(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058598
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】不活性化を監視するための機器および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
H01L21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023155658
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 126 773.3
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501493037
【氏名又は名称】ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト-ヨハネス オサポフスキー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安全、柔軟、安価なやり方での、不活性化作業の改善された監視を提供する機器および方法を提供する。
【解決手段】製造施設(12)の排気ガス排出(26)不活性化監視機器(10)であって、第1の流量測定ユニット(38)、第2の流量測定ユニット(40)、監視ユニット(44)とを備え、第1の流量測定ユニット(38)は、第1の流量計(24)に接続可能とされ、第2の流量測定ユニット(40)は、第2の流量計(34)に接続可能とされている。第1の流量測定ユニット(38)は、第1の流量計(24)の測定値に基づき、第1のガスの第1のガス分量を判定し、第2の流量測定ユニット(40)は、第2の流量計(34)の測定値に基づき、第2のガス分量を判定する。監視ユニット(44)は、判定された第1のガス分量および判定された第2のガス分量に基づいて、安全関連の制御機能(45)を発動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造施設(12)の排気ガス排出(26)における不活性化を監視するための機器(10)であって、
第1の流量測定ユニット(38)と、
第2の流量測定ユニット(40)と、
監視ユニット(44)とを備え、
前記第1の流量測定ユニット(38)は、前記製造施設(12)への第1のガスの第1の供給ライン(20)に配置された第1の流量計(24)に接続可能とされており、
前記第2の流量測定ユニット(40)は、前記排気ガス排出(26)への第2のガスの第2の供給ライン(30)に配置された第2の流量計(34)に接続可能とされており、
前記第1の流量測定ユニット(38)は、前記第1の流量計(24)により提供された測定値に基づいて、前記製造施設(12)に供給された前記第1のガスの第1のガス分量を判定するよう構成されており、
前記第2の流量測定ユニット(40)は、前記第2の流量計(34)により提供された測定値に基づいて、前記排気ガス排出(26)に供給された前記第2のガスの第2のガス分量を判定するよう構成されており、
前記監視ユニット(44)は、前記判定された第1のガス分量および前記判定された第2のガス分量に基づいて、安全関連の制御機能(45)を発動するよう構成されている、機器。
【請求項2】
前記第1の流量測定ユニット(38)により判定された前記第1のガス分量から、前記第2のガス分量に関する目標値を判定するよう構成された、処理ユニット(42)をさらに備える、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記監視ユニット(44)は、前記第2の流量測定ユニット(40)により判定された前記第2のガス分量が前記処理ユニット(42)により判定された前記目標値を下回る場合に、前記安全関連の制御機能(45)を発動するよう構成されている、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記排気ガス排出(26)への前記第2の供給ライン(30)に配置された流量制御器(48)に接続可能な流量制御ユニット(46)をさらに備え、前記流量制御ユニット(46)は、前記第1の流量測定ユニット(38)により判定された前記第1のガス分量に基づいて、前記第2の供給ライン(30)を通じた前記第2のガスのガス供給を制御するよう構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の機器。
【請求項5】
前記流量制御器(48)は、規定の最大送達率を有しており、その値は前記流量制御ユニット(46)に保存でき、前記機器は、前記第1の流量測定ユニット(38)により判定された前記第1のガス分量から前記第2のガス分量に関する目標値を判定するよう構成されている処理ユニット(42)を有しており、前記監視ユニット(44)は、前記判定された値が前記最大送達率に関する前記値を超えた場合に、前記安全関連の制御機能を発動するよう構成されている、請求項4に記載の機器。
【請求項6】
前記安全関連の制御機能(45)は、(i)前記第1のガスの供給を遮断すること、および、(ii)前記製造施設(12)を停止することの少なくとも1つを含んでいる、請求項1~5のいずれか1項に記載の機器。
【請求項7】
前記安全関連の制御機能(45)は、緊急噴出を開始することを含んでいる、請求項1~6のいずれか1項に記載の機器。
【請求項8】
前記緊急噴出は、前記第2の供給ライン(30)中のバイパス弁を開くことを含んでいる、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記第1のガスは水素を含んでいる、請求項1~8のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記第2のガスは不活性ガスである、請求項1~9のいずれか1項に記載の機器。
【請求項11】
前記不活性ガスは窒素である、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記監視ユニット(44)はマルチチャネルの冗長設計とされている、請求項1~11のいずれか1項に記載の機器。
【請求項13】
製造施設(12)の排気ガス排出(26)における不活性化を監視するための方法(1000)であって、
第1の流量測定ユニット(38)、第2の流量測定ユニット(40)および監視ユニット(44)を設けるステップ(1001)と、
前記第1の流量測定ユニット(38)を、前記製造施設(12)への第1のガスの第1の供給ライン(20)に配置された第1の流量計(24)に接続するステップ(1002)と、
前記第2の流量測定ユニット(40)を、前記排気ガス排出(26)への第2のガスの第2の供給ライン(30)に配置された第2の流量計(34)に接続するステップ(1003)と、
前記第1の流量計(24)により提供された測定値に基づいて、前記製造施設(12)に供給された前記第1のガスの第1のガス分量を判定するステップ(1004)と、
前記第2の流量計(34)により提供された測定値に基づいて、前記排気ガス排出(26)に供給された前記第2のガスの第2のガス分量を判定するステップ(1005)と、
前記判定された第1のガス分量および前記判定された第2のガス分量に基づいて、安全関連の制御機能(45)を発動するステップ(1007)とを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性化を監視するための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不活性化とは一般に、体積への不活性ガスの添加(すなわち、反応の鈍いガスの添加)が、体積中での爆発性の混合物の形成を防止する処理を指す。炎および爆発防護のための、部屋の不活性化が、とりわけ、化学物質保存施設、製造工場について、かつ、航空機建造において、公知であって、使用されている。
【0003】
下記特許文献1は例えば、2つの排気ガスが混合されて不活性ガスを形成し、次いで、不活性化されるべきガス体積に添加される、航空機においてガス体積を不活性化するためのシステムを示している。不活性ガスは、もはや危険を及ぼさないようにするために、ガス体積中で反応性ガスを置換または希釈する。このシステムは、不活性化されるべきガス体積中に配置され、かつ、不活性ガスが導入されたあとにガス体積の化学および材料組成を判定する測定プローブにより、十分な不活性化が起きているかを確認する。不活性化されたガス体積中にある判定されたガスが規定の比率に対応していれば、不活性化が十分であると推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 013 150 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体産業において、単に「ツール」として知られる特別な製造施設が、半導体部品を製造するのに使用されている。この製造施設は通常、半導体素子が組み立てられる囲われたチャンバを有している。半導体素子を作製するのに直接役立つ、または、半導体素子の作製に必要な製造環境を提供する、さまざまな操作のために、プロセスガスをチャンバへと導入する。製造ステップが完了する、または半導体素子が完成すると、プロセスガスがチャンバから除去されて、排気管へと移送される。
【0006】
プロセスガスは、排気管内で適切に中和しなければならない、有毒の、または反応性の高いガスを含んでいてもよい。例えば水素を、大気中で酸素と混合するプロセスガスとして使用することができ、点火されたときに酸水素反応を引き起こしてもよい。器具がどのように設計されているかと、それがもたらす組み込みの安全機能とに依存して、導入された水素を、ツールの出力で最大100%まで、再び排出してもよい。すべての半導体製造施設(工場)が防爆排気管(排気)を有しているわけではないため、または、ツール自体が残留水素除去用に設計されているわけではないため、人々および機械類を保護するために、反応性ガスがもたらす爆発の危険を除去する措置を取らねばならない。
【0007】
このための1つの可能性が、不活性化を排気管内で行うことであり、排気管内で、排出された水素は十分な不活性ガス(例えば窒素)によって浄化(purging)という形で希釈され、または、酸素が残っている場合は置換し、その結果、水素酸素濃度が2:1(H2:O2)という酸水素体積比を超えず、酸水素反応の危険がなくなる。ノンインテリジェントシステムでは、導入される水素の考え得る最大の量が判定され、それに基づいて、対応する量の不活性ガスが、導入される水素の最大100%まで排気管へと排出された場合であっても十分な不活性化が起きるよう、排気管へと添加される。しかし、この静的過程は、不必要に多量の不活性ガスを消費する。これに対し、インテリジェントシステムは、不活性ガスの要求量を、導入または排出される酸素の実際の量へと動的に調整する。したがって、不活性化のために実際に要求される量の不活性ガスのみが排気管へと導入され、これによって不活性化は、より効率的となる。しかし、動的な不活性化システムの安全な運転には、不活性化システムが継続的に監視され、かつ、機能不全の場合に適切な反応が発動されて、それによりシステムまたは排気管が安全な状態とされる必要がある。
【0008】
しかし、このような監視には、さまざまなガスを、または、少なくとも不活性化により希釈もしくは置換されることになるガス成分を、適切に判定できることが必要である。しかし、実際上、例えば下記特許文献1に示すように、不活性化されるべき体積中のプローブは、製造システムの排気ガス管中で容易に使用できない。例えば、特定のガス含有量の判定用の簡単なプローブでは、検知精度もしくは検知速さに関して相応の品質を有しておらず、または、それらは一般に、十分な不活性化を十分確実に判定できるという点で不具合にあまりに影響されやすい。他方、より高い品質を有する、または、排気管中の特別な条件に他の点で適合された、特別なプローブは通例、値ごろな解決策としてあまりに高価である。
【0009】
ゆえに、本発明の目的は、より安全、より柔軟、かつ、より安価なやり方での、不活性化作業の改善された監視を提供する機器および方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面によれば、製造施設の排気ガス排出における不活性化を監視するための機器であって、第1の流量測定ユニットと、第2の流量測定ユニットと、監視ユニットとを備える機器が提供される。前記第1の流量測定ユニットは、前記製造施設への第1のガスの第1の供給ラインに配置された第1の流量計に接続可能とされており、前記第2の流量測定ユニットは、前記排気ガス排出への第2のガスの第2の供給ラインに配置された第2の流量計に接続可能とされている。前記第1の流量測定ユニットは、前記第1の流量計により提供された測定値に基づいて、前記製造施設に供給された前記第1のガスの第1のガス分量を判定するよう構成されており、前記第2の流量測定ユニットは、前記第2の流量計により提供された測定値に基づいて、前記排気ガス排出に供給された前記第2のガスの第2のガス分量を判定するよう構成されている。前記監視ユニットは、前記判定された第1のガス分量および前記判定された第2のガス分量に基づいて、安全関連の制御機能を発動するよう構成されている。
【0011】
本発明の別の局面によれば、製造施設の排気ガス排出における不活性化を監視するための方法であって、
第1の流量測定ユニット、第2の流量測定ユニットおよび監視ユニットを設けるステップと、
前記第1の流量測定ユニットを、前記製造施設への第1のガスの第1の供給ラインに配置された第1の流量計に接続するステップと、
前記第2の流量測定ユニットを、前記排気ガス排出への第2のガスの第2の供給ラインに配置された第2の流量計に接続するステップと、
前記第1の流量計により提供された測定値に基づいて、前記製造施設に供給された前記第1のガスの第1のガス分量を判定するステップと、
前記第2の流量計により提供された測定値に基づいて、前記排気ガス排出に供給された前記第2のガスの第2のガス分量を判定するステップと、
前記判定された第1のガス分量および前記判定された第2のガス分量に応じて、安全関連の制御機能を発動するステップとを備える、方法を提供する。
【0012】
ゆえに、これは、2つの流量測定ユニットを有する監視機器を提供するという着想である。第1の流量測定ユニットは、製造施設内で処理用の第1のガス(プロセスガス)を供給する供給ライン内の流量計に接続されている。第1の流量測定ユニットは、製造施設に供給されるガスの量を継続的に検知できる。換言すれば、流量測定ユニットは、製造施設へのガスの供給ラインにおける流量測定に基づき、入力側で導入されるガスの量を判定する。第2の流量測定ユニットは、製造施設の排気管への供給ライン内に配置された流量計に接続されている。第2の流量測定ユニットは、排気管に供給される不活性ガスの量を継続的に判定できる。第2の流量測定ユニットは、不活性ガスの供給ラインにおける流量測定に基づき、ガス分量(gas quantity)を判定する。
【0013】
判定される2つのガス分量は、排気管中の現在の不活性化について結論を出すために、相互的な関係(規定の比率)に設定できる。特定の比率についての値を閾値として規定することにより、規定の比率がこの閾値に達し、特にこの閾値を下回り、不活性化が不十分なことが推定されるときに、反応を発動することができる。例えば、検知されたガス分量は、ある水素酸素濃度に相関でき、規定の閾値は、それを上回ると爆発性の酸水素が存在する臨界水素酸素濃度についての限界値であってもよい。
【0014】
このように、排気管における不活性化の監視は、製造施設と排気管との両方に供給されるガス量を判定することにより、非直接的に行われる。これには、監視機器が簡単な流量計に依拠できるという利点がある。排気管中のさまざまなガスの実際の濃度を判定する必要はない。流量計は簡単なセンサであってもよい。なぜなら、それらは、測定されるべきガスだけを運ぶのが好ましい供給ライン内に存在できるからである。それゆえに、体積流量のみを測定すればよく、ガスの種類および濃度を追加的に判定する必要はない。さまざまな設計の簡単な流量計が、この目的のための処理技術の分野より公知であり、低コストで利用できる。このようにして、不活性化の非直接的な判定により、不活性化を動的に設定するインテリジェントシステム用にさえ、費用効果が高くて信頼できる、不活性化の判定が可能となる。このようにして、上記目的は完全に達成される。
【0015】
さらなる実施形態では、本機器は、前記第1の流量測定ユニットにより判定された前記第1のガス分量から、前記第2のガス分量に関する目標値を判定する(算定する)よう構成された、処理ユニットをさらに備えていてもよい。それによって、不活性化用のプロセス変数を直接判定できる。特に、監視ユニットを、第2の流量測定ユニットにより判定される第2のガス分量が目標値を下回った場合に安全関連の制御機能を実行するよう構成できる。
【0016】
好ましくは、本機器は、前記排気ガス排出への前記第2の供給ラインに配置された流量制御器に接続可能な流量制御ユニットをさらに備えていてもよく、前記流量制御ユニットは、前記第1の流量測定ユニットにより判定された前記第1のガス分量に基づいて(すなわち、第2のガス分量に関する判定された目標値に基づき)、前記第2の供給ラインを通じた前記第2のガスのガス供給を制御するよう構成されている。ゆえに、本機器は、監視するためだけでなく不活性化を直接制御するためにも使用できる。ゆえに、既存のノンインテリジェントシステムであっても、提案された監視機器による動的な不活性化を備えるインテリジェントシステムに、容易に変換できる。したがって、本監視機器は、非常に効果的に使用できる。
【0017】
体積流量制御器は、最大流量を有していてもよい。最大流量の値を、流量制御ユニットに保存してもよい。処理ユニットは、第1の流量測定ユニットにより判定される第1のガス分量から、第2のガス分量に関する目標値を判定する(算定する)よう構成できる。さらには、監視ユニットは、判定された目標値が最大可能流量を超える場合に、安全関連の制御機能を発動するよう構成できる。制御された不活性化(動的な不活性化)の場合、それゆえに監視を、制御要素がその限度に達した場合に安全関連の制御機能(安全機能)が発動されるように、制御要素と整合させることができる。例えば、不活性ガスの要求量が、流量制御器のみによって、または、流量制御器を含むシステムによって提供できる可能流量を超えた場合、これによっても安全機能が発動されることになる。このようにして、システム全体の安全性をさらに向上できる。
【0018】
安全関連の制御機能は、第1のガスの供給を停止すること、および/または、製造施設を全体として停止することを含んでいてもよい。両方の措置は、誤った、または不十分な不活性化の際に、素早く確実に製造施設を安全な状態に移行させる助けとなる。好適には、安全関連の制御機能を単一の製造施設に、同じ排気管に接続されているかもしれない他の施設を停止する必要なしに、制限できる。ゆえに、この改良形態は好適には、システム全体の可用性を高めることに貢献できる。
【0019】
安全関連の制御機能は、例えば第2の供給ラインにあるバイパス弁を開くことにより、緊急噴出を開始することを含んでいてもよい。あるいは、または、くわえて、制御機能により、緊急噴出を行って、この目的のためにバイパス弁を使用することもでき、これは通例、例えば手動の噴出のために、対応するシステムで利用可能とされている。バイパス弁は、供給を不活性ガスの可能な供給の最大限に調整するための、実際の制御から独立した装置であってもよい。この改良形態によれば、安全性をさらに高めることができる。
【0020】
1つの改良形態では、第1のガス(すなわち、製造システムのプロセスガス)は水素を含んでいてもよく、かつ、不活性ガスは窒素であってもよい。
【0021】
さらには、処理ユニットおよび/または監視ユニットは、マルチチャネルの冗長な設計を有していてもよい。それによって、監視のフェールセーフな実行および/または安全関連の制御機能の実行を保証して、規範的要件を満たすことができる。くわえて、処理ユニットおよび監視ユニットは、異なるハードウェアを備えた多様化された構造をも有していてもよい。冗長な設計により、入力および出力の常時の試験、ならびに、フェールセーフ性を保証するためのユーザデータの常時の比較が可能となる。
【0022】
上記特徴、および、以下に説明する特徴を、本発明の範囲を逸脱することなく、各場合に示す組み合わせにおいてのみならず、他の組み合わせまたは単独でも使用できることが理解される。
【0023】
実施形態を図面に示し、より詳細に以下の記述において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】不活性化を監視するための監視機器の例を有する製造施設の模式図を示す。
【
図2】
図1に係る監視機器のさらなる変形例を示す。
【
図3】不活性化を監視するための方法の例の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、監視機器の例を有する製造施設を示している。ここで監視機器はその全体が、参照番号10により示されている。
【0026】
製造施設12は、半導体製造の分野からの例示的な製造システム(ツール)であり、きわめて簡略化した形態でここに示されている。製造施設12は、製造プロセスが起きる少なくとも1つのチャンバ14を有している。例えば、半導体基板18は、作製のためにチャンバ14内のスライド16上に配置してもよく、さまざまな機械的および化学的な作製ステップを半導体基板18上で行って、半導体素子を作製してもよい。
【0027】
製造施設12は、チャンバ14内での作製ステップのためにプロセスガス22を添加できる、少なくとも1つの供給ライン20を含んでいる。プロセスガス22は、半導体素子の化学処理のために直接的に使用されてもよく、または、製造プロセスに必要なチャンバ14内の作業環境を作り出すのを助けるプロセスガスであってもよい。ここに示すように、プロセスガス22(第1のガス)は、水素H2であってもよい。
【0028】
流量計24が、プロセスガス22の供給ライン20内または供給ライン20上に配置されている。流量計24はさまざまな種類であってもよく、かつ、プロセスガスのガス供給を表す値を提供してもよい。特に、流量計24は、好ましくは対応するガス自体の濃度を判定する必要なしに、体積流量に基づいてガス供給を判定する簡単な体積流量計であってもよい。
【0029】
さらに、製造施設12は、チャンバ14に導入されたプロセスガスまたは任意の反応生成物をチャンバ14から除去できる、排気管26(排気ガス排出)を含んでいる。排出されたプロセスガスまたは反応生成物を、以下で簡単に排気ガス28と呼ぶ。排気ガス28は、能動的または受動的にチャンバ14から排気管26内へと導かれる。
【0030】
さらなる供給ライン30が排気管26に、好ましくは排気管26が製造施設12から引き出された直後の位置に、配置されている。さらなる供給ライン30を介して、不活性ガス32を排気管26に、排気管26の不活性化を実行するために、供給できる。換言すれば、不活性ガスが排気管26へと導入されて、排気ガス28を希釈し、または、排気管内に存在するかもしれない特定のガスを置換する。不活性ガス32は窒素N2であってもよい。
【0031】
プロセスガス22用の供給ライン20におけると同じく、流量計34が、さらなる供給ライン30内またはさらなる供給ライン30上に配置されている。さらなる流量計34は、不活性ガスのガス供給に対応する値を提供してもよい。第1の供給ライン20内の流量計24と同じく、さらなる流量計34は簡単な体積流量計であってもよい。
【0032】
流量計24およびさらなる流量計34の値は監視機器10に供給され、監視機器10は対応する入力36を有している。監視機器10内の第1の流量測定ユニット38は、第1の流量計24により提供された値に基づき、チャンバ14に供給されているプロセスガスの分量(第1のガス分量)を、継続的に判定できる。同時に、監視機器10の第2の流量測定ユニット40は、排気管26に供給されている不活性ガスの分量(第2のガス分量)を判定してもよい。処理ユニット42は、流量測定ユニット38、40により判定されたガス分量を、互いに対して規定の関係にすることができる。規定の比率は、供給されるガスの量の結果として生じる排気管26内の不活性化の程度を表してもよい。例えば、供給されるガスの量が、排気管26内の水素酸素濃度に直接的に相関することが考えられる。規定の比率を判定するために、処理ユニット42は、少なくとも1つの他のパラメータを考慮に入れてもよく、または、製造施設12、排気管26または製造プロセスに特有の、判定における補正係数(correction factor)を含んでいてもよい。それにより、監視機器を異なる製造施設に柔軟に適合できる。
【0033】
監視機器10の監視ユニット44が、処理ユニット42により判定された比率を、規定の閾値と継続的に比較してもよい。監視ユニット44は、判定された比率が閾値に達すると、安全関連の制御機能を発動する。例えば、監視ユニット44は、判定された比率が閾値を下回ると、安全関連の制御機能を発動し、その結果、排気管26内の不活性化が不十分なことが推定されることになる。このように、監視ユニット44は、判定されたガス分量に応じて、安全関連の制御機能を発動する。
【0034】
安全関連の制御機能45は、製造施設12の種類、または、製造施設12により行われる処理に応じて異なっていてもよい。1つの実施形態では、安全関連の機能45は、供給ライン20におけるプロセスガスのガス供給を停止することを含んでいてもよい。あるいは、または、くわえて、安全関連の機能45は、製造施設12自体の停止につながる場合がある。再び、別の実施形態において、安全関連の制御機能45は、排気管26の別個の浄化を発動させるなどの能動的な措置を含んでいてもよい。そのような浄化に関し、不活性ガスの量のいかなる制御にもかかわりなく、排気管26への不活性ガスの最大の流入を可能にするバイパス弁(ここに図示せず)が設けられていてもよい。
【0035】
上述したユニット(特に、さまざまなユニットへの分割)が、純粋に機能的に理解されるべきことが理解され、かつ、個々のユニットも、1つまたはそれ以上の構成要素に統合されてもよい。例えば1つの実施形態では、流量測定ユニット38、40、処理ユニット42および監視ユニット44は、中央処理装置(central processor)(CPU)、ASICまたはマイクロコントローラなどの中央演算処理装置により実施されてもよい。
【0036】
好ましくは、個々のユニットは、共通のハウジング内で統合されて、製造施設12の制御キャビネット中に配置できる単一の機能的な制御装置を形成する。制御装置は、上述したユニットのさまざまな作業を実施する個々のハードウェアおよびソフトウェアモジュールで構成された、モジュール式の制御装置であってもよい。モジュール式の制御装置は、通信装置(例えば、個々のモジュールを接続するモジュールバス)を有していてもよく、それを介してユニットは通信可能に互いに接続されている。制御装置はまた、拡張できてもよく、かつ、さらなる制御および調節作業を行うこともできる。
図2を参照して、より詳細に
図1の監視機器のさらなる実施形態を説明する。
【0037】
図2は、上述した監視機器10のさまざまなさらなる実施形態の例を示しており、同じ引用符号は前と同じ部品を指す。
【0038】
図2に係る監視機器10は、とりわけ追加の流量制御ユニット46によって、
図1に係る監視機器10と異なっている。流量制御ユニット46は流量制御器48に接続でき、流量制御器48は第2の供給ライン30上流に、すなわち、第2の流量計34の上流の流れ方向に、配置されている。流量制御器48は、制御可能なバルブ(MFC)であってもよい。1つの実施形態では、流量制御器48は例えば、媒体分離センサ(medium-separated sensor)と、一体型の比例積分(PI)制御器とを有する制御バルブであってもよい。しかし、本発明は、いかなる特定の種類の流量制御器にも限定されない。流量制御器48は、第2の供給ライン内の流量を調節できさえすればよい。ゆえに、流量制御器48も、
図2に示すような単一の装置に限定されず、ともに流量を調節する複数の異なる構成要素の組み合わせを含んでいてもよい。
【0039】
監視機器10の流量制御ユニット46は、流量調節を制御する。流量制御ユニット46は、上述した流量測定ユニット38、40と同じやり方で監視機器10に組み込まれていてもよいが、流量制御ユニット46が監視機器10の少なくとも1つの出力50に接続されており、それを介して、流量制御ユニット46が流量制御器48に制御信号を送信してもよいという違いがある。
【0040】
流量制御ユニット46は、処理ユニット42からの入力に基づいて流量制御器48を制御してもよい。そして入力は、第1の供給ライン20を介して製造施設12に供給されるガス量に関する値に基づいており、それゆえに、第1の流量測定ユニット38により判定された値(プロセスガス量)に基づいている。入力は、測定値に直接的に対応していてもよいが、追加の補正係数、許容差、または、そうではなく変容をも考慮に入れてもよい。入力に基づき、第2の供給ライン30を通じた不活性ガス32の供給が制御されて、排気管26内での適切な不活性化が保証される。換言すれば、監視機器10は、不活性ガスの量を、必要な量に動的に調整する。この目的のために、処理ユニット42は、導入されるプロセスガス22の量に基づき、排気管26内で十分な希釈または置換をもたらすのに必要な不活性ガス32の量に関する目標値を判定してもよい。この目標値に基づき、流量制御ユニット46を介して流量制御器48を制御し、かつ、不活性ガスの流入を調節する。
【0041】
特定の例では、水素がプロセスガス22として使用された場合、排気管内での水素の体積分率は3vol%を超えないことがある。導入される水素の量の知識に基づき、かつ、ここで最大100%まで排気管へと排出できると仮定して、処理ユニット42は、必要であれば他のパラメータを考慮に入れて、臨界体積分率を超えないように、排出された水素を排気管26内で十分に希釈するのに必要な不活性ガス32の量を判定する。次いで、流量制御ユニット46を使用して、不活性ガスの供給を制御できる。この制御に加えて、監視機器10は、
図1に関して先に記載した不活性化の監視を行うことができ、かつ、不十分な不活性化が推定される場合に安全関連の反応を発動できる。
【0042】
図2に係る監視機器10は、上述した不活性化の監視に加えて、制御自体の監視を可能にする。例えば、監視ユニット44も、処理ユニット42により判定された目標値が最大可能制御条件(maximum possible control condition)を超えたときに、安全関連の反応を発動してもよい。最大可能制御条件は例えば、流量制御器48の最大流量、最大可能供給圧力/径(maximum possible feed pressure/diameter)などにより制限されてもよく、かつ、流量制御器48により供給ライン30を通って搬送できる不活性ガスの最大量に関連していてもよい。例えば、必要な目標値に到達できない場合に、安全関連の反応を発動できる。さらには、追加の閾値により、不活性化を制限する他の要因を考慮に入れることができる。
【0043】
監視機器10は好ましくは安全制御器である。安全制御器は、自動化技術において、通常の制御器(例えばプログラマブルコントローラ(PLC))と同じ仕方で制御タスクを行うことができる。しかし、くわえて、安全制御器は、特定の制御機能のフェールセーフな実行を保証できる、さらなるソフトウェアおよびハードウェア設備を有している。追加の設備は例えば、監視機器10の本質的な処理ユニットおよびインターフェースのマルチチャネルな冗長設計を含んでいる。これは
図2において、それぞれの場合に個々のユニットが二重に表現されていることで示されている。
【0044】
安全制御器の個々の機能的な構成要素の冗長設計に加えて、構成要素を、例えば異なる製造業者から冗長な構成要素を入手することにより、多様化することもできる。それにより、共通原因故障(common cause fault)を効果的に排除して、固有の耐故障性を向上できる。
【0045】
上述した不活性化の監視およびその制御に加えて、安全制御器は好適には、許容ウィンドウ、許容時間または休止時間などの他の面をフェールセーフなやり方で監視できる。同じものが、測定値取得のハードウェア設計における偏差による不確定性の補正に適合し、これも安全制御器により安全に関連するやり方で実行できる。このようにして、安全性をさらに増すことができる。
【0046】
図3を参照して、不活性化を監視するための方法の例を以下に説明する。この方法は、排気管における不活性化を監視するため、製造施設に供給されたプロセスガスの分量と、排気管に供給された不活性ガスの分量とを、算定により排気管中のこれら2つのガスの分量比を判定するため、かつ、それに応じて、分量比が臨界値(閾値)を想定する場合に安全関連の制御機能を発動するために、継続的に判定する方法として要約できる。
【0047】
詳しくは、この処理は
図3に示すステップを有していてもよい。本方法全体を参照番号1000により示す。
【0048】
第1のステップ1001において、監視機器が設けられる。監視機器は、処理ユニット、第1の流量測定ユニット、第2の流量測定ユニットおよび監視ユニットを有している。
【0049】
次に(ステップ1002)、第1の流量測定ユニットは、製造施設への第1のガスの第1の供給ラインに配置された第1の流量計に接続される。
【0050】
さらに、第2の流量測定ユニットは、排気ガス排出への第2のガスの第2の供給ラインに配置された第2の流量計に接続される(ステップ1003)。
【0051】
その後、第1の流量計により提供される測定値に基づき製造施設に、施設の運転中に、供給される第1のガスの第1のガス分量(ステップ1004)、および、第2の流量計により提供される測定値に基づき排気ガス排出に供給される第2のガスの第2のガス分量(ステップ1005)が判定される。好ましくは、判定は、製造施設が始動したのちに継続的に行われる。
【0052】
最後に、判定されたガス分量を使用して、それらが排気管中で互いに存在しているであろう比率を判定する(ステップ1006)が、排気管中のそれぞれのガスの実際の濃度は明確に測定しない。さらには、ステップ1007において、安全関連の制御機能を、判定されたガス分量に応じて発動する。すなわち、比率が臨界閾値に達した場合に、監視ユニットは安全関連の制御機能を発動する。閾値は、算定により、もしくは経験的に判定でき、または、動的に調整できる。
【0053】
本方法が、ここに示した実施形態に限定されず、個々のステップの前または後に挿入される他のステップを含んでいてもよいことが理解される。同様に、ここに明示的に示してはいないが、個々のステップを、特に継続的に、繰り返してもよい。
【0054】
本発明は、ここに記載した実施形態により限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【外国語明細書】