21Fの折り曲げを戻すように、板紙の復元力を作用させる。蓋体30を開けて開口20Tが開くとき、フラップ21Fは、容器本体20の前方に回動して前板21の前面から浮き上がる。前板21の前面から浮き上がるフラップ21Fは、開口20Tから引き出されて切断されたラップフィルム50を前板21の前面から浮き上がらせる。
【0034】
中央留め部21Sは、長さ方向DLに並ぶ複数の四角形状を有したニス塗布層を備える。中央留め部21Sの位置は、前板21の前面のなかで高さ方向DHの中央よりも前板端辺21T寄りであり、かつ、長さ方向DLの中央を含む。中央留め部21Sは、UV硬化性ニスで形成されることが好ましいが、ラップフィルム50を仮留めできるものであれば、これに限定されない。中央留め部21Sは、容器本体20の開口20Tから引き出されて前板21の前板端辺21Tから垂れ下がるラップフィルム50を前板21の前面に仮留めする。
【0035】
図3は、前板21の前面を容器本体20の外側から見た正面図である。
図3が示すように、フラップ留め部28は、フラップ21Fの前面に配置されたニス塗布層の一例である。フラップ留め部28は、容器本体20の開口20Tから引き出されて前板21の前板端辺21Tから垂れ下がり、フラップ21Fにより前板21の前面から浮き上がったラップフィルム50をフラップ21Fの前面に仮留めする。
【0036】
フラップ留め部28は、フラップ21Fの前面の少なくとも一部を覆う。フラップ留め部28は、塗布部を有した塗布パターンを備える。塗布パターンは、塗布部と非塗布部とを交互に配置したパターン、塗布部が非塗布部を囲むパターン、塗布部が長さ方向DLに延在するパターン、および全てのパターンから選択される少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つでもよい。フラップ留め部28は、フラップ21Fの前面全体を覆ってもよいし、フラップ21Fの前面における下端部を露出させるようにフラップ21Fの前面を覆ってもよい。なお、
図3に示す例は、フラップ21Fの前面の下端部が露出されるように、フラップ留め部28の下端がフラップ21Fの下端よりも高さ方向DHの上側に位置する。
【0037】
フラップ留め部28の下端は、フラップ21Fの下端に追従する形状を有してもよいし、フラップ21Fの下端とは異なる形状を有してもよい。なお、
図3には、フラップ21Fの下端が示す波形状に追従するように、フラップ留め部28の下端が波形状を有する例を示す。フラップ留め部28は、1つのフラップ21Fに1つずつ配置されてもよいし、1つのフラップ21Fに2つ以上ずつ配置されてもよい。1つのフラップ21Fに2つ以上のフラップ留め部28が配置される場合、2つ以上のフラップ留め部28は、長さ方向DLに並んでもよいし、高さ方向DHに並んでもよい。
【0038】
また、ニス塗布層は前板21の前面に塗布されていればよく、蓋体30が開口20Tを塞いだ閉蓋状態において、前板21の前面のうち、後述する蓋前板32Pと重なる領域に塗布されていればよい。蓋前板32Pと重なる領域の全体でもよいし、蓋前板32Pと重なる領域の一部のみであってもよい。
【0039】
フラップ留め部28は、UV(紫外線)硬化性ニスを乾燥したニス塗布層である。なお、フラップ留め部28は、UV硬化性ニスで形成されることが好ましいが、ラップフィルム50を仮留めできるものであれば、これに限定されない。
【0040】
ニス塗布層の後述のずり強度およびT型剥離強度は、ニス塗布層のUV照射時間、UV照射量、乾燥速度などの成膜条件、ニス塗布層の版深、ニス塗布層のパターン、およびニス成分の調整などで調整することができる。
【0041】
ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のずり強度は、下記条件1を満たす。フラップ留め部28が下記条件1を満たす場合、巻回体収容箱10のなかで巻回体50Rが動くとしても、フラップ留め部28による仮留めは、ラップフィルム50が巻回体収容箱10のなかに巻き戻ることを十分に抑える。
【0042】
(条件1)ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のずり強度が、5.0N/25mm以上である。ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のずり強度は、25mmの幅を有した短冊状のラップフィルム50と、フラップ留め部28を備える試験片とを用いて得られる測定値である。フラップ留め部28とラップフィルム50とのずり強度は、JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ、かつフラップ留め部28に対するラップフィルム50の引きはがし角度を0°に変更して得られる測定値である。
【0043】
ずり強度とは、ニス塗布層(フラップ留め部28)のサンプル片にラップフィルム50を付着させ、平行(せん断方向)にずらしたときの強度であって、0°における引きはがし粘着力である。これは、ラップフィルム50のずれにくさの指標である。ずり強度は、JIS Z-0237:2009「粘着テープ:粘着シート試験方法」の「180°引きはがし粘着力の測定」に準じ、かつ引きはがし角度を0°に変更して測定する。また、測定時のラップフィルム50は、幅25mmとし、ニス塗布層と、ラップフィルム50を固定する上部チャックとの間の距離を100±20mmとする。なお、ニス塗布層は、ラップフィルム50に圧着される幅を25mmにすればよいため、ラップフィルム50の幅が25mmであれば、ニス塗布層の幅は25mmよりも大きくてもよい。
【0044】
ここで、JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」には、引きはがし粘着力の測定として、180°引きはがし粘着力と、90°引きはがし粘着力が記載されている。180°引きはがし粘着力は、試験片(ラップフィルム50)を試験板(ニス塗布層のサンプル片)に圧着し、測定治具の下部チャックの方に延びた試験片を、試験板に圧着していない試験片の面に重なるように180°折り返して試験片の端を上部チャックで把持し、試験板を鉛直方向に移動させることにより測定したものである。90°引きはがし粘着力は、試験片(ラップフィルム50)を圧着した試験板(ニス塗布層のサンプル片)を、貼着した面が上を向き水平に延びるように測定治具にセットし、試験片の端を測定治具の上部チャックで固定し、試験板をセットした取り付け治具を鉛直方向に移動させて、試験片を90°で引っ張ることにより測定したものである。本明細書で定義するずり強度を、JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に類推してみると、0°引きはがし粘着力ということができる。
【0045】
ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のずり強度は、5.0N/25mm以上が好ましい。より好ましくは、8N/25mm以上35N以下、さらに好ましくは10N/25mm以上20N/25mm以下である。
【0046】
ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のT型剥離強度は、下記条件2を満たす。フラップ留め部28が下記条件2を満たす場合、フラップ留め部28に仮留めされたラップフィルム50がフラップ留め部28から引き上げられる際に、ラップフィルム50をフラップ留め部28から円滑に引き剥がすことができる。
【0047】
(条件2)ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のT型剥離強度が、0.04N/25mm未満である。ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のT型剥離強度は、25mmの幅を有した短冊状のラップフィルム50と、フラップ留め部28を備える試験片とを用いて得られる測定値である。フラップ留め部28とラップフィルム50とのT型剥離強度は、JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ、かつフラップ留め部28に対するラップフィルム50の引きはがし角度を90°に設定して得られる測定値である。
【0048】
T型剥離強度とは、ニス塗布層(フラップ留め部28)のサンプル片にラップフィルム50を付着させ、ニス塗布層のサンプル片に対してラップフィルム50を垂直に引きはがしたときの剥離強度をいう。T型剥離強度は、JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」における90°引きはがし粘着力である。これは、ラップフィルム50の引きはがしやすさの指標である。測定は、JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」の「90°引きはがし粘着力の測定」に準じ、測定時のラップフィルム50は、幅25mmとし、ニス塗布層と、ラップフィルム50を固定する上部チャックとの間の距離を100±20mmとする。なお、ニス塗布層は、ラップフィルム50に圧着される幅を25mmにすればよいため、ラップフィルム50の幅が25mmであれば、ニス塗布層の幅は25mmよりも大きくてもよい。
【0049】
ラップフィルム50に対するフラップ留め部28のT型剥離強度は、0.04N/25mm未満が好ましい。より好ましくは、0.005N/25mm以上0.04N/25mm未満、さらに好ましくは、0.01N/25mm以上0.04N/25mm未満である。
【0050】
図2に戻り、副前板21Aの上部は、前後方向DWに延びる規制片3R,4Rを備える。規制片3R,4Rは、副前板21Aの上辺である前板端辺21Tの左右両端部に位置する。規制片3R,4Rは、副前板21Aに対して罫線LR(
図4を参照)で折り曲げられ、前板端辺21Tから後板22に向けて突き出ている。規制片3R,4Rは、ラップフィルム50を容器本体20から引き出すときに、巻回体50Rの筒体50Cに前方上側から当たる。これによって、規制片3R,4Rは、巻回体50Rが容器本体20から飛び出すことを抑える。
【0051】
右脇板23は、右フラップ13F,23F,53Fを備え、13Fおよび23Fに53Fが接着されて構成される。右脇板23は、前後方向DWに延びる蓋係止片3Tを備える。蓋係止片3Tは、右脇板23の上辺3Eに接続される。蓋係止片3Tは、右脇板23の上辺3E(罫線LT2:
図4を参照)で容器本体20の右側に折り曲げられて、容器本体20の右側に突き出ている。蓋係止片3Tは、前後方向DWに延在している。
【0052】
左脇板24は、左フラップ14F,24F,54Fを備え、14Fおよび24Fに54Fが接着されて構成される。左脇板24は、前後方向DWに延びる蓋係止片4Tを備える。蓋係止片4Tは、左脇板24の上辺4Eに接続される。蓋係止片4Tは、左脇板24の上辺4E(罫線LT2:
図4を参照)で容器本体20の左側に折り曲げられて、容器本体20の左側に突き出ている。蓋係止片4Tは、前後方向DWに延在している。
【0053】
[蓋体30]
図1に戻り、蓋体30は、蓋板31、掩蓋片32、蓋体右脇板33、および蓋体左脇板34を備える。蓋板31は、後板22の上端辺22T(
図2を参照)に回転可能に連接する。蓋板31は、後板22の上端辺22Tを軸として、容器本体20に対して回転し、容器本体20の開口20Tを開閉する。
【0054】
掩蓋片32と前板21とは、相互にほぼ同形の矩形板状を有する。掩蓋片32の上辺は、蓋板31の前辺である。掩蓋片32は、蓋体30が開口20Tを塞いだ閉蓋状態で、前板21の前面全体を覆う。掩蓋片32は、高さ方向DHの中間よりも下方に、半円状を有した複数の切り込み部32Cを備える。切り込み部32Cの内側面は、前板21の前面に接着される。
【0055】
掩蓋片32における高さ方向DHのほぼ中央は、長さ方向DLの全幅にわたるミシン目線32Mを備える。ミシン目線32Mは、下方に向けて突き出るV形状を有する。なお、ミシン目線32Mは、下方に向けて突き出る円弧状を有してもよい。ミシン目線32Mの右端は、ミシン目線32Mに沿って掩蓋片32を上下に分割するための開封端32Nである。
【0056】
開封端32Nが前方に引っ張られるとき、掩蓋片32はミシン目線32Mで切断される。また、前板21と掩蓋片32との接着は、切り込み部32Cで引き剥がされる。これにより、掩蓋片32は、掩蓋片32の長さ方向DLの全幅が、ミシン目線32Mを境にして、下側と上側とに分割される。掩蓋片32のなかでミシン目線32Mに区画された上側は、蓋前板32Pである。掩蓋片32のなかでミシン目線32Mに区画された下側は、切り取り片32Kである。
【0057】
図2に戻り、切り取り片32Kは、ラップフィルム50の使用の開始に際して、容器本体20から切り離される。切り取り片32Kが掩蓋片32から切り離されると、蓋前板32Pの下端辺から、切断刃35の刃先全体が露出する。そして、蓋体30が後板22の上端辺22Tで回転することによって、容器本体20の開口20Tが開く。
【0058】
蓋前板32Pは、蓋体30が開口20Tを塞いだ閉蓋状態で、蓋板31の前辺から下方に向けて延びる板状を有し、前板21の前面上部を覆う。蓋前板32Pの高さ方向DHでの幅は、長さ方向DLの両端部を除き、長さ方向DLの中央部で最も大きく、長さ方向DLの中央部からそれぞれの端部に移動するにつれて、高さ方向DHの幅が短くなる。蓋前板32Pの内表面には、切断刃35が接合される。
【0059】
切断刃35は、長さ方向DLに並ぶ刃先を有した鋸刃状を有する。切断刃35は、蓋体30が開口20Tを塞いだ閉蓋状態で、複数の刃先が蓋前板32Pから下方に突出するように、蓋前板32Pに接合される。蓋前板32Pに切断刃35を接合する方法は、例えば、蓋前板32Pと切断刃35との間にシーラント層や接着層を介在させて、超音波接着によって行われる。また、蓋前板32Pに切断刃35を接合する方法は、切断刃35を構成する刃材樹脂層にシーラント層をラミネートした構成とすることもできる。
【0060】
切断刃35を構成する材料は、特に限定されず、例えば、樹脂、あるいは、金属である。切断刃35は、例えば、樹脂と添加剤とを含み、添加剤の種類や、その添加量によって、切断刃35の剛性や、蓋前板32Pに対する切断刃35の接着性を調整することができる。
【0061】
切断刃35を構成する樹脂は、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PES(ポリエーテルサルフォン)樹脂である。切断刃35を構成する添加剤は、例えば、オレフィン系樹脂などの樹脂や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルクなどの無機材料である。シーラント層を構成する樹脂は、例えば、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリオレフィンなどが使用される。
【0062】
切断刃35の刃先は、蓋体30が開口20Tを塞いだ閉蓋状態で、下方に向けて突き出るV形状を有する。すなわち、切断刃35の刃先は、長さ方向DLにおける中央部と、長さ方向DLにおいて中央部を挟む両端部と、を含んで構成されると共に、中央部が閉蓋状態において両端部よりも底板25に向けて突き出るV字状を有する。切断刃35の中央部における長さ方向DLの長さは、例えば、切断刃35の全体における長さ方向DLの長さの1/3である。なお、切断刃35は、中央部が閉蓋状態において両端部よりも下方に向けて突き出る円弧状を有してもよい。
【0063】
蓋体右脇板33は、蓋右脇板33Fと接合片323とを備える。蓋体左脇板34は、蓋左脇板34F,接合片324を備える。蓋右脇板33Fは、蓋板31と蓋右脇板33Fとの交線である短辺で蓋板31に連接する。蓋左脇板34Fは、蓋板31と蓋左脇板34Fとの交線である短辺で蓋板31に連接する。
【0064】
蓋体右脇板33と蓋体左脇板34とにおいて、各蓋脇板33F,34Fは、蓋体30の外表面を構成する。各接合片323,324は、蓋体30の内表面を構成する。蓋体右脇板33と蓋体左脇板34とは、蓋体30が開口20Tを塞いだ閉蓋状態で、右脇板23の外表面上部を覆い、また、左脇板24の外表面上部を覆う。
【0065】
接合片323は、蓋板31と蓋右脇板33Fとの交線である短辺の間に隙間を空けて位置する。接合片324もまた、蓋板31と蓋左脇板34Fとの交線である短辺の間に隙間を空けて位置する。これにより、接合片323,324は、蓋板31との間に隙間を空けて位置し、蓋体右脇板33、蓋体左脇板34の内表面に、段部33S,34Sを形成する。上述した各蓋係止片3T,4Tは、蓋体30が開口20Tを塞ぐとき、段部33S,34Sに嵌まり込み、クリック音を発生させて、段部33S,34Sと係合する。各蓋係止片3T,4Tは、段部33S,34Sとの係合を通じ、蓋板31が閉鎖時に浮き上がることを抑える。
【0066】
[裂け強度の測定方法]
図5は、カット痕50Tにおけるラップフィルム50の裂け強度の測定方法を示す。裂け強度の測定方法は、(i)カット痕50Tの形成、(ii)カット痕50Tに対する端テープTEと中央テープTCの貼り着け、および(iii)中央テープTCの引き離しを含む。
【0067】
(i)カット痕50Tの形成
まず、巻回体50Rが収容された巻回体収容箱10の長さ方向DLにおける中央部付近を把持し、蓋体30を開けた容器本体20からラップフィルム50を引き出して蓋体30を閉じる。次に、前板21の前面と蓋前板32Pとに挟まれたラップフィルム50を切断刃35によって切断し、これによってラップフィルム50にカット痕50Tを形成する。この際、前板21の前面にラップフィルム50を介して蓋前板32Pを押し付けて、切断刃35に対するラップフィルム50の位置を固定する。そして、長さ方向DLに延びる回転軸を中心として巻回体収容箱10を回転させる。なお、ラップフィルム50をカットする方式は、V字状の切断刃35を用いた中央カットでもよいし、V字状の切断刃35を用いた端カットでもよいし、直線状の切断刃35を用いた端カットでもよい。こうしたラップフィルム50の切断方法は、ラップフィルム50の切断を円滑に進めることができるように切断刃35の形状に合わせて巻回体収容箱10ごとに推奨されており、カット痕50Tは、推奨される切断方法により形成する。
【0068】
例えば、切断刃35が、長さ方向DLにおける中央部と、長さ方向DLにおいて中央部を挟む両端部と、を含んで構成され、切断刃35の中央部の刃先が、閉蓋状態において両端部よりも底板25に向けて突き出るV字状を有する場合は、まず、巻回体収容箱10の長さ方向DLにおける中央部付近を把持し、蓋体30を開けた容器本体20からラップフィルム50を引き出して蓋体30を閉じる。次に、前板21の前面にラップフィルム50を介して蓋前板32Pを押し付けて、切断刃35に対するラップフィルム50の位置を固定する。続いて、長さ方向DLに延びる回転軸を中心として巻回体収容箱10を回転させる。そして、ラップフィルム50における長さ方向DLの中央からカット痕50Tを形成し始めて、ラップフィルム50における長さ方向DLの中央から両端部に向けてカット痕50Tを形成する。言い換えれば、閉蓋状態の切断刃35における刃先のうち最も底板25に近い下端からカット痕50Tを形成し始めて、閉蓋状態の切断刃35における刃先のうち蓋板31に近い上端に向けてカット痕50Tを形成する。
【0069】
また、例えば、切断刃35の刃先が閉蓋状態で長さ方向DLに延びる直線状を有する場合は、まず、巻回体収容箱10の長さ方向DLにおける中央部付近を把持し、蓋体30を開けた容器本体20からラップフィルム50を引き出して蓋体30を閉じる。次に、前板21の前面にラップフィルム50を介して蓋前板32Pを押し付けて、切断刃35に対するラップフィルム50の位置を固定する。続いて、ラップフィルム50における長さ方向DLの一端を切断刃35の歯先から歯元に向けて引っ張る。そして、ラップフィルム50における長さ方向DLの一端からカット痕50Tを形成し始めて、ラップフィルム50における長さ方向DLの他端に向けてカット痕50Tを形成する。すなわち、閉蓋状態の切断刃35における長さ方向DLの一端からカット痕50Tを形成し始めて、閉蓋状態の切断刃35における長さ方向DLの他端に向けてカット痕50Tを形成する。
【0070】
図5に示すカット痕50Tは、山部50T1と谷部50T2とを長さ方向DLに交互に繰り返す。1つの山部50T1は、長さ方向DLに接続する2つの斜辺を含む。1つの谷部50T2は、1つの山部50T1の一方の斜辺と、当該一方の斜辺に接続する他の山部50T1の一方の斜辺とを含む。
カット痕50Tは
図5の形状に限定されない。例えば、山部50T1を構成する2つの斜辺は曲線状であってもよいし、一方が直線状で他方が曲線状であってもよい。また、山部50T1の頂部に平坦部を有していてもよいし、谷部50T2に平坦部を有していてもよい。また、各々がそれらの組み合わせであってもよい。
【0071】
(ii)テープTE,TCの貼りつけ
カット痕50Tを形成した巻回体50Rを巻回体収容箱10から取り出し、カット痕50Tを含むラップフィルム50の先端部50S1にシワが形成されず、かつカット痕50Tが巻回体50Rの表面に配置されるように、巻回体50Rにラップフィルム50を巻き戻す。これにより、カット痕50Tを含むラップフィルム50の先端部50S1が巻回体50Rの表面に配置される。カット痕50Tは、巻回体50Rにおける最終巻きのラップフィルム50の先端部50S1における末端部となる。一方、巻回体50Rの表面に配置されるカット痕50Tを超えた部分(1巻目の開始部分)は基端部50S2となる。
【0072】
次に、カット痕50Tのうち測定するひとつの谷部に隣接する幅方向外側の山部50T1の頂部に端テープTEの幅方向における端部が架かるように、端テープTEを配置する。このとき、端テープTEの幅方向における端部の位置は、山部50T1の頂部から、測定するひとつの谷部の最も低い点までの幅方向における長さの30%以下であれば、山部50T1の頂部を超えてもよい。ここでいう頂部とは、山部50T1の中で最も突出している部分である。また、端テープTEの幅方向とは、ラップフィルム50の幅方向と同じ方向である。また、山部50T1の頂部から、測定するひとつの谷部の最も低い点までの幅方向における長さは、山部50T1の頂部を通る水平方向における仮想線と垂直に交わる仮想線と、谷部の最も低い点を通る水平方向における仮想線と垂直に交わる仮想線との間の長さである。そして、端テープTEが測定する谷部50T2に隣接する山部50T1の頂部から幅方向外側を十分に覆い測定の際にはがれない程度に、端テープTEを先端部50S1から基端部50S2にわたり巻回体50Rの周方向に貼りつける。この際、端テープTEは、山部50T1の頂部からカット痕50Tにおける歯底部分に対して垂直に延びるようにする。また、端テープTEの幅方向における長さは、以下に記載する中央テープTCと同じ幅としてもよい。カット痕50Tの測定個所はフィルムの幅全体で均等に評価できるよう幅方向に5等分してそれぞれのエリアで測定を行う。なお、端テープTEは、厚みが0.058mmの粘着テープ(商品名:スコッチ メンディングテープ810、住友スリーエム社製)を適切な幅に切って使用した。次に、先に貼りつけた端テープTEと次に貼りつける他の端テープTEとの間に2つの山部50T1と3つの谷部50T2とを配置する。2つ目の端テープTEも1つ目と同様に、測定する谷部に隣接する幅方向外側の山部50T1の頂部に端テープTEの幅方向端部が架かるように配置し、端テープTEを先端部50S1から基端部50S2にわたり巻回体50Rの周方向に貼りつける。端テープTEの幅方向における端部の位置は、山部50T1の頂部から、測定するひとつの谷部の最も低い点までの幅方向における長さの30%以下であれば、山部50T1の頂部を超えてもよい。これにより、長さ方向DLに並ぶ1番目の山部50T1を1つの端テープTEによって巻回体50Rの表面に固定し、かつ4番目の山部50T1を他の端テープTEによって巻回体50Rの表面に固定する。
【0073】
次に、長さ方向DLに並ぶ2つの山部50T1に架かる幅を有する1つの中央テープTCを準備する。なお、中央テープTCも上述と同じテープを使用する。そして、2つの端テープTEの間に位置する2つの山部50T1の頂部を中央テープTCの各端部が覆うように、また、巻回体50Rの周方向に延びる中央テープTCの一端部先端5mmを、カット痕50Tを含むラップフィルム50の先端部50S1のみに貼りつける。このとき、中央テープTCの幅方向における端部の位置は、それぞれの山部50T1の頂部から、測定する谷部50T2の最も低い点までの幅方向における長さの30%以下であれば、それぞれの端部が山部50T1の頂部を超えてもよい。中央テープTCの長さは50~60mmとする。テープ幅は測定するカット痕50Tに合わせた適切な幅に設定する。また、
図5のように、中央テープTCは、先端部50S1に貼りつけた一端部以外の他部(斜線部)が、先端部50S1のテープが貼りついていない部分および巻回体50Rの表面(基端部50S2)に触れないようにする。測定しやすいように中央テープTCの不要な粘着面は紙やテープなどであらかじめ覆っておいてもよい。これにより、カット痕50Tは、端テープTEと他の端テープTEとの間に3つの谷部50T2が存在することになり、3つの谷部50T2のうち長さ方向DLに並ぶ1番目の谷部50T2が1つの端テープTEと中央テープTCとによって挟まれ、かつ3番目の谷部50T2が他の端テープTEと中央テープTCとによって挟まれる。
【0074】
(iii)中央テープTCの引き離し
巻回体50Rの表面からラップフィルム50の先端部50S1を引き剥がす。このとき、巻回体50Rの表面における先端部50S1に対して中央テープTCの引き剥がし方向が法線方向になるように巻回体50Rを配置する。そして、先端部50S1を通る法線方向に向けて、中央テープTCの他端部を引っ張る。この際、巻回体50Rの表面における先端部50S1と引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ テンシロン万能材料試験機RTG-1210)のチャックとの距離は40mm±5mmとする。中央テープTCをチャックにセットする場合は、貼り付けた2つの山部50T1の間の谷部50T2や基端部50S2側に中央テープTCが接着していないことを確認する。そして、引張試験機による等速試験方法を用いて、200mm/minの速度で中央テープTCの他端部を引っ張る。そして、カット痕50Tがラップフィルム50の幅方向と交差する方向に裂けたときの引張荷重値のピークを1つの標本値として測定する。
【0075】
ラップフィルム50の裂け強度の算出は、まず、(i)カット痕50Tの形成、(ii)端テープTEと中央テープTCの貼り着け、および(iii)中央テープTCの引き離しを10回にわたり繰り返して、1つの巻回体収容箱10から10個の標本値を得る。そして、10個の標本値の平均値との差が0.2N以上である標本値を異常値として除外し、異常値が除外された標本値の平均値をラップフィルム50の裂け強度として算出する。
【0076】
ラップフィルム50の裂け強度は、巻回体収容箱10におけるラップフィルム50の縦裂けの生じやすさを示す指標値である。巻回体収容箱10は、裂け強度について下記条件3を満たす。
【0077】
(条件3)ラップフィルム50が切断刃35で切断されたときにラップフィルム50に形成されるカット痕50Tにおけるラップフィルム50の裂け強度は、0.3N以下である。
【0078】
上記裂け強度が0.3N以下であると、ラップフィルム50は縦裂けしやすくなる。しかしながら、条件1および条件2を満たすニス塗布層であれば、ラップフィルム50の裂け強度が0.3N以下であっても、巻回体収容箱10はラップフィルム50の縦裂けを抑制することができる。
【0079】
[試験例]
[裂け強度評価]
試験例1から試験例3の巻回体収容箱10は、ニュークレラップ(登録商標)30cm×50m(株式会社クレハ製)を用いた。また、試験例1から試験例3の巻回体収容箱10には、長さ方向DLにおける全幅形状がV字状であり、長さ方向DLに接続する2つの斜辺から構成される山部、および、当該山部の一方の斜辺と、当該一方の斜辺に接続する他の山部の一方の斜辺から構成される谷部を有し、谷部に屈折点を有さない(1つの山部の一方の斜辺と、当該一方の斜辺に接続する他の山部の一方の斜辺が、円弧により接続される)樹脂製の切断刃35を設けた。
切断刃35は、以下の構成を有していてもよい。
・1つの山部(A)の一方の斜辺と、当該(A)の一方の斜辺に接続する他の山部(B)の一方の斜辺を接続する円弧の曲率半径Rが0.5mm以上1.0mm以下である。
・1つの山部(A)の一方の斜辺と、当該(A)の一方の斜辺に接続する他の山部(B)の一方の斜辺との交わりで歯底の最も低い位置と、他の山部(B)の他方の斜辺と、当該(B)の他方の斜辺に接続する他の山部(C)の一方の斜辺との交わりで歯底の最も低い位置とを結んだ直線を歯底線としたときに、歯の頂点から歯底線に対して垂直におろした距離を歯高とし、歯高が0.88mm以上1.55mm以下である。
・隣り合う歯山の頂点を直線で結んだ距離を歯間ピッチとした場合、歯間ピッチが1.30mm以上3.25mm以下である。
【0080】
試験例1の巻回体収容箱10に、厚みが7.5μmのラップフィルム50を収容して試験例1(試験例1Aから試験例1D)の巻回体収容箱10を得た。試験例2の巻回体収容箱10に、厚みが9.0μmのラップフィルム50を収容して試験例2(試験例2Aから試験例2H)の巻回体収容箱10を得た。試験例3の巻回体収容箱10には厚みが10.2μmのラップフィルム50を収容して試験例3(試験例3Aから試験例3C)の巻回体収容箱10を得た。いずれもラップフィルム50は、ポリ塩化ビニリデンフィルムを用いた。
【0081】
試験例4の巻回体収容箱10は、厚紙を使用し、幅315mm、奥行き44mmおよび高さ44mmの略直方体とした。また、試験例4の巻回体収容箱10には、長さ方向DLにおける全幅形状が直線状であり、長さ方向DLに接続する2つの斜辺から構成される山部、および、当該1つの山部の一方の斜辺と、当該一方の斜辺に接続する他の山部の一方の斜辺から構成される谷部を有し、谷部に屈折点を有する(1つの山部の一方の斜辺と、当該斜辺に接続する他の山部の一方の斜辺が、直線同士の接続として角度を有するように接続される)金属製の切断刃35を設けた。
切断刃35は、以下の構成を有してもよい。
・1つの山部の一方の斜辺と、当該一方の斜辺に接続する他の山部の一方の斜辺から構成される谷部の交点の角度を歯谷角とした場合、歯谷角が75°以上130°以下である。
・歯高が1.2mm以上1.7mm以下である。
・歯間ピッチが1.8mm以上3.25mm以下である。
【0082】
試験例4の巻回体収容箱10に、厚みが7.5μm(試験例4A)、9.0μm(試験例4B)、10.2μm(試験例4C)のラップフィルム50を収容して試験例4Aから試験例4Cの巻回体収容箱10を得た。いずれもラップフィルム50は、ポリ塩化ビニリデンフィルムを用いた。
【0083】
JIS K 7128-2:1998に準拠したエレメンドルフ測定方法を用い、各厚さにおける、MD方向の引裂強さとTD方向の引裂強さをそれぞれ5回測定し、平均値を算出した。厚さが10.2μmのラップフィルム50における引裂強さの平均値は35mNであった。厚さが9.0μmのラップフィルム50における引裂強さの平均値は26mNであった。厚さが7.5μmのラップフィルム50における引裂強さの平均値は21mNであった。
【0084】
試験例1から試験例3のラップフィルム50を、上述した巻回体収容箱10を回転させる切断方法を用いて切断した。そして、長さ方向DLの中央から両端部に向けて延びる、試験例1Aから試験例3Cのカット痕50Tを得た。
【0085】
試験例4のラップフィルム50を、上述した長さ方向DLの一端を切断刃35の歯先から歯元に向けて引っ張る切断方法を用いて切断した。そして、ラップフィルム50における長さ方向DLの一端から他端に向けて延びる、試験例4Aから試験例4Cのカット痕50Tを得た。
【0086】
上述した裂け強度の測定方法を用い、試験例1から3の各厚みにおける裂け強度を測定した。それぞれの裂け強度は、試験例1の厚み:7.5μmで0.15N、試験例2の厚み:9μmで0.23N、試験例3の厚み:10.2μmで0.35Nであった。また、試験例4の各厚みにおける裂け強度は、試験例4A(厚み:7.5μm)で0.09N、試験例4B(厚み:9μm)で0.19N、試験例4C(厚み:10.2μm)で0.22Nであった。
【0087】
[ずり強度およびT型剥離強度の測定]
(ニス塗布層の作製)
UV硬化性樹脂からなるSPニス(東洋インキ社製)と希釈溶剤(東洋インキ社製)とを10:3の容積割合で混合したものを塗布液とした。ここで用いたSPニスは、フレキソ印刷機用紫外線硬化型グロスニスである。塗布液を
図3に示す印刷パターンで巻回体収容箱10に塗布した。塗布液に高圧水銀ランプを照射する時間を調整して塗布膜を硬化させ、相互に異なるずり強度、およびT型剥離強度を有したニス塗布層を備える巻回体収容箱10を作製した。
【0088】
(サンプル片)
フラップ21Fからニス塗布層を有する部分を切り出し、ニス塗布層のサンプル片とした。切り出しの幅は、巻回体収容箱10の長さ方向DLにおいて25mmとし、高さ方向DHの高さはニス塗布層が充分に確保できる高さとし、各試験例では20mmとした。切り出した部分のニス塗布層のパターンは、ベタ塗りである。切りだし部分の幅25mmの選定は、切り取ったときにニス塗布層が存在する領域から選択した。具体的には、ニス塗布層が測定幅全幅にわたって連続して存在する領域から選択した。
【0089】
ラップフィルム(株式会社クレハ製、商品名:NEWクレラップ(登録商標))から、幅が25mm、長さが150mmの大きさを有するラップフィルム50のサンプル片を切り出した。このとき、サンプル片の長さ方向をフィルムの流れ方向(引き出し方向)に一致させた。長さ方向の一端側につかみ代として紙テープ(幅25mm、長さ20mm)を貼り付けた。このとき、紙テープの幅方向とラップフィルム50のサンプル片の幅方向を一致させて貼り付けた。なお、ずり強度とT型剥離強度を測定する室内環境は、23℃、50%RHの条件とした。
【0090】
(サンプル片の圧着)
ニス塗布層が上を向くようにニス塗布層のサンプル片を鉄板の上に置き、両面テープにより鉄板に固定した。次に、ラップフィルム50のサンプル片の長さ方向の端のうち、紙テープを貼り付けた端とは反対側の端部分を、ラップフィルム50のサンプル片の幅25mmとニス塗布層のサンプル片の幅25mmとが一致する方向で、紙テープと、ニス塗布層との間の距離が100±20mmとなるようにニス塗布層に被せた。そして、ニス塗布層のサンプル片の全面がラップフィルム50のサンプル片で被せられているように、ラップフィルム50のサンプル片を配置した。なお、ニス塗布層のサンプル片に密着するラップフィルム50のサンプル片の面は、巻回体50Rの径方向の内側に向く面とした。次いで、JIS Z-0237:2009に記載の2kgのローラー圧着装置を用いて、ローラーをラップフィルム50のサンプル片の幅方向に転がし、ラップフィルム50のサンプル片とニス塗布層のサンプル片とを圧着させ、測定用サンプル片を作製した。
【0091】
(ずり強度の測定)
株式会社エー・アンド・デイ社製テンシロン万能材料試験機(RTG-1210)に測定用サンプル片をセットした。この際、測定用サンプル片を貼着した面の法線が水平方向を向くように、鉄板をテンシロン(下方側)で挟んだ。また、測定用サンプル片におけるラップフィルム50のサンプル片の紙テープ側をテンシロン(上方側)で挟んだ。このとき、ニス塗布層と、テンシロン(上方側)のチャックとの間の距離は100±20mmであった。そして、試験環境を23℃、50%RHとし、試験速度を300mm/minとして、ずり強度を3回測定し、ずり強度の平均値を測定値として求めた。なお、ラップフィルム50のサンプル片が極端に低い値で切れた場合は、ラップフィルム50のサンプル片の端面が荒れていると判断し、平均値を求める母集団から除外した。
【0092】
(T型剥離強度の測定)
株式会社エー・アンド・デイ社製テンシロン万能材料試験機(RTG-1210)に測定用サンプル片をセットした。この際、測定用サンプル片を貼着した面の法線が上方向を向くように、鉄板を台に固定し、測定用サンプル片におけるラップフィルム50のサンプル片の紙テープ側をテンシロン(上方側)で挟んだ。このとき、ニス塗布層と、テンシロン(上方側)のチャックとの間の距離は100±20mmであった。そして、試験環境を23℃、50%RHとし、引っ張り速度を300mm/minとしてT型剥離試験を3回行い、T型剥離強度の平均値を測定値として求めた。
【0093】
[縦裂け評価,巻き戻り評価、摘まみやすさ評価]
各試験例のラップフィルム50における裂け強度、および巻回体収容箱10におけるずり強度、およびT型剥離強度を組み合わせて、試験例1A~試験例4Cのサンプルを作製した。
【0094】
巻回体収容箱10に推奨される切断方法を用いてラップフィルム50の切断を行うことができる10名のモニターで評価を行った。10名のモニターは、「ラップフィルム50を摘まむ、ラップフィルム50を引き出す、ラップフィルム50を切断する」の一連の作業を繰り返して、1つのサンプル用の巻回体収容箱10につき50回切断を行った。この際、ラップフィルム50を摘まむときにラップフィルム50が摘まみやすいか否かの官能評価を行った。また、ラップフィルム50の引き出しにおいて、ラップフィルム50を摘まむときにラップフィルム50に縦裂けが生じるか否かを検出した。また、ラップフィルム50の切断において、ラップフィルム50の先端部50S1が容器本体20のなかに入り込むか否か、すなわちラップフィルム50が巻き戻るか否かを検出した。
【0095】
各試験例のサンプルにおける裂け強度、ずり強度、T型剥離強度の値と、モニターによる試験結果を表1から表4に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【表4】
表1から表4は、各試験例において、摘まみやすさの官能評価、巻き戻り発生有無および縦裂け発生有無の結果をまとめた表で、各評価方法は次の通りである。摘まみやすさについて、各モニターがラップフィルム50を摘まんだときに、摘まみやすいを5点、やや摘まみやすいを4点、普通を3点、やや摘まみにくいを2点、摘まみにくいを1点として、50回行った合計点から各モニターの平均値を算出した。次に、各モニターの平均値を合計して10名のモニター平均値を算出した。モニター平均値が4.5以上を「◎」、3.5以上4.5未満を「〇」、2.5以上3.5未満を「△」、2.5未満を「×」とした。巻き戻り発生有無について、モニター1名につき50回評価を行ったのでモニター10名で合計500回の評価とし、「◎」は巻き戻りの発生回数が500回中で0回、「〇」は巻き戻りの発生回数が500回中で1~5回、「×」は巻き戻りの発生回数が500回中で6回以上とした。縦裂け発生有無について、巻き戻り評価と同様に、「◎」は縦裂けの発生回数が500回中で0回、「〇」は縦裂けの発生回数が500回中で1~5回、「×」は縦裂けの発生回数が500回中で6回以上とした。
【0100】
表1から表3において、ラップフィルム50の裂け強度は、試験例1A~試験例2Hのサンプルにおいて、いずれも0.3N以下である。一方、試験例3A~試験例3Cのサンプルは、ラップフィルム50の裂け強度が0.3Nを超える。また、試験例1A~試験例2D、および各試験例2G、2H、3Cのサンプルは、いずれもずり強度が5.0N/25mm以上である。いずれのサンプルにおいても巻き戻り発生の評価は「◎」または「〇」であり、巻き戻り発生回数は500回の試験中0回または1~5回以内に抑えられた。これに対し、各試験例2E、2Fおよび各試験例3A、3Bのサンプルは、いずれもずり強度が5.0N/25mm未満である。いずれのサンプルにおいても巻き戻り発生の評価が「×」であり、巻き戻りが500回の試験中6回以上発生した。これにより、ずり強度を5.0N/25mm以上とすることで、ラップフィルム50が容器本体20のなかに入り込む巻き戻りを抑制することができる。
【0101】
また、表1から表3において、試験例1A~試験例2E、試験例3Aのサンプルは、いずれもT型剥離強度が0.04N/25mm未満である。いずれのサンプルにおいても縦裂け発生の評価は「◎」または「〇」であり、縦裂け発生回数は500回の試験中0回または1~5回以内に抑えられた。また、試験例1A~試験例2E、試験例3Aのサンプルは、いずれのサンプルにおいても摘まみやすさの官能評価は「◎」または「〇」であった。これに対し、試験例2F~試験例2Hのサンプルは、いずれもT型剥離強度が0.04N/25mm以上である。いずれのサンプルにおいても縦裂け発生の評価が「×」であり、縦裂けが500回の試験中6回以上発生した。また、摘まみやすさの官能評価も「×」であった。これにより、T型剥離強度を0.04N/25mm未満とすることで、ラップフィルム50の縦裂けを抑制することができ、ラップフィルム50を摘まみやすくすることができる。
【0102】
ここで、試験例3Bは、T型剥離強度が0.04N/25mm以上であるにもかかわらず、縦裂け発生の評価が「〇」である。これは、ラップフィルム50の裂け強度が0.3Nを超えているため、T型剥離強度が0.04N/25mm以上であっても、縦裂けの発生が抑制できたものといえる。一方で、摘まみやすさの官能評価は「△」であり、T型剥離強度が0.04N/25mm以上であると、ラップフィルム50が摘まみにくくなることを示す。また、試験例3Cは、T型剥離強度が同じく0.04N/25mm以上であるが、縦裂け発生の評価は「×」である。これは、ラップフィルム50の裂け強度が0.3Nを超えていても、T型剥離強度が一定以上高い数値になると、縦裂けを抑制できなくなるといえる。また、摘まみやすさの官能評価も「×」になり、T型剥離強度が一定以上高い数値になると、ニス塗布層からラップフィルム50を剥がしにくくなるため、ラップフィルム50は摘まみにくくなるといえる。
【0103】
また、表4において、試験例4A~試験例4Cは、谷部に屈折点を有する切断刃35で切断したため、ラップフィルム50の裂け強度が試験例1A~試験例3Cの試験と同じ厚みで測定した裂け強度に比べて低くなっていると考えられ、いずれの試験例も裂け強度は0.3N以下である。そして、いずれの試験例もずり強度は5.0N/25mm以上、T型剥離強度が0.04N/25mm未満であり、巻き戻り発生の評価、縦裂け発生の評価、摘まみやすさの官能評価とも「◎」または「〇」である。これは、ラップフィルム50の厚みのみならず、ラップフィルム50に形成されるカット痕50Tの形状もまた裂け強度に寄与するものであり、裂け強度が0.3N以下であれば、ニス塗布層のずり強度およびT型剥離強度を上述の範囲とすることで、ラップフィルム50の巻き戻りおよび縦裂けが抑制でき、ラップフィルム50が摘まみやすくなることを示す。
【0104】
これら試験例のうち、特に、ラップフィルム50の裂け強度が0.2N以上0.3N以下であって、ずり強度が10N/25mm以上20N/25mm以下、T型剥離強度が0.01N/25mm以上0.04N/25mm未満である場合は、巻き戻り発生の評価、縦裂け発生の評価が「◎」(発生0回)である。すなわち、ずり強度が10N/25mm以上20N/25mm以下、かつT型剥離強度が0.01N/25mm以上0.04N/25mm未満である水準は、裂け強度が0.3N以下であっても、縦裂け、巻き戻りが発生しない水準であることが認められた。
なお、試験例2Fと、試験例3Bとの結果を比較すると、試験例2Fはラップフィルム50の裂け強度が0.23N、試験例3Bは0.35Nである一方、両者のT型剥離強度は0.045N/25mmである。裂け強度の違いにより縦裂けの発生有無の結果が相違することから、縦裂けの発生を抑えるためには、裂け強度に応じたT型剥離強度の特定、すなわちT型剥離強度と裂け強度との特定を要するといえる。また、試験例2Eと試験例3Aとの結果を比較すると、試験例2EはT型剥離強度を0.04N/25mm未満とすることで、ラップフィルム50の裂け強度が0.23Nであっても縦裂けの発生が抑制され、かつラップフィルム50が摘まみやすいことがわかる。一方、試験例3AはT型剥離強度が0.04N/25mm未満であり、かつラップフィルム50の裂け強度が0.35Nであるため、ラップフィルム50の縦裂けが抑制され、ラップフィルム50が摘まみやすくなる。これらから、ラップフィルム50の裂け強度が0.3N以下であるラップフィルム50において、T型剥離強度を0.04N/25mm未満とすることで、縦裂けの発生を抑制することができるとともに、摘まみやすくすることができる。
【0105】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)ラップフィルム50が切断刃35で切断されたときにラップフィルム50に形成されるカット痕におけるラップフィルム50の裂け強度が0.3N以下であり、かつ、ずり強度が5.0N/25mm以上である。このため、ラップフィルム50の裂け強度が低いため裂けやすいラップフィルム50であっても、切断時のラップフィルム50のずれや、切断後のラップフィルム50の巻き戻りが、フラップ留め部28に対するラップフィルム50の密着によって抑制できる。
【0106】
(2)ラップフィルム50が切断刃35で切断されたときにラップフィルム50に形成されるカット痕におけるラップフィルム50の裂け強度が0.3N以下であり、かつ、T型剥離強度が0.04N/25mm未満である。このため、ラップフィルム50の裂け強度が低いため裂けやすいラップフィルム50であっても、カット痕50Tから生じる裂けによりラップフィルム50が裂けることを抑制し、摘まんだときに摘まみやすくフラップ留め部28からラップフィルム50を引き剥がすことが容易である。
【0107】
結果として、切断時のラップフィルム50のずれや、切断後のラップフィルム50の巻き戻りを抑制しながらも、ラップフィルム50の縦裂けを抑制できる。
(3)ラップフィルム50の引裂強さの縦方向と横方向における平均値が26mN以下であるため、ラップフィルム50の裂け強度が0.3N以下とすることが容易となり、上記(1)、(2)に準じた効果がさらに高まる。
【0108】
(4)前板21の表面のうちで蓋前板32Pと重なる領域の全体にわたり、ニス塗布層が塗布されてもよい。この場合、切断時のラップフィルム50のずれや、切断後のラップフィルム50の巻き戻りの抑制効果が得られる実効性が高まる。また、ラップフィルム50の次回使用時にラップフィルム50の縦裂けの抑制効果が得られる実効性も高まる。そして、塗布によって形成されるニス塗布層であれば、ニス塗布層の配置される範囲に高い自由度を備えるため、前板端辺21Tのように、塗布面積の小さい位置にニス塗布層を形成することも可能である。前板端辺21Tにニス塗布層を形成することで、ラップフィルム50を切断するときに前板端辺21Tに塗布されたニス塗布層によってもラップフィルム50が仮留めされる。ラップフィルム50が前板21の表面に加え、前板端辺21Tでも仮留めされることで、ラップフィルム50の切断がさらに容易になる。前板端辺21Tにニス塗布層を形成する場合は、ラップフィルム50の引き出し性を考慮し、前板端辺21Tの長さ方向DLにおける少なくとも一方の端部に形成することが好ましい。
【0109】
(5)フラップ留め部28のように、前板21の表面のうちで蓋前板32Pと重なる領域の一部のみに、ニス塗布層が塗布されてもよい。この場合、蓋前板32Pと重なる領域の全体にわたりニス塗布層が塗布される場合と比べて、ニス塗布量の形成に要する原材料の使用量を抑制できる。
【0110】
(6)フラップ留め部28のように、前板21に形成された切り線21FCに区切られるフラップ21Fの前面にニス塗布層が配置されてもよい。この場合、カット痕50Tを有したラップフィルム50の先端が、ラップフィルム50の次回使用時に前板21のフラップ21Fに持ち上げられる。そして、フラップ21Fに持ち上げられたラップフィルム50の先端は、ラップフィルム50を摘まむときに摘まみやすい。この際、フラップ21Fの前面にニス塗布層が配置されるため、ラップフィルム50はフラップ21Fの前面のフラップ留め部28に密着する。このため、フラップ21Fの前面に密着したラップフィルム50をより容易に摘まむことができる。結果として、ラップフィルム50の縦裂けを抑制することの実効性がさらに高まる。
【0111】
ニス塗布層は、塗布部を有した塗布パターンを備えてもよい。塗布パターンは、塗布部と非塗布部とを交互に配置したパターン、塗布部が非塗布部を囲むパターン、塗布部が前記容器本体の長さ方向に延在するパターン、および全ての前記パターンから選択される少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0112】
この場合、前板21の表面に塗布するニス塗布層の面積を塗布パターンによって調整することができる。ニス塗布層の面積を調整することで、ラップフィルム50の切断時におけるラップフィルム50の仮留めとラップフィルム50の巻き戻りおよび縦裂けの抑制を効果的に両立することができる。
【0113】
(7)フラップ留め部28がUV硬化性ニス層である場合、UV照射によってニス塗布層を形成できるため、ニス塗布層の配置や形状の精度が高められる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
【0114】
[切断刃35]
・切断刃35の刃先は、長さ方向DLに延びる直線状を有してもよい。また、切断刃35の刃先は、長さ方向DLにおける中央部と、長さ方向DLにおいて中央部を挟む両端部と、を含んで構成されると共に、両端部が長さ方向DLに伸びる直線状を有し、中央部が両端部よりも底板25に向けて突き出るV字状を有してもよい。また、切断刃35の刃先は、長さ方向DLにおける中央部と、長さ方向DLにおいて中央部を挟む両端部と、を含んで構成されると共に、閉蓋状態において長さ方向DLにおける中央部が底板25に向けて突き出るV字状を有すると共に、長さ方向DLの両端部が底板25に向けて突き出る、M字状を有してもよい。
【0115】
これに伴い、蓋前板32Pの下端辺、ミシン目線32Mが刃先の形状と同様の形状を有してもよい。
[ニス塗布層]
・前板21の前面のなかで、2つのフラップ21Fに挟まれた領域を摘まみ領域としたときに、フラップ21Fに位置するフラップ留め部28は、当該フラップ留め部28が挟む摘まみ領域と間隔を空けて位置してもよい。すなわち、フラップ留め部28が、フラップ21Fのうち摘まみ領域に隣接する位置には形成されず、フラップ21Fの縁から離れた位置からフラップ21Fの長さ方向DLにおける端部まで形成されてもよい。なお、上記実施形態に示すように、フラップ21Fに位置するフラップ留め部28が、少なくともフラップ21Fの縁と重なる位置に位置する場合、フラップ留め部28は摘まみ領域に隣接する。このため、ラップフィルム50のカット痕50Tに対する好適な引き剥がし作用が得られる。そして、ラップフィルム50のカット痕50Tにおける縦裂けを抑制することの確度も高まる。
【符号の説明】
【0116】
DH…高さ方向
DL…長さ方向
DW…前後方向
10…巻回体収容箱
20…容器本体
20T…開口
21…前板
21F…フラップ
22…後板
25…底板
28…ニス塗布層
30…蓋体
31…蓋板
32P…蓋前板
35…切断刃
50…ラップフィルム
50R…巻回体
50T…カット痕